「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを図1〜図14に基づいて説明する。
図1〜図6に示す第1実施形態のディスクブレーキ1は、自動二輪車の前輪制動用のディスクブレーキである。なお、これに限らず、例えば自動二輪車の後輪制動用や四輪自動車の制動用のディスクブレーキにも勿論適用可能である。
このディスクブレーキ1は、図1〜図6に示すように、制動対象となる車輪とともに回転するディスクロータ2と、車体側に取り付けられてこのディスクロータ2に摩擦抵抗を付与するキャリパ3とを備えている。
キャリパ3は、ディスクロータ2の外周側を跨いだ状態で車体側に取り付けられるキャリパ本体5と、ディスクロータ2に対向するように、図2,図4に外周のみを点線で示すようにキャリパ本体5に収容される複数のピストン6,6と、ディスクロータ2に対向するようにキャリパ本体5に収容される、ピストン6,6より小径の複数のピストン7,7とを有している。
具体的には、共通部品である二つのピストン6,6がディスクロータ2の径方向および回転方向の位置を合わせてディスクロータ2の軸方向両側に対をなして設けられており、共通部品である二つのピストン7,7がディスクロータ2の径方向および回転方向の位置を合わせてディスクロータ2の軸方向両側に対をなして設けられている。ディスクロータ2の軸方向片側において1つのピストン6と、1つのピストン7とが、ディスクロータ2の回転方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。よって、キャリパ3は、対向ピストン型の4ポットキャリパとなっている。なお、以下においては、ディスクロータ2の径方向をロータ径方向と称し、ディスクロータ2の軸線方向をロータ軸方向と称し、ディスクロータ2の回転方向(円周方向)をロータ回転方向と称す。
図1に示すように、キャリパ本体5は、ディスクロータ2のアウタ側(ロータに対して車輪の反対側)およびインナ側(ロータに対して車輪側)に配置される一対のシリンダ部10およびシリンダ部11と、これらシリンダ部10,11を連結する一対の端側連結部12および端側連結部13とを有している。なお、本実施の形態では、シリンダ部10,11及び端側連結部12,13を一体物で形成したモノブロックキャリパを例に挙げたが、シリンダ部10,11を二体として、ボルトや溶着等で連結してもよい。
シリンダ部10およびシリンダ部11は、図2,図4に点線で示すように、それぞれ複数のピストン6,7をロータ回転方向に並べて収容するためロータ回転方向に沿って長い形状をなしている。図1に示すように、端側連結部12および端側連結部13は、一対のシリンダ部10,11のロータ回転方向における両端部においてディスクロータ2を跨いでこれらシリンダ部10,11を連結している。なお、ピストン6,7は、少なくとも一対あればよく、3対、4対または、左右で数を異ならせてもよい。
図3,図5に示すように、端側連結部12には、ロータ軸方向の略中央に、ロータ径方向の内側から外側に向けて凹む形状のディスクパス部14が形成されている。このディスクパス部14は、ディスクロータ2の外周側が面するように配置される。図3,図6に示すように、端側連結部13には、ロータ軸方向の略中央に、ロータ径方向の内側から外側に向けて凹む形状のディスクパス部15が形成されており、このディスクパス部15を通るようにディスクロータ2が配置される。図3に示すように、キャリパ本体5には、シリンダ部10、シリンダ部11、端側連結部12および端側連結部13で囲まれて、略中央にロータ径方向両側に開口するパッド組付用空間17が形成されている。ディスクパス部14,15は、このパッド組付用空間17よりもロータ回転方向の両外側にあって、このパッド組付用空間17のロータ軸方向の中央位置に開口する。
図1に示すように、キャリパ本体5には、一対の端側連結部12,13の間に、ディスクロータ2をロータ径方向外側で跨いで一対のシリンダ部10,11を連結する中間連結部(連結部)16が設けられている。中間連結部16は、キャリパ本体5のロータ回転方向の中央位置に設けられており、パッド組付用空間17をロータ径方向外側においてロータ軸方向に跨いで設けられている。よって、パッド組付用空間17のロータ径方向外側は、ロータ回転方向一側の端側連結部12および中間連結部16の間部分と、ロータ回転方向逆側の端側連結部13および中間連結部16の間部分とが開口している。なお、中間連結部16は、端側連結部12,13からも等距離の位置に設けた方が、剛性、各部品の左右共通性等から望ましいが、必要に応じて、偏った位置に設けてもよい。
図2に点線で示すように、キャリパ本体5のアウタ側のシリンダ部10には、ピストン6を収容するシリンダボア18およびピストン7を収容するシリンダボア19が形成されている。また、図4に点線で示すように、インナ側のシリンダ部11にも、ピストン6を収容するシリンダボア20およびピストン7を収容するシリンダボア21が形成されている。これらシリンダボア18〜21は、図3に示すパッド組付用空間17に開口しており、言い換えればディスクロータ2に対向する側に開口している。大径のシリンダボア18,20は、互いに中心軸線を一致させている。また、図2,図4に内周を点線で示す小径のシリンダボア19,21も、互いに中心軸線を一致させている。対をなすシリンダボア18,20と、対をなすシリンダボア19,21とが、ロータ回転方向に間隔をあけて並んで形成されている。シリンダボア18,20にピストン6,6が移動可能に配置され、シリンダボア19,21にピストン7,7が移動可能に配置されている。
図1に示すように、アウタ側のシリンダ部10には、ロータ回転方向の中央位置に給排口22が穿設されている。給排口22は、ディスクロータ2の中心とキャリパ本体5のロータ回転方向の中心とを通ってロータ径方向に沿う線(以下、径方向基準線という)に対し平行をなしている。この給排口22には、外部からブレーキ液を給排するための図示略のブレーキホースが接続される。この給排口22は、アウタ側のシリンダ部10に形成された二カ所の図2に点線で示すシリンダボア18,19の両方に連通している。図4に点線で示すインナ側のシリンダ部11には、図4に点線で示すシリンダボア20,21同士を連通させる図示略の連通路が形成されている。
図1,図2に示すように、一方の端側連結部12のロータ径方向外側には、ロータ回転方向外方かつアウタ側かつロータ径方向外方に指向して突出する略円柱状の通路用凸部23が形成されている。また、図1に示すように、この通路用凸部23のインナ側には、ロータ回転方向外方かつインナ側かつロータ径方向外方に指向して一部突出する略円柱状の通路用凸部24が形成されている。
通路用凸部23には、連通路23aがシリンダ部11の方向に向けて穿設されている。この通路用凸部23の外側部分には、エア抜き用のブリーダプラグ25が取り付けられている。通路用凸部24には、連通路24aがシリンダ部10の方向に向けて穿設されている。通路用凸部24の外側部分にこの連通路24aを封止する球状の閉塞プラグ26が取り付けられている。これらの連通路23a,24aはキャリパ本体5内で交差しており、ロータ回転方向の通路用凸部23側の図2に示すシリンダボア18と図4に示すシリンダボア20とを連通させる。上記した各連通路23a,24a等によって、図1に示す給排口22に導入されるブレーキ液が図2,図4に示すシリンダボア18〜21に供給される。
図1,図3に示すように、アウタ側のシリンダ部10には、ロータ回転方向両側の二カ所に、マウント穴27,27がシリンダ部10をロータ径方向に貫通して形成されている。これらマウント穴27,27は、径方向基準線に平行をなしており、キャリパ本体5のロータ回転方向の中心から等距離の位置に、互いにロータ軸方向の位置を合わせて形成されている。キャリパ3は、これらのマウント穴27,27に挿通される図示略の取付ボルトで車両の車体側に固定される、いわゆるラジアルマウントタイプとなっている。なお、上記各マウント穴は、キャリパ3が固定される車体に応じて変更が可能であり、必ずしも、径方向基準線に平行をなすようにしなくともよく、また、キャリパ本体5のロータ回転方向の中心から等距離の位置に形成しなくともよく、互いにロータ軸方向の位置を合わせて形成しなくともよい。すなわち、各マウント穴を径方向基準線に対して傾きを持って形成してもよいし、また、キャリパ本体5のロータ回転方向の中心から異なる距離で位置させても良く、ロータ軸方向の位置をずらして設けてもよい。
ここで、図1〜図6および後述の説明で使用する図7,図8,図14に示すキャリパ3と、図9,図10に示すキャリパ本体5とは、前輪の左側に配置されるものとなっている。つまり、この左配置のキャリパ3は、図1に示す給排口22およびマウント穴27が形成されたシリンダ部10を車幅方向外側(左側)に配置し、通路用凸部23,24が形成されブリーダプラグ25が取り付けられた一方の端側連結部12を鉛直方向上側に配置して、前輪の左側のディスクロータ2の車体前後方向後側に配置されることになる。その結果、端側連結部12が車両前進時のディスクロータ2の回転方向Fにおける出口側(以下、ロータ回出側という)に位置し、他方の端側連結部13が車両前進時のディスクロータ2の回転方向Fの入口側(以下、ロータ回入側という)に位置する。
これに対して、図示は略すが、右配置のキャリパは、そのキャリパ本体が左配置のキャリパ本体5に対してロータ軸方向(車幅方向)に鏡面対称の形状をなすようになっている。このため、給排口およびマウント穴が形成されたシリンダ部は、車幅方向外側(右側)に配置される。そして、右配置のキャリパは、通路用凸部が形成されブリーダプラグが設けられた一方の端側連結部を鉛直方向上側に配置して、前輪の右側のディスクロータの車体前後方向後側に配置されることになる。よって、左配置のキャリパ3のキャリパ本体5は左配置専用の部品であり、右配置のキャリパのキャリパ本体は右配置専用の部品となっている。
図7,図8に示すように、キャリパ本体5には、端側連結部12,13のロータ径方向中間位置に一対の共通部品であるパッドリテーナ28,28が配置されている。キャリパ本体5には、これらパッドリテーナ28,28を介して一対の共通部品であるブレーキパッド29,29が係止されている。図1に示すように、これら一対のブレーキパッド29,29は、ディスクロータ2に対向配置されることになる。このため、一方のブレーキパッド29がアウタ側のシリンダ部10とディスクロータ2との間に、他方のブレーキパッド29がインナ側のシリンダ部11とディスクロータ2との間に配置されている。
図1に示す給排口22を介して、図2に示すアウタ側のシリンダ部10のシリンダボア18,19内と、図4に示すインナ側のシリンダ部11のシリンダボア20,21内にブレーキ液が導入されると、図2に示すシリンダボア18,19に設けられた二つのピストン6,7および図4に示すシリンダボア20,21に設けられた二つのピストン6,7がブレーキ液の液圧によってディスクロータ2の方向に移動する。すると、図2に示すアウタ側のシリンダ部10に設けられた二つのピストン6,7が、図1に示すシリンダ部10とディスクロータ2との間に設けられた一方のブレーキパッド29を押圧してこれをディスクロータ2に押し付ける。また、図4に示すインナ側のシリンダ部11に設けられた二つのピストン6,7が、図1に示すシリンダ部11とディスクロータ2との間に設けられた他方のブレーキパッド29を押圧してこれをディスクロータ2に押し付ける。これにより、車両に制動力を発生させることになる。このとき、一対のブレーキパッド29,29は、ロータ径方向内方への移動が規制されるようにキャリパ本体5に係止されてロータ軸方向に移動することになる。よって、キャリパ本体5は、一対のブレーキパッド29,29をディスクロータ2へ押圧可能に係止する。
図1に示すように、キャリパ本体5の上記した中間連結部16は、ディスクロータ2とともに一対のブレーキパッド29,29をロータ軸方向に跨いで配置されている。図7に示すように、この中間連結部16とブレーキパッド29,29との間には、ブレーキパッド29,29を付勢してそのガタツキを防止するパッドスプリング31が設けられている。
図8に示すように、中間連結部16は、そのロータ径方向の内側つまりパッド組付用空間17側に天井面33が形成されており、天井面33にロータ径方向外方に凹む孔部34が形成されている。天井面33は、径方向基準線に対して直交しており、孔部34は、天井面33から径方向基準線に沿って形成されている。この孔部34は、ロータ軸方向においては天井面33の中央位置に形成されており、ロータ回転方向においては天井面33の中央位置よりもロータ回入側、つまり端側連結部13側にずれて形成されている。言い換えれば、孔部34は、ディスクロータ2とロータ軸方向の位置を合わせており、径方向基準線に対してロータ回入側にずれて中間連結部16に形成されている。
また、中間連結部16には、図1に示すように、ロータ回出側つまり端側連結部12側の端部に、ロータ回入側に向けて凹む凹部35が形成されている。この凹部35は、パッド組付用空間17のロータ軸方向の中央位置に形成されており、ディスクロータ2とロータ軸方向の位置を合わせて形成されている。なお、図1,図8においては左配置のキャリパ3を示しているが、図示略の右配置のキャリパのキャリパ本体においても、中間連結部の天井面のロータ軸方向中央のロータ回入側に孔部が、中間連結部のロータ回出側の端部のロータ軸方向中央に凹部が形成されることになる。
図9に示すように、キャリパ本体5の端側連結部12の中間連結部16側には、ロータ径方向外側に、ロータ回転方向にて中間連結部16とは反対向きに凹む凹壁部38が形成されている。図10に示すように、凹壁部38は、その中間連結部16側のロータ軸方向両端部に、互いに対向する一対の面部39,39を有している。
なお、図9,図10に示すキャリパ本体5は、シリンダ部10、シリンダ部11、端側連結部12、端側連結部13および中間連結部16が、インナ側のシリンダ部11の二カ所の図4に示すシリンダボア20,21の底部を除いて鋳造により一体成形されている。そして、これら二カ所のシリンダボア20,21の底部の開口部を介して図2,図4に点線で示すシリンダボア18〜21の内面が切削加工される。この後、シリンダ部11のシリンダボア20,21の底部の開口部に別体の閉塞部材を摩擦攪拌接合で接合させて開口部を閉塞して底部を形成することにより、キャリパ本体5が形成される。なお、シリンダ部10、シリンダ部11、端側連結部12、端側連結部13および中間連結部16の全体を、鋳造により一体成形し、シリンダ部10,11の間のパッド組付用空間17からシリンダボア18〜21の内面を切削加工しても良い。
図9に示すように、キャリパ本体5の端側連結部12には、パッド組付用空間17との境界部分に段状のパッド支持部40が形成されている。このパッド支持部40は、ロータ軸方向におけるディスクパス部14の位置に形成される中間延在部41と、中間延在部41のロータ軸方向の両側に形成されるパッドガイド部42,42とを有している。よって、パッドガイド部42,42は、ディスクパス部14のロータ軸方向における両側に形成されている。
パッド支持部40は、ロータ径方向の外端位置に、ロータ径方向外方に向く平坦なパッド係合面部45を有している。このパッド係合面部45が、中間延在部41およびパッドガイド部42,42のそれぞれのロータ径方向外側の端面を構成している。言い換えれば、中間延在部41およびパッドガイド部42,42のロータ径方向外側は、ディスクパス部14よりもロータ径方向外側にある同一平面のパッド係合面部45となっている。パッド係合面部45は、その延長面が径方向基準線に対して垂直をなすように形成されている。パッド係合面部45は、端側連結部12の全体、言い換えればキャリパ本体5と同一部材で形成されている。
パッドガイド部42,42には、パッド組付用空間17に面するトルク受面46,46が形成されている。トルク受面46,46は、径方向基準線に対して平行をなしており、ロータ軸方向に平行をなしている。図10に示すように、シリンダ部10,11のパッド組付用空間17との境界位置には、内面47,47が形成されており、これら内面47,47はロータ軸方向に直交するように形成されている。内面47,47とトルク受面46,46との境界位置には、図9に示すように、トルク受面46,46よりもロータ回出側に凹み、内面47,47よりもロータ軸方向の外側に凹む逃面48,48が形成されている。
中間延在部41には、パッド組付用空間17側の端部にキャリパ側切欠部55が形成されている。キャリパ側切欠部55は、トルク受面46,46よりもロータ回出側に凹んでいる。言い換えれば、キャリパ側切欠部55は、ロータ回入側(ロータ回転方向におけるキャリパ本体5の中央側)に開口している。キャリパ側切欠部55の最もロータ回出側の面部56は、トルク受面46,46と平行をなしており、トルク受面46,46よりもロータ回出側に位置している。このキャリパ側切欠部55は、パッド係合面部45をも切り欠いてロータ径方向外方に抜けている。よって、パッド係合面部45には、ロータ軸方向にてディスクパス部14と合う中間延在部41の位置に、ロータ回出側(言い換えればロータ回転方向におけるキャリパ本体5の外方側)に向かって部分的に凹むキャリパ側切欠部55が形成されている。
キャリパ本体5の端側連結部13の中間連結部16側には、ロータ径方向外側に、ロータ回転方向にて中間連結部16とは反対向きに凹む凹壁部58が形成されている。凹壁部58は、その中間連結部16側のロータ軸方向両端部に、互いに対向する一対の面部59,59を有している。
キャリパ本体5のロータ回入側の端側連結部13には、端側連結部12と同様に、パッド組付用空間17との境界部分に段状のパッド支持部60が形成されている。このパッド支持部60は、ロータ軸方向におけるディスクパス部15の位置に形成される中間延在部61と、そのロータ軸方向の両側に形成されるパッドガイド部62,62とを有している。よって、パッドガイド部62,62は、ディスクパス部15のロータ軸方向における両側に形成されている。
パッド支持部60は、ロータ径方向の外端位置に、ロータ径方向外方に向く平坦なパッド係合面部65を有している。このパッド係合面部65が、中間延在部61およびパッドガイド部62,62のそれぞれのロータ径方向外側の端面を構成している。言い換えれば、中間延在部61およびパッドガイド部62,62のロータ径方向外側は、ディスクパス部15よりもロータ径方向外側にある同一平面のパッド係合面部65となっている。パッド係合面部65は、その延長面が径方向基準線に対して垂直をなすように形成されており、パッド係合面部45と同一平面に配置されている。パッド係合面部65は、端側連結部13の全体、言い換えればキャリパ本体5と同一部材で形成されている。
パッドガイド部62,62には、パッド組付用空間17に面するトルク受面66,66が形成されている。トルク受面66,66は、径方向基準線に対して平行をなしており、ロータ軸方向に平行となっている。トルク受面66,66は、トルク受面46,46とロータ軸方向およびロータ径方向の位置を合わせている。シリンダ部10,11の内面47,47とトルク受面66,66との境界位置には、図9に示すように、トルク受面66,66よりもロータ回入側に凹み、内面47,47よりもロータ軸方向の外側に凹む逃面68,68が形成されている。
中間延在部61には、パッド組付用空間17側の端部にキャリパ側切欠部75が形成されている。キャリパ側切欠部75は、トルク受面66,66よりもロータ回入側に凹んでいる。言い換えれば、キャリパ側切欠部75は、ロータ回出側(ロータ回転方向におけるキャリパ本体5の中央側)に開口している。キャリパ側切欠部75の最もロータ回入側の面部76は、トルク受面66,66と平行をなしており、トルク受面66,66よりもロータ回入側に位置している。このキャリパ側切欠部75は、パッド係合面部65をも切り欠いてロータ径方向外方に抜けている。よって、パッド係合面部65には、ロータ軸方向にてディスクパス部15と合う中間延在部61の位置に、ロータ回入側(言い換えればロータ回転方向におけるキャリパ本体5の外方側)に向かって部分的に凹むキャリパ側切欠部75が形成されている。
図11に示すように、ブレーキパッド29は、長手方向の中央を基準に鏡面対称形状をなす裏板90を有している。この裏板90は、一定板厚となっており、主板部91と一対の突片部92,92とを有している。主板部91は、略長方形状をなしており、一対の突片部92,92は、この主板部91の高さ方向(図11の上下方向,ディスクロータ2の中心からブレーキパッド29のロータ周方向の中心へ向かう方向)の一側の長手方向(図11の左右方向)の両端部から高さ方向の外側に突出した後、長手方向の外側に突出している。裏板90には、主板部91の長手方向の両端部と一対の突片部92,92との境界位置に、長手方向の中央側に向けて凹む一対のパッド側切欠部93,93が形成されている。
図8に示すように、ブレーキパッド29は、一対の突片部92,92がロータ径方向の外端側に配置された状態で、これら突片部92,92においてキャリパ本体5のパッド支持部40,60に支持される。よって、ブレーキパッド29には、ロータ径方向における外端側となる位置に、ロータ回転方向においてブレーキパッド29の中央部から離れる方向へ突出する突片部92,92が形成されている。また、ブレーキパッド29には、一対の突片部92,92よりもロータ径方向における内側に、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央側に向かって凹む一対のパッド側切欠部93,93が形成されている。
図11に示すように、主板部91は、一対の面部95,95と面部(垂直となる面)96と面部97とを有している。
一対の面部95,95は、主板部91の長手方向の両端位置にあって互いに平行をなしており、主板部91の長手方向に直交している。面部96は、主板部91の高さ方向の突片部92,92側の端位置にあって主板部91の高さ方向に直交しており、よって、一対の面部95,95と直交する方向に沿っている。面部97は、主板部91の高さ方向の一対の突片部92,92とは反対側の端位置にあって全体的に裏板90の高さ方向に直交する方向に延在しており、主板部91の長手方向の中央側ほど面部96との距離を近づけるように段差状をなしている。
一対の突片部92,92は、それぞれ、面部101と面部102と面部103と面部(傾斜面)104とを有している。
面部101,101は、主板部91の高さ方向において突片部92,92の主板部91側に位置している。面部101,101は、いずれも主板部91側に向いて同一平面に配置され、主板部91の高さ方向に直交、言い換えれば、長手方向に平行となっている。よって、面部101,101は、主板部91の面部96と平行をなし、主板部91の面部95,95と直交する方向に沿っている。
面部102,102は、面部101,101の主板部91の長手方向における主板部91とは反対側の端縁部から主板部91の高さ方向に主板部91から離れるように延出する。面部102,102は、一対の突片部92,92の主板部91の長手方向における両端位置にあって主板部91の長手方向の外方に向き、主板部91の長手方向に直交している。面部102,102は、面部95,95と平行をなしている。
面部103,103は、面部102,102の面部101,101とは反対側の端縁部から、主板部91の長手方向中央側に向け延出する。面部103,103は、突片部92,92の主板部91の高さ方向における主板部91とは反対側の端位置にあって、主板部91の高さ方向における主板部91とは反対側に向いている。これら面部103,103は、同一平面に配置されており、主板部91の高さ方向に直交し、面部101,101と平行をなしている。
面部104,104は、いずれも、主板部91の長手方向の同側にある面部103と面部96とを繋いでおり、主板部91の高さ方向の外方にほぼ向いており、裏板90の厚さ方向に沿っている。面部104,104は、主板部91の長手方向において面部96に近づくと、主板部91の高さ方向において面部96に近づくように傾斜している。
一対のパッド側切欠部93,93は、それぞれ、上記した面部101と面部108と面部109とからなっている。
面部108,108は、それぞれ、隣り合う面部101の主板部91の長手方向における中央側の端縁部から主板部91の高さ方向の主板部91側に延出するもので、主板部91の長手方向外側に向いており、主板部91の長手方向に直交して形成されている。よって、面部108,108は、面部101,101と直交し、面部95,95および面部102,102と平行をなしている。
面部109,109は、それぞれ、主板部91の長手方向の同側にある面部108の面部101とは反対側の端縁部から主板部91の長手方向外側に延出してこの方向にある主板部91の面部95に繋がる。面部109,109は、主板部91の高さ方向外方にほぼ向いており、主板部91の長手方向における外側ほど主板部91の高さ方向に突片部92,92から離れるように傾斜している。
ブレーキパッド29は、裏板90の厚さ方向一側の面の長手方向に離間した二カ所に摩擦材111,112を接着することで形成されている。図11に示すようにブレーキパッド29を裏板90の突片部92,92を上側にして摩擦材111,112側から見た場合、摩擦材111には、その中央に対して左側にずれて溝113が、摩擦材112にも、その中央に対して左側にずれて溝114が形成されている。なお、溝113,114は、摩擦材111,112の裏板90への接着後に切削加工により形成される。
なお、ブレーキパッド29は、図8に示すように、面部95,95において、キャリパ本体5のトルク受面46,66に案内されてロータ軸方向に摺動することになる。よって、面部95,95間の間隔は、トルク受面46,66間の間隔よりもロータ軸方向に摺動可能となる所定の隙間分だけ狭くなっている。
ここで、図10,図11を参照して、キャリパ本体5とブレーキパッド29との関係について説明する。ブレーキパッド29は、裏板90の長手方向一側の突片部92の面部102と長手方向逆側のパッド側切欠部93の面部108との距離、つまり、裏板90の長手方向一側のパッド側切欠部93の面部108と長手方向逆側の突片部92の面部102との距離が、キャリパ側切欠部55,75の面部56,76間の距離よりも短くなっている。
よって、ブレーキパッド29は、一方のパッド側切欠部93が、キャリパ本体5の端側連結部12のパッド係合面部45よりもロータ径方向における内側部位であってロータ軸方向にてディスクパス部14と位置が合う面部56に当接したときに、そのロータ回転方向における中央部位置が、ロータ回転方向における中間延在部41,61間の中心つまりパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置である面部56側にずれる寸法に形成されている。また、他方のパッド側切欠部93が、キャリパ本体5の端側連結部13のパッド係合面部65よりもロータ径方向における内側部位であってロータ軸方向にてディスクパス部15と位置が合う面部76に当接したときに、そのロータ回転方向における中央部位置が、ロータ回転方向における中間延在部41,61間の中心つまりパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置である面部76側にずれる寸法に形成されている。
言い換えれば、キャリパ本体5は、キャリパ側切欠部55の面部56で、ブレーキパッド29の突片部92よりもロータ径方向における内側位置である面部108に当接したとき、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央部位置が、ロータ回転方向における中間延在部41,61間の中心つまりパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置である面部56側にずれる寸法に形成されている。また、キャリパ本体5は、キャリパ側切欠部75の面部76で、ブレーキパッド29の突片部92よりもロータ径方向における内側位置である面部108に当接したとき、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央部位置が、ロータ回転方向における中間延在部41,61間の中心つまりパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置である面部76側にずれる寸法に形成されている。
ブレーキパッド29は、裏板90の長手方向一側の面部102,102間の距離A(図11参照)が、言い換えればブレーキパッド29の最大長が、トルク受面46,66間の距離よりも長い。また、距離Aは、パッドガイド部42の位置のパッド係合面部45とパッドガイド部62の位置のパッド係合面部65との間の距離よりも長い。さらに、距離Aは、キャリパ側切欠部55,75の面部56,76間の距離よりも長い。また、距離Aは、中間延在部41の位置のパッド係合面部45と中間延在部61の位置のパッド係合面部65との間の距離よりも長くなっている。
ブレーキパッド29は、面部95,95がトルク受面46,66の間にあるとき、一方の面部101がパッドガイド部42の位置のパッド係合面部45にロータ回転方向の位置を合わせてロータ径方向に対向するようになっている。また、他方の面部101がパッドガイド部62の位置のパッド係合面部65にロータ回転方向の位置を合わせてロータ径方向に対向するようになっている。言い換えれば、キャリパ本体5の一対の端側連結部12,13には、ブレーキパッド29の突片部92,92のロータ径方向における内側部位である面部101,101が同時に対向して配置されるパッド係合面部45,65が形成されている。
図12に示すように、パッドリテーナ28は、長手方向の中央を基準に鏡面対称形状をなしている。パッドリテーナ28は、一定板厚の板材からプレス成形により打ち抜かれ折り曲げられて形成されるもので、載置板部121と、一対の係合板部122,122と、一対の当接板部123,123と、立板部124と、カバー板部125とを有している。
載置板部121の長手方向がパッドリテーナ28の長手方向(幅方向)となっており、載置板部121は、長手方向の中央所定範囲に奥行方向の一縁部から凹む中央凹部130が形成されている。また、載置板部121には、長手方向の両端所定範囲の奥行方向の中央凹部130側に、奥行方向の一縁部から凹む切欠部131,131が形成されている。また、載置板部121には、長手方向の両端所定範囲の奥行方向の中央凹部130とは反対側に、長手方向の端側ほど載置板部121の奥行方向長さを短くするように傾斜する切欠部132,132が形成されている。また、載置板部121には、長手方向の切欠部132,132の間位置に、奥行方向の中央凹部130とは反対側の縁部から凹む凹部133,133が形成されている。
一対の係合板部122,122は、載置板部121の長手方向の両端部から載置板部121の厚さ方向同側に延出している。係合板部122,122は、載置板部121から厚さ方向に離れるほど載置板部121の長手方向の外側に位置するように斜めに延出している。
一対の当接板部123,123は、載置板部121の奥行方向の中央凹部130側の一縁部であって長手方向の中央凹部130と切欠部131,131との間位置に形成されている。一対の当接板部123,123は、載置板部121からその厚さ方向の係合板部122,122とは反対側に、延出先端側ほど載置板部121の奥行方向の中央側に位置するように斜めに延出している。
立板部124は、載置板部121の奥行方向の中央凹部130とは反対側の他縁部から載置板部121に垂直をなして載置板部121の厚さ方向の係合板部122,122と同側に延出する一対の脚板部136,136と、これら脚板部136,136の載置板部121とは反対側同士を連結する連結板部137とを有している。
カバー板部125は、立板部124の載置板部121とは反対側の端縁部から載置板部121の奥行方向にて載置板部121と同側に延出している。カバー板部125は、立板部124側が立板部124と同じ長さの基端板部139となっており、立板部124とは反対側が基端板部139よりも長手方向両側に長い先端板部140となっている。基端板部139は、立板部124との境界部分が載置板部121側に中心を有する湾曲板状をなしており、立板部124とは反対側が先端側ほど載置板部121に近づくように傾斜している。先端板部140は、基端板部139側が載置板部121とは反対側に中心を有する湾曲板状をなす湾曲板部141となっており、基端板部139とは反対側が先端側ほど載置板部121からその厚さ方向に離間するように傾斜する平板状の傾斜板部142となっている。
図1に示すように、一対のパッドリテーナ28,28は、キャリパ本体5のパッド支持部40,60に取り付けられることになる。つまり、一方のパッドリテーナ28が、係合板部122,122において端側連結部12の凹壁部38の一対の面部39,39に係合し、図8に示すように載置板部121においてパッド支持部40のパッド係合面部45に当接し、当接板部123,123においてパッド支持部40のトルク受面46,46に当接する。すると、パッドリテーナ28は、図12に示す中央凹部130が、図10に示すパッド支持部40のキャリパ側切欠部55とロータ軸方向の位置が合うことになる。また、このとき、中央凹部130はキャリパ側切欠部55の面部56よりもロータ回転方向の中間連結部16とは反対側まで凹むことになる。
同様に、図1に示すように、他方のパッドリテーナ28が、係合板部122,122において端側連結部13の凹壁部58の一対の面部59,59に係合し、図8に示すように、載置板部121においてパッド支持部60のパッド係合面部65に当接し、当接板部123,123においてパッド支持部60のトルク受面66,66に当接する。すると、パッドリテーナ28は、図12に示す中央凹部130が、図10に示すパッド支持部60のキャリパ側切欠部75とロータ軸方向の位置が合うことになる。また、このとき、中央凹部130はキャリパ側切欠部75の面部76よりもロータ回転方向の中間連結部16とは反対側まで凹むことになる。
一対のブレーキパッド29,29は、図8に示すように、キャリパ本体5のパッド支持部40,60に取り付けられた状態のパッドリテーナ28,28を介してキャリパ本体5に支持される。このようなキャリパ本体5への配置時に、一対のブレーキパッド29,29は、それぞれ、主板部91の両側の面部95,95がトルク受面46,66にロータ軸方向およびロータ径方向の位置を重ね合わせてロータ回転方向に対向することになる。そして、この状態で、一方の突片部92がパッド支持部40に配置されたパッドリテーナ28の載置板部121とカバー板部125との間に挿入されることになり、他方の突片部92がパッド支持部60に配置されたパッドリテーナ28の載置板部121とカバー板部125との間に挿入されることになる。
このとき、ブレーキパッド29,29は、それぞれ、突片部92,92が、面部101,101においてパッドリテーナ28の載置板部121,121に当接し、面部103,103においてカバー板部125,125に対向する。また、このとき、突片部92,92の面部102,102は、パッドリテーナ28,28の立板部124,124の両方から間隔をあけて離れるようになっている。さらに、このとき、ブレーキパッド29,29は、それぞれ、面部108,108を当接板部123,123から離間させる。このようにして、ブレーキパッド29,29のキャリパ本体5に対するロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定される。キャリパ本体5は、ロータ軸方向一側のパッドガイド部42,62がパッドリテーナ28,28の載置板部121,121を介して一方のブレーキパッド29を支持することになり、ロータ軸方向他側のパッドガイド部42,62がパッドリテーナ28,28の載置板部121,121を介して他方のブレーキパッド29を支持することになる。
キャリパ本体5に対するロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されたブレーキパッド29,29は、それぞれの中心線が一致しており、これらの中心線は、キャリパ本体5のロータ回転方向の中央を通っている。よって、キャリパ本体5のロータ回転方向の中心を通る上記した径方向基準線は、言い換えれば、ブレーキパッド29,29の中心とディスクロータ2の中心とを通ってロータ径方向に沿うことになる。そして、ブレーキパッド29,29は、それぞれ、面部96がブレーキパッド29の中心とディスクロータ2の中心とを結ぶ径方向基準線に対して垂直をなし、面部104,104がブレーキパッド29のロータ回出方向およびロータ回入方向に対して交差するとともに面部96に対して傾いて形成される。
図13に示すように、パッドスプリング31は、180度回転させた際の形状が同一となる回転対称の形状をなしており、具体的には、長手方向(幅方向)の中央を基準に鏡面対称形状をなし奥行方向の中央を基準に鏡面対称形状をなしている。パッドスプリング31は、一定板厚の板材からプレス成形により打ち抜かれ折り曲げられて形成されるもので、基板部150と、一対の爪部151,151と、二対四カ所の付勢片152,152,152,152とを有している。
基板部150は、平板状をなしており、一方向に長い中央板部153と、中央板部153の長手方向の中央から奥行方向両側に突出する一対の突出板部154,154と、突出板部154,154の中央板部153とは反対側に中央板部153の長手方向両側に延出するように形成された一対の側板部155,155とを有している。一対の側板部155,155は、中央板部153と同方向に長い形状をなしている。
爪部151,151は、基板部150の中央板部153の長手方向の両端部から、基板部150の厚さ方向同側に延出しており、互いに対向している。爪部151,151は、それぞれ、基板部150側の基端板部156と基板部150とは反対側の先端板部157とを有している。基端板部156は、先端側ほど中央板部153の長手方向において中央板部153の中央側に近づくように傾斜している。先端板部157は、先端側ほど中央板部153の長手方向において中央板部153の中央とは反対側に位置するように傾斜している。
四カ所の付勢片152,152,152,152のうち、奥行方向一側の一対の付勢片152,152は、基板部150の一方の側板部155からその長手方向両側に延出している。また、他側の一対の付勢片152,152は、基板部150の他方の側板部155からその長手方向両側に延出している。これら付勢片152,152,152,152の延在方向がパッドスプリング31の長手方向となっており、一側の一対の付勢片152,152と他側の一対の付勢片152,152とを結ぶ方向がパッドスプリング31の奥行方向となっている。
一側の一対の付勢片152,152は、一対の爪部151,151よりもパッドスプリング31の長手方向の両側へ延びて設けられ、他方の一対の付勢片152,152も、一対の爪部151,151よりもパッドスプリング31の長手方向の両側へ延びて設けられている。
付勢片152,152,152,152は、それぞれ、基板部150の側板部155からパッドスプリング31の長手方向に延出する腕板部161と、腕板部161の側板部155とは反対側にあって腕板部161よりもパッドスプリング31の奥行方向両側に広がる押圧板部162とを有している。
腕板部161は、先端側ほど基板部150の厚さ方向の爪部151とは反対側に位置するように傾斜して延出している。押圧板部162は、その腕板部161側が、腕板部161の厚さ方向の爪部151側に中心を有する湾曲板状をなす湾曲板部163となっている。また、押圧板部162は、その腕板部161とは反対側が、延出先端側ほど腕板部161の厚さ方向の爪部151側かつパッドスプリング31の長手方向外側に位置するように傾斜する先端板部164となっている。なお、湾曲板部163は、腕板部161の側板部155とは反対方向の延長面よりも腕板部161の厚さ方向の爪部151とは反対側に突出している。
パッドスプリング31は、図8に示すように、互いに対向する一対の爪部151,151によって中間連結部16に係合してキャリパ本体5に取り付けられる。具体的には、一方の爪部151が中間連結部16のロータ回入側の孔部34に挿入され、他方の爪部151がロータ回出側の凹部35に配置される。これにより、互いに対向する一対の爪部151,151が中間連結部16の孔部34の凹部35側の壁面と凹部35の孔部34側の壁面とに当接して、これらの間を挟持する。このようにして、パッドスプリング31がキャリパ本体5に取り付けられる。一対の爪部151,151が係合する孔部34の凹部35側の壁面と凹部35の孔部34側の壁面との間の中心位置は、キャリパ本体5のロータ回転方向の中央に対してロータ回転方向にずれており、具体的にはロータ回出側にずれている。
上記のように一対の爪部151,151が中間連結部16に係合した状態のパッドスプリング31は、ロータ軸方向一側の一対の付勢片152,152が、一対の爪部151,151よりもロータ回転方向両側へ延びることになり、ロータ軸方向他側の一対の付勢片152,152も、一対の爪部151,151よりもロータ回転方向両側へ延びた状態となる。
また、一対の爪部151,151が中間連結部16に係合した状態のパッドスプリング31は、一対の爪部151,151の係合位置の中心が、キャリパ本体5のロータ回転方向の中央に対してロータ回転方向にずれているため、長手方向の中心がキャリパ本体5のロータ回転方向の中央に対してロータ回転方向にずれた状態となる。言い換えれば、パッドスプリング31は、長手方向の中心がブレーキパッド29,29のロータ回転方向の中心に対してロータ回転方向にずれた状態で、一対の爪部151,151が中間連結部16に係合する。また、一対の爪部151,151が中間連結部16に係合した状態で、パッドスプリング31は、キャリパ本体5に対する位置が規定されることになり、キャリパ本体5に対するロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されているブレーキパッド29,29に対してもロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定される。
なお、パッドスプリング31は、180度回転すると同形状となる回転対称の形状をなしているため、図8に示すようにキャリパ本体5に取り付ける場合に、ロータ回転方向に長手方向を沿わせて取り付ければ、ロータ回転方向の前後の向きを考慮する必要はない。また、パッドスプリング31は、孔部34と中間連結部16の凹部35とは反対側との間に一対の爪部151,151を配置した場合、これらの間隔よりも一対の爪部151,151の間隔の方が広く、よって中間連結部16に組み付かずに脱落する状態となり、これにより、このような誤組み付けを規制するようになっている。さらに、パッドスプリング31は、長手方向(ロータ回転方向)および奥行方向(ロータ軸方向)の両方向に鏡面対称の形状をなしているため、上記した左配置のキャリパ3に対し、車幅方向に鏡面対称形状をなす右配置のキャリパにおいても、共通部品として使用されることになり、右配置のキャリパに使用する際にもロータ回転方向の前後の向きを考慮する必要がなくなる。
ブレーキパッド29,29に対してロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されてキャリパ本体5に取り付けられたパッドスプリング31は、ロータ回入側にある付勢片152,152が、押圧板部162,162の湾曲板部163,163においてブレーキパッド29,29の裏板90,90の面部96,96に当接してロータ径方向外側に弾性変形して面部96,96をロータ径方向内方に付勢する。また、パッドスプリング31は、ロータ回出側にある付勢片152,152が、押圧板部162,162の湾曲板部163,163においてブレーキパッド29,29の裏板90,90のロータ回出側の面部104,104に当接してロータ径方向外側に弾性変形して面部104,104をその傾斜によりロータ回出方向かつロータ径方向内方に付勢する。
つまり、パッドスプリング31のロータ回出側の付勢片152,152の押圧板部162,162は、ブレーキパッド29,29のロータ回転方向の中心とディスクロータ2の中心とを結ぶ径方向基準線に対して垂直となる面部96,96を付勢するロータ径方向付勢部と、ブレーキパッド29,29のロータ回出方向に対して交差するとともに面部96,96に対して傾いて形成される傾斜面である面部104,104を付勢するロータ回出方向付勢部とを構成している。
そして、ブレーキパッド29,29に対してロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されてキャリパ本体5に取り付けられたパッドスプリング31は、付勢片152,152,152,152のうち一対の爪部151,151よりもロータ回転方向一側(回入側)へ延びる付勢片152,152が押圧板部162,162でブレーキパッド29,29の面部96,96に当接するときに、付勢片152,152,152,152のうち一対の爪部151,151よりもロータ回転方向他側(回出側)へ延びる付勢片152,152が押圧板部162,162でブレーキパッド29,29の面部104,104に当接する。なお、中間連結部16に孔部をロータ回転方向に二カ所、互いのロータ回転方向の中央位置がブレーキパッド29,29のロータ回転方向の中央位置に対しロータ回転方向(回出側)にずれるように形成し、これらの孔部にパッドスプリング31の一対の爪部151,151を挿入するようにしても良い。
次に、一対のブレーキパッド29,29をキャリパ3に取り付ける手順の一例について説明する。ここでは、主に図8および図14を参照しつつシリンダ部11側に配置されるブレーキパッド29の取り付けについて説明する。
図14に示すように、キャリパ本体5のパッド支持部40,60に上記したようにパッドリテーナ28,28を取り付け、キャリパ本体5の中間連結部16に上記したようにパッドスプリング31を取り付けた状態とする。
この状態で、ブレーキパッド29を、ロータ径方向外側に突片部92,92を配置し、ロータ軸方向おいて裏板90がシリンダ部11に向く姿勢とする。そして、この姿勢のブレーキパッド29を、ロータ軸方向の位置をディスクパス部14,15の位置に合わせて、ロータ径方向の内側から外側に移動させる。
その際に、一方の突片部92がロータ径方向の外側に、他方の突片部92がロータ径方向の内側に位置するように傾斜させてブレーキパッド29を移動させる。ここでは、ロータ回出側にある突片部92をロータ径方向の外側に、ロータ回入側にある突片部92をロータ径方向の内側にする場合を例にとり説明するが、勿論、逆であっても良い。
上記移動により、ロータ径方向外側にある一方の突片部92のみをロータ回転方向両側の中間延在部41,61の間を通過させて中間延在部41,61よりもロータ径方向外側に位置させて、ブレーキパッド29のこの一方の突片部92の近傍のパッド側切欠部93を中間延在部41に対向させる。
次に、ロータ径方向外側にある一方の突片部92がロータ回転方向において近接する中間延在部41の方向に、ブレーキパッド29をロータ回転方向に沿って移動させる。すると、ブレーキパッド29は、その一方の突片部92が、パッド支持部40に取り付けられたパッドリテーナ28のカバー板部125と載置板部121との間に斜めに入り込み、中間延在部41の位置のキャリパ側切欠部55の面部56に、これに対向するパッド側切欠部93が面部108において当接する。なお、突片部92が、パッドリテーナ28のカバー板部125と載置板部121との間に斜めに入り込む際に、載置板部121の手前側には図12に示す中央凹部130が形成されているため、中央凹部130内を通ることで、実質的にカバー板部125とパッド係合面部45との間を通過することになり、挿入が容易となる。
上記のように、キャリパ側切欠部55の面部56に、これに対向するパッド側切欠部93の面部108を当接させた状態のブレーキパッド29は、この当接位置から他方の突片部92の面部102までの距離が、この当接位置から他方の中間延在部61の面部76までの距離よりも短くなる。よって、この状態で、図14に示す軌跡のように、ブレーキパッド29を、それまで中間延在部61のロータ径方向内側にあった他方の突片部92が中間延在部61をロータ径方向外側に越えるように回転させると、他方の突片部92が中間延在部61よりも中間延在部41側を通って中間延在部61のロータ径方向外側に位置する。なお、この回転時に、ブレーキパッド29は、ロータ軸方向のシリンダ部11側に裏板90が、逆側に摩擦材111,112が配置されていることから、中間連結部16に取り付けられたパッドスプリング31のシリンダ部11側にある一対の付勢片152,152の押圧板部162,162に裏板90において当接し、これらの付勢片152,152を弾性変形させながら、回転する。
次に、ブレーキパッド29を、ロータ回転方向に中間延在部61の方向に移動させて、他方の突片部92をパッド支持部60に取り付けられたパッドリテーナ28のカバー板部125と載置板部121との間に入り込ませながら、図8に示すように、主板部91の面部95,95のロータ回転方向の位置を、トルク受面46,66の位置に合わせる。このように、面部95,95のロータ回転方向の位置がトルク受面46,66に合った状態では、一方の突片部92が、パッド支持部40に取り付けられたパッドリテーナ28のカバー板部125と載置板部121との間に配置され、他方の突片部92が、パッド支持部60に取り付けられたパッドリテーナ28のカバー板部125と載置板部121との間に配置される状態となる。また、この状態では、パッドスプリング31のロータ回入側にある付勢片152が、押圧板部162の湾曲板部163においてブレーキパッド29の裏板90の面部96に当接し、ロータ回出側にある付勢片152が、押圧板部162の湾曲板部163においてブレーキパッド29の裏板90のロータ回出側の面部104に当接する。
上記状態から、ブレーキパッド29を、裏板90がシリンダ部11に近づくように、ロータ軸方向に沿って移動させる。すると、ブレーキパッド29は、裏板90がパッドスプリング31のシリンダ部11側にある付勢片152,152の幅広の押圧板部162,162を摺動し、突片部92,92がパッドリテーナ28,28の載置板部121,121上を摺動しながら、主板部91の面部95,95がトルク受面46,66の間に入り込む。なお、このとき、パッドリテーナ28,28の当接板部123,123は、ブレーキパッド29のパッド側切欠部93,93内を通過することになり、一方のブレーキパッド29に干渉することはない。
以上によりシリンダ部11側に配置されたブレーキパッド29は、突片部92,92がキャリパ本体5のロータ軸方向のシリンダ部11側のパッドガイド部42,62にロータ軸方向の位置を重ね合わることになり、一方の突片部92がパッドガイド部42に、他方の突片部92がパッドガイド部62に、それぞれロータ回転方向の位置を重ね合わせることになる。その結果、キャリパ本体5は、ロータ軸方向のシリンダ部11側にあってロータ回転方向両側にあるパッドガイド部42,62が、パッドリテーナ28,28を介してシリンダ部11側のブレーキパッド29を支持する状態となる。
また、この状態で、シリンダ部11側のブレーキパッド29は、パッドスプリング31のロータ軸方向のシリンダ部11側にある付勢片152,152のうちロータ回出側の付勢片152の湾曲板部163にロータ回出側の面部104が当接し、ロータ回入側の付勢片152の湾曲板部163に面部96が当接する。これにより、シリンダ部11側のブレーキパッド29は、ロータ回出側の付勢片152によりロータ回出方向およびロータ径方向内方に付勢され、ロータ回入側の付勢片152によりロータ径方向内方に付勢されることになり、パッドリテーナ28,28の載置板部121,121に押し付けられ、トルク受面46に押し付けられる。
上記のように組み付けられたシリンダ部11側のブレーキパッド29は、パッドスプリング31のシリンダ部11側の付勢片152,152で押圧されることにより、パッドリテーナ28,28を介してシリンダ部11側のパッドガイド部42,62に支持されながら、載置板部121,121上をロータ軸方向に移動することになる。
なお、上記とは逆に、ロータ径方向外側にある一方の突片部92が先に中間延在部61をロータ径方向外側に越える場合は、ブレーキパッド29を、ロータ径方向外側にある一方の突片部92に近接する中間延在部61の方向に、ロータ回転方向に沿って移動させた後、それまで中間延在部41よりもロータ径方向内側にあった他方の突片部92が中間延在部41をロータ径方向外側に越えるように回転させ、その後、他方の突片部92が近接する中間延在部41の方向にロータ回転方向に沿って移動させることになる。
次に、もう一つのブレーキパッド29を、ロータ径方向外側に突片部92,92を配置し、裏板90がこれを押圧することになるピストン6,7を有するシリンダ部10側に向く姿勢とし、上記と同様にして、突片部92,92がキャリパ本体5のロータ軸方向のシリンダ部10側のパッドガイド部42,62にロータ軸方向の位置を重ね合わるように配置することになる。これにより、シリンダ部10側のパッドガイド部42,62がパッドリテーナ28,28を介してシリンダ部10側のブレーキパッド29を支持する状態となる。勿論、シリンダ部10側のブレーキパッド29を先に、シリンダ部11側のブレーキパッド29を後に、キャリパ3に取り付けるようにしても良い。
その後、ブレーキパッド29,29の間にディスクロータ2が配置されるようにキャリパ3が車体に取り付けられることになる。これにより、ブレーキパッド29,29は中間延在部41,61側つまりキャリパ側切欠部55,75側へのロータ軸方向の移動が規制されることになる。その結果、シリンダ部10側のブレーキパッド29がシリンダ部10側のパッドガイド部42,62に同時に支持される状態が維持され、シリンダ部11側のブレーキパッド29がシリンダ部11側のパッドガイド部42,62に同時に支持される状態が維持されることになって、ブレーキパッド29,29のキャリパ3からの脱落が規制される。
ブレーキパッド29,29をキャリパ3から取り外す際には、上記した取り付け手順とは逆の手順で作業を行うことでブレーキパッド29,29をキャリパ3から取り外すことができる。
上記のようにして、ブレーキパッド29,29が、キャリパ本体5のパッド支持部40,60のパッドガイド部42,62およびパッドガイド部42,62に、パッドリテーナ28,28を介して移動可能に支持されることになる。そして、アウタ側のシリンダ部10に設けられた二つのピストン6,7が、ディスクロータ2との間に設けられたブレーキパッド29を押圧し、インナ側のシリンダ部11に設けられた二つのピストン6,7が、ディスクロータ2との間に設けられたブレーキパッド29を押圧すると、ブレーキパッド29,29が、キャリパ本体5のパッドガイド部42,62およびパッドガイド部42,62に支持された状態でロータ軸方向に移動して、ディスクロータ2に押し付けられ、車両に制動力を発生させる。
以上の第1実施形態においては、キャリパ3がディスクロータ2に対向配置される一対のブレーキパッド29,29を有する場合を例にとり説明したが、少なくとも一対あれば良く、よって二対以上であっても良い。例えば、四つのピストンがそれぞれ一枚ずつブレーキパッドを押圧する等、キャリパがブレーキパッドを二対以上有する場合に、各ブレーキパッドを上記と同様の構造でキャリパ3に支持することが可能である。
また、以上の第1実施形態においては、一対のブレーキパッド29,29の両方が同様の構造でキャリパ3に支持される場合を例にとり説明したが、少なくとも一方のブレーキパッド29が上記構造を採用していればよい。
また、以上の第1実施形態においては、キャリパ本体5にキャリパ側切欠部55,75を設け、ブレーキパッド29にパッド側切欠部93,93を設ける場合を例にとり説明したが、いずれか一方のみを設けるようにしても良い。すなわち、キャリパ本体5にキャリパ側切欠部55,75だけを設けるようにしてもよいし、ブレーキパッド29にパッド側切欠部93,93だけを設けるようにしてもよい。
特開2009−68593号公報の構造では、キャリパのアウタボディ部およびインナボディ部の両端部同士を連結する一対の連結部の間に一対のトルク受けスリーブを一対のトルク受けピンおよび一対のナットで取り付けて、これら一対のトルク受けスリーブでパッドを支持するようになっている。このため、一対のトルク受けスリーブと一対のトルク受けピンと一対のナットとが必要であり、重量が増大し、コストも増大してしまう。また、公知のキャリパ構造においては、パッドを吊下するためのパッドピンを用いているため、重量が増大し、コストも増大してしまう。
これに対して、第1実施形態は、一対のシリンダ部10,11と、これらを連結する一対の端側連結部12,13とが一体成形されたキャリパ本体5の一対の端側連結部12,13に、ブレーキパッド29のロータ回転方向に突出する突片部92,92のロータ径方向における内側部位である面部101,101が対向して配置されるパッド係合面部45,65を、キャリパ本体5と同一部材で形成される構成とした。このため、第1実施形態によれば、支持用の別部材を設けてブレーキパッド29を支持する必要がなくなり、軽量化が図れ、コスト増および部品点数増を抑制することができる。
また、パッド係合面部45,65が、ディスクロータ2よりも径方向外側に位置しており、ディスクロータ2を越えてロータ軸方向両側に連続しているため、ブレーキパッド29の脱落を良好に規制することができる。
また、トルク受けピンやパッドピンを廃止できるため、ブレーキパッド29のキャリパ3への組み付け時に工具が不要となり、組み付け性を向上させることができる。また、トルク受けピン、パッドピンのようにねじを使用しないので、緩みが生じることがなく、信頼性を向上させることができる。加えて、トルク受けピンを組み付けるための構造部が不要となり、キャリパ本体5の小型化、形状の簡素化が図れる。
また、パッド係合面部45,65は、広い面積でブレーキパッド29を支持することができるため、耐久性を向上させることができる。
また、ブレーキパッド29には、突片部92,92よりもロータ径方向における内側に、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央側に向かって凹むパッド側切欠部93,93が形成され、パッド側切欠部93,93が、端側連結部12,13のパッド係合面部45,45よりもロータ径方向における内側部位であってロータ軸方向にてディスクパス部14,15と位置が合う面部56,76に当接したときに、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央部位置が、ロータ回転方向におけるパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置側にずれる寸法に形成されている。よって、ブレーキパッド29の一対の突片部92,92をパッドガイド部42,62に容易に配置することができる。
また、パッド係合面部45,65には、ロータ軸方向にてディスクパス部14,15と合う位置に、ロータ回転方向におけるキャリパ本体5の外方側に向かって部分的に凹むキャリパ側切欠部55,75が形成され、キャリパ側切欠部55,75の面部56,76に、ブレーキパッド29の突片部92,92よりもロータ径方向における内側位置である面部108,108が当接したときに、ロータ回転方向におけるブレーキパッド29の中央部位置が、ロータ回転方向におけるパッドガイド部42,62間の中心よりも、当接位置側にずれる寸法に形成されている。よって、ブレーキパッド29の一対の突片部92,92をパッドガイド部42,62に容易に配置することができる。
また、パッド支持部40,60がアンダカット形状になっていないため、パッド支持部40,60を含むキャリパ本体5を鋳造により容易に形成することができる。
また、パッド係合面部45,65がトルク受面46,66と独立しているため、トルク受面46,66を小型化することができる。
特開2005−23977号公報の構造では、キャリパ本体にそのパッド組付用空間をロータ軸線方向に跨ぐように連結部を架設し、この連結部にブレーキパッドのガタツキを防止するパッドスプリングを組み付けている。しかしながら、このパッドスプリングは、長手方向の中心を基準に非対称の形状をなしており、組み付けに方向性があるため、作業性が良好とは言えなかった。また、車体左側に配置されるキャリパ用と、車体右側に配置されるキャリパ用とでパッドスプリングの形状が異なっているため、部品を共通させることができず、コストが増大してしまう。
これに対し、本実施形態によれば、パッドスプリング31が長手方向の中心を基準に対称形状をなし奥行方向の中心を基準に対称形状をなしているため、組み付けの方向性をなくすことができる。よって、パッドスプリング31のキャリパ本体5への組み付け作業性を向上させることができ、組み付け工数を低減させることができる。また、組み付けの方向性をなくすことができるため、パッドスプリング31の姿勢を安定させることができることになり、耐震性を向上させることができる。加えて、パッドスプリング31を車体左側に配置されるキャリパ3用と、車体右側に配置されるキャリパ用とで共通部品にできるため、製造コストおよび管理コストを低減させることができる。
また、パッドスプリング31は、その長手方向の中心がブレーキパッド29,29のロータ回転方向の中心に対してロータ回出側にずれた状態で一対の爪部151,151において中央連結部16に係合するため、長手方向の中心を基準に対称形状をなしていても、ブレーキパッド29,29に対し、規定のロータ回出方向に付勢力を付与することが可能となる。言い換えれば、パッドスプリング31をブレーキパッド29,29のロータ回転方向の中心に対してロータ回出側にずれた状態で取り付けることにより、長手方向の中心を基準に対称形状に形成しても規定のロータ回出方向に付勢力を付与することができる。よって、パッドスプリング31の全長を短くでき、小型軽量化が図れる。
また、パッドスプリング31の付勢片152の押圧板部162は、ブレーキパッド29のロータ回転方向の中心とディスクロータ2の中心とを結ぶ線に対して垂直な面部96を付勢して、ブレーキパッド29をディスクロータ2の中心方向に付勢することになり、ブレーキパッド29のロータ回出方向に対して交差するとともに面部96に対して傾いて形成される面部104を付勢して、ブレーキパッド29をディスクロータ2の回転方向および中心方向に付勢することになる。よって、ブレーキパッド29を良好にディスクロータ2の回転方向および中心方向に付勢することができる。
また、パッドスプリング31の一方の爪部151が、中央連結部16に形成された孔部34に挿入されることで、ブレーキパッド29に対する位置が規定されるため、誤組み付けの発生を抑制することができる。したがって、パッドスプリング31によりブレーキパッド29をロータ回出側に確実に付勢することができるため、ブレーキ鳴きやパッドラトル音、制動トルクの立ち上がり遅れ等を抑制することができる。
また、パッドスプリング31が長手方向の中心を基準に対称形状をなし、一対の爪部151,151が対称に配置されるため、パッドスプリング31の姿勢が安定し、パッドスプリング31の付勢位置のバラツキを抑制できる。
「第2実施形態」
次に、本発明の第2実施形態に係るディスクブレーキを主に図15〜図23に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図15に示すように、第2実施形態に係るディスクブレーキ1Aは、第1実施形態のキャリパ3に対し一部異なるキャリパ3Aを有している。このキャリパ3Aには、第1実施形態のパッドリテーナ28,28に対して異なるパッドリテーナ28A,28Aと、第1実施形態のパッドスプリング31に対して一部異なるパッドスプリング31Aとが用いられている。
また、第2実施形態のキャリパ3Aには、図16および図17に示すように、第1実施形態のキャリパ本体5に対して一部異なるキャリパ本体5Aが用いられている。キャリパ本体5Aは、第1実施形態の端側連結部12,13に対して一部異なる端側連結部12A,13Aを有している。具体的に、端側連結部12A,13Aは、第1実施形態のパッド支持部40,60に対して一部異なるパッド支持部40A,60Aを有している。
つまり、第1実施形態では、ロータ回転方向両側のパッド支持部40,60にキャリパ側切欠部55,75が設けられているのに対し、第2実施形態のキャリパ本体5Aは、そのロータ回出側に、第1実施形態のキャリパ側切欠部55が設けられていないパッド支持部40Aを有している。言い換えれば、ロータ回出側のパッド支持部40Aの中間延在部41Aは、ロータ回入側の端部位置をパッドガイド部42,42と合わせている。
また、キャリパ本体5Aは、そのロータ回入側に、トルク受面66,66よりもロータ回入側に第1実施形態のキャリパ側切欠部75よりも深く凹むキャリパ側切欠部75Aが形成されたパッド支持部60Aを有している。キャリパ側切欠部75Aも、最もロータ回入側の面部76Aが、トルク受面66,66よりもロータ回入側に位置している。言い換えれば、ロータ回入側のパッド支持部60Aの中間延在部61Aは、ロータ回出側の端部位置をパッドガイド部62,62よりもロータ回入側にずらしている。
また、第2実施形態に係るディスクブレーキ1Aには、図18および図19に示すように、第1実施形態のブレーキパッド29,29に対して一部異なるブレーキパッド29A,29Aが用いられている。これらのブレーキパッド29A,29Aは、第1実施形態の裏板90とは一部異なる裏板90Aを有している。具体的に、裏板90Aは、突片部92,92とは一部異なる突片部92A,92Aを有している。突片部92A,92Aは、突片部92,92の面部102,102に対し角度の異なる面部102A,102Aが設けられている。面部102A,102Aはロータ径方向外側ほどロータ回転方向内側に位置するように傾斜している。
また、裏板90Aは、主板部91とは一部異なる主板部91Aを有している。主板部91Aは、突片部92A,92Aのロータ回転方向の内側位置にロータ径方向外方に突出する座部201,201が形成された形状をなしている。座部201,201の面部202,202は面部96と平行をなしている。
図20に示すように、パッドリテーナ28Aは、長手方向の中央を基準に鏡面対称形状をなしている。パッドリテーナ28Aは、載置板部121Aと、立板部124Aと、カバー板部125Aと、一対の係合板部205,205と、一対の当接板部123A,123Aと、一対の係合板部206,206とを有している。
載置板部121Aの長手方向がパッドリテーナ28Aの長手方向(幅方向)となっており、載置板部121Aには、長手方向の中央所定範囲に奥行方向の一縁部から凹む中央凹部130Aが形成されている。また、載置板部121には、長手方向の両端所定範囲の奥行方向の中央凹部130Aとは反対側に、切欠部132A,132Aが形成されている。
立板部124Aは、載置板部121Aの奥行方向の中央凹部130Aとは反対側の他縁部から載置板部121の厚さ方向の一側に延出している。立板部124Aは、載置板部121Aとのなす角度が90度未満の鋭角となっている。
カバー板部125Aは、立板部124Aの載置板部121Aとは反対側の端縁部から載置板部121Aの奥行方向にて載置板部121Aと同側に延出している。カバー板部125Aは、立板部124A側が立板部124Aと同じ長さの基端板部139Aとなっており、立板部124Aとは反対側が基端板部139Aよりも長手方向両側に長い先端板部140Aとなっている。基端板部139Aは、立板部124Aとの境界部分が載置板部121A側に中心を有する湾曲板状をなしており、立板部124Aとは反対側が先端側ほど載置板部121Aに近づくように傾斜している。先端板部140Aは、基端板部139A側が載置板部121Aとは反対側に中心を有する湾曲板状をなす湾曲板部141Aとなっており、基端板部139Aとは反対側が先端側ほど載置板部121Aからその厚さ方向に離間するように傾斜する平板状の傾斜板部142Aとなっている。立板部124Aおよびカバー板部125Aの境界位置の長手方向中央には、切欠部208が形成されている。
一対の係合板部205,205は、立板部124Aの長手方向両側の端部から長手方向両側に延出している。係合板部205,205は、それぞれ、立板部124A側にあって立板部124Aから離れるほどカバー板部125Aの延出方向前方に位置するように傾斜する傾斜板部210と、傾斜板部210の立板部124Aとは反対側からカバー板部125Aの延出方向に延出する先端板部211とを有している。
当接板部123A,123Aは、載置板部121Aの奥行方向の中央凹部130A側の一縁部であって長手方向の中央凹部130Aの両側位置に形成されている。一対の当接板部123A,123Aは、載置板部121Aからその厚さ方向の立板部124Aとは反対側に、延出先端側ほど載置板部121Aの奥行方向の中央側に位置するように斜めに延出している。
一対の係合板部206,206は、当接板部123A,123Aの相反側の両端部に形成されている。一対の係合板部206,206は、それぞれ、当接板部123Aの厚さ方向の立板部124Aとは反対側に延出している。一対の係合板部206,206は、延出先端側ほど互いの間隔が広くなるように若干傾斜して延出している。
図15に示すように、一対のパッドリテーナ28A,28Aは、キャリパ本体5Aのパッド支持部40A,60Aに取り付けられることになる。つまり、一方のパッドリテーナ28Aが、係合板部205,205の先端板部211,211において凹壁部38の一対の面部39,39に係合し、係合板部206,206において逃面48,48に係合する。さらに、図20に示す載置板部121Aにおいて図17に示すパッド支持部40Aのパッド係合面部45に当接し、図20に示す当接板部123A,123Aにおいて図17に示すパッド支持部40Aのトルク受面46,46に当接する。
同様に、図15に示すように、他方のパッドリテーナ28Aが、係合板部205,205の先端板部211,211において凹壁部58の一対の面部59,59に係合し、係合板部206,206において逃面68,68に係合する。さらに、図20に示す載置板部121Aにおいて図17に示すパッド支持部60Aのパッド係合面部65に当接し、図20に示す当接板部123A,123Aにおいて図17に示すパッド支持部60Aのトルク受面66,66に当接する。すると、パッドリテーナ28Aは、図20に示す中央凹部130Aが、図17に示すパッド支持部60Aのキャリパ側切欠部75Aとロータ軸方向の位置が合うことになる。
一対のブレーキパッド29A,29Aは、図18に一方のみを示すように、キャリパ本体5Aのパッド支持部40A,60Aに取り付けられた状態のパッドリテーナ28A,28Aを介してキャリパ本体5Aに支持される。このようなキャリパ本体5Aへの配置時に、一対のブレーキパッド29A,29Aは、一方の突片部92Aがパッド支持部40Aに配置されたパッドリテーナ28Aの載置板部121Aとカバー板部125Aとの間に挿入されることになり、他方の突片部92Aがパッド支持部60Aに配置されたパッドリテーナ28Aの載置板部121Aとカバー板部125Aとの間に挿入されることになる。
このとき、ブレーキパッド29A,29Aは、それぞれ、突片部92A,92Aが、面部101,101においてパッドリテーナ28A,28Aの載置板部121A,121Aに当接し、面部103,103においてカバー板部125A,125Aに当接する。また、このとき、突片部92A,92Aの面部102A,102Aは、パッドリテーナ28A,28Aの立板部124A,124Aの両方から間隔をあけて離れるようになっている。さらに、このとき、ブレーキパッド29A,29Aは、それぞれ、面部108,108を当接板部123A,123Aから離間させる。キャリパ本体5Aは、ロータ軸方向一側の図17に示すパッドガイド部42,62が、図20に示すパッドリテーナ28A,28Aの載置板部121A,121Aを介して一方のブレーキパッド29Aを支持することになり、ロータ軸方向他側の図17に示すパッドガイド部42,62が、図20に示すパッドリテーナ28A,28Aの載置板部121A,121Aを介して他方のブレーキパッド29Aを支持することになる。
図21に示すように、パッドスプリング31Aは、長手方向(幅方向)の中央を基準に鏡面対称形状をなし奥行方向の中央を基準に鏡面対称形状をなしており、第1実施形態のパッドスプリング31と同様の基板部150と、第1実施形態のパッドスプリング31とは一部異なる爪部151A,151Aと、第1実施形態のパッドスプリング31とは異なる長手方向両側の一対の付勢片152A,152Aとを有している。
爪部151A,151Aは、それぞれ、第1実施形態の爪部151の基端板部156に対し一部異なる基端板部156Aを有している。基端板部156Aは、基板部150とは反対側ほどパッドスプリング31Aの奥行方向に細くなる形状をなしている。また、爪部151A,151Aは、それぞれ、第1実施形態の爪部151の先端板部157に対し一部異なる先端板部157Aを有している。先端板部157Aは、先端板部157よりもパッドスプリング31Aの奥行方向に細くなっている。
パッドスプリング31Aの一方の付勢片152Aは、パッドスプリング31Aの長手方向における基板部150の一側からパッドスプリング31Aの長手方向に延出している。この付勢片152Aは、一対の腕板部161A,161Aと、一対の中間板部220,220と、押圧板部162Aとを有している。一対の腕板部161A,161Aは、図21(b)に示すように、基板部150の一対の側板部155,155の同側からこれらと同一平面をなして互いに同方向に延出する。一対の腕板部161A,161Aは、図21(b)に示すように、延出先端側ほど互いに近接するように傾斜している。中間板部220,220は、腕板部161A,161Aの基板部150とは反対側の端部から基板部150とは反対方向に延出している。中間板部220,220は、延出先端側ほど腕板部161A,161Aの厚さ方向の爪部151Aとは反対側に位置するように傾斜している。
押圧板部162Aは、中間板部220,220の腕板部161A,161Aとは反対側同士を連結している。押圧板部162Aは、ディスクロータ2のインナ側からアウタ側に連続する形状をなしている。すなわち、押圧板部162Aは、一対のブレーキパッド29A,29Aにわたってロータ軸方向に連続して延出して形成されている。押圧板部162Aは、その中間板部220,220側が、腕板部161A,161Aの厚さ方向の爪部151A側に中心を有する湾曲板状をなす湾曲板部163Aとなっている。また、押圧板部162Aは、その腕板部161A,161Aとは反対側が、延出先端側ほど腕板部161A,161Aの厚さ方向の爪部151側かつパッドスプリング31Aの長手方向外側に位置するように傾斜する先端板部164Aとなっている。
パッドスプリング31Aの他方の付勢片152Aは、一方の付勢片152Aと同形状をなしており、パッドスプリング31Aの長手方向における基板部150の一方の付勢片152Aとは反対側からパッドスプリング31Aの長手方向に延出している。
パッドスプリング31Aは、図18に示すように、一対の爪部151A,151Aによって第1実施形態と同様に中間連結部16に係合してキャリパ本体5Aに取り付けられ、この状態で、一対の付勢片152A,152Aが、一対の爪部151A,151Aよりもロータ回転方向両側へ延びた状態となる。
また、一対の爪部151A,151Aが中間連結部16に係合した状態のパッドスプリング31Aは、第1実施形態と同様、長手方向の中心がキャリパ本体5Aのロータ回転方向の中央に対してロータ回転方向にずれた状態となり、キャリパ本体5Aに対するロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されているブレーキパッド29A,29Aに対してもロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定される。このとき、パッドスプリング31Aの付勢片152A,152Aはディスクロータ2のインナ側からアウタ側に連続する形状をなしている。
ブレーキパッド29A,29Aに対してロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されてキャリパ本体5Aに取り付けられたパッドスプリング31Aは、ロータ回入側にある付勢片152Aが、押圧板部162Aの湾曲板部163Aにおいてブレーキパッド29A,29Aの裏板90A,90Aの座部201,201の面部202,202に当接してロータ径方向外側に弾性変形して座部201,201をロータ径方向内方に付勢する。また、パッドスプリング31Aは、ロータ回出側にある付勢片152Aが、押圧板部162Aの湾曲板部163Aにおいてブレーキパッド29A,29Aの裏板90A,90Aのロータ回出側の面部104,104に当接してロータ径方向外側に弾性変形して面部104,104をその傾斜によりロータ回出方向かつロータ径方向内方に付勢する。
つまり、パッドスプリング31Aのロータ回出側の付勢片152Aの湾曲板部163Aは、ブレーキパッド29A,29Aのロータ回転方向の中心とディスクロータ2の中心とを結ぶ径方向基準線に対して垂直な座部201,201の面部202,202を付勢するロータ径方向付勢部と、ブレーキパッド29A,29Aのロータ回出方向に対して交差するとともに面部202,202に対して傾いて形成される面部104,104を付勢するロータ回出方向付勢部とを構成している。
そして、ブレーキパッド29A,29Aに対してロータ径方向およびロータ回転方向の位置が規定されてキャリパ本体5Aに取り付けられたパッドスプリング31Aは、付勢片152A,152Aのうち一対の爪部151A,151Aよりもロータ回転方向一側(回入側)へ延びる付勢片152Aが湾曲板部163Aでブレーキパッド29A,29Aの面部202,202に当接するときに、付勢片152A,152Aのうち一対の爪部151,151よりもロータ回転方向他側(回出側)へ延びる付勢片152Aが湾曲板部163Aでブレーキパッド29A,29Aの面部104,104に当接する。
次に、一対のブレーキパッド29A,29Aをキャリパ3Aに取り付ける手順の一例について説明する。ここでは、主に図22および図23を参照しつつシリンダ部11側に配置されるブレーキパッド29Aの取り付けについて説明する。
図22に示すように、キャリパ本体5Aのパッド支持部40A,60Aに上記したようにパッドリテーナ28A,28Aを取り付け、キャリパ本体5Aの中間連結部16に上記したようにパッドスプリング31Aを取り付けた状態とする。
この状態で、ブレーキパッド29Aを、ロータ径方向外側に突片部92A,92Aを配置し、ロータ軸方向おいて裏板90Aがシリンダ部11に向く姿勢とする。そして、この姿勢のブレーキパッド29Aを、ロータ径方向の内側から外側に移動させる。
その際に、図22に示すように、ロータ回出側の突片部92Aがロータ径方向の外側に、ロータ回入側の突片部92Aがロータ径方向の内側に位置するように傾斜させてブレーキパッド29Aを移動させる。この移動により、ロータ径方向外側にあるロータ回出側の突片部92Aのみをロータ回転方向両側の中間延在部41A,61Aの間をロータ径方向に通過させて中間延在部41A,61Aよりもロータ径方向外側に位置させる。その後、ブレーキパッド29Aをロータ回出側に移動させてロータ回出側の突片部92Aを、パッド支持部41Aに取り付けられたパッドリテーナ28Aのカバー板部125Aと載置板部121Aとの間に、シリンダ部11側のパッドガイド部42の位置にて入り込ませる。これにより、図23(a)に示すように、ブレーキパッド29Aは、ロータ回出側がシリンダ部11側のパッドガイド部42の位置に位置する。
次に、ロータ回入側の突片部92Aを、ロータ回入側のパッド支持部60Aに形成されたキャリパ側切欠部75Aを通過させて、中間延在部41A,61Aよりもロータ径方向外側に位置させる。その後、図23(b)に示すように、ブレーキパッド29Aのロータ回入側の突片部92Aをシリンダ部11側に移動させる。このとき、ロータ回入側の突片部92Aをロータ回入側のパッドリテーナ28Aのカバー板部125Aと載置板部121Aとの間に入り込ませながら移動させる。すると、ブレーキパッド29Aは、裏板90Aが、ロータ回入側のパッド支持部61Aに取り付けられたパッドリテーナ28Aのカバー板部125Aと載置板部121Aとの間に入り込み、シリンダ部11側のパッドガイド部42,62の位置に位置する。
以上によりシリンダ部11側に配置されたブレーキパッド29Aは、突片部92A,92Aがキャリパ本体5Aのロータ軸方向のシリンダ部11側のパッドガイド部42,62にロータ軸方向の位置を重ね合わることになり、一方の突片部92Aがパッドガイド部42に、他方の突片部92Aがパッドガイド部62に、それぞれロータ回転方向の位置を重ね合わせることになる。その結果、キャリパ本体5Aは、ロータ軸方向のシリンダ部11側にあってロータ回転方向両側にあるパッドガイド部42,62が、パッドリテーナ28A,28Aを介してシリンダ部11側のブレーキパッド29Aを支持する状態となる。
この状態で、シリンダ部11側のブレーキパッド29Aは、パッドスプリング31Aのロータ回出側の付勢片152Aの湾曲板部163Aにロータ回出側の面部104が当接し、ロータ回入側の付勢片152Aの湾曲板部163Aに面部202が当接する。これにより、シリンダ部11側のブレーキパッド29Aは、ロータ回出側の付勢片152Aによりロータ回出方向およびロータ径方向内方に付勢され、ロータ回入側の付勢片152Aによりロータ径方向内方に付勢されることになり、パッドリテーナ28A,28Aの載置板部121A,121Aに押し付けられ、トルク受面46に押し付けられる。
次に、もう一つのブレーキパッド29Aを、ロータ径方向外側に突片部92A,92Aを配置し、裏板90Aがシリンダ部10側に向く姿勢として、上記と同様に、ロータ径方向外側にあるロータ回出側の突片部92Aを先に、パッド支持部41Aに取り付けられたパッドリテーナ28Aのカバー板部125Aと載置板部121Aとの間に、シリンダ部10側のパッドガイド部42の位置にて斜めに入り込ませる。その後、ロータ回入側の突片部92Aを、ロータ回入側のパッド支持部60Aに形成されたキャリパ側切欠部75Aを通過させた後、シリンダ部10に近接するように、ロータ軸方向に移動させる。これにより、シリンダ部10側のパッドガイド部42,62がパッドリテーナ28A,28Aを介してシリンダ部10側のブレーキパッド29Aを支持する状態となる。勿論、シリンダ部10側のブレーキパッド29Aを先に、シリンダ部11側のブレーキパッド29Aを後に、キャリパ3Aに取り付けるようにしても良い。
以上に述べた第2実施形態のディスクブレーキ1Aによれば、ロータ回転方向両側のパッド支持部40A,60Aのうちロータ回入側のパッド支持部60Aのみにキャリパ側切欠部75Aが形成されているため、前進制動時の制動トルクを主体的に受けるロータ回出側のパッド支持部40Aの強度を向上でき、ブレーキ鳴きを抑制することができる。また、ブレーキパッド29Aの取り付け時に、ロータ回出側の突片部92Aを先にパッドガイド部42に係止した状態で、ブレーキパッド29Aをロータ径方向に移動させることができるため、パッドスプリング31Aの押圧力に抗したロータ径方向の移動が容易となる。したがって、ブレーキパッド29A,29Aの取り付けの作業性を向上させることができる。
また、パッドスプリング31Aの付勢片152A,152Aの押圧板部162A,162Aがディスクロータ2のインナ側からアウタ側に連続する形状をなしている、すなわち、押圧板部162A,162Aが、一対のブレーキパッド29A,29Aにわたってロータ軸方向に連続して延出して形成されているため、取り付け時にブレーキパッド29A,29Aを付勢片152Aのロータ軸方向の中央から移動させても、引っ掛かることなく円滑に移動させることができる。したがって、ブレーキパッド29A,29Aの取り付けの作業性を向上させることができる。
パッドスプリング31Aの一対の腕板部161A,161Aは、第1実施形態の腕板部161のように基板部から傾斜して延出しておらず、基板部150と同一平面をなして基板部150から延出するようになっているので、パッドスプリングの製作時に曲げ加工を減少させることができ、パッドスプリングの製作が容易になる。
「第3実施形態」
次に、本発明の第3実施形態に係るディスクブレーキを主に図24〜図25に基づいて第1,第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1,第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態のディスクブレーキ1Bでは、第1実施形態に対して、パッドリテーナ28に換えてパッドリテーナ28Bが用いられている。このパッドリテーナ28Bは、第2実施形態のパッドリテーナ28Aに対して一部相違している。このパッドリテーナ28Bは、図25に示すように載置板部121Aの当接板部123A,123Aの間から延出する係止片部230を有している。この係止片部230は、載置板部121Aからその厚さ方向において立板部124Aとは反対方向に延出する中間板部231と、中間板部231の延出先端から、パッドリテーナ28Aの奥行方向において立板部124A側に延出する係止板部232とを有している。また、第3実施形態では、第2実施形態のブレーキパッド29Aが用いられている。
そして、パッドリテーナ28Bは、図24に示すように、パッド支持部40への取り付け時に、中間延在部41のロータ径方向の内側に係止板部232が係止されて、ロータ径方向外方への移動が規制される。同様に、パッド支持部60への取り付け時にも、パッドリテーナ28Bは、中間延在部61のロータ径方向の内側に係止板部232が係止されて、ロータ径方向外方への移動が規制される。これにより、ブレーキパッド29A,29Aの取り付け時に、ブレーキパッド29A,29を介してパッドリテーナ28B,28Bにロータ径方向外方の力が加わっても、パッドリテーナ28B,28Bがパッド支持部40,60から外れ難くなる。したがって、ブレーキパッド29A,29Aの取り付けの作業性を向上させることができる。
上記パッドリテーナ28Bを用いたディスクブレーキは、以下のように表現することができる。
ディスクロータに対向配置される少なくとも一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを前記ディスクロータへ押圧可能に係止するキャリパ本体と、を備え、該キャリパ本体は、前記ブレーキパッドを押圧するピストンが収容される一対のシリンダ部と、該一対のシリンダ部の前記ディスクロータ回転方向端部において前記ディスクロータを跨いで前記一対のシリンダ部を連結する一対の端側連結部と、該一対の端側連結部の間に設けられ、前記ディスクロータ及び前記一対のブレーキパッドを跨いで前記一対のシリンダ部を連結する中間連結部と、を有し、前記一対のブレーキパッドのうち少なくとも一方のブレーキパッドの前記ディスクロータの外周側となる位置には、前記ディスクロータの回転方向で前記ブレーキパッドの中央部から離れる方向へ突出する突片部が形成されており、前記一対の端側連結部には、前記突片部の前記ディスクロータ径方向内側部位が対向して配置されるパッド係合部が前記キャリパ本体と同一部材で形成され、該パッド係合部には、該パッド係合部のディスク軸方向に亘って該パッド係合部を覆い、ディスク軸方向両端部それぞれで前記キャリパ本体に複数個所で係止されるリテーナが配置されているディスクブレーキ。
前記リテーナは、ディスクロータの回転方向の前記ブレーキパッドの中央部から離れる方向に移動して組み付けられ、また組付け後は、リテーナがディスク径方向外方への移動を規制するリテーナ抜け止め部が設けられているディスクブレーキ。
以上に述べた実施形態は、ディスクロータに対向配置される少なくとも一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを前記ディスクロータへ押圧可能に係止するキャリパ本体と、を備え、該キャリパ本体は、前記ブレーキパッドを押圧するピストンが収容される一対のシリンダ部と、該一対のシリンダ部のロータ回転方向における端部において前記ディスクロータを跨いで前記一対のシリンダ部を連結する一対の端側連結部と、該一対の端側連結部の間に設けられ、前記ディスクロータおよび前記一対のブレーキパッドを跨いで前記一対のシリンダ部を連結する中間連結部と、を有し、前記一対のブレーキパッドのうち少なくとも一方のブレーキパッドには、ロータ径方向における外端側となる位置に、ロータ回転方向において前記ブレーキパッドの中央部から離れる方向へ突出する突片部が形成されており、前記一対の端側連結部には、前記突片部のロータ径方向における内側部位が対向して配置されるパッド係合面部が前記キャリパ本体と同一部材で形成されていることを特徴とする。これにより、別部材を設けてブレーキパッドを支持する必要がなくなるため、軽量化を図ることができる。
また、前記一対の端側連結部には、前記ディスクロータが通過するディスクパス部と、該ディスクパス部のロータ軸方向における両側に形成され前記一対のブレーキパッドをガイドするパッドガイド部とがそれぞれ形成され、前記ブレーキパッドには、前記突片部よりもロータ径方向における内側に、ロータ回転方向における前記ブレーキパッドの中央側に向かって凹むパッド側切欠部が形成されている。これにより、ブレーキパッドの突片部をパッドガイド部に容易に配置することができる。
前記パッド側切欠部は、前記端側連結部の前記パッド係合面部よりもロータ径方向における内側部位であってロータ軸方向にて前記ディスクパス部と合う当接位置に当接したときに、ロータ回転方向における前記ブレーキパッドの中央部位置が、ロータ回転方向における前記パッドガイド部間の中心よりも、前記当接位置側にずれる寸法に形成されていることを特徴とする。これにより、ブレーキパッドの突片部をパッドガイド部に容易に配置することができる。
また、前記一対の端側連結部には、前記ディスクロータが通過するディスクパス部と、該ディスクパス部のロータ軸方向における両側に形成され前記一対のブレーキパッドをガイドするパッドガイド部とがそれぞれ形成され、前記パッド係合面部には、ロータ軸方向にて前記ディスクパス部と合う位置に、ロータ回転方向における前記キャリパ本体の外方側に向かって部分的に凹むキャリパ側切欠部が形成されている。これにより、ブレーキパッドの突片部をパッドガイド部に容易に配置することができる。
前記キャリパ側切欠部の当接位置には、前記ブレーキパッドの前記突片部よりもロータ径方向における内側位置が当接したときに、ロータ回転方向における前記ブレーキパッドの中央部位置が、ロータ回転方向における前記パッドガイド部間の中心よりも、前記当接位置側にずれる寸法で形成されていることを特徴とする。これにより、ブレーキパッドの突片部をパッドガイド部に容易に配置することができる。