以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、本発明に係る研削装置は、例えば、数十μm以下の厚さ寸法に研削される円板状ワークを被加工物とし、円板状ワークの外周部を研削せずに厚みを残して環状の補強部とする研削が可能な研削装置に適用される。しかしながら、本発明が適用される研削装置の構成についてはこれに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
また、本発明に係る研削装置における被加工物となる円板状ワークについては、後述するチャックテーブル2により保持される被保持面にデバイス保護のための保護テープを貼着したものも含まれる。
図1は、本実施の形態に係る研削装置の一例を模式的に示す平面図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す下方側を研削装置の前方側と呼び、図1に示す上方側を研削装置の後方側と呼ぶものとする。また、説明の便宜上、図1に示す左右方向を研削装置のX軸方向と呼び、図1に示す上下方向を研削装置のY軸方向と呼ぶものとする。
本実施の形態に係る研削装置1は、図1に示すように、複数(本実施の形態では4つ)のチャックテーブル2と、2つの第1研削手段31及び第2研削手段32と、研磨手段33とを含んで構成されている。複数のチャックテーブル2は、ターンテーブル21上に配置され、ターンテーブル21によって公転及び自転可能に支持される。それぞれのチャックテーブル2は、図示しない吸引源に接続され、被加工物である円板状ワークWを吸引保持する。第1研削手段31、第2研削手段32は、それぞれチャックテーブル2に保持された円板状ワークWに対して研削加工を施す。研磨手段33は、研削手段3によって研削された円板状ワークWを研磨する。
研削装置1の前方側には、加工前の円板状ワークWを収容する第1カセットC1と、加工後の円板状ワークWを収容する第2カセットC2とが設けられている。これらの第1カセットC1及び第2カセットC2は、複数の円板状ワークWを収容可能に構成されている。これらの第1カセットC1及び第2カセットC2は、例えば、研削装置1の前面側の一部に着脱可能に設けられている。
第1カセットC1及び第2カセットC2の近傍には、第1カセットC1からの円板状ワークWの取り出し及び第2カセットC2への円板状ワークWの収容を行うロボット40が設けられている。ロボット40は、円形板状ワークWを吸引保持するハンド部401と、ハンド部401に連結され屈曲可能なアーム部402と、ハンド部401及びアーム部402をX軸方向に移動させる駆動機構403とを備えている。駆動機構403は、例えば、研削装置1のX軸方向に延在して設けられるガイドレール部を備え、ハンド部401及びアーム部402を移動可能に構成される。
ロボット40の駆動機構403の左端部の後方側には、円板状ワークWの仮置きテーブル41が設けられている。仮置きテーブル41は、研削加工前の円板状ワークWを所定の位置に位置合わせする際に利用される。仮置きテーブル41は、ロボット40のハンド部401の可動域に配置されている。仮置きテーブル41の後方は、加工前の円板状ワークWをチャックテーブル2に載置したり、加工後の円形板状ワークWを次の工程に移送するためにチャックテーブル2から取り出したりする領域である搬出入領域42となっている。
搬出入領域42の近傍には、仮置きテーブル41から搬出入領域42に位置するチャックテーブル2への円板状ワークWの搬入を行う搬入手段43と、搬出入領域42に位置するチャックテーブル2からの円板状ワークWの搬出を行う搬出手段5とが配設されている。搬出手段5は、後述するように、アーム部11の先端に取り付けられ円形板状ワークWを保持する外周縁保持機構10を備えている。外周縁保持機構10は、研削された円板状ワークWの外周縁を保持し、その状態でアーム部11を旋回及びY軸方向に移動させることにより、円板状ワークWをチャックテーブル2から搬出可能に構成されている。
搬出手段5による円板状ワークWの搬出経路には、外周縁保持機構10によって保持された円板状ワークWの下面、すなわちチャックテーブル2によって吸引保持されていた被保持面を洗浄する洗浄手段6が配設されている。洗浄手段6の近傍には、円板状ワークWの上面側を洗浄し乾燥する洗浄乾燥手段7が配設されている。なお、図1においては、円板状ワークWの搬出経路として、搬出入領域42から洗浄乾燥手段7までの経路を示している。洗浄手段6の配設位置は、搬出手段5による円板状ワークWの搬出経路上であれば、任意の位置に変更することができる。
ここで、本実施の形態に係る研削装置1が備える搬出手段5の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係る研削装置1が備える搬出手段5の一例を示す斜視図である。図2においては、説明の便宜上、搬出手段5が備える1つの保持部13及びこれに対応するボルト22を支持プレート14から分離して示している。
図2に示すように、搬出手段5は、上述した外周縁保持機構(以下、単に「保持機構」という)10と、この保持機構10を研削装置1の鉛直方向(上下方向)に移動させる移動機構12とを含んで構成されている。保持機構10は、例えば、搬出入領域42に配置された円形板状ワークWの外周縁を保持する。移動機構12は、例えば、円板状ワークWを保持しない状態の保持機構10をチャックテーブル2に接近させ、円板状ワークWを保持した状態の保持機構10をチャックテーブル2から離反させる。
保持機構10は、円板状ワークWの外周縁に係合して円板状ワークWを保持する複数の保持部13と、保持部13を円板状ワークWの外周縁に対して水平方向に移動可能に支持する支持プレート14と、支持プレート14の上面側において支持プレート14に対して所定範囲回動可能に配設された回動プレート15と、アーム部11の先端に取り付けられ支持プレート14に対して傾斜可能に連結された取り付け板16と、支持プレート14の下面に取り付けられる複数のピン17とを含んで構成されている。
本実施の形態において、保持機構10は、少なくとも3つの保持部13を備えている。3つの保持部13は、それぞれ同一の形状及び構成を有している。これらの保持部13は、支持プレート14の中心を基準に均等な角度で(すなわち120°間隔で)配設されている。これらの保持部13は、放射方向すなわち支持プレート14の径方向に移動可能に構成されている。
例えば、保持部13は、フッ素系樹脂等の摩擦抵抗の小さい合成樹脂によって形成され係合凹部130aを備えた係合部材130と、係合部材130から上方に立設された円柱状の被支持部131とから構成される。被支持部131の内周面には、ボルトを螺合させる雌ねじ穴131aが形成されている。3つの保持部13は、係合凹部130aにおいて円形板状ワークWの外周縁を係合させることにより、円板状ワークWを外周面側から保持可能に構成されている。
支持プレート14には、保持部13の個数及び位置に対応して、径方向に長く表裏面を貫通する長孔140が形成されている。長孔140は、保持部13の被支持部131を長孔140の長手方向に移動自在に支持し、3つの保持部13を放射方向に動作させる際の案内部として機能する。長孔140の幅は、被支持部131の直径より僅かに大きく形成されている。また、支持プレート14の上面からは、コイルバネ180が挿嵌された3本の支持柱18が立設されている。支持柱18の上端には図示しない雌ねじ穴が形成されている。これらの支持柱18及びコイルバネ180は、後述する回動プレート15の長孔151を貫通して配置される。
また、保持機構10は、少なくとも3つのピン17を備える。3つのピン17は、支持プレート14の中心を基準に均等な間隔(すなわち120°間隔)で配設されている。それぞれのピン17は、同一の形状及び構成を有している。ピン17は、その下端部が保持部13の下端よりも下方側に突出する長さを有している(図5参照)。隣接するピン17と保持部13とは、支持プレート14の中心を基準に60°の角度を挟んで配置されている。これらのピン17は、保持機構10がチャックテーブル2から円板状ワークWを把持する際に保持部13と円板状ワークWの外周縁との高さ方向の位置決めを行うと共に、搬出手段5と洗浄手段6との相対位置関係を一定に維持する役割を果たす。前者の役割によって、3つの保持部13の下端部がチャックテーブル2の上面よりも少し上方側の位置に配置されると共に、3つの保持部13の共通位置を結んだ面とチャックテーブル2の上面とが平行に位置付けられる。
支持プレート14の上面中央には、回動プレート15が支持プレート14に対して回動可能に取り付けられている。回動プレート15は、概して円形状を有している。回動プレート15には、周方向に長く形成され表裏面を貫通する3つの長孔151と、所定間隔をおいて外周方向に突出形成された3つのアーム部152とが設けられている。それぞれのアーム部152の先端には、枢軸153によってアーム部152に対して回動可能にリンク154が連結されている。リンク154の先端には、貫通孔154aが形成されている。3つのアーム部152のうち、1つのアーム部152には、後述するピストンロッド19と連結される連結部155が形成されている。
支持プレート14の上面には、ピストンロッド19を出没させるエアシリンダ20が配設されている。ピストンロッド19の先端部には、リング状に形成された連結係合部19aが設けられている。この連結係合部19aは、回動プレート15のアーム部152の連結部155と係合可能に構成されている。
取り付け板16においては、支持プレート14の上面から立設された3本の支持柱18に対応する位置に図示しない3つの貫通孔が形成されている。これらの貫通孔に挿通するボルト21を支持柱18に形成された雌ねじ穴に螺合させることにより、取り付け板16に支持プレート14が固定される。
また、回動プレート15は、ボルト22をリンク154の貫通孔154a、スペーサ23及び長孔140に挿通し、係合部材130の雌ねじ穴131aに螺合させることで支持プレート14に連結される。この場合、回動プレート15は、枢軸153を中心としてリンク154が回動することにより、支持プレート14に対して所定範囲回動可能な状態で支持プレート14に連結される。
さらに、アーム部152の連結部155をピストンロッド19の連結係合部19aに係合させると、エアシリンダ20によってピストンロッド19が図2に示す矢印A方向に駆動されることにより、回動プレート15が矢印B方向に回動可能となる。そして、回動プレート15が矢印B方向に回動すると、それにともないリンク154が矢印C方向に動くため、リンク154に連結された保持部13が矢印D方向、すなわち支持プレート14の中心に向かう方向に移動する。
このように、エアシリンダ20及びピストンロッド19並びに回動プレート15は、3つの保持部13(係合部材130)を、支持プレート14の中心方向に移動させる役割を果たす。搬出手段5においては、これらの構成要素によって駆動されて移動する保持部13を円板状ワークWの外周縁に接触させて円板状ワークWを保持するように構成されている。
次に、本実施の形態に係る研削装置1が備える洗浄手段6の構成について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る研削装置1が備える洗浄手段6の一例を示す断面模式図である。図4は、本実施の形態に係る研削装置1が備える洗浄手段6の一例を示す平面図である。なお、図3においては、説明の便宜上、それぞれ2つの洗浄部材611、回転防止部材633及び載置台634を示している。また、図4においては、説明の便宜上、円板状ワークWを破線で示すと共に、搬出手段5の保持部13及びピン17を示している。
洗浄手段6は、図3及び図4に示すように、洗浄プレート61、回転手段62及び回転防止機構63を含んで構成される。洗浄プレート61は、図4に示すように、均等な角度で放射状に少なくとも3方向に延在したプレート部610を有する。これらのプレート部610は、洗浄プレート61の中心を基準に120°間隔で延在して設けられている。これらのプレート部610の先端の上面には、洗浄部材611が装着されている。それぞれの洗浄部材611は、スポンジのような柔軟な部材であり、例えばアイオン株式会社のソフラスという製品を使用することができる。
洗浄プレート61の所定位置には、図示しない洗浄ノズルが設けられている。この洗浄ノズルは、洗浄水供給源に接続され、洗浄部材611による円板状ワークWの被保持面の洗浄中に、被保持面に対して洗浄水を放出する。すなわち、洗浄手段6は、円板状ワークWの被保持面に洗浄水を供給しながら、被保持面を洗浄部材611によって洗浄可能に構成されている。
回転手段62は、図3に示すように、洗浄プレート61の中心を回転軸として洗浄プレート61を回転させる。例えば、回転手段62は、洗浄プレート61の中心を通過して鉛直方向に延びる回転軸612を回転させる駆動モータで構成される。回転軸612の軸心は、搬出手段5を構成する保持機構10が保持する円板状ワークWの被保持面に対して垂直となっている。ここで、被保持面は、研削時に図1に示したチャックテーブル2に保持される面である。洗浄部材611は、円板状ワークWの被保持面に接触して回転することにより、被保持面の外周部を洗浄することができる。言い換えると、洗浄部材611は、円板状ワークWの外周部に摺動して被保持面を洗浄する。
回転防止機構63は、図3及び図4に示すように、洗浄プレート61の下方に配置される。回転防止機構63は、洗浄プレート61によって洗浄される円板状ワークWが回転するのを防止する役割を果たす。より具体的には、洗浄プレート61の洗浄部材611と保持機構10(搬出手段5)が保持する円板状ワークWとを当接させ、回転手段62により洗浄部材611を回転させる洗浄動作によって円板状ワークWが回転するのを防止させる。回転防止機構63は、図4に示すように、均等な角度で放射状に少なくとも3方向に延在する回転防止プレート631と、これらの回転防止プレート631の先端部を連結する環状部632とを有する。なお、回転防止プレート631は、回転防止機構63の中心を基準に120°間隔で延在して設けられている。
回転防止プレート630は、洗浄プレート61(より具体的には、プレート部610)と平行に配置される。環状部632に対する回転防止プレート631の連結部分の上面には、3つの回転防止部材633が固着されている。3つの回転防止部材633は、搬出手段5が洗浄手段6の上方に位置する状態において、搬出手段5の3つの保持部13を結ぶ円弧よりも内側位置に配置されている(図4参照)。環状部632は、搬出手段5の保持部13により保持された円板状ワークWの外径よりも外側に配置されている。また、環状部632の所定位置には、ピン17を載置するための3つの載置台634が設けられている。これらの載置台634は、回転防止プレート630の中心を基準に120°間隔で設けられている。
回転防止機構63は、図3に示すように、回転防止プレート631の中心に配置され、洗浄プレート61の回転軸612の周囲に配置された筒状部635を備える。筒状部635の外周側には、回転防止プレート631を昇降させる昇降手段636が設けられている。昇降手段636は、筒状部635の外周部に連結されるピストン636aと、このピストン636aを駆動するシリンダ636bとを含んで構成される。昇降手段636は、回転防止機構63の位置を、洗浄プレート61に対して相対的に上下動させる。
以下、本実施の形態に係る研削装置1における動作について説明する。本実施の形態に係る研削装置1においては、ロボット40によって第1カセットC1から加工前の円板状ワークWが取り出され、仮置きテーブル41に搬送される。仮置きテーブル41において、円板状ワークWは、所定の位置に位置決めされる。その後、搬入手段43によって搬出入領域42に位置するチャックテーブル2に搬送されて保持される。
ターンテーブル21が回転することによりチャックテーブル2に保持された円板状ワークWが第1研削手段31、第2研削手段32、研磨手段33の下方に順次移送される。これにより、円板状ワークWの露出面(上面)に対してそれぞれの手段による加工(研削加工、研磨加工)が行われる。研磨手段33による加工が行われた後、ターンテーブル21の回転によって加工後の円板状ワークWが搬出入領域42に移送される。そして、搬出入領域42において、搬出手段5によって加工後の円板状ワークWが保持される。
搬出手段5を構成する保持機構10においては、3つの保持部13が円板状ワークWの外周縁に接触して保持する(図5参照)。加工後の円板状ワークWが保持機構10によって保持されると、アーム部11のY軸方向の移動及び旋回により、円板状ワークWが、搬出経路に位置する洗浄手段6の直上に移動し停止する。このとき、搬出手段5に保持された円板状ワークWの位置は、その中心が洗浄手段6の回転軸612と一致するワーク洗浄位置となる。
円板状ワークWがワーク洗浄位置に位置した状態で、移動機構12により保持機構10を下降させることにより、円板状ワークWの下面(被保持面)に洗浄部材611が接触する。図5は、本実施の形態に係る研削装置1の搬出手段5が保持した円板状ワークWと洗浄部材611が接触した状態の断面模式図である。搬出手段5を構成する保持機構10においては、図5に示すように、3つの保持部13が円形板状ワークWの外周縁に接触して保持する。また、図5に示すように、洗浄手段6において、回転防止機構63が初期位置に配置されており、回転防止部材633が円板状ワークWの被保持面から離間している。
洗浄手段6において、回転防止機構63の昇降手段636が回転防止プレート631を上昇させることにより、回転防止部材633が円板状ワークWの被保持面に接触する。図6は、本実施の形態に係る研削装置1の搬出手段5が保持した円板状ワークWに回転防止部材633が接触した状態の断面模式図である。回転防止部材633が円板状ワークWの被保持面に接触した状態において、回転防止部材633の上面は、洗浄部材611の上面と略同一の高さに位置付けられる。より具体的には、円板状ワークWの被保持面に接触した状態において、回転防止部材633の上面は、洗浄部材611の上面よりも0.5mmほど高い位置に配置される。これにより、回転防止部材633は、洗浄部材611よりも強く円板状ワークWの被保持面を押圧する。このようにして、回転防止部材633が円板状ワークWの回転を阻止する。
上述したようにピン17の下端部は、保持部13の下端よりも下方側に突出している。このため、回転防止プレート631を上昇させると、図6に示すように、ピン17が環状部632に設けられた載置台634に載置される。この場合、搬出手段5及び洗浄手段6においては、3本のピン17の共通位置(例えば、下端部)を結んだ三角形からなる面P1(図6に示す一点鎖線で示される面P1)と、3つの洗浄部材611の共通位置(例えば、上面部)を結んだ三角形からなる面P2(図6に示す一点鎖線で示される面P2)とが平行に配置される。そして、これらの面P1と面P2とが平行に配置される結果、円板状ワークWの被保持面と、3つの洗浄部材611の共通位置を結んだ三角形からなる面P2とが平行に配置されると共に、洗浄部材611が円板状ワークWの洗浄に適した高さに位置付けられる。
このようにして、円板状ワークWの回転を防止すべく、回転防止プレート631を上昇させると、ピン17が載置台634に載置されることによって支持プレート14と回転防止機構63とが一定の位置関係を有した状態で配置される。これにより、これらを構成部品として含む搬出手段5と洗浄手段6との相対位置関係が高精度に維持される。
仮に、図7に示すように、搬送手段5(保持機構10)が洗浄手段6に対して傾いた状態で搬送されているものとする。図7においては、洗浄手段6の回転軸612の軸中心を通過する直線L1と、搬送手段5(保持機構10)の中心を通過する直線L2とが角度θだけ傾いている場合について示している。
このように搬送手段5(保持機構10)の傾きと、洗浄手段6の傾きとが一致しない場合においても、移動機構12により保持機構10を下降させると共に、昇降手段636で回転防止プレート631を上昇させると、3つのピン17が載置台634に載置される。この場合、3つのピン17は、最も下方側に配置されるピン17(図7においては、右方側のピン17)から載置台634に接触していく。そして、既に接触したピン17は、最も上方側に配置されるピン17(図7においては、左方側のピン17)が接触するまで回転防止プレート631(載置台634)により押し上げられる。
押し上げられたピン17に対応する支持プレート14の部分は、リンク154、アーム部152及び回動プレート15を介して上方側に移動する。このような支持プレート14の上方移動は、支持柱18に挿嵌されたコイルバネ180により吸収される。このように支持プレート14が情報移動する過程において、図8に示すように、搬送手段5(保持機構10)と洗浄手段6との傾き量の差(θ)が補正される。この結果、搬送手段5(保持機構10)と洗浄手段6とが平行に配置される。
また、図6に示すように、洗浄部材611及び回転防止部材633を円板状ワークWの被保持面に接触させた状態においては、洗浄部材611と回転防止部材633とが重ならない位置に配置されている。そして、図9Aに示すように、回転手段62の駆動により洗浄プレート61を矢印P方向に回転させる。具体的には、洗浄プレート61は、1つの洗浄部材611が2つの回転防止部材633に衝突しない範囲で回転させてから停止させる。
このように洗浄部材611が円板状ワークWの被保持面に接触した状態で回転することにより、図10Aに示すように、被保持面の外周部のうち、回転防止部材633が接触している箇所以外の部分である第1領域100が洗浄される。洗浄中は、回転手段62が洗浄部材611を回転させることによって円板状ワークWが回転するのを回転防止機構63が防止するため、洗浄を確実に行うことができる。この段階では、隣り合う第1領域100間に、未洗浄領域である第2領域101が残されている。なお、図10においては、洗浄済みの領域を斜線部で示している。
次に、回転防止プレート631を下降させることにより回転防止部材633と円板状ワークWの被保持面との接触状態を解除した後、図9Bに示すように、洗浄プレート61を矢印Q方向に回転させる。この場合、円板状ワークWの被保持面が回転防止部材633と接触していないため、洗浄部材611と一緒に円板状ワークWも矢印Q方向に回転する。これにより、図10Bに示すように、円板状ワークWの被保持面のうち回転防止部材633が接触していた部分である未洗浄の第2領域101が露出する。
このようにして第2領域101が露出した後、再び回転防止部材633を上昇させて円板状ワークWの被保持面に接触させ、図9Cに示すように、洗浄部材611の矢印R方向の回転動作によって第2領域101を洗浄する。これにより、図10Cに示すように、第2領域101にも洗浄部材611が接触して洗浄され、外周部が全周にわたって洗浄される。なお、2回目の洗浄を行う場合は、回転防止部材633が接触していた第3領域102が未洗浄となっているため、第3領域102が露出するようにしてから洗浄を行えばよい。
以上説明したように、本実施の形態に係る研削装置1においては、搬出手段5を構成する保持機構10に設けられた3つのピン17を、洗浄手段6を構成する回転防止機構63に設けられた載置台634に載置させ、これらのピン17の共通位置を結んだ三角形からなる面P1と、洗浄手段6を構成する洗浄プレート61に設けられた洗浄部材611の共通位置を結んだ三角形からなる面P2とを平行に配置している。したがって、搬出手段5及び洗浄手段6を個別に位置決めするような構成等を備えることなく両者の相対位置を決定できる。これにより、複雑な構成を必要とすることなく、円板状ワークWを搬出する搬出手段5と円板状ワークWの被保持面を洗浄する洗浄手段6との相対位置関係を高精度に維持することが可能となる。この結果、搬出手段5が保持する円板状ワークWの被保持面と洗浄手段6の洗浄部材611の上面とを平行に位置付けることができ、円板状ワークWの被保持面に洗浄斑を生じることなく洗浄することが可能となる。
なお、以上の説明では、洗浄手段6の昇降手段636により回転防止プレート631を上昇させることで保持機構10に設けられた3つのピン17を、回転防止機構63に設けられた載置台634に載置させる場合について説明している。しかしながら、載置台634にピン17を載置させる際の動作についてはこれに限定されるものではない。予め回転防止部材633の上面が洗浄部材611の上面よりも僅かに上方側に位置するように配置しておき、移動機構12による保持機構10の下降動作に応じて載置台634にピン17を載置させるようにしてもよい。この場合には、保持機構10を下降させて載置台634に3つのピン17を載置させるだけで、保持機構10のピン17を結んだ三角形からなる面P1と、洗浄手段6の洗浄部材611を結んだ三角形からなる面P2とを平行に配置できる。これにより、複雑な構成を必要とすることなく、円板状ワークWを搬出する搬出手段5と円板状ワークWの被保持面を洗浄する洗浄手段6との相対位置関係を高精度に維持することが可能となる。なお、この場合、回転防止機構63の昇降手段636は、洗浄プレート61によって円板状ワークWを回転させる際に回転防止プレート631を下降させる役割を果たす。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態の洗浄手段6においては、回転防止機構63を構成する環状部632に載置台634を設け、この載置台634に搬出手段5を構成する保持機構10に設けられた3つのピン17を載置させる構成について説明している。しかしながら、回転防止機構63に設けられる載置台634の構成及びこの載置台634に載置させる保持機構10の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
以下、本実施の形態に係る研削装置1の洗浄手段6の他の例について図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係る研削装置1の洗浄手段6の他の例を示す平面図である。図12は、図11に示す洗浄手段6を構成する回転防止部材633が、搬出手段5が保持した円板状ワークWに接触した状態の断面模式図である。図11及び図12において、上記実施の形態と共通の構成要素については、同一の符号を付与し説明を省略する。なお、図11においては、説明の便宜上、円板状ワークWを破線で示すと共に、搬出手段5の保持部13及びピン17を示している。また、図12においては、説明の便宜上、それぞれ2つの洗浄部材611、回転防止部材633及び載置台634aを示している。
図11に示す洗浄手段6においては、回転防止プレート631の先端部を外側に延長して3つの載置台634aが設けられる点において、上記実施の形態と相違する。これらの載置台634aは、上記実施の形態と異なり、ピン17ではなく保持部13を載置するために設けられている。
上記実施の形態と同様に、図11に示す洗浄手段6においても、回転防止機構63の昇降手段636が回転防止プレート631を上昇させることにより、回転防止部材633が円板状ワークWの被保持面に接触する。このとき、回転防止部材633の上面は、洗浄部材611の上面と略同一の高さに位置付けられる。より具体的には、円板状ワークWの被保持面に接触した状態において、回転防止部材633の上面は、洗浄部材611の上面よりも0.5mmほど高い位置に配置される。これにより、回転防止部材633は、洗浄部材611よりも強く円板状ワークWの被保持面を押圧する。このようにして、回転防止部材633が円板状ワークWの回転を阻止する。
図11に示す洗浄手段6においては、回転防止プレート631を上昇させると、図12に示すように、保持部13が回転防止プレート631の先端に設けられた載置台634aに載置される。この場合、搬出手段5及び洗浄手段6においては、保持部13の共通位置(例えば、下端部)を結んだ三角形からなる面P3(図12に示す一点鎖線で示される面P3)と、3つの洗浄部材611の共通位置(例えば、上面部)を結んだ三角形からなる面P4(図12に示す一点鎖線で示される面P4)とが平行に配置される。
このようにして、図11に示す洗浄手段6においても、円板状ワークWの回転を防止すべく、回転防止プレート631を上昇させると、保持部13が載置台634に載置されることによって支持プレート14と回転防止機構63とが一定の位置関係を有した状態で配置される。これにより、搬出手段5及び洗浄手段6を個別に位置決めするような構成等を備えることなく両者の相対位置を決定できる。この結果、複雑な構成を必要とすることなく、円板状ワークWを搬出する搬出手段5と円板状ワークWの被保持面を洗浄する洗浄手段6との相対位置関係を高精度に維持することが可能となる。
また、支持プレート14から下方側に延びる長さを、保持部13及びピン17で共通の長さとし、上記実施の形態に係る回転防止機構63の環状部632に保持部13及びピン17の双方を載置するようにしてもよい。