JP6204074B2 - アイシング用油脂組成物 - Google Patents
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Description
これらのアイシング材はパンや菓子の表面に塗布した当初は上記のように純白の艶のある外観であるが、空中の水分や、パンや菓子の水分からの吸湿により、砂糖の微結晶が溶解し、「泣き」という現象を生じ、べたつき、透明化や離水を起こす。
この点の改善については古くから研究されており、例えばガム質や乳化剤を添加する方法(たとえば特許文献1〜3参照)や、カルシウム塩類を添加する方法(たとえば特許文献4参照)や、水分含量を一定範囲とする方法(たとえば特許文献5参照)などの方法が提案されている。
ここで、アイシング材に対し高融点の油脂を添加することで、「泣き」が防止されることが広く知られている。
実際、特許文献1、5には、極度硬化油脂を使用することが記載されている。
しかし、高融点油脂の使用は、アイシング材の固化性を高めることにより「泣き」を防止しているため、経日的な吸湿による「泣き」の発生の防止には殆ど効果がなく、また、パンや菓子の表面に塗布する際に硬すぎた物性になってしまうなどの問題があることに加え、食感についても油性感が感じられてしまうという問題があった。
即ち、本発明は、下記の(1)〜(3)の全てを満たす油相を含有するアイシング用油脂組成物を提供するものである。
(1)エステル交換油脂を50〜100質量%含有する。
(2)トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%である。
(3)SFCが10℃で3〜35%、且つ、20℃で1〜20%である。
まず上記(1)の条件について述べる。
本発明のアイシング用油脂組成物は油相中にエステル交換油脂を50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは80〜99質量%含有する。
上記範囲でエステル交換油脂を含有することにより、トリグリセリド組成のランダム化が図れるため、エステル交換油脂の含有量が50質量%未満であると、トリグリセリド組成のランダム化が不十分なため、本発明の効果、特に経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。
上記エステル交換油脂の具体例としては、液状油と極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂、及び、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を挙げることができる。
本発明では、上記2種のエステル交換油脂の1種を使用してもよく、また2種を併用してもよい。
上記液状油としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等の常温(25℃)で液状の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂を分別することで得られた軟部油であって、常温で液状である油脂も使用することもできる。また、これらの油脂に対し、水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂についても、得られる加工油脂が常温で液状である範囲内において使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明では、上記液状油として、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等の常温で液状の油脂のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。
また、上記極度硬化油として、上記のようにして得られた極度硬化油を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
上記炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂としては、パーム油、或いはパーム油に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはパーム油及び/又はパーム分別硬部油を使用する。また、上記炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂としては、ハイエルシン菜種油、からし油、及びこれらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはハイエルシン菜種油を使用する。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
上記エステル交換油脂は、パーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する油脂配合物をエステル交換した油脂である。
ここで、上記油脂配合物に使用するパーム分別軟部油とは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することが、より経日的な吸湿による「泣き」の発生が抑制される点で好ましく、ヨウ素価54以上のパームオレインを使用することがより好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することが更に好ましい。
本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、ペニシリウム(Penicillium) 属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明のアイシング用油脂組成物はトリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%、好ましくは2〜6質量%である。
トリ飽和グリセリドの含有量が1質量%未満又は7質量%超であると、得られるアイシング材において、経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。また、7質量%を超えると、得られるアイシング材の物性や口溶けが悪化してしまう。
本発明のアイシング用油脂組成物はSFCが10℃で3〜35%、好ましくは4〜32%であり、且つ、20℃で1〜20%、好ましくは1〜15%である。
SFCが10℃で3%未満又は20℃で1%未満であると、経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。一方、SFCが10℃で35%を超える、及び/又は20℃で20%を超えると、得られるアイシング材において経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られないことに加え、物性や口溶けが悪化してしまう。
上記極度硬化油脂は、原料油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、最も好ましくは1未満となるまで水素添加し、実質的に構成成分である不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和することによって得られる油脂であって、その融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。
ただし、本発明のアイシング用油脂組成物では、上記その他の油脂として、上記の常温で液体である油脂を使用すると、特に30℃を超える環境において固液分離しやすくなるため、これについては使用しないことが好ましい。
また、本発明のアイシング用油脂組成物における水相含量は、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
油相含量が50質量%未満、すなわち水相成分が50質量%超であると、魚肉との混合時に水相が分離してしまうおそれがあり、また、得られる魚肉加工食品において油分分離やドリップが発生してしまう問題がある。
先ず、下記の(1)〜(3)の全てを満たす油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
(1)エステル交換油脂を50〜100質量%含有する。
(2)トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%である。
(3)SFCが10℃で3〜35%、且つ、20℃で1〜20%である。
次に、冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
本発明のアイシング材は、本発明のアイシング用油脂組成物を含有してなるものであり、食感及び物性が適切であり、かつ、経日的な吸湿による「泣き」が防止されているものである。
本発明のアイシング材における本発明のアイシング用油脂組成物の使用量は、アイシング材中に本発明のアイシング用油脂組成物が好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜7質量%となる量である。
〔製造例1〕エステル交換油脂Aの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、極度硬化油として、パーム油の極度硬化油と、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油とを50:50の質量比で混合した混合油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が24質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が30質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で15%、10℃で8%、20℃で3%、40℃で0%であり30℃において流動状であるエステル交換油脂Aを得た。
ヨウ素価65のパーム分別軟部油(パームスーパーオレイン)にナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×1102Pa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で39%、10℃で32%、20℃で16%、40℃で2%であり30℃において固体であり流動状を示さず融点が33℃であるエステル交換油脂Bを得た。
〔実施例1〕
エステル交換油脂A100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が2質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で8%、20℃で3%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
エステル交換油脂A99質量部、大豆極度硬化油脂1質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が3質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で9%、20℃で4%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
エステル交換油脂B100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が5質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で25%、20℃で16%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
エステル交換油脂B99質量部、大豆極度硬化油脂1質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が6質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で26%、20℃で17%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
大豆液状油97質量部及び大豆極度硬化油脂3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が3質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で4%、20℃で2%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
大豆極度硬化油脂をそのままアイシング用油脂組成物とした。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が100質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で100%、20℃で100%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
上記実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたアイシング用油脂組成物を使用し、下記の配合・製法でアイシング材を製造した。
得られたアイシング材は55℃においてクロワッサンに線描き塗布し、25℃4日保管後に「泣き」の状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価をおこない、その結果を表1に記載した。なお、絞る際の物性についても下記の評価基準にしたがって評価をおこない、その結果を表1に記載した。
水35質量部、グラニュー糖32質量部、及び、アイシング用油脂組成物5質量部を鍋に投入し、弱火で攪拌しながら加熱し、沸騰した時点で加熱を止め、粉糖100質量部を添加、5分間十分に混錬後55℃まで放冷し、袋に入れた。
※1:離水状況
◎:なし
○:わずかに見られた
△:部分的に見られた
×:全体的に見られた
◎:艶のある白色であった
○:わずかに透明化していた
△:部分的に透明化していた
×:殆ど白色部分がない
◎:油性感がなく口溶け良好
○:口溶け良好
△:やや油性感が感じられる
×:油性感があり口溶け不良
○:良好な物性であった。
△:やや硬い物性であった。
×:硬く絞るのに力を要し不良な物性であった。
Claims (4)
- 下記の(1)〜(3)の全てを満たす油相を含有するアイシング用油脂組成物であって、該組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸中、トランス脂肪酸含量が2質量%以下である、アイシング用油脂組成物。
(1)次のエステル交換油脂(A)又は(B)を50〜100質量%含有する。
(A)液状油と極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂
(B)パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂
(2)トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%である。
(3)SFCが10℃で3〜35%、且つ、20℃で1〜20%である。 - 上記エステル交換油脂のSFCが、10℃で3〜45%、且つ、20℃で1〜25%であることを特徴とする請求項1に記載のアイシング用油脂組成物。
- 上記パーム分別軟部油が、パームスーパーオレインであることを特徴とする請求項1又は2記載のアイシング用油脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアイシング用油脂組成物を含有することを特徴とするアイシング材。
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