JP4441372B2 - 高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents

高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ Download PDF

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Description

本発明は、建設機械および産業機械用などの用途に適用される高張力鋼板のガスシールドアーク溶接用ワイヤに関し、特に強度が引張強さTSで1200MPa以上、降伏応力YPで1100MPa以上、かつ、靭性が−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーvE−40で27J以上である溶接金属が得られる高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤに関する。
近年、建設機械および産業機械などにおいて鋼構造物の大型化や軽量化の要求が多くなるにともない、使用される鋼板の高張力化が進み、最近では引張強さTSが780MPa級以上の高張力鋼が一般的に使用されるようになり、今後は引張強さTSが950MPa以上、さらには引張強さTSが1200MPa以上の超高張力鋼の使用も増えてくると考えられる。また、鋼構造物用鋼板の強度として、引張強さTSと同様に降伏応力YPの向上も要求され、引張強さTSが950MPa以上の高張力鋼板に対して、降伏応力YPは850MPa以上、引張強さTSが1200MPa以上の高張力鋼板では、降伏応力YPで1100MPa以上であることが望まれている。
このような引張強さTSおよび降伏応力YPが高い高張力鋼板を溶接して鋼構造物を製造する場合には、高張力鋼板と同様に溶接継ぎ手部、特に溶接金属の引張強さTSおよび降伏応力YPの向上が要求される。通常の溶接鋼構造物の溶接部では溶接金属の強度は鋼板に対してオーバーマッチングになるように設計されることが多いため、溶接金属の強度は、少なくとも鋼板の強度以上とする必要がある。また、鋼構造物の用途によっては、溶接金属の高強度化と同時に低温靱性も要求される。
引張強さTSが950MPa級以上、さらには、1200MPa以上の高張力鋼板を用いて高強度・高靱性の健全な溶接継手を作製するためには、その溶接方法は限定される。
このような引張強さTSの高い高張力鋼板を溶接する場合には、溶接金属において低温割れの発生が懸念されるため、溶接金属中の水素量を低減でき、かつ、高強度・高靱性の溶接継手を得ることができる、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接(Ar+CO溶接あるいはCO溶接)などのガスシールドアーク溶接が好ましい。また、ガスシールドアーク溶接の中で、TIG溶接は溶接金属中の水素量をより低減できるため、溶接金属を高靱性とするためには好適であるが、MIG溶接、MAG溶接に比べて溶接施工効率が劣る。このため、MIG溶接、MAG溶接を用いて高強度・高靱性の溶接継手を作製する方法が要望されている。
従来から引張強さTSが780〜900MPa級の高張力鋼板をガスシールドアーク溶接する際の溶接部の高強度・高靱性化について数多く検討されている。
最近では、引張強さTSが900MPa以上の板厚50mm以上の厚肉高張力鋼板をガスシールドアーク溶接する際に溶接金属の形状や溶接条件、さらに溶接ワイヤ成分を規定することにより、引張強さTSが1070MPaの鋼板に対して、引張強さTSが988MPaで、20℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−20)が74Jの溶接金属を形成する強度・靱性に優れた溶接継手を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、鋼板の引張強さTSに対して溶接金属の引張強さTSを低くすることにより、溶接金属の靭性を向上させ、溶接金属の形状や溶接条件の規定により溶接継ぎ手の引張強さTSを鋼板の引張強さTS並みに維持させるものである。このため溶接条件の制約により溶接施工効率が低下するとともに、引張強さTSが950Mpa以上、さらには1100MPa以上の高張力鋼板の溶接継ぎ手における溶接金属の引張強さと靭性を向上することは困難である。
従来、例えば、引張強さTSが1200MPa以上の高張力鋼板をガスシールドアーク溶接し、引張強さTSが1200MPa以上で、降伏応力が1100MPa以上の強度で、かつ−40℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーvE−40が27J以上の靭性を満足する溶接金属を形成できるようなガスシールドアーク溶接用ワイヤは見いだされていない。
特開2001−1148号公報
上記従来技術の現状に鑑み、本発明は、引張強さTSが1200MPa以上の高張力鋼板をMIG溶接、MAG溶接(Ar+CO溶接あるいはCO溶接)等のガスシールドアーク溶接を用いて、引張強さTSが1200MPa以上、降伏応力YPが1100MPa以上で、かつ、−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーvE−40が27J以上の溶接金属を形成できる、高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤを提供することを課題とする。
溶接金属は、溶接入熱により溶接用ワイヤと一部の鋼板が溶融後、凝固して形成され、その組織は一部再熱の影響は受けるものの、基本的には凝固まま組織であるため、圧延組織を有する鋼板のように明確な降伏現象を示さない場合が多い。例えば、溶接金属中の焼き入れる成分の含有量を高めてマルテンサイト主体組織とし引張強さTSを向上させても、鋼板のように引張強さTSの上昇に比例して降伏応力YPを高めることが困難であり、逆に降伏応力YPは極端に低下する場合さえ生じる。特に、引張強さTSが1200MPa以上の溶接金属において、降伏応力YPを1100MPa以上に向上することは従来技術では達成されない。
本発明者らは、高張力鋼板のガスシールドアーク溶接において引張強さTSが1200MPa以上、降伏応力YPが1100MPa以上で、かつ、−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーvE−40が27J以上の溶接金属を形成できる、高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤの成分組成について実験などにより詳細に検討を行った。その結果、溶接金属において、高い引張強さTSと同時に高い降伏応力YPが得られ、かつ、靱性の向上も同時に達成させるためには、溶接ワイヤ中に引張強さと靱性を安定的に確保するためのNiを所定量含有させ、所定の焼き入れ性を確保した上で、可動転位密度の上昇および残留オーステナイトの生成を抑制するMoを適正量含有させることが必須であることを知見した。
本発明はこの新たな知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)溶接ワイヤの組成が、質量%で、
C :0.06〜0.2%、
Si:0.2〜1%、
Mn:0.5〜2.5%、
Al:0.002〜0.1%、
Ti:0.005〜0.3%、
N:0.001〜0.015%、
Ni:0.5〜6%
を含み、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下
に制限し、
さらに、
Mo:0.1〜4%、
W:0.1〜3%、
Nb:0.005〜0.1%、
V:0.005〜0.5%、および、
Ta:0.005〜0.5%
のうちの1種または2種以上を含有し、
下記(1)式で示される炭素当量(Ceq)が0.8〜2%であり、かつ下記(2)式で示されるNb当量(Nbeq)が0.091〜0.5%であり、残部が不可避不純物ならびにFeからなることを特徴とする高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(1)
Nbeq=[Nb%]+[V%]/5+[Mo%]/20+[W%]/10+[Ta%]/5 ・・・(2)
但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Mo%]、[W%]、[Nb%]、[V%]、[Ta%]は、C、Mn、Si、Ni、Mo、W、Nb、V、Taのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
(2) 質量%で、さらに、
Cu:0.01〜1.5%、
Cr:0.01〜2%、
Co:0.01〜6%、および、
B:0.001〜0.015%
のうちの1種または2種以上を含有し、下記(3)式で示される炭素当量(Ceq)が0.8〜2%であることを特徴とする前記(1)に記載の高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(3)
但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Cr%]、[Mo%]、[W%]は、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Wのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
(3) 質量%で、さらに、
Ca:0.0002〜0.01%、
Mg:0.0002〜0.01%、および、
REM:0.0002〜0.01%
のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
本発明のガスシールドアーク溶接用ワイヤによれば、引張強さが1200MPa以上の高張力鋼板におけるMIG溶接、MAG溶接(Ar+CO溶接あるいはCO溶接)等のガスシールドアーク溶接全般において、降伏応力が高く、かつ、靱性に優れた溶接金属を得ることができ、高張力鋼板において強度が高く安全性に優れた溶接継手を提供することが可能である。本発明は、特に、溶接金属の降伏応力が1100MPa以上で、かつ、−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーが27J以上の靱性を達成するために特に有用である。
本発明の目標とする溶接金属の引張強さTSが1200MPa以上に対して降伏応力YPが1100MPa以上を達成するための溶接金属組織は、マルテンサイト主体組織となことに起因し、可動転位密度は高くなり、また、残留オーステナイトが増加する。溶接金属中の可動転位密度の増加は、降伏応力YPおよび靭性を低下させ、溶接金属中の残留オーステナイトは低温環境に晒されたり、応力が負荷される場合にマルテンサイト変態し、靭性を劣化させる原因となる。また、鋼板の降伏応力YPを高める手段として析出元素による析出強化が知られているが、鋼板のように圧延や熱処理によって析出挙動を容易に制御できる鋼板とは異なり、基本的に熱処理しない凝固まま組織の溶接金属では、鋼板と同じような降伏現象を示さないことが従来の常識であった。このため、溶接金属の引張強さTSが向上しても、降伏応力YPは必ずしも向上せず、逆に降伏応力YPが著しく低下する場合があった。
そこで、本発明者らは、高張力鋼板のガスシールドアーク溶接において引張強さTSが1200MPa以上、降伏応力YPが1100MPa以上で、かつ、−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーvE−40が27J以上の溶接金属を形成することを目標とし、これを達成するための高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤの成分組成について実験などにより詳細に検討を行った。
その検討結果、1200MPa以上の引張強さTSの溶接金属において、Niを所定量含有し、その他成分による所定の焼き入れ性を確保した条件で、さらに、Mo、Nb、V、および、Taのうちの1種または2種以上を所定量含有させると、これらの析出元素が炭素および/または窒素と結合し溶接金属中で析出した析出物が、主としてマルテンサイト変態によって多量に導入された可動転位の移動をピン止めする作用により、降伏応力YPおよび靭性を同時に向上させる効果があることが明らかになった。また、Mo、Nb、V、および、Taの析出元素は溶接金属のフェライト相を安定化させ、溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイトを低減し、溶接金属の靭性を向上させることも判った。
また、上記Mo、Nb、V、および、Taの析出元素による溶接金属の降伏応力YPおよび靭性の向上効果は、引張強さTSと靭性を同時に達成できるNiを基本成分元素として比較的多量に含有させた条件で、かつ可動転位および残留オーステナイトを多く含む溶接金属組織において、はじめて効果を発揮するものである。すなわち、引張強さTSが低く、フェライトおよびパーライトの混合組織、または、ベイナイト主体組織の溶接金属では、上記Moは、溶接金属中で単に析出強化元素として作用するのみであり、溶接金属の降伏強度の向上効果は小さく、また、強度上昇にともなう溶接金属の靭性劣化を抑制する効果は得られないことを発明者らは確認している。なお、Mo、Nb、V、および、Taの析出元素の上記効果は、後述するNb当量の指標を満足する含有量の範囲内でこれらの析出元素を添加することで得られるが、単独で添加する場合は、溶接金属の強度−靱性バランスの点からこれらの析出元素の中でMoがより好ましい。
以上の知見から、引張強さTSが1200MPa以上で、高い可動転位密度を有するマルテンサイト組織主体組織で、かつ靭性を阻害する残留オーステナイトが残存しやすい溶接金属において、溶接金属の降伏応力YP(1100MPa以上)と靭性vE−40(−40℃でのシャルピー:27J以上)を向上させるためには、溶接ワイヤ中に引張強さと靱性を安定的に確保するためのNiを所定量含有させ、所定の焼き入れ性を確保した上で、Moの析出物によるピン止め効果とフェライト安定化による残留オーステナイトの抑制効果の相乗効果を有効に活用することが有効となる。本発明は、これらの知見および技術思想を基になされたものである。
以下に本発明におけるガスシールドアーク溶接用ワイヤの成分組成の限定理由について説明する。
なお、以下の説明において「%」は特に説明がない限りは、「質量%」を意味するものとする。
Cは、溶接金属の引張強さTSを1200MPa以上に向上させ、高張力鋼板の引張強さTSのアンバランスが生じないようにするために必須の元素であり、このため溶接ワイヤ中にCを0.06%以上含有させる必要がある。溶接ワイヤ中のC含有量は多いほど溶接金属の引張強さTSを高める上で好ましいが、Cの過度な含有は溶接金属の靱性を著しく劣化させる。溶接金属の−40℃での靱性を確保するためには溶接ワイヤ中のC含有量の上限を0.2%とする必要がある。従って、本発明においては溶接ワイヤ中のC含有量は0.06〜0.2%とする。
Siは、脱酸元素であり、溶接金属中のO量を低減して清浄度を高めるためには溶接ワイヤ中のSi含有量を0.2%以上とする必要がある。一方、溶接ワイヤ中のSi含有量が1%を超えて過剰になると、粗大な酸化物を生成し溶接金属の靱性を著しく劣化させる。このため、本発明において溶接ワイヤ中のSi含有量は0.2〜1%とする。
Mnは、溶接金属の焼入性を確保して強度を高めるために、また、一定量以内であれば、組織を微細化して靱性向上にも有効な元素である。これらのMnの作用を利用し溶接ワイヤの強度向上、組織微細化効果を確実に発揮するためには、溶接ワイヤ中にMnを0.5%以上含有させる必要がある。一方、Mnは溶接ワイヤ中に2.5%を超えて含有させると、粒界脆化感受性が増加して溶接金属の靱性劣化、耐溶接割れ性劣化の可能性が高くなる。このため、本発明においては、溶接ワイヤ中のMn含有量は0.5〜2.5%に限定する。
Alは脱酸元素であり、Siと同様、溶接金属中のO低減、清浄度向上に効果があるが、効果を発揮するためには溶接ワイヤ中に0.002%以上含有させる必要がある。一方、Alは溶接ワイヤ中に0.1%を超えて過剰に含有させると、溶接金属中に粗大な酸化物を形成して、この粗大酸化物が靱性を著しく劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、溶接ワイヤ中のAl含有量を0.002〜0.1%とする。
Tiは溶接金属において脱酸元素としても有効であり、かつ溶接金属中の固溶Nを窒化物として固定して固溶Nの靱性への悪影響を緩和でき、さらにはTiNを形成して多層盛溶接の場合に溶接金属の再加熱領域における加熱オーステナイト粒を微細化する作用もある。これらのTiの作用により溶接金属の靱性向上効果を発揮するためには溶接ワイヤ中にTiを0.005%以上含有させる必要がある。一方、溶接ワイヤ中のTi含有量が0.3%を超えて過剰になると、溶接金属中の粗大な酸化物の形成、および、TiNの過度な析出による靱性劣化が顕著に生じる可能性が大となる。このため、本発明においては、溶接ワイヤ中のTi含有量を0.005〜0.3%とする。なお、Tiによる溶接金属の靱性向上効果をより明確に発揮するためには、溶接ワイヤ中のTi含有量を0.01〜0.1%とすることがより好ましい。
Nは、溶接金属中でTiとTiNを形成して、多層盛り溶接の場合に溶接金属の再加熱領域における加熱オーステナイト粒を微細化する作用効果があり、この効果を発揮するため、溶接ワイヤ中にNを0.001%以上含有させることが好ましい。一方、Nは、ワイヤ中に0.015%を超えて過剰に含有させると、溶接金属中の固溶N量が増加して靱性を著しく劣化させるため、本発明においては、溶接ワイヤ中のN含有量を0.001〜0.015%に限定する。
Niは、固溶靱化により溶接金属の他の成分、組織によらず安定して靱性を向上できる唯一の元素であり、特に、引張強さTSが1200MPa以上の高強度溶接金属における靱性を高めるために本発明ワイヤで特に重要な元素である。溶接金属でNiの固溶靱化効果を確実に発揮するためには溶接ワイヤ中にNiを0.5%以上含有させる必要がある。ワイヤ中のNi含有量が多いほど溶接金属の靱性を向上する上で有利であるが、溶接ワイヤ中のNi含有量が6%を超えると、該効果が飽和するのと、溶接ワイヤの製造コストが過大となるため、好ましくない。そのため、本発明においては、溶接ワイヤ中のNi含有量を0.5〜6%に限定する。
Pはワイヤ中の不可避不純物元素であり、溶接金属の靱性を阻害するため極力低減する必要がある。溶接ワイヤ中のP含有量が0.02%以下では溶接金属の靱性への悪影響が許容できるため、本発明では溶接ワイヤ中のP含有量は0.02%以下に制限する。
Sもワイヤ中の不可避不純物元素であり、溶接金属中に過大に存在すると溶接金属の靱性と延性とをともに劣化させるため、極力低減することが好ましい。溶接ワイヤ中のS含有量が0.01%以下では溶接金属の靱性、延性への悪影響が許容できるため、本発明では溶接ワイヤ中のS含有量は0.01%以下に制限する。本発明のように溶接金属の降伏応力YPが1100MPa以上となるような、特に高強度の溶接金属においては、Sの延性、靭性への悪影響がより顕著に表れるため、溶接ワイヤ中の含有量を0.005%以下に制限する方がより好ましい。
Oも溶接ワイヤ中の不可避不純物元素であり、多量に存在すると、溶接ワイヤの製造性を阻害し、また、溶接金属中のO含有量を過剰に増加させて、溶接金属の延性、靱性を劣化させるため、好ましくない。本発明においては、溶接ワイヤの製造性、溶接金属の材質劣化を生じない範囲として、O含有量の上限を0.01%に制限する。
本発明において、目標とする1200MPa以上の引張強さTSに見合った1100MPa以上の降伏応力YPを確保するためには、上記成分に加えて、さらに溶接ワイヤ中に、Mo、W、Nb、V、および、Taのうちの1種または2種以上を以下の所定範囲で含有する必要がある。
Mo、W、Nb、V、Taはフェライト安定化元素であり、かつ析出物形成元素であり、定性的には以下の効果をほぼ同様に有する。
Moは、溶接金属の引張強さTSを高めるための焼入性向上元素であるが、かつ、フェライト安定化元素であるために溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイト低減に有効な元素である。また、Moは、溶接金属中で微細炭化物を形成して、析出強化により降伏応力YPを高めると同時に析出物によるピン止め作用により、主としてマルテンサイト変態時に生じた可動転位の移動を妨げて降伏応力YPおよび靭性を向上させるためにも有効な元素である。これらの効果を十分発揮するためには、ワイヤ中にMoを0.1%以上含有させる必要がある。一方、Moは溶接ワイヤ中に4%を超えて含有させると、溶接金属中に粗大な析出物が生じて溶接金属の靭性を劣化させるとともに、熱間〜冷間での変形抵抗が過大となって加工性が劣化し、ワイヤ製造に困難を生じる。このため、本発明において、溶接ワイヤ中のMo含有量は0.1〜4%とする。
Wは、Moとほぼ同様に、溶接金属の引張強さTSを高めるための焼入性向上元素として作用し、かつ、フェライト安定化元素であるために溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイト低減に有効である。また、溶接金属中で微細炭化物を形成して、析出強化により降伏応力YPを高めると同時に析出物によるピン止め作用により、主としてマルテンサイト変態時に生じた可動転位の移動を妨げて靭性を向上させるために有効である。これらの効果を発揮するためには、他の同様の効果を有する元素との複合効果を考慮しても0.1%以上含有させることが好ましい。一方、ワイヤ中にWを3%を超えて含有させると、熱間〜冷間での変形抵抗が過大となって加工性が劣化し、ワイヤ製造に困難を生じるため、本発明においては、溶接ワイヤ中にWを含有させる場合の含有量は0.1〜3%とするのが好ましい。
Nbもフェライト安定化元素であり、溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイト低減に有効である。また、溶接金属中で微細炭化物を形成して、析出強化により降伏応力YPを高めると同時に析出物によるピン止め作用により、主としてマルテンサイト変態時に生じた可動転位の移動を妨げて靭性を向上させるために有効である。これらの効果を発揮するためには、他の同様の効果を有する元素との複合効果を考慮しても0.005%以上含有させることが好ましい。一方、ワイヤ中にNbを0.1%を超えて過剰に含有させると、粗大な析出物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるため好ましくない。そのため、本発明においては、溶接ワイヤ中にNbを含有させる場合の含有量は0.005〜0.1%とするのが好ましい。
Vもフェライト安定化元素であり、溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイト低減に有効である。また、溶接金属中で微細炭化物を形成して、析出強化により降伏応力YPを高めると同時に析出物によるピン止め作用により、主としてマルテンサイト変態時に生じた可動転位の移動を妨げて靭性を向上させるために有効である。これらの効果を発揮するためには、他の同様の効果を有する元素との複合効果を考慮しても0.005%以上含有させることが好ましい。一方、ワイヤ中にVを0.5%を超えて溶接ワイヤ中に過剰に含有させると、粗大な析出物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるため好ましくない。そのため、本発明においては、溶接ワイヤ中にVを含有させる場合の含有量は0.005〜0.5%とするのが好ましい。
Taもフェライト安定化元素であり、溶接金属の靭性を阻害する残留オーステナイト低減に有効である。また、溶接金属中で微細炭化物を形成して、析出強化により降伏応力を高めると同時に析出物によるピン止め作用により、主としてマルテンサイト変態時に生じた可動転位の移動を妨げて靭性を向上させるために有効である。これらの効果を発揮するためには、他の同様の効果を有する元素との複合効果を考慮しても0.005%以上含有させることが好ましい。一方、ワイヤ中にTaを0.5%を超えて溶接ワイヤ中に過剰に含有させると、粗大な析出物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるため好ましくない。そのため、本発明においては、溶接ワイヤ中にTaを含有させる場合の含有量は0.005〜0.5%とするのが好ましい。
以上が本発明における溶接ワイヤの基本成分元素および制限すべき不可避不純物の含有量の限定理由である。これらの成分含有量の限定に加え、本発明では目標とする引張強さTSで1200MPa以上の高強度の溶接金属を得るために必要な焼入性を担保するために、さらに下記の(1)式で示す炭素当量Ceqを限定する必要がある。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(1)
但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Mo%]、[W%]は、C、Mn、Si、Ni、Mo、Wのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
すなわち、溶接金像の引張強さTSが1200MPa以上とするためには、焼入性を十分に確保して溶接金属の変態組織をマルテンサイトないしはマルテンサイトとベイナイトの混合組織とすることが必須である。そのためには溶接ワイヤ中の上記基本成分の含有量を上記の範囲に限定した上で、さらに、溶接ワイヤ中の焼き入れ成分である、C、Si、Mn、Ni、Mo、Wの含有量を基に上記(1)式で求められる焼入性指標の炭素当量Ceqを0.8%以上に限定する必要がある。炭素当量Ceqが0.8未満の場合には、溶接金像の引張強さTSが1200MPa以上とするための焼入性が十分に確保できない。
上記(1)式で求められる炭素当量Ceqが大きくなるほど安定した焼入性が確保できるが、炭素当量Ceqが2%を超えて焼き入れ性が過剰になると、溶接金属の引張強さTSの向上効果は飽和する上、溶接金属中の残留オーステナイトの生成が増加すること等により降伏応力YPおよび靭性が劣化するため好ましくない。以上の理由により、本発明においては、上記(1)式で求められる溶接ワイヤの炭素当量Ceqを0.8〜2%に限定する。
また、溶接ワイヤ中の上記成分含有量の限定に加えて、本発明では目標とする1200MPa以上の溶接金属において、YPが1100MPa以上の高い降伏応力を確保するために、下記(2)式で示されるNb当量Nbeqを以下の所定範囲に限定するのが好ましい。
Nbeq=[Nb%]+[V%]/5+[Mo%]/20+[W%]/10+[Ta%]/5 ・・・(2)
但し、[Nb%]、[V%]、[Mo%]、[W%]、[Ta%]は、Nb、V、Mo、W、Taのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
上記(2)式で示されるNb当量Nbeqが0.091%未満であると、上述したMo、W、Nb、V、Taの各含有量の規定範囲を満足していても、1100MPa以上に降伏応力YPを安定して向上することは困難となる。一方、上記(2)式で示されるNb当量Nbeqが0.5%超では、溶接金属の靭性が大きく劣化したり、溶接ワイヤの製造性を阻害する等、好ましくない。目標とする1200MPa以上の引張強さTSに見合った1100MPa以上の降伏応力YPを確保し、さらに、降伏比YR(降伏応力YP(0.2%耐力(PS))/引張強さTS)で0.8以上を確保するために上記(2)式で示されるNb当量Nbeqを0.091〜0.5%とする。
以上が本発明の溶接ワイヤの基本成分元素および制限すべき不可避不純物の含有量の限定理由であるが、本発明の溶接ワイヤ中に、本発明の目的とする溶接金属の基本特性を阻害しない範囲内で特定の機械的特性を調整するために、必要に応じて、さらに、溶接ワイヤ中にCu、Cr、CoおよびBのうちの1種または2種以上を含有させることができる。
Cuは溶接ワイヤがめっきされて使用される場合には不可避的にワイヤ及び溶接金属に含有される。Cuは強度向上には有効な元素であり、効果を発揮させるためには0.01%以上含有させる必要がある。ただし、過剰に含有されると、溶接金属の靭性の劣化や耐高温割れ性の劣化を招くため好ましくない。めっきとして含有される場合、あるいは強度向上のために意図的に含有する場合とも、溶接金属の靭性の劣化や耐高温割れ性の劣化を生じない上限として、本発明においては、ワイヤのCu含有量の上限は1.5%とする。
Crは、焼入性を高めることにより高強度化に有効元素である。そのために溶接ワイヤ中に含有させる場合は0.01%以上必要である。一方、2%を超えて過剰に含有させると、ベイナイトやマルテンサイトを不均一に硬化させ、靱性を著しく劣化させるため、本発明においては、溶接ワイヤ中の含有量の上限を2%に定める。
Coは、ベイナイト〜マルテンサイト組織において、極端に変態点が低下することを抑制することで、強度の調整、残留オーステナイトの生成抑制を介した降伏応力の確保に有効な元素である。該効果を確実に発揮するためには溶接ワイヤ中に0.01%以上含有させる必要がある。一方、6%を超えて含有させても効果が飽和し、製造コストが過大となるため、本発明においては、溶接ワイヤにCoを含有させる場合はその範囲を0.01〜6%とする。
Bは、溶接金属中に適正量含有されると、固溶Nと結びついてBNを形成して、固溶Nの靭性に対する悪影響を減じる効果があり、また、焼入性を高めて強度向上に寄与し得る元素である。これらの効果を確実に発揮するためには、溶接ワイヤ中のB含有量は0.001%以上必要である。一方、溶接ワイヤ中のB含有量が0.015%超になると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBNやFe 23 (C、B) 等のB化合物を形成して靭性を逆に劣化させるため、好ましくない。そこで、本発明においては、溶接ワイヤにBを含有させる場合は、0.001〜0.015%に限定する。
溶接ワイヤ中に上述の基本成分に加えて、上記のCu、Cr、CoおよびBの1種または2種以上を含有させる場合は、上記(1)または下記(3)式で示される焼入性指標の炭素当量Ceqが0.8未満では、溶接金像の引張強さTSが1200MPa以上とするための焼入性が十分に確保できず、炭素当量Ceqが2%を超えると、降伏応力YPおよび靭性が劣化するため好ましくない。このため、上述と同様に炭素当量Ceqを0.8〜2%以上に限定する必要がある。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(3)
但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Cr%]、[Mo%]、[W%]は、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Wのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
さらに、溶接金属の延性、靭性を調整する目的で、必要に応じて、溶接ワイヤ中にさらにCa、Mg、および、REMのうちの1種または2種以上を含有させることができる。Ca、Mg、REMはいずれも硫化物の構造を変化させ、また溶接金属中での硫化物、酸化物のサイズを微細化して延性及び靭性向上に有効である。その効果を発揮するための下限の含有量は、いずれも0.0002%である。一方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招くため、また、溶接ビード形状の劣化、溶接性の劣化の可能性も生じるため、上限をいずれも0.01%とする。
なお、以上の溶接ワイヤの化学組成は最終のワイヤ形態での値であり、該化学組成が本発明を満足していれば、溶接ワイヤが、ソリッドワイヤでも、鋼製外皮の中に金属または合金、フラックス等の粒状または粉状原料で充填されたワイヤであっても本発明の効果を損なうものではない。
本発明の効果を実施例によりさらに詳細に説明する。種々の化学組成のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを用いて図1に示すような継手を作製し、丸棒引張試験、2mmVノッチシャルピー衝撃試験により溶接金属の強度、靱性を評価した。鋼板は板厚25mmの、降伏応力YP:1100MPa、引張強さTS:1200MPa級の鋼板を用い、V形開先の突き合わせ継手とし、表1の条件で、表2の化学組成を有する直径1.2mmのソリッドワイヤを用いたAr+20%CO ガスシールドアーク溶接により多層盛溶接を行った。
溶接後の継手の溶接金属から試験片を採取し、機械的性質を調査した。引張試験は、平行部径が6mm、平行部長さが32mmの丸棒引張試験片を鋼板の板厚中心、溶接金属幅中央から、試験片長手方向が溶接ビード長手方向に平行になるように採取して室温において行った。全ての溶接金属において、明確な降伏点、降伏伸びを生じなかったため、降伏応力YPとしては0.2%耐力(0.2%PS)を採用した。靭性は2mmVノッチシャルピー衝撃試験の−40℃における平均吸収エネルギーvE−40(3本の平均値)により評価した。試験片は図1に示すように、試験片の中心が鋼板の板厚1/4位置で、ノッチが溶接金属の幅方向中央がくるように採取した。
表2に溶接ワイヤの化学組成及び機械試験結果を示す。継手A1〜継手A11は本発明の化学組成を有する溶接ワイヤを用いて溶接した継手である。継手A1〜継手A11の溶接金属の強度は、引張強さTSが1200MPa以上で、かつ、降伏応力YP(0.2%耐力PS)も1100MPa以上と、十分な強度を達成している。また、溶接金属の靭性についても、0.2%耐力PSが1100MPa以上の極めて高い強度の溶接金属であって、全て−40℃での2mmVノッチシャルピー衝撃試験による吸収エネルギー(vE−40)で40J以上が得られており、十分な低温靭性を達成している。
一方、継手B1〜B14は本発明の要件を満足しないワイヤにより溶接した比較例であり、溶接ワイヤの組成が本発明を満足していないために、強度あるいは/及び靭性が十分でない。
継手B1は、溶接ワイヤのMo含有量が過大であるため、粗大な析出物が生じて溶接金属の靭性vE−40が13Jであり、著しく劣化した。また、ワイヤの熱間〜冷間での変形抵抗が過大となって加工性も劣化し、ワイヤ製造にも困難を生じた。
継手B2は、溶接ワイヤのC含有量が過大であるため、溶接金属の靭性vE−40が15Jであり、本発明例に比べて大幅に劣化している。
継手B3は、溶接ワイヤのCr含有量が過大であるため、ベイナイトやマルテンサイトを不均一に硬化させ、溶接金属の靭性vE−40が20Jであり、著しく劣る。
継手B4は、溶接ワイヤのP含有量が過大であるため、やはり、溶接金属の靭性vE−40が14Jであり、靭性の劣化が著しい。
継手B5は、溶接ワイヤのS含有量が過大であるため、溶接金属の靭性vE−40が21Jであり、本発明例に比べて明らかに靭性が劣る。
継手B6は、溶接ワイヤのTi含有量が過小であるため、溶接金属の組織微細化が十分でなく、そのため、溶接金属の靭性vE−40が22Jであり、靭性が劣る。
継手B7は、溶接ワイヤの炭素当量CeqおよびNb当量Nbeqが過小であるため、溶接金属の引張強さTSおよび降伏応力YP(0.2%PS)が本発明の目標値(TS≧1200MPa、YS≧1100MPa)を下回っており、引張強さ950MPa級以上の高強度鋼を溶接するためのワイヤとして溶接金属の十分な強度が達せられていない。
継手B8は、逆に溶接ワイヤの炭素当量Ceqが過大であるため、溶接金属の引張強さTSの割に降伏応力YP(0.2%PS)が1015MPaと低く不十分であり、溶接金属の靭性も17Jと低値である。また、溶接金属の引張強さTSに対して降伏応力YP(0.2%PS)が低すぎるため、溶接金属の降伏比YRも0.69と低くなった。
継手B9は、溶接ワイヤのNb当量Nbeqが過小であるため、溶接金属の降伏応力YP(0.2%PS)が741MPaと本発明例に比べて低くなった。また、溶接金属の引張強さTSに対して降伏応力YP(0.2%PS)が低すぎるため、溶接金属の降伏比YRも0.70と低くなった。
継手B10は、溶接ワイヤのNb当量Nbeqが過大な場合であり、溶接金属の靭性vE−40が11Jであり、著しく靭性が劣化した。
継手B11は、溶接ワイヤにMo、W、Nb、V、Taのいずれも含有されていないために溶接金属の降伏応力YPが784MPaであり、降伏応力が著しく低下した。
継手B12は、溶接ワイヤにMoは含有されているものの、その含有量が過小であるために溶接金属の降伏応力YPが788MPaであり、降伏応力が著しく低下した。
継手B13は、溶接ワイヤにNbは含有されているものの、その含有量が過小であるために溶接金属の降伏応力YPが784MPaであり、降伏応力が著しく低下した。
継手B14は、溶接ワイヤにMo、Nbが含有されているが、その含有量が両元素とも過小であるために溶接金属の降伏応力YPが765MPaであり、降伏応力が著しく低下した。
以上の実施例からも、本発明によれば、引張強さTSが1200MPa級以上、降伏応力YPが1100MPa級以上の高張力鋼板におけるガスシールドアーク溶接全般において、引張強さTS、降伏応力YP、降伏比YR(YP/TS)、および、靱性vE−40の全てに優れた溶接金属を得ることができ、鋼構造物で適用される高張力鋼板の溶接において強度および靭性が高く安全性に優れた溶接継手を提供することが可能であることが明らかである。
Figure 0004441372
Figure 0004441372
実施例に用いた溶接継手の開先形状と2mmVノッチシャルピー衝撃試験片の採取要領とを示す模式図である。
1 鋼板
2 裏当金
3 溶接ビード
4 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片

Claims (3)

  1. 溶接ワイヤの組成が、質量%で、
    C :0.06〜0.2%、
    Si:0.2〜1%、
    Mn:0.5〜2.5%、
    Al:0.002〜0.1%、
    Ti:0.005〜0.3%、
    N:0.001〜0.015%、
    Ni:0.5〜6%
    を含み、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    O:0.01%以下
    に制限し、
    さらに、
    Mo:0.1〜4%、
    W:0.1〜3%、
    Nb:0.005〜0.1%、
    V:0.005〜0.5%、および、
    Ta:0.005〜0.5%
    のうちの1種または2種以上を含有し、
    下記(1)式で示される炭素当量(Ceq)が0.8〜2%であり、かつ下記(2)式で示されるNb当量(Nbeq)が0.091〜0.5%であり、残部が不可避不純物ならびにFeからなることを特徴とする高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
    Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(1)
    Nbeq=[Nb%]+[V%]/5+[Mo%]/20+[W%]/10+[Ta%]/5 ・・・(2)
    但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Mo%]、[W%]、[Nb%]、[V%]、[Ta%]は、C、Mn、Si、Ni、Mo、W、Nb、V、Taのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
  2. 質量%で、さらに、
    Cu:0.01〜1.5%、
    Cr:0.01〜2%、
    Co:0.01〜6%、および、
    B:0.001〜0.015%
    のうちの1種または2種以上を含有し、下記(3)式で示される炭素当量(Ceq)が0.8〜2%であることを特徴とする請求項1に記載の高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
    Ceq=[C%]+[Mn%]/6+[Si%]/24+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[W%]/8 ・・・(3)
    但し、[C%]、[Mn%]、[Si%]、[Ni%]、[Cr%]、[Mo%]、[W%]は、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Wのそれぞれの含有量(質量%)を示す。
  3. 質量%で、さらに、
    Ca:0.0002〜0.01%、
    Mg:0.0002〜0.01%、および、
    REM:0.0002〜0.01%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度高靭性ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
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