<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両の車室前部の構成を示す図である。本図に示すように、車室前部には、車幅方向に延びるインストルメントパネル2が設けられている。インストルメントパネル2の運転席側(図1では左側)にはメータユニット3が設けられ、このメータユニット3の後方にはステアリングハンドル4が設けられている。インストルメントパネル2の車幅方向中央部から車両後方に向かってセンターコンソール5が設けられ、このセンターコンソール5上にシフト装置1が設けられている。
第1実施形態において、車両は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関からなるエンジン(図示省略)と、エンジンの出力軸に接続され、当該出力軸の回転を減速しつつ車輪に伝達する自動変速機50(図9)とを備えている。自動変速機50は、遊星歯車機構を含み、当該歯車機構よって実現される複数の減速比の中から車速やエンジン負荷等に応じた適切な減速比を自動的に選択する有段式の変速機(AT)である。この自動変速機50の変速レンジには、駆動力伝達が切断されるニュートラルレンジと、駆動力伝達が切断された上に出力軸がロックされるパーキングレンジと、車両を前進させる方向に駆動力を伝達するドライブレンジ(前進走行レンジ)と、車両を後退させる方向に駆動力を伝達するリバースレンジ(後退走行レンジ)とが含まれる。シフト装置1は、このように複数存在する自動変速機の変速レンジの中から所望のレンジを選択するために操作されるものである。
さらに、自動変速機50の変速レンジにはマニュアルレンジが含まれる。マニュアルレンジは、車両を前進させる方向に駆動力を伝達する変速レンジであり、その意味ではドライブレンジと同じである。ただし、マニュアルレンジの場合は、ドライブレンジにはない特有の機能として、シフト装置1を用いて前進時の変速段(ギヤ段)を故意に増減させる操作が可能になる。例えば、自動変速機50の変速段が前進8段である場合には、1〜8速の間で変速段を順次増やすアップシフトや、変速段を順次減らすダウンシフトの操作が可能になる。
図2は、シフト装置1を拡大して示す平面図である。この図2および先の図1に示すように、シフト装置1は、メイン操作部7と、パーキングスイッチ8と、インジケータ9とを備えている。なお、図2において、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Lは車両の左方を示している。このことは、図2以降の他の図面でも同様である。
パーキングスイッチ8は、自動変速機50の変速レンジをパーキングレンジに切り替えるときに操作されるプッシュ式のボタンスイッチである。また、パーキングスイッチ8の上面には、パーキングレンジを表す「P」の文字盤が設けられ、パーキングレンジが選択されるとLED等の光源により「P」の文字が強調表示されるようになっている。すなわち、パーキングスイッチ8は、パーキングレンジに切り替えるためのスイッチとしての機能と、パーキングレンジが選択されていることを表示するインジケータとしての機能とを兼ね備えている。
メイン操作部7は、自動変速機50の変速レンジをパーキングレンジ以外のレンジ(つまりドライブ、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジ)に切り替えるときに操作されるものである。詳しくは後述するが、第1実施形態におけるメイン操作部7は、前後方向に傾動させる等の操作が可能である。このメイン操作部7に対する操作パターンの違いにより、自動変速機50の変速レンジがリバース、ニュートラル、ドライブ、マニュアルのいずれかのレンジに切り替わるようになっている。
インジケータ9は、現在選択されている変速レンジを表示するものである。図2に例示されるインジケータ9の場合、リバースレンジを表す「R」、ニュートラルレンジを表す「N」、ドライブレンジを表す「D」の文字盤が、前方から順に設けられている。また、「D」の文字盤の左方には、マニュアルレンジを表す「M」の文字盤が設けられている。そして、メイン操作部7の操作に応じてリバース、ニュートラル、ドライブ、マニュアルのいずれかのレンジが選択されたときには、その選択中のレンジに対応した文字(R,N,D,Mのいずれか)が強調表示されるようになっている。なお、「M」の文字盤の前方および後方に表記された「−」「+」の文字は、ダウンシフトおよびアップシフトをする際に後述するシフトレバー10を操作すべき方向を表している。
さらに、上記のようなインジケータ9による変速レンジの表示に加えて、第1実施形態では、メータユニット3にも変速レンジが表示されるようになっている。すなわち、メータユニット3は、その所定箇所(例えばスピードメータとタコメータとの間)に液晶画面等からなる表示部を有しており、その表示部に、選択中の変速レンジに対応した文字(P,R,N,D,M)が表示されるようになっている。
次に、シフト装置1のメイン操作部7の具体的構造について、図2〜図8を用いて説明する。これらの図に示すように、メイン操作部7は、シフトレバー10と、シフトレバー10を前後方向に傾動可能に支持する本体部20とを有している。
シフトレバー10は、請求項にいう「操作部材」に相当するものであり、ドライバーにより把持されるシフトノブ11と、シフトノブ11から下方に延びる棒状のレバー部12と、レバー部12の下端に設けられた球体部13と、球体部13から斜め下方に突出するディテント用脚部14およびガイド用脚部15と、球体部13から一旦下方に延びた後に屈曲して前方に延びる揺動子16とを有している。
シフトノブ11にはプッシュボタン40が設けられている。プッシュボタン40は、請求項にいう「スイッチ部」に相当するものであり、押圧操作されることで所定の信号を発信する接点(図示省略)を内蔵したプッシュ式のボタンスイッチである。シフトレバー10を操作するドライバーは、シフトノブ11を把持しながら、その手の親指等を用いてプッシュボタン40を押圧操作することが可能である。
ディテント用脚部14は、球体部13の下面から斜め下方に延びる中空状の脚本体14bと、脚本体14bの先端からさらに下方に突出する付勢部14aとを有している。付勢部14aは、脚本体14bの内部に設けられた圧縮スプリング(図示省略)により下方に押圧されている。このような付勢部14aは、圧縮スプリングを押し戻す上向きの力を受けて上昇し、その力が減少すると下降するというように、脚本体14bに対し進退自在に支持されている。
ガイド用脚部15は、球体部13の下面から斜め下方に延びる棒状の部材である。第1実施形態では、ディテント用脚部14が左側に傾斜しているのに対し、ガイド用脚部15は右側に傾斜するように設けられている。
本体部20は、上面が開口した箱状の筐体21と、筐体21の上面の開口を覆うように取り付けられるカバー部22とを有している。
カバー部22には、シフトレバー10のレバー部12が挿通される円形の挿通穴22aが形成されている。この挿通穴22aの内径は、レバー部12の外径よりも所定量大きい値に設定されている。
筐体21の内部には、シフトレバー10の球体部13を包み込んで支持するレバー支持部23が、その左右の連結部24を介して架設されている。レバー支持部23は、上面および下面が開口した中空状の部材であり、球体部13の外周面に沿うように形成された部分球面状の内周面を有している。このようなレバー支持部23に支持された球体部13は、レバー支持部23の内部で自在に回転することが可能である。
筐体21は、その下壁部に、V字状に傾斜した第1傾斜面部21aおよび第2傾斜面部21bを有している。第1傾斜面部21aは、シフトレバー10のディテント用脚部14と対向し、ディテント用脚部14の軸心と略直交する面に沿って形成されている。第2傾斜面部21bは、シフトレバー10のガイド用脚部15と対向し、ガイド用脚部15の軸心と略直交する面に沿って形成されている。
第1傾斜面部21aの上面には、下方に凹んだ部分球面状の球状受け面25aを有する誘導部材25が設けられている。球状受け面25aには、シフトレバー10のディテント用脚部14の先端部、つまり付勢部14aが、圧縮スプリングによる押圧力を受けて常時押し付けられている。
付勢部14aは、球状受け面25aの中心部(凹球面の底部)に当接しているときに脚本体14bから最も進出し、付勢部14aの当接位置が球状受け面25aの中心部から離れるほど、圧縮スプリングの押圧力に反して後退する。後退した付勢部14aは、圧縮スプリングにより球状受け面25aに強く押し付けられ、その押し付け力が、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力に変換される。このため、シフトレバー10に対し乗員の手による操作力(シフトレバー10を傾動させる力)が加えられていない状態では、シフトレバー10は、付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置する状態に保持される。このように付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置しているとき、シフトレバー10は鉛直方向に起立した姿勢となるが、以下では、この状態におけるシフトレバー10の位置を「ホーム位置」と称する。
一方で、上記ホーム位置にあるシフトレバー10が操作力を受けて所定の方向に傾動変位すると、付勢部14aが球状受け面25aの中心部から離間し、それに伴い上述したとおり、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力が発生する。このため、上記シフトレバー10に対する操作力が解除されると、シフトレバー10はおのずと上記ホーム位置に復帰することになる。
以上のように、第1実施形態では、凹状の部分球面からなる球状受け面25aと、これに常時押し付けられる付勢部14aとにより、変位後のシフトレバー10をホーム位置に自動的に復帰させるディテント機構35が構成されている。言い換えると、このようなディテント機構35を備えた第1実施形態のシフト装置1は、いわゆるモメンタリ式のシフト装置の部類に属する。
図5、図6に示すように、第2傾斜面部21bの上面には、平面視十字状のガイド溝27を有したガイド部材26が設けられている。具体的に、ガイド部材26のガイド溝27は、前後方向に延びる第1溝部27Aと、第1溝部27Aと直交するように左右方向に延びる第2溝部27Bとを有している。
ガイド溝27には、シフトレバー10のガイド用脚部15の先端部が摺動可能に嵌合されている。シフトレバー10は、このようにガイド用脚部15がガイド溝27に嵌合された状態で上述したレバー支持部23により支持されることで、十字状のガイド溝27に沿って前後方向および左右方向に傾動変位することが可能とされている。
図7(a)は、シフトレバー10が上記ホーム位置にあるときの状態を示している。シフトレバー10がホーム位置にあるとき、つまり、付勢部14aが球状受け面25aの中心部にあってシフトレバー10が鉛直方向に起立しているとき、ガイド用脚部15の先端部は、ガイド溝27の中央部、つまり第1溝部27Aと第2溝部27Bとの交差部分に配置される。
この状態から、図7(b)のようにシフトレバー10が前方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第1溝部27Aに沿って後方に移動する。また、図7(c)のようにシフトレバー10が後方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第1溝部27Aに沿って前方に移動する。そして、ガイド用脚部15が第1溝部27Aの後端部27Abに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上前方に変位することができなくなり、ガイド用脚部15が第1溝部27Aの前端部27Aaに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上後方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15が第1溝部27Aの前端部27Aaに当接する位置から後端部27Abに当接する位置までの範囲に限り、前後方向に自由に傾動変位することができる。なお、本体部20のカバー部22に設けられた挿通穴22aの内径は、ガイド用脚部15が第1溝部27Aの前端部27Aaから後端部27Abまで移動するのに伴うレバー部12の前後方向移動を許容し得る大きさに設定されている。
図8(a)は、図7(a)と同じくシフトレバー10がホーム位置にある状態を示している。この状態から、図8(b)のようにシフトレバー10が左方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第2溝部27Bに沿って右方に移動する。また、図8(c)のようにシフトレバー10が右方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第2溝部27Bに沿って左方に移動する。そして、ガイド用脚部15が第2溝部27Bの右端部27Bbに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上左方に変位することができなくなり、ガイド用脚部15が第2溝部27Bの左端部27Baに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上右方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15が第2溝部27Bの左端部27Baに当接する位置から右端部27Bbに当接する位置までの範囲に限り、左右方向に自由に傾動変位することができる。なお、本体部20のカバー部22に設けられた挿通穴22aの内径は、ガイド用脚部15が第2溝部27Bの左端部27Baから右端部27Bbまで移動するのに伴うレバー部12の左右方向移動を許容し得る大きさに設定されている。
図3〜図5に示すように、筐体21の一側面部には、シフトレバー10の前後方向の変位量を検出する前後変位量センサ29が設けられている。具体的に、前後変位量センサ29は、シフトレバー10の前後方向の変位量として、シフトレバー10の球体部13から左右に突出する回転軸28の回転角を検出する。回転軸28は、レバー支持部23と筐体21の左右側壁との間に設けられた連結部24の内部を左右方向に延びるように設けられており、その一端部が前後変位量センサ29まで延びている。シフトレバー10が前後方向に傾動変位すると、その変位量に比例した角度だけ回転軸28が回転するとともに、その回転角度が前後変位量センサ29によって検出される。
また、図4、図5に示すように、筐体21の内部には、シフトレバー10の左右方向の変位量を検出する左右変位量センサ30が設けられている。具体的に、左右変位量センサ30は、シフトレバー10の左右方向の変位量として、筐体21の前壁部21cの内面に枢着された揺動部材33の揺動量を検出する。揺動部材33は、上下方向に長尺な板状部材からなり、その下部が揺動軸34を介して筐体21の前壁部21cに枢着されることにより、揺動軸34を中心にして左右方向に揺動可能に支持されている。揺動部材33の上下方向の中間部には、上下方向に長尺な長穴33aが形成されており、この長穴33aにはシフトレバー10の揺動子16の先端部が挿入されている。このように長穴33aに挿入された揺動子16は、シフトレバー10が左右方向に傾動するのに伴い揺動部材33を逆方向に押動する。そして、これに伴い左右方向に揺動する揺動部材33の上端部の揺動量が、左右変位量センサ30によって検出されるようになっている。
(2)制御系統
図9は、第1実施形態のシフト装置1に関する制御系統を示すブロック図である。本図に示されるコントローラ60は、周知のCPU、RAM、ROM等を含むマイクロコンピュータからなるもので、請求項にいう「制御手段」に相当するものである。すなわち、コントローラ60は、シフト装置1の操作状態に応じて自動変速機50の変速動作を制御する等の機能を有している。なお、図9ではコントローラ60が一体のブロックとして表されているが、コントローラ60は、例えば車体側と自動変速機50側とにそれぞれ分割して設けられた複数のマイクロコンピュータから構成されるものであってもよい。
コントローラ60は、上述したパーキングスイッチ8、前後変位量センサ29、左右変位量センサ30、プッシュボタン40、自動変速機50(より詳しくはその変速アクチュエータ50a)、インジケータ9、およびメータユニット3と電気的に接続されている。なお、自動変速機50の変速アクチュエータ50aとは、例えば、自動変速機50に内蔵されるクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素の締結・解放を切り替えるソレノイドバルブ等のことである。
また、車両には、ブレーキペダルが踏み込み操作されているか否かを検出するためのブレーキセンサ(ブレーキスイッチ)42が設けられており、このブレーキセンサ42もコントローラ60と電気的に接続されている。
コントローラ60は、判定部60a、レンジ切替部60b、および変速段切替部60cを機能的に有している。
判定部60aは、パーキングスイッチ8、シフトレバー10、およびプッシュボタン40のそれぞれの操作状態を判定するものである。例えば、判定部60aは、パーキングスイッチ8に内蔵された接点からの信号に応じてパーキングスイッチ8が押圧操作されたか否かを判定する。また、前後変位量センサ29および左右変位量センサ30からの信号に応じてシフトレバー10が前後左右のいずれの方向に傾動操作されたかを判定するとともに、プッシュボタン40に内蔵された接点からの信号に応じてプッシュボタン40が押圧操作されたか否かを判定する。
レンジ切替部60bは、判定部60aにより判定されるシフト装置1の操作状態に基づいて、自動変速機50の変速レンジの切り替え制御や、インジケータ9およびメータユニット3の表示制御(現在の変速レンジを表示する制御)等を実行するものである。
また、レンジ切替部60bは、いわゆるシフトロック機能をも発揮する。すなわち、レンジ切替部60bは、ブレーキセンサ42からの信号に基づいてブレーキペダルがオフ状態である(ブレーキペダルが踏み込まれていない)ことが確認された場合に、パーキングレンジから他のレンジへの切り替えを禁止する機能を有している。
変速段切替部60cは、変速レンジとしてマニュアルレンジが選択されているときに機能するもので、自動変速機50の変速段(ギヤ段)を増減させる制御を実行するものである。すなわち、変速段切替部60cは、マニュアルレンジの選択時に、判定部60aにより判定されるシフトレバー10等の操作状態に基づいて、変速段の増減制御を実行する。
(3)変速パターン
以上のようなコントローラ60の制御の下、第1実施形態では、シフト装置1のシフトパターンが、図10(a)〜(f)および図11のように設定されている。以下、各図の内容について詳しく説明する。
(パーキングレンジからのシフトパターン)
図10(a)は、現在の変速レンジがパーキングレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、中央に表記された「P」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でパーキングレンジが選択されていることを示している。また、この「P」の前方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作されるとニュートラルレンジに切り替わることを示している。同様に、「P」の後方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作されるとニュートラルレンジに切り替わることを示している。
さらに、前方側の「N」の右側に白抜き矢印(button push)を挟んで表記された「R」は、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されるとリバースレンジに切り替わることを示している。同様に、後方側の「N」の右側に白抜き矢印(button push)を挟んで表記された「D」は、シフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されるとドライブレンジに切り替わることを示している。
またさらに、「P」の左方および右方に表記された「空」は、パーキングレンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作されても、それらの操作が無効とされることを示している。操作が無効である場合、現在の変速レンジ(ここではパーキングレンジ)が維持された上で、例えばメータユニット3内の所定の表示部に、操作が無効である旨を報知するメッセージが表記される。
以上をまとめると、現在の変速レンジがパーキングレンジであるときのシフトパターンは、図11において「現レンジ」=「P」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(リバースレンジからのシフトパターン)
図10(b)は、現在の変速レンジがリバースレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、リバースレンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作され、あるいは、その状態からさらにプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作は無効とされる。
逆に、リバースレンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作された場合には、変速レンジがリバースレンジからニュートラルレンジに切り替えられ、さらに、シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがドライブレンジに切り替えられる。
シフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作された場合には、それらの操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがリバースレンジであるときのシフトパターンは、図11において「現レンジ」=「R」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → 無効
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(ニュートラルレンジからのシフトパターン)
図10(c)は、現在の変速レンジがニュートラルレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図によれば、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されても、変速レンジはニュートラルレンジのまま変化しない。なお、操作自体が無効(空)とされているわけではないので、メータユニット3には特にメッセージは表示されない。
ニュートラルレンジからリバースまたはドライブレンジに切り替えるには、上述した図10(a)のパターン(パーキングレンジからのシフトパターン)と同様の操作が必要である。すなわち、リバースレンジに切り替えるには、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40の押圧操作を行う必要があり、ドライブレンジに切り替えるには、シフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40の押圧操作を行う必要がある。
シフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作された場合には、それらの操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときのシフトパターンは、図11において「現レンジ」=「N」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(ドライブレンジからのシフトパターン)
図10(d)は、現在の変速レンジがドライブレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがドライブレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作され、あるいは、その状態からさらにプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作は無効とされる。
逆に、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作された場合には、変速レンジがリバースレンジからニュートラルレンジに切り替えられ、さらに、シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがリバースレンジに切り替えられる。
図10(d)において中央の「D」の左方に表記された「M」は、シフトレバー10がホーム位置から左方に傾動操作されると変速レンジがドライブレンジからマニュアルレンジに切り替えられることを示している。これに対し、「D」の右方に「空」と表記されているように、シフトレバー10がホーム位置から右方に傾動操作されたとしても、その操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図11において「現レンジ」=「D」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → 無効
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
・左方へのレバー操作 → マニュアルレンジ
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(マニュアルレンジからのシフトパターン)
図10(e)(f)は、現在の変速レンジがマニュアルレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。
まず、図10(e)において、中央の「M」の前方に表記された「−1」は、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作されると変速段を1つ下げるダウンシフトが実行されることを示している。例えば、現在の変速段が6速であれば、シフトレバー10の前方変位に応じて変速段が1つ低い5速まで下げられる。
一方、「M」の後方に表記された「+1」は、シフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作されると変速段を1つ上げるアップシフトが実行されることを示している。例えば、現在の変速段が5速であれば、シフトレバー10の後方変位に応じて変速段が1つ高い6速まで上げられる。
上記「−1」および「+1」の右側にそれぞれ白抜き矢印(button push)を挟んで表記された「空」は、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作され、あるいはシフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されても、プッシュボタン40の押圧操作が無効とされることを示している(ただしレバー操作は無効でないので、アップシフトまたはダウンシフトは実行される)。
図10(e)において「M」の右方に表記された「D」は、シフトレバー10がホーム位置から右方に傾動操作されると、変速レンジがマニュアルレンジからドライブレンジに切り替えられることを示している。これに対し、「M」の左方に「空」と表記されているように、シフトレバー10がホーム位置から左方に傾動操作されたとしても、その操作は無効とされる。
以上のような図10(e)のシフトパターンに示したように、マニュアルレンジの選択中にプッシュボタン40を押圧しないままシフトレバー10を前方または後方に傾動する操作が行われた場合には、1段のアップシフトまたはダウンシフトが実行される。一方で、その傾動操作の後にプッシュボタン40が押圧されたとしても、それ以上のアップシフトまたはダウンシフトは実行されない。つまり、プッシュボタン40を押圧せずにシフトレバー10を傾動させる操作が一旦行われれば、その後にプッシュボタン40を押圧してもしなくても、アップシフトまたはダウンシフトの段数は1段とされる。なお、このような1段のアップシフトまたはダウンシフトは、シフトレバー10が前方または後方に傾動操作されるたびに実行される。このため、例えば、ホーム位置からシフトレバー10を前方に傾動させる操作を2回繰り返した場合には、1段のダウンシフトが2回繰り返されることにより、合計で2段のアップシフトが実行される。また、ホーム位置からシフトレバー10を後方に傾動させる操作を2回繰り返した場合には、1段のアップシフトが2回繰り返されることにより、合計で2段のアップシフトが実行される。
これに対し、図10(f)は、プッシュボタン40を予め押圧した状態でシフトレバー10を前方または後方に傾動させる操作が行われた場合のシフトパターンを示している。本図において、中央の「M」の前方に表記された「−2」は、プッシュボタン40を予め押圧しておき、その押圧を維持したままシフトレバー10をホーム位置から前方に傾動させる操作が行われた場合に、変速段を一気に2つ下げるダウンシフトが実行されることを示している。例えば、現在の変速段が6速であれば、プッシュボタン40の押圧を伴うシフトレバー10の前方変位に応じて変速段が2つ低い4速まで下げられる。
一方、「M」の後方に表記された「+2」は、プッシュボタン40を予め押圧しておき、その押圧を維持したままシフトレバー10をホーム位置から後方に傾動させる操作が行われた場合に、変速段を一気に2つ上げるアップシフトが実行されることを示している。例えば、現在の変速段が4速であれば、プッシュボタン40の押圧を伴うシフトレバー10の後方変位に応じて変速段が2つ高い6速まで上げられる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがマニュアルレンジであるときのシフトパターンは、図11において「現レンジ」=「M」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → 1段のダウンシフト
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 1段のダウンシフト(ボタンプッシュ無効)
・予めボタンプッシュ&前方へのレバー操作 → 2段のダウンシフト
・後方へのレバー操作 → 1段のアップシフト
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 1段のアップシフト(ボタンプッシュ無効)
・予めボタンプッシュ&後方へのレバー操作 → 2段のアップシフト
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → ドライブレンジ
のようになる。
ここで、以上説明したようなシフトパターンにおいて、マニュアルレンジの選択時にアップシフトのためにシフトレバー10を「後方」に傾動操作することは、請求項にいう「第1方向」への変位操作に相当し、ダウンシフトのためにシフトレバー10を「前方」に傾動操作することは、請求項にいう「第2方向」への変位操作に相当する。
なお、図示を省略しているが、現在の変速レンジがマニュアルレンジ以外のレンジである場合において、シフトレバー10をホーム位置に保持したままプッシュボタン40を押圧操作した場合、その押圧操作は無効とされる。
また、現在の変速レンジがいずれであるかにかかわらず、シフトレバー10をホーム位置から左方または右方に傾動操作した後さらにプッシュボタン40を押圧操作した場合、プッシュボタン40の押圧操作については無効とされる。
(走行レンジ切り替え時の判定ロジック)
次に、走行レンジへの切り替えを許可するか否かの判定ロジックについて具体的に説明する。なお、ここでいう走行レンジとは、駆動力が車輪に伝達される変速レンジのうちマニュアルレンジを除くレンジのことであり、第1実施形態ではドライブレンジおよびリバースレンジのいずれかのことである。逆に、非走行レンジとは、車輪への駆動力伝達が切断される変速レンジのことであり、第1実施形態ではパーキングレンジおよびニュートラルレンジのいずれかのことである。
上述したように、変速レンジを非走行レンジ(パーキングレンジまたはニュートラルレンジ)から走行レンジ(ドライブレンジまたはリバースレンジ)に切り替えるには、図10(a)または(c)に示したように、シフトレバー10を前方または後方に傾動操作した上でさらにプッシュボタン40を押圧操作することが必要である。このとき、コントローラ60は、ドライブまたはリバースレンジに切り替えてよいか否かの判定を、少なくとも、前後変位量センサ29から得られるシフトレバー10の変位量(前方または後方への回転角度)と、プッシュボタン40の接点からの信号(ボタン押圧時に発せられる信号)の有無とに基づいて行う。
具体的に、当実施形態において、コントローラ60は、(i)シフトレバー10の後方への変位量がある値を超えていること、(ii)プッシュボタン40の接点からの信号入力があること、の2つの要件がともに成立したときに、ドライブレンジへの切り替えを許可する。また、(iii)シフトレバー10の前方への変位量がある値を超えていること、(iv)プッシュボタン40の接点からの信号入力があること、(v)ブレーキペダルが踏み込まれていることを表す信号がブレーキセンサ42から入力されていること、の3つの要件がともに成立したときには、リバースレンジへの切り替えを許可する。
図12は、シフトレバー10に関する上記要件(i)(iii)の成立をどのように判定するのかを説明するためのグラフである。本グラフにおいて、横軸はシフトレバー10の変位量を、縦軸は前後変位量センサ29の出力値をそれぞれ表している。なお、横軸については、変位量がゼロのときを中心として、ドライブレンジに切り替わる方向もしくは変速段がアップする方向(D(+)方向)にシフトレバー10が変位したときの変位量を中心よりも右側に示し、リバースレンジに切り替わる方向もしくは変速段がダウンする方向(R(−)方向)にシフトレバー10が変位したときの変位量を中心よりも左側に示している。上述したように、第1実施形態では、ドライブレンジに切り替えるかもしくは変速段をアップさせたいときはシフトレバー10を後方に傾動操作し、リバースレンジに切り替えるかもしくは変速段をダウンさせたいときはシフトレバー10を前方に傾動操作するので、グラフ中のD(+)方向とは後方のことであり、R(−)方向とは前方のことである。また、図12では、シフトレバー10を限界まで変位させた場合の変位量、つまり図7(b)(c)のようにガイド用脚部15が第1溝部27Aの前後端部27Aa,27Abに当接する位置までシフトレバー10を変位させた場合の変位量を「変位限界」として示している。変位限界に対応する変位量は、後方(D(+)方向)側でも前方(R(−)方向)側でも同一とされている。
図12のグラフに特性線Xとして示すように、前後変位量センサ29の出力値は、シフトレバー10がホーム位置から前後方向に傾動変位するのに伴い比例的に変化する。具体的には、シフトレバー10がホーム位置にあるときのセンサ出力をγとすると、シフトレバー10が後方(D(+)方向)に傾動操作されたときのセンサ出力は、後方への変位量に比例して増大し(γよりも大きくなり)、シフトレバー10が前方(R(−)方向)に傾動操作されたときのセンサ出力は、前方への変位量に比例して減少する(γよりも小さくなる)。
図12のグラフにおいて、シフトレバー10の後方(D(+)方向)への変位量T1と、前方(R(−)方向)への変位量T2とは、それぞれ、上記要件(i)(iii)の成立を判定するための閾値である。以下では、T1を「第1レンジ切替閾値」、T2を「第2レンジ切替閾値」という。
コントローラ60は、前後変位量センサ29の出力値が所定値α以上になると、シフトレバー10の後方への変位量が第1レンジ切替閾値T1以上になったと認識し、そのことをもって、変速レンジをドライブレンジに切り替えるための上記要件(i)が成立したと判定する。そして、この要件(i)の成立に加えて、プッシュボタン40が押圧操作されて上記要件(ii)が成立した場合に、変速レンジをドライブレンジに切り替える。
また、コントローラ60は、前後変位量センサ29の出力値が所定値β以下になると、シフトレバー10の前方への変位量が第2レンジ切替閾値T2以上になったと認識し、そのことをもって、変速レンジをリバースレンジに切り替えるための上記要件(iii)が成立したと判定する。そして、この要件(iii)の成立に加えて、プッシュボタン40が押圧操作されて要件(iv)が成立し、かつブレーキペダルが踏み込まれて要件(v)が成立した場合に、変速レンジをリバースレンジに切り替える。
ここで、図12のグラフから明らかなように、ドライブレンジへの切り替え時に用いられる第1レンジ切替閾値T1は、シフトレバー10が後方への変位限界(つまりガイド用脚部15が第1溝部27Aの前端部27Aaに当接する位置)まで到達した時点での変位量よりも僅かに小さい値に設定されている。このため、少なくともシフトレバー10が後方への変位限界まで操作されたときには、上記要件(i)が成立していることになる。
また、リバースレンジへの切り替え時に用いられる第2レンジ切替閾値T2は、シフトレバー10が前方への変位限界(つまりガイド用脚部15が第1溝部27Aの後端部27Abに当接する位置)まで到達した時点での変位量よりも僅かに小さい値に設定されている。このため、少なくともシフトレバー10が前方への変位限界まで操作されたときには、上記要件(iii)が成立していることになる。
なお、以上説明したことは、走行レンジ間での切り替え、つまり、リバースレンジからドライブレンジへの切り替えもしくはその逆方向の切り替えを行うときでも同様である。例えば、変速レンジをリバースレンジからドライブレンジに切り替えるときにはシフトレバー10を後方に傾動操作する必要があり、変速レンジをドライブレンジからリバースレンジに切り替えるときにはシフトレバー10を前方に傾動操作する必要があるが(図10(b)(d)参照)、それぞれの場合に用いられるシフトレバー10の変位量の閾値としては、上述した第1レンジ切替閾値T1および第2レンジ切替閾値T2が用いられる。
(変速段増減時の判定ロジック)
次に、同じく図12を用いて、マニュアルレンジの選択中に変速段の増減を許可するか否かの判定ロジックについて具体的に説明する。
図12において、シフトレバー10の後方(D(+)方向)への変位量T3と、前方(R(−)方向)への変位量T4とは、それぞれ、プッシュボタン40を押圧しないままシフトレバー10を傾動させる操作が行われた場合にアップシフトまたはダウンシフトを許可するか否かを判定するための閾値である。また、シフトレバー10の後方(D(+)方向)への変位量T5と、前方(R(−)方向)への変位量T6とは、それぞれ、プッシュボタン40を予め押圧した状態でシフトレバー10を傾動させる操作が行われた場合にアップシフトまたはダウンシフトを許可するか否かを判定するための閾値である。
図12から理解されるように、D(+)方向の閾値に関しては、T5はT3よりも小さく、R(−)方向の閾値に関しては、T6はT4よりも小さい。以下では、D(+)方向の閾値T3,T5のうち、大きい方のT3を「第1高閾値」、小さい方のT5を「第1低閾値」という。また、R(−)方向の閾値T4,T6のうち、大きい方のT4を「第2高閾値」、小さい方のT6を「第2低閾値」という。
さらに、上記各閾値T3〜T6と上述した第1レンジ切替閾値T1,T2との関係としては、第1レンジ切替閾値T1は第1高閾値T3および第1低閾値T5のいずれよりも大きく、第2レンジ切替閾値T2は第2高閾値T4および第2低閾値T6のいずれよりも大きい。
図12では、第1高閾値T3に対応するセンサ出力をλ1、第1低閾値T5に対応するセンサ出力をλ2、第2高閾値T4に対応するセンサ出力をτ1、第2低閾値T6に対応するセンサ出力をτ2としている。これらのセンサ出力の大小関係は、上述した各閾値の大小関係に基づいて、(β<)τ1<τ2(<γ)<λ2<λ1(<α)と表すことができる。
以上のような閾値の設定の下、マニュアルレンジにおけるアップシフトおよびダウンシフトは、それぞれ次のような条件で実行される。
すなわち、プッシュボタン40を押圧しないままシフトレバー10を後方に傾動させる操作が行われた場合、コントローラ60は、シフトレバー10の後方への変位量が第1高閾値T3以上であることを条件に、1段のアップシフトを実行する(変速段を1つ上げる)。
プッシュボタン40を予め押圧した状態でシフトレバー10を後方に傾動させる操作が行われた場合、コントローラ60は、シフトレバー10の後方への変位量が第1低閾値T5(<T3)以上であることを条件に、2段のアップシフトを実行する(変速段を2つ上げる)。
プッシュボタン40を押圧しないままシフトレバー10を前方に傾動させる操作が行われた場合、コントローラ60は、シフトレバー10の前方への変位量が第2高閾値T4以上であることを条件に、1段のダウンシフトを実行する(変速段を1つ下げる)。
プッシュボタン40を予め押圧した状態でシフトレバー10を前方に傾動させる操作が行われた場合、コントローラ60は、シフトレバー10の前方への変位量が第2低閾値T6(<T4)以上であることを条件に、2段のダウンシフトを実行する(変速段を2つ下げる)。
(4)作用等
以上説明したように、第1実施形態にかかるシフト装置1は、非走行レンジ(パーキングレンジ、ニュートラルレンジ)が選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されかつプッシュボタン40が押圧操作された場合に、変速レンジを走行レンジ(ドライブレンジ、リバースレンジ)に切り替えるとともに、走行レンジに切り替える操作とは別の所定の操作(ここではドライブレンジ選択時にシフトレバー10を左方に傾動させる操作)が行われた場合に、変速レンジをマニュアルレンジに切り替えるレンジ切替部60bと、マニュアルレンジが選択されている状態でシフトレバー10をホーム位置から前方または後方に傾動させる操作が少なくとも行われた場合に、変速段をアップシフトまたはダウンシフトさせる変速段切替部60cとを備える。変速段切替部60cは、プッシュボタン40が押圧操作されていない状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作された場合に、1段のアップシフトまたはダウンシフトを実行し、プッシュボタン40が予め押圧操作された状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作された場合に、2段のアップシフトまたはダウンシフトを実行する。このような構成によれば、安全性を確保しつつ、変速段を増減させる操作の操作性を効果的に向上させることができるという利点がある。
すなわち、上記第1実施形態では、非走行レンジ(パーキングレンジ、ニュートラルレンジ)が選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動変位しても、ニュートラルレンジに切り替わるだけで、その状態でさらにプッシュボタン40が押圧されない限り走行レンジ(ドライブレンジまたはリバースレンジ)に切り替わらないので、シフトレバー10に誤って手が触れるなどの誤操作があったとしても、ドライバーの意に反して車両が発進するような事態が回避され、車両の安全性を十分に確保することができる。
また、マニュアルレンジが選択された場合は、シフトレバー10が前方または後方に傾動操作されることで変速段がアップシフトまたはダウンシフトされ、しかも、そのアップシフトまたはダウンシフトの段数が、プッシュボタン40が予め押圧操作されているか否かによって可変的に設定されるので、ドライバーの要求に合わせた適正な段数のアップシフトまたはダウンシフトを実現することができ、変速段を増減させる操作の操作性を効果的に向上させることができる。
例えば、ゆっくりとした加速または減速に合わせて徐々に変速段を増減させたいような場合には、プッシュボタン40を押圧することなくシフトレバー10を傾動操作することにより、上記のような要求に合致した1段ずつのアップシフトまたはダウンシフトが可能になる。一方、比較的急な加速または減速に合わせて変速段を短時間で多く増減させたいような場合には、予めプッシュボタン40を押圧した上でシフトレバー10を傾動操作することにより、上記のような要求に合致した2段ずつのアップシフトまたはダウンシフトが可能になる。
特に、自動変速機50として、変速段の数が多い(例えば8速やそれ以上の段数まで多段化された)自動変速機が採用されている場合には、上記のような2パターンの操作が存在することの意義は大きいものとなる。つまり、多段化が進んだ自動変速機において仮に1段ずつのアップシフトまたはダウンシフトしか許容されない場合は、比較的急な加速または減速のために変速段を短時間で多く増減させたいときに、シフトレバー10を前後に傾動させる操作を頻繁に繰り返さねばならず(つまり変速段を1つ増減させるごとにいちいちシフトレバー10をホーム位置に戻さねばならず)、ドライバーにかかる負担が大きくなる。これに対し、上記実施形態では、予めプッシュボタン40を押圧しておきさえすれば、シフトレバー10を1回傾動させるだけで変速段が2つ増減されるので、より簡単な操作で多くの変速段を増減させることができ、操作の負担感を軽減することができる。このように、上記第1実施形態の構成は、変速段の数が多い自動変速機を採用する車両に特に有効である。
また、上記第1実施形態では、プッシュボタン40を押圧することなくシフトレバー10を前方または後方に傾動させる操作が行われたとき、その傾動操作の変位量が第1高閾値T3または第2高閾値T4以上であれば1段のアップシフトまたはダウンシフトが実行されるのに対し、プッシュボタン40を予め押圧した上でシフトレバー10を前方または後方に傾動させる操作が行われたときは、その傾動操作の変位量が相対的に小さい第1低閾値T5または第2低閾値T6以上であれば、2段のアップシフトまたはダウンシフトが実行される(T5<T3、かつT6<T4)。このような構成によれば、誤操作の可能性を特に高めることなく、変速段を増減させる操作の操作性をより向上させることができる。なお、その詳しい理由は以下に説明するとおりであるが、以下では、1段のアップシフトまたはダウンシフトのためにプッシュボタン40を押圧することなくシフトレバー10を傾動させる操作のことを「1段変速操作」といい、2段のアップシフトまたはダウンシフトのためにプッシュボタン40を押圧しながらシフトレバー10を傾動させる操作のことを「2段変速操作」という。
変速段を一気に2つ増減させる2段変速操作の際には、プッシュボタン40を押圧しながら(言い換えるとシフトレバー10をしっかり握ったまま)シフトレバー10を傾動させる操作が必要になるので、その際にドライバーにかかる負担は、プッシュボタン40の押圧が必要ない1段変速操作のときよりも大きくなりがちである。しかしながら、上記第1実施形態では、2段変速操作の際に要求されるシフトレバー10の変位量(第1低閾値T5および第2低閾値T6)が、1段変速操作の際に要求されるシフトレバー10の変位量(第1高閾値T3および第2高閾値T4)よりも小さく設定されており、シフトレバー10をそれほど大きく傾動させなくても2段変速操作ができるようになっている。このため、2段変速操作の際の負担が軽く済み、より軽快な操作で多くの段数を増減させることができる。
ここで、上記のように変位量の閾値を小さくした場合は、誤操作が起きる可能性が高まることが懸念される。しかしながら、2段変速操作は、予めプッシュボタン40を押圧したままシフトレバー10を傾動させる操作であり、単にシフトレバー10に手が触れただけでは実現されないので、そもそも誤操作の可能性が低い操作であるといえる。このため、上記閾値(第1低閾値T5および第2低閾値T6)が小さくされたとしても、誤操作の可能性がそれほど高まるなることはなく、ドライバーの意図しないアップシフトまたはダウンシフトが行われるのを有効に回避することができる。
また、上記第1実施形態では、パーキング、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジからドライブレンジに変速レンジを切り替える際に要求されるシフトレバー10の変位量、つまり第1レンジ切替閾値T1が、上述した第1高閾値T3および第1低閾値T5(変速段のアップシフトの際に要求される変位量)のいずれよりも大きく設定されている。また、パーキング、ニュートラル、ドライブのいずれかのレンジからリバースレンジに変速レンジを切り替える際に要求されるシフトレバー10の変位量、つまり第2レンジ切替閾値T2が、上述した第2高閾値T4および第2低閾値T6(変速段のダウンシフトの際に要求される変位量)のいずれよりも大きく設定されている。このような構成によれば、ドライブレンジおよびリバースレンジに変速レンジを切り替える際にシフトレバー10をより大きく傾動操作する必要が生じるので、車両の安全性をより高めることができる。
すなわち、ドライブレンジまたはリバースレンジに変速レンジを切り替える操作は、停止していた車両を前進または後退させる操作であるから、より慎重な操作をドライバーに求めることが車両の安全性の向上につながる。これに対し、上記第1実施形態では、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替え時に必要なシフトレバー10の変位量(第1、第2レンジ切替閾値T1,T2)が、マニュアルレンジにおいて変速段を増減させる際に必要なシフトレバー10の変位量(閾値T3〜T6)よりも大きく設定されているので、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替え時にドライバーに慎重な操作を促すことができ、車両の安全性をより高めることができる。
<第2実施形態>
以上説明した第1実施形態では、請求項にいう「操作部材」として前後2方向(もしくは前後左右の4方向に)傾動操作されるシフトレバー10を採用したが、操作部材は少なくとも特定の2方向に変位可能であればよく、その具体的構成は適宜変更可能である。ここでは、その一例を第2実施形態として説明する。
第2実施形態のシフト装置200は、図13〜図16に示すように、スライド操作部材210と、スライド操作部材210を前後方向にスライド自在に支持する本体部220とを有している。
スライド操作部材210は、請求項にいう「操作部材」に相当するものであり、当実施形態では、パソコンで用いられるマウス(ポインター)に似た形状の把持部211と、上端部が支軸219を介して把持部211に枢支された角柱状のレバー部212と、レバー部212の下端に設けられた球体部213と、球体部213から下方に延びるディテント用脚部214とを有している。
把持部211の前部上面には、プッシュ式のボタンスイッチからなるプッシュボタン240が設けられている。また、把持部211の前部側面には、プッシュ式のボタンスイッチからなるMレンジスイッチ250が設けられている(図14参照)。
ディテント用脚部214は、脚本体214bと、図略の圧縮スプリングにより押圧された状態で脚本体214bの先端から突設された付勢部214aとを有している。
本体部220は、箱状の筐体221と、筐体221の上面の開口を覆うように取り付けられたカバー部222とを有している。カバー部222には、スライド操作部材210のレバー部212が摺動可能に挿入されるスリット222aが形成されている。
筐体221の内部には、スライド操作部材210の球体部213を包み込んで支持する支持部223が、前後の連結部224を介して架設されている。また、筐体221の下壁221aの上面には、凹球面状の球状受け面225aを有した誘導部材225が設けられている。そして、この誘導部材225の球状受け面225aに上記ディテント用脚部214の付勢部214aが押し付けられることにより、スライド操作部材210を所定のホーム位置(図15の状態)に自動的に復帰させるためのディテント機構235が構成されている。
以上のような本体部220に支持されたスライド操作部材210は、ドライバーから把持部211に加えられる操作力を受けて変位する。ただし、その変位方向は、カバー部222に設けられたスリット222aの延設方向、つまり前後方向のみに規制される。
ドライバーからの操作力に応じて把持部211がカバー部222の上面を前後方向にスライド移動すると、レバー部212が支軸219を中心に前後方向に傾くように傾動し、スリット222aの内部を前後方向に摺動する。つまり、スライド操作部材210は、レバー部212がスリット222aの前縁に当接する位置からスリット222aの後縁に当接する位置までの範囲に限り、前後方向に変位することができる。
上記のようなスライド操作部材210の変位操作後、把持部211に対する操作力が解除された場合、スライド操作部材210は、ホーム位置、つまり、レバー部212がスリット222aの中央に配置されかつ付勢部214aが球状受け面225aの中心部に配置される図15の状態に自動的に復帰させられる。
把持部211の裏面には、把持部211の前後方向の移動量を検出する変位量センサ229(図14)が設けられている。この変位量センサ229は、パソコン用の光学式マウスに用いられているのと同じもので、カバー部222の上面に光を照射するLED等の光源とその光源の照射面のイメージを読み取る撮像素子とを備えた光センサである。
以上のような第2実施形態のシフト装置200は、先の第1実施形態のコントローラ60と同様のコントローラ(図示省略)を有している。コントローラは、変位量センサ229による検出信号(つまりスライド操作部材210の変位量を表す信号)と、プッシュボタン240およびMレンジスイッチ250に内蔵された接点からの信号とを受け付け、それらの信号に基づいて自動変速機50の変速レンジおよび変速段を制御する。すなわち、コントローラ60は、スライド操作部材210、プッシュボタン240、およびMレンジスイッチ250の操作状態を判定する判定部60aと、判定部60aにより判定された上記操作状態に基づいて自動変速機50の変速レンジを切り替えるレンジ切替部60bと、同操作状態に基づいて自動変速機50の変速段を増減させる変速段切替部60cとを有している。
図示を省略するが、以上のような構成の第2実施形態のシフト装置200においては、次のようなシフトパターンが採用される。
パーキング、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジからドライブレンジに切り替えるには、スライド操作部材210の把持部211を後方にスライド操作した上で、プッシュボタン240を押圧操作する。また、パーキング、ニュートラル、ドライブのいずれかのレンジからリバースレンジに切り替えるには、スライド操作部材210の把持部211を前方にスライド操作した上で、プッシュボタン240を押圧操作する。なお、これらのシフトパターンは、先の第1実施形態における図10(a)〜(d)のシフトパターンから「P」「R」「N」「D」の左右の「空」または「M」の表記を省略したパターンとして表すことができる。
ドライブレンジが選択されている状態でMレンジスイッチ250が押圧操作されると、変速レンジがドライブレンジからマニュアルレンジに切り替えられる。このマニュアルレンジが選択されている状態で、プッシュボタン240を押圧することなくスライド操作部材210を後方にスライドさせる操作が行われると、変速段を1つ上げるアップシフト(1段のアップシフト)が実行され、プッシュボタン240を押圧しつつスライド操作部材210を後方にスライドさせる操作が行われると、変速段を2つ上げるアップシフト(2段のアップシフト)が実行される。一方、プッシュボタン240を押圧することなくスライド操作部材210を前方にスライドさせる操作が行われると、変速段を1つ下げるダウンシフト(1段のダウンシフト)が実行され、プッシュボタン240を押圧しつつスライド操作部材210を前方にスライドさせる操作が行われると、変速段を2つ下げるダウンシフト(2段のダウンシフト)が実行される。なお、これらのシフトパターンは、先の第1実施形態における図10(e)(f)のシフトパターンから「M」の左右の「空」または「D」の表記を省略したパターンとして表すことができる。
上記マニュアルレンジからドライブレンジへの切り替えの際には、やはりMレンジスイッチ250が用いられる。つまり、マニュアルレンジが選択されている状態でMレンジスイッチ250が押圧操作されると、変速レンジがマニュアルレンジからドライブレンジに切り替えられる。
以上のような第2実施形態によれば、先の第1実施形態のときと同様、安全性を確保しながら、変速段を増減させる操作の操作性を効果的に向上させることができる等の利点がある。
<その他の変形例>
上述した実施形態(第1、第2実施形態)では特に触れなかったが、エンジンの出力軸の回転数(エンジン回転数)が比較的高い状態で変速段を2つ下げる操作(2段のダウンシフト)が実行された場合には、エンジン回転数が過度に上昇して過回転域(レッドゾーン)に達することが懸念される。例えば、上記第1実施形態において、プッシュボタン40を押圧しつつシフトレバー10を前方に傾動させる操作が行われたとする。このような操作があると、基本的には、変速段が一気に2つ下がることになるが、このような2段のダウンシフトをいかなる場合にも許容すると、エンジン回転数がレッドゾーンに達することが起こり得る。
そこで、上記のような事態を回避するために、次のような対策を施すことが望ましい。すなわち、上記のような2段のダウンシフト操作(プッシュボタン40を押圧しつつシフトレバー10を前方に傾動させる操作)が行われたとしても、2段のダウンシフトに伴いエンジン回転数が所定値(例えばレッドゾーンの境界回転数)を上回ると予想される場合には、ダウンシフトの段数を1段以下に留めるようにする。つまり、1段だけのダウンシフトを実行するか、ダウンシフトそのものを禁止する。このようにすれば、エンジン回転数がレッドゾーンに達するオーバーレブが起きるのを確実に回避することができ、エンジンの信頼性を高めることができる。
また、上記第1実施形態では、シフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されたときの変位量を前後変位量センサ29を用いて検出し、当該変位量を図12に示した各種閾値T1〜T6と比較することにより、ドライブレンジやリバースレンジへの切り替えを許可するか否か、あるいは変速段のアップシフトまたはダウンシフトを許可するか否かを判定するようにしたが、このような判定の基準となるものは、シフトレバー10の前方または後方への操作の程度を表す物理量であればよく、上記のような変位量に限られない。
例えば、ドライバーからシフトレバー10に加えられる前方または後方への操作力を検出し、その操作力を基準にレンジ切り替えやアップ/ダウンシフトの可否を判定するようにしてもよい。なお、シフトレバー10に加わる操作力を検出する手段としては、例えば圧力センサを用いることができる。すなわち、図6に示した第1溝部27Aの前端部27Aaおよび後端部27Ab(図6)に圧力センサを設ければ、シフトレバー10が前後方向の変位限界(ガイド用脚部15が前端部27Aaまたは後端部27Abに当接する位置)まで操作されたときにガイド用脚部15から上記圧力センサに加わる圧力を検出することができ、その検出された圧力に基づいてシフトレバー10の操作力を調べることができる。
また、上記第1実施形態では、シフトレバー10が後方(図12のD(+)方向)に傾動操作されたときに用いられる閾値(T1,T3,T5)と、シフトレバー10が前方(図12のR(−)方向)に傾動操作されたときに用いられる閾値(T2,T4,T6)との関係については特に説明しなかったが、例えば、ホーム位置から前方への変位限界までの距離と、ホーム位置から後方への変位限界までの距離とが等しい場合には、前方変位時の閾値と後方変位時の閾値とを同一に設定することが考えられる。つまり、第1レンジ切替閾値T1と第2レンジ切替閾値T2とを等しくし、第1高閾値T3と第2高閾値T4とを等しくし、第1低閾値T5と第2低閾値T6とを等しくする。
もちろん、これとは別の関係を設定することもできる。例えば、ドライブレンジへの切り替え時に必要な変位量である第1レンジ切替閾値T1を、リバースレンジへの切り替え時に必要な変位量である第2レンジ切替閾値T2よりも小さく設定してもよい。このようにすれば、ドライブレンジへの切り替え操作がより簡便なものになる一方で、リバースレンジへの切り替え時にシフトレバー10を相対的に大きく変位させることをドライバーに強いることにより、車両を後退させる操作であるリバースレンジへの切り替えをより慎重に行うようにドライバーに促すことができ、安全性をより高めることができる。
また、上記第1、第2実施形態では、マニュアルレンジが選択されている状態でシフトレバー10(スライド操作部材210)が後方に変位操作されると変速段を上げるアップシフトが実行され、シフトレバー10(スライド操作部材210)が前方に変位操作されると変速段を下げるダウンシフトが実行されるようになっていたが、これとは逆の関係であってもよい。すなわち、シフトレバー10等の後方変位に伴ってダウンシフトが実行され、シフトレバー10等の前方変位に伴ってアップシフトが実行されるものであってもよい。
また、上記第1、第2実施形態では、マニュアルレンジが選択されている状態でシフトレバー10(スライド操作部材210)が前方または後方に変位操作されたとき、予めプッシュボタン40(240)が押圧されているか否かによってアップ/ダウンシフトの段数が1段か2段かのいずれかに設定するようにしたが、アップ/ダウンシフトの際に増減させる段数はこれに限られない。特に、近年は燃費改善等のために自動変速機の多段化が進んでおり、将来的にもこの傾向は続くものと考えられる。自動変速機がより多段化された場合(例えば10速やそれ以上に多段化された場合)、1段だけアップ/ダウンシフトしてもそのことがドライバーによってほとんど認識されず、操作感に乏しいものとなってしまう。そこで、このような場合には、ドライバーの操作に起因するアップ/ダウンシフトの段数を最低でも2段にすることが考えられる。例えば、第1実施形態のケースでは、プッシュボタン40を押圧せずにシフトレバー10を前方または後方に傾動させる操作が行われた場合に2段のアップ/ダウンシフトを実行し、プッシュボタン40を押圧しつつシフトレバー10を前方または後方に傾動させる操作が行われた場合に3段またはそれ以上のアップ/ダウンシフトを実行することが考えられる。
上記第1、第2実施形態では、請求項にいう「操作部材」として、前後左右の4方向に傾動可能なシフトレバー10、あるいは前後の2方向にスライド操作されるスライド操作部材210を採用したが、例えば、前方および後方と左右いずれか一方との合計3方向に傾動可能な操作部材を採用してもよい。この場合は、ドライブレンジが選択されている状態で左右いずれか一方に操作部材が変位操作されるとマニュアルレンジに切り替わり、その状態で再び上記一方の方向に操作部材が変位操作されるとドライブレンジに切り替わるというようなシフトパターンを採用することができる。ただし、操作部材は2つ以上の方向に変位可能であればよいので、2つ以上のいくつの方向に変位させるか、あるいは変位する方向をどの方向(前後、左右、斜め)に向けるかは、求められる性能や法規等に応じて種々変更され得る。
また、上記第1実施形態では、車両が左ハンドル車(図1参照)であることを前提に、図10(a)〜(f)に示したようなシフトパターンを採用したが、車両が右ハンドル車である場合には、図示のパターンに対し左右対称の関係になるように、つまり図10(d)のマニュアルレンジ(M)の位置と図10(e)のドライブレンジ(D)の位置とがそれぞれ中央の「D」「M」を挟んで逆側に配置されるようにシフトパターンを変更することが望ましい。
また、上記各実施形態では、請求項にいう「スイッチ部」としてプッシュ式のボタンスイッチ(プッシュボタン40または240)を採用したが、スイッチ部の具体例はこれに限られず、例えばトグルスイッチを採用してもよい。さらには、ドライバーの指から入力される圧力の大きさに基づいてスイッチ操作の有無を検出する感圧センサを「スイッチ部」として用いてもよい。
また、上記各実施形態のシフト装置は、エンジン(内燃機関)と車輪との間に介設された有段式の自動変速機50の変速レンジを切り替え操作するものであったが、本発明が適用可能な変速機は、有段式の自動変速機に限られず、例えば無段式の自動変速機(CVT)であってもよい。減速比を連続的に変更することが可能な無段式の自動変速機においても、マニュアルレンジが選択された場合には、減速比を段階的に変更することにより擬似的な有限の変速段をつくり出すことが可能である。本発明は、このような変速制御が行われる無段式の自動変速機にも好適に適用することができる。