以下、本発明を具体化した実施例1〜12を図面を参照しつつ説明する。実施例1〜12の圧縮機は、容量可変型斜板式圧縮機である。これらの各圧縮機は、いずれも車両に搭載されており、車両用空調装置の冷凍回路を構成している。
(実施例1)
図1に示すように、この圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、斜板5と、リンク機構7と、複数のピストン9と、一対のシュー11a、11bと、アクチュエータ13と、図2に示す制御機構15とを備えている。
図1に示すように、ハウジング1は、圧縮機の前方に位置するフロントハウジング17と、圧縮機の後方に位置するリヤハウジング19と、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置する第1、2シリンダブロック21、23と、第1、2弁形成プレート39、41とを有している。
フロントハウジング17には、前方に向かってボス17aが形成されている。このボス17a内には、駆動軸3との間に軸封装置25が設けられている。また、フロントハウジング17内には、第1吸入室27a及び第1吐出室29aが形成されている。第1吸入室27aはフロントハウジング17の内周側に位置し、第1吐出室29aはフロントハウジング17の外周側に位置している。
さらに、フロントハウジング17には、第1フロント側連通路18aが形成されている。この第1フロント側連通路18aは、前端側が第1吐出室29aに連通しており、後端側がフロントハウジング17の後端に開いている。
リヤハウジング19には、上記の制御機構15が設けられている。また、リヤハウジング19には、第2吸入室27b、第2吐出室29b及び圧力調整室31が形成されている。第2吸入室27bはリヤハウジング19の内周側に位置しており、第2吐出室29bはリヤハウジング19の外周側に位置している。圧力調整室31はリヤハウジング19の中心部分に位置している。
さらに、リヤハウジング19には、第1リヤ側連通路20aが形成されている。この第1リヤ側連通路20aは、後端側が第2吐出室29bに連通しており、前端側がリヤハウジング19の前端に開いている。
第1シリンダブロック21と第2シリンダブロック23との間には、斜板室33が形成されている。この斜板室33は、ハウジング1における前後方向の略中央に位置している。
第1シリンダブロック21には、複数個の第1シリンダボア21aが周方向に等角度間隔でそれぞれ平行に形成されている。また、第1シリンダブロック21には、駆動軸3を挿通させる第1軸孔21bが形成されている。この第1軸孔21b内には、第1滑り軸受22aが設けられている。なお、第1滑り軸受22aに換えて、転がり軸受を設けても良い。
さらに、第1シリンダブロック21には、第1軸孔21bと連通して第1軸孔21bと同軸をなす第1凹部21cが形成されている。第1凹部21cは斜板室33と連通している。第1凹部21cは、前端に向かって段状に縮径する形状とされている。第1凹部21cの前端には、第1スラスト軸受35aが設けられている。さらに、第1シリンダブロック21には、斜板室33と第1吸入室27aとを連通する第1連絡路37aが形成されている。また、図3に示すように、第1シリンダブロック21には、後述する各第1吸入リード弁391aの最大開度を規制する第1リテーナ溝21eが凹設されている。
図1に示すように、第1シリンダブロック21には、第2フロント側連通路18bが形成されている。この第2フロント側連通路18bは、前端が第1シリンダブロック21の前端側に開いており、後端が第1シリンダブロック21の後端側に開いている。
第2シリンダブロック23にも、第1シリンダブロック21と同様、複数個の第2シリンダボア23aが形成されている。各第2シリンダボア23aは、各第1シリンダボア21aと前後で対になっている。各第1シリンダボア21aと各第2シリンダボア23aとは同径に形成されている。
また、第2シリンダブロック23には、駆動軸3を挿通させる第2軸孔23bが形成されている。第2軸孔23bは圧力調整室31と連通している。この第2軸孔23内には、第2滑り軸受22bが設けられている。なお、第2滑り軸受22bに換えて、転がり軸受を設けても良い。
また、第2シリンダブロック23には、第2軸孔23bと連通して第2軸孔23bと同軸をなす第2凹部23cが形成されている。第2凹部23cも斜板室33と連通している。第2凹部23cは、後端に向かって段状に縮径する形状とされている。第2凹部23cの後端には、第2スラスト軸受35bが設けられている。さらに、第2シリンダブロック23には、斜板室33と第2吸入室27bとを連通する第2連絡路37bが形成されている。上記の第1連絡路37aと第2連絡路37bとは、同径に形成されている。
図3に示すように、第2シリンダブロック23には、後述する各第2吸入リード弁411aの最大開度を規制する第2リテーナ溝23eが凹設されている。第1シリンダブロック21に形成された第1リテーナ溝21eと、第2シリンダブロック23に形成された第2リテーナ溝23eとは同形状であり、互いの深さは等しくなっている。
図1に示すように、第2シリンダブロック23には、吐出ポート230と、合流吐出室231と、第3フロント側連通路18cと、第2リヤ側連通路20bと、吸入ポート330とが形成されている。吐出ポート230と合流吐出室231とは、互いに連通している。これらの吐出ポート230及び合流吐出室231は、第2シリンダブロック23の前端側寄りの位置に形成されており、ハウジング1の前後方向の略中央に位置している。合流吐出室231は、吐出ポート230を介して管路を構成する図示しない凝縮器と接続している。
第3フロント側連通路18cは、前端側が第2シリンダブロック23の前端に開いており、後端側が合流吐出室231に連通している。この第3フロント側連通路18cは、第1シリンダブロック21と第2シリンダブロック23とが接合することで、第2フロント側連通路18bの後端側と連通する。
第2リヤ側連通路20bは、前端側が合流吐出室231に連通しており、後端側が第2シリンダブロック23の後端に開いている。
吸入ポート330は、第2シリンダブロック23の前端側寄りの位置に形成されており、ハウジング1の前後方向の略中央に位置している。この吸入ポート330を介して斜板室33は、管路を構成する図示しない蒸発器と接続している。また、吸入ポート330がハウジング1の前後方向の略中央に位置していることで、この圧縮機では、第1連絡路37aから吸入ポート330までの距離と、第2連絡路37bから吸入ポート330までの距離とが等しくなっている。
第1弁形成プレート39は、フロントハウジング17と第1シリンダブロック21との間に設けられている。また、第2弁形成プレート41は、リヤハウジング19と第2シリンダブロック23との間に設けられている。
図3に示すように、第1弁形成プレート39は、第1バルブプレート390と、第1吸入弁プレート391と、第1吐出弁プレート392と、第1リテーナプレート393とを有している。第1バルブプレート390、第1吐出弁プレート392及び第1リテーナプレート393には、第1シリンダボア21aと同数の第1吸入孔390aが形成されている。また、第1バルブプレート390及び第1吸入弁プレート391には、第1シリンダボア21aと同数の第1吐出孔390bが形成されている。さらに、第1バルブプレート390、第1吸入弁プレート391、第1吐出弁プレート392及び第1リテーナプレート393には、第1吸入連通孔390cが形成されている。また、第1バルブプレート390及び第1吸入弁プレート391には、第1吐出連通孔390dが形成されている。
各第1シリンダボア21aは、各第1吸入孔390aを通じて第1吸入室27aと連通している。また、各第1シリンダボア21aは、各第1吐出孔390bを通じて第1吐出室29aと連通している。第1吸入連通孔390cを通じて、第1吸入室27aと第1連絡路37aとが連通している。第1吐出連通孔390dを通じて、第1フロント側連通路18aと第2フロント側連通路18bとが連通している。
第1吸入弁プレート391は、第1バルブプレート390の後面に設けられている。この第1吸入弁プレート391には、弾性変形により各第1吸入孔390aを開閉可能な第1吸入リード弁391aが複数形成されている。また、第1吐出弁プレート392は、第1バルブプレート390の前面に設けられている。この第1吐出弁プレート392には、弾性変形により各第1吐出孔390bを開閉可能な第1吐出リード弁392aが複数形成されている。第1リテーナプレート393は、第1吐出弁プレート392の前面に設けられている。この第1リテーナプレート393は、各第1吐出リード弁392aの最大開度を規制する。
第2弁形成プレート41は、第2バルブプレート410と、第2吸入弁プレート411と、第2吐出弁プレート412と、第2リテーナプレート413とを有している。第2バルブプレート410、第2吐出弁プレート412及び第2リテーナプレート413には、第2シリンダボア23aと同数の第2吸入孔410aが形成されている。また、第2バルブプレート410及び第2吸入弁プレート411には、第2シリンダボア23aと同数の第2吐出孔410bが形成されている。さらに、第2バルブプレート410、第2吸入弁プレート411、第2吐出弁プレート412及び第2リテーナプレート413には、第2吸入連通孔410cと挿通孔410eとが形成されている。また、第2バルブプレート410及び第2吸入弁プレート411には、第2吐出連通孔410dが形成されている。
各第2シリンダボア23aは、各第2吸入孔410aを通じて第2吸入室27bと連通している。また、各第2シリンダボア23aは、各第2吐出孔410bを通じて第2吐出室29bと連通している。第2吸入連通孔410cを通じて、第2吸入室27bと第2連絡路37bとが連通している。第2吐出連通孔410dを通じて、第1リヤ側連通路20aと第2リヤ側連通路20bとが連通している。挿通孔410eには駆動軸3の後端が挿通されている。
第2吸入弁プレート411は、第2バルブプレート410の前面に設けられている。この第2吸入弁プレート411には、弾性変形により各第2吸入孔410aを開閉可能な第2吸入リード弁411aが複数形成されている。また、第2吐出弁プレート412は、第2バルブプレート410の後面に設けられている。この第2吐出弁プレート412には、弾性変形により各第2吐出孔410bを開閉可能な第2吐出リード弁412aが複数形成されている。第2リテーナプレート413は、第2吐出弁プレート412の後面に設けられている。この第2リテーナプレート413は、各第2吐出リード弁412aの最大開度を規制する。
上記の各第1吸入孔390aと各第2吸入孔410aとは、開口面積が等しく形成されている。また、各第1吐出孔390bと各第2吐出孔410bとについても、開口面積が等しく形成されている。さらに、第1吸入連通孔390cと第2吸入連通孔410cとについても開口面積が等しく形成されている。また、第1吐出連通孔390dと第2吐出連通孔410dとについても開口面積が等しく形成されている。
第2吸入弁プレート411は、第1吸入弁プレート391よりも肉薄に形成されている。これにより、第1吸入リード弁391aと比較して、第2吸入リード弁411aは肉薄となっている。第1吐出弁プレート392と第2吐出弁プレート412とは肉厚が等しく形成されている。これにより、第1吐出リード弁392aと第2吐出リード弁412aとは厚さが等しくなっている。そして、この圧縮機では、第1リテーナプレート393によって規制される第1吐出リード弁392aの最大開度と、第2リテーナプレート413によって規制される第2吐出リード弁412aの最大開度とが等しくなるように、第1リテーナプレート393と第2リテーナプレート413とが対称で等しい形状で形成されている。なお、図1では、これら第1、2弁形成プレート39、41の形状を簡略して図示している。後述する図4、7〜9、13〜15についても同様である。
図1に示すように、この圧縮機では、吸入行程時に、蒸発器から吸入ポート330を通じて斜板室33に吸入された冷媒ガスは、第1連絡路37aを経て第1吸入室27aに至り、各第1吸入孔390aを経て各第1圧縮室21dに吸入される。これにより、この圧縮機では、これらの斜板室33、第1連絡路37a、第1吸入室27a及び各第1吸入孔390aによって、第1吸入流路2が形成されている。
また、同じく蒸発器から吸入ポート330を通じて斜板室33に吸入された冷媒ガスは、第2連絡路37bを経て第2吸入室27bに至り、各第2吸入孔410aを経て各第2圧縮室23dに吸入される。これにより、この圧縮機では、これらの斜板室33、第2連絡路37b、第2吸入室27b及び各第2吸入孔410aによって、第2吸入流路4が形成されている。これらの第1吸入流路2の内径と第2吸入流路4の内径とは等しくなっている。また、第1吸入流路2の距離と第2吸入流路4の距離とは等しくなっている。
さらに、この圧縮機では、第1フロント側連通路18a、第1吐出連通孔390d、第2フロント側連通路18b及び第3フロント側連通路18cによって、第1連通路18が形成されている。また、第1リヤ側連通路20a、第2吐出連通孔410d及び第2リヤ側連通路20bによって、第2連通路20が形成されている。
そして、この圧縮機では、第1吐出室29aに吐出された冷媒ガスが第1連通路18を流通して合流吐出室231に至り、吐出ポート230から凝縮器に向かって吐出される。これにより、この圧縮機では、これらの第1吐出室29a、第1連通路18及び合流吐出室231により第1吐出流路6が形成されている。
同様に、この圧縮機では、第2吐出室29bに吐出された冷媒ガスが第2連通路20を流通して合流吐出室231に至り、吐出ポート230から凝縮器に向かって吐出される。これにより、この圧縮機では、これらの第2吐出室29a、第2連通路20及び合流吐出室231により第2吐出流路8が形成されている。
ここで、第1連通路18を構成する上記の第1フロント側連通路18a等と、第2連通路20を構成する上記の第1リヤ側連通路20a等とは、互いに内径が等しく形成されている。これにより、第1吐出流路6と第2吐出流路8とは、内径が等しく形成されている。
また、この圧縮機では、上記のように、吐出ポート230及び合流吐出室231がハウジング1の略中央に位置している。そして、第1フロント側連通路18aと第1リヤ側連通路20aとは長さが等しくなっている。さらに、第2フロント側連通路18bと第3フロント側連通路18cとの組み合わせの長さと、第2リヤ側連通路20bとの長さとは等しくなっている。これらにより、この圧縮機では、第1吐出流路6の距離と第2吐出流路8の距離とが等しくなっている。
また、この圧縮機では、第1、2連絡路37a、37b及び第1、2吸入連通孔390c、410cにより、第1、2吸入室27a、27bと斜板室33とが互いに連通している。このため、第1、2吸入室27a、27b内と斜板室33内とは、圧力がほぼ等しくなっている。そして、斜板室33には、吸入ポート330を通じて蒸発器を経た冷媒ガスが流入することから、斜板室33内及び第1、2吸入室27a、27b内の各圧力は、第1、2吐出室29a、29b内よりも低圧である。
駆動軸3は、軸本体30と支持部材43とで構成されている。この軸本体30は、ボス17aから後方に向かって延びており、第1、2滑り軸受22a、22b内に挿通されている。これにより、軸本体30、ひいては、駆動軸3は、回転軸心O周りで回転可能に軸支されている。軸本体30の前端はボス17a内に位置しており、後端は圧力調整室31内に位置している。
また、この軸本体30には、斜板5とアクチュエータ13とフランジ3aとがそれぞれ設けられている。これらの斜板5とアクチュエータ13とフランジ3aとは、それぞれ斜板室33内に配置されている。フランジ3aは第1スラスト軸受35aとアクチュエータ13との間に配置されている。
支持部材43は、軸本体30の後端側に圧入されている。この支持部材43には、第2スラスト軸受35bと当接するフランジ43aが形成されているとともに、後述する第2ピン47bが挿通される取付部(図示略)が形成されている。さらに、支持部材43には、第2復帰ばね44bの後端が固定されている。この第2復帰ばね44bは、回転軸心O方向で、支持部材43側から斜板室33側に向かって延びている。
また、軸本体30内には、後端から前方に向かって回転軸心O方向に延びる軸路3bと、軸路3bの前端から径方向に延びて軸本体30の外周面に開く径路3cとが形成されている。軸路3bの後端は圧力調整室31に開いている。一方、径路3cは、後述する制御圧室13cに開いている。
軸本体30の先端にはねじ部3dが形成されている。このねじ部3dを介して駆動軸3は、図示しないプーリ又は電磁クラッチと接続されている。これらのプーリ又は電磁クラッチのプーリには車両のエンジンによって駆動される図示しないベルトが巻き掛けられている。
斜板5は環状の平板形状をなしており、前面5aと後面5bとを有している。前面5aは、斜板室33内において圧縮機の前方に面している。また、後面5bは、斜板室33内において圧縮機の後方に面している。これらの前面5a及び後面5bがそれぞれ本発明における一面及び他面に相当している。
斜板5はリングプレート45に固定されている。このリングプレート45は環状の平板形状に形成されており、中心部に挿通孔45aが形成されている。斜板5は、斜板室33内において挿通孔45aに軸本体30が挿通されることにより、駆動軸3に取り付けられている。
リンク機構7はラグアーム49を有している。ラグアーム49は、斜板室33内において、斜板5よりも後方に配置されており、斜板5と支持部材43との間に位置している。ラグアーム49は、前端側から後端側に向かって略L字形状となるように形成されている。ラグアーム49は、図4に示すように、回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が最小になった時に支持部材43のフランジ43aと当接するようになっている。このため、この圧縮機では、ラグアーム49によって、斜板5の傾斜角度を最小値に維持することが可能となっている。また、ラグアーム49の前端側には、ウェイト部49aが形成されている。ウェイト部49aは、アクチュエータ13の周方向におよそ半周にわたって延びている。なお、ウェイト部49aの形状は適宜設計することが可能である。
図1に示すように、ラグアーム49の前端側は、第1ピン47aによってリングプレート45の一端側と接続されている。これにより、ラグアーム49の前端側は、第1ピン47aの軸心を第1揺動軸心M1として、リングプレート45の一端側、すなわち斜板5に対し、第1揺動軸心M1周りで揺動可能に支持されている。この第1揺動軸心M1は、駆動軸3の回転軸心Oと直交する方向に延びている。
ラグアーム49の後端側は、第2ピン47bによって支持部材43と接続されている。これにより、ラグアーム49の後端側は、第2ピン47bの軸心を第2揺動軸心M2として、支持部材43、すなわち駆動軸3に対し、第2揺動軸心M2周りで揺動可能に支持されている。この第2揺動軸心M2は第1揺動軸心M1と平行に延びている。これらのラグアーム49、第1、2ピン47a、47bが本発明におけるリンク機構7に相当している。
ウェイト部49aは、ラグアーム49の前端側、つまり、第1揺動軸心M1を基準として第2揺動軸心M2とは反対側に延在して設けられている。このため、ラグアーム49が第1ピン47aによってリングプレート45に支持されることで、ウェイト部49aはリングプレート45の溝部45bを通って、リングプレート45の前面、つまり斜板5の前面5a側に位置する。そして、斜板5が回転軸心O周りに回転することにより発生する遠心力が斜板5の前面5a側でウェイト部49aにも作用することとなる。
この圧縮機では、斜板5と駆動軸3とがリンク機構7によって接続されることにより、斜板5は駆動軸3と共に回転することが可能となっている。また、ラグアーム49の両端がそれぞれ第1揺動軸心M1及び第2揺動軸心M2周りで揺動することにより、斜板5は傾斜角度を変更することが可能となっている。
各ピストン9は、それぞれ前端側に第1頭部9aを有し、後端側に第2頭部9bを有している。各第1頭部9aは各第1シリンダボア21a内を往復動可能に収納されている。これらの各第1頭部9aと第1弁形成プレート39とにより、各第1シリンダボア21a内にそれぞれ第1圧縮室21dが区画されている。各第2頭部9bは各第2シリンダボア23a内を往復動可能に収納されている。これらの各第2頭部9bと第2弁形成プレート41とにより、各第2シリンダボア23a内にそれぞれ第2圧縮室23dが区画されている。ここで、上記のように、第1シリンダボア21aと第2シリンダボア23aとが同径であることから、第1頭部9aと第2頭部9bとは同径に形成されている。
また、各ピストン9の中央には凹部9cが形成されている。各凹部9c内には、半球状のシュー11a、11bがそれぞれ設けられている。これらのシュー11a、11bによって斜板5の回転がピストン9の往復動に変換されるようになっている。シュー11a、11bが本発明における変換機構に相当している。こうして、斜板5の傾斜角度に応じたストロークで、第1、2頭部9a、9bがそれぞれ第1、2シリンダボア21a、23a内を往復動することが可能となっている。
ここで、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度の変更に伴いピストン9のストロークが変化することで、第1頭部9aと第2頭部9bの各上死点位置が移動する。具体的には、図1に示すように、斜板5の傾斜角度が最大であり、ピストン9のストロークが最大である場合には、第1頭部9aの上死点位置は第1弁形成プレート39に最も近接した位置となり、第2頭部9bの上死点位置は第2弁形成プレート41に最も近接した位置となる。一方、図4に示すように、斜板5の傾斜角度が小さくなり、ピストン9のストロークが減少するにつれて、第1頭部9aの上死点位置は次第に第1弁形成プレート39から遠隔した位置となる。一方で、第2頭部9bの上死点位置は、ピストン9のストロークが最大である場合と殆ど変わることなく、第2弁形成プレート41に近接した位置を維持する。つまり、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度が小さくなるに伴って、第2頭部9bの上死点位置よりも第1頭部9aの上死点位置が大きく移動することとなる。
図1に示すように、アクチュエータ13は、斜板室33内に配置されている。アクチュエータ13は、斜板5よりも前方側に位置しており、第1凹部21c内に進入することが可能となっている。このアクチュエータ13は、可動体13aと固定体13bと制御圧室13cとを有している。これらの可動体13a及び固定体13bとによって、本発明におけるアクチュエータ本体が形成されている。制御圧室13cは、可動体13aと固定体13bとの間に形成されている。
可動体13aは、本体部130と周壁131とを有している。本体部130は、可動体13aの前方に位置しており、回転軸心Oから離れる方向で径方向に延びている。周壁131は、本体部130の外周縁と連続し、前方から後方に向かって延びている。また、この周壁131の後端には、連結部132が形成されている。これらの本体部130、周壁131及び連結部132により、可動体13aは有底の円筒状を呈している。
固定体13bは、可動体13aの内径とほぼ同径の円板状に形成されている。この固定体13bとリングプレート45との間には、第1復帰ばね44aが設けられている。具体的には、この第1復帰ばね44aの前端は、固定体13bに固定されており、第1復帰ばね44aの後端は、リングプレート45の他端側に固定されている。
可動体13a及び固定体13bには、軸本体30が挿通されている。これにより、可動体13aは、第1収納室21cに収納された状態で、斜板5を挟んでリンク機構7と対向した状態で配置されている。一方、固定体13bは、斜板5よりも前方で可動体13a内に配置されており、その周囲が周壁131によって取り囲まれた状態となっている。これにより、可動体13aと固定体13bとの間に制御圧室13cが形成されている。この制御圧室13cは、可動体13aの本体部130と周壁131と固定体13bとによって斜板室33から区画されている。上記のように、制御圧室13c内には径路3cが開いており、径路3c及び軸路3bを通じて、制御圧室13cは圧力調整室31と連通している。
また、軸本体30が挿通されることで、可動体13aは、駆動軸3と共に回転可能となっているとともに、斜板室33内において、駆動軸3の回転軸心O方向に移動することが可能となっている。一方、固定体13bは、軸本体30に挿通された状態で、軸本体30に固定されている。これにより、固定体13bは、駆動軸3と共に回転することのみ可能となっており、可動体13aのように移動することは不可能となっている。これにより、可動体13aは、回転軸心O方向に移動するに当たり、固定体13bに対して相対移動する。
可動体13aの連結部132には、リングプレート45の他端側が第3ピン47cによって接続されている。これにより、リングプレート45の他端側、すなわち、斜板5は、第3ピン47cの軸心を作用軸心M3として、作用動軸心M3周りで可動体13aに揺動可能に支持されている。この作用軸心M3は、第1、2揺動軸心M1、M2と平行に延びている。こうして、可動体13aは斜板5と連結された状態となっている。そして、この可動体13aは、斜板5の傾斜角度が最大になった時にフランジ3aと当接するようになっている。
図2に示すように、制御機構15は、抽気通路15aと給気通路15bと制御弁15cとオリフィス15dとを有している。
抽気通路15aは、圧力調整室31と第2吸入室27bとに接続されている。これにより、この抽気通路15aと軸路3bと径路3cとによって、制御圧室13cと圧力調整室31と第2吸入室27bとは、互いに連通した状態となっている。給気通路15bは、圧力調整室31と第2吐出室29bとに接続されている。この給気通路15bと軸路3bと径路3cとによって、制御圧室13cと圧力調整室31と第2吐出室29bとが連通している。また、給気通路15bには、オリフィス15dが設けられており、給気通路15b内を流通する冷媒ガスの流量が絞られている。
制御弁15cは抽気通路15aに設けられている。この制御弁15cは、第2吸入室27b内の圧力に基づき抽気通路15aの開度を調整することが可能となっている。これにより、制御弁15cは、抽気通路15aを流通する冷媒ガスの流量を調整することが可能となっている。
この圧縮機では、図1に示す吸入ポート330に対して蒸発器に繋がる配管が接続されるとともに、吐出ポート230に対して凝縮器に繋がる配管が接続される。凝縮器は配管及び膨張弁を介して蒸発器と接続される。これらの圧縮機、蒸発器、膨張弁、凝縮器等によって車両用空調装置の冷凍回路が構成されている。なお、蒸発器、膨張弁、凝縮器及び各配管の図示は省略する。
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板5が回転し、各ピストン9が第1、2シリンダボア21a、23a内を往復動する。このため、第1、2圧縮室21d、23dがピストンストロークに応じて容積変化を生じる。このため、この圧縮機では、第1、2圧縮室21d、23dにそれぞれ冷媒ガスを吸入する吸入行程と、第1、2圧縮室21d、23dにおいて冷媒ガスが圧縮される圧縮行程と、圧縮された冷媒ガスが第1、2圧縮室21d、23dからそれぞれ吐出される吐出行程とが繰り返し行われることとなる。
ここで、吸入行程時には、蒸発器から吸入ポート330によって斜板室33に吸入された冷媒ガスは、第1吸入流路2を流通して各第1圧縮室21dに吸入される。具体的には、冷媒ガスは第1連絡路37aを経て第1吸入室27aに至る。そして、第1吸入室27aに至った冷媒ガスは、第1圧縮室21dと第1吸入室27aとの差圧により、第1吸入リード弁391aが第1吸入孔390aを開放することによって、第1圧縮室21dに吸入されることとなる。同様に、蒸発器から吸入ポート330によって斜板室33に吸入された冷媒ガスは、第2吸入流路4を流通して各第2圧縮室23dに吸入される。具体的には、冷媒ガスは、第2連絡路37bを経て第2吸入室27bに至る。そして、第2吸入室27bに至った冷媒ガスは、第2圧縮室23dと第2吸入室27bとの差圧により、第2吸入リード弁411aが第2吸入孔410aを開放することによって、第2圧縮室21dに吸入されることとなる。
また、吐出行程時には、第1圧縮室21d内で圧縮された冷媒ガスが第1吐出流路6を流通して吐出ポート230から吐出される。具体的には、第1圧縮室21d内で圧縮された冷媒ガスが第1吐出室29aに吐出され、第1連通路18を経て合流吐出室231に至る。合流吐出室231に至った冷媒ガスは、吐出ポート230から凝縮器に吐出される。同様に、第2圧縮室23d内で圧縮された冷媒ガスが第2吐出流路8を流通して吐出ポート230から吐出される。具体的には、第2圧縮室23d内で圧縮された冷媒ガスは、第2吐出室29bに吐出され、第2連通路20を経て、合流吐出室231に至る。合流吐出室231に至った冷媒ガスは、吐出ポート230から凝縮器に吐出される。
そして、吸入行程等が行われる間、斜板5、リングプレート45、ラグアーム49及び第1ピン47aからなる回転体には斜板5の傾斜角度を小さくするピストン圧縮力が作用する。そして、斜板5の傾斜角度が変更されれば、ピストン9のストロークの増減による容量制御を行うことが可能である。
具体的には、制御機構15において、図2に示す制御弁15cが抽気通路15aを流通する冷媒ガスの流量を増大させれば、第2吐出室29b内の冷媒ガスが給気通路15b及びオリフィス15dを経て圧力調整室31内に貯留され難くなる。このため、制御圧室13cの圧力が第2吸入室27bとほぼ等しくなる。このため、斜板5に作用するピストン圧縮力によって、図4に示すように、アクチュエータ13では、可動体13aが斜板室33の後方側に向かって移動する。このため、この圧縮機では、可動体13aがラグアーム49に近接する。
これにより、第1復帰ばね44aの付勢力に抗しつつ、リングプレート45の他端側、すなわち、斜板5の他端側が作用軸心M3周りで反時計回り方向に揺動する。また、ラグアーム49の前端が第1揺動軸心M1周りで時計回り方向に揺動するとともに、ラグアーム49の後端が第2揺動軸心M2周りで時計回り方向に揺動する。このため、ラグアーム49が支持部材43のフランジ43aに接近する。これらにより、斜板5は、作用軸心M3を作用点とし、第1揺動軸心M1を支点として揺動する。このため、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が減少し、ピストン9のストロークが減少する。このため、この圧縮機では、1回転当たりの吸入及び吐出容量が小さくなる。なお、図4に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最小傾斜角度である。
ここで、この圧縮機では、ウェイト部49aに作用した遠心力も斜板5に付与される。このため、この圧縮機では、斜板5が傾斜角度を減少させる方向に変位し易くなっている。また、可動体13aが斜板室33の後方側に移動することで、可動体13aの後端がウェイト部49aの内側に位置する。これにより、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度が減少した際、可動体13aの後端のおよそ半分がウェイト部49aによって覆われた状態となる。
また、斜板5の傾斜角度が減少することで、リングプレート45が第2復帰ばね44bの前端と当接する。これにより、第2復帰ばね44bが弾性変形し、第2復帰ばね44bの前端が支持部材43に近接する。
このように、この圧縮機では、制御圧室13c内の圧力を低くして斜板室33内の圧力と同程度にすることにより、迅速に斜板5の傾斜角度を減少させることが可能となっている。このため、圧縮機では、迅速に圧縮容量を低下できる。
そして、上記のように、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度が小さくなり、ピストン9のストロークが減少することで、第1頭部9aの上死点位置が第1弁形成プレート39から遠隔する。このため、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度がゼロ度に近づくことで、第2圧縮室23d側では僅かに圧縮仕事が行われる一方、第1圧縮室21d側では圧縮仕事が行われなくなる。
一方、図2に示す制御弁15cが抽気通路15aを流通する冷媒ガスの流量を減少させれば、第2吐出室29b内の冷媒ガスが給気通路15b及びオリフィス15dを経て圧力調整室31内に貯留され易くなる。このため、制御圧室13cの圧力が第2吐出室29bとほぼ等しくなる。このため、斜板5に作用するピストン圧縮力に抗して、アクチュエータ13では、図1に示すように、可動体13aが斜板室33の前方側に向かって移動する。このため、この圧縮機では、可動体13aがラグアーム49から遠隔する。
これにより、作用軸心M3において、連結部132を通じて可動体13aが斜板5の下端側を斜板室33の前方側へ牽引する状態となる。これにより、斜板5の他端側が作用軸心M3周りで時計回り方向に揺動する。また、ラグアーム49の前端が第1揺動軸心M1周りで反時計回り方向に揺動するとともに、ラグアーム49の後端が第2揺動軸心M2周りで反時計回り方向に揺動する。このため、ラグアーム49が支持部材43のフランジ43aから離間する。これらにより、斜板5は、作用軸心M3及び第1揺動軸心M1をそれぞれ作用点及び支点とし、上述の傾斜角度が小さくなる場合と反対方向に揺動する。このため、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が増大し、ピストン9のストロークが増大することで、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が大きくなる。なお、図1に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最大傾斜角度である。
そして、この圧縮機では、図3に示すように、第1吸入孔390aと第2吸入孔410aとにおける開口面積が等しく形成されている他、第2吐出孔390bと第2吐出孔410bとにおける開口面積も等しく形成されている。これらに対し、この圧縮機では、各第2吸入リード弁411aが各第1吸入リード弁391aと比較して肉薄となっている。
このため、この圧縮機では、各第1吸入リード弁391aの開弁抵抗よりも各第2吸入リード弁411aの開弁抵抗の方が小さくなっている。これにより、この圧縮機では、吸入行程時において、第1吸入リード弁391aが第1吸入孔390aを開放する場合に比べて、第2吸入リード弁411aは第2吸入孔410aを開放し易くなる。このため、この圧縮機では、吸入行程時に第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dに対して冷媒ガスが吸入され易くなり、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。つまり、この圧縮機では、第1頭部9aに作用する吸入抵抗力と、第2頭部9bに作用する吸入抵抗力とに差が生じることとなる。
このように、この圧縮機では、斜板5が最大傾斜角度にある状態において第2頭部9bが上死点に位置する際の第2圧縮室23dの圧力は、斜板5が最大傾斜角度にある状態において第1頭部9aが上死点に位置する際の第1圧縮室21dの圧力よりも高くなる。このため、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなり、第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重とに差が生じる。
そして、この圧縮機では、可動体13aが斜板5の傾斜角度を増大させる方向に移動する際に、第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となる。これにより、この圧縮機では、制御圧室13cの圧力変化に応じて可動体13aが速やかに移動可能となる。このため、この圧縮機では、制御機構15によって圧縮容量の拡大を迅速に行うことが可能となる。
また、この圧縮機では、アクチュエータ13の応答性を高くするに当たって、各ピストン9と各第1、2シリンダボア21a、23aとの間に極めて厳しい加工を施す必要がない。このため、この圧縮機では、各ピストン9や各第1、2シリンダボア21a、23aの生産性が向上している。さらに、この圧縮機では、可動体13aの移動を補助するためにモータ等の特別な補助手段を設ける場合に比べて、構成の複雑化を抑制することができる。
したがって、本発明の圧縮機によれば、高い制御性を有しつつ低コスト化を実現することができる。
特に、この圧縮機では、第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差により可動体13aの移動を補助するため、制御圧室13cを小さくして、制御圧室13c内の冷媒ガスによって作用する荷重を小さくしても、可動体13aを移動させることが可能となる。このため、この圧縮機では、アクチュエータ13を小型化することができ、ひいては、圧縮機全体を小型化することができる。そして、この圧縮機では、アクチュエータ13を小型化することにより、斜板室33にアクチュエータ33を設置し易くなっている。
さらに、この圧縮機では、第1シリンダボア21aと第2シリンダボア23aとが同径に形成されている。このため、この圧縮機では、第1圧縮室21d及び第2圧縮室23dの双方で圧縮仕事が行われた際の吐出容量を十分に大きくすることが可能となる。さらに、この圧縮機では、第1シリンダボア21aと第2シリンダボア23aとが同径に形成されることで、第1頭部9aと第2頭部9bとについても同径となる。これにより、この圧縮機では、第1頭部9aに作用する吸入抵抗力と、第2頭部9bに作用する吸入抵抗力との調整が容易となり、第1頭部9aと第2頭部9bとの吸入抵抗力の差を好適に生じさせることが可能となっている。このように、この圧縮機では、第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重とを好適に調整することが可能となっている。
(実施例2)
図5に示すように、実施例2の圧縮機では、第1弁形成プレート39における各第1吸入孔390aと、第2弁形成プレート41における各第2吸入孔410aとで、互いに開口面積が異なっている。具体的には、各第1吸入孔390aと比較して、各第2吸入孔410aの方が大きく開口している。
また、この圧縮機では、実施例1の圧縮機と異なり、各第1吸入板プレート391と各第2吸入板プレート411との肉厚が等しく形成されており、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚さとなっている。なお、各第1吐出孔390bと各第2吐出孔410bとの開口面積は等しくなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
このように、第1吸入孔390aよりも第2吸入孔410aの方が大きく開口することにより、この圧縮機では、第1吸入孔390a側よりも第2吸入孔410a側の方が冷媒ガスが流通し易くなる。このため、この圧縮機でも、吸入行程時おいて、第1圧縮室21dと比べて第2圧縮室23dに対して冷媒ガスが吸入され易くなり、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例3)
図6に示すように、実施例3の圧縮機では、第1リテーナ溝21eと第2リテーナ溝23eとが異なる形状で形成されている。具体的には、第1リテーナ溝21eと比較して、第2リテーナ溝23eはより深く凹設されている。
また、この圧縮機では、各第1吸入孔390aと各第2吸入孔410aとが等しい大きさで開口している他、各第1吐出孔390bと各第2吐出孔410bとについても等しい大きさで開口している。さらに、この圧縮機では、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、第1リテーナ溝21eよりも第2リテーナ溝23eの方が深く凹設されることにより、第1吸入リード弁391aの最大開度と第2吸入リード弁411aの最大開度とが相違している。つまり、この圧縮機では、第1リテーナ溝21eによって規制される第1吸入リード弁391aの最大開度よりも、第2リテーナ溝23eによって規制される第2吸入リード弁411aの最大開度の方が大きくなっている。
これにより、この圧縮機では、吸入行程時に第1吸入リード弁391aよりも第2吸入リード弁411aの方が大きく開くこととなる。このため、この圧縮機では、第1吸入孔390a側よりも第2吸入孔410a側の方が冷媒ガスが流通し易くなる。
このため、この圧縮機でも、吸入行程時おいて、第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dに対して冷媒ガスが吸入され易くなり、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例4)
図7に示すように、実施例4の圧縮機では、実施例1の圧縮機と異なり、第1連絡路37aと第2連絡路37bとが異なる内径で形成されている。具体的には、この圧縮機では、第1連絡路37aと比較して、第2連絡路37bは大きな内径で形成されている。また、第2連絡路37bが大きな内径で形成されることに伴い、第2吸入連通孔410cは、第1吸入連通孔390cよりも大きく開口している。このように、第1連絡路37aよりも第2連絡路37bが大きな内径で形成されていることにより、この圧縮機では、第1吸入流路2と比較して、第2吸入流路4は大きな内径を有している。
また、この圧縮機では、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
このように、第1連絡路37aよりも第2吸入流路37bの方が大きな内径を有することで、この圧縮機では、吸入行程時において、斜板室33に吸入された冷媒ガスが第1吸入流路2側よりも第2吸入流路4側を流通し易くなる。このため、この圧縮機でも、吸入行程時に第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dへ冷媒ガスが吸入され易くなり、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例5)
図8に示すように、実施例5の圧縮機では、実施例1の圧縮機と異なり、吸入ポート330が第2シリンダブロック23の中央付近に形成されている。これにより、この圧縮機では、ハウジング1の後方寄りの位置に吸入ポート330が形成されている。そして、このように、ハウジング1の後方寄りの位置に吸入ポート330が形成されることで、この圧縮機では、第1連絡路37aから吸入ポート330までの距離と、第2連絡路37bから吸入ポート330までの距離とが異なっている。具体的には、第1連絡路37aから吸入ポート330までの距離よりも、第2連絡路37bから吸入ポート330までの距離の方が短くなっている。これにより、この圧縮機では、第1吸入流路2と比較して、第2吸入流路4が短くなっている。
また、この圧縮機では、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
このように、第1吸入流路2よりも第2吸入流路4の方が短くなることにより、吸入行程時において、吸入ポート330から吸入された冷媒は、第1吸入流路2側よりも第2吸入流路4側を流通し易くなる。
このため、この圧縮機でも、吸入行程時に第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dへ冷媒ガスが吸入され易くなり、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例6)
実施例6の圧縮機は、実施例1の圧縮機におけるリヤハウジング19に換えて、図9に示すように、リヤハウジング190を備えている。そして、この圧縮機では、リヤハウジング190と第2シリンダブロック23との間に、第2弁形成プレート55が設けられている。また、この圧縮機では、駆動軸3が軸本体300と支持部材43とで構成されている。
リヤハウジング19と同様、リヤハウジング190にも、制御機構15と、第2吸入室27bと、第2吐出室29bと、第1リヤ側連通路20aとが形成されている他、圧力調整室310が形成されている。この圧力調整室310は、実施例1における圧力調整室31と比較して小型に形成されている。このように、圧力調整室310が小型となることで、リヤハウジング190では、第2吸入室27bが大型化されている。また、圧力調整室310内には、Oリング311が設けられている。なお、実施例1の圧縮機と同様、圧力調整室310は、抽気通路15a及び給気通路15bを通じて第2吸入室27b及び第2吐出室29bと連通している。
第2シリンダブロック23には、第2軸孔23b側から第2シリンダボア23a内に向かって延びる第2吸入孔23fが形成されている。また、第2滑り軸受22bには、第2吸入孔23fと連通する連通孔220が形成されている。なお、この圧縮機では、第2シリンダブロック23に対して、第2リテーナ溝23eは形成されていない。
第2弁形成プレート55は、第2バルブプレート550と、第2吐出弁プレート551と、第2リテーナプレート552とを有している。第2バルブプレート550には、第2シリンダボア23aと同数の第2吐出孔550bが形成されている。また、第2バルブプレート550には、第2吐出連通孔550dが形成されている。さらに、第2バルブププレート550、第2吐出弁プレート551及び第2リテーナプレート552には、第2吸入連通孔550cと挿通孔550eとが形成されている。
各第2シリンダボア23aは、各第2吐出孔550bを通じて第2吐出室29bと連通している。そして、第2吸入連通孔550cを通じて、第2吸入室27bと第2連絡路37bとが連通している。また、第2吐出連通孔550dを通じて、第1リヤ側連通路20aと第2リヤ側連通路20bとが連通している。挿通孔550eには駆動軸3の後端が挿通されている。各第1吐出孔390bの開口面積と各第2吐出孔550bとは、開口面積が等しくなっている。また、第1吸入連通孔390cと第2吸入連通孔550cとは、開口面積が等しくなっている。第1吐出連通孔390dと第2吐出連通孔550dとは、開口面積が等しくなっている。
第2吐出弁プレート551は、第2バルブプレート550の後面に設けられている。この第2吐出弁プレート551には、弾性変形により各第2吐出孔550bを開閉可能な第2吐出リード弁511aが複数形成されている。第2リテーナプレート552は、第2吐出弁プレート551の後面に設けられている。この第2リテーナプレート552は、各第2吐出リード弁551aの最大開度を規制する。なお、第2リテーナプレート552は第1リテーナプレート393と対称で等しい形状で形成されており、第1吐出リード弁392aの最大開度と、第2吐出リード弁551aの最大開度とは等しくなっている。
軸本体300は、実施例1等の圧縮機における軸本体30と異なり、後端が最も小径となるように形成されており、挿通孔550eよりも小径となっている。この軸本体300後端は、挿通孔550eを通じて圧力調整室310内に挿通されている。この際、Oリング311が圧力調整室310の壁面と軸本体300の後端との間に位置することで、圧力調整室310内の気密性が確保されている。
軸本体300に対しても、上記の軸本体30と同様に、アクチュエータ13やフランジ3aが設けられている他、軸路3b及び径路3cが形成されている。これらの軸路3b及び径路3cにより、圧力調整室310と制御圧室13cとが連通している。
軸本体300の後端側にも支持部材43が圧入されている。ここで、上記のように、軸本体300は後端側の径が小さくなっていることから、この圧縮機では、支持部材43と軸本体300との間に、軸内連絡路37cが形成されている。この軸内連絡路37cは、挿通孔550eと軸本体300の後端と間を通じて第2吸入室27bと連通している。
支持部材43には、回転路43bが形成されている。この回転路43bは、軸内連絡路37cと連通しつつ、支持部材43の外周面に開いている。軸内連絡路37cは、駆動軸3が回転し、回転路43bと連通孔220とが連通することにより、第2吸入孔23fを通じて第2圧縮室23dと連通する。これにより、第2吸入室27bと第2圧縮室23dとが連通する。
この圧縮機では、斜板室33、第2連絡路37b、第2吸入室27b、軸内連絡路37c、連通孔220及び第2吸入孔23fによって、第2吸入流路4aが形成されている。また、第1リヤ側連通路20a、第2吐出連通孔550d及び第2リヤ側連通路20bによって、第2連通路20が形成されている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、吸入ポート330から吸入された冷媒ガスが第2吸入流路4aを流通して各第2圧縮室23dに吸入される。具体的には、冷媒ガスは、第2連絡路37bを経て第2吸入室27bに至る。また、駆動軸3では、軸本体300が回転することで、支持部材43も回転する。そして、第2圧縮室23d側の吸入行程時に、回転路43bと連通孔220とが連通する。これにより、この圧縮機では、軸内連絡路37cと吸入路23fとが連通し、軸内連絡路37c、回転路43b、連通孔220及び第2吸入孔23fを通じて、第2吸入室27b内の冷媒ガスが第2圧縮室23dに吸入される。一方、第1圧縮室21dに対しては、実施例1の圧縮機と同様、第1吸入流路2によって、冷媒ガスが吸入されることとなる。なお、第1、2圧縮室21d、23dからの冷媒ガスの吐出については、実施例1の圧縮機と同様である。
このように、駆動軸3の回転によって、吸入行程時に軸内連絡路37cと第2吸入孔23fとが連通し、第2吸入室27b内の冷媒ガスが第2圧縮室23dへ吸入されることで、この圧縮機においても、吸入行程時に第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dへ冷媒ガスが吸入され易くなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23dで生じる吸入抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吸入抵抗力よりも小さくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例7)
図10に示すように、実施例7の圧縮機では、第2吐出弁プレート412が第1吐出弁プレート392よりも肉厚に形成されている。これにより、第1吐出リード弁392aと比較して、第2吐出リード弁412aは肉厚となっている。
また、この圧縮機では、各第1吸入孔390aと各第2吸入孔410aとは、開口面積が等しく形成されている他、第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっている。また、各第1吐出孔390bと各第2吐出孔410bとは開口面積が等しくなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
このように、各第2吐出リード弁412bが各第1吐出リード弁392aと比較して肉厚となることにより、この圧縮機では、各第1吐出リード弁392aの開弁抵抗よりも各第2吐出リード弁412aの開弁抵抗の方が大きくなっている。このため、この圧縮機では、吐出行程時において、第1吐出リード弁392aが第1吐出孔390bを開放する場合に比べて、第2吐出リード弁412aは第2吐出孔410bを開放し難くなる。このため、この圧縮機では、吐出行程時に第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難く、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。つまり、この圧縮機では、第1頭部9aに作用する吐出抵抗力と、第2頭部9bに作用する吐出抵抗力とに差が生じることとなる。
これにより、この圧縮機でも、斜板5が最大傾斜角度にある状態において第2頭部9bが上死点に位置する際の第2圧縮室23dの圧力は、斜板5が最大傾斜角度にある状態において第1頭部9aが上死点に位置する際の第1圧縮室21dの圧力よりも高くなる。このため、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなり、第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重とに差が生じる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例8)
図11に示すように、実施例8の圧縮機では、第1弁形成プレート39における各第1吐出孔390bと、第2弁形成プレート41における各第2吐出孔410bとで、開口面積が異なっている。具体的には、各第1吐出孔390b比較して、各第2吐出孔410bの方が小さく開口している。
また、この圧縮機では、各第1吸入孔390aと各第2吸入孔410aとは、開口面積が等しく形成されている他、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっている。さらに、各第1吐出リード弁392aと各第2吐出リード弁412aとが共に等しい厚みとなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
このように、第1吐出孔390bよりも第2吐出孔410bの方が小さく開口することにより、この圧縮機では、第1吐出孔390b側よりも第2吐出孔410b側の方が冷媒ガスが流通し難くなる。このため、この圧縮機でも、吐出行程時に第1圧縮室21d側に比べて第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難く、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例9)
図12に示すように、実施例9の圧縮機では、第1リテーナプレート393と第2リテーナプレート413とが異なる形状で形成されている。これにより、この圧縮機では、第1吐出リード弁392aの最大開度と第2吐出リード弁412aの最大開度とが相違している。つまり、この圧縮機では、第1リテーナプレート393によって規制される第1吐出リード弁392aの最大開度よりも、第2リテーナプレート413によって規制される第2吐出リード弁412aの最大開度の方が小さくなっている。
また、この圧縮機では、各第1吸入孔390aと各第2吸入孔410aとが等しい大きさで開口している他、各第1吐出孔390bと各第2吐出孔410bとについても等しい大きさで開口している。さらに、この圧縮機では、各第1吸入リード弁391aと各第2吸入リード弁411aとが共に等しい厚みとなっており、各第1吐出リード弁392aと各第2吐出リード弁412aとが共に等しい厚みとなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、吐出行程時に第1吐出リード弁392aよりも第2吐出リード弁412aの方が小さく開くこととなる。このため、この圧縮機では、第1吐出孔390b側よりも第2吐出孔410b側の方が冷媒ガスが流通し難くなる。
このため、この圧縮機でも、吐出行程時に第1圧縮室21d側に比べて第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難くなり、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例10)
図13に示すように、実施例10の圧縮機では、第1フロント側連通路18aと比較して、第1リヤ側連通路20aが小径に形成されている。また、同様に、第2、3フロント側連通路18b、18cと比較して、第2リヤ側連通路20bが小径に形成されている。そして、第1、2リヤ側連通路20a、20bが小径となることに伴い、第2吐出連通孔410dの開口面積も第1吐出連通孔390dよりも小さくなっている。これらにより、第2連通路20は、第1連通路18と比較して内径が小さくなっている。このため、この圧縮機では、第1吐出流路6と比較して、第2吐出流路8は小さな内径を有している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
このように、第1連通路18よりも第2連通路20の方が内径が小さくなることで、この圧縮機では、第1吐出流路6と比較して第2吐出流路8では冷媒ガスが流れ難くなる。これにより、この圧縮機でも、吐出行程時に第1圧縮室21d側に比べて第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難くなり、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例11)
図14に示すように、実施例11の圧縮機では、第1シリンダブロック21に対して、吐出ポート230と合流吐出室231とが形成されている他、第3リヤ側連通路20cが形成されている。この第3リヤ側連通路20cは、前端側が合流吐出室231に連通しており、後端側が第1シリンダブロック21の後端に開いている。
この圧縮機では、第1、2フロント側連通路18a、18b及び第1吐出連通孔390dによって第1連通路18が形成されている。また、第1〜3リヤ側連通路20a〜20c及び第2吐出連通孔410dによって第2連通路20が形成されている。ここで、第1シリンダブロック21に対して吐出ポート230等が形成されることにより、この圧縮機では、実施例1等の圧縮機と比較して、第2フロント側連通路18bの長さが短くなっている。また、第2シリンダブロック23に第2フロント側連通路18cが形成されていない。これにより、この圧縮機では、実施例1等の圧縮機と比較して、第2リヤ側連通路20bの長さが長くなっている。これらにより、この圧縮機では、第1連通路18と比較して第2連通路20が長くなっている。このため、この圧縮機では、第1吐出流路6と比較して、第2吐出流路8が長くなっている。この圧縮機における他の構成は実施例1と同様である。
このように、第1吐出流路6よりも第2吐出流路8の方が長くなることで、この圧縮機では、第1吐出流路6と比較して第2吐出流路8では冷媒ガスが流れ難くなる。これにより、この圧縮機でも、吐出行程時に第1圧縮室21d側に比べて第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難くなり、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
(実施例12)
図15に示すように、実施例12の圧縮機は、リヤハウジング19に対して、収納室57が形成されている。この収納室57は、第2吐出室29bと第1リヤ側連通路20aとに連通している。
また、この圧縮機では、第1リヤ側連通路20aが第1フロント側連通路18aよりも大きく形成されている。そして、この圧縮機では、収納室57、第1リヤ側連通路20a、第2吐出連通孔410d及び第2リヤ側連通路20bによって、第2連通路20が形成されている。
収納室内には57には吐出逆止弁機構51が設けられている。この吐出逆止弁機構51が本発明における吐出逆止弁に相当する。なお、吐出逆止弁機構51は、収納室57、すなわち、第2連通路20にのみ設けられており、第1連通路18には設けられていない。
吐出逆止弁機構51は、図16の(A)、(B)に示すように、ケース510と弁体511とコイルばね512とを有している。ケース510の前端側の外周には、ケース510内と第1リヤ側連通路20aと連通する連通溝510aが形成されている。また、弁体511により、ケース510内には背圧室510bが区画されている。背圧室510bは、連通溝510aを通じて第1リヤ側連通路20aと連通している。これにより、背圧室510b内の圧力は、第2連通路20の圧力となっている。このケース510は、サークリップ53によって収納室57内に固定されている。
弁体511はケース510内に移動可能に収納されている。コイルばね512は、ケース510内に設けられており、背圧室510b内に位置している。このコイルばね512の付勢力により、弁体511はケース510の前端側に向かって付勢されている。このコイルばね512によって付勢された弁体511によって、第2吐出室29bと第1リヤ側連通路20a、すなわち、第2吐出室29bと吐出ポート230との連通と非連通とを切り替えることが可能となっている。
ここで、この吐出逆止弁機構51では、第2吐出室29bと吐出ポート230とを連通させるための開弁吐出圧力が予め設定されている。そして、コイルばね512の付勢力は、この開弁吐出圧力に応じて調整されている。この圧縮機における他の構成は実施例1と同様である。
この圧縮機では、第2吐出室29b内の冷媒ガスの圧力が開弁吐出圧力に満たない状態では、弁体511が閉弁している。そして、第2吐出室29b内の冷媒ガスの圧力が開弁吐出圧力を越え、背圧室510b内の圧力よりも高くなることにより、同図の(B)に示すように、弁体511がコイルばね512の付勢力に抗してケース510内を後退する(同図の白色矢印参照。)。これにより、連通溝510aが開放され、第2吐出室29bと吐出ポート230とが連通する状態となり、同図中の破線矢印で示すように、第2吸入室29bに吐出された冷媒ガスが第2連通路20を流通する。
このように、第2連通路20に吐出逆止弁機構51が設けられることで、この圧縮機では、吐出逆止弁機構51に設定された開弁吸入圧力の分だけ第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第1圧縮室21d側に比べて第2圧縮室23dから第2吐出室29bへ冷媒ガスが吐出され難くなり、第2圧縮室23dで生じる吐出抵抗力が第1圧縮室21dで生じる吐出抵抗力よりも大きくなる。これにより、この圧縮機においても、第2圧縮室23d内の冷媒ガスによって第2頭部9bに作用する荷重は、第1圧縮室21d内の冷媒ガスによって第1頭部9aに作用する荷重より大きくなる。こうして、この圧縮機においても第1頭部9aに作用する荷重と第2頭部9bに作用する荷重の差によって、可動体13aの移動を補助することが可能となっている。
ここで、この圧縮機では、第2連通路20にのみ吐出逆止弁機構51を設けることにより、この吐出逆止弁機構51における閉弁荷重を小さく設定することができる。このため、この圧縮機では、吐出逆止弁機構51による圧損をできるだけ小さくすることが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
以上において、本発明を実施例1〜12に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜12に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1〜6の圧縮機のいずれか一つと、実施例7〜12の圧縮機のいずれか一つとを組み合わせても良い。
また、制御機構15において、給気通路15bに対して制御弁15cを設けるとともに、抽気通路15aにオリフィス15dを設ける構成としても良い。この場合には、制御弁15cによって、給気通路15cを流通する高圧の冷媒ガスの流量を調整することが可能となる。これにより、第2吐出室29b内の高圧によって制御圧室13cを迅速に高圧とすることで、迅速な圧縮容量の増大を行うことが可能となる。
また、アクチュエータ13を第2凹部23c内に配置し、ラグアーム49を第1凹部21c内に配置して圧縮機を構成しても良い。
さらに、第1連絡路37aに吸入逆止弁を設けることもできる。これにより、この吸入逆止弁に設定された開弁吸入圧力の分だけ第1吸入流路2では冷媒ガスが流通し難くなる。これにより、第1圧縮室21dに比べて第2圧縮室23dに対して冷媒ガスを吸入し易くすることができる。