JP4784347B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4784347B2
JP4784347B2 JP2006062023A JP2006062023A JP4784347B2 JP 4784347 B2 JP4784347 B2 JP 4784347B2 JP 2006062023 A JP2006062023 A JP 2006062023A JP 2006062023 A JP2006062023 A JP 2006062023A JP 4784347 B2 JP4784347 B2 JP 4784347B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
annealing
steel sheet
less
concentration
oriented electrical
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006062023A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007239009A (ja
Inventor
誠 渡辺
俊人 高宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2006062023A priority Critical patent/JP4784347B2/ja
Publication of JP2007239009A publication Critical patent/JP2007239009A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4784347B2 publication Critical patent/JP4784347B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を低コストで得ようとするものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、最終仕上焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)〔001〕方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
従来、このような方向性電磁鋼板は、Siを4.5 mass%以下で含有し、かつMnS,MnSe,AlNなどのインヒビター成分を含有する鋼スラブを、1300℃以上に加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施して一次再結晶および脱炭を行い、マグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
米国特許第1965559号明細書 特公昭40-15611号公報 特公昭51-13469号公報
上記した従来の方向性電磁鋼板では、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビター成分)をスラブ段階で含有させ、1300℃を超える高温スラブ加熱により、これらのインヒビター成分を一旦固溶させ、その後の工程で微細に分散析出させることにより、二次再結晶を発現させる工程を採用していた。
このように、従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が不可欠であったため、その製造コストは極めて高いものにならざるを得なかった。すなわち、スラブにインヒビター成分を含有させる従来の方向性電磁鋼板では、その製造工程において高温のスラブ加熱が必要であったため、近年の製造コスト低減の要求には応えることができなかった。
ところで、最近、発明者らは、ゴス方位粒の二次再結晶の本質は、一次再結晶組織の制御にあり、インヒビター成分の有無は、一次再結晶組織制御を通して間接的に二次再結晶に作用しているものであり、二次再結晶の発現そのものには直接的には無関係であることを解明した(例えば特許文献4)。
特開2000-129356号公報
その結果、インヒビター成分の添加ひいてはそれを固溶させるための高温でのスラブ加熱が不要となり、低コストで方向性電磁鋼板を製造することが可能となった。
しかしながら、上記したようなインヒビター成分を含有させない方向性電磁鋼板の製造技術の実用化が進むにつれて、被膜が従来よりも劣るという問題が新たに発生してきた。これは、鋼中の微量含有分が従来鋼とは異なるため、特異な被膜形成挙動を示し、従来どおりの製造条件では被膜形態が不良となるためと考えられた。
従来の被膜改善の考え方としては、脱炭焼鈍により形成されるサブスケールを改善する方法や、焼鈍分離剤の主剤に用いられるMgOや副剤等の各種添加物を改善する方法のほかに、特許文献5〜9に見られるような、中間焼鈍で生成する脱珪層や残存スケールを所定の範囲以下に制御する方法など様々な手段で解決が図られてきたが、未だ十分な被膜特性は得られていない。
特開平7-188757号公報 特開平9-143562号公報 特開平10-199536号公報 特開平11-140546号公報 特開平10-8133号公報
本発明は、上記したインヒビター成分を含有しない方向性電磁鋼板(以下、インヒビターレス方向性電磁鋼板と呼ぶ)の製造技術の改良に係るもので、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
さて、発明者らは、インヒビターレス方向性電磁鋼板に関し、被膜を改善するための方法について鋭意検討を行った結果、一次再結晶焼鈍前の鋼板表面の元素濃度分布の微妙な変化によって、被膜特性が大きく変化することを新たに見出した。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:1.0〜5.0%、
Mn:0.5%以下および
Cr:0.01%以上 0.2%以下
を含有し、かつ
S,Se,Oをそれぞれ50ppm未満、
sol.Alを100ppm未満および
Nを60ppm未満
に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延後、熱延板焼鈍を施し、ついで1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍ついで二次再結晶焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
一次再結晶焼鈍前の鋼板の最表面のCr濃度が地鉄中のCr濃度の0.5〜0.8倍となるように表面のCr濃度を調整することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
なお、ここで、鋼板の最表面と地鉄部のCr濃度とはそれぞれ、表面をGDSで深さ方向分析したときの最表面でのCrピーク強度と、スパッタ時間:100〜150秒間のCrピーク強度の平均値で定義するものとする。
(2)前記(1)において、鋼板が、さらに質量%で、Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Te:0.003〜1.50%、Bi:0.003〜1.50%、Pb:0.003〜1.50%およびCu:0.01〜0.3%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、インヒビターレス方向性電磁鋼板の製造に際し、一次再結晶焼鈍前の鋼板最表面のCr濃度を適正に調整することにより、従来よりも被膜特性を格段に向上させることができる。
以下、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03%、Si:3.0%、Mn:0.10%、S:40ppm、Se:2ppm、Cr:0.01%、0:10ppm、N:25ppmおよびsol.Al:20ppmを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延により板厚:2.0mmの熱延板とし、ついで1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施したのち、濃度:5%、温度:80℃の塩酸を用いて60秒または150秒の2条件で酸洗を行い表面スケールを除去した。その後、板厚:0.27mmまで冷間圧延し、850℃、100秒の脱炭・一次再結晶焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃、10hの二次再結晶焼鈍を施した。ついで、残留焼鈍分離剤を除去後、絶縁コーティング処理液を塗布し、焼付けとヒートフラットニング処理と兼ねて850℃,30秒の焼鈍を行い、最終製品とした。
このようにして得られた製品の被膜密着性を、サンプルを円筒状の棒に巻きつけて被膜が剥離しなかった最小の曲げ径により評価した。
その結果、酸洗時間が短い条件では剥離径が20mmφと良好であったのに対し、酸洗時間が長い条件では50mmφと著しく劣化することが判明した。
従来の冷延工程と被膜特性との関連に関する知見では、例えば特許文献5に記載されているように、中間焼鈍により生成される脱珪層が被膜に影響を及ぼすことや、特許文献7に記載されているように、中間焼鈍により生成されるスケールが被膜に悪影響を及ぼすことが知られていた。
そこで、GDSで深さ方向分析を行うことにより、これらの点を確かめた。
すなわち、上記した2条件で処理した一次再結晶焼鈍前のサンプルについて、脱珪層の評価成分としてのSi濃度および脱スケール層の評価成分としてのO濃度を測定した。
得られた結果を図1(a),(b)に示す。
図1(a),(b)から明らかなとおり、酸洗時間を変更することによる脱珪層の変化はほとんど認められなかった。これは、今回の実験では熱延板焼鈍後に高圧下率で圧延しているため、熱延板焼鈍で生成した脱珪層がほとんど問題とならない程度まで薄くなったものと考えられる。また、脱スケール層については、酸洗時間が長い方が少なくなるはずであるが、それにもかかわらず被膜は劣化するという従来とは異なる結果となった。
従って、従来の知見では今回の実験結果を説明できないことから、他の元素のプロファイルについても調査した。
その結果、図2(a),(b)に示すように、Crが酸洗時間の影響を受けており、Crは最表面で濃度が低下する傾向にあるものの、酸洗時間が長いとこの低下が小さくなることが認められた。
以上の結果から、最表面のCr濃度が被膜の良否に影響を及ぼしているのではないかと考えられたので、次にこれを確認する実験を行った。
前記と同じ成分組成になる鋼スラブを、熱間圧延により板厚:2.0mmの熱延板とし、ついで1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施したのち、濃度:7%の硫酸を用いて温度:40〜90℃、時間:10〜150秒の各種条件で酸洗を行うことにより表面スケールを除去した。その後、板厚:0.27mmまで冷間圧延し、850℃、100秒の脱炭・一次再結晶焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤を塗布し、1200℃、10hの二次再結晶焼鈍を施した。その後、残留焼鈍分離剤を除去したのち、絶縁コーティング処理液を塗布し、焼付けとヒートフラットニング処理と兼ねて850℃30秒の焼鈍を行い、最終製品とした。また、同時に、一次再結晶焼鈍前の鋼板についてGDSで深さ方向分析を行い、最表面のCr濃度を測定した。
図3に、最表面のCr濃度と製品の被膜密着性との関係について調べた結果を示す。なお、同図において、横軸は、最表面のCr濃度と地鉄部の濃度の比で示す。
同図から明らかなとおり、最表面のCr農度が地鉄中のCr濃度の0.5〜0.8倍の範囲を満足する場合に、優れた被膜密着性が得られることが分かる。
上記のような結果が得られた理由については、まだ明確に解明されたわけではないが、発明者らは、次のように考えている。
すなわち、Crの被膜に及ぼす影響としては、一次再結晶焼鈍後に形成されるサブスケール中にスピネルを形成させて仕上焼鈍後のフォルステライト被膜のアンカーを発達させることが知られている。従って、このCrを、意図的に添加して鋼中に存在させ、これを利用することによりフォルステライト被膜の形態が適正化され、良好な被膜特性を得ることができるものと考えられる。このようなCrの効果は、いずれも鋼板表面から数μm内部の、サブスケールやフォルステライト被膜と地鉄との界面に主に作用するものであり、この深さの領域で適量のCr濃度を持つことが重要である。
一方、鋼板最表層では、Crは酸化を促進する作用があるが、今回のようなインヒビターを含まない系では、SやAlなどの酸化を抑制する効果をもつ元素が存在しないために、鋼板内部への酸化が進行し易く、その結果、従来鋼よりも膜厚が厚く、酸化物がデンドライト状に発達した耐追加酸化性の低いサブスケールが形成される。このようなサブスケールの場合、得られるフォルステライト被膜は分厚く平坦な構造となるが、これが剥離することにより被膜欠陥が発生し易くなる。
従って、このような内部への酸化を抑制するために、最表面のCr濃度を低下させることが有効なのである。
なお、前掲した特許文献5〜9には、中間焼鈍後の表層残存スケール量や脱珪層の厚みを特定する技術が示されているが、熱延板焼鈍の表面状態が被膜に及ぼす影響についての知見は今までなかった。すなわち、中間焼鈍後の冷延圧下率は比較的低いために、中間焼鈍で生成するスケールや脱珪層は脱炭焼鈍前にも影響を及ぼすことが知られていたが、熱延板焼鈍後は冷延圧下率が高いために脱珪層や残存スケールが存在しても冷延後には無視できる程度に薄く延ばされてしまい、サブスケール形成には影響しないと考えられてきた。
しかしながら、今回の実験で、熱延板焼鈍や熱延で生成されるスケールが脱炭焼鈍前まで残存してサブスケール形成に影響を与えること、また熱延板焼鈍後の酸洗条件により、被膜の良否が変化すること、がはじめて解明されたのである。
以下、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に関して、本発明の効果を得るための要件とその範囲および作用について述べる。
まず、本発明において、鋼スラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.01〜0.10%
Cは、変態を利用して熱延組織を改善するのに有効に寄与するだけでなく、ゴス方位結晶粒の発生にも有用な元素であり、0.01%以上の含有を必要とするが、0.10%を超えると効果が強くなりすぎて却って集合組織が劣化してしまうため、Cは0.01〜0.10%の範囲に限定した。
Si:1.0〜5.0%
Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低下させるだけでなく、鉄のα相を安定化させて高温の熱処理を可能とするために必要な元素であり、少なくとも1.0%を必要とするが、5.0%を超えると冷延が困難となるので、Siは1.0〜5.0の範囲に限定した。
Mn:0.5%以下
Mnは、製造時の熱間加工性を向上させる効果がある。この目的のためには、少なくとも0.01%のMnを含有させることが好ましいが、0.5%を超えて含有させた場合には、一次再結晶集合組織が劣化し、Goss方位に高度に集積した二次再結晶粒が得られず、磁気特性が劣化するため、上限を0.5%とした。
Cr:0.01%以上 0.2%以下
本発明では、被膜形成に関与する元素としてCrを含有させるが、含有量が0.01%に満たないと被膜の改善効果に乏しく、一方0.2%を超えると磁束密度の低下を招くので、Crは 0.01%以上 0.2%以下の範囲に限定した。
本発明ではインヒビターを使用しないので、インヒビター構成成分であるS,Se,Oやsol.Al,Nなどの各元素は含有させる必要がない。従って、それぞれ以下の範囲に制限した。
S, Se, O:各々50ppm未満
S, Se, Oがそれぞれ、50ppm以上含有された場合、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化する。そのため、これらの元素は、50ppm未満に低減するものとした。
sol.Al:100ppm未満
Alは、過剰に存在すると二次再結晶が困難となる。特にsol.Alが100ppm以上になると二次再結晶が生じ難くなり、磁気特性が劣化するため、sol.Alは100ppm未満に抑制する必要がある。
N:60ppm未満
また、Nが60ppm以上含有された場合も、 同様に二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化する。そのため、N含有量は60ppm未満に制限する。
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明ではその他にも、集合組織を改善して磁気特性を向上させる観点から、以下の元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.01〜1.50%
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Niは0.01〜1.50%の範囲で含有させることが好ましい。
Sn:0.01〜0.50%
Snは、磁気特性の向上・安定化作用を有する元素であるが、含有量が0.01%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、Sn量は0.01〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Sb:0.005〜0.50%
Sbは、最終仕上焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を向上させる有用元素である。そのためには、0.005%以上含有させることが望ましい。一方、Sbが0.50%を超えて含有されると、冷間圧延性が劣化するため、Sbは0.50%を上限として含有させることが望ましい。
P:0.005〜0.50%
Pは、粒界偏析により冷延−再結晶後の集合組織を改善して磁束密度を向上させる働きがある。しかしながら、含有量が0.005%未満では十分な効果が得られず、一方0.50%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、P量は0.005〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Te:0.003〜1.50%、Bi:0.003〜1.50%、Pb:0.003〜1.50%
Te,BiおよびPbはそれぞれ、粒界に偏析して一次再結晶組織を改善させる働きがあるが、そのためには、0.003%以上含有させることが望ましい。一方、それぞれが1.50%を超えて含有されると、熱間加工性が損なわれるため、1.50%を上限として含有させることが望ましい。
Cu:0.01〜0.3%
Cuは、最終仕上焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を向上させる有用元素である。そのためには、0.01%以上含有させることが望ましい。一方、Cuが0.3%を超えて含有されると、熱間圧延性が劣化するため、Cuは0.3%を上限として含有させることが望ましい。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記の好適成分組成範囲に調整したスラブを、通常の造塊法、連続鋳造法で製造する。また、100 mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。
次に、スラブを加熱したのち、熱間圧延により熱延板とする。
ついで、熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延により最終板厚に仕上げる。ここで、熱延板焼鈍は、800〜1100℃で1〜120秒程度とすることが好ましい。この熱板焼鈍は、コイル長手方向での磁気特性を均一化させる働きがあるが、800℃未満または1秒未満ではその効果がなく、一方1100℃超または120秒超では粒径が大きくなりすぎて、その後の冷延性を損ねる。
ついで、一次再結晶焼鈍を施すが、本発明では、この一次再結晶焼鈍前における鋼板の最表面のCr濃度が地鉄中のCr濃度の0.5〜0.8倍となるように表面のCr濃度を調整することが肝要である。ここに、表面のCr濃度が地鉄の0.8倍よりも高いと一次再結晶焼鈍中に鋼板表面の酸化が進行しすぎ厚膜となって被膜劣化を生じ、一方表面のCr濃度が地鉄の0.5倍よりも低いと一次再結晶焼鈍中に鋼板表面の酸化が抑制されすぎ薄膜となって、やはり被膜劣化を生じる。
本発明において、鋼板表面のCr濃度を調整する方法としては、熱延板焼鈍後のスケール除去をリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、もしくはこれらの混酸を用いて酸洗することによる化学的研削方法、もしくはショットブラスト、エアブラスト、グラインダ砥石、バフロール、ベルトサンダーによる機械研削方法、あるいはこれらを併用する方法により行うことができる。熱延板焼鈍でCrが表面に拡散して酸化される結果、脱Cr層ができるが、酸化物を除去する一方脱Cr層は除去されない程度に研磨を行う。
一次再結晶焼鈍における均熱領域の温度は750〜950℃が好ましい。950℃を超えると一次再結晶粒の粒成長が進行しすぎて二次再結晶不良となり、一方750℃未満では逆に一次再結晶粒の粒成長が進まずに二次再結晶粒方位が不安定になる原因となる。また、均熱時間は20〜240sとすることが好ましい。20s未満では一次再結晶不良となり、240sを超えると一次再結晶粒成長が進行していずれも磁気特性劣化の要因となる。さらに、焼鈍時の雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2)は0.15〜0.75とすることが好ましい。0.15未満では良好な酸化膜が得られず被膜が劣化し、0.75超ではFeOを主体とする過酸化な膜が形成されやはり被膜が劣化する。
一次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布する。焼純分離剤の主剤には少なくとも50%以上のマグネシアを用いる。焼鈍分離剤の添加剤としては、公知の添加剤として、TiO2や、Mg,Sr,Sb,Cu,Zn等の硫酸塩、Li,Na等のホウ酸塩、その他水酸化物、塩化物など様々な化合物が用いられるが、本発明ではこれらを用いることも可能である。これらの化合物の添加量としてはマグネシア:100質量部に対して0.5〜15質量部程度とするのが好適である。その他、焼鈍分離剤の塗布量や水和量は、従来通り、5〜15g/m2(両面)、0.5〜5%程度でよい。
焼鈍分離剤を塗布したのち、最終仕上焼鈍を施すが、これについては特に制限はなく、公知の方法に従えばよい。
最終仕上焼鈍の後、必要に応じて張力付与コーティングや絶縁コーティングを鋼板表面に焼き付けたのち、平坦化焼鈍を施して製品とする。
また、磁区細分化による鉄損低減を目的として、平坦化焼鈍後の鋼板にプラズマジェットやレーザー照射を線状に施したり、突起ロールによる線状に凹みを設けたりする処理や最終冷延後にエッチングなどにより圧延方向とほぼ直行する溝を形成させる処理を施すこともできる。
さらに、最終仕上焼鈍後、ゾルゲル法やTiN蒸着など公知の方法で張力被膜を形成させる技術を組み合わせることも鉄損低減のために有効である。
実施例1
C:0.06%、Si:3.35%、Mn:0.07%およびCr:0.01%を含有し、かつSを30ppm、Seを1ppm、Oを10ppm、Alを50ppmおよびNを35ppmに抑制し、残部はFeおよび不可避混入不純物の組成になる珪素鋼スラブ(鋼種A)およびC:0.06%、Si:3.25%、Mn:0.06%、Cr:0.07%およびCu:0.01%を含有し、かつSを20ppm、Seを2ppm、Oを12ppm、Alを20ppmおよびNを29ppmに抑制し、残部はFeおよび不可避混入不純物の組成になる珪素鋼スラブ(鋼種B)をそれぞれ、ガス加熱炉に装入して1230℃まで加熱し、60分保定後、熱間圧延により2.0mm厚の熱延板としたのち、1000℃,1分の熱延板焼鈍を施した。
ついで、表1に示す各種の条件でスケールを除去したのち、冷間圧延をにより0.30mmの最終板厚に仕上げ、ついで酸化性がP(H2O)/P(H2)=0.40の雰囲気中にて850℃,100秒間で脱炭焼鈍したのち、MgO:100質量部、TiO2:2質量部、水酸化ストロンチウム:3質量部の組成の焼鈍分離剤を、鋼板両面当たりの塗布量で14g/m2塗布してから、コイルに巻き取り、最終仕上焼鈍を行った。
その後、未反応の焼鈍分離剤を水洗により除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーティング液を塗布し、平坦化焼鈍の後、製品とした。
かくして得られた製品の外観、曲げ密着性、磁束密度B8および鉄損W17/50について調査した結果を、表2に示す。
なお、曲げ密着性は、サンプルを円筒状の棒に巻きつけて被膜が剥離しなかった最小の曲げ径により評価した。また、磁束密度B8および鉄損W17/50はエプスタイン試験法により測定した。
Figure 0004784347
Figure 0004784347
同表に示したとおり、本発明に従い、一次再結晶焼鈍前の鋼板最表面のCr濃度を適正に調整したものはいずれも、磁気特性に優れるのは勿論、優れた被膜特性を得ることができた。
実施例2
表3に示す種々の成分組成になる珪素鋼スラブを、ガス加熱炉に装入して1210℃まで加熱し、60分保定後、熱間圧延により2.0mm厚の熱延板としたのち、1000℃,1分の熱延板焼鈍を施した。
ついで、表1にNo.5で示す条件でスケールを除去したのち、冷間圧延により0.30mmの最終板厚に仕上げ、ついで酸化性がP(H2O)/P(H2)=0.46の雰囲気中にて850℃,120秒間で脱炭焼鈍したのち、MgO:100質量部、TiO2:2質量部、硫酸マグネシウム:3質量部の組成の焼鈍分離剤を、鋼板両面当たりの塗布量で13g/m2塗布してから、コイルに巻き取り、最終仕上焼鈍を行った。
その後、未反応の焼鈍分離剤を水洗により除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーティング液を塗布し、平坦化焼鈍の後、製品とした。
かくして得られた製品の外観、曲げ密着性、磁束密度B8および鉄損W17/50について調査した結果を、表3に併記する。
なお、曲げ密着性は、サンプルを円筒状の棒に巻きつけて被膜が剥離しなかった最小の曲げ径により評価した。また、磁束密度B8および鉄損W17/50はエプスタイン試験法により測定した。
Figure 0004784347
同表に示したとおり、本発明の成分組成範囲を満足し、かつ一次再結晶焼鈍前の鋼板最表面のCr濃度を適正に調整したものはいずれも、磁気特性だけでなく被膜特性に優れた製品が得られている。
酸洗時間を変更して脱スケール処理したときの一次再結晶焼鈍前の鋼板中のSi,OをGDS測定したときの深さ方向分析結果を示す図である。 酸洗時間を変更して脱スケール処理したときの一次再結晶焼鈍前の鋼板中のCrをGDS測定したときの深さ方向分析結果を示す図である。 一次再結晶焼鈍前の鋼板の最表面の地鉄部のCr濃度比と被膜密着性との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.10%、
    Si:1.0〜5.0%、
    Mn:0.5%以下および
    Cr:0.01%以上 0.2%以下
    を含有し、かつ
    S,Se,Oをそれぞれ50ppm未満、
    sol.Alを100ppm未満および
    Nを60ppm未満
    に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延後、熱延板焼鈍を施し、ついで1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍ついで二次再結晶焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    一次再結晶焼鈍前の鋼板の最表面のCr濃度が地鉄中のCr濃度の0.5〜0.8倍となるように表面のCr濃度を調整することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 請求項1において、鋼板が、さらに質量%で、Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Te:0.003〜1.50%、Bi:0.003〜1.50%、Pb:0.003〜1.50%およびCu:0.01〜0.3%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2006062023A 2006-03-08 2006-03-08 方向性電磁鋼板の製造方法 Expired - Fee Related JP4784347B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006062023A JP4784347B2 (ja) 2006-03-08 2006-03-08 方向性電磁鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006062023A JP4784347B2 (ja) 2006-03-08 2006-03-08 方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007239009A JP2007239009A (ja) 2007-09-20
JP4784347B2 true JP4784347B2 (ja) 2011-10-05

Family

ID=38584833

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006062023A Expired - Fee Related JP4784347B2 (ja) 2006-03-08 2006-03-08 方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4784347B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5287641B2 (ja) * 2009-09-28 2013-09-11 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
KR101223115B1 (ko) * 2010-12-23 2013-01-17 주식회사 포스코 자성이 우수한 방향성 전기강판 및 이의 제조방법
JP5691571B2 (ja) * 2011-01-31 2015-04-01 Jfeスチール株式会社 圧縮応力下での鉄損劣化の小さいモータコアとその製造方法
JP6205710B2 (ja) * 2012-10-31 2017-10-04 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5939156B2 (ja) * 2012-12-28 2016-06-22 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5954347B2 (ja) * 2013-03-07 2016-07-20 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2014198874A (ja) * 2013-03-29 2014-10-23 株式会社神戸製鋼所 耐食性と磁気特性に優れた鋼材およびその製造方法
KR101973305B1 (ko) * 2015-02-13 2019-04-26 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 방향성 전자 강판 및 그 제조 방법
WO2018110676A1 (ja) * 2016-12-14 2018-06-21 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007239009A (ja) 2007-09-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4784347B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2017006955A1 (ja) 方向性電磁鋼板とその製造方法
JP2006152387A (ja) 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板
JP6119959B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2009228117A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0885825A (ja) コイル全長にわたり磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法
JPH10152724A (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
CN115066508A (zh) 方向性电磁钢板的制造方法
JP5287641B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2003171718A (ja) 圧延面内での平均磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法
JP2004332071A (ja) 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法
JP4259037B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4239456B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4123679B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3885428B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3312000B2 (ja) 被膜特性および磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法
JPH02294428A (ja) 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造法
JP2724094B2 (ja) 方向性けい素鋼板の製造方法
JPH11241120A (ja) 均質なフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板の製造方法
JP3536812B2 (ja) 耳割れが少なくかつ被膜特性が良好な磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法
WO2022250160A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2022250161A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3357615B2 (ja) 極めて鉄損が低い方向性けい素鋼板の製造方法
JP2007262436A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2819994B2 (ja) 優れた磁気特性を有する電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110609

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110614

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110627

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4784347

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140722

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees