(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の制御装置が適用されるエンジンの一実施形態を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルの多気筒ガソリンエンジンである。具体的に、このエンジンは、直線状に並ぶ4つの気筒2A〜2Dを有する直列4気筒型のエンジン本体1と、エンジン本体1に空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排気ガスを排出するための排気通路35とを備えている。
図2は、エンジン本体1の断面図である。本図に示すように、エンジン本体1は、上記4つの気筒2A〜2Dが内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上側に設けられたシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上側に設けられたカムキャップ5と、各気筒2A〜2Dに往復摺動可能に挿入されたピストン11とを有している。
ピストン11の上方には燃焼室10が形成されており、この燃焼室10には、後述するインジェクタ12(図1)から噴射されるガソリンを主成分とする燃料が供給される。そして、供給された燃料が燃焼室10で燃焼し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン11が上下方向に往復運動するようになっている。
ピストン11は、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸15とコネクティングロッド14を介して連結されており、上記ピストン11の往復運動に応じてクランク軸15が中心軸回りに回転するようになっている。
図1に示すように、シリンダヘッド4には、各気筒2A〜2Dの燃焼室10に向けて燃料(ガソリン)を噴射するインジェクタ12と、インジェクタ12から噴射された燃料と空気との混合気に対し火花放電による点火エネルギーを供給する点火プラグ(点火手段)13とが設けられている。なお、当実施形態では、1気筒につき1つの割合で合計4個のインジェクタ12が設けられるとともに、同じく1気筒につき1つの割合で合計4個の点火プラグ13が設けられている。
当実施形態のような4サイクル4気筒のガソリンエンジンでは、各気筒2A〜2Dに設けられたピストン11がクランク角で180°(180°CA)の位相差をもって上下運動する。これに対応して、各気筒2A〜2Dでの点火のタイミングも、180°CAずつ位相をずらしたタイミングに設定される。具体的には、図1の左側から順に、気筒2Aを第1気筒、気筒2Bを第2気筒、気筒2Cを第3気筒、気筒2Dを第4気筒とすると、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に点火が行われる。
なお、当実施形態のエンジンは、4つの気筒2A〜2Dのうちの2つを燃焼させずに休止させ、残りの2つの気筒を稼動させる運転、つまり減筒運転が可能な可変気筒エンジンである。このため、上記のような点火順序は、減筒運転ではない通常の運転時(4つの気筒2A〜2Dを全て稼動させる全筒運転時)のものである。一方、減筒運転時には、点火順序が連続しない2つの気筒(当実施形態では第1気筒2Aおよび第4気筒2D)において点火プラグ13の点火動作が禁止され、1つ飛ばしで点火が行われるようになる。
図1および図2に示すように、シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気(吸気)を各気筒2A〜2Dの燃焼室10に導入するための吸気ポート6と、各気筒2A〜2Dの燃焼室10で生成された排気ガスを排気通路35に導出するための排気ポート7と、吸気ポート6を通じた吸気の導入を制御するために吸気ポート6の燃焼室10側の開口を開閉する吸気弁8と、排気ポート7からのガス排出を制御するために排気ポート7の燃焼室10側の開口を開閉する排気弁9とが設けられている。なお、当実施形態では、1気筒につき2つの割合で合計8個の吸気弁8が設けられるとともに、同じく1気筒につき2つの割合で合計8個の排気弁9が設けられている。
図1に示すように、吸気通路30は、気筒2A〜2Dの各吸気ポート6と連通する4本の独立吸気通路31と、各独立吸気通路31の上流端部(吸気の流れ方向上流側の端部)に共通に接続されたサージタンク32と、サージタンク32から上流側に延びる1本の吸気管33とを有している。吸気管33の途中部には、エンジン本体1に導入される吸気の流量を調節する開閉可能なスロットルバルブ34aが設けられている。吸気管33には、スロットルバルブ34aを駆動するためのバルブアクチュエータ34bが設けられており、スロットルバルブ34aは、バルブアクチュエータ34bにより開閉される。
排気通路35は、気筒2A〜2Dの各排気ポート7と連通する4本の独立排気通路36と、各独立排気通路36の下流端部(排気ガスの流れ方向下流側の端部)が1箇所に集合した集合部37と、集合部37から下流側に延びる1本の排気管38とを有している。
(2)動弁機構
次に、吸気弁8および排気弁9を開閉させるための機構について、図2および図3を用いて詳しく説明する。吸気弁8および排気弁9は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対の動弁機構28,29(図2)により、クランク軸15の回転に連動して開閉駆動される。
吸気弁8用の動弁機構28は、吸気弁8を閉方向(図2の上方)に付勢するリターンスプリング16と、クランク軸15の回転に連動して回転するカム軸18と、カム軸18と一体に回転するように設けられたカム部18aと、カム部18aにより周期的に押圧されるスイングアーム20と、スイングアーム20の揺動支点となるピボット部22とを有している。
同様に、排気弁9用の動弁機構29は、排気弁9を閉方向(図2の上方)に付勢するリターンスプリング17と、クランク軸15の回転に連動して回転するカム軸19と、カム軸19と一体に回転するように設けられたカム部19aと、カム部19aにより周期的に押圧されるスイングアーム21と、スイングアーム20の揺動支点となるピボット部22とを有している。
上記のような動弁機構28,29により、吸気弁8および排気弁9は次のようにして開閉駆動される。すなわち、クランク軸15の回転に伴いカム軸18,19が回転すると、スイングアーム20,21の略中央部に回転自在に設けられたカムフォロア20a,21aがカム部18a,19aによって周期的に下方に押圧されるとともに、スイングアーム20,21がその一端部を支持するピボット部22を支点にして揺動変位する。これに伴い、当該スイングアーム20,21の他端部がリターンスプリング16,17の付勢力に抗して吸排気弁8,9を下方に押圧し、これによって吸排気弁8,9が開弁する。一度開弁された吸排気弁8,9は、リターンスプリング16,17の付勢力により再び閉弁位置まで戻される。
ピボット部22は、自動的にバルブクリアランスをゼロに調整する公知の油圧式ラッシュアジャスタ24,25(以降、Hydraulic Lash Adjusterの頭文字をとって「HLA」と略称する)により支持されている。このうち、HLA24は、気筒列方向の中央側にある第2気筒2Bおよび第3気筒2Cのバルブクリアランスを自動調整するものであり、HLA25は、気筒列方向の両端にある第1気筒2Aおよび第4気筒2Dのバルブクリアランスを自動調整するものである。
第1気筒2Aおよび第4気筒2D用のHLA25は、エンジンの減筒運転か全筒運転かに応じて吸排気弁8,9を開閉動作させるか停止させるかを切り替える機能を有している。すなわち、HLA25は、エンジンの全筒運転時には第1、第4気筒2A,2Dの吸排気弁8,9を開閉動作させる一方、エンジンの減筒運転時には、第1、第4気筒2A,2Dの吸排気弁8,9を閉弁状態のまま停止させる。このため、HLA25は、吸排気弁8,9の開閉動作を停止させるための機構として、図3に示される弁停止機構25aを有している。これに対し、第2気筒2Bおよび第3気筒2C用のHLA24は、弁停止機構25aを備えておらず、吸排気弁8,9の開閉動作を停止させる機能を有していない。以下では、これらHLA24,25を区別するために、弁停止機構25aを備えたHLA25
のことを、特にS−HLA25(Switchable−Hydraulic Lash Adjusterの略)という。
S−HLA25の弁停止機構25aは、ピボット部22を軸方向に摺動自在に収納する有底の外筒251と、外筒251の周面に互いに対向するように設けられた2つの貫通孔251aを出入り可能でかつピボット部22をロック状態またはロック解除状態に切替可能な一対のロックピン252と、これらロックピン252を径方向外側へ付勢するロックスプリング253と、外筒251の内底部とピボット部22の底部との間に設けられ、ピボット部22を外筒251の上方に押圧して付勢するロストモーションスプリング254とを備えている。
図3(a)に示すように、ロックピン252が外筒251の貫通孔251aに嵌合しているときは、ピボット部22が上方に突出したまま固定されたロック状態にある。このロック状態では、図2に示すように、ピボット部22の頂部がスイングアーム20,21の揺動支点となるため、カム軸18,19の回転によりカム部18a,19aがカムフォロア20a,21aを下方に押圧したときに、吸排気弁8,9がリターンスプリング16,17の付勢力に抗して下方に変位し、吸排気弁8,9が開弁される。このため、4つの気筒2A〜2Dを全て稼働させる全筒運転時には、ピボット部22がロック状態とされることにより、第1、第4気筒2A,2Dの吸排気弁8,9が開閉駆動される。
上記のようなロック状態を解除するには、一対のロックピン252を径方向内側に押圧する。すると、図3(b)に示すように、ロックスプリング253の引張力に抗して、一対のロックピン252が互いに接近する方向(外筒251の径方向内側)に移動する。これにより、ロックピン252と外筒251の貫通孔251aとの嵌合が解除され、ピボット部22が軸方向に移動可能なロック解除状態となる。
このロック解除状態への変化に伴い、ピボット部22がロストモーションスプリング254の付勢力に抗して下方に押圧されることにより、図3(c)に示すような弁停止状態が実現される。すなわち、吸排気弁8,9を上方に付勢するリターンスプリング16,17の方が、ピボット部22を上方に付勢するロストモーションスプリング254よりも強い付勢力を有しているので、上記ロック解除状態では、カム軸18,19の回転に伴いカム部18a,19aがカムフォロア20a,21aを下方に押圧したときに、吸排気弁8,9の頂部がスイングアーム20,21の揺動支点となり、ピボット部22がロストモーションスプリング254の付勢力に抗して下方に変位する。つまり、吸排気弁8,9は閉弁された状態に維持される。このため、第1、第4気筒2A,2Dを休止させる減筒運転時には、弁停止機構25aがロック解除状態とされることにより、第1、第4気筒2A,2Dの吸排気弁8,9の開閉動作が停止され、当該吸排気弁8,9が閉弁状態に維持される。
弁停止機構25aは油圧駆動式であり、弁停止機構25a、より詳細には、弁停止機構25aのロックピン252は、油圧により駆動される。ロックピン252は、供給される油圧に応じて貫通孔251aを出入りし、ロックピン252と外筒251の貫通孔251aとが嵌合/嵌合解除される。
図4に示すように、弁停止機構25aには、オイルポンプ41から作動油が供給される。オイルポンプ41と弁停止機構25aとの間の油路にはソレノイドバルブ42(油圧変更バルブ)が設けられており、このソレノイドバルブ42がオイルポンプ41から弁停止機構25aに供給される油圧を変更する。具体的には、ソレノイドバルブ42に通電されていない状態すなわちソレノイドバルブ42がOFFの状態では、ソレノイドバルブ42によりオイルポンプ41と弁停止機構25aとの間の油路は閉止され、ロックピン252と外筒251の貫通孔251aとは嵌合され、ピポット部22はロックされ、これに伴い吸排気弁は開閉駆動される。一方、ソレノイドバルブ42に通電された状態すなわちソレノイドバルブ42がONの状態では、オイルポンプ41と弁停止機構25aとの間の油路は開通され、ロックピン252と外筒251の貫通孔251aとは嵌合解除され、ピポット部22はロック解除され、これに伴い吸排気弁は閉弁保持される。なお、吸排気弁が開閉可能となるようにソレノイドバルブ42が通電されない状態(ソレノイドバルブ42のOFF状態)は、本発明における「第1の状態」に相当し、吸排気弁が閉弁保持されるようにソレノイドバルブ42が通電された状態(ソレノイドバルブ42のON状態)は、本発明における「第2の状態」に相当する。
図4に示すように、本実施形態では、1つの気筒に対して1つの弁停止機構用ソレノイドバルブ42が設けられており、合計2つの弁停止機構用ソレノイドバルブ42が設けられている。そして、一方の弁停止機構用ソレノイドバルブ42が、第1気筒2Aの吸気弁8に設けられた弁停止機構25aおよび第1気筒2Aの排気弁9に設けられた弁停止機構25aに供給する油圧を同時に変更し、他方の弁停止機構用ソレノイドバルブ42が、第4気筒2Dの吸気弁8に設けられた弁停止機構25aおよび第4気筒2Dの排気弁9に設けられた弁停止機構25aに供給する油圧を同時に変更する。
(3)制御系統
次に、エンジンの制御系統について説明する。当実施形態のエンジンは、その各部が図5に示されるECU(エンジン制御ユニット、制御手段)50によって統括的に制御される。ECU50は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
エンジンおよび車両には、その各部の状態量を検出するための複数のセンサが設けられており、各センサからの情報がECU50に入力されるようになっている。
例えば、シリンダブロック3には、クランク軸15の回転角度(クランク角)および回転速度を検出するクランク角センサSN1が設けられている。このクランク角センサSN1は、クランク軸15と一体に回転する図略のクランクプレートの回転に応じてパルス信号を出力するものであり、このパルス信号に基づいて、クランク軸15の回転角度および回転速度すなわちエンジン回転数が特定されるようになっている。
シリンダヘッド4にはカム角センサSN2が設けられている。カム角センサSN2は、カム軸(18または19)と一体に回転するシグナルプレートの歯の通過に応じてパルス信号を出力するものであり、この信号と、クランク角センサSN1からのパルス信号とに基づいて、どの気筒が何行程にあるかという気筒判別情報が特定されるようになっている。
吸気通路30のサージタンク32には、サージタンク32を通過して各気筒2A〜2Dに導入される空気量を検出する吸気量センサSN3が設けられているとともに、サージタンク32内の圧力を検出する吸気圧センサSN4が設けられている。
車両には、運転者により操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN5が設けられている。また、エンジン本体1を冷却する冷却液の温度を検出する水温センサSN6が設けられている。
ECU50は、これらのセンサSN1〜SN6と電気的に接続されており、それぞれのセンサから入力される信号に基づいて、上述した各種情報(クランク角、エンジン回転数、吸気量、吸気圧、アクセル開度、冷却水温)を取得する。
そして、ECU50は、上記各センサSN1〜SN6からの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ、エンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、インジェクタ12、点火プラグ13、バルブアクチュエータ34b(スロットルバルブ34a)、弁停止機構用ソレノイドバルブ42と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいて、これらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。なお、当実施形態では、1気筒につき1組の割合で合計4組のインジェクタ12および点火プラグ13が存在するが、図5では、インジェクタ12および点火プラグ13をそれぞれ1つのブロックで表記している。また、弁停止機構用ソレノイドバルブ42は、第1気筒2Aの弁停止機構25aと、第4気筒2Dの弁停止機構25aとに対してそれぞれ1つずつ設けられており、合計2つの弁停止機構用ソレノイドバルブ42が存在するが、図5ではこれを1つのブロックで表記している。
ECU50のより具体的な機能について説明する。ECU50は、機能的要素として、運転要求判定部51、スロットルバルブ制御部52、点火プラグ制御部53、インジェクタ制御部54、弁停止機構制御部55、減筒運転開始判定部56を有している。
運転要求判定部51は、アクセル開度センサSN5、クランク角センサSN1水温センサSN6の検出値等から特定されるエンジンの運転条件(エンジン負荷、エンジン回転数、エンジン水温等)に基づいて、エンジンの減筒運転および全筒運転のいずれを選択するかを判定するものである。例えば、図6に示すように、運転要求判定部51は、エンジン負荷およびエンジン回転数が比較的低い特定の運転領域A1にあるときに、第1、第4気筒2A,2Dを休止させる(第2、第3気筒2B,2Cのみを稼働させる)減筒運転の要求があると判定する。逆に、エンジン負荷およびエンジン回転数が上記特定の運転領域A1を除く残余の運転領域A2にあるときには、第1〜第4気筒2A〜2Dを全て稼働させる全筒運転の要求があると判定する。また、運転要求判定部51は、冷間時や加減速が激しい場合には、全筒運転を実施すると判定する。例えば、運転要求判定部51は、水温センサSN6により検出されたエンジン水温が所定値以下の場合や、アクセル開度センサSN5により検出されたアクセル開度の変化率が大きい場合には、全筒運転を実施すると判定する。
ここで、本装置では、運転要求判定部51によって全筒運転から減筒運転への要求があったと判定されても、すぐには減筒運転を開始せず、減筒運転へ向けた準備制御を実施し、この準備制御終了後に減筒運転を開始する。上記減筒運転開始判定部56は、この準備制御を終了して減筒運転を開始するか否かを判定するものであり、吸気量等によって判定を行う。準備制御の具体的な制御内容および減筒運転開始判定部56の具体的な判定手順については後述する。
スロットルバルブ制御部52は、スロットルバルブ34aの開度すなわち各気筒に吸入される空気量である吸気量を制御するものである。点火プラグ制御部53は、点火プラグ13を制御するものである。インジェクタ制御部54は、インジェクタ12を制御するものである。弁停止機構制御部55は、弁停止機構用ソレノイドバルブ42を制御してS−HLA25の弁停止機構25aに供給される油圧すなわち第1、第4気筒2A,2Dの吸排気弁8,9の開閉動作を変更するものである。これら制御部52〜55の制御内容の詳細について次に説明する。
(4)制御内容
(4−1)基本制御
まず、準備制御実施時以外、すなわち通常の全筒運転時および減筒運転時における各制御部の制御内容について説明する。
スロットルバルブ制御部52は、アクセル開度センサSN5の検出値すなわちアクセルペダルの踏込操作量に応じて設定された目標トルクを実現するように、バルブアクチュエータ34bを制御して、スロットルバルブ34aの開度を変更する。
具体的には、スロットルバルブ制御部52は、目標トルクに基づき、この目標トルクを実現するために必要な充填効率である要求シリンダ充填効率を求めるとともに、この要求シリンダ充填効率を実現するために必要な吸気通路30内の空気量である吸気通路内要求空気量を求める。詳細には、吸気通路内要求空気量は、要求シリンダ充填効率と、エンジンの運転状態、例えば、エンジン回転数、吸気VVT29aの位相等に応じて予め設定されたサージタンク基準体積効率とに基づいて算出される。
次に、スロットルバルブ制御部52は、吸気通路内要求空気量と、現在の吸気通路30内の空気量と、吸気通路30内から気筒に吸入される空気流量とに基づいて、スロットルバルブ34aを通過する空気流量の目標値である要求スロットル通過空気流量を求める。そして、スロットルバルブ制御部52は、この要求スロットル通過空気流量に基づいて、この空気流量を実現するために必要なスロットルバルブの開度(目標スロットルバルブ開度)を算出して、この開度となるように、スロットルバルブ34aの開度を制御する。
目標スロットルバルブ開度は、例えば、ベルヌーイの定理を利用して算出することができる。すなわち、スロットルバルブ34aを通過する空気流量は、スロットルバルブ34aの開度と、スロットルバルブ34aの上流側と下流側との圧力比(上流側に対する下流側の圧力の割合、以下、スロットル上下流圧力比という)によって決まるため、スロットルバルブ34aの上流側と下流側の圧力をセンサによって検出し、この検出値と、要求スロットル通過空気流量とに基づいて、目標スロットルバルブ開度を算出することができる。具体的には、スロットルバルブ34aの開度と、スロットルバルブ上下流圧力比と、スロットルバルブ34aを通過する空気流量とを予め求めてこれらの関係をマップで記憶しておき、このマップから、検出したスロットル上下流圧力比と、要求スロットル通過空気流量とに対応するスロットルバルブ34aの開度を抽出して、目標スロットルバルブ開度に設定すればよい。例えば、このマップは、スロットルバルブ34aを通過する空気流量が一定の場合において、スロットルバルブ上下流圧力比が1に近いほどスロットルバルブ34aの開度が大きくなるように設定される。
ここで、減筒運転時は、稼働・出力する気筒が減少するため、全筒運転時と同様のエンジン出力を発生させるためには、稼働している気筒(第2、第3気筒2B,2C)の1気筒あたりの出力を、全筒運転時における1気筒あたりの出力よりも大きくする必要がある。そのため、減筒運転時には、1気筒あたりの出力(発生トルク)を増大させる必要があり、これに伴い各気筒に吸入される空気量(吸気量)を増大させる必要がある。すなわち、減筒運転時の1気筒あたりの吸気量の目標値は、全筒運転時の1気筒あたりの吸気量の目標値よりも大きくなる。そして、各気筒に吸入される空気量を増大させるためには、吸気通路30内の圧力(スロットルバルブ34aよりも下流側の圧力)を全筒運転時よりも高い状態にする必要がある。そのため、結果として、減筒運転時には、スロットルバルブ上下流圧力比は、全筒運転時よりも1に近い値となり、減筒運転時のスロットルバルブ34aの開度は、全筒運転時の開度よりも大きく(開き側)に制御される。
点火プラグ制御部53は、減筒運転か全筒運転かに応じて休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の点火プラグ13の制御を切り替える。すなわち、エンジンが全筒運転されているとき、点火プラグ制御部54は、全ての気筒2A〜2Dの点火プラグ13を駆動して点火を実行する。一方、エンジンが減筒運転されているとき、燃焼制御部54は、休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)での燃焼を停止させるために、当該気筒の点火プラグ13の駆動を禁止する。
また、点火プラグ制御部53は、点火プラグ13を稼働させる場合において、運転条件に応じて点火時期を決定して点火プラグ13に指示を出す。具体的には、点火プラグ制御部53には、エンジン回転数とエンジン負荷とについて予め設定された点火時期のマップが記憶されており、点火プラグ制御部53は、このマップからエンジン回転数とエンジン負荷とに応じた点火時期を抽出するとともに、抽出した点火時期を吸気圧センサSN4の検出値等に基づいて補正して、基本点火時期を決定する。上記点火時期のマップは、減筒運転用と全筒運転用の2種類用意されており、運転に応じたマップが使用される。
ここで、決定した基本点火時期が過剰に遅角側の時期である場合には、失火するおそれがある。そこで、本実施形態では、点火プラグ制御部53は、点火時期が、予め設定されたリタード限界(第1リタード限界)を超えて遅角されないように最終的な点火時期を決定する。すなわち、点火プラグ制御部53は、決定した上記基本点火時期とリタード限界とのうちより進角側の時期を最終的な点火時期として決定する。リタード限界は、例えば、運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷等)についてそれぞれ予め設定されマップで記憶されており、点火プラグ制御部53は、このマップから運転条件に対応するリタード限界を抽出して上記基本点火時期と比較する。
インジェクタ制御部54は、減筒運転か全筒運転かに応じて休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)のインジェクタ12の制御を切り替える。すなわち、インジェクタ制御部54は、エンジンが全筒運転されているときは、全ての気筒2A〜2Dのインジェクタ12を駆動して燃料噴射を実行する一方、エンジンが減筒運転されているときは、休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)への燃料噴射を禁止する。
また、インジェクタ制御部54は、インジェクタ12に燃料噴射を実行させる場合において、運転条件に応じて噴射量を決定してインジェクタ12に指示を出す。
弁停止機構制御部55は、減筒運転か全筒運転かに応じて弁停止機構用ソレノイドバルブ42の制御を切り替える。すなわち、エンジンが全筒運転されているときは、弁停止機構制御部55は、ソレノイドバルブ42をOFF状態として全ての気筒2A〜2Dの吸排気弁8,9の開閉を可能とする一方、エンジンが減筒運転されているときは、弁停止機構用ソレノイドバルブ42をON状態として休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の吸排気弁8,9を閉弁保持させる。
(4−2)準備制御
(i)制御内容
上記のように、減筒運転では、稼働している気筒の1気筒あたりの出力を全筒運転時よりも大きくするべく、1気筒あたりの吸気量が増大される。しかしながら、吸気量の変化には遅れがあるため、全筒運転から減筒運転への切り替え要求があった後すぐさま休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の燃焼を停止して減筒運転を開始したのでは、稼働気筒(第2、第3気筒2B,2C)の吸気量が不足してエンジントルクが低下し、トルクショックが生じるおそれがある。準備制御は、このトルクショックの発生を回避するためのものであり、上記運転要求判定部51によって全筒運転から減筒運転への切り替え要求があったと判定されると、開始される。
スロットルバルブ制御部52は、準備制御として、1気筒あたりの吸気量が減筒運転時の吸気量となるようにスロットルバルブ34aの開度を変更する制御を実施する。上記の通り、減筒運転時の1気筒あたりの吸気量は、準備制御が実施されていない通常の全筒運転時における1気筒あたりの吸気量よりも多くされる。そのため、スロットルバルブ制御部52は、準備制御として、スロットルバルブ34aの開度を、通常の全筒運転時の開度すなわち全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出される直前の開度よりも開き側に制御する。
本実施形態では、スロットルバルブ制御部52は、準備制御として、(4−1)で説明した減筒運転時における制御と同様の制御を実施しており、準備運転が開始されると、スロットルバルブ34aの開度を減筒運転時の開度、すなわち開き側に変更する。すなわち、本実施形態では、スロットルバルブ制御部52は、全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出されると、すぐさま、減筒運転時の制御を開始する。
弁停止機構制御部55は、準備制御として、弁停止機構用ソレノイドバルブ42をOFF状態として、全ての気筒2A〜2Dの吸排気弁の開閉を可能とする制御を実施する。すなわち、弁停止機構制御部55は、上記運転要求判定部51によって全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出されても、すぐには、弁停止機構用ソレノイドバルブ42をON状態とせず、全ての気筒2A〜2Dの吸排気弁8,9を開閉可能とする。
また、インジェクタ制御部54および点火プラグ制御部53も、準備制御として、全ての気筒2A〜2Dで燃焼が実施されるようにインジェクタ12および点火プラグ13を制御する。すなわち、インジェクタ制御部54および点火プラグ制御部53は、上記運転要求判定部51によって全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出されても、すぐには、休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の燃料噴射および点火を停止せず、全ての気筒2A〜2Dで燃料噴射および点火を実施する。
このように、本装置では、運転要求判定部51によって全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出されても、準備制御の実施によって全ての気筒2A〜2Dの吸排気弁8,9が開閉駆動されるとともに全ての気筒2A〜2Dで燃焼が実施される。
ここで、上記のように、準備制御では、スロットルバルブ制御部52によって1気筒あたりの吸気量が減筒運転時の吸気量であって通常の全筒運転時の吸気量よりも多くされる。そのため、このように吸気量が多い状態で、全ての気筒2A〜2Dで燃焼を実施したのでは、エンジントルクが通常の全筒運転時のトルクすなわち準備制御開始直前のトルクであって運転者等から要求されているトルクよりも高くなってしまう。
そこで、本装置では、準備制御中は、点火時期を、上記吸気量の増加に伴って生じるエンジントルクの増大を回避できる時期まで遅角する。すなわち、準備制御では、点火プラグ制御部53は、点火時期を、通常の全筒運転時の点火時期すなわち準備制御開始直前の点火時期よりも遅角側に制御する。
具体的には、点火プラグ制御部53は、通常の全筒運転時の吸気量に対して実際の吸気量がどれだけ増加したかを算出し、この吸気量の増加量、詳細には、この吸気量の増加量に対応するエンジントルクの増加量、に対応する遅角量を算出する。本実施形態では、点火プラグ制御部53は、各運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷等)について予め設定された吸気量の増加量と遅角量とのマップを記憶しており、このマップから、運転条件と算出した吸気量の増加量とに対応する遅角量を抽出する。そして、点火プラグ制御部は、(4−1)で説明した手順に沿って決定した通常の全筒運転時の基本点火時期から、上記決定した遅角量だけ遅角した時期を、準備制御用の点火時期として決定する。
ここで、点火時期を過剰に遅角すると失火するおそれがある。そこで、本実施形態では、準制御実施時においても、点火時期が予め設定された限界時期を超えて遅角されないようにする。ただし、準備制御実施時は、上記4−1で説明した通常時の制御におけるリタード限界よりもより遅角側まで点火時期が遅角されるのを許容する。すなわち、準備制御においても、点火プラグ制御部53は、予め設定された準備制御用のリタード限界(第2リタード限界)と上記決定した準備制御用の点火時期とのうち、より進角側の時期を最終的な点火時期に決定するが、準備制御用のリタード限界は、通常時に使用するリタード限界よりもより遅角側に設定されている。なお、この準備制御用のリタード限界も、通常時のリタード限界と同様に、例えば、運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷等)についてそれぞれ予め設定され、マップで記憶されている。
(ii)準備制御終了および減筒運転開始判定
上記準備制御は、上記減筒運転開始判定部56により準備制御を終了して減筒運転を開始すると判定されるまで実施される。
上記の通り、準備制御は、全筒運転から減筒運転への切り替え時に、稼働気筒の吸気量が不足してエンジントルクが低下しトルクショックが生じるのを回避するための制御である。そのため、減筒運転開始判定部56は、基本的には、1気筒あたりの吸気量が減筒運転時の吸気量まで増加した時点で、準備制御を終了して減筒運転を開始すると判定する。
ただし、点火時期が過剰に遅角側である状態が長く続くと失火する可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、失火をより確実に回避するべく、減筒運転開始判定部56は、点火時期が上記準備制御用のリタード限界となった期間が予め設定された基準時間を超えると、吸気量が減筒運転時の吸気量に到達していない場合であっても、準備制御を終了して減筒運転を開始すると判定する。
(iii)
ECU50により実施される以上の準備制御の流れを図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS1において、各センサの検出値により特定される、エンジン負荷、エンジン回転数、水温、アクセル開度等の読み込みが行われる。次に、ステップS2において、全筒運転から減筒運転への要求があったかどうかが判定される。上記のとおり、この判定は運転要求判定部51により行われ、運転要求判定部51は、エンジン負荷、エンジン回転数が所定の運転領域にあるか、エンジン水温が所定の温度以上か、アクセル開度の変化率が所定値以上か否か等によって、全筒運転から減筒運転への要求があったかどうかを判定する。
ステップS2の判定がNOであって、全筒運転から減筒運転への要求がない(全筒運転から減筒運転へ移行すべきではない)と判定された場合は、ステップS3に進み、全筒運転を維持する。一方、ステップS2の判定がYESであって、全筒運転から減筒運転への要求があった場合は、ステップS4に進む。
ステップS4では、オイルポンプ41により、オイルポンプ41と弁停止機構25aとの間の油路、詳細には、オイルポンプ41と弁停止機構用ソレノイドバルブ42との間の油路の油圧が高められる。これは、減筒運転開始時に、より確実に休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の吸排気弁8,9を閉弁保持するためである。なお、このように減筒運転開始前において、オイルポンプ41と弁停止機構用ソレノイドバルブ42との間の油路の油圧は高められるが、弁停止機構用ソレノイドバルブ42がOFF状態であるため、この時点では、弁停止機構25aのロックピン252と上記貫通孔251aとは嵌合解除された状態に維持され、休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の吸排気弁8,9は開閉駆動する。
ステップS4の次に進むステップS5では、スロットルバルブ34aの開度が通常の全筒運転時よりも開き側に変更される。
ステップS5の次に進むステップS6では、点火時期が通常の全筒運転時よりも遅角側にされる。本実施形態では、上記のとおり、点火プラグ制御部53は、点火時期を通常の全筒運転時の点火時期から、全筒運転時の目標吸気量からの吸気量の増加量に対応した量だけ遅角させた点火時期と、準備制御用のリタード限界とのうち進角側の時期を最終的な点火時期に決定する。
ステップS6の次に進むステップS7では、吸気量が減筒運転時の吸気量に到達したかが判定される。ステップS7の判定がYESの場合は、ステップS9に進む。一方ステップS7での判定がNOであって吸気量が減筒運転時の吸気量に到達していない場合はステップS8に進み、点火時期が準備制御用のリタード限界となった時間が所定時間継続したか否かが判定される。
ステップS8の判定がYESであって、点火時期が準備制御用のリタード限界となった時間が所定時間継続するとステップS9に進む。一方、ステップS8の判定がNOの場合は、ステップS4に戻り、ステップS5からステップS8を繰り返す。
ステップS9では、減筒運転が開始される。すなわち、吸気量が減筒運転時の吸気量に到達した(ステップS7の判定がYES)、あるいは、準備制御用リタード限界が所定時間継続すると(ステップS8の判定がYES)、減筒運転が開始され、休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の点火および燃料噴射が停止されるとともに、弁停止機構用ソレノイドバルブ42がONとされて休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の吸排気弁8、9が閉弁保持されるとともに、稼働気筒(第2、第3気筒2B,2C)の点火制御が通常の減筒運転時の制御に切り替えられる。
(5)作用等
図8に、本実施形態に係る制御を実施した場合の結果を示す。また、比較例として、上記準備制御を実施しなかった場合の結果を図9、10に示す。図9は、上記切替要求があったときにすぐさま減筒運転を開始したときの結果であり、図10は、上記切替時に、上記準備制御のうち点火時期を遅角する制御を実施しなかった場合の結果である。これら図において、最上部のグラフは、全筒運転から減筒運転への切り替えフラグの変化を示したものであり、全筒運転から減筒運転への切り替え要求が出されると0から1に変化する。
図9に示すように、時刻t1において全筒運転から減筒運転への切り替え要求があった直後に休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の燃焼を停止して稼働気筒を2気筒にした場合では、減筒運転の開始に伴いスロットルバルブ34aが開き側に変更されるものの吸気量(1気筒あたりの吸気量、充填効率)が減筒運転時の量まですぐには増加しないため、稼働気筒(第2、第3気筒2B,2C)の吸気量不足によりこれら稼働気筒からの出力が確保されず、エンジントルクが急低下し、トルクショックが生じる。
また、図10に示すように、時刻t1において全筒運転から減筒運転への切り替え要求があった後、すぐには休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の燃焼を停止せずに、まず、スロットルバルブ34aを開き側に変更して吸気量(1気筒あたりの吸気量、充填効率)を減筒運転時の量まで増加させ、その後、減筒運転を開始した場合には、エンジントルクの低下は回避されるものの、すべての気筒で燃焼が実施されている状態でこれら気筒の吸気量が増大する結果、各気筒の出力が増加してエンジントルクが増大してしまう。そのため、この場合であっても、時刻t2にて減筒運転を開始した際にエンジントルクが急低下して、トルクショックが生じる。
これに対して、本実施形態に係る装置では、図8に示すように、時刻t1において全筒運転から減筒運転への切り替え要求があった後、すぐには休止気筒(第1、第4気筒2A,2D)の燃焼を停止せず、スロットルバルブ34aを開き側に変更して吸気量(1気筒あたりの吸気量、充填効率)を減筒運転時の量まで増加させる制御を行った上に、さらに、吸気量の増加量に応じて点火時期を遅角させている。そのため、吸気量を増大させつつ各気筒からの出力が増大するのを回避することができ、エンジントルクが増減するのを回避することができる。すなわち、全筒運転から減筒運転への切り替え時においてエンジントルクをほぼ一定に維持することができ、この切り替え時にトルクショックの発生を回避することができる。
このように、本実施形態に係る装置によれば、全筒運転から減筒運転への切り替え時にトルクショックが生じるのをより確実に回避することができ、運転性をより良好にすることができる。
(6)変形例
ここで、上記実施形態では、準備制御実施時において、点火時期が予め設定された準備制御用のリタード限界を超えて遅角されるのを禁止する場合について説明したが、この点火時期の規制を解除してもよい。すなわち、準備制御実施時において、点火時期の遅角量を無制限に許容してもよい。ただし、点火時期が過剰に遅角されると失火等が生じるおそれがある。そのため、上記規制を行えば、この失火等をより確実に回避することができる。
また、上記実施形態では、準備制御用のリタード限界を、通常時のリタード限界よりも遅角側に設定する場合について説明したが、これらを同じ値に設定してもよい。ただし、準備制御用のリタード限界をより遅角側とし、準備制御時において点火時期がより遅角側となるのを許容すれば、失火等を回避しながら吸気量の増加に合わせて点火時期をより適正に遅角することができ、トルクショックの発生をより確実に回避することができる。
また、上記実施形態では、準備制御を終了して減筒運転を開始するか否かの判定を、吸気量が減筒運転時の吸気量に到達したか否か、および、点火時期が準備制御用リタード限界となった期間が所定期間以上継続したか否か、によって行う場合について説明したが、この判定の具体的内容はこれに限らない。例えば、点火時期に基づく判定を省略してもよい。また、点火時期の判定について、上記判定に代えて、点火時期が所定の時期となった時点で準備制御を終了すると判定してもよい。また、吸気量の判定について、上記判定に代えて、実際の吸気量と減筒運転時の吸気量との差が所定値以下になった時点で準備制御を終了すると判定してもよい。また、吸気量の判定に代えて、準備制御実施時に、時々刻々、減筒運転を仮に開始した場合のエンジントルクを推定し、この推定したエンジントルクと、現状のエンジントルクすなわち運転者等により要求されているエンジントルクとの差が所定値以下になった時点で準備制御を終了すると判定してもよい。
また、上記実施形態では、4気筒ガソリンエンジンに本発明の制御装置を適用した例について説明したが、本発明の制御装置が適用可能なエンジンの形式はこれに限られない。例えば、6気筒や8気筒など、4気筒以外の多気筒エンジンを対象としてもよく、また、ディーゼルエンジン、エタノール燃料エンジンやLPGエンジン等、他種の内燃機関を対象としてもよい。