JP6180153B2 - ポリフェニレンエーテル組成物 - Google Patents
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Description
また、プリント配線板は製品安全面から難燃性が必要であるため、プリント配線板を構成する絶縁樹脂には芳香族臭素化物等の有機ハロゲン化合物を配合し難燃性を付与する方法が一般的に用いられていた。しかしながら、有機ハロゲン化合物は燃焼時に毒性の強いハロゲン化水素やダイオキシン等を発生する可能性があり、ハロゲン原子を含有しないリン化合物等の難燃剤への代替が求められている。
また、以下の特許文献2には、ホスフィン酸アルミニウムとホスファフェナントレン化合物を難燃剤として併用して、エポキシ樹脂組成物としている。
本発明が解決しようとする課題は、ハロゲン系難燃剤を使用せずに良好な難燃性を有し、優れたTgを有する硬化物を与え、成型時の層間剥離性が改善されたPPE樹脂組成物を提供することである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
本実施の形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、以下の式(1):
P原子とN原子を含み且つ前記(1)に示す基本骨格を有する樹脂と非相溶性である化合物を5重量部以上40重量部以下で含む。
また、硬化物の耐熱性が良好な観点から、前記(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分は、(b1)分子内に反応性C-C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分であることができる。さらに、前記(b1)分子内に反応性C-C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分は、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好な観点から、好ましくはトリアルケニルイソシアヌレートであることができる。
このような、式(4)で表されるリン系難燃剤の、前記熱硬化性樹脂100質量部に対する配合量としては、1質量部以上30質量部未満、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。このような配合量とすることは、樹脂の流動性を適切な範囲に制御できる観点から好ましい。
前記樹脂組成物は、上述の各成分に加え、架橋型硬化性成分を含有することが好ましい。
架橋型硬化性成分としては、上述した(a)エポキシ樹脂、又は(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分のほか、フェノール樹脂、シアネートエステル類などの熱硬化性樹脂や、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、ジアリルシアヌレート等、分子内に2個以上の不飽和基をもつモノマー、等が挙げられる。
また、このような架橋型硬化性成分の配合量としては、前記PPE100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、最も好ましくは20〜70質量部である。架橋型硬化性成分の配合量を5質量部以上とすることは、樹脂組成物の溶融粘度を良好に低減させる観点や、加熱加圧成型などによる成型性が良好となる観点、また、樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から好ましい。一方、架橋型硬化性成分の量を95質量部以下とすることは、PPEの有する優れた誘電率や誘電正接を発現させる観点から好ましい。
開始剤としては、例えば、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができるという観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体が、樹脂組成物の溶剤への溶解性及び成形性の観点から好ましく用いることができる。
ここで、他の樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、PPEの優れた誘電特性を硬化性樹脂組成物に反映させるため、硬化性樹脂組成物に占めるエポキシ樹脂の範囲を0質量%以上10質量%以下とするのが好ましく、中でも接着性を向上させる観点から0.1質量%以上10質量%以下とするのがより好ましい。
無機充填剤としては、無機充填剤として一般的に使用されているものであれば特に制限されるものではなく、例えばタルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。誘電特性を考慮する場合には、シリカを使用することが望ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の5〜40質量%の割合で配合することが望ましい。
上述したPPE樹脂組成物は、溶媒と配合してワニスとすることができる。また、当該ワニスを基材に塗布し、次いで、該ワニスが塗布された基材から溶媒を除去・乾燥して、樹脂組成物複合体(例えば、いわゆるプリプレグ)を得ることができる。更に、当該樹脂組成物複合体を硬化し、硬化体の層を含む積層体を形成することができる。
このような基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布;アスベスト布、金属繊維布、その他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等を単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
また、プリプレグは、PPE100質量部に対して、熱硬化成分を、好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは20〜70質量部含有する。熱硬化成分の量が5質量部以上である場合、プリプレグを用いて基板を形成することによって積層板を形成する際、樹脂が基材中に良好に含浸し絶縁信頼性に優れた積層板が得られ、また、95質量部以下である場合、弾性率等の機械特性や誘電特性に優れた積層板が得られる。
尚、本開示で上記した各パラメータは、以下の実施例において説明する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法によって測定される値である。
プリプレグを8枚重ねたものの両面に厚さ18μmの銅箔(古河電工製、GTS−MP箔)を重ねて、200℃、40kg/cm2の条件で60分間加熱加圧成型し、厚さ1.2mmの銅張積層板を作製した。銅箔をエッチングにより除去して得た積層板より125mm×13mmの評価用サンプルを切り出し、UL−94難燃性試験に準じた方法で評価した。
銅張積層板の層間同士を一定速度で引き剥がす際の応力を測定した。35μm銅箔(GTS−MP箔、古河電工株式会社製)を銅箔として用いて作製した2層積層板を15mm×長さ150mmのサイズに切り出した。オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、2層間を90°の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
平均値が0.5N/mm以上の場合は、「良好」、0.5N/mm以下の場合は「不良」と記載した。
プリプレグを2枚重ねたものの両面に厚さ18μmの銅箔(古河電工製、GTS−MP箔)を重ねて、200℃、40kg/cm2の条件で60分間加熱加圧成型し、厚さ0.3mmの銅張積層板を作製した。銅箔をエッチングにより除去し、水洗して風乾した後の基板について、Rheo Vibron(エー・アンド・ディー製)で、昇温速度5℃/min、引っ張り周波数10Hzで粘弾性測定を実施し、tanδのピークの現れる温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。
・PPE(ポリフェニレンエーテル):2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル(旭化成ケミカルズ製、S202Aグレード、数平均分子量18000)
・TAIC:架橋剤、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)
・Perbutyl P:硬化開始剤、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日油製)
・Silica:球状シリカ(龍森製)
・OP935:難燃剤。ジエチルホスフィン酸Al(クラリアントジャパン製)
・ホスファゼン1:フェノキシシクロホスファゼン(伏見製薬所製、FP110)
・ホスファゼン2:シアノフェノキシシクロホスファゼン(特開WO2007/080998の実施例10に記載の方法に従って合成した)
・フェナントレン:10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、SANKO−BCA)
・メラミンシアヌレート:堺化学工業株式会社製、MC2010Nグレード
実施例1〜4、及び比較例1〜8において、以下の表1に示す組成の通りトルエンを用いてワニスを調整し、0.1mm厚みのEガラスクロス(旭シュエーベル製、2116タイプ)に含浸させ、溶媒除去することによって、樹脂含有率61%のプリプレグを得た。前記したように、各種評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1に示すように、アルキルホスフィン酸アルミニウムを単体で用いた場合、難燃性はV−1に留まった上に層間接着性も劣っていた。比較例2に示すようにホスファゼンを単体で用いた場合ではTgが大幅に低下してしまった。比較例3に示すようにホスファゼンの添加量が少ない場合では難燃性に劣り、比較例4に示すように多い場合にはTgが低下してしまった。また、比較例5に示すようにアルキルホスフィン酸アルミニウムが少ない場合、難燃性がV−1に留まり、比較例6に示すように過剰な場合にもV−1に留まった上、層間接着性が劣っていた。また、ホスファゼンの代わりに縮合リン酸エステルやメラミンシアヌレートを用いた場合では、層間剥離性が大きく劣っていた。
Claims (9)
- 以下の式(1):
- 前記式(1)で表される基本骨格を有する樹脂の、前記熱硬化性樹脂中に占める割合が、50質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記熱硬化性成分が、(a)エポキシ樹脂、又は(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分が、(b1)分子内に反応性C-C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分である、請求項3に記載の樹脂組成物。
- 前記(b1)分子内に反応性C-C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分が、トリアルケニルイソシアヌレートである、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物と溶媒を含むワニス。
- 請求項7に記載のワニスと基材を複合し、溶媒を乾燥除去して製造した樹脂複合体。
- 請求項8に記載の樹脂複合体を硬化してなる硬化体の層を含む積層体。
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