JP6205710B2 - 方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トランスなどの鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主にトランスの鉄心として利用され、その磁化特性が優れていること、特に鉄損が低いことが求められている。そのためには、鋼板中の二次再結晶粒を(110)[001]方位(ゴス方位)に高度に揃えることや、製品中の不純物を低減することが重要とされている。
しかしながら、不純物低減には限界があることから、鋼板の表面に対して物理的な手法で不均一性を導入し、磁区の幅を細分化して鉄損を低減する技術、すなわち磁区細分化技術が開発されている。たとえば、特許文献1には、最終製品板にレーザを照射し、鋼板表層に高転位密度領域を導入することによって、磁区幅を狭くし、鉄損を低減する技術が提案されている。
また、レーザ照射に関する磁区細分化技術は、その後改良され(たとえば、特許文献2、特許文献3および特許文献4など)、鉄損特性が良好な方向性電磁鋼板が得られるようになった。
さらに、特許文献5には、最終製品板に電子ビーム照射を施すことで磁区制御を行い、鉄損を低減する技術が提案されている。レーザ照射、電子ビーム照射いずれの場合も、磁区制御効果を高めるために単位面積あたりのエネルギー密度を上げていくと、フォルステライトと絶縁コーティングよりなる絶縁層が剥落して、当該剥落部分の耐食性や耐電圧が著しく劣化する問題が生じる。ここで、絶縁層の剥落を補うべく再コーティングを行うことは、耐食性や耐電圧の維持に有効であるが、製造コストや設備面での制約が大きい。従って、エネルギー密度を最適化して、絶縁層の剥落を生じない範囲内において、鉄損を低減効果できる照射条件を求め、磁区細分化処理が行われることになる。
特公昭57-2252号公報 特開2006-117964号公報 特開平10-204533号公報 特開平11-279645号公報 特公平7-65106号公報 特開平6-65754号公報 特開平6-65755号公報 特開平6-299366号公報
しかしながら、エネルギー・環境意識の高まりから、更なる鉄損特性の改善が要求されているのが現状である。
ここで、鉄損特性の改善手段としての電子ビーム照射による磁区細分化処理は、一般的に二次再結晶焼鈍で形成されたフォルステライトを主体とする酸化物被膜の上に絶縁コーティングを形成した後、行われる。
レーザ照射と比較して、電子ビーム照射が優位な特性は以下のとおりである。
すなわち、レーザは絶縁コーティングや酸化物被膜で吸収あるいは反射された後、鋼板に到達して熱歪みを与えることができるが、光であるが故に、当然、鋼板中に侵入することができない。これに対して、電子ビームは、電子の流れであるが故に鋼板内部まで侵入することができるので、より効果的に鋼板へ熱歪みを導入することが可能であり、磁区細分化効果の点で優れている。
ここで、物質との相互作用を考えた場合、電子は、軽元素よりは重たい元素と相互作用をしやすい性質を持つ。方向性電磁鋼板の場合、前述したように絶縁コーティングや酸化物被膜は、いずれもSi、Mg、O等の軽元素で構成されており、Fe主体で構成される地鉄と比較して、被膜部での電子線の吸収は少ない。
従って、電子線は、Fe主体の地鉄中に、優先的に吸収されるので選択的に鋼板へ熱歪みを与えることが可能となる。このため、レーザ照射と比較すると、電子ビーム照射は、被膜損傷といわれる絶縁コーティングやフォルステライト膜の剥落が、極めて少ないという特徴を有する。
これに対して、レーザ照射の場合は、鋼板に到達する前に、絶縁コーティングや酸化物被膜での反射、散乱あるいは吸収といった現象が起こるので、電子ビームと比較すると被膜損傷の程度が大きい。加えて、鋼板表面に到達後も鋼板内部にレーザ光が侵入するわけではないので、照射による熱歪み導入も、表面からのみとなって、照射効果が板厚方向の表面近傍に限局される。
従って、レーザや電子ビームを使用した熱歪み導入型の磁区制御処理は、コスト面より、片面側からのみ行われるため、鋼中へ侵入して板厚方向に幅広く熱歪みを与えられる電子ビーム照射が有利である。
しかしながら、電子ビーム照射は、被膜損傷を生じにくい方法とはいうものの、0.27mmや0.30mm材など、鋼板板厚の大きな方向性電磁鋼板に磁区制御を施す場合には、板厚の増加に応じて熱歪み導入量を増加させる必要があるため、電子ビームのエネルギー密度を上げる必要がある。そして、そのような場合、照射条件の選択如何によっては、被膜損傷が発生するという問題が新たに判明した。
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、電子ビーム照射時の被膜損傷を防止しつつ、更なる低鉄損化の要求に応えた方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。
さて、発明者らが被膜損傷のメカニズムを鋭意調査した結果、絶縁コーティングだけが剥落するのではなく、必ずフォルステライト主体の酸化物被膜と地鉄との界面から剥落すること、また、レーザ照射に見られる酸化物の高熱による溶解とは異なり、機械的な衝撃によって剥落することを見出した。このことより、フォルステライト膜自身の、強度や鋼板との密着性が重要であると推察された。
そして、電子ビーム照射による剥落に影響を与える因子を調査した結果、以下に示すように、フォルステライト膜付鋼板の含有S量と含有Al量、すなわち膜付S量および膜付Al量との相関が大きいことが明らかとなり、具体的には、膜付S量が40ppm以上でかつ膜付Al量が100ppm未満の場合に、電子ビーム照射後の剥落が効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
まず、本発明を想到するに至った実験結果について説明する。
質量%(mass%)および質量ppm(mass ppm)で、C:200ppm、Si:3.40%、Mn:0.08%、S:5ppm、Se:5ppm、N:30ppmおよびCu:0.05%を含み、Al添加量を質量ppmで、40ppm、60ppm、80ppm、120ppm、180ppmおよび260ppmと変化させ、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造後、1200℃に加熱したのち、熱間圧延によって2.5mm厚の熱延板とし、次いで1000℃で、酸素ポテンシャル〔P(H2O)/P(H2)〕が0.50の雰囲気中にて熱延板焼鈍を施し、1回の冷間圧延によって0.30mmの最終板厚に仕上げた。さらに、これらを830℃の湿水素雰囲気中にて脱炭焼鈍した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布する際に、MgSO4を1〜20質量部の範囲でMgO(100質量部)に添加し、1120℃まで昇温する最終仕上げ焼鈍を行った。次いで、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主体とする絶縁コーティングを850℃で焼き付けた。
かかる手順で得られた鋼板に対して、圧延方向と直角方向に対し、5mm間隔をおいて、線状に電子ビーム照射を片面より行った。電子ビーム照射は、加速電圧:60kV、0.05Paの真空中で、フィラメントと鋼板との距離:450mmで行い、電子ビームの単位長さあたりのエネルギー密度は20J/mとした。
電子ビーム照射を行った鋼板について、絶縁コーティング前の二次再結晶焼鈍後に、あらかじめ膜付Al量および膜付S量分析を行っておき、電子ビーム照射後の被膜損傷の評価基準として、目視で線上に照射した痕跡がはっきり見える条件を×、うっすら見える条件を△、全く見えない条件を○として、膜付Al量およびS量が電子ビーム照射の被膜損傷に及ぼす影響を図1にまとめた。
同図より明らかなように、膜付Al量が100質量ppm未満でかつ膜付S量が40質量ppm以上の、本発明の条件を満足する範囲内では被膜損傷が生じておらず、膜付Al量または膜付S量のいずれか一方でも本発明の条件を満たしていない場合には、電子ビーム照射による被膜の剥落が生じていることが分かる。
なお、このうっすら見える条件の鋼板を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、照射部の面積に対して10%程度の被膜が剥落していることが分かった。
本発明は、上記したそれぞれの知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.電子ビーム照射による磁区細分化処理が施された方向性電磁鋼板であって、質量%でSi:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに、フォルステライト膜付鋼板の含有Al量が100質量ppm未満でかつ含有S量が40質量ppm以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
2.前記方向性電磁鋼板の電子ビーム照射領域におけるフォルステライト膜の剥落率が10%未満であることを特徴とする前記1に記載の方向性電磁鋼板。
3.前記1または2において、鋼板中に、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板。
4.質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%、Al:0.01%未満およびN:0.005%以下を含有し、さらにS、SeおよびOをそれぞれ50ppm未満とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブに、熱間圧延を施して熱延板とした後、一回の圧延によって最終板厚とし、次いで一次再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤を塗布して二次再結晶を行う最終仕上げ焼鈍を施し、さらに、最終仕上げ焼鈍後に電子ビーム照射による磁区細分化処理を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記電子ビーム照射前の鋼板に対して増硫処理を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記4において、鋼スラブ中に、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、電子ビーム照射後の被膜損傷を防止することができるため、電子ビームを用いた磁区細分化による鉄損低減効果を向上させることができる。それ故、より鉄損が低い方向性電磁鋼板を得ることが可能となる。
膜付Al量および膜付S量が電子ビーム照射の被膜損傷に及ぼす影響を示した図である。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の鋼板成分に関する「%」および「ppm」表示は、特に断らない限り質量%(mass%)または質量ppm(mass ppm)を意味する。
本発明では、電子ビーム照射による熱歪付与で磁区細分化処理を行うことから、前述したように、フォルステライトと鋼板との密着性を高めることが重要となるが、本発明の方向性電磁鋼板においては、フォルステライト膜付鋼板の含有S量と含有Al量、すなわち膜付S量を40ppm以上とし、かつ膜付Al量を100ppm未満と限定する。膜付S量が40ppm未満であったり、また膜付Al量が100ppm以上であったりする場合には、電子ビーム照射条件によっては、被膜損傷が生じ、再コーティング等の対処が必要となるからである。なお、以下、単にS量または、Al量といった場合は、膜付S量および膜付Al量を意味する。
Al量の下限は、製鋼成分に依存するので特に設けないが、少ないほど良く、0ppmでも構わない。また、S量の上限については、大きいほど電子ビーム照射に対しては有利となるものの、二次再結晶焼鈍中に形成されるフォルステライト膜の形成に対しては、増硫し過ぎると、追加酸化がすすんで被膜品質が劣化するため、400ppm程度が望ましい。
ここに、電子ビーム照射における被膜密着性に対し、SやAlの添加効果は明らかとはなっていないものの、密着性の向上、フォルステライトあるいは地鉄中における電子線の吸収性、フォルステライト膜の強度向上など、多数の複雑な因子の組合せによる影響が考えられ、単純に、被膜界面における密着強度の増加だけの効果ではないと推定している。
次に、本発明に従う方向性電磁鋼板の成分に関する重要点について述べる。
本発明の溶鋼成分については、鋼溶製時にAlを0.01%未満に抑制する。電子ビーム照射による被膜損傷抑止の観点から、Alの添加量は以後の工程で低減するのが困難であるからである。
Nについては、以後の工程で除去可能であるものの、多すぎると除去に時間やコストがかかってしまうために、0.005%以下に限定する。
Cは、0.08%を超えると製造工程中に磁気時効の起こらない50ppm以下までにCを低減することが困難になるため、0.08%以下とする。
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素であるものの、含有量が2.0%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、8.0%を超えると加工性が著しく低下し、また磁束密度も低下するため、Si量は2.0〜8.0%の範囲とする。
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005%未満であると添加効果がなく、一方1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、0.005〜1.0%の範囲とする。
先に述べたように、本発明では、Alの添加量を低減しているため、AlNを主体とするインヒビタの活用はない。このような場合、磁束密度の高い方向性電磁鋼板を得るためには、S:50ppm(0.005%)以下、Se:50ppm(0.005%)以下とするのが好ましい。これは、強い抑制力を発揮するインヒビタ成分が含まれていない鋼成分系では、不純物による一次再結晶における粒成長性への影響が大きいためである。
Sは、電子ビーム照射による被膜損傷の観点からは、多いほど好ましいが、上記理由により製鋼段階から添加すべきではなく、電子ビーム照射処理前に鋼板に対して増硫処理を施して増加させることが重要である。
本発明では、上記の成分以外に、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を適宜含有させることができる。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用な元素である。しかしながら、0.03%未満では磁気特性の向上効果が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、Ni量は0.03〜1.50%とする。
また、Sn、Sb、Cu、P、MoおよびCrは、それぞれ磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれも上記した各成分の下限に満たないと、磁気特性の向上効果が小さく、一方、上記した各成分の上限量を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害されるため、含有させる場合は、それぞれSn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%の範囲で含有させる必要がある。
上記成分以外の残部は、不可避的不純物およびFeとする。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記した好適成分の組成範囲に調整した鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱したのち、熱間圧延に供する。なお、スラブを再加熱する場合には、再加熱温度は1000℃以上1300℃以下程度とすることが望ましい。
前述したように、電子ビーム照射による被膜損傷抑止の観点から、Al添加量は、以後の工程で低減するのが困難であるので、Alを0.01%未満としている。従って、AlNをインヒビタとして利用することはできないので、高温加熱により完全固溶させる必要がない。また、MnSについても同様に、S量を50ppm以下とした場合には、インヒビタとしては利用できないので、高温加熱の必要はない。
次いで、上記熱間圧延により製造された熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回の冷間圧延を施して、最終冷延板とする。この冷間圧延は、常温で行ってもよいし、常温より高い温度たとえば250℃程度に鋼板温度を上げて圧延する温間圧延としてもよい。特に、本発明のように、インヒビタを含まない成分系では中間焼鈍を挟む2回冷延法より、1回冷延法の方が二次再結晶には有利と言われている。
次いで、最終冷延板に一次再結晶焼鈍を施す。この一次再結晶焼鈍の第一の目的は、圧延組織を有する冷間圧延板を一次再結晶させて、二次再結晶に最適な一次再結晶粒径に調整することである。そのためには、一次再結晶焼鈍の焼鈍温度は、800℃以上950℃未満程度とすることが望ましい。第二の目的は、脱炭である。製品板中に炭素が50ppm以上含まれると、鉄損が劣化するからである。なお、この時の焼鈍雰囲気は、湿水素窒素あるいは湿水素アルゴン雰囲気とすることが望ましい。
上記一次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。次いで行われる二次再結晶焼鈍の後の鋼板表面に、フォルステライト被膜を形成するためには、焼鈍分離剤の主剤をマグネシア(MgO)とする必要がある。なお、主剤とは、焼鈍分離剤中、50%以上の存在比率で存在することを言う。
その後、二次再結晶焼鈍(最終仕上げ焼鈍)を行う。この二次再結晶焼鈍により、ゴス方位に高度に集積した結晶組織となり、良好な磁気特性が得られる。
さて、本発明では、電子ビーム照射による被膜損傷抑止の観点から、電子ビーム照射前に膜付S量を増加させる必要がある。S量を増加させる方法としては、以下のように多様な手法がある。
例えば、連続処理の観点からは、H2Sガス中で焼鈍処理を行うガス増硫法が有利である。この場合キャリアガスとしては、H2かNH3分解ガスが用いられる。ここに、FeとH2Sは極めて反応しやすいため、低温でも硫化鉄を生成して増硫作用が発現するため、増硫処理に適している。なお、NH3分解ガスをキャリアガスとして使用すると、増硫とともに窒化も起こってしまうが、本発明では、Al量を100ppm未満としているため、インヒビタと効果を発現するのに十分なAlNは生成しない。
また、NaOH水溶液にS粉末を添加した水溶液に浸漬する方法や、チオ硫酸ナトリウムとホウ酸の水溶液で鋼板を陰極として電解する方法も有効である。さらに、塩浴を用いることも可能である。この時、中性浴としては、硫酸ナトリウム中にS化合物を添加したり、還元浴としては、シアン化ナトリウムやシアン化カリウムにS化合物を添加したりした塩浴が用いられるが、後者は前述のガス増硫法と同様、同時に窒化反応が起こるが、上述したように問題はない。なお、いずれも連続処理となるため、鋼板への増硫量を均一化することができる。
さらには、一次再結晶焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤中に、硫酸塩や硫化物を徴量添加する方法も挙げられる。また、平坦化と絶縁コーティング形成を兼ねた焼鈍中にSを含む雰囲気ガスを混合することも可能である。
いずれにせよ上記の増硫処理により膜付S量を40ppm以上とすることが肝要である。
なお、焼鈍分離剤中に硫酸塩や硫化物を添加する場合には、Ag,Al,Ba,Ca,Co,Cr,Cu,Fe,In,K,Li,Mg,Mn,Na,Ni,Sn,Sb,Sr,ZnおよびZrの硫酸塩または硫化物のうちから選ばれる一種または二種以上とすることが好ましい。
また、二次再結晶焼鈍においては、焼鈍雰囲気は、N2,Arあるいはこれらの混合ガスのいずれもが適合する。ここで、二次再結晶後の純化のためにはH2が必要となる一方で、増硫処理を行ったにもかかわらず、電子ビーム照射前に、二次再結晶焼鈍中にH2Sが生成し、膜付S量を低下させて、必要量が確保できなくなるおそれがあるので、純化焼鈍までは、H2を雰囲気ガスとして使用しないことが望ましい。
一般に、方向性電磁鋼板は、積層して使用されるため層間絶縁のための絶縁層が必要である。追加で施される絶縁コートとしては、方向性電磁鋼板に、一般的に使用される無機質コートが利用可能である。特に、張力付与効果を有するコーティングは、低鉄損化を達成するために、鋼板表面を平滑化した方向性電磁鋼板との組合せが極めて有効である。張力付与型コーティングの種類としては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが有効で、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられているリン酸塩-コロイダルシリカ-クロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から好適である。また、コーティングの厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から0.3μm以上10μm以下程度の範囲が好ましい。
張力コーティングとしては、これ以外にも特許文献6、特許文献7および特許文献8などで提案されているホウ酸-アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
本発明で電子ビームを照射する場合、その照射条件に特段の制約はない、すなわち、従来公知の電子ビーム照射による磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法を適用すればよい。
具体的には、照射方向を板幅方向(圧延直角方向から30°以内の方向)として行ない、照射位置でのビーム径を0.05〜1mmの範囲に収束させ、電子ビームの出力は10〜2000W、走査速度は1〜100m/sの範囲として、さらに単位長さ当たりの出力が1〜50J/mの範囲になるように調整し、圧延方向に1〜20mm間隔で施すことが好ましい。
〔実施例1〕
表1に示される鋼No.1〜4の成分組成になるスラブを、1200℃に加熱したのち熱間圧延し、2.1mm厚みの熱延コイルとした。次に、この熱延コイルを1000℃で焼鈍した後、酸洗し、120℃の温度でタンデム圧延機により0.27mm厚みに仕上げた。脱脂処理後、850℃の湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を施し、さらに、580℃の50%NH3、0.02%H2S、残部プロパンと空気よりなる混合ガス雰囲気中で増硫処理を行った。その際、処理時間を変化させて膜付S量を制御した。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布後、1050℃までの昇温はN2雰囲気、1200℃の温度保持はH雰囲気で、最終仕上げ焼鈍を行った。その後、未反応分離剤を除去してから、コロイダルシリカとリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを800℃で形成した。さらに、磁区細分化処理として、ビーム径:200μm、加速電圧:60kV、スキャン速度:30m/sで圧延方向と直角に5mm間隔の諸条件で電子ビームを照射した。その際、目視にて、電子照射部における被膜剥落率を判定した。
かくして得られた製品より、圧延方向に沿ってエプスタインサイズの試験片を切り出し、1.7Tの磁束密度における50Hz交流励磁での鉄損値W17/50および磁束密度B8を測定した。
表2に、膜付鋼板の成分組成と得られた磁気特性、被膜剥落率をまとめて表示する。
表2から明らかなように、本発明条件を満たす条件B、Eでは、目視による被膜剥落は見られず、良好な外観を示した。これに対して、膜付S量が40ppm未満あるいは膜付Al量が100ppmより大きな条件では、いずれも被膜剥落が認められた。
〔実施例2〕
前記表1に示された鋼No.5〜15の成分組成のスラブを、1200℃に加熱したのち熱間圧延し、2.2mm厚みの熱延コイルとした。次いで、熱延コイルを1100℃で焼鈍した後、酸洗し、120℃の温度でタンデム圧延機により0.23mm厚みの冷延鋼板に仕上げた。かかる冷延鋼板を脱脂処理後、850℃の湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を施し、MgO:100質量部に対し、硫酸マグネシウムを5〜15質量部添加、あるいは無添加としたMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した。次いで、1075℃までの昇温をArとN2の混合雰囲気、1200℃の温度保持はH雰囲気で、最終仕上げ焼鈍を行った。その後、未反応分離剤を除去してから、コロイダルシリカとリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを800℃で形成した。次いで、磁区細分化処理として、ビーム径:150μm、加速電圧:60kV、スキャン速度:24m/sで圧延方向と直角に6mm間隔の諸条件で電子ビームを照射した。その際、目視にて、電子照射部における被膜剥落率を判定した。
かくして得られた製品より、圧延方向に沿ってエプスタインサイズの試験片を切り出し、1.7Tの磁束密度における50Hz交流励磁での鉄損値W17/50および磁束密度B8を測定した。
表3に、膜付鋼板の成分組成と得られた磁気特性、被膜剥落率をまとめて表示する。
同表から明らかなように、本発明条件を満たす条件I、N、Q〜Wでは目視での被膜剥落が見られず、良好な外観を示した。これに対し、膜付S量が40ppm未満あるいは膜付Al量が100ppmより大きな条件では、いずれも被膜剥落が見られた。なお、条件J、Mは硫酸マグネシウムを添加していないため、増硫処理はなされていない。

Claims (4)

  1. 磁区細分化のための電子ビーム照射領域を有する方向性電磁鋼板であって、質量%でSi:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに、フォルステライト膜付鋼板の含有Al量が100質量ppm未満でかつ含有S量が40質量ppm以上であり、該電子ビーム照射領域におけるフォルステライト膜の剥落率が10%未満で、かつ鉄損W 17/50 が板厚0.23mmで0.75W/kg以下、板厚0.27mmで0.86W/kg以下であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
  2. 請求項1において、鋼板中に、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板。
  3. 請求項1に記載の方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
    質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%、Al:0.01%未満およびN:0.005%以下を含有し、さらにS、SeおよびOをそれぞれ50ppm未満とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブに、熱間圧延を施して熱延板とした後、一回の圧延によって最終板厚とし、次いで一次再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤を塗布して二次再結晶を行う最終仕上げ焼鈍を施し、さらに、最終仕上げ焼鈍後に電子ビーム照射による磁区細分化処理を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記電子ビーム照射前の鋼板に対して増硫処理を施して、フォルステライト膜付鋼板の含有S量を40質量ppm以上とし、さらに該電子ビーム照射領域におけるフォルステライト膜の剥落率が10%未満で、かつ鉄損W 17/50 が板厚0.23mmで0.75W/kg以下、板厚0.27mmで0.86W/kg以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項3において、鋼スラブ中に、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.01〜1.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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