JP6212899B2 - ガスバリア積層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア積層フィルムに関する。
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を防止することが求められている。例えば、食品用包装材料については、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、更に風味や鮮度を保持できることが求められ、また、無菌状態での取扱が必要とされる医薬品用包装材料では、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能が保持されていることが要求される。
内容物が変質する要因としては、主として、包装材料を透過する酸素や水蒸気あるいは内容物と反応するような他のガスによって引き起こされることが多い。そのため、食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料は、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが重要である。
また、包装材料は、用途に応じて透明性が要求される。その理由は、包装材料が透明性を有することで、包装の外から内容物の形状や内容物の色などが目視で確認でき、それによって内容物の取り違い防止や、損傷の有無、内容物の変質の有無が開封前にわかることが挙げられる。
一般に、ガスバリア性を備える包装材料としては、フィルム基材上にガスバリア性物質を蒸着したガスバリア積層フィルムが知られている。ガスバリア性物質の蒸着膜は、ガスバリア性を有する他、極めて薄い膜で形成されていることから、透明性も優れている。
ガスバリア性物質としては、主に、一酸化珪素、二酸化珪素等の珪素酸化物(SiOx)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ等の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物、金属フッ化物等の無機化合物が用いられる。
ガスバリア性物質の蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法など様々な方法が提案されている。
これらの蒸着方法のうち、生産性の観点から考えれば、高い成膜速度で効率よく生産できる方法が望ましい。一般に高い成膜速度が得られる方法としては真空蒸着法が挙げられ、特にEB(Electron Beam)加熱方式によるものが最適である。
従って、ガスバリア積層フィルムとしては、高速成膜が可能であって生産性が高く、透明性、ガスバリア性などにも優れていることから、フィルム基材に一酸化珪素(SiO)や珪素/二酸化珪素(Si/SiO)混合材料を蒸着したシリカ系蒸着フィルムや、金属アルミニウムを蒸発させて酸素と反応させてフィルム基材に蒸着したいわゆるアルミナ反応蒸着フィルムが注目されている。
ところが、近年、包装材料に用いられるガスバリア積層フィルムには、より高いガスバリア性が要求されるようになってきている。
また、ガスバリア積層フィルムは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや太陽電池におけるバックシートやフロントシートなどの用途にも用いられるようになってきた。その結果、このような用途で必要な機能は、より高度なガスバリア性を有する他、長時間の過酷な耐久性試験においてもガスバリア性が低下しないことが求められる。
しかし、以上のような要求にも拘わらず、前述したシリカ系蒸着フィルムやアルミナ反応蒸着フィルムは、ガスバリア性が不充分である。また、ガスバリア性が温度や水分の影響を受けやすく、例えばボイルやレトルト殺菌のような処理を行った際にガスバリア性が著しく低下するなどの問題がある。
そこで、従来、ガスバリア性やその耐熱性、耐水性、耐湿性等を向上させるため、フィルム基材上に形成された蒸着膜の上面に、さらに、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子とテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン又はその加水分解物とを含有したコーティング液を塗工した後、加熱乾燥させてガスバリア性被膜を設けたガスバリア積層フィルムが提案されている(例えば特許文献1〜2)。
特開平7−164591号公報 国際公開第2004/048081号
従って、特許文献1、2に記載されたガスバリア性被膜を設けたガスバリア積層フィルムは、ガスバリア性や透明性に優れており、また、ガスバリア性被膜を設けない場合に比べて、ガスバリア性の耐熱性、耐水性、耐湿性等が向上している。
しかし、特許文献1、2に記載のガスバリア積層フィルムは、以上のような種々の効果が得られるものの、未だ改善の余地がある。例えば包装材料用途においては、ボイルやレトルト殺菌のような処理を行った際のガスバリア性の劣化を抑制する効果は充分とはいえない。また、過酷な耐久性試験、例えば85℃85%RH(相対湿度)の条件下で1000時間以上の高温高湿下で耐久試験を行ったところ、バリア性や密着性に劣化が見られるなどの問題がある。その結果、例えば屋外に設置される太陽電池などの長時間の使用を想定した用途には適用し難い問題がある。
従って、ガスバリア積層フィルムは、用途の拡大に伴って、ボイル、レトルト殺菌、屋外などの過酷な環境下でも長期に渡って優れたガスバリア性を有するものが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、過酷な環境下においても長期に渡って優れたガスバリア性を発揮できるガスバリア積層フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、発明は、樹脂基材と、この樹脂基材の少なくとも片面側に積層されたアンカーコート層と、このアンカーコート層の表面側に積層された蒸着層とを備えたガスバリア積層フィルムであって、前記アンカーコート層は、ヒドロキシル基(OH基)とカルボキシル基(COOH基)とを含有するアクリルポリオールと分子内にイソシアネート基(NCO基)を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物との複合物によって形成され、かつ前記アンカーコート層中に、Al、Zn、Snから選ばれる何れか一つの金属化合物を含有し、
前記金属化合物の粒子径が3nm〜300nmの平均粒子径のものとされ、前記アンカーコート層12中に0.5wt%〜20wt%添加され
前記アンカーコート層を構成する前記アクリルポリオールの前記ヒドロキシル基(OH基)に対する前記イソシアネート化合物の前記イソシアネート基(NCO基)の当量比(NCO/OH)が0.15〜0.75であることを特徴とするガスバリア積層フィルムである。
発明は、上記のガスバリア積層フィルムにおいて、前記アンカーコート層を構成する前記ヒドロキシル基(OH基)と前記カルボキシル基(COOH基)とを含有する前記アクリルポリオールは、水酸基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下、酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることができる。
さらに、本発明は、上記のガスバリア積層フィルムにおいて、前記アンカーコート層中の前記金属化合物が、酸化アルミ(Al )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO、SnO )、Al(OH) 、Zn(OH) 、Sn(OH) から選ばれることができる。
発明は、上記の何れかのガスバリア積層フィルムにおいて、前記蒸着層は、金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料を真空蒸着したものであることができる。
発明は、上記のガスバリア積層フィルムにおいて、前記蒸着材料は、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群の中から選ばれる金属又はその酸化物を含有し、これらAl、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属は、前記蒸着層中に1atm%以上20atm%以下の割合で含有することができる。
また、発明は、上記の何れか記載のガスバリア積層フィルムにおいて、前記蒸着層の表面にオーバーコート層がさらに積層によって付加され、このオーバーコート層は、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基とを含有するアクリルポリオールの何れか一つによって形成されていることができる。
さらに、発明は、上記のガスバリア積層フィルムにおいて、前記オーバーコート層は、必須成分である前記カルボキシル基を含有するカルボキシル基含有化合物に、ポリアクリル酸もしくはヒドロキシル基とカルボキシル基とを含有するアクリルポリオールの何れか一つが含まれていることができる。
さらに、発明は、上記のガスバリア積層フィルムにおいて、前記オーバーコート層は、分子内にイソシアネート基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物を含有することができる。
本発明によれば、過酷な環境下においても長期に渡って優れたガスバリア性を発揮でき、ガスバリア性の耐熱性、耐水性、耐湿性等も向上させ得るガスバリア積層フィルムを提供できる。
本発明に係るガスバリア積層フィルムの一実施の形態を示す断面図。 本発明に係るガスバリア積層フィルムの他の実施の形態を示す断面図。 本発明に係るガスバリア積層フィルムのさらに他の実施の形態を示す断面図。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るガスバリア積層フィルムの一実施の形態を示す断面図である。
ガスバリア積層フィルム10は、樹脂基材11とアンカーコート層12と蒸着層13とからなり、フィルム状の樹脂基材11の片面には、アンカーコート層12と蒸着層13とが順次積層された構成である。なお、本発明に係るガスバリア積層フィルムとしては、より高い水蒸気バリア性を達成するために、樹脂基材11の両面にそれぞれアンカーコート層12と蒸着層13とが順次積層された構成であってもよい。
樹脂基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムなどが挙げられる。
樹脂基材11には、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を含有してもよい。また、樹脂基材11の厚みは、特に制限を設けないが、実用上6μm以上200μm以下程度がよく、好ましくは12μm以上125μm以下、さらに好ましくは12μm以上50μm以下がよい。
また、樹脂基材11の他の層(アンカーコート層12,蒸着層13)を積層する側の表面には、密着性を高めるために、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理や、酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理を施してもよい。
次に、アンカーコート層12について詳しく説明する。
アンカーコート層12は、樹脂基材11上に設けられ、樹脂基材11と蒸着層13との密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌などの各種殺菌処理や、長期の屋外設置による蒸着層の剥離発生を防止するために設けられる。
アンカーコート層12は、ヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いて形成され、アンカーコート層12中には、Al、Zn、Snから選ばれるいずれかの金属化合物が含有されることにより、樹脂基材11と蒸着層13との密着性を高めることができる。
アクリルポリオールとは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物などのうち、末端と側鎖とにヒドロキシル基を有するもので、イソシアネート系化合物のイソシアネート基と反応するものである。
末端と側鎖とにヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどがある。
末端と側鎖とにヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの側鎖にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、(メタ)アクリル酸などの側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの側鎖に芳香環や環状構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーがある。(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外では、スチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどがある。上記のその他のモノマーは、それ自身が末端と側鎖とにヒドロキシル基を有していてもよい。
アクリルポリオールは、特に(メタ)アクリル酸などの側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーを重合させて得られるアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いてアンカーコート層12を形成することにより、より高い水蒸気バリア性を有するガスバリア積層フィルムを得ることができる。
カルボキシル基を有するアクリルポリオールは、側鎖のカルボキシル基と含まれる金属イオンとがイオン架橋を形成することから、アンカーコート層の耐久性がより一層高まるとともに、蒸着層13との密着性が高まることから、より高いバリア性を発現できるガスバリア積層フィルムを提供できる。
アンカーコート層12を構成するヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールについては、水酸(OH)基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下、酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが望ましい。水酸基価が50mgKOH/gよりも小さいと、イソシアネート系硬化剤との反応量が少なく、密着力が十分発現しない。250mgKOH/gを超えると、イソシアネート系化合物との反応量が多くなり過ぎてアンカーコート層12の膜収縮が大きくなり、蒸着層13がきれいに積層されず、十分なバリア性を示さない。酸価が5mgKOH/gよりも小さいと、蒸着層13の金属イオンとカルボキシル基との反応量が少なく、密着力が十分発現しない。50mgKOH/gを超えると、蒸着層13の金属イオンとカルボキシル基との反応量が多くなり過ぎてアンカーコート層12の膜収縮が大きくなり、蒸着層13がきれいに積層されず、十分なバリア性を示さない。
ここで、水酸基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中のヒドロキシル基量の指標であり、アクリルポリオール1g中のヒドロキシル基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。また、酸価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中のカルボキシル基量の指標であり、アクリルポリオール1g中のカルボキシル基を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。
アクリルポリオールの重量平均分子量は特に規定しないが、具体的には、3000以上200000以下、好ましくは5000以上100000以下、さらに好ましくは5000以上40000以下である。
イソシアネート系化合物とは、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものである。例えば、モノマー系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族系イソシアネートなどがある。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体あるいは誘導体も使用可能である。例えば、3量体のヌレート型、1,1,1−トリメチロールプロパンなどと反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型などがある。
イソシアネート系化合物は、前述したイソシアネート系化合物あるいはその重合体、誘導体から任意に選択してよく、1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
アンカーコート層12は、前記アクリルポリオールと前記イソシアネート系化合物との複合物と溶媒とからなる溶液を樹脂基材11上に塗工し、反応硬化させることにより形成される。
アンカーコート層12としては、アンカーコート剤中におけるアクリルポリオールのヒドロキシル基(OH基)に対するイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO基)の当量比(NCO/OH)は、0.15〜0.75の範囲であることが望ましい。
その理由は、0.15より小さい場合、十分な密着性が得られない。一方、0.75より大きい場合、架橋密度が大きくなりすぎて長期の耐久性の低下が懸念される。
また、溶媒としては、アクリルポリオール及びイソシアネート系化合物を溶解する溶媒であればよく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これらの溶媒を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
アンカーコート層12中に含有される金属化合物とは、アンカーコート層中のCOOH基とイオン架橋体を形成するためのイオン供給源と成り得るものであれば特に限定されないが、Al、Zn、Snから選ばれるいずれかの金属化合物であって、酸化物、水酸化物などが望ましく、酸化アルミ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO、SnO)、Al(OH)、Zn(OH)、Sn(OH)などの水酸化物などが例示できる。
金属化合物の粒子径はアンカーコート層12の膜厚よりも小さいことが望ましく、概ね3nm〜300nmの平均粒子径のものがよく、さらに、10nm〜200nmの平均粒子径のものが透明性、バリア性の点から良好である。粒子径が3nm以下では反応性が高すぎて、コーティング剤としての安定性が低下するために適用が難しく、300nm以上では光散乱の影響で透明性が損なわれることから同様に適用が難しい。
添加量はアンカーコート層12のCOOH基の量に応じて適宜選択されるものであるが、反応性などを考慮すると、概ねアンカーコート層12中に0.5wt%〜20wt%が望ましく、さらには1〜15wt%(以下、wt%は重量%を意味する)が最適である。0.5wt%以下ではイオン架橋による効果が期待できず、20wt%以上ではアンカーコート層12としての密着強度の低下が懸念されることから適用が難しい。
アンカーコート層12の形成方法としては、通常のコーティング方法が用いられる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV(紫外線)照射など熱をかける方法の1種類あるいは2種類以上の組み合わせ方法を用いることができる。
アンカーコート層12の膜厚は、0.1μm以上0.5μm以下が望ましく、好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である。これよりも厚みが薄いと、樹脂基材11と蒸着層13との密着性が不十分となり、0.5μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、蒸着層13がきれいに積層されず、バリア性の発現が不十分となる問題がある。
さらに、蒸着層13について詳しく説明する。
蒸着層13は、アンカーコート層12上に設けられ、フィルム全体にガスバリア性を付与するために設けられる。
蒸着層13としては、特に限定されない。従来のガスバリア材等において蒸着膜を構成する無機材料のなかから適宜選択でき、例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、これらの金属の1種以上を含む無機化合物などが挙げられる。該無機化合物としては、金属酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの中でも、金属及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
蒸着層13は、以上のような金属元素を含む蒸着材料を蒸着させることにより形成できる。蒸着材料としては、例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、該金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。
蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマ気相成長法等の化学気相成長(PVD)法などの公知の方法を適宜用いることができる。これらの蒸着方法の中でも、高速成膜が可能であって生産性に優れている点を考えると、真空蒸着法が好ましい。
また、蒸着層13の透明性を上げるためには、蒸着材料を蒸着させる際に、蒸発した粒子と雰囲気中に導入した酸素ガスなどと反応させて蒸着させる反応蒸着をさせてもよい。酸素ガスやアルゴンガスとの反応蒸着を行うことにより、蒸着材料中の金属成分が酸化され、蒸着層13の透明性を向上させることができる。ガスを導入する際は、成膜室の圧力が2×10−1Pa以下にすることが望ましい。成膜室の圧力が2×10−1Paよりも大きくなってしまうと、蒸着層13がきれいに積層されず、水蒸気バリア性が低下してしまうおそれがある。
蒸着層13は、透明性や、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性に特に優れていることから、金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料を真空蒸着させたものであることが好ましい。
蒸着材料中、金属珪素と二酸化珪素素の含有量の比率は特に限定されないが、珪素と酸素との元素比O/Siが1.0以上1.8以下になる比率で含有することが好ましく、O/Siが1.2以上1.7以下になる比率で含有することがより好ましい。O/Siが1.0以上であると、透明性が良好となり、O/Siが1.8以下であると、バリア性が良好となる。
金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料には、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属(以下、特定金属と呼ぶ)又はその酸化物を含有させることが好ましい。これにより、金属珪素と二酸化珪素との混合物を蒸着材料として用いた場合よりも、膜密度が高い蒸着層を形成でき、高いガスバリア性が発現するとともに、ヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールと分子内にイソシアネート基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたアンカーコート層12との相乗効果により、フィルム全体のガスバリア性をより高めることが可能となる。
なお、蒸着材料に含まれる特定金属又はその酸化物は1種でも2種以上であってもよい。
蒸着材料中、特定金属又はその酸化物の含有量は、金属珪素と二酸化珪素の合計100質量%に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。1質量%以上であれば、膜密度の向上効果が充分に得られる。50質量%を超えると、相対的に金属珪素及び二酸化珪素の含有量が少なくなるため、蒸着層の透明性、耐湿熱環境下におけるバリア性等が低下するおそれがある。
該蒸着材料において、前記特定金属又はその酸化物以外の残部は、金属珪素及び二酸化珪素からなることが好ましい。つまり、蒸着材料は、特定金属又はその酸化物と、金属珪素と、二酸化珪素との合計が100質量%であることが好ましい。
以上のように金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料を真空蒸着させると、珪素酸化物(SiOx)を含有する無機材料からなる蒸着層が形成される。また、金属珪素と、二酸化珪素と、特定金属又はその酸化物とを含有する蒸着材料を真空蒸着すると、珪素酸化物と、特定金属又はその酸化物を含有する無機材料からなる蒸着層が形成される。
アンカーコート層12に形成される蒸着層13における珪素酸化物の含有量は、蒸着層13を構成する全元素中のSi元素の存在比として、15atm%以上が好ましく、25atm%以上がより好ましい。25atm%以上であれば、透明性、バリア性等に優れたものとなる。
蒸着層13において、特定金属又はその酸化物の含有量は、蒸着層13を構成する全元素中の特定金属元素の存在比として、1atm%以上20atm%以下が好ましく、3atm%以上15atm%以下がより好ましく、3atm%以上10atm%以下がさらに好ましい。1atm%以上であれば、高いガスバリア性が発現する。20atm%を超えると、相対的に珪素酸化物の含有量が少なくなるため、蒸着層13の透明性、耐湿熱環境下におけるバリア性等が低下するおそれがある。
特定金属元素の存在比が1atm%以上20atm%以下の蒸着層13は、例えば、金属珪素と二酸化珪素の合計100質量%に対して特定金属又はその酸化物を1質量%以上50質量%以下の割合で配合した蒸着材料を用いることで形成できる。
蒸着層13を構成する元素の種類と存在比は、X線光電子分光分析装置(ESCA)により測定できる。
金属珪素と酸化珪素は、蒸着膜中の元素比O/Siが1.2以上2.0以下になることが望ましい。元素比O/Siが1.2より小さいと、蒸着膜に含まれる酸化物成分が少ないため、フィルムの透明性が低下する。元素比O/Siが2.0を超えることは理論上起こらない。アルミニウム、亜鉛、スズ、鉄から選ばれるいずれかの金属あるいは金属酸化物は、蒸着膜中にいずれかの金属元素が2atm%以上50atm%以下含有されていることが望ましい。2atm%より小さいと、含有率が低すぎるため、添加による水蒸気バリア性向上効果が得られず、50atm%を超えると、蒸着したフィルムに含まれる金属成分の量が多くなるため、フィルムの耐水性が低下する。
蒸着層13の膜厚は、0.005μm以上0.3μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.03μm以上0.05μm以下である。0.005μmよりも小さいと十分なバリア性が発現せず、また0.3μmを超えたときに脆く、クラックが発生しやすくなり、バリア性が発現しない問題が生じる。
次に、図2は本発明に係るガスバリア積層フィルムの他の実施の形態を示す断面図である。
このガスバリア積層フィルム20は、図1のガスバリア積層フィルム10の蒸着層13上面に、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールの何れか一つを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるオーバーコート層21を施した構成である。
オーバーコート層21は、硬く脆い蒸着層13を保護し、擦れや屈曲によるクラックの発生を防止する他、酸素の侵入を抑制するために設けられ、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールのいずれかひとつを含有した成分からなる。ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールのいずれかひとつを含有するコーティング液を蒸着層13の上に塗工し、乾燥させることにより形成される。
オーバーコート層21の形成方法としては、アンカーコート層12と同様に通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
オーバーコート層21を形成する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリアクリル酸樹脂(PAA)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVヒドロキシル)、ポリビニルピロリドン樹脂(PVP)、あるいは、ヒドロキシル基とカルボキシル基を有するアクリルポリオールなどを用いることができ、これらを単独あるいは複数組み合わせて用いてもよい。
また、オーバーコート層21は、蒸着層13との密着性を上げるために、アルコキシシランを添加してもよい。アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどを用いることができる。また、アルコキシシランの加水分解生成物としては、メタノールなどのアルコールにアルコキシシランを溶解し、その溶液に塩酸などの酸の水溶液を添加し、加水分解反応させることにより調製したものが挙げられる。
また、オーバーコート層21は、蒸着層13との密着性を上げるために、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するものなどが挙げられ、これらのシランカップリング剤を1種類あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、蒸着層13との密着性を上げるために、分子内にイソシアネート基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物を添加してもよい。
図3は本発明に係るガスバリア積層フィルムのさらに他の実施の形態を示す断面図である。
このガスバリア積層フィルム30は、図2のガスバリア積層フィルム20の両面に、それぞれ接着剤層31を介してラミネート樹脂層32を施すことで、より実用性の高い積層フィルムを提供することにある。
ラミネート樹脂層32は、ヒートシール性のあるシーラントフィルムを積層することで、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。なお、接着剤層31を介してラミネート樹脂層32は、図2のガスバリア積層フィルム20の片面にのみ設けてもよい。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムを本発明のガスバリア積層フィルムの片面または両面に積層することで、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネルで使用する透明伝導シートなどの封止材として用いることもできる。
以下、本発明に係るガスバリア積層フィルムに関する実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの実施の形態例に限定されるものではない。
なお、オーバーコート層21を形成するための塗布液及びアンカーコート剤における有機珪素化合物またはその加水分解物の含有量を示す「固形分」は、加水分解した有機珪素化合物が重合し、成膜される塗膜重量に換算した量である。
〈実施例1〉
実施例1においては、図2に示す構成の積層フィルムを以下の手順で作製した。
アンカーコート層12を構成するアンカーコート剤として、水酸基価が150mgKOH/g、酸価が26mgKOH/gになるように、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)とメタクリル酸(MAA)を共重合させてアクリルポリオール(重量平均分子量約1万)を得た。
アンカーコート剤としては、以上のようにして得られたアクリルポリオールを主剤とし、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート型のものを、主剤の水酸基量に対して0.5当量となるように配合した固形分5質量%のメチルエチルケトン(MEK)溶液を調製し、この溶液にさらに固形分5質量%の平均分子量30nmの酸化亜鉛微粒子のメチルエチルケトン(MEK)分散溶液を90:10%の比率で混合させた。
片面がコロナ処理された厚さ12μmの樹脂基材11となる二軸延伸PETフィルム(東レフィルム加工、P60)のコロナ処理面に、上記アンカーコート剤を、グラビアコート機を用いて、乾燥後の厚みが0.15μmとなるように塗工した。塗工後、50℃の恒温室に48時間保管しエージング処理を行ってアンカーコート層12を形成した。
このアンカーコート層12の上面側に、真空蒸着機を使用して、元素比O/Siが1.5になるように金属珪素粉末及び二酸化珪素粉末を混合した蒸着材料(A)を蒸着し、厚さ50nmの蒸着層(SiOx蒸着膜)13を形成した。
さらに、オーバーコート層21を形成する塗布液としては、下記の手順で調製したものを用い、バーコートにて蒸着層13の上に塗布し、120℃−2分間の加熱乾燥を行って膜厚0.5μmのオーバーコート層21を形成し、目的とする積層フィルムを作製した。
オーバーコート塗布液:テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解溶液(0.01Nの塩酸を用いて水としてテトラエトキシシランの5倍モル当量加えたもの)と、ポリビニルアルコールの水溶液とを、TEOSのSiO換算量とPVAとの質量比が50:50となるように混合して固形分5質量%の溶液を調製した。
以上のようにして作製された積層フィルムは、ガスバリア性の評価のため、製造直後(初期)と、85℃85%RH(RHは相対湿度を意味する)で500時間の保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)を以下の手順によって測定した。
その結果、初期の水蒸気透過度(WVTR)は0.3〔g/m・day〕であり、保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)は0.5〔g/m・day〕を測定した。
[水蒸気透過度の測定]
モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(WVTR)〔g/m・day〕を測定した。
〈実施例2〉
実施例1と同様にアンカーコート層12、蒸着層13、オーバーコート層21を積層して、目的とする積層フィルムを作製した。
但し、アンカーコート層12には酸化亜鉛微粒子に変えて酸化錫微粒子(平均粒子径20nm)を用い、蒸着層には元素比O/Siが1.5になるように金属珪素粉末及び二酸化珪素粉末を混合した材料にさらに金属錫粉末を20質量%混合した蒸着材料(B)を用い、厚さ50nmの蒸着層(SiOx−Sn複合蒸着膜)13を形成した。
このように作製された積層フィルムについて、製造直後(初期)と、85℃85%RHで500時間の保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)を前記の手順で測定した。
その結果、初期の水蒸気透過度(WVTR)は0.1〔g/m・day〕であり、保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)は0.2〔g/m・day〕を測定した。
蒸着膜中の元素比を日本電子製はX線光電子分光分析装置(型式JPS−90MXV)にて測定を行ったところ、Si、Sn、Oの元素が検出され、各々31.0atm%、5.5atm%、63.1atm%を測定した。
〈比較例1〉
アンカーコート層12のアクリルポリオールとして下記の手順で調製したものを用いた以外は実施例1と同じ手順で積層フィルムを作製した。
アクリルポリオール:水酸(OH)基価が169mgKOH/gになるように、モノマーとして、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とメチルメタクリレート(MMA)を共重合させてアクリルポリオール(重量平均分子量約1万)を得た。
そして、以上のようにして得られた積層フィルムについて、製造直後(初期)と、85℃85%RHで500時間の保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)を前記の手順で測定した。
その結果、初期の水蒸気透過度(WVTR)は0.5〔g/m・day〕であり、保存試験後の水蒸気透過度(WVTR)は3.2〔g/m・day〕を測定した。
そこで、以上のようにして得られた実施例1、2、比較例1の積層フィルムについて、層構成(使用材料)と評価結果を表わすと、表1に示すような結果が得られた。
Figure 0006212899
但し、表1中の略号はそれぞれ以下のものを表わす。
AC層:アンカーコート層12、OC層:オーバーコート層21、HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAAメタクリル酸(MAA)、加水分解TEOS/PVA:テトラエトキシシランの加水分解物とポリビニルアルコールからなるオーバーコート組成物である。
上記表1から明らかなように、実施例1,2では、アンカーコート層12を構成するアンカーコート剤として、水酸基価が150mgKOH/g、酸価がそれぞれ26KOH/g、20KOH/gになるようなヒドロキシル基とカルボキシル基を重合させたアクリルポリオールとしたのに対して、比較例1では、水酸基価が169mgKOH/gになるように、ヒドロキシル基とカルボキシル基を共重合させたアクリルポリオールを用い、かつ、アンカーコート層12中に実施例1,2及び比較例1とも金属化合物を含有させた例である。
その結果、積層フィルムにおける製造初期の段階では、比較例1が実施例1,2よりも水蒸気透過度(WVTR)の値が大きくなってガスバリア性が多少低くなるが、例えば85℃85%RHの条件のもとに500時間の間保存試験を行う結果を見ると、酸価を考慮しないアクリルポリオールの比較例1が実施例1,2に比べてガスバリア性が著しく低下してしまう。
よって、長時間の過酷な耐久性試験から明らかなように、水酸基価が150mgKOH/g、酸価がそれぞれ26KOH/g、20KOH/gになるようなヒドロキシル基とカルボキシル基を重合させたアクリルポリオールを用いたアンカーコート層12を施した積層フィルムが過酷な環境下でも長期間優れたガスバリア性を発揮させることができる。
従って、以上のような実施の形態及び実施例によれば、樹脂基材11上に形成されるアンカーコート層12として、ヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成され、アンカーコート層12中には、Al、Zn、Snから選ばれるいずれかの金属化合物が含有されることで、樹脂基材11と蒸着層13の密着性を高めることができ、ひいてはより高いバリア性を発現することができる。
また、蒸着層13として、金属珪素と二酸化珪素素とを含有する蒸着材料を用いることにより、透明性及びバリア性を高めることができる。さらに、金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料に、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属又はその酸化物をさらに含有し、かつ、蒸着層13中に選択した金属を1atm%以上20atm%以下の割合で含有することで、蒸着層13の透明性、耐湿熱環境下におけるガスバリア性等を高めることができる。
さらに、オーバーコート層21としては、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリルポリオールのいずれかひとつを含有するコーティング液を用いることにより、硬く脆い蒸着層13を確実に保護でき、擦れや屈曲によるクラックの発生を防止し、酸素の侵入を抑制してガスバリア性に優れた積層フィルムを実現できる。
なお、前記実施の形態及び実施例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前記各実施の形態及び各実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態、実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明に係る透明ガスバリア積層フィルムは、食品、日用品、医薬品などの包装分野、及び電子機器関連部材などの分野において、高いガスバリア性が必要とされる場合に特に好適に利用が期待される。
10…ガスバリア積層フィルム、11…樹脂基材、12…アンカーコート層、13…蒸着層、20…ガスバリア積層フィルム、21…オーバーコート層、30…ガスバリア積層フィルム、31…接着剤層、32…ラミネート樹脂層。

Claims (8)

  1. 樹脂基材と、この樹脂基材の少なくとも片面側に積層されたアンカーコート層と、このアンカーコート層の表面に積層された蒸着層とを備えたガスバリア積層フィルムであって、
    前記アンカーコート層は、ヒドロキシル基(OH基)とカルボキシル基(COOH基)とを含有するアクリルポリオールと分子内にイソシアネート基(NCO基)を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物との複合物によって形成され、かつ前記アンカーコート層中に、Al、Zn、Snから選ばれる何れか一つの金属化合物を含有し、
    前記金属化合物の粒子径が3nm〜300nmの平均粒子径のものとされ、前記アンカーコート層12中に0.5wt%〜20wt%添加され
    前記アンカーコート層を構成する前記アクリルポリオールの前記ヒドロキシル基(OH基)に対する前記イソシアネート化合物の前記イソシアネート基(NCO基)の当量比(NCO/OH)が0.15〜0.75であることを特徴とするガスバリア積層フィルム。
  2. 前記アンカーコート層を構成する前記ヒドロキシル基(OH基)と前記カルボキシル基(COOH基)とを含有する前記アクリルポリオールは、水酸基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下、酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層フィルム。
  3. 前記蒸着層は、金属珪素と二酸化珪素とを含有する蒸着材料を真空蒸着したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリア積層フィルム。
  4. 前記蒸着材料は、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群の中から選ばれる金属又はその酸化物を含有し、
    これらAl、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属は、前記蒸着層中に1atm%以上20atm%以下の割合で含有することを特徴とする請求項に記載のガスバリア積層フィルム。
  5. 請求項1ないし請求項の何れか一項に記載のガスバリア積層フィルムにおいて、
    前記蒸着層の表面にオーバーコート層がさらに積層によって付加され、
    前記オーバーコート層は、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子、あるいはカルボキシル基を有する水溶性高分子、あるいはヒドロキシル基とカルボキシル基とを含有するアクリルポリオールの何れか一つによって形成されていることを特徴とするガスバリア積層フィルム。
  6. 前記オーバーコート層は、必須成分である前記カルボキシル基を含有するカルボキシル基含有化合物に、ポリアクリル酸もしくはヒドロキシル基とカルボキシル基とを含有するアクリルポリオールの何れか一つが含まれていることを特徴とする請求項に記載のガスバリア積層フィルム。
  7. 前記オーバーコート層は、分子内にイソシアネート基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物を含有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガスバリア積層フィルム。
  8. 前記アンカーコート層中の前記金属化合物が、酸化アルミ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO、SnO)、Al(OH)、Zn(OH)、Sn(OH)から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層フィルム。
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