第1の発明は、衣類を収納するドラムと、永久磁石と巻線を有し前記ドラムを駆動する電動機と、前記ドラムの開口部を開閉する蓋と、前記蓋をロックする蓋ロック手段と、複数のスイッチング素子を有し、前記電動機に電流を供給するインバータ回路と、前記スイッチング素子をオンオフ制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記電流を検知する電流検知手段と、前記電流検知手段の出力を受けて前記電動機の速度を算出する速度算出手段とを有し、前記制御手段は、前記ドラムの制動期間に、前記電動機の入力電圧を略零に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記速度が所定値以下となった後、前記蓋ロック手段を使用者が前記蓋を開くことが可能な状態とする洗濯機であって、前記制御手段は、前記制動期間の前に、前記電動機の入力電圧の絶対値を低下させるように前記スイッチング素子を制御する電圧低減期間を有することにより、簡単な構成でありながら、電動機の停止を適切に判定することができるものとなる。
また、前記電動機への過渡的な過電流の発生を抑え、スイッチング素子の電流容量が小さくても、十分な信頼性を実現することができる。
第2の発明は、特に第1の発明の電動機は3相の巻線を有し、前記電流検知手段は、3相の内の2相以上の電流を検知し、前記速度算出手段は、この3相の内の2相以上の電流の値に基づいて速度を算出することにより、前記電動機の回転に同期した速度を算出することができるものとなることから、停止となる直前の低速状態を、極めて高い安定性で算出することができ、停止の判定による安定性が高い洗濯機を実現することが可能となる。
第3の発明は、特に第2の発明の電動機は3相の巻線を有し、速度の時間積分値を含む前記永久磁石の位相を出力する可変周波数発振手段と、位相誤差検知手段と、座標変換手段とを備え、前記電流検知手段は、3相の内の2相以上の電流を検知し、前記座標変換手段は、前記位相を用いて前記電流検知手段の出力を静止座標から回転座標へ変換して出力し、前記速度算出手段は前記回転座標での電流値信号を受けて速度を算出することにより、前記電動機の回転に同期した速度を確実に算出することができるものとなることから、停止となる直前の低速状態を、極めて高い安定性で算出することができ、停止の判定による安定性が高い洗濯機を実現することが可能となる。
第4の発明は、特に第1〜第3のいずれかの発明の電源投入後、前記蓋ロック手段を使用者が前記蓋を開くことが可能な状態となる前に、前記制動期間を有することにより、電源投入時点に前回の運転による惰性回転が残っている場合などにも、安全性の確保が可能となる。
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれかの発明の電動機に位置検知器を持たないセンサレス方式としたことにより、電動機の停止を適切に判定することができるうえ、低コストな洗濯機を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置のブロック図を示すものである。
図1において、永久磁石100、101と3相の巻線102、103、104を有し、衣類105を収納するドラム106を、プーリ107およびベルト108を介して回転駆動する電動機109と、6石のスイッチング素子111、112、113、114、115、116を有し、電動機109に交流電流Iu、Iv、Iwを供給するインバータ回路117と、スイッチング素子111、112、113、114、115、116をオンオフ制御する制御手段118を有し、制御手段118は、交流電流Iu、Iv、Iwを検知する電流検知手段119、電流検知手段119の出力を受けて電動機109の速度を算出する速度算出手段120を有しており、本実施の形態においては、電流検知手段119は、3相それぞれの電流を電圧に変換するシャント抵抗121、122、123、および低電位側のスイッチング素子114、115、116のオン期間に、A/D変換を行うA/D変換器124により構成されており、速度算出手段120は、位相誤差検知手段126、可変周波数発振手段127として、増幅器128と積分器129を用いたものを備えている。
本実施の形態においては、電流検知手段119として3相の各相に対応する3個の抵抗シャント抵抗121、122、123を用いる3シャントなどと呼ばれる構成を用いており、低電位側のスイッチング素子が114、115、116がオンしている期間での各シャント抵抗両端に発生する電圧から検出するものとしているが、1シャントと呼ばれるような1個のシャント抵抗で、検知タイミングから3相の各電流値Iu、Iv、Iwを分離する構成、あるいはDCCTと呼ばれるような直流電流成分から検出が可能な電流センサを2個〜3個使用するものであってもかまわない。
ここで増幅器128は、入力に対してP成分(比例成分)とI成分(時間積分成分)の2つの利得成分を有したものとなっており、増幅器128への入力、すなわち位相誤差検知手段126の出力が、定常的に零となる制御ループとして動作するものとなる。
さらに制御手段118は、可変周波数発振手段127の出力信号ωが十分な低速となったことを判定する低速判定手段130を有しており、閾値発生器131、比較手段132により構成されたものとなっている。
さらに制御手段118は、中央制御部135を有し、インバータ回路117の制御のための信号生成や、電流検知手段119からの出力信号Iua、Iva、Iwa信号受付、速度算出手段120からの信号ω、θの受付、低速判定手段130のJ信号受付などの各種信号処理をすべてデジタル式にて行うものとなっている。
PWM回路136は、中央制御部135からDuty信号を受けて、Duty信号に対して64マイクロ秒周期の三角波でのパルス幅変調(PWM)を行った信号Bを出力するものであり、中央制御部135の信号S1〜S6は、インバータ回路117との間に設け
た、切り替え手段137、駆動回路138を経てスイッチング素子111、112、113、114、115、116のゲート信号を与えるものとなっているが、切り替え手段137が、中央制御部135のK信号がハイである場合には、図1に表示されている状態となって、S1〜S6が採用されるのに対し、K信号がローとなっている場合には、切り替え手段137内の各スイッチが下側に接続された状態となる。
インバータ回路117は、AC230V50Hzの交流電源141、全波の整流器142、コンデンサ143により構成した直流電件144から、直流電圧VDCが供給されており、抵抗146、147によって構成した直流電圧検知回路148の出力Aが、中央制御部135にアナログ電圧信号として入力される形となっており、中央制御部135の内部では、これもA/D変換されたデジタル値として処理されていくものとなっている。
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置の中央制御部135内の詳細構成を示すブロック図である。
なお、中央制御部135を実現する実際の部品としては、1チップ式のマイクロコンピュータなどが用いられるものとなるが、図1の中央制御部135の外側の部分も含めて、1台のマイクロコンピュータのソフトウェアで処理することで実現しても良いし、逆に中央制御部135内の構成をハードウェアで実現しても良く、1チップとしても多チップの部品で実現してもよく、またDSPなどと呼ばれるような各種プロセッサを部品として用いたものであっても良い。
図2において、3相電流Iu、Iv、Iwに対応した信号Iua、Iva、Iwaと算出された位相θ信号を用いて、数式1を用いてIdとIqへの変換、すなわち静止座標から回転座標への変換を行って出力する第1の座標変換手段150、設定値IdrとIdの誤差を計算する減算手段151、設定値IqrとIqの誤差を計算する減算手段152、減算手段151、152の出力に対して、PI(比例、積分)のゲインを作用させる誤差増幅手段153、154を設けており、その出力Vd1とVq1は、切り替え手段156を経て、θ信号と共にdq座標から、数式2を用いて3相の電圧指令値Vu、Vv、Vwの値に変換する第2の座標変換手段158が設けられており、PWM手段159において、A信号に対する3相の電圧指令値の比率で、64us周期の三角波のキャリア波を作用させ、そのキャリア波との瞬時値比較、およびデッドタイムを付して、上下の駆動信号S1〜S6を生成するものとなる。
なお、本実施の形態においては、電流検知手段119は、3相すべての電流を検知できる構成としているが、電動機109の三相の巻線102、103、104の内の2相以上の電流を検知すれば、残りの1相はキルヒホッフの法則によって計算できるものとなるため、2相のみの検知としてもかまわない。
本実施の形態は、さらに速度設定値ωrとωとの差を計算する減算手段160、減算手段160の出力に対して、PI(比例、積分)のゲインを作用させる誤差増幅手段161、算出速度ωからIdrを決めるIdr設定手段162、短絡ブレーキ制御手段163、異常検出手段165、J信号から0.3秒の遅延時間でZ信号を出力する遅延手段166、電動機109の駆動時の設定速度ωr、ブレーキ要求信号B4RQの信号発生を行うシーケンス発生手段167、B4RQ信号を受けて、短絡ブレーキへの移行開始時のVd1とVq1を入力し、零に近づける値を出力する電圧指令絞り手段168が設けられている。
シーケンス制御部167は、電気洗濯機として動作を行うため、外部の構成要素との各種信号(停止ボタン信号Sstop、給水弁信号Skb、排水弁信号Shb、蓋ロック信号Srk、蓋閉信号Sclなど)を送受信しながら、電動機109の運転に関わる各種の信号も送受信するものである。
短絡電流判定手段170は、短絡状態での3相分の電流信号Iua、Iva、Iwaの瞬時値の絶対値のいずれかが1.7Aを超えている場合にCl信号をハイとし、瞬時値の絶対値のすべてが0.6Aを下回った場合にCs信号をハイとするものとなっている。
Idr設定手段162は、ω値がドラム106の速度換算で400r/min以下の場合には、Idrとして0Aを出力し、ドラム106の速度換算で400r/minを超える場合には、Idr<0Aとしつつ、絶対値としてはωの増大に伴い徐々に増加させることにより、ドラム106の速度換算で1200r/minではIdr=−5Aとするものとなっており、高速での弱メ界磁制御がかかるものとなっている。
短絡ブレーキ制御手段163は、電気洗濯機に何らかの異常が発生した場合、および動作の区切りの時点で、電動機109をブレーキ状態として停止させた場合の制御を行うものであり、各部の過電流や過電圧、また過剰な振動などがあった場合、異常検出手段165からのB99RQ信号、およびシーケンス発生手段167からのブレーキ要求信号B4RQを受けた場合に電動機109の入力を徐々に短絡状態、すなわち3相の入力端子間の電圧がほぼ零となるように、インバータ回路117内のスイッチング素子111、112、113、114、115、116に対するゲート制御を実現するものとなり、特に本実施の形態においては、B99RQを受けた場合と、B4RQを受けた場合では、どちらも短絡ブレーキ状態ではあるが、具体的なインバータ回路117への信号はかなり異なったものとしている。
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置のB99RQによって短絡ブレーキとなる場合の波形図であり、(ア)はB99RQ信号、(イ)はK信号、(ウ)はDuty信号である。
力行期間から、中央制御部135の内部信号BRQは時刻t1でハイとなり、同時にK信号がハイからローになるが、この時点ではDuty値は零であるため、スイッチング素子111、112、113、114、115、116のIGBT部分は、すべてオフとなる5msのオールオフ期間に移る。
なお、オールオフ期間中には、電動機109が低速である場合には、ほとんど電流が零の状態となるが、高速である場合(誘導起電力が高い状態)では、スイッチング素子111、112、113、114、115、116のダイオード部分を通じて、直流電源への回生電流が流れる。
(ウ)に示される低電位側スイッチング素子114、115、116のオン時間の比率
(Duty)は、短絡時間比率となり、オールオフ期間に続いて、T2からT5はDutyが増加する短絡時間比率拡大期間となり、一方高電位側スイッチング素子111、112、113については、切り替え手段137の作用によりオフ状態が保たれるものとなる。
その後、T3、T4を経る毎に、時間に対する傾き、すなわち短絡時間比率(Duty)の拡大速度は、時間経過と共に低下、また短絡時間比率が100%に近づくほど、低下するものとなっている。
電動機109の入力電圧の観点では、回転により発生する誘導起電力が瞬時値として正/負を繰り返すが、それが短絡時間中には強制的に零となるものとなり、絶対値が抑えられるものとなる。
よって本実施の形態は、T2〜T5の短絡時間比率拡大期間は、短絡時間の増加により、電圧の絶対値が低下させるようにスイッチング素子114、115、116が制御される電圧低減期間となる。
T5において、Dutyが100%に達した時点で、電動機109は、制御手段118が、インバータ回路117内の低電位側スイッチング素子114、115、116のオンオフ制御により、3相巻線の入力端子UVWを短絡する短絡時間比率(Duty)を拡大する短絡時間比率拡大期間の後、短絡時間比率Dutyを最大限、すなわち100%に保ち、負荷の運動エネルギーを吸収する短絡制動期間を有するものとなっている。
Dutyが100%となった時点では、低電位側スイッチング素子114、115、116内のIGBTやダイオードの電圧降下分、およびインバータ回路117から電動機109までの配線による電圧降下分は、電動機109の入力電圧として例えば2〜3V程度残るものとなるが、このような電圧は略零の範疇である。
このように、短絡時間比率となるDutyを徐々に増大させることにより、短絡制動期間に移る過程での過渡的な電流の跳ね上がりを防ぐことができ、過電流が防止できるものとなり、インバータ回路117の各構成要素の破壊、および電動機109の過電流故障を防ぐことができる。
特に、本実施の形態においては、短絡時間比率の拡大速度を徐々に低下させたものとしていることにより、短絡制動期間に入る時点での電動機109の速度条件が広範囲に振られても、過渡的な電流の跳ね上がりを防ぐことができるという効果があり、速度が高い条件下ではT2〜T3付近のDutyの拡大速度の設計、また速度が低い条件下ではT4〜T5付近のDutyの拡大速度の設計で対応可能となる。
なお、特に高速における直流電源144への回生による過電圧を抑える面からは、短絡時間比率拡大期間の後半となるT3〜T5における短絡時間比率(Duty)拡大速度を、中速〜低速条件下での過渡的な電流の跳ね上がりが許容できる範囲で高める設計とすることにより、最小限に抑えることができるものとなる。
そして、電動機109が広範囲の速度条件にて短絡制動期間に入る場合の線電流の過電流の防止とともに、直流電源144の回生による過電圧発生も抑えることができ、速度情報が不要であることから、センサレスと呼ばれるような電動機109に位置検知用のセンサ、および速度検知用のセンサを持たず低コストとした構成にも対応することができる。
さらに、電気洗濯機のように電動機109の回転方向が、一方向ではなく、右に回った
り左に回ったりするインバータ装置であっても、相順に関係なく短絡ブレーキ(短絡制動)期間に移行する制御が可能であることから、有効なものとなる。
図4は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置のB99RQによって短絡ブレーキとなり、図3に示した期間から、さらに時間が経過し、電動機109および負荷であるドラム106が停止する前後の動作波形図を示している。
図4において、(ア)はドラム106の速度、(イ)はIu、Iv、Iwの電流波形、(ウ)は短絡電流判定手段170のCs出力信号を示している。
短絡ブレーキ状態となった電動機109は、次第に速度が低下し、同時に線電流については周波数がほぼ速度に比例して低下し、線電流の振幅も最終的には低下し、速度が零となる時点で零に収束していく。
本実施の形態においては、零電流である場合の電流検知手段119の出力は、5V電源のほぼ中間となる2.5V程度となるが、運転開始前のスイッチング素子114、115、116がオフの状態での値を零電流に相当するオフセット値として記憶しておいて使用し、各相の線電流の絶対的な値で扱うものとなる。
短絡ブレーキに入った時点から停止に至るまで時間については、短絡ブレーキに入った時点での電動機109の速度、負荷の慣性モーメント、電動機109のインダクタンスや抵抗値、スイッチング素子114、115、116のオン状態での電圧(VCE(SAT))などによって左右されるものとなり、一定時間ではないため、速度の低下によって現れる物理現象である電流値を、本実施の形態で用いることにより、十分な低速にまで速度が低下した状態を検知するものとしている。
具体的には、本実施の形態においては、3つの線電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の絶対値のすべてが0.6Aを下回った時点TjaでCs信号をハイとするものとなり、ドラム106の速度として7r/min程度に低下した段階となる。
短絡ブレーキ制御手段163はハイとなったCs信号を受け、上記7r/minから短絡ブレーキの継続により停止となる、例えば0.15秒間の遅延時間を経過した時点で、停止と判断するものとなり、シーケンス発生手段167からの指示などにより、電気洗濯機として必要な次の工程に移るものとなる。
なお、万全を期すために、短絡電流判定手段170の判断について、Tja以降にも再度線電流が十分に低下していることを確認した後にCsをハイ出力する構成、あるいは線電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の絶対値のすべてが0.6Aを下回った状態が所定時間以上継続した場合にCs信号をハイ出力するようにしても良い。
以上のように、位置センサや速度センサを用いない低コストと簡単な構成でありながら、短絡ブレーキを用い、かつその期間の電流からの適切な停止の判定により、安全性の確保を行うことができるものとなる。
図5は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置のシーケンス発生手段167からのブレーキ要求信号B4RQによって短絡制動期間に入る場合の動作波形図の波形図であり、(ア)はB4RQ信号、(イ)は第2の座標変換手段158の入力値Vq(実線)とVd(破線)の値、(ウ)は算出された速度ω(実線)と実角速度(破線)を示している。
B4RQ信号が立ち上がるT1時点以前の力行期間については、切り替え手段156は下側の接点に接触するため、誤差増幅手段153、154の出力Vd1とVq1が、VdとVqに接続されてIdとIqの電流制御が機能した状態となっている。
T1において、B4RQがハイになった時点で、電圧指令絞り手段168はVd1とVq1を内部にホールドし、T1以降は時間に対して一定の電圧変化速度(dV/dt)で絶対値を低下させていくという動作に入り、切り替え手段156は上側の接点に接触し、電圧指令絞り手段168からの信号がVdおよびVqとして用いられる。
図5に示している例では、T1において、Vq1は正であるのに対しVd1は負の値となっているため、電圧指令絞り手段168はVqについてはVq1から減じることによって零に近づけ、VdについてはVd1から増すことによって零に近づけていく動作となり、絶対値を小とする方向に変化を起こすものとなる。
図5では、Vd1の絶対値がVq1の絶対値よりも小であった場合を示しており、T1以降の電圧指令絞り手段168による絞り動作が、絶対値を一定の時間的割合で低下させていくものとなるため、(イ)ではT1以降の傾きの絶対値がVdとVqで等しくなり、結果T2にてVdが零となり、さらにT3にてVdもVqも零となって電動機109の入力電圧の絶対値はほぼ零にまで低下し、電動機109は運動エネルギーを吸収する短絡制動期間に入る。
電動機109の入力電圧については、第2の座標変換手段158の出力となる電圧Vu、Vv、Vwで決定されるものとなるが、T1からT3の期間には、線間電圧で見ても電圧は減少するようにスイッチング素子111、112、113、114、115、116が制御されることになるため、電圧低減期間となる。
なお、本実施の形態においては、VdとVqは同時には零とならないものとなるが、電圧低減期間T1〜T3は、数十ms程度の比較的短い時間内に行われるものとなるため、VdとVqのカーブの違いによる悪影響は顕著に表れることはなく、過渡的な線電流の跳ね上がりによる過電流の発生や、直流電源144への回生電力による直流電圧の過電圧の発生には至らず、問題とはならない。
また本実施の形態では、(ウ)に示すωに関して、電圧低減期間においてのみ増幅器128の出力ωを、B4RQ信号が開始となるT1時点での算出速度ω1に固定した状態とし、フィードバックの安定性を確保するものとしている。
電圧低減期間におけるVdとVqの変化のカーブについては、他のものであっても良く、例えばVdとVqが同時に零となるように傾きを調整したものなどであっても良い。 また、VdとVqの時間変化の大きさ(傾きの絶対値)を、短絡制動期間に入る時の電動機109の速度に応じて変化させてもよく、傾きについて、低速では小、高速では大とすると、いずれの速度でも電圧低減期間中の過渡的な電流の跳ね上がり(過電流)を抑えつつ、特に高速での直流電源への回生電流による過電圧発生を極力抑えたものとすることもできる。
また電圧低減期間中の傾きaを変化させ、初期は傾き大で後に傾き小として広範囲の速度に対応させたものであっても良い。
いずれにしても、B4RQ信号がハイとなった場合には、電圧指令値VdとVqが時間とともに零に絞られていくため、電動機109の入力は徐々に短絡状態、すなわち3相の入力端子間の電圧がほぼ零となる方向に、インバータ回路117内のスイッチング素子1
11、112、113、114、115、116に対するゲート制御がなされた電圧低減期間を有し、その後にVdとVqが零で電動機109の入力電圧が略零となる短絡制動期間に入るものとなる。
ただし、電圧指令値VdとVqが共に零となった状態であっても、電動機109の入力電圧は完全な零Vとはならない場合があり、特に3相変調を行った場合には、VDCの半分の電位を中心として、瞬時の各相の線電流Iu、Iv、Iw極性に応じてデッドタイム時間内の電位の上下が発生し、またIGBTやダイオードによる電圧降下分も2〜3V以下ではあるが、発生する要因もある。
これらの電圧はデッドタイム補償と呼ばれる構成を用いて、軽減される場合もあるが、特に電気洗濯機に応用する場合には、騒音防止の面からキャリア周波数は10数キロヘルツ程度とかなり高いため、数V程度の電動機109入力電圧が残る場合もあるが、これらは入力電圧が略零の範疇である。
図6は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置のB4RQによって短絡制動期間に移った後、時間が経過し、電動機109および負荷であるドラム106が停止する前後の速度算出手段120を中心とした動作波形図を示しており、(ア)はIu、(イ)はω、(ウ)はθ、(エ)はJ信号の波形を示している。
短絡制動期間には、電動機の電流Iu、Iv、Iwがかなり流れることから、本実施の形態においては、電流検知手段119を経た信号の内のU相分となるIuaを位相誤差検知手段126に取り込み、U相電流Iu波形と、可変周波数発振手段127の出力θとの位相差に応じた信号を発生するものとしている。
具体的には零点のタイミングからの位相差の比較、あるいは2つの入力信号の乗算などが用いられ、その出力が増幅器128と積分器129による制御ループで構成された、一種の位相同期ループ(PLL)が構成されることにより、短絡制動期間中においては、Iuの位相に同期したθが生じ、角周波数ωは電動機109の速度に応じた値、すなわち算出速度(または角速度の算出値)が得られるものとなる。
このように増幅器128のω出力は、短絡制動期間中の速度として使用することができることから、ωが閾値発生器131の値ωthを下回ったT1において、比較手段132のJ信号が出力されるものとなり、本実施の形態においては、T1をドラム106の速度として35r/minとなった時点としており、J信号はωthにてハイとなる。
単純に電動機109の各線電流の瞬時値のみから停止に近い低速の状態に達したかどうかを判定する場合には、突発的なノイズによる影響を受けやすい傾向があり、例えばかなり高速で回転している場合でも、3相分の電流検知手段119の出力値が偶然一致することも多々あり、また1つの相の電流検出値を電気角1周期よりも短い間隔で2回以上の参照した場合でも、ノイズによって一致する可能性は時間が長くなる程に高まるものとなり、十分な低速であると誤って判定することがある。
またノイズの影響を防ぐために参照する回数を増しても、ノイズの影響を効果的に低減することができない場合が多く、逆に停止状態であってもノイズの影響で、十分低速となっている状態の判定に非常に長い時間がかかるなどの不具合も発生する。
それに対し、本実施の形態においては、速度あるいはそれに一対一で対応する周波数という物理量を介在させた判定となるため、特にドラム式洗濯機の場合などは、ドラム106の慣性モーメントが0.3kg平米程度以上あることによる速度変動(加速度)の限界
が生じる点を有効に活用し、ω値の応答性を十分に実現できる範囲で、ローパス要素を用いるなどすることも可能となり、結果電流検知手段119出力のノイズによる影響を格段に低いものに抑えることが可能となる効果があり、停止直前まで信頼性の高いω信号が得られるものとなる。
J信号が、中央制御部135に入った後、遅延手段166にて、0.3秒の遅延時間の後、Z信号がハイとなるが、この0.3秒は、上記ドラム106の速度として、35r/minから短絡ブレーキの継続により停止となる所要時間に相当する。
なおCl信号に関しては、絶対値のいずれかが1.7Aを超えており、電流からの周波数を検知するのに十分な振幅がある場合にハイとなるので、Cl信号の条件を掛け合わせることにより、速度の検知に十分な信頼性が加わるものとなる。
このように、本実施の形態においては、シーケンス発生手段167からのB4RQ信号により短絡制動となる場合においては、速度算出手段120を用いたものとすることにより、電流Iuなどに多少の一時的なノイズが乗った場合であっても、位相誤差検知手段126が正常に働く範囲であれば、ノイズの影響は全く受けることがなく、また位相同期ループとしての動作に影響がない範囲であれば、瞬間的な位相誤差検知手段126の誤動作があっても、増幅器128内の積分ゲイン要素により、速度算出手段120としての影響は抑えられる方向となり、信頼性の高い停止の判定による安全性の確保がなされるものとなる。
なお上述したデッドタイムの影響で、電動機109の入力電圧が零からずれると、場合によっては、直流電源144への回生電流が発生し、コンデンサ143の充電によってVDCの上昇が問題となることもあるが、デッドタイム補償によって抑えられる場合がある。
したがって、VDCの過電圧を防止する面、および電動機109の速度の算出を極力低速まで精度良く行おうとする面からも、適切なデッドタイム補償は有効に作用するものとなる。
以上のように、本実施の形態においては、制御手段118は、ドラムからの運動エネルギーを吸収する短絡制動期間に、電動機109の入力電圧を略零に保つようにスイッチング素子111、112、113、114、115、116の制御を行い、算出速度ωが所定値ωth以下となった後、停止の判定を行うものとなる。
これにより、例えばホールICなどの位置検知器を持たない簡単な構成でありながら、電動機109の停止を適切に判定できるものとなり、安全性の確保が可能となる。
なお、本実施の形態においては、B4RQ信号時には、Cs信号は停止の判定には使用しないものとしたが、併用してもよく、例えばZ信号が発生してから0.3秒後に再度Cs信号の状態を確認して、停止の判定を行っても良い。
また、万一非常に急速な減速がかかった場合など、35r/minの判断がなされるまでに、電流が小となりCl信号がローとなった場合などは、いつまでも停止の判定がなされず、インバータ装置が閉じこもってしまうことも考えられるが、Cs信号との併用や適宜タイマーを併用するなどして、停止していることの判定を行い、十分な時間経過の後に、停止の判定することにより、安全性やインバータ装置の利便性を両立させた形で、次のシーケンスに進むことができるものとなる。
図7は、本実施の形態における一般にドラム式洗濯機と呼ばれるインバータ装置の断面図である。
図7において、衣類105を収納するドラム106、プーリ182およびベルト108を介して回転駆動する電動機109が設けられ、電動機109に3相の交流電流を供給するインバータ回路117を有している。
インバータ回路117は、制御手段118からの6石分の制御信号により、運転がなされるものとなっており、実施の形態1で説明した、B99RQ信号とB4RQに対応し、それぞれ図3に示したB99RQ信号での電圧低減期間と、図5に示したB4RQでの電圧低減期間を経た後、短絡制動期間に移るものとなる。
停止の判定に関しても、実施の形態1で説明した、B99RQとB4RQのそれぞれの構成でいずれも短絡制動期間中の停止の判定による、安全性の確保が行われるものとなっている。
本実施の形態においては、ドラム106は樹脂製の受け筒190の内部で回転するものとなっており、給水弁193、排水弁194の開閉を制御手段118からのSkb信号、Shb信号により開閉することによって、受け筒190内に水が給排水され、別に投入される洗剤と共に、洗濯と脱水がなされるものとなっている。
ここで、ドラム106の前方には開閉可能な蓋196が設けられており、使用者が蓋196を開閉するための蓋ハンドル197が設けられており、洗濯および脱水中にドラム106が回転する際には、蓋196が閉じられ、使用者の安全確保や、水の飛散の防止するものとなっている。
蓋196がハンドル197の操作で開かれた状態は、破線で示している。
本実施の形態においては、蓋196は本体に繋がる蝶番部分を中心として開閉するものとしているが、引き戸構成のものや、折りたたみする構成のもの、シャッタ構成のもの、また取り外しができるものなどであってもかまわない。
蓋ロック手段200は、蓋196が閉じられた状態に保持するものであり、ソレノイド201、プランジャ202、バネ203およびロック制御回路204からなっており、ソレノイド201に通電がなされていない図示している状態では、蓋196はロック状態となるため、使用者がハンドル197を引いても、その他いかなる操作を行っても、蓋196を開くことはできない状態となる。
ロック制御回路204は、制御手段118からのSrk信号により、ソレノイド201への通電を行い、ロックの解除を行われると、使用者はハンドル197を引いて蓋196を開くことができる状態となる。
なお、蓋検知スイッチ206は、蓋196の開閉状態を検知するものであり、開閉検知信号Sclを制御手段118に伝え、蓋196が開かれている場合には、Sclはローとなり安全確保の面から、インバータ回路117への信号としては、電動機109への交流電流の供給は行わず、ドラム106を回転する運転はなされないものとなっている。
なお、この状態で直流電流を電動機109に供給しても良く、ドラム106はより確実に回転方向に固定された状態とすることで、十分な安全性の確保を行うことができる。
そして、脱水運転などが終了した場合には、制御手段118が停止の判定がなされた後に、Srk信号が送られ、蓋ロック手段200は、ソレノイド201への通電を行うことによってロック状態が解除され、使用者が蓋196を開くことができる状態となる。
脱水運転が停止する場合としては、所定の脱水時間に達した場合の他、使用者が停止ボタン208を操作し、Sstop信号が発生した場合、またインバータ回路117において過負荷などの異常が発生した際にも、制御手段118内の異常信号が発生し、いずれも電動機109の制動がかかり、ドラム106が停止された時点で、制御手段118でのB4RQ信号での停止の判定がなされ、蓋ロック手段200がロック状態を解除された状態となり、使用者がハンドル197を引くことによって、蓋196が開けることができるので安全性が確保されるものとなる。
図8は、本実施の形態において、インバータ装置の電源が投入された直後のフローチャート図を示している。
図8において、インバータ装置の電源スイッチが入った場合など、制御手段118が活性化した段階で、構成しているマイクロコンピュータのプログラムがスタートすると、スタート210から短絡ブレーキ(B99RQ)211に移り、実施の形態1の説明で図3に示したB99RQ信号が発生した場合の動作を行い、電圧低減期間に続いて短絡制動期間に入る。
そして図4に示す停止の判定となる信号Csがハイとなった時点で、ロック解除213に移り、ここでソレノイド201の通電が行われ、使用者は蓋196を開くことができる状態となり、安全性が確保される。
電源が投入された段階で、例えば前回の運転の制動が完了していない状態であった場合などは、蓋196が使用者の操作で開くことができる状態である場合には、残っている回転により、使用者に危険が発生するものとなる。
本実施の形態においては、電源投入後に、短絡制動期間を経るものとし、かつ停止の判定による安全性の確保の信号Csがハイになった後にロックを解除することにより、その危険を無くすることができるものとなり、安全性の高い洗濯機を実現することができるものとなる。
このように、本実施の形態においては、電動機の停止を適切に判定した後に、蓋のロック解除を行い、使用者は蓋196を開くことができるものとなるため、安全性の高い洗濯機を実現することができるものとなる。
特に、短絡ブレーキ(B99RQ)211にて、B99RQ信号による制動を行うことから、速度センサや位置センサを用いないセンサレスと呼ばれる構成であっても、電源投入直後にドラム106の回転が残っていた場合であっても、その速度、および位置(位相)に関係なく、インバータ回路117の過電流や過電圧の発生を抑えることができるため、極めて有効なものとなる。
また、本実施の形態においては、正しい零電流状態における電流検知手段119の出力値をオフセット値として使用して絶対的な電流値を扱うものとしているため、例えば短絡ブレーキ中に電流検知手段119に故障が発生した場合、0Vや5Vなどの実際の電流値とは無関係に出力信号が固定される可能性が高いことを発明者らは把握しているが、その場合にはCs信号はハイとなる可能性は極めて低くなり、高い安全性が確保されるものとなる。
なお、本実施の形態においては、ドラム106の回転軸は、水平としたものを示したが、特に水平にこだわるものであるというものでもなく、垂直、あるいは斜めの回転軸を有
するものとしても良い。
ドラム106の回転駆動のための動力伝達経路についても、プーリ182、ベルト108を用いたものを示したが、これについてもこの構成に限定するものでもなく、ギア(歯車)を用いたものや、ダイレクト駆動と呼ばれるように、ドラム106の軸に直接に電動機を備えて同一の速度で回転するものなどであってもかまわない。
また、蓋ロック手段200の構成に関しても、本実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、例えば複数の蓋ロック手段を設け、使用者のハンドル操作によっていつでもロック解除が可能な第1の蓋ロック手段と、制御手段からの信号によってロック状態が解除される第2の蓋ロック手段とを併用する構成、あるいは蓋を閉じた状態で常にロック状態となるが、ロック解除は制御手段からの信号によって阻止/許可が働くもの、制御手段からの信号によってハンドル操作ができなくなるものなど、様々な構成を用いることができ、いずれの場合でも使用者が蓋を開くことができるかどうかを制御手段からの信号によって変化させることができるものであれば良く、具体的な構成は自由に設計できるものである。
(実施の形態2)
図9は、本発明の第2の実施の形態におけるインバータ装置の主要部分を示すブロック図である。
本実施の形態においては、特に速度と位相を算出する構成が、第1の実施の形態と異なるが、その他は同等であるため、特に第1の実施の形態から異なるブロックのみを説明する。
図9にて、制御手段220は、速度算出手段221を、中央制御部135でのVd、Vq、Id、Iq信号を受ける位相誤差検知手段223、可変周波数発振手段127を有しており、可変周波数発振手段127は第1の実施の形態と同様に、P成分とI成分を有し算出速度ωを出力する増幅器128と、算出速度ωの時間積分を行って算出位相θを出力する積分器129を用いている。
本実施の形態においては、算出速度ωは、位相誤差検知手段223にも入力されており、電動機109のパラメータ(抵抗値、最大インダクタンス、最小インダクタンス)を記憶しておき、電圧指令値および検出した電流値から、位相誤差εが算出され、算出位相θが実位相に対して進んでいる場合にはε>0、算出位相θが実位相に対して遅れている場合には、ε<0となる。
定常状態においては、増幅器128の入力、すなわち位相誤差検知手段223の出力εが零となるように制御ループが動作するものとなり、速度算出手段221としては、回転座標での電流値信号IdとIq、および回転座標での電圧値信号VdとVqを受けて、速度ω、および位相θを算出して出力するものとなっている。
なお、算出速度ωに関しては、例えば64us等のインバータ回路117のキャリア周波数毎に周期的に計算された前回のωを使用して計算を行うことにより、図9に示された制御ループについての堂々巡りは、回避されたものとなっている。
その他の部分の構成に関しては、第1の実施の形態と同等であり、B9RQ信号が発生した場合の動作についても、第1の実施の形態と同等である。
以上の構成により、本実施の形態のインバータ装置では、R4RQ信号が発生した場合には、第1の実施の形態と同様にVdとVqを電圧低減期間中に絶対値を小として零とした
後、短絡制動期間中にVdとVqが共に零とする。
この段階で、IdとIqはかなりの大きさのものが存在するため、これらが位相誤差検知手段223で計算要素に加わり、短絡制動期間中の算出位相θが実位相、すなわち永久磁石100、101の位相と等しく保たれ、短絡制動期間中のωも極めて精度の高いものが得られるものとなる。
ドラム106の速度で35r/min相当の速度となった時点で、算出ω<ωthとなり、J信号がハイに立ち上がるなど、その後の停止の判定に至る期間の動作に関しては、第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態においては、位相誤差検知手段223の構成として、やや複雑な計算を伴うものとなる分、それを実現するマイクロコンピュータなどのプロセッサについては、計算力が高いものが必要となるが、実位相に対する算出位相θの誤差、および実速度と算出速度ωとの誤差を非常に小さく抑えることができるという傾向があり、算出された速度ωに対する信頼性が極めて高いものとなるため、停止の判定としても信頼性が高いものが実現でき、安全性が極めて高いインバータ装置を実現することができるものとなる。
また、短絡制動期間以外の力行期間においても、電動機109に位置センサや速度センサを持たない「センサレス」と呼ばれる動作中においても、算出した速度ωと位相θの応答性が優れた高性能の洗濯機として動作させることができるものとなり、力行動作中の速度計算、位相計算と共用することもでき、合理的となる。
なお、短絡制動期間には電動機109の入力電圧はほぼ零となり、Vd、Vqは共に零に固定された条件であるため、力行時とは若干制御構成が異なるものとなり、より低速まで速度の計算を対応させるなどの目的で、位相の誤差をフィードバックするための誤差増幅器に用いる利得(比例成分用、積分成分用など)を、力行時とは異なる値に切り替えるなどしても良い。
もちろん、ホールICなどの位置センサを用いるインバータ装置を使用することも可能であり、従来から停止の判定に用いられる位置センサが万一故障した場合を考慮した、多重の安全性確保も行うことができるものとなり、抜群の安全性の確保ができるものとなる。
なお、本実施の形態においては、位相誤差検知手段223での位相誤差ε、すなわち角度の次元となる物理量を算出するものとしているが、例えば算出した磁束の方向の電圧成分のみを用いても十分な特性が得られることが多く、加減乗除、三角関数、指数関数、複素数演算などの各種計算の回数が削減できることから、より簡単な計算で済ませることができるものとなる。
また、一般にベクトル制御と呼ばれる直交2軸は、一方が永久磁石100、101によって生じる磁束の向きに合致させる構成とされることが多いが、特に磁束軸であるd軸にピッタリと合わせる構成に限定されるものでもなく、例えば電動機109が有している実際のインダクタンス値とは異なった値を用いて、d軸より幾分位相が進んだ軸を基準としても良く、永久磁石100、101が回転子内の奥深くに埋め込まれた構成の電動機109においては、電流の削減が合理的に行えるなどの利点もある。
一般的な永久磁石電動機の電圧方程式をベースとし、誤差εを電圧の誤差、電流の誤差、速度の誤差、インダクタンス値の誤差、抵抗の誤差などに照らし合わせて計算し、誤差εが零に収束するようにする構成などとした上で、実働時の性能に影響が小さい項を省く
などした簡略化した数式を用いてもよく、いずれにしても、計算の仕事が減る分、使用するマイクロコンピュータの能力として低く、低コスト、また電力消費を抑えたものでも構成できるという利点がある。