JP2001262269A - 溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火鋼材および溶接鋼管 - Google Patents

溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火鋼材および溶接鋼管

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JP2001262269A
JP2001262269A JP2000074403A JP2000074403A JP2001262269A JP 2001262269 A JP2001262269 A JP 2001262269A JP 2000074403 A JP2000074403 A JP 2000074403A JP 2000074403 A JP2000074403 A JP 2000074403A JP 2001262269 A JP2001262269 A JP 2001262269A
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Yoshio Terada
好男 寺田
Akihiko Kojima
明彦 児島
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大入熱溶接熱影響部靱性が良好で、かつ耐火
性に優れた鋼材及び溶接鋼管を提供する。 【解決手段】 適正量のMoを含有した成分に、更にM
gとAlから成る酸化物を内包する微細なTiNを含有
することにより溶接HAZ靱性が良好で、かつ耐火性に
優れた鋼材、及び鋼管母材として適正量のMoを含有し
た成分に、更にMgとAlから成る酸化物を内包する微
細なTiNを含有し、溶接金属として適正なMo量及び
その他の合金元素を適正化することにより、溶接HAZ
靱性が良好で、かつ耐火性に優れた鋼管を提供する。 【効果】 優れた溶接HAZ靭性と耐火性を有する鋼管
を建築鋼構造物の部材として採用することにより、建築
鋼構造物の製造コストが大幅に低減されると共に、建築
鋼構造物の信頼性が大幅に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は建築、土木分野にお
ける各種構造物に用いる溶接熱影響部(以下、HAZと
いう)靱性に優れた耐火鋼材および溶接鋼管に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】建築、土木分野における各種構造物用構
築材として、一般構造用圧延鋼材(JIS G 310
1)、溶接構造用圧延鋼材(JIS G 3106)、
溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JIS G 311
4)、高耐候性圧延鋼材(JISG 3444)、一般
構造用角形鋼板(JIS G 3466)等が広く利用
されている。各種構造物のうち、特にビルや事務所およ
び住居等の建造物に前記鋼材を用いる場合、火災におけ
る安全性を確保するため十分な耐火被覆を施すことが義
務づけられており、建築関係諸法令では火災時に鋼材温
度が350℃以上にならぬように規定している。
【0003】前記鋼材は建築物に使用する場合、350
℃程度で耐力が常温時の60〜70%になり建築物の倒
壊を引き起こす恐れがあるため、たとえば一般構造用圧
延鋼材(JIS G 3101)に規定される形鋼を柱
材とする構造物の例では、その表面にスラグウール、ガ
ラスウール、アスベスト等を基材とする吹付け材やフェ
ルトを展着するほか、防火モルタルで***する方法、お
よび前記断熱材層の上にさらに金属薄板すなわちアルミ
ニウムやステンレス薄板で保護する方法等、耐火被覆を
入念に施し、火災時における熱的損傷により該鋼材が載
荷力を失うことのないようにして利用している。
【0004】このため鋼材費用に比較して耐火被覆工事
が高額になり、建築コストの大幅な上昇を避けることが
できない。そこで、構築材として丸あるいは角鋼管を用
い冷却水が循環するように構成し、火災時における温度
上昇を防止し、載荷力を低下させない技術が提案され、
ビルの建築コストの引下げと利用空間の拡大が図られて
いる。
【0005】例えば実公昭52−16021号公報に
は、建築物の上部に水タンクを置き、中空鋼管からなる
柱材に冷却水を供給する耐火構造建築物が開示されてい
る。また特開平02−77523号では、一定量のMo
とNbを添加した鋼片を高温加熱、高温圧延することに
より、600℃の高温強度が常温強度の70%以上確保
できる鋼材、並びにその製造法が示されている。また特
開平02−77523号では、0.4〜0.7%のMo
と0.005〜0.04%のNbを含有した鋼片を11
00℃〜1300℃に再加熱した後、800〜1000
℃で圧延を終了する耐火鋼材及びその製造法が示されて
いる。
【0006】さらに近年、建築構造物の高層化やデザイ
ンの斬新さが進み、これに対応して設計の自由度が大き
くなり、耐火性能が要求される鋼管のニーズが増加し、
特開平5−9578号公報には、高温強度を確保するた
めに母材および溶接金属中にそれぞれ0.3〜0.7%
のMoを含有した、耐火性に優れた建築用鋼管が示され
ている。
【0007】一方、エレクトロスラグ溶接などの大入熱
溶接により、建築構造物の施工コストを低減するニーズ
が高いが、高温強度を確保するためにMoを多量に添加
した鋼材あるいは鋼管では、溶接HAZ靱性の劣化が著
しく、良好な大入熱溶接HAZ靱性を有する耐火性に優
れた鋼材および溶接鋼管が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は溶接HAZ靱
性が良好で、かつ耐火性に優れた建築用鋼材および溶接
鋼管を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、質量%
で、 C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050以下、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006を含有し、 必要に応じて、さらに Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以上を含有し、 残部が鉄および不可避的不純物からなり、MgとAlか
ら成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiN
が10000個/mm2 以上含有する溶接熱影響部靱性
に優れた建築用耐火鋼材。および、質量%で、 C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050以下、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006を含有し、 必要に応じて、さらに Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以上 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、M
gとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μ
mのTiNが10000個/mm2 以上含有する母材
と、質量%で C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.09以下、 N :0.001〜0.006、 O :0.01〜0.05を含有し、 必要に応じて、さらに Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005、 Mg:0.0001〜0.0050の うち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可
避的不純物からなり、さらに下記(1)式で与えられるP
cmが0.12〜0.25%である溶接金属部とよりなる
ことを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火
溶接鋼管である。 Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60 +Mo/15+V/10+5B ……………(1) (成分単位:質量%)
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の良好な大入熱溶接
熱影響部靱性を有し、かつ耐火性に優れた鋼材および溶
接鋼管について詳細に説明する。本発明の特徴は、適正
量のMoを含有した成分に、さらにMgとAlから成る
酸化物を内包する微細なTiNを含有することにより、
溶接HAZ靱性が良好で、かつ耐火性に優れた鋼材、お
よび鋼管母材として適正量のMoを含有した成分に、さ
らにMgとAlから成る酸化物を内包する微細なTiN
を含有し、溶接金属として適正なMo量およびその他の
合金元素を適正化することにより、溶接HAZ靱性が良
好で、かつ耐火性に優れた鋼管を提供するものである。
【0011】溶接構造用鋼材(JIS G 3106)
に規定する性能を満足し、かつ600℃以上の高温にお
いても十分な耐力を維持せしめるためには、母材および
溶接金属の化学成分の限定が重要である。高温での耐力
を確保するためにはMoの添加が有効であり、0.3%
以上の添加により600℃での十分な高温強度が確保で
きる。Moは微細な炭窒化物による析出強化と固溶強化
により高温強度を向上させる。700℃あるいは800
℃での十分な耐力を確保するためには、Mo添加量の増
加が効果的であるが、Mo添加量の増加は溶接性が損な
われ、HAZ靱性が劣化するので、Mo量の上限は1.
0%とする必要がある。
【0012】低合金鋼のHAZ靱性は、(1) 結晶粒のサ
イズ、(2) 高炭素島状マルテンサイト(M* )、上部ベ
イナイト(Bu)などの硬化相の分散状態、(3) 粒界脆
化の有無、(4) 元素のミクロ偏析など種々の冶金学的要
因に支配される。なかでもHAZの結晶粒のサイズおよ
びM* は低温靱性に大きな影響を与えることが知られて
いる。
【0013】そこで、本発明ではHAZの結晶粒を微細
化することによりHAZ靱性の大幅な改善を図った。す
なわち、溶融線近傍の1400℃以上に加熱されるHA
Zにおいても化学的に安定な酸化物を粒成長抑制(ピン
ニング)粒子として用いることによりγ粒の粗大化を抑
制する方法を検討した。この結果、微量のMgとAlを
含有させることにより、0.01〜0.05μmの微細
な(Mg, Al)酸化物が多量に生成することを見出し
た。
【0014】さらに、0.01〜0.5μmのTiNが
この微細な(Mg, Al)酸化物を核として複合析出す
るため、1400℃以上の高温においても優れたγ粒の
ピンニング効果を維持できることを明らかにした。この
時、鋼中に含有する0.01〜0.5μmのTiNが1
0000個/mm2 未満の場合には、γ粒の粗大化抑制
効果が不十分となり、良好なHAZ靱性を得ることがで
きない。また0.5μm以上のTiNはγ粒成長の抑制
効果が少ないので、必要とするTiNの大きさの上限を
0.5μmとした。なお、TiNの大きさの下限は分析
の精度の観点から0.01μm以上とした。
【0015】次に、鋼材および溶接鋼管母材の成分限定
理由について説明する。Cは強度確保ならびにMoの添
加効果を発揮させるために必要であり、その下限は0.
04%である。しかしながら、C量が多すぎると低温靱
性、溶接性が劣化するので、その上限の値を0.15%
とした。
【0016】Siは脱酸や強度向上のため添加する元素
であるが、多く添加すると溶接熱影響部(HAZ)靱性
を劣化させるので、上限を0.6%とした。鋼の脱酸は
AlやTiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加す
る必要はない。
【0017】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可
欠な元素であり、その下限は0.4%である。しかしM
nが多過ぎると鋼の焼入性が増加して溶接性を劣化させ
るだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温
靱性も劣化させるので上限を2.0%とした。
【0018】本発明において不可避的不純物元素である
P、S量を0.03%以下、0.005%以下とする。
この主たる理由は母材およびHAZの低温靱性をより一
層向上させるためである。P量の低減は連続鋳造スラブ
の中心偏析を低減させて、粒界破壊を防止し低温靱性を
向上させる。また、S量の低減は制御圧延で延伸化した
MnSを低減して延性、靱性を向上させる効果がある。
【0019】Tiは微細なTiNを形成し、スラブ再加
熱時およびHAZのγ粒の粗大化を抑制して、ミクロ組
織を微細化し、母材およびHAZの低温靱性を改善し、
本発明において必須の元素である。この効果を発揮させ
るためには0.005%以上の添加が必要である。また
多すぎるとTiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生
じ、低温靱性を劣化させるので、その上限の値を0.0
3%に限定した。
【0020】Alはγ粒成長を抑制する粒子である複合
析出物TiNの析出核である0.01〜0.1μmの
(Mg、Al)酸化物を制御するうえで重要である。A
lが0.001%未満の場合、(Mg,Al)酸化物の
個数が10000個/mm2 未満となり、複合析出Ti
Nの個数が不足することでγ粒が十分に細粒化されず、
HAZ硬さの低減が得られない。Al量が0.050%
を超えるとAl系非金属介在物が増加して、鋼の清浄度
を劣化させるので、上限を0.050%とした。
【0021】Mgは本発明の重要な役割を有する元素で
ある。Mgを適量含有することにより、本発明における
酸化物の分散状態を達成することができる。Mgが0.
0001%未満の場合、TiNの析出核である(Mg,
Al)酸化物が不足する。一方、酸化物として消費され
るMgは0.0050%あれば十分である。Mgは蒸気
圧が高く、酸化力が強い非常に活性な元素であることか
ら、必要以上に鋼中に含有させることは製造コストの上
昇を招き、好ましくない。
【0022】NはTiNを形成し、スラブ再加熱時およ
びHAZのγ粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温
靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.00
1%である。しかし、N量が多すぎるとスラブ表面きず
や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となるので、そ
の上限の値は0.006%に抑える必要がある。
【0023】OはTiNの析出核である(Mg,Al)
酸化物の個数を確保するうえで必要である。Oが0.0
01%未満の場合、微細酸化物の個数が不足し、γ粒成
長抑制効果が発揮されない。一方、Oが0.006%を
超える場合、鋼の清浄度が低下して靱性などの機械的性
質が劣化する。
【0024】次にNi、Cu、Cr、Nb、V、Ca、
Bを添加する理由について説明する。基本成分にさらに
これらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の特徴
を損なうことなく、強度・低温靱性などの特性の向上を
図るためであり、必要に応じて添加する。従って、その
添加量は自ら制限されるべき性質のものである。
【0025】Niは溶接性、HAZ靱性に悪影響をおよ
ぼすことなく母材の強度、低温靱性を向上させるが、
0.1%未満では効果が薄く、1.0%超の添加は溶接
性に好ましくないためにその上限の値を1.0%とし
た。
【0026】CuはNiとほぼ同様の効果を有するとと
もに耐食性、耐水素誘起割れ性などにも効果があり、
0.1%以上の添加が必要である。しかし過剰に添加す
ると析出硬化により母材、HAZの靱性劣化や熱間圧延
時にCu−クラックが発生するために、その上限の値を
2.0%とした。
【0027】Crは母材、溶接部の強度を増加させる効
果があり、0.1%以上の添加が必要である。しかし、
多過ぎると現地溶接性やHAZ靱性を著しく劣化させ
る。このためCr量の上限は1.0%とした。
【0028】NbはNと結合して炭窒化物Nb(CN)
を形成し、高温強度の向上に効果を発揮する。また制御
圧延時にγの再結晶を抑制して結晶粒を微細化するだけ
でなく、析出硬化や焼入れ性の増大にも寄与し、鋼を強
靱化する作用を有する。これらの効果を得るためには最
低0.005%のNbが必要である。しかしながら、N
b量が多すぎるとHAZ靱性が劣化するので、その上限
の値を0.15%に限定した。
【0029】VはNと結合してVNを形成し高温強度を
向上させる。その効果を発揮させるためには0.01%
以上の添加が必要である。また上限は現地溶接性、HA
Z靱性の点から0.3%まで許容できる。
【0030】Bは極微量で鋼の焼入れ性を飛躍的に高
め、良好な強度と靱性が得られる。この効果を発揮させ
るためには0.0003%以上の添加が必要である。ま
た多すぎるとHAZ靱性を劣化させるので、その上限の
値を0.005%に限定した。
【0031】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピ−試験における吸収エネルギ
−の増加など)させる。0.001%未満ではその効果
が少なく、また0.005%を超えて添加するとCaO
−CaSが大量に生成してクラスタ−、大型介在物とな
り、鋼の清浄度を害する。このためCa添加量を0.0
01〜0.005%に制限した。
【0032】次に溶接鋼管における溶接金属の成分限定
理由について説明する。溶接鋼管の溶接部において十分
な高温強度を満足させるためには、溶接金属中にMoを
0.3%以上含有させることが必要である。しかしなが
ら、Mo添加量が多すぎると靭性が劣化するために、そ
の上限の値を1.0%に限定した。
【0033】Cは溶接金属の強度確保ならびにMoの添
加効果を発揮させるために必要であり、その下限は0.
04%である。しかしながら、C量が多すぎると低温靱
性が劣化するので、その上限の値を0.15%とした。
【0034】Siは脱酸や強度向上のため添加する元素
であるが、多く添加すると低温靱性を劣化させるので、
上限を0.6%とした。
【0035】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可
欠な元素であり、その下限は0.4%である。しかし、
Mnが多すぎると焼入れ性が増加して低温靱性を劣化さ
せるので、上限を2.0%とした。
【0036】不可避的不純物元素であるP、S量を0.
03%以下、0.005%以下とする。この主たる理由
は低温靱性をより一層向上させるためである。P量の低
減は粒界破壊を防止し、低温靱性を向上させる。また、
S量の低減は高温割れの防止や延性、靱性を向上させる
効果がある。
【0037】Tiは微細なNやOと結合し、TiNやT
iOを形成し、ミクロ組織を微細化して、溶接金属の低
温靱性を改善する。この効果を発揮させるためには0.
005%以上の添加が必要である。また多すぎるとTi
Cによる析出硬化が生じ、低温靱性を劣化させるので、
その上限の値を0.03%に限定した。
【0038】Alは通常脱酸元素として効果を有する。
しかし、Al量が0.09%を超えるとAl系非金属介
在物が増加して、鋼の清浄度を劣化させるので、上限を
0.09%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分であ
り、Alは必ずしも添加する必要はない。
【0039】NはTiNを形成し、ミクロ組織を微細化
して、低温靱性を向上させる。このために必要な最小量
は0.001%である。しかし、N量が多すぎると固溶
Nによる靱性の劣化の原因となるので、その上限の値は
0.006%に抑える必要がある。
【0040】Oは溶接金属中において酸化物を形成し、
粒内変態フェライトの核として作用し、組織の微細化に
効果がある。しかし、多すぎると溶接金属の低温靱性が
劣化するとともに、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥を起
こす。このためO量の下限を0.01%、上限を0.0
5%とした。
【0041】次に、Ni、Cu、Cr、Nb、V、B、
Ca、Mgを添加する理由について説明する。基本とな
る成分に、さらに必要に応じてこれらの元素を添加する
主たる目的は本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、
溶接金属の強度・低温靱性などの特性の向上を図るため
である。したがって、その添加量は自ら制限されるべき
性質のものである。
【0042】Niは靱性に悪影響を及ぼすことなく強
度、低温靱性を向上させるが、0.1%未満では効果が
薄く、1.0%超の添加は溶接性に好ましくないために
その上限の値を1.0%とした。
【0043】CuはNiとほぼ同様の効果を有すると共
に耐食性、耐水素誘起割れ性などにも効果があり、0.
1%以上の添加が必要である。しかし過剰に添加すると
析出硬化により靱性の劣化が発生するために、その上限
の値を2.0%とした。
【0044】Crは溶接金属の強度を増加させる効果が
あり、0.1%以上の添加が必要である。しかし、多過
ぎると現地溶接性や靱性を著しく劣化させる。このため
Cr量の上限は1.0%とした。
【0045】Nbは結晶粒を微細化するだけでなく、析
出硬化や焼入れ性の増大にも寄与し、強靱化する作用を
有する。この効果を得るためには最低0.005%のN
bが必要である。しかしながら、Nb量が多すぎると靱
性が劣化するので、その上限の値を0.15%に限定し
た。
【0046】VはNbとほぼ同様の効果を有するが、そ
の効果はNbに比較して格段に弱い。その効果を発揮さ
せるためには0.01%以上の添加が必要である。また
上限は低温靱性の点から0.3%まで許容できる。
【0047】Bは極微量で焼入れ性を飛躍的に高め、良
好な強度と靱性が得られる。この効果を発揮させるため
には0.0003%以上の添加が必要である。また多す
ぎると低温靱性を劣化させるので、その上限の値を0.
005%に限定した。
【0048】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピ−試験における吸収エネルギ
−の増加など)させる。0.001%以下ではその効果
が少なく、また0.005%を超えて添加するとCaO
−CaSが大量に生成してクラスタ−、大型介在物とな
り、鋼の清浄度を害する。このためCa添加量を0.0
01〜0.005%に制限した。
【0049】Mgは溶接金属中において酸化物を形成
し、凝固組織の微細化や粒内変態フェライトの核として
作用し、組織の微細化に効果がある。しかし、多すぎる
と溶接金属の低温靱性が劣化する。このためMg量の下
限を0.0001%、上限を0.0050%とした。
【0050】また溶接金属の靭性を確保するために溶接
金属中の成分組成を(1) 式で示されるPcmで0.12〜
0.25%に限定する必要がある。Pcmの下限は溶接金
属中の粒界フェライトの生成を抑制し、靭性を確保する
ための必要最低量である。また0.25%超になると靭
性が劣化するためにPcmを0.12〜0.25%の範囲
に限定する。
【0051】
【実施例】以下に本発明の実施例について述べる。種々
の鋼成分の鋼板を用いて溶接鋼管を製造し、諸性質を調
査した。鋼管は内外面1層のSAW(サブマ−ジドア−
ク溶接)を実施して製造した。大入熱溶接HAZ靭性は
溶接入熱700kJ/cm のエレクトロスラグ溶接を行い、
溶融線から1mmの位置にシャルピーのノッチを導入して
評価した。表1に本発明例鋼管(母材、溶接金属)の成
分を示す。表2に比較例の成分を示す。表3に本発明鋼
管及び比較例の母材部及び溶接部の機械的性質を示す。
本発明の溶接鋼管の母材および溶接部は十分な高温強度
を有する。また大入熱溶接HAZ靭性も0℃において7
0J以上の良好な値を有する。
【0052】これに対して比較鋼は化学成分が適切でな
く、いずれかの特性が劣る。鋼11は母材のC量が多い
ため母材の低温靱性が劣る。鋼12は母材のMo量が少
ないため母材の高温強度が低い。鋼13は母材のMo量
が多いため母材の低温靱性が劣る。鋼14は溶接金属の
Mo量が少ないため溶接部の高温強度が低い。鋼15は
溶接金属のMo量が多いため溶接部の低温靭性が劣る。
鋼16は母材のTi量が少ないため母材、HAZの低温
靭性が劣る。鋼17は母材のTi量が多いため母材の低
温靭性が劣る。鋼18は母材のAl量が少ないためHA
Zの低温靭性が劣る。鋼19は母材のAl量が多いため
清浄度が劣化し、母材の低温靭性が劣る。鋼20は母材
のN量が少なく、溶接金属のSが多いためHAZの低温
靭性が劣る。鋼21は母材において(Mg,Al)酸化
物を内包する0.01以上0.5μm未満のTiN個数
が少ないためHAZの低温靭性が劣る。鋼22は溶接金
属のPcm値が低いため溶接金属の低温靭性が劣る。鋼2
3は溶接金属のPcm値が高いため溶接金属の低温靭性が
劣る。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】本発明による優れた溶接HAZ靭性と耐
火性を有する鋼管を建築鋼構造物の部材として採用する
ことにより、建築鋼構造物の製造コストが大幅に低減さ
れるとともに、建築鋼構造物の信頼性が大幅に向上し
た。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050以下、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、M
    gとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μ
    mのTiNが10000個/mm2 以上含有することを
    特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火鋼材。
  2. 【請求項2】 質量%で、さらに、 Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005 のうち一種または二種以上を含有することを特徴とする
    請求項1に記載の溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火
    鋼材。
  3. 【請求項3】 質量%で、 C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050以下、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、M
    gとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μ
    mのTiNが10000個/mm2 以上含有する母材
    と、質量%で C :0.04〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.4〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Mo:0.3〜1.0、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.09以下、 N :0.001〜0.006、 O :0.01〜0.05 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、さ
    らに下記(1)式で与えられるPcmが0.12〜0.25
    %である溶接金属部とよりなることを特徴とする溶接熱
    影響部靱性に優れた建築用耐火溶接鋼管。 Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60 +Mo/15+V/10+5B ……………(1) (成分単位:質量%)
  4. 【請求項4】 母材成分に、質量%で、さらに Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005 のうち一種または二種以上含有することを特徴とする請
    求項3に記載の溶接熱影響部靱性に優れた建築用耐火溶
    接鋼管。
  5. 【請求項5】 溶接金属部成分に、質量%で、さらに Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜2.0、 Cr:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.15、 V :0.01〜0.3、 B :0.0003〜0.005、 Ca:0.001〜0.005、 Mg:0.0001〜0.0050 のうち一種または二種以上含有することを特徴とする請
    求項3または4に記載の溶接熱影響部靱性に優れた建築
    用耐火溶接鋼管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007107055A (ja) * 2005-10-13 2007-04-26 Nippon Steel Corp 高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手
JP2015085331A (ja) * 2013-10-28 2015-05-07 新日鐵住金株式会社 極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属、及び、それを形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックス

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JP4495060B2 (ja) * 2005-10-13 2010-06-30 新日本製鐵株式会社 高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手
JP2015085331A (ja) * 2013-10-28 2015-05-07 新日鐵住金株式会社 極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属、及び、それを形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックス

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