以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベル(建設機械)の油圧駆動装置を示す図である。
図1において、本実施の形態の油圧駆動装置は、原動機(例えばディーゼルエンジン)1と、その原動機1によって駆動され、第1及び第2圧油供給路105,205に圧油を吐出する第1及び第2吐出ポート102a,102bを有するスプリットフロー型の可変容量型メインポンプ102(第1メインポンプ)と、原動機1によって駆動され、第3圧油供給路305に圧油を吐出する第3吐出ポート202aを有するシングルフロー型の可変容量型メインポンプ202(第2メインポンプ)と、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b及びメインポンプ202の第3吐出ポート202aから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hと、第1〜第3圧油供給路105,205,305に接続され、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b及びメインポンプ202の第3吐出ポート202aから複数のアクチュエータ3a〜3hに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブユニット4と、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出流量を制御するためのレギュレータ112(ポンプ制御装置)と、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出流量を制御するためのレギュレータ212(ポンプ制御装置)とを備えている。
コントロールバルブユニット4は、第1〜第3圧油供給路105,205,305に接続され、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b、メインポンプ202の第3吐出ポート202aから複数のアクチュエータ3a〜3hに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i,6j,6kと、複数の流量制御弁6a〜6kの前後差圧が目標差圧に等しくなるよう複数の流量制御弁6a〜6kの前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g,7h,7i,7j,7kと、複数の流量制御弁6b,6c,6d,6f,6g,6i,6jのスプールと一緒にストロークし、それら流量制御弁の切り換わりを検出するための複数の操作検出弁8b,8c,8d,8f,8g,8i、8jと、第1圧油供給路105に接続され、第1圧油供給路105の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁114と、第2圧油供給路205に接続され、第2圧油供給路205の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁214と、第3圧油供給路305に接続され、第3圧油供給路305の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁314と、第1圧油供給路105に接続され、第1圧油供給路105の圧力が第1吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第1圧油供給路105の圧油をタンクに戻すアンロード弁115と、第2圧油供給路205に接続され、第2圧油供給路205の圧力が第2吐出ポート102bから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第2圧油供給路205の圧油をタンクに戻すアンロード弁215と、第3圧油供給路305に接続され、第3圧油供給路305の圧力が第3吐出ポート202aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第3圧油供給路305の圧油をタンクに戻すアンロード弁315とを備えている。
ここで、アクチュエータ3aは、流量制御弁6i及び圧力補償弁7iと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続されるとともに、流量制御弁6a及び圧力補償弁7aと第3圧油供給路305を介して第3吐出ポート202aに接続され、かつ流量制御弁6k及び圧力補償弁7kと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3aは、例えば油圧ショベルのブームを駆動するブームシリンダであり、流量制御弁6aはブームシリンダ3aのメイン駆動用であり、流量制御弁6iはブームシリンダ3aの第1アシスト駆動用であり、流量制御弁6kはブームシリンダ3aの第2アシスト駆動用である。流量制御弁6i,6kはブームシリンダ3aのボトム側に接続され、流量制御弁6i,6kとブームシリンダ3aのボトム側とを接続する油路には、それぞれ、逆流防止用のチェック弁71,72が設けられている。流量制御弁6kと圧力補償弁7kは、第1吐出ポート102aの吐出油に合流して第2吐出ポート102の吐出油をブームシリンダ3aに供給するための合流弁を構成している。
アクチュエータ3bは、流量制御弁6j及び圧力補償弁7jと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続され、流量制御弁6b及び圧力補償弁7bと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3bは、例えば油圧ショベルのアームを駆動するアームシリンダであり、流量制御弁6bはアームシリンダ3bのメイン駆動用であり、流量制御弁6jはアームシリンダ3bのアシスト駆動用である。
アクチュエータ3cは、流量制御弁6c及び圧力補償弁7cと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3cは、例えば油圧ショベルの上部旋回体を駆動する旋回モータである。旋回モータ3cには旋回モータ3cの過負荷を防止するための旋回リリーフ弁73a,73bが設けられている。
アクチュエータ3d,3fはそれぞれ流量制御弁6d,6f及び圧力補償弁7d,7fと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続され、アクチュエータ3gは流量制御弁6g及び圧力補償弁7gと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3d,3fは、それぞれ、例えば油圧ショベルのバケットを駆動するバケットシリンダ、下部走行体の左側履帯を駆動する左走行モータである。アクチュエータ3gは、例えば油圧ショベルの下部走行体の右側履帯を駆動する右走行モータである。アクチュエータ3e,3hはそれぞれ流量制御弁6e,6h及び圧力補償弁7e,7hと第3圧油供給路305を介して第3吐出ポート202aに接続されている。アクチュエータ3e,3hは、それぞれ、例えば油圧ショベルのスイングポストを駆動するスイングシリンダ、ブレードを駆動するブレードシリンダである。
図2Aは、旋回モータ3cを含むアクチュエータ3c〜3h(ブームシリンダ3aとアームシリンダ3b以外のアクチュエータ)の流量制御弁6c〜6hのそれぞれのメータイン通路の開口面積特性を示す図である。これらの流量制御弁は、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A3となるように開口面積特性が設定されている。最大開口面積A3は、アクチュエータの種類に応じてそれぞれ固有の大きさを持つ。
図2Bの上側は、アームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jのそれぞれのメータイン通路の開口面積特性を示す図である。
アームシリンダ3bのメイン駆動用の流量制御弁6bは、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、中間ストロークS2で最大開口面積A1となり、その後、最大のスプールストロークS3まで最大開口面積A1が維持されるように開口面積特性が設定されている。
アームシリンダ3bのアシスト駆動用の流量制御弁6jは、スプールストロークが中間ストロークS2になるまでは開口面積はゼロであり、スプールストロークが中間ストロークS2を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A2となるように開口面積特性が設定されている。
図2Bの下側は、アームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jのメータイン通路の合成開口面積特性を示す図である。
アームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jのメータイン通路は、それぞれが上記のような開口面積特性を有する結果、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A1+A2となるような合成開口面積特性となる。
図2Cの上側は、ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i,6kのそれぞれのメータイン通路の開口面積特性を示す図である。
ブームシリンダ3aのメイン駆動用の流量制御弁6aは、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、中間ストロークS2で最大開口面積AA1となり、その後、最大のスプールストロークS3まで最大開口面積AA1が維持されるように開口面積特性が設定されている。
ブームシリンダ3aの第1アシスト駆動用の流量制御弁6iは、スプールストロークが中間ストロークS2になるまでは開口面積はゼロであり、スプールストロークが中間ストロークS2を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積AA2となるように開口面積特性が設定されている。図示の如く、AA2<AA1の関係にある。
ブームシリンダ3aの第2アシスト駆動用の流量制御弁6kは、スプールストロークが中間ストロークS5になるまでは開口面積はゼロであり、スプールストロークが中間ストロークS5を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積AA3となるように開口面積特性が設定されている。図示の如く、AA3≒AA2<AA1の関係にある。また、S5≧S2の関係にあり、図示の例ではS5=S2である。
図2Cの下側は、ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i,6kのメータイン通路の合成開口面積特性を示す図である。
ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i,6kのメータイン通路は、それぞれが上記のような開口面積特性を有する結果、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積AA1+AA2+AA3となるような合成開口面積特性となる。
ここで、図2Aに示すアクチュエータ3c〜3hの流量制御弁6c,6d,6e,6f,6g,6hの最大開口面積A3と、図2Bに示すアームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jの合成した最大開口面積A1+A2と、図2Cに示すブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i,6kの合成した最大開口面積AA1+AA2+AA3は、
A1+A2>A3
AA1+AA2+AA3>A3
AA1+AA2+AA3≒A1+A2
の関係にある。すなわち、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bは、旋回モータ3cを含む他のアクチュエータよりも最大の要求流量が大きいアクチュエータである。
図1に戻り、コントロールバルブユニット4は、また、第1圧油供給路105に接続される流量制御弁6d,6f,6i,6jの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧Plmax1を検出するシャトル弁9d,9f,9i,9jを含む第1負荷圧検出回路131と、第2圧油供給路205に接続される流量制御弁6b,6c,6g,6kの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3a,3b,3c,3gの最高負荷圧Plmax2を検出するシャトル弁9b,9c,9g,9kを含む第2負荷圧検出回路132と、第3圧油供給路305に接続される流量制御弁6a,6e、6hの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3a,3e,3hの最高負荷圧Plmax3を検出するシャトル弁9e,9hを含む第3負荷圧検出回路133と、第1圧油供給路105の圧力(すなわち第1吐出ポート102aの圧力)P1と第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1(第1圧油供給路105に接続されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls1として出力する差圧減圧弁111と、第2圧油供給路205の圧力(すなわち第2吐出ポート102bの圧力)P2と第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2(第2圧油供給路205に接続されるアクチュエータ3a,3b,3c,3gの最高負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls2として出力する差圧減圧弁211と、第3圧油供給路305の圧力(すなわちメインポンプ202の吐出圧或いは第3吐出ポート202aの圧力)P3と第3負荷圧検出回路133によって検出された最高負荷圧Plmax3(第3圧油供給路305に接続されるアクチュエータ3a,3e,3hの負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls3として出力する差圧減圧弁311とを備えている。
差圧減圧弁111が出力する絶対圧Pls1は、第1圧油供給路105に接続された圧力補償弁7d,7f,7i,7jとメインポンプ102のレギュレータ112に導かれ、差圧減圧弁211が出力する絶対圧Pls2は、第2圧油供給路205に接続された圧力補償弁7b,7c,7g,7kとメインポンプ102のレギュレータ112に導かれ、差圧減圧弁311が出力する絶対圧Pls3は、第3圧油供給路305に接続された圧力補償弁7a,7e,7hとメインポンプ202のレギュレータ212に導かれる。
圧力補償弁7d,7f,7i,7jにおいて、差圧減圧弁111から導かれたLS差圧Pls1は圧力補償弁7d,7f,7i,7jの開方向作動側に印加され、圧力補償弁7b,7c,7g,7kにおいて、差圧減圧弁211から導かれたLS差圧Pls2は圧力補償弁7b,7c,7g,7kの開方向作動側に印加され、圧力補償弁7a,7e,7hにおいて、差圧減圧弁311から導かれたLS差圧 Pls3は圧力補償弁7a,7e,7hの開方向作動側に印加され、これらの圧力補償弁7a〜7kは、開方向作動側に印加されたそれぞれのLS差圧Pls1,Pls2,Pls3に基づいてそれぞれの流量制御弁6a〜6kの前後差圧の目標値、すなわち目標補償差圧を設定する。
ここで、旋回用の圧力補償弁7c以外の圧力補償弁7a,7b,7d〜7kは通常の圧力補償弁であり、それぞれ、流量制御弁6a,6b,6d〜6kの前後差圧が開方向作動側に印加されるLS差圧 Pls1,Pls2,Pls3に等しくなるように制御する。すなわち、圧力補償弁7a,7b,7d〜7kは、それぞれ、開方向作動側に印加されるLS差圧 Pls1,Pls2,Pls3を目標補償差圧として設定し、流量制御弁6a,6b,6d〜6kの前後差圧を制御する。これにより複数のアクチュエータを同時に駆動する複合操作時に、アクチュエータの負荷圧の大小に係わらず、メインポンプ102の第1及び第2の吐出ポート102a,102bの吐出流量或いはメインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出流量が流量制御弁の開口面積比に応じて関連するアクチュエータに分配され、良好な複合操作性を確保することができる。また、第1〜第3吐出ポート102a,102b,202aの吐出流量が要求流量に満たないサチュレーション状態になった場合は、その供給不足の程度に応じて差圧減圧弁111,211,311が出力するLS差圧Pls1,Pls2,Pls3(目標補償差圧)が低下し、流量制御弁6a,6b,6d〜6kの前後差圧が低下することで、この場合も流量制御弁の開口面積比に応じて第1及び第2の吐出ポート102a,102b或いは第3吐出ポート202aの吐出流量が分配され、良好な複合操作性を確保することができる。
旋回用の圧力補償弁7cは負荷依存特性を有し、旋回モータ3cの負荷圧が増加するにしたがってLS差圧Pls2に基づいて設定される目標補償差圧が小さくなり、流量制御弁6cの前後差圧を小さく制御する(すなわち、流量制御弁6cの通過流量(旋回モータ−3cの供給流量)が減少するように)ように構成されている。
図3は、旋回用の圧力補償弁7cの負荷依存特性を説明するための圧力補償弁7cの模式図であり、図4は、旋回用の圧力補償弁7cの負荷依存特性を示す図である。
図3において、旋回用の圧力補償弁7cは、閉方向作動側の受圧部7c1と開方向作動側の受圧部7c2,7c3とを有し、受圧部7c1に流量制御弁6cの入側の圧力Pzが印加され、受圧部7c3に旋回モータ3cの負荷圧(流量制御弁6cの出側の圧力)Plが印加され、受圧部7c2にLS差圧Pls2が印加される。受圧部7c1,7c2,7c3の受圧面積をそれぞれAc1,Ac2,Ac3とすると、通常の圧力補償弁の場合はAc1=Ac2=Ac3であるのに対し、Ac1>Ac2=Ac3の関係となっている。これにより旋回モータ3cの負荷圧Plが増加し、後述するロードセンシング制御によりメインポンプ102の第2吐出ポート120bの吐出圧が増加するとき、流量制御弁6cの入側の圧力Pzが増加するにしたがって受圧面積Ac1と受圧面積Ac3の面積差に応じて圧力補償弁7cの閉方向の付勢力が増加することで、LS差圧Pls2に基づいて設定される目標補償差圧が小さくなるように補正され、流量制御弁6cの前後差圧が小さくなるように制御される。これにより図4に示すように、旋回モータ3cの負荷圧Plが増加するにしたがって流量制御弁6cの通過流量(旋回モータ−3cの供給流量)が減少するよう制御される。この負荷依存特性の原理は特許文献2(特許第3564911号公報)に詳しい。このように旋回モータ3c駆動用の圧力補償弁7cに負荷依存特性を持たせることにより、慣性の大きな上部旋回体を駆動する旋回モータにロードセンシング制御により圧油を供給する際に、旋回モータ3cに供給される圧油の流量と圧力が激しく周期的に増減する、いわゆるハンチングの発生が防止され、操作性が損なわれることを防止することができる。
再び図1に戻り、アンロード弁115には、第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1がバネと同じ側に導かれ、第1圧油供給路105の圧力がアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧Plmax1にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第1圧油供給路105の圧油をタンクに戻し、第1圧油供給路105の圧力がアンロード弁セット圧よりも高くならないように制御する。
アンロード弁215には、第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2がバネと同じ側に導かれ、第2圧油供給路205の圧力がアクチュエータ3a,3b,3c,3gの最高負荷圧Plmax2にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第2圧油供給路205の圧油をタンクに戻し、第2圧油供給路205の圧力がアンロード弁セット圧よりも高くならないように制御する。
アンロード弁315には、第3負荷圧検出回路133によって検出された最高負荷圧Plmax3がバネと同じ側に導かれ、第3圧油供給路305の圧力がアクチュエータ3a,3e,3hの最高負荷圧Plmax3にバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第3圧油供給路305の圧油をタンクに戻し、第3圧油供給路305の圧力がアンロード弁セット圧よりも高くならないように制御する。
コントロールバルブユニット4は、更に、上流側が絞り43を介してパイロット圧油供給路31b(後述)に接続され下流側が操作検出弁8a,8b,8c,8d,8f,8g,8i,8jを介してタンクに接続された走行複合操作検出油路53と、この走行複合操作検出油路53によって生成される操作検出圧に基づいて切り換わる第1切換弁40(合流遮断弁)、第2切換弁146及び第3切換弁246とを更に備えている。
走行複合操作検出油路53は、左走行モータであるアクチュエータ3f(以下適宜左走行モータ3fという)及び/又は右走行モータであるアクチュエータ3g(以下適宜右走行モータ3gという)と、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205に接続される左右走行モータ以外のアクチュエータ3a,3b,3c,3dの少なくとも1つとを同時で駆動する走行複合操作でないときは、少なくとも操作検出弁8b,8c,8d,8f,8g,8i,8jのいずれかを介してタンクに連通することで油路53の圧力がタンク圧となり、当該走行複合操作時は、操作検出弁8f,8gと、操作検出弁8b,8c,8d,8i,8jのいずれかがそれぞれ対応する流量制御弁と一緒にストロークしてタンクとの連通が遮断されることで、油路53にパイロット圧油供給路31bのパイロット圧Ppilotと等しい圧力を操作検出圧(操作検出信号)として生成する。
第1切換弁40(合流遮断弁)は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置(遮断位置)にあって、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205の連通を遮断し、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置(連通位置)に切り替わって、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205を連通させる。
第2切換弁146は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置にあって、タンク圧を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導き、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置に切り替わって、第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1(第1圧油供給路105に接続されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧)を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導く。
第3切換弁246は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置にあって、タンク圧を第1負荷圧検出回路131の最上流のシャトル弁9fに導き、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置に切り替わって、第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2(第2圧油供給路205に接続されるアクチュエータ3b,3c,3gの最高負荷圧)を第1負荷圧検出回路131の最下流のシャトル弁9fに導く。
ここで、左走行モータ3f及び右走行モータ3gは、同時に駆動されかつそのとき供給流量が同等になることで所定の機能を果たすアクチュエータである。本実施の形態において、左走行モータ3fはスプリットフロー型のメインポンプ102の第1吐出ポート102aから吐出される圧油で駆動され、右走行モータ3gはスプリットフロー型のメインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出される圧油で駆動される。
また、図1において、本実施の形態における油圧駆動装置は、原動機1によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ30と、パイロットポンプ30の圧油供給路31aに接続され、パイロットポンプ30の吐出流量を絶対圧Pgrとして検出する原動機回転数検出弁13と、原動機回転数検出弁13の下流側のパイロット圧油供給路31bに接続され、パイロット圧油供給路31bに一定のパイロット一次圧Ppilotを生成するパイロットリリーフ弁32と、パイロット圧油供給路31bに接続され、ゲートロックレバー24により下流側のパイロット圧油供給路31cをパイロット圧油供給路31bに接続するかタンクに接続するかを切り替えるゲートロック弁100と、ゲートロック弁100の下流側のパイロット圧油供給路31cに接続され、一定のパイロット圧Ppilotに基づいて流量制御弁6a〜6hを切り換え操作するための操作パイロット圧a1,a2;b1,b2;c1,c2;d1,d2;e1,e2;f1,f2;g1,g2;h1,h2を生成する1対のパイロットバルブ(減圧弁)をそれぞれ備えた複数のパイロットバルブユニット60a,60b,60c,60d,60e,60f,60g,60hとを備えている。
原動機回転数検出弁13は、パイロットポンプ30の圧油供給路31aとパイロット圧油供給路31bとの間に接続された流量検出弁50と、その流量検出弁50の前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する差圧減圧弁51とを有している。
流量検出弁50は通過流量(パイロットポンプ30の吐出流量)が増大するにしたがって開口面積を大きくする可変絞り部50aを有している。パイロットポンプ30の吐出油は流量検出弁50の可変絞り部50aを通過してパイロット油路31b側へと流れる。このとき、流量検出弁50の可変絞り部50aには通過流量が増加するにしたがって大きくなる前後差圧が発生し、差圧減圧弁51はその前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する。パイロットポンプ30の吐出流量は原動機1の回転数によって変化するため、可変絞り部50aの前後差圧を検出することにより、パイロットポンプ30の吐出流量を検出することができ、原動機1の回転数を検出することができる。原動機回転数検出弁13(差圧減圧弁51)が出力する絶対圧Pgrは目標LS差圧としてレギュレータ112,212に導かれる。
パイロットバルブユニット60a,60b,60c,60d,60e,60f,60g,60hは、それぞれ、ブーム用の操作装置123a、アーム用の操作装置122a、旋回用の操作装置122b、バケット用の操作装置123b、スイング用の操作装置125、左走行用の操作装置124a、右走行用の操作装置124b、ブレード用の操作装置126に備えられ、オペレータが操作レバーを操作することにより動作し、対応する操作パイロット圧a1,a2;b1,b2;c1,c2;d1,d2;e1,e2;f1,f2;g1,g2;h1,h2を生成するようになっている。
メインポンプ102のレギュレータ112(ポンプ制御装置)は、差圧減圧弁111が出力するLS差圧(絶対圧Pls1)と差圧減圧弁211が出力するLS差圧(絶対圧Pls2)の低圧側を選択する低圧選択弁112aと、低圧選択されたLS差圧と原動機回転数検出弁13の出力圧(絶対圧)Pgrとの差圧により動作するLS制御弁112bであって、LS差圧>出力圧(絶対圧)Pgrのときは入力側をパイロット圧油供給路31bに連通させて出力圧を上昇させ、LS差圧<出力圧(絶対圧)Pgrのときは入力側をタンクに連通させて出力圧を減少させるLS制御弁112bと、LS制御弁112bの出力圧が導かれ、その出力圧の上昇によってメインポンプ102の傾転(容量)を減少させるLS制御ピストン112cと、メインポンプ102の第1及び第2圧油供給路105,205のそれぞれの圧力が導かれ、それらの圧力の上昇によってメインポンプ102の傾転(容量)を減少させるトルク制御(馬力制御)ピストン112e,112dと、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの圧力が減圧弁112gを介して導かれ、その圧力の上昇によってメインポンプ102の傾転(容量)を減少させる減トルクピストン112fとを備えている。
メインポンプ202のレギュレータ212(ポンプ制御装置)は、差圧減圧弁311が出力するLS差圧(絶対圧Pls3)と原動機回転数検出弁13の出力圧(絶対圧)Pgrとの差圧により動作するLS制御弁212bであって、LS差圧>出力圧(絶対圧)Pgrのときは、入力側をパイロット圧油供給路31bに連通させて出力圧を上昇させ、LS差圧<出力圧(絶対圧)Pgrのときは、入力側をタンクに連通させて出力圧を減少させるLS制御弁212bと、LS制御弁212bの出力圧が導かれ、その出力圧の上昇によってメインポンプ202の傾転(容量)を減少させるLS制御ピストン212cと、メインポンプ202の第3圧油供給路305の圧力が導かれ、その圧力の上昇によってメインポンプ202の傾転(容量)を減少させるトルク制御(馬力制御)ピストン212dとを備えている。
レギュレータ112の低圧選択弁112a、LS制御弁112b,LS制御ピストン112cは、第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出圧が、第1及び第2吐出ポート102a,102bから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようメインポンプ102(第1ポンプ装置)の容量を制御する第1ロードセンシング制御部を構成する。レギュレータ212(第2ポンプ制御装置)のLS制御弁212bとLS制御ピストン212cは、第3吐出ポート202aの吐出圧が、第3吐出ポート202aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようメインポンプ202(第2ポンプ装置)の容量を制御する第2ロードセンシング制御部を構成する。
また、レギュレータ112のトルク制御ピストン112d,112eは、第1吐出ポート102aの吐出圧と第2吐出ポート102bの吐出圧の平均圧力が高くなるにしたがってメインポンプ102(第1ポンプ装置)の容量を減少させ、メインポンプ102の吸収トルクが第1制限トルクを超えないように制御する第1トルク制御部を構成し、レギュレータ212のトルク制御ピストン212dは、第3吐出ポート202aの吐出圧が高くなるにしたがってメインポンプ202(第2ポンプ装置)の容量を減少させ、メインポンプ202の吸収トルクが第2制限トルクを超えないように制御する第2トルク制御部を構成する。
減トルクピストン112f及び減圧弁112gは、メインポンプ202の吸収トルクの分だけ第1トルク制御部の第1制限トルクを減らす減トルク制御部を構成する。
図5は、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112e)により得られるトルク制御特性を示す図である。第1吐出ポート102aの吐出圧P1と第2吐出ポート102bの吐出圧P2の平均圧力P12(P1+P2/2)が所定の圧力よりも高くなるにしたがってメインポンプ102の容量が減少し、メインポンプ202からの吐出油でアクチュエータが駆動されていないとき、メインポンプ102の吸収トルクT12が曲線502で示される制限トルクT12max(第1制限トルク)を超えないように制御される。制限トルクT12maxは、バネ112uによって曲線TEで示される原動機1の定格出力トルクTerateよりも小さい任意の値に設定されている。P12maxはメインリリーフ弁114,214の設定圧力によって定まるメインポンプ102の最大吐出圧である。
図6は、第2トルク制御部(トルク制御ピストン212d)により得られるトルク制御特性を示す図である。第3吐出ポート202aの吐出圧P3がトルク制御開始圧力であるP3cよりも高くなるにしたがってメインポンプ202の容量が減少し、メインポンプ202の吸収トルクが曲線602で示される制限トルクT3max(第2制限トルク)を超えないように制御される。制限トルクT3maxはバネ212eによって任意の値に設定されている。P3maxはメインリリーフ弁314の設定圧力によって定まるメインポンプ202の最大吐出圧力である。
レギュレータ112の減圧弁112gは、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧が図6のP3cよりも高い場合に吐出圧をP3cに減圧してトルク制御ピストン112fに導くためのものである。これによりメインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧がP3c以下であるときは、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧が高くなるにしたがって、図5の曲線504で示すように第1トルク制御部の第1制限トルをT12maxからT12max−T3へと減少させる減トルク制御を行い、メインポンプ102の吸収トルクとメインポンプ202の吸収トルクの合計が曲線502の制限トルクT12maxを超えないように制御する。また、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧がP3cよりも高くなると、減圧弁112gはP3cに減圧した圧力をトルク制御ピストン112fに導き、図5の曲線503で示すように、第1トルク制御部の第1制限トルクをT12maxからT12max−T3maxへと減少させる減トルク制御を行い、この場合もメインポンプ102の吸収トルクとメインポンプ202の吸収トルクの合計が曲線502の第1制限トルクT12maxを超えないように制御する。これによりメインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧の全範囲において、メインポンプ102の吸収トルクとメインポンプ202の吸収トルクの合計が曲線502の制限トルクT12maxを超えないように制御する全トルク制御が行われ、原動機1の停止(エンジンストール)を生じさせることなく原動機1の定格出力トルクを有効利用することができる。
図7は、上述した油圧駆動装置が搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
図7において、作業機械としてよく知られている油圧ショベルは、下部走行体101と、上部旋回体109と、スイング式のフロント作業機104を備え、フロント作業機104は、ブーム104a、アーム104b、バケット104cから構成されている。上部旋回体109は下部走行体101に対して旋回モータ3cによって旋回可能である。上部旋回体109の前部にはスイングポスト103が取り付けられ、このスイングポスト103にフロント作業機104が上下動可能に取り付けられている。スイングポスト103はスイングシリンダ3eの伸縮により上部旋回体109に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機104のブーム104a、アーム104b、バケット104cはブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3dの伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体102の中央フレームには、ブレードシリンダ3hの伸縮により上下動作を行うブレード106が取り付けられている。下部走行体101は、走行モータ3f,3gの回転により左右の履帯101a,101bを駆動することによって走行を行う。
上部旋回体109にはキャノピータイプの運転室108が設置され、運転室108内には、運転席121、フロント/旋回用の左右の操作装置122,123(図7では左側のみ図示)、走行用の操作装置124a,124b(図7では左側のみ図示)、スイング用の操作装置125(図1参照)及びブレード用の操作装置126(図1参照)、ゲートロックレバー24等が設けられている。操作装置122,123の操作レバーは中立位置から十字方向を基準とした任意の方向に操作可能であり、左側の操作装置122の操作レバーを前後方向に操作するとき、操作装置122は旋回用の操作装置122b(図1)として機能し、同操作装置122の操作レバーを左右方向に操作するとき、操作装置122はアーム用の操作装置122a(図1)として機能し、右側の操作装置123の操作レバーを前後方向に操作するとき、操作装置123はブーム用の操作装置123a(図1)として機能し、同操作装置123の操作レバーを左右方向に操作するとき、操作装置123はバケット用の操作装置123b(図1)として機能する。
〜動作〜
次に、図1に示した本実施の形態の動作を説明する。
まず、本実施の形態の基本動作について説明する。
原動機1によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ30から吐出された圧油は、圧油供給路31aに供給される。圧油供給路31aには原動機回転数検出弁13が接続されており、原動機回転数検出弁13は流量検出弁50と差圧減圧弁51によりパイロットポンプ30の吐出流量に応じた流量検出弁50の前後差圧を絶対圧Pgr(目標LS差圧)として出力する。原動機回転数検出弁13の下流にはパイロットリリーフ弁32が接続されており、パイロット圧油供給路31bに一定の圧力(パイロット一次圧)Ppiを生成している。
スプリットフロー型のメインポンプ102は、第1及び第2の2つの吐出ポート102a,102bを有しているが、容量可変部材(斜板)は1つであるため、2つの吐出ポート102a,102bの吐出流量は常に同じである。
また、走行複合操作以外の複合操作においては、第1切換弁40(合流遮断弁)は図示下側の第1位置(遮断位置)にあって第1圧油供給路105と第2圧油供給路205の連通を遮断する。第2切換弁146は図示下側の第1位置にあってタンク圧を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導くことで、第2負荷圧検出回路132による負荷圧の検出対象をメインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータ3a,3b,3c,3gに限定し、第3切換弁246は図示下側の第1位置にあってタンク圧を第1負荷圧検出回路131の最上流のシャトル弁9fに導くことで、第1負荷圧検出回路131による負荷圧の検出対象をメインポンプ102の第1吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fに限定する。これにより第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出油をそれぞれのアクチュエータに独立して供給することが可能となる(2ポンプロードセンシングシステム)。
一方、走行複合操作においては、走行複合操作検出油路53の圧力はパイロット圧Ppilotと等しくなり、第1切換弁40(合流遮断弁)は圧力Ppilotによって図示上側の第2位置(連通位置)に切り替わって、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205を連通させる。第2及び第3切換弁146,246も走行複合操作検出油路53の圧力Ppilotによって図示上側の第2位置に切り替わり、第2切換弁146は第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1(第1圧油供給路105に接続されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧)を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導き、第3切換弁246は、第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2(第2圧油供給路205に接続されるアクチュエータ3b,3c,3gの最高負荷圧)を第1負荷圧検出回路131の最下流のシャトル弁9fに導く。これにより第2負荷圧検出回路132による負荷圧の検出対象はメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動される全てのアクチュエータ3a,3b,3c,3d,3f,3gへと拡大され、第1負荷圧検出回路131による負荷圧の検出対象もメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動される全てのアクチュエータ3a,3b,3c,3d,3f,3gへと拡大される。これにより走行複合操作でメインポンプ102の第1吐出ポート102a側の油圧回路と第2吐出ポート12b側の油圧回路は統合し、第1及び第2吐出ポート102a,102bは1ポンプとして機能することが可能となる(1ポンプロードセンシングシステム)。
次に、幾つかの代表的な特定動作について説明する。
(a)全ての操作装置の操作レバーが中立の場合
全ての操作装置の操作レバーが中立なので、パイロットバルブユニット60a〜60hが生成する全ての操作パイロット圧a1,a2〜h1,h2はタンク圧であり、全ての流量制御弁6a〜6kが中立位置となる。全ての流量制御弁6a〜6kが中立位置なので、第1負荷圧検出回路131,第2負荷圧検出回路132,第3負荷圧検出回路133は、それぞれ、最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3としてタンク圧を検出する。この最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3は、それぞれ、アンロード弁115,215,315と差圧減圧弁111,211,311に導かれる。
最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3がアンロード弁115,215,315に導かれることによって、第1、第2及び第3圧油供給路105,205,305の圧力P1,P2,P3は、最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3にアンロード弁115,215,315のそれぞれのバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)に保たれる。ここで、最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3は上述したようにそれぞれタンク圧であり、タンク圧が0MPaであると仮定すると、アンロード弁セット圧はバネの設定圧力に等しくなり、第1、第2及び第3圧油供給路105,205,305の圧力P1,P2,P3はバネの設定圧力に保たれる。通常、アンロード弁115,215,315のバネの設定圧力は原動機回転数検出弁13の出力圧Pgrよりも若干高く設定されており、第1、第2及び第3圧油供給路105,205,305の圧力P1,P2,P3は原動機回転数検出弁13の出力圧Pgrよりも若干高い圧力に保たれる(P1>Pgr,P2>Pgr,P3>Pgr)。
差圧減圧弁111,211,311は、それぞれ、第1、第2及び第3圧油供給路105,205,305の圧力P1,P2,P3と最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3(タンク圧)との差圧(LS差圧)を絶対圧Pls1,Pls2,Pls3として出力する。最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3は上述したようにそれぞれタンク圧であり、タンク圧が0であると仮定すると、Pls1=P1−Plmax1=P1>Pgr,Pls2=P2−Plmax2=P2>Pgr,Pls3=P3−Plmax3=P3>Pgrとなる。Pls1,Pls2はレギュレータ112の低圧選択弁112aに、Pls3はレギュレータ212のLS制御弁212bにそれぞれ導かれる。
レギュレータ112において、低圧選択弁112aに導かれたLS差圧Pls1,Pls2はそれらの低圧側が選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls2を比較する。この場合、Pls1,Pls2のいずれが選択されても、Pls1又はPls2>Pgrであるので、LS制御弁112bは図1で左方向に押されて右側の位置に切り換わり、パイロットリリーフ弁32によって生成される一定のパイロット圧をLS制御ピストン112cに導く。LS制御ピストン112cに圧油が導かれるので、メインポンプ102の容量は最小に保たれる。
一方、レギュレータ212において、LS制御弁212bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls3を比較する。この場合も、Pls3>Pgrであるので、LS制御弁212bは図1で右方向に押されて左側の位置に切り換わり、パイロットリリーフ弁32によって生成される一定のパイロット圧をLS制御ピストン212cに導く。LS制御ピストン212cに圧油が導かれるので、メインポンプ202の容量は最小に保たれる。
(b)ブーム用の操作装置の操作レバーを入力した場合(微操作)
例えばブーム用の操作装置の操作レバー(ブーム操作レバー)をブームシリンダ3aが伸長する向き、つまりブーム上げ方向に微操作すると、ブーム用のパイロットバルブユニット60aはその操作量に応じた操作パイロット圧a1を生成し、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6i,6kが図1で上方向に途中のストロークまで切り換わる。
ブーム操作レバーが微操作で、流量制御弁6a,6iのストロークが図2CのS2以下の場合、ブーム操作レバーの操作量(操作パイロット圧)が増加していくと、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積は0からAA1に増加していく。一方、アシスト駆動用の流量制御弁6i,6kのメータイン通路の開口面積は0に維持される。
このため流量制御弁6aが図1で上方向に切り換わると、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧が流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315と差圧減圧弁311に導かれる。最高負荷圧Plmax3がアンロード弁315に導かれることによって、アンロード弁315はそのセット圧を、最高負荷圧Plmax3(ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力を加算した圧力に上昇させ、第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax3が差圧減圧弁311に導かれることによって、差圧減圧弁311は第3圧油供給路305の圧力P3と最高負荷圧Plmax3との差圧を絶対圧Pls3として出力し、このPls3はLS制御弁212bに導かれる。LS制御弁212bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls3を比較する。
ブーム操作レバーをブーム上げ方向に入力した直後は、第3圧油供給路305の圧力の方がブームシリンダ3aの負荷圧よりも低いので、差圧減圧弁311が出力する絶対圧Pls3はタンク圧に等しくなり、Pls3<Pgrの関係となるので、LS制御弁212bは図1で左方向に切り換わり、LS制御ピストン212cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ202の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls3=Pgrになるまで継続する。これによりブーム操作レバーの入力量(流量制御弁6aの開口面積AA1)に応じた流量の圧油がブームシリンダ3aのボトム側に供給され、ブームシリンダ3aは伸長方向に駆動される。このようにメインポンプ202は、流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じて、必要な流量を必要な分だけ吐出するいわゆるロードセンシング制御を行う。
一方、流量制御弁6i,6kの負荷ポートに接続され第1及び第2負荷圧検出回路131,132は最高負荷圧Plmax1,Plmax2としてタンク圧を検出する。このためメインポンプ102の吐出流量は全ての操作レバーが中立の場合と同様に最小に保たれる。
(c)ブーム操作レバーを入力した場合(フル操作)
例えばブーム操作レバーをブームシリンダ3aが伸長する向き、つまりブーム上げ方向にフルに操作した場合、ブーム用のパイロットバルブユニット60aはその操作量に応じて操作パイロット圧a1を生成し、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6i,6kが図1で上方向にフルストロークで切り換わる。このとき、図2Cにおいて、流量制御弁6a,6i,6kのスプールストロークはS2,S5以上となり、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はAA1に保たれ、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はAA2となり、アシスト駆動用の流量制御弁6kのメータイン通路の開口面積はAA3となる。
前述したように、メインポンプ202の流量は、流量制御弁6aを介して検出されるブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧に応じてPls3がPgrに等しくなるようにロードセンシング制御され、メインポンプ202からブームシリンダ3aのボトム側に流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じた流量が供給される。
一方、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧は、流量制御弁6i,6kの負荷ポートを介して第1及び第2負荷圧検出回路131,132によって最高負荷圧Plmax1,Plmax2として検出され、アンロード弁115,215と差圧減圧弁111,211に導かれる。最高負荷圧Plmax1がアンロード弁115に導かれることによって、アンロード弁115はそのセット圧を上昇させ、第1圧油供給路105の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。同様に、最高負荷圧Plmax2がアンロード弁215に導かれることによって、アンロード弁215は、そのセット圧を最高負荷圧Plmax2(ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力を加算した圧力に上昇させ、第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。
また、最高負荷圧Plmax1が差圧減圧弁111に導かれることによって、差圧減圧弁111は第1圧油供給路105の圧力P1と最高負荷圧Plmax1との差圧を絶対圧Pls1として出力し、最高負荷圧Plmax2が差圧減圧弁211に導かれることによって、差圧減圧弁211は第2圧油供給路205の圧力P2と最高負荷圧Plmax2との差圧を絶対圧Pls2として出力する。Pls1とPls2はレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれ、Pls1とPls2のいずれかが低圧側として選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls1又はPls2を比較する。
ブーム操作レバーをブーム上げ方向に入力した直後は、第1及び第2圧油供給路105,205の圧力の方がブームシリンダ3aの負荷圧よりも低いので、差圧減圧弁111,211が出力する絶対圧Pls1,Pls2はタンク圧に等しくなり、Pls1,Pls2<Pgrの関係となる。よって、LS制御弁112bは図1で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls1又はPls2=Pgrになるまで継続する。これによりブームシリンダ3aのボトム側に、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bから流量制御弁6i,6kの合計の開口面積AA2+AA3(要求流量)に応じた流量の圧油が合流して供給される。
このようにブーム操作レバーをブーム上げ方向にフルに操作した場合には、流量制御弁6a,6i,6kの合計の開口面積はAA1+AA2+AA3となり、ブームシリンダ3aのボトム側には、メインポンプ202とメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bから流量制御弁6a,6i,6kの合計の開口面積AA1+AA2+AA3(要求流量)に見合った流量の圧油が供給され、ブームシリンダ3aはこれらの圧油により伸長方向に駆動される。これにより良好なブーム上げ速度を確保することができる。
また、このとき、ブームシリンダ3aの負荷圧が上昇し、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧が増加するとき、メインポンプ202の吸収トルクが図6の曲線602で示される制限トルクT3max以上になろうとする場合は、第2トルク制御部(トルク制御ピストン212d)がメインポンプ202の容量を減少させ、メインポンプ202の吸収トルクが制限トルクT3maxを超えないように制御される。
メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧は減圧弁112gを介して減トルクピストン112fに導かれ、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112e)の制限トルクはバネ112uで設定された図5の曲線502で示される制限トルクT12maxから図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3へと減少するよう減トルク制御される。
これによりブームシリンダ3aの負荷圧が上昇し、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出圧が増加するとき、メインポンプ102の吸収トルクが図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3以上になろうとする場合は、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112e)がメインポンプ102の容量を減少させ、メインポンプ102の吸収トルクが制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3を超えないように制御する。
このようにメインポンプ202は、図6の曲線602で示される制限トルクT3maxの範囲内で、流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行い、メインポンプ102は、図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3の範囲内で、流量制御弁6i,6kの開口面積AA2+AA3(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行う。これによりメインポンプ102とメインポンプ202の合計の吸収トルク制限トルクT12maxを超えないように制御され(全トルク制御)、原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
(d)アーム操作レバーを入力した場合(微操作)
例えばアーム用の操作装置の操作レバー(アーム操作レバー)をアームシリンダ3bが伸長する向き、つまりアームクラウド方向に微操作すると、アーム用のパイロットバルブユニット60bはその操作量に応じて操作パイロット圧b1を生成し、アームシリンダ3b駆動用の流量制御弁6b,6jが図1で上方向に途中のストロークまで切り換わる。
アーム操作レバーが微操作で、流量制御弁6b,6jのストロークが図2BのS2以下の場合、アーム操作レバーの操作量(操作パイロット圧)が増加していくと、メイン駆動用の流量制御弁6bのメータイン通路の開口面積はゼロからA1に増加していく。一方、アシスト駆動用の流量制御弁6jのメータイン通路の開口面積はゼロに維持される。
流量制御弁6bが図1で下方向に切り換わると、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧が流量制御弁6bの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132によって最高負荷圧Plmax2として検出され、アンロード弁215と差圧減圧弁211に導かれる。最高負荷圧Plmax2がアンロード弁215に導かれることによって、アンロード弁215はそのセット圧を、最高負荷圧Plmax2(アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力を加算した圧力に上昇させ、第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax2が差圧減圧弁211に導かれることによって、差圧減圧弁211は第2圧油供給路205の圧力P2と最高負荷圧Plmax2との差圧を絶対圧Pls2として出力し、このPls2はレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。低圧選択弁112aはPls1とPls2の低圧側を選択する。
アーム操作レバーをアームクラウド方向に入力した直後は、第2圧油供給路205の圧力の方がアームシリンダ3bの負荷圧よりも低いので、差圧減圧弁211が出力する絶対圧Pls2はタンク圧に等しくなり、Pls2<Pgrの関係となる。一方、このとき、Pls1は操作レバーの中立時と同様、Pgrよりも大きな値に保たれている(Pls1>Pgr)。よって、低圧選択弁112aはPls2を低圧側として選択し、Pls2がLS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls2を比較する。この場合、上記のようにPls2<Pgrであるので、LS制御弁112bは図1で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls2=Pgrになるまで継続する。これによりメインポンプ102の第2吐出ポート102bから流量制御弁6bの開口面積A1(要求流量)に応じた流量の圧油がアームシリンダ3bのボトム側に供給され、アームシリンダ3bは伸長方向に駆動される。このようにメインポンプ102は、流量制御弁6bの開口面積A1(要求流量)に応じて、必要な流量を必要な分だけ吐出するいわゆるロードセンシング制御を行う。
このとき、第1圧油供給路105に、第2圧油供給路205に供給される圧油と同じ流量の圧油が供給され、その圧油は余剰流量としてアンロード弁115を介してタンクに戻される。ここで、第1負荷圧検出回路131は最高負荷圧Plmax1としてタンク圧を検出するため、アンロード弁115のセット圧はバネの設定圧力に等しくなり、第1圧油供給路105の圧力P1はバネの設定圧力の低圧に保たれる。これにより余剰流量がタンクに戻るときのアンロード弁115の圧損が低減し、エネルギーロスの少ない運転が可能となる。
(e)アーム操作レバーを入力した場合(フル操作)
例えばアーム操作レバーをアームシリンダ3bが伸長する向き、つまりアームクラウド方向にフルに操作した場合、アーム用のパイロットバルブユニット60bはその操作量に応じて操作パイロット圧b1を生成し、アームシリンダ3b駆動用の流量制御弁6b,6jが図1で上方向にフルストロークで切り換わる。このとき、図2Bにおいて、流量制御弁6b,6jのスプールストロークはS2以上となり、流量制御弁6bのメータイン通路の開口面積はA1に保たれ、流量制御弁6jのメータイン通路の開口面積はA2となる。
上記(d)で説明したように、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧が流量制御弁6bの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132によって最高負荷圧Plmax2として検出され、アンロード弁215はそのセット圧を上昇させ、アンロード弁215は第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax2が差圧減圧弁211に導かれることによって絶対圧Pls2が出力され、レギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。
一方、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧は、流量制御弁6jの負荷ポートを介して第1負荷圧検出回路131によって最高負荷圧Plmax1(=Plmax2)として検出され、アンロード弁115と差圧減圧弁111に導かれる。最高負荷圧Plmax1がアンロード弁115に導かれることによって、アンロード弁115はそのセット圧を上昇させ、第1圧油供給路105の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1が差圧減圧弁111に導かれることによって絶対圧Pls1(=Pls2)が出力され、レギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。低圧選択弁112aではPls1とPls2のいずれかが低圧側として選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls2を比較する。
アーム操作レバーをアームクラウド方向に入力した直後は、第1及び第2圧油供給路105,205の圧力の方がアームシリンダ3bの負荷圧よりも低いので、差圧減圧弁111,211が出力するLS差圧であるPls1,Pls2はタンク圧に等しくなり、Pls1,Pls2<Pgrの関係となる。よって、LS制御弁112bは図1で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls1又はPls2=Pgr になるまで継続する。これによりメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bからアームシリンダ3bのボトム側に流量制御弁6b,6jの合計の開口面積A1+A2(要求流量)に応じた流量の圧油が合流して供給され、アームシリンダ3bは第1及び第2吐出ポート102a,102bからの合流した圧油により伸長方向に駆動される。
また、このとき、メインポンプ202に係わるアクチュエータは駆動されていないので、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112e)の制限トルクは図5の曲線502で示される制限トルクT12maxにある。この状態でアームシリンダ3bの負荷圧が上昇し、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出圧が増加するとき、メインポンプ102の吸収トルクが図5の曲線502で示される制限トルクT12max以上になろうとする場合は、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112e)がメインポンプ102の容量を減少させ、メインポンプ102の吸収トルクが図5の曲線502で示される制限トルクT12maxを超えないように制御する。これによりメインポンプ102とメインポンプ202の合計の吸収トルク制限トルクT12maxを超えないように制御され、原動機1の停止を防止することができる。
このようにメインポンプ102は、図5の曲線502で示される制限トルクT12maxの範囲内で、流量制御弁6b,6jの開口面積A1+A2(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行う。
(f)左右走行操作レバーを入力した場合(直進走行)
直進走行を行うため、左右の走行操作レバーを前進方向に同じ量だけ操作すると、走行用のパイロットバルブユニット60f,60gはその操作量に応じて操作パイロット圧f1,g1を生成し、左走行モータ3f駆動用の流量制御弁6fと右走行モータ3g駆動用の流量制御弁6gがそれぞれ図中で上方向に切り換わり、左右の走行操作レバーをフル操作したときは、図2Aに示したように、流量制御弁6f,6gのメータイン通路の開口面積(要求流量)はそれぞれ同じA3となる。
また、上記(e)のアーム操作レバーをフル操作した場合と同様、走行モータ3fの負荷圧が流量制御弁6fの負荷ポートを介して第1負荷圧検出回路131によって最高負荷圧Plmax1として検出され、走行モータ3gの負荷圧が流量制御弁6gの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132によって最高負荷圧Plmax2として検出され、アンロード弁115,215はセット圧を上昇させ、それぞれ第1及び第2圧油供給路105,205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1,Plmax2がそれぞれ差圧減圧弁111,211に導かれることによって絶対圧Pls1,Pls2が出力され、レギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。
レギュレータ112において、低圧選択弁112aに導かれたPls1,Pls2はその低圧側が選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bはPls1とPls2の低圧側が目標LS差圧Pgrと等しくなるようにメインポンプ102の容量(流量)を制御する。
ここで、前述のように、左走行モータ3fの要求流量と右走行モータ3gの要求流量は等しく、メインポンプ102はその要求流量に見合った流量となるまで容量(流量)を増加させる。これによりメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bから左走行モータ3fと右走行モータ3gに走行操作レバーの入力に応じた流量が供給され、走行モータ3f,3gは前進方向に駆動される。このとき、メインポンプ102はスプリットフロータイプであり、第1圧油供給路105に供給される流量と第2圧油供給路205に供給される流量は等しいため、左右の走行モータには常に等量の圧油が供給され、確実に直進走行を行わせることができる。
また、メインポンプ102の第1及び第2圧油供給路105,205のそれぞれの圧力P1,P2がトルク制御(馬力制御)ピストン112d,112eに導かれているため、走行モータ3f、3gの負荷圧が上昇した場合は、圧力P1,P2の平均圧力で馬力制御が行われる。そしてこの場合も、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bから等量の圧油が左右の走行モータに供給されるため、第1及び第2圧油供給油路105,205のいずれにも余剰流量を発生させずに、直進走行を行うことができる。
(g)水平均し動作をした場合
水平均し動作はブーム上げ微操作とアームクラウドのフル操作との組み合わせとなる。アクチュエータとしては、アームシリンダ3bが伸長し、ブームシリンダ3aが伸長する動作である。
水平均し動作では、ブーム上げ微操作なので、上記(b)で説明したように、ブームシリンダ3aのメイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はAA1となり、アシスト駆動用の流量制御弁6i,6kのメータイン通路の開口面積は0に維持される。ブームシリンダ3aの負荷圧は流制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315のセット圧が上昇して、アンロード弁315は第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、メインポンプ202は、流量制御弁6aを介して検出されるブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧に応じてPls3がPgrに等しくなるようにロードセンシング制御され、メインポンプ202からブームシリンダ3aのボトム側に流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じた流量が供給され、これによりブームシリンダ3aはメインポンプ202からの圧油により伸長方向に駆動される。
一方、アーム操作レバーはフル入力となるので、上記(e)で説明したように、アームシリンダ3bのメイン駆動用の流量制御弁6bとアシスト駆動用の流量制御弁6jのそれぞれのメータイン通路の開口面積はA1,A2となる。アームシリンダ3bの負荷圧は、流量制御弁6b,6jの負荷ポートを介して第1及び第2負荷圧検出回路131,132によって最高負荷圧Plmax1,Plmax2(Plmax1=Plmax2)として検出され、アンロード弁115,215はそのセット圧を上昇させ、それぞれ第1及び第2圧油供給路105,205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1,Plmax2がメインポンプ102のレギュレータ112にフィードバックされ、メインポンプ102は流量制御弁6b,6jの開口面積A1+A2(要求流量)に応じて流量が増加するようロードセンシング制御され、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bからアームシリンダ3bのボトム側にアーム操作レバーの入力量(開口面積A1+A2)に応じた流量の圧油が供給され、これによりアームシリンダ3bは第1及び第2吐出ポート102a,102bからの合流した圧油により伸長方向に駆動される。
また、このときは、上記(c)の場合と同様、メインポンプ202は、図6の曲線602で示される制限トルクT3maxの範囲内で、流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行い、メインポンプ102は、図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3の範囲内で、流量制御弁6i,6kの開口面積AA2+AA3(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行う。これによりメインポンプ102とメインポンプ202の合計の吸収トルク制限トルクT12maxを超えないように制御され、原動機1の停止を防止することができる。
ここで、水平均し動作の場合、通常、アームシリンダ3bの負荷圧は低く、ブームシリンダ3aの負荷圧は高いことが多い。しかし、水平均し動作では、上記のようにブームシリンダ3aを駆動する油圧ポンプはメインポンプ202、アームシリンダ3bを駆動する油圧ポンプはメインポンプ102というように、負荷圧の異なるアクチュエータを駆動するポンプが別個になるので、1つのポンプで負荷圧の異なる複数のアクチュエータを駆動する従来技術(特許文献1)の1ポンプロードセンシングシステム、或いは走行単独或いは走行とドーザ装置の複合操作以外の複合操作で分・合流切換弁を合流位置に切り換えてスプリットフロー型の油圧ポンプの2つの吐出ポートを1ポンプとして機能させる従来技術(特許文献2)のロードセンシングシステムのように、低負荷側の圧力補償弁7bでのメータイン圧損による無駄なエネルギー消費を発生させることはない。
(h)旋回ブーム上げをした場合
旋回用の操作装置の操作レバー(旋回操作レバー)のフル操作とブーム操作レバーのブーム上げ方向のフル操作を同時に行った場合を考える。
まず、ブーム上げがフル操作なので、上記(c)で説明したように、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はAA1に保たれ、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はAA2となり、アシスト駆動用の流量制御弁6kのメータイン通路の開口面積はAA3となる。
また、旋回もフル操作なので、旋回用の流量制御弁6cが図1で上方向にフルストロークで切り換わり、図2Aに示したように、流量制御弁6cのスプールストロークはS3付近となり、流量制御弁6cのメータイン通路の開口面積はA3となる。
上記(b)及び(c)で説明したように、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧は流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315と差圧減圧弁311に導かれる。アンロード弁315はそのセット圧を上昇させ、第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。差圧減圧弁311は第3圧油供給路305の圧力P3と最高負荷圧Plmax3との差圧を絶対圧Pls3として出力する。絶対圧Pls3はメインポンプ202のレギュレータ212に導かれる。メインポンプ202は、Pls3がPgrに等しくなるようにロードセンシング制御され、メインポンプ202からブームシリンダ3aのボトム側に流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じた流量が供給される。
また、上記(c)で説明したように、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧は流量制御弁6iの負荷ポートを介して第1負荷圧検出回路131によって最高負荷圧Plmax1として検出され、アンロード弁115と差圧減圧弁111に導かれる。アンロード弁115はそのセット圧を上昇させ、第1圧油供給路105の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。差圧減圧弁111は第1圧油供給路105の圧力P1と最高負荷圧Plmax1との差圧を絶対圧Pls1として出力し、絶対圧Pls1はメインポンプ102のレギュレータ112に導かれる。
更に、ブームシリンダ3aボトム側の負荷圧は、流量制御弁6kの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132のシャトル弁9kに導かれ、旋回モータ3cの負荷圧が、流量制御弁6cの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132のシャトル弁9cに導かれ、更にシャトル弁9kに導かれる。シャトル弁9kではブームシリンダ3aの負荷圧と旋回モータ3cの負荷圧の高圧側が選択され、最高負荷圧Plmax2としてアンロード弁215と差圧減圧弁211に導かれる。アンロード弁215はそのセット圧を上昇させ、第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。差圧減圧弁211は第2圧油供給路205の圧力P2と最高負荷圧Plmax2との差圧を絶対圧Pls2として出力し、絶対圧Pls2はメインポンプ102のレギュレータ112に導かれる。
ここで、旋回ブーム上げが平地での操作であると仮定すると、旋回とブーム上げの操作レバーを入力する前は、旋回モータ3cの負荷圧はほぼタンク圧に等しい。一方、ブームシリンダ3aはフロント作業機104を支持しているため、ブームシリンダ3aのボトム側には保持圧が発生している。このためブームシリンダ3aの負荷圧をPlaとし、旋回モータ3cの負荷圧をPlcとすると、旋回とブーム上げの操作レバーを入力した直後の最初の時点ではPla>Plcである。したがって、シャトル弁9kではブームシリンダ3aの負荷圧Plaが選択される。
その後、流量制御弁6c,6kが開弁し、メインポンプ102の第2吐出ポート102bの吐出油がブームシリンダ3aと旋回モータ3cに供給されると、旋回モータ3cの負荷圧Plcは旋回リリーフ弁73a,73bのセット圧Pscまで急激に上昇する(後述)。このため旋回ブーム上げの初期動作ではPla<Plcとなり、シャトル弁9kでは旋回モータ3cの負荷圧Plcが最高負荷圧Plmax2として選択される。
レギュレータ112においては、差圧減圧弁111,211が出力する絶対圧Pls1,Pls2が低圧選択弁112aに導かれ、そのうちの低い方が選択され、LS制御弁112bの図1で右端に作用する。
旋回とブーム上げの操作レバーを入力した直後は、第1及び第2圧油供給路105,205の圧力の方がブームシリンダ3aの負荷圧Pla或いは旋回モータ3cの負荷圧Plcよりも低いので、差圧減圧弁111,211が出力するLS差圧であるPls1,Pls2はタンク圧に等しくなる。よって、低圧選択弁112aではPls1とPls2のいずれかが低圧側として選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとフィードバックLS差圧であるPls2を比較する。この場合、上記のようにPls1,Pls2はタンク圧に等しく、Pls1,Pls2<Pgr であるので、LS制御弁112bは図1で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに排出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls1又はPls2=Pgr になるまで継続する。これによりメインポンプ102の第1吐出ポート102aからブームシリンダ3aのボトム側に流量制御弁6iの開口面積AA2(要求流量)に応じた流量の圧油がチェック弁71を介して供給される。また、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから旋回モータ3cに流量制御弁6cの開口面積A3(要求流量)に応じた流量の圧油が供給されるとともに、ブームシリンダ3aのボトム側にも流量制御弁6kの開口面積AA3(要求流量)に応じた流量の圧油がチェック弁72を介して供給される。
このようにブームシリンダ3aのボトム側には、メインポンプ202とメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bから流量制御弁6a,6i,6kの合計の開口面積AA1+AA2+AA3(要求流量)に見合った流量の圧油が供給され、ブームシリンダ3aはこれらの圧油により伸長方向に駆動される。旋回モータ3cには、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出された流量制御弁6cの開口面積A3(要求流量)に応じた流量の圧油が供給される。
また、このときは、上記(c)の場合と同様、メインポンプ202は、図6の曲線602で示される制限トルクT3maxの範囲内で、流量制御弁6aの開口面積AA1(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行い、メインポンプ102は、図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12max−T3max或いはT12max−T3の範囲内で、流量制御弁6c,6i,6kの開口面積A3+AA2+AA3(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行う。これによりメインポンプ102とメインポンプ202の合計の吸収トルク制限トルクT12maxを超えないように制御され、原動機1の停止を防止することができる。
ここで、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから第2圧油供給路205を介して流量制御弁6c,6kに供給される圧油は、圧力補償弁7c,7kの働きにより、流量制御弁6c,6kのそれぞれのメータイン通路の開口面積の比と図4に示した旋回用圧力補償弁7cの負荷依存特性により分流され、それぞれ旋回モータ3cとブームシリンダ3aに供給される。
また、このとき、Pls1<Pls2でPls1がPgrに等しくなるようにメインポンプ102がロードセンシング制御され、第2圧油供給路205に余剰流量が発生する場合は、余剰の圧油はアンロード弁215から排出される。
更に、旋回ブーム上げは走行複合操作以外の複合操作であるので、第1切換弁40は遮断位置にあり、第2吐出ポート102bの吐出油の一部は流量制御弁6iの下流側で第1吐出ポート102aからの圧油に合流してブームシリンダ3aに供給される。これによりブームシリンダ3aに圧油を供給する第1吐出ポート102aの吐出圧はアンロード弁115によってブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧をベースとした低めの圧力(アンロード弁115のセット圧、すなわちブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧にバネの設定圧力(Pgrよりも若干高い圧力)を加算した圧力)に保たれ、従来技術(特許文献1及び2)のように低負荷側の圧力補償弁7iでのメータイン圧損による無駄なエネルギー消費を発生させることはない。
(i)走行とブーム上げを同時操作した場合
例えば左右の走行操作レバーとブーム操作レバーのブーム上げ操作を同時に行った場合、走行モータ3f,3g駆動用の流量制御弁6f,6gとブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6iが図中で上方向に切り換わる。
ブーム操作レバーが微操作で、流量制御弁6a,6iのストロークが図2CのS2以下の場合、ブーム操作レバーの操作量(操作パイロット圧)が増加していくと、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積は0からAA1に増加していくが、アシスト駆動用の流量制御弁6i,6kのメータイン通路の開口面積は0に維持される。
また、このときは走行複合操作であるため走行複合操作検出油路53のパイロット圧Ppilotと等しい圧力によって第1〜第3切換弁40,146,246は図示の位置から切り換わり、スプリットフロー型のメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート120a,102bは1ポンプとして機能する。このとき走行モータ3f,3gの高圧側の負荷圧が第1負荷圧検出回路131及び第2負荷圧検出回路132のそれぞれで最高負荷圧Plmax1, Plmax2として検出され、アンロード弁115,215はそれぞれ第1及び第2圧油供給路105,205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1, Plmax2が差圧減圧弁111,211に導かれることによって、絶対圧Pls1,Pls2が出力され、レギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。
レギュレータ112において、低圧選択弁112aに導かれたPls1とPls2はその低圧側が選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bはPls1とPls2の低圧側が目標LS差圧Pgrと等しくなるようにメインポンプ102の容量(流量)を制御し、その制御された流量の圧油がメインポンプ102から第1及び第2圧油供給路105,205に吐出される。メインポンプ102の第1吐出ポート102aの吐出油と第2吐出ポート102bの吐出油は合流し、その合流した圧油が圧力補償弁7f,7g及び流量制御弁6f,6gを介して左走行モータ3fと右走行モータ3gに供給される。
一方、このとき、ブーム操作レバーが微操作なので、上記(b)で説明したように、ブームシリンダ3aのメイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はA1となり、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積は0に維持される。ブームシリンダ3aの負荷圧は流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315は第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax3がメインポンプ202のレギュレータ212にフィードバックされ、メインポンプ202の容量(流量)が流量制御弁6aの要求流量(開口面積)に応じて増加し、メインポンプ202の第3吐出ポート202aからブーム操作レバーの入力に応じた流量がブームシリンダ3aボトム側に供給される。
また、走行とブームの複合操作でブーム操作レバーをフル操作した場合は、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6i,6kが図1で上方向にフルストロークで切り換わり、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積は図2CのAA1に保たれ、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積は図2CのAA2となり、アシスト駆動用の流量制御弁6kのメータイン通路の開口面積は図2CのAA3となる。このためメインポンプ202側においては、上述したブーム微操作の場合と同様、メインポンプ202の吐出油がブームシリンダ3aに供給される。一方、メインポンプ102側においてはスプリットフロー型のメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート120a,102bは1ポンプとして機能し、ブームシリンダ3aと走行モータ3f,3gの高圧側の負荷圧が第1負荷圧検出回路131及び第2負荷圧検出回路132のそれぞれで最高負荷圧Plmax1, Plmax2として検出され、アンロード弁115,215はそれぞれ第1及び第2圧油供給路105,205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、差圧減圧弁111,211はそれぞれ絶対圧Pls1,Pls2をレギュレータ112に出力し、低圧選択弁112aによってPls1とPls2の低圧側が選択され、LS制御弁112bに導かれる。
レギュレータ112において、低圧選択弁112aに導かれたPls1とPls2はその低圧側が選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bはPls1とPls2の低圧側が目標LS差圧Pgrと等しくなるようにメインポンプ102の容量(流量)を制御し、その流量の圧油がメインポンプ102から第1及び第2圧油供給路105,205に吐出される。
また、このときも、メインポンプ102の第1吐出ポート102aの吐出油と第2吐出ポート102bの吐出油は合流し、圧力補償弁7f,7g及び流量制御弁6f,6gを介して左走行モータ3fと右走行モータ3gに供給されるとともに、その合流した圧油の一部は圧力補償弁7i,7k及び流量制御弁6i,6kを介してブームシリンダ3aのボトム側にも供給される。一方、メインポンプ202のレギュレータ212は、ブーム操作レバーが微操作であるときと同様に動作し、メインポンプ202からも圧油がブームシリンダ3aのボトム側に供給される。
このように走行とブームを同時に駆動する複合動作では、スプリットフロー型のメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bは1ポンプとして機能し、2つの吐出ポート102a,102bの圧油が合流して左右の走行モータ3f,3gに供給され、かつブーム操作レバーを微操作したときは、メインポンプ202の圧油のみがブームシリンダ3aボトム側に供給され、ブーム操作レバーをフル操作したときは、メインポンプ202の圧油とメインポンプ102の合流した圧油の一部とがブームシリンダ3aボトム側に供給される。これにより、左右の走行モータの操作レバーを同じ入力量で操作した場合は、直進走行性を維持しつつ、所望の速度でブームシリンダを駆動することが可能となり、良好な走行複合操作性を得ることができる。
〜効果〜
次に、本実施の形態の効果について説明する。
(1)従来のロードセンシングシステムとの比較
本実施の形態においては、走行複合操作以外の複合操作では、第1〜第3切換弁40,146,246によって第1圧油供給路105と第2圧油供給路205の連通が遮断され、第1及び第2負荷圧検出回路131,132による負荷圧の検出対象がそれぞれアクチュエータ3a,3b,3c,3g及びアクチュエータ3a,3b,3d,3fと限定されるため、第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出油をそれぞれのアクチュエータに独立して供給することが可能となる(2ポンプロードセンシングシステム)。これにより旋回ブーム上げ(走行複合操作以外の複合操作)を行ったときに、第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出油をブームシリンダ3aと旋回モータ3cに独立して供給することが可能となる。
本実施の形態では、このような油圧駆動装置において、ブーム駆動用の流量制御弁6iの下流側でメインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出される圧油の流量の一部を第1吐出ポート102aから吐出された圧油に合流させる構成としている。これにより走行複合操作以外の複合操作である旋回ブーム上げでは、ブームシリンダ3aに圧油を供給する第1吐出ポート102aの吐出圧は、アンロード弁115によってブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧をベースとした低めの圧力に保たれ、従来技術(特許文献1及び2)のように低負荷側の圧力補償弁7iでのメータイン圧損による無駄なエネルギー消費を発生させることはなく、旋回ブーム上げを効率良く行うことができる。
また、本実施の形態においては、スプリットフロー型の油圧ポンプであるメインポンプ102とは別にメインポンプ202を設け、要求流量の大きいアクチュエータであるブームシリンダ3aのボトム側に対してメインポンプ102の2つの吐出ポート102a,102bとメインポンプ202の吐出ポート202aを設け、ブーム上げの微操作ではメインポンプ202の吐出ポート202aから圧油を供給するように構成している。これによりブーム上げが微操作である水平均し動作では、ブームシリンダ3aを駆動する油圧ポンプはメインポンプ202、アームシリンダ3bを駆動する油圧ポンプはメインポンプ102というように、負荷圧の異なるアクチュエータを駆動するポンプが別個になるので、この点でも従来技術(特許文献1及び2)のように、低負荷側の圧力補償弁7bでのメータイン圧損による無駄なエネルギー消費を発生させることはく、水平均し動作を効率良く行うことができる。
(2)従来のスプリットフロー型の油圧ポンプで2つの吐出ポートの油圧回路を単純に独立させた場合との比較
図8は、比較例を示す、図1と同様な図である。この比較例は、図1に示す本実施の形態に係わる油圧駆動装置から流量制御弁6kと圧力補償弁7kを除去し、それに伴って流量制御弁6kと圧力補償弁7kに係わる油圧部品である第2負荷圧検出回路132のシャトル弁9kとチェック弁72を除去したものである。
ブーム用の流量制御弁6a,6iは、アーム用の流量制御弁6b,6jと同様の図2Bに示したメータイン通路の開口面積特性を有している。それ以外は、旋回用の圧力補償弁7cが図3及び図4に示したような負荷依存特性を有している点も含め、図1に示す本実施の形態に係わる油圧駆動装置と実質的に同じである。
図8に示す比較例において、フル操作で旋回ブーム上げを行った場合の動作を本実施の形態との相違点を中心に説明する。
まず、比較例では、フル操作で旋回ブーム上げを行うと、図2Bに示したように、ブーム側においてはメイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はA1に保たれ、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はA2となる。旋回側については、本実施の形態の場合と同様、旋回のフル操作により流量制御弁6cのメータイン通路の開口面積は図2Aに示したようにA3となる。
また、メインポンプ202のレギュレータ212においては、上記(b)及び(c)で説明したように、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧Plaに基づいてPls3=Pgrになるようにロードセンシング制御が行われ、メインポンプ202の容量(流量)が増加する。メインポンプ102側においては、ブームシリンダ3aの負荷圧が第1負荷圧検出回路131よって最高負荷圧Plmax1として検出され、旋回モータ3cの負荷圧Plcが第2負荷圧検出回路132よって最高負荷圧Plmax2として検出され、レギュレータ112において、低圧選択弁112aによってPls1とPls2の低圧側が選択され、Pls1又はPls2=Pgrになるようにロードセンシング制御が行われ、メインポンプ102の容量(流量)が増加する。
ブームシリンダ3aのボトム側には、メインポンプ202から吐出された流量制御弁6aの開口面積A1に応じた流量の圧油とメインポンプ102の第1吐出ポート102aから吐出された流量制御弁6iの開口面積A2に応じた流量の圧油が合流して供給される。旋回モータ3cには、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出された流量制御弁6cの開口面積A3に応じた流量の圧油が供給される。
図9は、図8に示す比較例及び本実施の形態において、旋回ブーム上げを行ったときの負荷圧とメインポンプ102,202の吐出圧の時系列変化である圧力波形の一例を示す図である。
図8に示す比較例において、旋回ブーム上げとして、時刻t0でブーム操作レバーをブーム上げ方向にフル操作し、同時に旋回操作レバーをフル操作した場合を考える。図9の一番下のグラフは、このとき流量制御弁6a,6i,6cに作用するブーム上げの操作パイロット圧a1と旋回の操作パイロット圧c1の変化を示す。図9の中央のグラフは、ブームシリンダ3aの負荷圧Plaと旋回モータ3cの負荷圧Plcの変化を示し、図9の一番上のグラフは、メインポンプ102の圧油供給路105の圧力P1及び圧油供給路205の圧力P2と、メインポンプ202の圧油供給路305の圧力P3の変化を示す。
図7に示したように、ブームシリンダ3aは、ブーム104a、アーム104b、バケット104c、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3dなどの重量物を含むフロント作業機104を支持しており、フロント作業機104を自重逆らって持ち上げることがブームシリンダ3aの負荷となっている。
ブームシリンダ3aの負荷圧Plaは、時刻t0での保持圧Pla0からブームシリンダ3aが伸長することによるフロント作業機104の慣性力や、ブームシリンダ3aからの戻り油が流量制御弁6aのメータアウト通路の開口などの抵抗によって絞られることなどにより、図9の中央のグラフの破線の曲線のように変化する。
一方、旋回モータ3cの負荷圧Plcは、時刻t0ではほぼタンク圧である。その後、旋回モータ3cには流量制御弁6cから圧油が一気に流入するが、油圧ショベルの旋回体102は大きな慣性モーメントを持つため、旋回体102の回転速度は直ぐには上昇しない。このため旋回モータ3cの負荷圧Plcは、旋回リリーフ弁73a,73bのセット圧Pscまで急激に上昇する。
油圧ショベルの旋回体102の速度が上昇してくると、旋回モータ3cの負荷圧Plcは徐々に低下してくる。
ここで、図9の時刻t1でのブームシリンダ3aの負荷圧の平均値をPla1、旋回モータ3cの負荷圧の平均値をPlc1とすると、前述のようにPlc1=Pscである。
一方、メインポンプ102の第1吐出ポート102aの吐出圧(圧油供給路105の圧力)P1、第2吐出ポート102bの吐出圧(圧油供給路205の圧力)P2、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出圧(圧油供給路305の圧力)P3はそれぞれ図9の一番上のグラフのように変化する。
つまり、時刻t1において、ブームシリンダ3aを駆動する圧力P1と圧力P3は同じ値となり、かつこれらの圧力P1,P3はブームシリンダ3aの負荷圧PlaよりもLS差圧Pls1,Pls3の分だけ高い値となる。また、圧力P2は旋回モータ3cの負荷圧PlcよりもLS差圧Pls2の分だけ高い値となる。
ここで、時刻t1での吐出圧P1,P2をそれぞれP11,P21とすると、P11=Pla1+Pls1,P21=Plc1+Pls2=Psc+Pls2となる。
旋回ブーム上げの後期の段階では、旋回モータ3cの負荷圧Plcが次第に減少し、ブームシリンダ3aの負荷圧Plaよりも小さくなる。図9で時刻t2以降がその状態を示している。
図1に示す本実施の形態の場合は、旋回ブーム上げの初期段階である時刻t0〜t2の間においては、旋回モータ3cの負荷圧Plcがブームシリンダ3aの負荷圧Plaよりも高く(Plc>Pla)、シャトル弁9kで旋回モータ3cの負荷圧Plcが最高負荷圧Plmax2として選択されるため、メインポンプ102の圧油供給路105の圧力P1及び圧油供給路205の圧力P2と、メインポンプ202の圧油供給路305の圧力P3は比較例と同じように変化する。
一方、旋回ブーム上げの時刻t2以降の後期の段階では、ブームシリンダ3aの負荷圧Plaが最高負荷圧Plmax2として検出されるため、メインポンプ102の第2吐出ポート120bの吐出圧P2はブームシリンダ3aの負荷圧Plaに基づいてロードセンシング制御された圧力となる。
図10は、比較例と本実施の形態における時刻t1でのメインポンプ102の挙動をPQ特性で見た図である。図10の上側がメインポンプ102の第1吐出ポート102a側(吐出圧P1)のPQ特性を示し、下側がメインポンプ102の第2吐出ポート102側(吐出圧P2)のPQ特性を示している。ここで油圧ポンプのPQ特性とは、油圧ポンプの吐出圧と吐出流量の関係を示すものであり、メインポンプ102のPQ特性は、図5に示したトルク制御特性の縦軸のパラメータを容量から流量に置き換えた特性に相当する。
図10中、点Aは時刻t1でのメインポンプ102の第1吐出ポート102aにおけるPQ(吐出圧と流量、以下同)を示し、点Cは時刻t1でのメインポンプ102の第2吐出ポート102bにおけるPQを示している。
前述のように、時刻t1での吐出圧P1,P2をそれぞれP11,P21とすると、メインポンプ102はスプリットフロー型で、第1及び第2吐出ポート102a,102bは同じ吐出流量となり、トルク制御ピストン112d,112eがそれぞれP1,P2をフィードバックするように構成されているので、メインポンプ102全体の馬力制御としては、P1とP2の負荷圧は平均化されて印加されるのと等価と考えることができる。
つまり、図10の上側に示すように、第1吐出ポート102a側では、ブーム上げ時の吐出圧P11が作用したときの最大流量Q1max1(点A)が吐出されるのではなく、トルク制御ピストン112d,112eによって制御されることによって、その時の最大流量はP1とP2の負荷圧の平均、つまり(P11+P21)/2が作用した時の最大流量Q1max12(点B)となる。
第2吐出ポート102b側も第1吐出ポート102a側と同様に、旋回時のポンプ負荷圧P21が作用したときの最大流量Q2max1(点C)が吐出されるのではなく、トルク制御ピストン112d,112eによって制御されることによって、そのときの最大流量はP1とP2の平均、つまり(P11+P21)/2が作用したときの最大流量Q2max12(点B)となる。このとき、前述のようにメインポンプ102はスプリットフロー型で、第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出流量は同じ値となるので、Q2max12=Q1max12である。
一方、旋回用の圧力補償弁7cには、前述のように図4で示したような負荷依存特性があるので、旋回時の吐出圧P21が作用したときに旋回モータ3cに供給される流量はQ21(点E)となる。
つまり、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205に対して、独立した別々の油圧ポンプの吐出ポートを接続する一般的な油圧回路では、ブームシリンダ側の油圧ポンプは点Aで動作し、ブームシリンダにQ1max1の流量の圧油を供給することができる。しかし、メインポンプ102のようにスプリットフロー型の油圧ポンプを用い、その2つの吐出ポートを第1圧油供給路105と第2圧油供給路205に接続した場合は、トルク制御によりメインポンプ102の第1吐出ポート102a側は点Bで動作し、ブームシリンダに供給される圧油の流量はQ1max1からQ1max12に減少してしまう。その結果、旋回ブーム上げ時のブーム上げの速度が低下し、ブームがオペレータの意図通りに上がらず、操作性を損なうという問題があった。
また、メインポンプ102はスプリットフロー型であって、第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出流量は常に同じとなるため、比較例においては、第1吐出ポート102a側のブーム用の流量制御弁の要求流量が第2吐出ポート10b側の旋回用の流量制御弁の要求流量よりも大きい場合には第2吐出ポート側に余剰流量が発生し、この余剰流量は利用されることなくアンロード弁215からタンクに排出される。このとき、アンロード弁215によって動力が消費され、メインポンプ102を駆動する原動機1が持つトルクを有効に利用することができない。
特に、比較例においては、旋回駆動用の圧力補償弁7cとして負荷依存特性を有する圧力補償弁を用いているため、旋回ブーム上げの初期段階で旋回モータ3cの負荷圧が旋回リリーフ弁73a,73bのセット圧まで上昇したときは、旋回駆動用の流量制御弁6cから旋回モータ3cに供給される流量は更に減少し、余剰流量が増加する。このため余剰流量が利用されることなくアンロード弁215から無駄にタンクに排出される問題は、より顕著となる。
図10において、Lは圧力補償弁7cの負荷依存特性を示している。比較例においては、図10に示すように、メインポンプ102の第2吐出ポート102側の最大流量はQ2max12(点B)であるにも係わらず、実際に旋回モータ3cに供給される流量は、旋回用の圧力補償弁7cの特性によってQ21(点E)に制限されてしまう。メインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出される圧油の余剰流量Q2max12−Q21は、第2圧油供給路205に設けられたアンロード弁215からタンクに排出される。このとき、アンロード弁215での動力消費はP21・(Q2max12−Q21)で表される。つまり、比較例においては、旋回ブーム上げを行う場合に、アンロード弁215によってP21・(Q2max12−Q21)に相当するエネルギーが無駄に消費されてしまうことになる。
本実施の形態においても、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205に対してスプリットフロー型の油圧ポンプを用いているため、比較例と同様、第1吐出ポート102a側のPQ点が独立した別々の油圧ポンプを用いる場合の点Aから点Bに遷移しており、第1吐出ポート102aからブームシリンダに供給される圧油の流量がQ1max1からQ1max12に減少する。しかし、本実施の形態においては、流量制御弁6kと圧力補償弁7kを設け、第2吐出ポート102bからの圧油も流量制御弁6iの下流側で第1吐出ポート102aからの圧油に合流してブームシリンダ3aのボトム側に圧油を供給できる構成としている。これにより比較例では旋回ブーム上げの際にアンロード弁215から無駄にタンクに放出され消費されていたQ2max12−Q21の少なくとも一部の圧油を、圧力補償弁7k、流量制御弁6k、チェック弁72を経由してブームシリンダ3aに供給することができる。これにより比較例に比べ、ブーム上げ速度を低下させずに旋回ブーム上げを行うことができ、良好な操作性を確保することができる。
また、本実施の形態では、第2吐出ポート102bから吐出される圧油の流量をブームシリンダ3aの駆動に利用し、比較例に比べてアンロード弁215から無駄にタンクに排出される流量が減少するため、アンロード弁215による無駄なエネルギー消費を低減し、原動機1が持つトルクを有効に利用し、この点でも旋回ブーム上げを効率良く行うことができる。
<第2の実施の形態>
〜構成〜
図11は、本発明の第2の実施の形態に係わる油圧ショベル(建設機械)の油圧駆動装置を示す図である。
本実施の形態の第1の実施の形態との相違点は、ブームシリンダ用の合流弁を流量制御弁6kと圧力補償弁7kとで構成する代わりに切換弁90で構成した点と、ブーム駆動用の流量制御弁6a,6iの開口面積特性の点にある。
すなわち、本実施の形態においては、旋回用の流量制御弁6cが接続されている第2圧油供給路205はブームシリンダ3aのボトム側と切換弁90とチェック弁72を介して接続されている。切換弁90は開方向作動側に受圧部90aを有し、閉方向作動側にバネ90bと受圧部90cを有している。受圧部90aには、ブーム用のパイロットバルブユニット60aが生成する図1左側の操作パイロット圧a1が導かれ、受圧部90cには、絞り43の下流側における走行複合操作検出油路53の操作検出圧が導かれている。操作パイロット圧a1と操作検出圧が共にタンク圧であるとき、切換弁90は図示の閉位置にあり、ブーム上げの操作が行われ、操作パイロット圧a1が上昇すると、切換弁90は開弁方向に切り換わる。また、操作パイロット圧a1が、元圧であるパイロット圧油供給路31bのパイロット圧Ppilotと等しい圧力まで上昇したとしても、走行複合操作により走行複合操作検出油路53に操作検出圧(パイロット圧油供給路31bのパイロット圧Ppilotと等しい圧力)が生成された場合は、切換弁は図示の閉位置に保持される。
また、本実施の形態では、ブーム用の流量制御弁6a,6iは、アーム用の流量制御弁6b,6jと同様の図2Bに示したメータイン通路の開口面積特性を有している。
一方、切換弁90は、図12に示すような開口面積特性を有している。切換弁90は、スプールストロークが中間ストロークS4になるまでは開口面積はゼロであり、スプールストロークが中間ストロークS4を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積AA4となるように開口面積特性が設定されている。切換弁90が開き始める中間ストロークS4は、流量制御弁6iが開き始める中間ストロークS2と同じか、それよりも大きく設定してある。
〜動作〜
次に、第2の実施の形態の動作として、第1の実施の形態との相違部分を中心に説明する。
(c)ブーム操作レバーを入力した場合(フル操作)
メインポンプ102とメインポンプ202は第1の実施の形態と同様に動作する。ただし、ブーム用の流量制御弁6a,6iが図2Bに示したメータイン通路の開口面積特性を有し、切換弁90が図12に示すような開口面積特性を有しているため、メインポンプ202は、図6の曲線602で示される制限トルクT3maxの範囲内で、流量制御弁6aの開口面積A1(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行い、メインポンプ102は、メインポンプ202の吸収トルク分だけトルクを減じられた図5の曲線503或いは504で示される制限トルクT12maxの範囲内で、流量制御弁6iと切換弁90の開口面積A2+AA4(要求流量)に応じて流量を増加させるロードセンシング制御を行う。
(h)旋回ブーム上げをした場合
メインポンプ202は第1の実施の形態と同様に動作する。また、メインポンプ102も実質的に第1の実施の形態と同様に動作する。
図13は、第2の実施の形態で旋回ブーム上げを行ったときの負荷圧とメインポンプ102,202の吐出圧の時系列変化である圧力波形の一例と、切換弁90を通過する流量Qcbの時系列変化の一例を示す図である。
旋回ブーム上げの初期段階(図13で時刻t0〜t2の間)は、旋回モータ3cの負荷圧Plc及び第2圧油供給路205の圧力P2の方がブームシリンダ3aの負荷圧Pla及び第1及び第3圧油供給路105,305の圧力P1,P2よりも高くなっている。
ブーム上げがフル操作だった場合には、切換弁90の開口面積は図12に示したようにAA4であり、例えば時刻t1でのP2がP21、ブームシリンダ3aの負荷圧がPla1だとすると、第2圧油供給路205からブームシリンダ3aに供給される圧油の流量QcbをQcb1と置くと、Qcb1=C・AA4・√(2/ρ・(P21−Pla1)) で表される。ここで、Cは縮流係数で0<C<1で表され、ρは流体の密度であり、両者とも定数である。
つまり、Qcbは第2圧油供給路205の圧力P2と、ブームシリンダ3aの負荷圧Plaの大きさによって一意に決まる値となる。
旋回ブーム上げの後期段階(図12で時刻t2以降)では、第2圧油供給路205の圧力P2がブームシリンダ3aの負荷圧Plaよりも小さくなるので、チェック弁72によって流れが規制され、切換弁90からブームシリンダ3aに供給されるQcbは0となる。
(i)走行とブーム上げを同時操作した場合
走行とブーム上げのフル操作を同時に行うと、流量制御弁6a,6i,6f,6gが切り換わり、メインポンプ202側においては、第1の実施の形態と同様、メインポンプ202からブームシリンダ3aに圧油が供給される。一方、メインポンプ102側においても、第1の実施の形態と同様、スプリットフロー型のメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bは1ポンプとして機能し、2つの吐出ポート102a,102bの吐出油が合流して左右の走行モータ3f,3gとブームシリンダ3aに供給される。
また、このとき、切換弁90のバネ90bと同じ側の受圧部90cにも走行複合操作検出油路53に生成された一定のパイロット圧Ppilotと等しい操作検出圧が作用するので、仮にブーム上げのパイロット操作圧a1の最大値Ppilotが切換弁90の受圧部90aに作用しても、バネ90bの力によって切換弁90が切り換わることはない。
このように走行モータ3f,3gと、ブームシリンダ3aやアームシリンダ3bなどメインポンプ102の吐出油によって駆動されるアクチュエータを同時に操作する走行複合操作では、切換弁90の切り換わりが禁止される。これによりメインポンプ102の第2吐出ポート102bからブームシリンダ3aに切換弁90を介して圧油が供給されることはなく、ブームシリンダ3aと走行モータ3f,3gの負荷圧の差の大きさが変化しても、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bからブームシリンダ3aに供給される圧油の流量は変化しない。これにより合流弁として構成が簡単で安価な切換弁90を用いた場合でも、オペレータの意図通りのブーム上げ速度を得ることができる。
〜効果〜
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
また、本実施の形態によれば、合流弁として構成が簡単で安価な切換弁90を用いた場合でも、オペレータの意図通りのブーム上げ速度を得ることができる。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。以下に幾つかの変形例を説明する。
(1)上記実施の形態では、スプリットフロー型のメインポンプ102とシングルフロー型のメインポンプ202の2つのメインポンプを有する構成としたが、スプリットフロー型のメインポンプ102を備えるのであれば、メインポンプは1つであってもよい。この場合でも、スプリットフロー型のメインポンプ102の第2吐出ポート102b側に合流弁(流量制御弁6k及び圧力補償弁7k又は切換弁90)を設け、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出された圧油の一部をブームシリンダ3aに第1吐出ポート102aから吐出された圧油に合流して供給する構成とすることにより、旋回ブーム上げの複合操作においてブーム上げの速度低下による操作性の悪化を防止し、かつ第2吐出ポート102b側のアンロード弁215からの無駄な圧油の排出を減らし、旋回ブーム上げを効率良く行うことができる。
(2)上記実施の形態では、旋回駆動用の圧力補償弁7cは負荷依存特性を有する構成としたが、負荷依存特性を有しない圧力補償弁であってもよい。旋回駆動用の圧力補償弁7cが負荷依存特性を有していない場合であっても、メインポンプがスプリットフロー型である限り、2つの吐出ポートの吐出流量は常に同じとなるため、ブーム用の流量制御弁の要求流量が旋回用の流量制御弁の要求流量よりも大きい場合には旋回モータ側の吐出ポート側に余剰流量が発生し、この余剰流量は利用されることなくアンロード弁からタンクに排出される、という課題は発生する。この課題に対し、メインポンプ102の第2吐出ポート102b側に合流弁(流量制御弁6k及び圧力補償弁7k又は切換弁90)を設け、メインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出された圧油の一部をブームシリンダ3aに第1吐出ポート102aから吐出された圧油に合流して供給する構成とすることにより、第2吐出ポート102bの吐出油がブームシリンダ3aの駆動に有効に利用され、旋回ブーム上げの複合操作においてブーム上げの速度低下による操作性の悪化が防止される。また、アンロード弁からの無駄な圧油の排出を減らし、旋回ブーム上げを効率良く行うことができる。
(3)上記実施の形態では、メインポンプ202の吐出圧を減圧弁112gを介して減トルクピストン112fに導き、メインポンプ202の吸収トルクの分だけメインポンプ102側の第1トルク制御部の第1制限トルクを減らす減トルク制御を行う構成としたが、減圧弁112gに代え、特願2013−246800号に記載されているトルクフィードバック回路を設けてもよい。すなわち、特願2013−246800号に記載のトルクフィードバック回路では、メインポンプ202の吐出圧だけでなく、メインポンプ202の容量の制御に直接か係わるLS駆動圧(LS制御弁212bとLS制御ピストン212cの間の油路の圧力)を検出してメインポンプ102のレギュレータ112側に導き、メインポンプ202の吸収トルクをより正確に推定して、メインポンプ102の減トルク制御している。より詳しくは、減圧弁112gの設定圧を可変とし、ロードセンシング駆動圧力が高くなるにしたがって可変減圧弁の設定圧が低くなるよう動作させることで、メインポンプ202の吸収トルクを模擬するようメインポンプ202の吐出圧を補正して減トルクピストン112fに出力している。これによりメインポンプ102とメインポンプ202の全トルク制御が精度良く行われ、原動機の定格出力トルクを更に有効利用することができる。
(4)上記実施の形態のロードセンシングシステムは一例であり、ロードセンシングシステムには種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁111,211,311を設け、その出力圧を圧力補償弁に導いて目標補償差圧を設定しかつLS制御弁に導き、ロードセンシング制御のフィードバックLS差圧としたが、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を別々の油路で圧力制御弁やLS制御弁に導くようにしてもよい。また、上記実施の形態では、目標LS差圧を原動機回転数検出弁13から出力される絶対圧Pgrによって、原動機1の回転数に応じて変化する値として設定したが、原動機の回転数に応じて目標LS差圧を変化させる必要がない場合は、目標LS差圧は固定値であってもよい。