JP6007540B2 - ガスバリア性積層体 - Google Patents
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Description
このような内容物の変質は、主として、包装材料を透過する酸素や水蒸気あるいは内容物と反応するような他のガスにより引き起こされている。
そのため、食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められている。
また、用途によっては、包装材料に対して、透明性も要求される。その理由として、包装材料が透明性を有することで、包装の外から内容物の形状や内容物の色などが目視で確認することができ、それにより、内容物の取り違い防止や、損傷の有無、内容物の変質の有無が開封前にわかることが挙げられる。
ガスバリア性物質としては、主に、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物(SiOx)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ等の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物、金属フッ化物等の無機化合物が用いられている。
ガスバリア性物質の蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法など様々な方法が提案されている。これらのうち、生産性の点では、高い成膜速度が得られる方法が望ましい。一般に最も高い成膜速度が得られる方式は真空蒸着法であり、特にEB(electron beam)加熱方式によるものが最適である。
ガスバリア性積層体としては、高速成膜が可能で生産性が高く、透明性、ガスバリア性なども優れることから、フィルム基材に一酸化ケイ素やSi/SiO2混合材料を蒸着したシリカ系蒸着フィルムや、金属アルミニウムを蒸発させて酸素と反応させてフィルム基材に蒸着したいわゆるアルミナ反応蒸着フィルムが注目されている。
また、ガスバリア性積層体は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや太陽電池におけるバックシート用途やフロントシート用途などにも用いられるようになっているが、かかる用途においては、より高度のガスバリア性が求められ、さらに、長時間の過酷な耐久性試験でもガスバリア性が低下しないことも求められる。
このような要求に対し、上記のシリカ系蒸着フィルムやアルミナ反応蒸着フィルムは、ガスバリア性が不充分である。また、ガスバリア性が温度や水分の影響を受けやすく、例えばボイルやレトルト殺菌のような処理を行った際にガスバリア性が著しく低下するなども問題がある。
したがって、ボイル、レトルト殺菌、屋外などの過酷な環境下においても長期に渡って優れたガスバリア性を発揮するガスバリア性積層体が求められる。
[1]樹脂基材上に、無機材料からなる蒸着層と、オーバーコート層とが順次積層し、
前記オーバーコート層が、下記一般式(a)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種(A)と、OH基を2個以上有するアクリルポリオール(C)と、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物(D)とを含有する塗布液を前記蒸着層に塗布し、加熱乾燥してなるものであることを特徴とするガスバリア性積層体。
(RO)3Si−(CH2)n−Si(OR)3 …(a)
[但し、Rはアルキル基であり、nは1〜8の整数である。]
[2]前記塗布液における前記アクリルポリオール(C)の配合量が、総固形分に対して5〜50質量%である[1]に記載のガスバリア性積層体。
[3]前記塗布液における前記イソシアネート化合物(D)の配合量が、総固形分に対して5〜50質量%である[1]または[2]に記載のガスバリア性積層体。
[4]前記塗布液が、さらに、下記一般式(b1)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(b2)で表される有機ケイ素化合物及びそれらの加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種(B)を含有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
Si(OR1)4 …(b1)
R3−Si(OR2)3 …(b2)
[但し、R1はアルキル基である。R2はアルキル基であり、R3はエポキシ基及びNCO基のいずれか一方を有する有機基である。]
[5]前記樹脂基材と前記蒸着層との間に、OH基を2個以上有するアクリルポリオール(1)と、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物(2)とを含有するアンカーコート剤によりアンカーコート層が形成されており、
前記アクリルポリオール(1)のOH基価が50〜250mgKOH/gであり、
前記アンカーコート剤における前記アクリルポリオール(1)のOH基に対する前記イソシアネート化合物(2)のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.15〜0.75である[1]〜[4]のいずれか一項記載のガスバリア性積層体。
[6]前記蒸着層が、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を真空蒸着させたものである[1]〜[5]のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
[7]前記蒸着材料が、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属又はその酸化物を含有し、
前記蒸着層が、前記Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属を、1atm%以上20atm%以下の割合で含有する[6]に記載のガスバリア性積層体。
図1に、本実施形態のガスバリア性積層体10の概略断面図を示す。
ガスバリア性積層体10は、樹脂基材11の片面に、蒸着層12、オーバーコート層13が順次積層した構成の積層体である。
樹脂基材11としては、特に限定されず、一般的に包装材料に使用されている種々のシート状の基材(フィルム状のものを含む)のなかから適宜選択できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムなどが挙げられる。
樹脂基材11は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
樹脂基材11の厚みは、特に制限を設けないが、実用上、6μm以上200μm以下程度のものが用いられ、好ましくは12μm以上125μm以下、より好ましくは12μm以上50μm以下である。
樹脂基材11は、他の層(蒸着層12、又は蒸着層12との間に任意に設けられるアンカーコート層等)が積層する側の表面に、密着性を高めるため、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理や、酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理が施されていてもよい。
無機材料からなる蒸着層12は、ガスバリア性を付与するために設けられる。
無機材料としては、特に限定されず、従来、ガスバリア材等において蒸着膜を構成する無機材料のなかから適宜選択でき、例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、これらの金属の1種以上を含む無機化合物などが挙げられる。該無機化合物としては、金属酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの中でも、金属及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
蒸着材料としては、例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、該金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。
蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマ気相成長法等の化学気相成長(PVD)法などの公知の方法を適宜用いてよい。
上記の中でも、高速成膜が可能で生産性に優れることから、真空蒸着法が好ましい。
また、蒸着層12の透明性を上げるために、蒸着材料を蒸着させる際に、蒸発した粒子と雰囲気中に導入した酸素ガスなどと反応させて蒸着させる反応蒸着をさせてもよい。酸素ガスやアルゴンガスとの反応蒸着を行うことにより、蒸着材料中の金属成分が酸化され、蒸着層12の透明性を向上させることができる。ガスを導入する際は、成膜室の圧力が2×10−1Pa以下にすることが望ましい。成膜室の圧力が2×10−1Paよりも大きくなってしまうと、蒸着層12がきれいに積層されず、水蒸気バリア性が低下してしまうおそれがある。
蒸着材料中、金属ケイ素と二酸化ケイ素の含有量の比率は特に限定されないが、ケイ素と酸素との元素比O/Siが1.0以上1.8以下になる比率で含有することが好ましく、O/Siが1.2以上1.7以下になる比率で含有することがより好ましい。O/Siが1.0以上であると、透明性が良好で、O/Siが1.8以下であると、バリア性が良好である。
蒸着材料に含まれる特定金属又はその酸化物は1種でも2種以上でもよい。
該蒸着材料において、前記特定金属又はその酸化物以外の残部は、金属ケイ素及び二酸化ケイ素からなることが好ましい。つまり、前記特定金属又はその酸化物と、金属ケイ素と、二酸化ケイ素との合計が100質量%であることが好ましい。
蒸着層12におけるケイ素酸化物の含有量は、蒸着層12を構成する全元素中のSi元素の存在比として、15atm%以上が好ましく、25atm%以上がより好ましい。25atm%以上であれば、透明性、バリア性等に優れる。
蒸着層12中、特定金属又はその酸化物の含有量は、蒸着層12を構成する全元素中の特定金属元素の存在比として、1atm%以上20atm%以下が好ましく、3atm%以上15atm%以下がより好ましく、3atm%以上10atm%以下がさらに好ましい。1atm%以上であれば、高いガスバリア性が発現する。20atm%を超えると、相対的にケイ素酸化物の含有量が少なくなるため、蒸着層の透明性、耐湿熱環境下におけるバリア性等が低下するおそれがある。
特定金属元素の存在比が1atm%以上20atm%以下の蒸着層は、例えば、金属ケイ素と二酸化ケイ素の合計100質量%に対して特定金属又はその酸化物を1質量%以上50質量%以下の割合で配合した蒸着材料を用いることで形成できる。
蒸着層12を構成する元素の種類と存在比は、X線光電子分光分析装置(ESCA)により測定できる。
オーバーコート層13は、下記一般式(a)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種(A)(以下、(A)成分という。)を含有する塗布液を蒸着層12に塗布し、加熱乾燥してなるものである。
(RO)3Si−(CH2)n−Si(OR)3 …(a)
[但し、Rはアルキル基であり、nは1〜8の整数である。]
また、オーバーコート層13は、緻密で脆い蒸着層12を保護する機能も有しており、擦れや屈曲によるクラックの発生を抑制できる。
また、Si−OR構造を有する有機ケイ素化合物は、加水分解反応により、ケイ素原子に結合したOR基がOH基(水酸基)となり、OH基の脱水縮合によりシロキサン結合を形成する。有機ケイ素化合物として、式(a)で表されるものを用いることで、緻密で強固なネットワーク重合被膜を形成することができる。また、分子内に(CH2)nを有することで、靭性、柔軟性を併せ持つ有機無機複合膜が形成される。そのため、特許文献1〜2に記載されるように有機ケイ素化合物とポリビニルアルコール等の水溶性高分子とを複合化しなくても、オーバーコート層として機能を充分に発揮し、また、耐熱性、耐水性、耐湿性等も優れたものとなる。
これらが相乗的に作用することで、ガスバリア性積層体10が、ボイル、レトルト殺菌、屋外などの過酷な環境下においても長期に渡って優れたガスバリア性を発揮すると考えられる。
特許文献1〜2に記載されるような水溶性高分子との複合化は、耐水性や耐湿性を低下させる一因となっていたと考えられる。そのため、オーバーコート層13を、水溶性高分子を使用せずに形成する、またはその使用量を従来よりも減らして形成することで、耐水性や耐湿性を更に向上させることができる。
式(a)で表される有機ケイ素化合物としては、例えばビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサンなどが挙げられる。
式(a)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物としては、式中の6つのORのうち、少なくとも1つがOHとなったものが挙げられる。
該加水分解物は公知の方法により調製できる。たとえば、有機ケイ素化合物をメタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールに溶解し、その溶液に、塩酸等の酸の水溶液を添加し、加水分解反応させることにより調製できる。
塗布液における(A)成分の配合量は、バリア性、耐久性、後加工適性等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、総固形分に対し、1〜100質量%が好ましく、3〜90質量%がより好ましい。1質量%以上であると、バリア性、湿熱耐久性が良好である。90質量%以下であると、より耐久性が良好である。
Si(OR1)4 …(b1)
R3−Si(OR2)3 …(b2)
[但し、R1はアルキル基である。R2はアルキル基であり、R3はエポキシ基及びNCO基のいずれか一方を有する有機基である。]
上記のうち、式(b1)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物は、特に、バリア性の点で好ましい。
式(b2)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物は、特に、湿熱耐性の点で好ましい。
(B)成分は、上記の中でも、式(b2)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
式(b1)で表される有機ケイ素化合物としては、例えばテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
式(b1)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物としては、式中の4つのOR1のうち、少なくとも1つがOHとなったものが挙げられる。
R3としては、例えば、下記一般式(I)で表される基が挙げられる。
X−(CH2)m− …(I)
(但し、Xはグリシドキシ基又はNCO基であり、mは1〜8の整数である。)
式(b2)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのNCO基(イソシアネート基)を有するものなどが挙げられる。
式(b2)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物としては、式中の3つのOR2のうち、少なくとも1つがOHとなったものが挙げられる。
塗布液における(B)成分の配合量は、(A)成分との総和が総固形分に対して1〜100質量%となる量が好ましい。
また、塗布液における(B)成分と(A)成分との比率(B)/(A)は、質量比で1/100〜100/1が好ましく、1/10〜10/1がより好ましい。1/100以上であると、(B)成分を配合する効果が充分に得られる。10/1を超えると、相対的に(A)成分の割合が低くなるため、可とう性、バリア性等が低下するおそれがある。
つまり、有機ケイ素化合物((A)成分、(B)成分)に加えて、(C)成分及び(D)成分のいずれか一方又は両方を添加することで、当該塗布液を塗布、加熱乾燥した際に均質な有機無機複合体が形成される。そのため、有機ケイ素化合物のみを用いた場合に比べて、蒸着層12との相互作用によるガスバリア性の向上効果がさらに高まるとともに、高温高湿雰囲気下や熱水雰囲気下におけるオーバーコート層13の膨潤劣化が抑制される。そのため蒸着層12に対する保護機能の低下が抑制されており、それらの雰囲気下においても優れたガスバリア性を長期に渡って維持することができる。
例えば(C)成分は、前記式(a)、(b1)又は(b2)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物の重合により形成される重合体と相溶性を有しており、該重合体と複合化することでガスバリア性の向上効果を発揮する。
また、(D)成分は、前記式(a)、(b1)又は(b2)で表される有機ケイ素化合物の加水分解により形成されるSi−OH基と反応してウレタン結合を形成する。さらに、(C)成分及び(D)成分の両方を併用した場合、(C)成分のOH基と(D)成分のNCO基が反応してウレタン結合を形成する。そのため、シロキサン結合以外にウレタン結合による複合架橋体構造が形成され、優れたガスバリア性の向上効果が得られる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸誘導体」には、(メタ)アクリル酸の構造の一部を変化させたもの(例えば(メタ)アクリル酸エステル)のほか、(メタ)アクリル酸自体も包含されるものとする。
OH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
環構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他のモノマーとして、(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーを用いてもよい。該モノマーとしては、例えばスチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーはOH基を有していてもよい。
OH基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中のOH基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。
(C)成分の重量平均分子量は、ポリスチレンを基準として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。
塗布液における(C)成分の配合量は、総固形分に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。5質量%以上であると、(C)成分を配合する効果が充分に得られる。50質量%を超えるとバリア性低下のおそれがある。
塗布液における(D)成分の配合量は、総固形分に対し、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。5質量%以上であると、(D)成分を配合する効果が充分に得られる。50質量%を超えると、バリア性低下のおそれがある。
(A)成分、(B)成分については、加水分解物を配合する場合は、予め加水分解処理して得られた加水分解液をそのまま使用してもよい。
塗布液の塗布方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。
乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
加熱温度は、60〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。60℃以上であると、所望のバリア性が発現され良好である。150℃以下であると、蒸着短時間であれば、基材の変形や蒸着膜にクラックが発生することなく好適である。
図2に、本実施形態のガスバリア性積層体20の概略断面図を示す。
ガスバリア性積層体20は、樹脂基材11の片面に、アンカーコート層24、蒸着層12、オーバーコート層13が順次積層した構成の積層体である。
ガスバリア性積層体20は、樹脂基材11と蒸着層12との間にアンカーコート層24が設けられている以外は、第一の実施形態のガスバリア性積層体10と同様の構成である。第一実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
アンカーコート層24は、樹脂基材11上に、樹脂基材11と蒸着層12との密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌などの各種殺菌処理や、長期屋外設置による蒸着層12の剥離発生と、それに伴うガスバリア性の低下を防止するために設けられる。
アンカーコート層24は、樹脂基材11と蒸着層12との密着性の向上効果の点から、OH基を2個以上有するアクリルポリオール(1)と、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物(2)とを含有するアンカーコート剤を用いて形成されたものであることが好ましい。
OH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
環構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他のモノマーとして、(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーを用いてもよい。該モノマーとしては、例えばスチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーはOH基を有していてもよい。
OH基価(mgKOH/g)とは、上述したとおり、アクリルポリオール中のOH基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。
OH基価が50mgKOH/g未満であると、イソシアネート化合物(2)との反応量が少なく、アンカーコート層24による樹脂基材11と蒸着層12との密着性の向上効果が充分に発現しないおそれがある。一方、OH基価が250mgKOH/gよりも大きいと、イソシアネート化合物(2)との反応量が多くなり過ぎて、アンカーコート層24の膜収縮が大きくなるおそれがある。膜収縮が大きいと、その上に蒸着層12がきれいに積層されず、充分なガスバリア性を示さないおそれがある。
アクリルポリオール(1)の重量平均分子量は、前記(C)成分の重量平均分子量と同様にして測定される。
アクリルポリオール(1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
イソシアネート化合物(2)としては、上記のモノマー系イソシアネート、その重合体、誘導体等のなかから任意に選択してよく、1種を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
アンカーコート剤におけるアクリルポリオール(1)とイソシアネート化合物(2)の配合量は、当量比に基づき配合されるのが好ましく、概ねアクリルポリオール(1)の100質量部に対し、イソシアネート化合物(2)が10〜90質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するものなどが挙げられる。
シランカップリング剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
アンカーコート剤の塗布方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。
乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
加熱温度は、特に限定されないが、60〜140℃が好ましく、残留溶剤がない程度でかつ巻き取り加工しても塗工面が裏面にくっついてしまういわゆるブロッキング現象がないような条件を適宜選択でき、必要に応じて40〜60℃でエージング処理を行っても良い。
図3に、本実施形態のガスバリア性積層体30の概略断面図を示す。
ガスバリア性積層体30は、樹脂基材11の一方の面に、アンカーコート層24、蒸着層12、オーバーコート層13、接着層31、ラミネート樹脂層32が順次積層し、樹脂基材11の他方の面に、接着層33、ラミネート樹脂層34が順次積層した構成の積層体である。
ガスバリア性積層体30は、第二の実施形態のガスバリア性積層体20の両面にそれぞれ接着層31、33を介してラミネート樹脂層32、34を積層した構成である。第二実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
例えば、ラミネート樹脂層32、34の両方に、ヒートシール性のある樹脂で構成されるシーラントフィルムを用いることで、ガスバリア性積層体30を、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用することができる。
シーラントフィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。
シーラントフィルムの厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。
また、ガスバリア性積層体20の片面のみに、接着層を介してラミネート樹脂層が積層した構成としてもよい。すなわち、接着層31及びラミネート樹脂層32、接着層33及びラミネート樹脂層34のいずれか一方を設けない構成としてもよい。
ラミネート樹脂層32、34の積層は、公知のラミネート方法により実施でき、例えば接着剤を用いたドライラミネート、熱接着性樹脂を用いた押出成形等が挙げられる。
接着剤を用いたドライラミネートの場合、接着剤が接着層31、33となり、熱接着性樹脂を用いた押出成形の場合、熱接着性樹脂が接着層31、33となる。
本発明のガスバリア性積層体は、板状でもよく、フィルム状でもよい。例えばロールでの巻き取り加工等によりフィルム状に成形されたものでもよい。
なお、オーバーコート層形成用の塗布液およびアンカーコート剤における有機ケイ素化合物またはその加水分解物の含有量を示す「固形分」は、加水分解した有機ケイ素化合物が重合し、成膜される塗膜重量に換算した量である。
図1に示す構成の積層体を以下の手順で作製した。
片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工、P60)のコロナ処理面に、直接、真空蒸着機を使用して、元素比O/Siが1.5になるように金属ケイ素粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合した蒸着材料(A)を蒸着し、厚さ50nmの蒸着層(SiOx蒸着膜)を形成した。
オーバーコート層形成用の塗布液として、ビストリメトキシシリルエタンの加水分解溶液(0.001Nの塩酸を用いて水としてビストリメトキシシリルエタンの4倍モル当量加えたもの)を、イソプロピルアルコール(IPA)にて希釈して固形分5質量%の溶液を調製した。この塗布液をバーコートにて蒸着層の上に塗布し、120℃−2分間の加熱乾燥を行って膜厚0.5μmのオーバーコート層を形成し、目的の積層体を得た。
その結果、初期のWVTRは0.3〔g/m2・day〕であり、保存試験後のWVTRは0.6〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層を積層する前(樹脂基材/蒸着層)のWVTRは1.4〔g/m2・day〕であった。
モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度〔g/m2・day〕を測定した。
図2に示す構成の積層体を以下の手順で作製した。
OH基価が178mgKOH/gになるように、モノマーとして、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とメチルメタクリレート(MMA)を共重合させてアクリルポリオール(重量平均分子量約1万)を得た。
アンカーコート剤として、上記で得られたアクリルポリオールを主剤とし、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、主剤のOH基量に対して0.5当量となるように配合した固形分5質量%のメチルエチルケトン溶液を調製した。
片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム(東レフィルム加工、P60)のコロナ処理面に、上記アンカーコート剤を、グラビアコート機を用いて、乾燥後の厚みが0.15μmとなるように塗工した。塗工後、50℃の恒温室に48時間保管しエージング処理を行ってアンカーコート層を形成した。
オーバーコート層形成用の塗布液として、ビストリメトキシシリルエタンの加水分解溶液(0.001Nの塩酸を用いて水としてビストリメトキシシリルエタンの4倍モル当量加えたもの)と、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、ビストリメトキシシリルエタン:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=80:20(モル比)となるように混合し、IPAにて希釈して固形分5質量%の溶液を調製した。この塗布液をバーコートにて蒸着層の上に塗布し、120℃−2分間の加熱乾燥を行って膜厚0.5μmのオーバーコート層を形成し、目的の積層体を得た。
その結果、初期のWVTRは0.1〔g/m2・day〕であり、保存試験後のWVTRは0.3〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層を積層する前(樹脂基材/アンカーコート層/蒸着層)のWVTRは0.5〔g/m2・day〕であった。
蒸着膜中の元素比を日本電子製はX線光電子分光分析装置(型式JPS−90MXV)にて測定を行ったところ、Si、Sn、Oの元素が検出され、各々30.4atm%、5.2atm%、63.4atm%であった。
オーバーコート層形成用の塗布液として、下記の手順で調製したものを用いた以外は参考例2と同じ手順で積層体を作製した。
ビストリメトキシシリルヘキサンの加水分解溶液(0.001Nの塩酸を用いて水としてビストリメトキシシリルヘキサンの4倍モル当量加えたもの)と、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、ビストリメトキシシリルヘキサン:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=80:20(モル比)となるように混合し、IPAにて希釈して固形分5質量%の溶液を調製した。この溶液と、参考例2でアンカーコート剤として調製した固形分5質量%のメチルエチルケトン溶液(アクリルポリオールとイソシアネート系化合物の混合液)とを、オーバーコート層中の固形分比が90:10になるように混合した。
その結果、初期のWVTRは0.1〔g/m2・day〕であり、保存試験後のWVTRは0.2〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層を積層する前(樹脂基材/アンカーコート層/蒸着層)のWVTRは0.5〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層形成用の塗布液として下記の手順で調製したものを用い、塗布後の加熱乾燥条件を120℃−1分間とした以外は参考例1と同じ手順で積層体を作製した。
テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解溶液(0.01Nの塩酸を用いて水としてテトラエトキシシランの5倍モル当量加えたもの)と、ポリビニルアルコールの水溶液とを、TEOSのSiO2換算量とPVAとの質量比が50:50となるように混合して固形分5質量%の溶液を調製した。
その結果、初期のWVTRは0.3〔g/m2・day〕であり、保存試験後のWVTRは1.8〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層を積層する前(樹脂基材/蒸着層)のWVTRは1.5〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層形成用の塗布液として、参考例2で調製したアンカーコート剤をそのまま使用し、塗布後の加熱乾燥条件を120℃−1分間とした以外は参考例2と同じ手順で積層体を作製した。
その結果、初期のWVTRは0.6〔g/m2・day〕であり、保存試験後のWVTRは7.8〔g/m2・day〕であった。
オーバーコート層を積層する前(樹脂基材/アンカーコート層/蒸着層)のWVTRは0.7〔g/m2・day〕であった。
AC層:アンカーコート層。
OC層:オーバーコート層。
AOH/NCO:参考例2で調製したアンカーコート剤。
a−1:ビストリメトキシシリルエタンの加水分解物。
a−2:ビストリメトキシシリルヘキサンの加水分解物。
b1−1:TEOSの加水分解物。
b2−1:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
PVA:ポリビニルアルコール。
一方、比較例1〜2の積層体は、保存試験後にWVTRの値が初期値に比べて1桁以上(6倍以上)増加していた。
したがって、本発明のガスバリア性積層体を包装材料として用いると、ボイル殺菌、レトルト殺菌のような処理を行っても、長期に渡って、大気中の酸素や水蒸気から内容物を遮断し、内容物の劣化や変質を抑制する効果を発揮する。そのため、医薬品や食料などの包装用フィルム、半導体ウェハなどの電子部品や精密部品の包装用フィルムなどに有効に利用することができる。
また、ガスバリア性とその耐久性が要求される他の用途、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや太陽電池におけるバックシート用途やフロントシート用途、などにも有効に利用することができる。
11 樹脂基材
12 蒸着層
13 オーバーコート層
20 ガスバリア性積層体
24 アンカーコート層
30 ガスバリア性積層体
31 接着層
32 ラミネート樹脂層
33 接着層
34 ラミネート樹脂層
Claims (7)
- 樹脂基材上に、無機材料からなる蒸着層と、オーバーコート層とが順次積層し、
前記オーバーコート層が、下記一般式(a)で表される有機ケイ素化合物及びその加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種(A)と、OH基を2個以上有するアクリルポリオール(C)と、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物(D)とを含有する塗布液を前記蒸着層に塗布し、加熱乾燥してなるものであることを特徴とするガスバリア性積層体。
(RO)3Si−(CH2)n−Si(OR)3 …(a)
[但し、Rはアルキル基であり、nは1〜8の整数である。] - 前記塗布液における前記アクリルポリオール(C)の配合量が、総固形分に対して5〜50質量%である請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記塗布液における前記イソシアネート化合物(D)の配合量が、総固形分に対して5〜50質量%である請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
- 前記塗布液が、さらに、下記一般式(b1)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(b2)で表される有機ケイ素化合物及びそれらの加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種(B)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
Si(OR1)4 …(b1)
R3−Si(OR2)3 …(b2)
[但し、R1はアルキル基である。R2はアルキル基であり、R3はエポキシ基及びNCO基のいずれか一方を有する有機基である。] - 前記樹脂基材と前記蒸着層との間に、OH基を2個以上有するアクリルポリオール(1)と、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物(2)とを含有するアンカーコート剤によりアンカーコート層が形成されており、
前記アクリルポリオール(1)のOH基価が50〜250mgKOH/gであり、
前記アンカーコート剤中における前記アクリルポリオール(1)のOH基に対する前記イソシアネート化合物(2)のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.15〜0.75である請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。 - 前記蒸着層が、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を真空蒸着させたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記蒸着材料が、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属又はその酸化物を含有し、
前記蒸着層が、前記Al、Zn、Sn、Fe、Mnからなる群から選ばれる金属を、1atm%以上20atm%以下の割合で含有する請求項6に記載のガスバリア性積層体。
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