JP6089574B2 - ノズル付き包装用パウチおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このノズル付き包装用パウチは、例えばスタンディングパウチとされ、プラスチックフィルム状の表面パウチ片と裏面パウチ片の間に底部パウチ片を折り重ねて挟み込んで周縁部をヒートシールして展開可能な底部を備えた内容物充填用の空所が形成されるとともに、注出用のノズル部がパウチの上方のコーナー部に形成されたり、上方の中央部等に形成される。
この注出用のノズル部は、例えば易開封加工部などの開封予定位置に向かって空所の幅を狭めるように形成され、先端部に開封用のタブが設けられて周縁部がヒートシールされて形成される。
例えば特許文献1に開示された注出機能付き包装袋では、包装用パウチの開封後に注出口となる部分に開口補助機構とこれに隣接あるいは併設して折れ曲がり防止機構をエンボス加工して形成するようにし、注出口を容易に形成することができ、注出口の折れ曲がりを防止して流れを保ちながら容易に内容物を取り出すことができるようにしている。
また、小口径の容器に詰め替えたい場合などのようにノズル部を細くしようとすると、張り合わせのためのずれを考慮しなければならず、ノズル部の周縁部のヒートシール部の幅は、シール性確保のため一定幅以下にはできないため、流路となる空所の幅が狭くなって相対的にヒートシール部の幅が広くなってしまう。
このヒートシール部は表裏面パウチ片が重なった状態で一体化されていることから剛性が高く、特にノズル部先端近傍は、空所の先端および両側を取り囲んでヒートシール部が形成されることから一層剛性が高く、ノズル部を平坦な状態に維持しようとする作用が大きく、通常の幅のノズル部に比べて広がり難く安定して内容物を取り出すことができないという問題がある。
また、ノズル部の空所を円形断面などに立体成形することで流路を確保することも提案されているが、外側からの力で一方側のパウチ片が押しつぶされると、復元することができず、内容物の取り出しが困難になるという問題もある。
一方、ノズル部の流路を確保するため、ノズル部の空所にパイプを予め挿入して組み込んだパイプ式包装用パウチもあるが、オールフィルムのノズル付き包装用パウチに比べ、製造工程が増大したり、内容物の充填前の保管や輸送の際にノズル部分のパイプが重なると積み上げ難く、スペース効率が悪いという問題がある。
また、この冷間での立体成形法は、複数枚の多層フィルムを重ねた状態で圧縮成形することもでき、それぞれの多層フィルムの強度の高いフィルム側に張り出すようにしたり、一方の多層フィルムだけに張り出すようにすることも可能であることも見出した。
これにより、2枚のパウチ片をヒートシールしたパウチ状態での加工が可能となり、ヒートシール前に加工する場合のようにヒートシール時には加工歪が解放されるのとは異なり、パウチ片に伸び歪や引張歪を残した状態のまま加工を終えてパウチとすることができ、これらの加工歪をノズル部の開口に利用することを見出し、この発明を完成したものである。
一方、ノズル付き包装用パウチのノズル部では、2枚のフィルムが重ねられて空所の周縁部がヒートシールされており、空所の先端部を開封位置として開封した際に流路を開口した状態で確保しようとすると、2枚の開口部の両側(例えば上下など)のヒートシール部を接近させるようにして、これと交差する方向(例えば左右など)にフィルムが広がるように変形させる必要があり、このために上記の立体成形法による加工歪を利用して押すようにしたり、あるいは引っ張るように変形させることが有効であることが分かり、このような変形を与える歪をパウチ片などに予め残してノズルの開口部を広げるようにして課題を解決しようとするものであり、完成したこの発明の具体的な構成は、以下のとおりである。
前記ノズル部の重なった前記パウチ片には、
それぞれ前記ノズル部の中心軸線に沿って形成された外側に凸の稜線部と、
少なくとも一方に冷間で厚み方向に圧縮成形された圧縮成形部と、
前記圧縮成形部を外面側に張り出させるようにして伸び歪を残して形成された外側に凸の凸状部と、を備えており、
前記凸状部に残された前記伸び歪で、開封予定位置で開封されたノズル部空所を両側縁から前記稜線部に向けて押すようにして前記ノズル部の開口を促進可能に構成したことを特徴とするものである。
この発明のノズル付き包装用パウチでは、伸び歪ないし引張歪が残った状態となるように凸状部が形成されているのが大きな特徴なので、まず、この発明のノズル付き包装用パウチの製造方法に用いる積層フィルムの立体成形法について説明する。
包装用パウチの積層合成樹脂フィルム10は、最内面の柔らかい内面フィルム11としてヒートシール性を有するフィルム、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどが用いられ、外面側の強度の高い外面フィルム12として、例えば延伸フィルムが用いられ、ナイロンフィルムやPETフィルムなどのポリアミドフィルムやポリエステルフィルムなどが用いられる。
なお、内面フィルムと外面フィルムの間、あるいは外面フィルムの外側に、さらに他の合成樹脂フィルムが積層されていても良い。
また、包装用パウチの積層合成樹脂フィルム10では、通常、内面フィルムの厚さが60〜200μm程度とされ、外面フィルムの厚さが10〜20μm程度とされてラミネートされ、内面フィルムの方が外面フィルムより3〜20倍程度厚くなっている。また、積層フィルムの総厚みが、他の層を含む場合は、それも含めて70〜300μm程度となっている。
この圧縮成形による強度の高いフィルム12側への張り出し現象は、積層合成樹脂フィルム10を総厚みの30%程度圧縮した際に出現し、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、厚み方向に圧縮すると、変形するのは、専ら強度の弱い柔軟な内面フィルム11であって、圧縮された面から押し出されるように大きく伸び、強度の高い外面フィルム12はラミネートされていることから内面フィルム11の伸びに応じて伸ばされるが、圧縮力を取り除いた後、内外面フィルム11,12の厚みが復元する際の挙動において、内面フィルム11の復元が大きく、外面フィルム12の復元はわずかで、外面フィルム12に剪断変形的な伸びの影響が伸び歪として残るなど内外面フィルム11,12の間で何らかの違いがあるためと考えられる。
なお、内面フィルムが柔らかいことを示す指標としては様々あるが、例えば、弾性率やヤング率が外面フィルムより小さいこと、あるいは、降伏伸度や破壊伸度が外面フィルムより大きいことなどが挙げられる。
また、この立体成形法では、片側からの加工とすれば、必要な形状の金型や成形ロール等を片方だけ用意すれば良く、もう一方は平坦な形状のもので済み、圧縮成形を一層簡単に行うことが可能となる。
なお、平面プレス加工装置やロータリー加工装置のフレームやスライド機構、回転軸受機構、駆動機構などの構成は、従来から使用されているものを適用すれば良く、具体的な説明は省略する。
なお,圧縮成形割合が50%程度を越えると、フィルムにクラックが生じたり破断したりするおそれが出てくる。
ただし、回転方向Rの噛み込み側にフィルムを押し出す作用の累積が大きくなりすぎると、フィルムに皺が生じることがあるので、回転方向Rに沿って加工と解放とが繰り返されるように、加工部を適宜の長さに区切って配置することが望ましい。なお、立体成形の際に、回転方向Rと直角方向に加工部を細分化することによっても、皺の発生を防止することができる。
このような作用の原理も詳細は不明だが、外面フィルム12の変形が表面側から拘束されることにより、内面フィルム11と外面フィルム12の間に生じる剪断力が大きくなるためではないかと推定される。
さらに、この積層合成樹脂フィルムの立体成形法では、一方の成形ロール41の加工部43表面の摩擦力を、他方の成形ロール42表面より大きくすることによって、図12に示すように、主として加工部43により圧縮成形した一方側(図示例では上側)の積層合成樹脂フィルム10の内外面フィルム11、12だけを張り出すように張出し部14を立体成形することができる。
具体的には、成形ロール42表面は金属のままとして、加工部43表面のみを、サンドブラスト処理などの前述した摩擦力を増大させる構成とすればよい。
このような現象が起こる理由も定かではないが、他方の側の外面フィルム12と成形ロール42表面の摩擦が小さく、あるいは2枚の積層合成樹脂フィルム10,10間の摩擦が小さくなると、圧縮力が他方の側の積層合成樹脂フィルム10の内外面フィルム11、12間の剪断力に変換される際に滑りが生じて、有効に作用しないためではないかと思われる。
これにより、従来のような加熱や冷却の必要がなく、加工に要する電力などのエネルギを大幅に削減でき、加工時間を短縮して高速加工することができる。
この注出用のノズル部67は、両側に湾曲させて切り欠いたのど部68,69を形成することで、ノッチ70を備えた易開封加工部71などの開封予定位置に向かって空所66の幅を狭めるように形成され、周縁部がヒートシールされるとともに、易開封加工部71よりも先端側でノズル部67を閉じるシール部には開封用タブ72が設けてあり、易開封加工部71を越えて開封タブ72に達する空所66aが形成してある。
なお、このノズル付き包装用パウチ60には、上辺部の開口から内容物が充填された後、上辺部がヒートシールされて密封状態のスタンディングパウチとなる。
この凸状部74は、シール端縁を跨いで表裏面パウチ片61,62を冷間で圧縮成形することで成形されたものであり、シール状態のパウチ60に対して、パウチ片61,62に伸び歪を残して凸状部74が形成されている。
したがって、ノズル部67の横断面形状は、図2(b)に示すように、のど部68,69のシール部64aの端縁からそれぞれ凸状部74が形成され、2つの凸状部74,74の中央部に稜線部73が形成されており、凸状部74と稜線部73との間は平坦面となっている。
そして、この引張凸状部75によってノズル部67が表面パウチ片61または裏面パウチ片62のパウチ平面に対して先端がわずかに浮き上がるようになる。
このような引張成分を有する引張凸状部75を形成したノズル付き包装用パウチ60では、ノズル部67の先端の開封用タブ72によって開封予定位置である易開封加工部71で開封すると、図5に模式的に示すように、開封されたノズル部67の空所66の中央部の表裏面パウチ片61,62の稜線部73,73がそれぞれ基端側に引っ張られるようになり、ノズル部67の対向する稜線部73、73を引き離すように作用して開口を促進し、凸状部74と協働して一層確実にひし形状に開口させることができる。
この引張歪の残留については、成形後のノズル付き包装用パウチ60で引張凸状部75の間をカッターで切ったところ、引張凸状部75によってノズル部67が表面パウチ片61または裏面パウチ片62のパウチ平面に対して先端がわずかに浮き上がった状態から平面に戻った状態になったことからも引張歪の存在を確認している。
この発明のノズル付き包装用パウチ60(図1など参照)では、外形の切断にフルカット加工が行われ、ノズル部67の易開封加工部71の加工にハーフカット加工52が行われる。
また、この発明のノズル付き包装用パウチ60の稜線部73、伸び歪を残した凸状部74、引張歪を残した引張凸状部75等は、立体成形による張出し部14を成形するための圧縮部位13の加工部43を厚み方向に30%程度圧縮成形するようにしたり、片側だけ張り出す場合は厚み方向に30%より少なく圧縮成形するように、それぞれの加工代を調整すればよく、稜線部73、伸び歪を残した凸状部74、引張歪を残した引張凸状部75等を有するノズル付き包装用パウチ60を成形ロールを用いて1回転中に簡単に成形することができる。
また、成形ロールの表面をブラスト処理などで梨地などの摩擦力を増大する表面とすれば、一層立体成形を確実かつ明瞭に成形することもできる。
フィルム材を構成するのに適した樹脂材料としては、例えば結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン―エチレン共重合体、結晶性ポリブテン―1、結晶性ポリブテン4―メチルペンテン―1、低密度ポリエチレン、中密度―ポリエチレン、或いは高密度ポリエチレン、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン―ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビリニデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル―スチレン共重合体、アクリロニトリル―スチレン―ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
また、これらの材料からなるフィルム材は、未延伸、一軸延伸、あるいは二軸延伸して用いられる。
さらに、ノズル付き包装用パウチ10に使用するフィルム材は、これらのフィルム材を単層で、或いは、二種以上を積層して構成することができ、また、これらのフィルム材の一種、あるいは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、金属又は金属酸化物の蒸着フィルム、紙、セロファン等を貼り合わせて構成することもできる。
好ましいフィルム材としては、例えば、延伸ナイロンフィルムを外層とし、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成、延伸ポリエステルフィルムを外層とし、ポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成、及びこれらの内、外層フィルム間にアルミニウム等の金属箔を積層した三層構成のフィルム等が挙げられ、これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着材、アンカー剤を介在させることもできる。
そして、上記フィルム材の層構成は、ノズル付き包装用パウチ10に充填する内容物の性状に応じて選択され、例えば、詰替洗剤用の包装用パウチのように低コストが要求される場合は、二層構成の積層フィルムを使用し、調味料のパウチ容器のように保存性が要求される場合は、アルミニウム箔を含む三層構成以上の積層フィルムを使用すれば良い。
11 内面フィルム
12 外面フィルム
13 圧縮部位(圧縮成形部)
14 張出し部(立体成形部)
30 平面プレス装置
31 パンチ
32 アンビル
33 加工部
40 ロータリー加工装置
41 成形ロール
42 成形ロール
43 加工部
60 ノズル付き包装用パウチ(スタンディングパウチ)
61 表面パウチ片
62 裏面パウチ片
63 底部パウチ片
64 サイドシール部
64a のど部のシール部
65 底部シール部
66 空所
66a タブの空所
67 ノズル部
68 のど部(側辺部)
69 のど部(上辺部)
70 ノッチ
71 易開封加工部
72 開封用タブ
73 稜線部
74 凸状部
75 引張凸状部
76 最も稜線部側の引張凸状部の両端を結ぶ直線
77 タブの折り重ね部
78 サイドシール部の側部折り重ね部
R 成形ロールの回転方向
Claims (8)
- 少なくとも最内面の柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとがラミネートされた積層合成樹脂フィルムからなるフィルム状のパウチ片を重ね合わせて側縁部が側部シールされ、下縁部が底部シールされて上縁部が開口された内容物充填用の空所が形成されるとともに、開封予定位置に向かって前記空所の幅を狭めた注出用のノズル部が周縁部をシールして形成されたノズル付き包装用パウチであって、
前記ノズル部の重なった前記パウチ片には、
それぞれ前記ノズル部の中心軸線に沿って形成された外側に凸の稜線部と、
少なくとも一方に冷間で厚み方向に圧縮成形された圧縮成形部と、
前記圧縮成形部を外面側に張り出させるようにして伸び歪を残して形成された外側に凸の凸状部と、を備えており、
前記凸状部に残された前記伸び歪で、開封予定位置で開封されたノズル部空所を両側縁から前記稜線部に向けて押すようにして前記ノズル部の開口を促進可能に構成した、
ことを特徴とするノズル付き包装用パウチ。 - 前記稜線部の基端側のパウチ片上に、ノズル部を稜線部の基端側に引く引張成分を有する引張歪を残して外側に凸の引張凸状部を形成し、この引張凸状部で開封されたノズル部の空所を引っ張るようにしてパウチ片同士の開口を促進可能に構成したことを特徴とする請求項1記載のノズル付き包装用パウチ。
- 前記引張凸状部は、前記稜線部の基端側中央部が凹状の曲線状に形成されるとともに、最稜線部側の引張凸状部は、その両端部を結ぶ直線が前記稜線部と交差するように配置されて構成されていることを特徴とする請求項2記載のノズル付き包装用パウチ。
- 前記引張凸状部は、間隔をあけて複数条形成して構成されていることを特徴とする請求項2または3記載のノズル付き包装用パウチ。
- 開封予定位置より先端側の前記ノズル部のシール部を折り重ねて折り重ね部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のノズル付き包装用パウチ。
- パウチ片の周縁部の側部シール部を折り重ねて側部折り重ね部を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のノズル付き包装用パウチ。
- 少なくとも最内面の柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとがラミネートされた積層合成樹脂フィルムからなるパウチ片を重ね合わせて側縁部が側部シールされ、下縁部を底部シールして上縁部が開口された内容物充填用の空所を形成するとともに、開封予定位置に向かって当該空所の幅を狭めた注出用のノズル部が周縁部をシールして形成されたノズル付き包装用パウチを製造するに際し、
前記パウチ片を冷間で厚み方向に圧縮成形し、当該圧縮成形部を外面側に張り出させるようにしたノズル付き包装用パウチの製造方法であって、
前記シールの施されたシール部と前記空所とを跨ぐように冷間で厚み方向に圧縮成形し、前記シール部際の空所に伸び歪を生成して少なくとも一方のパウチ片に外側に凸の凸状部を形成することを特徴とするノズル付き包装用パウチの製造方法。 - 周縁部がシールされた前記ノズル部の基端側のパウチ片上に、外側に凸の引張凸状部を冷間で圧縮成形して形成するようにし、ノズル部を基端側に引く引張成分を有する引張歪を生成するようにしたことを特徴とする請求項7記載のノズル付き包装用パウチの製造方法。
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