本発明の第1態様によれば、機器本体の内部に設けられた焼成室内に収納され、穀物粒を含む調理材料が入れられる調理容器と、
調理容器内で第1の軸を回転中心として回転する第1の羽根と、
調理容器内で第2の軸を回転中心として回転する第2の羽根と、
第1の羽根及び第2の羽根の回転駆動力を発生させる単一のモータと、
第1の羽根の第1の軸に接続された第1のプーリと、
第2の羽根の第2の軸に接続された第2のプーリと、
モータの出力軸に接続され、出力軸の回転に応じて回転する第3のプーリであって、第1のベルトを介して第1のプーリと接続された第3のプーリと、
モータの出力軸に接続され、出力軸の回転に応じて回転する第4のプーリであって、第2のベルトを介して第2のプーリと接続された第4のプーリと、
モータの出力軸の回転方向に応じて、モータの回転駆動力を第1の軸に伝達するか、第2の軸に伝達するかを切り換える駆動力切換部であって、第1及び第2のワンウェイクラッチを備える駆動力切換部と、を備え、
第1のワンウェイクラッチは、モータの出力軸が逆方向に回転するとき、第2の軸の逆方向の回転を許容する一方、モータの出力軸が正方向に回転するとき、第2の軸の正方向の回転を規制し、
第2のワンウェイクラッチは、モータの出力軸が正方向に回転するとき、第1の軸の正方向の回転を許容する一方、モータの出力軸が逆方向に回転するとき、第1の軸の逆方向の回転を規制し、
第1のワンウェイクラッチは、第1のハウジング部材を介して第2又は第4のプーリに接続されるとともに軸方向において第2のベルトとは異なる位置に配置され、第1のワンウェイクラッチが取り付けられる第2の軸又はモータの出力軸の軸方向における第2のベルトと同じ位置には軸受けが配置される、自動製パン機を提供する。
本発明の第2態様によれば、第1のハウジング部材は、柔軟性を有する部材を介して第2又は第4のプーリに接続される、第1態様に記載の自動製パン機を提供する。
本発明の第3態様によれば、第1の羽根は、調理容器内に入れられた調理材料を混練する練り羽根であり、
第2の羽根は、調理容器内に入れられた穀物粒を粉砕するミル羽根であり、
第1のプーリの直径は、第2のプーリの直径よりも大きい、第1態様又は第2態様に記載の自動製パン機を提供する。
本発明の第4態様によれば、第1のベルトは、第2のベルトの上方に配置され、第1のベルトの長さは、第2のベルトの長さよりも長い、第3態様に記載の自動製パン機を提供する。
本発明の第5態様によれば、第2のワンウェイクラッチは、第2のハウジング部材を介して第1又は第3のプーリに接続されるとともに軸方向において第1のベルトとは異なる位置に配置され、第2のワンウェイクラッチが取り付けられる第1の軸又はモータの出力軸の軸方向における第1のベルトと同じ位置には軸受けが配置される、第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の自動製パン機を提供する。
本発明の第6態様によれば、第2のハウジング部材は、柔軟性を有する部材を介して第1又は第3のプーリに接続される、第5態様に記載の自動製パン機を提供する。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の全体構成について説明する。図1は、本第1実施形態にかかる自動製パン機の斜視図であり、図2は、当該自動製パン機の蓋体を開けた状態を示す斜視図である。図3は、本第1実施形態にかかる自動製パン機の断面図である。図4は、本第1実施形態にかかる自動製パン機の一部拡大断面図である。
図1〜3において、本第1実施形態にかかる自動製パン機1は、略直方体形状の機器本体10を備えている。機器本体10の上面の一部には、操作部20が設けられている。
操作部20は、操作キー群と、表示部とによって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの調理コースなどを選択する選択キー等が含まれる。調理コースには、例えば、米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコースなどが含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成され、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示するものである。
機器本体10の内部には、焼成室30が設けられている。焼成室30は、上面が開口した箱形状に形成されている。焼成室30の内部には、パン生地、ケーキ、餅などの調理材料を収容する調理容器40が着脱自在に収納される。
また、焼成室30の内部には、図3に示すように、調理容器40を加熱する加熱部の一例であるシーズヒータ31と、焼成室30内の温度を検知する温度検知部の一例である温度センサ32とが設けられている。
シーズヒータ31は、焼成室30に収容された調理容器40の下部を、隙間を空けて包囲するように配置されている。温度センサ32は、焼成室30内の平均的な温度を検知することができるように、シーズヒータ31から少し離れた位置に配置されている。
焼成室30の上面開口部は、機器本体10の上部に設けられた蓋50によって開閉される。蓋50は、機器本体10の上方後部(図3の右上側)に設けられたヒンジ部10Aに回動自在に取り付けられている。蓋50は、蓋本体51と、外蓋52とを備えている。蓋本体51には、グルテンやドライイーストなどの粉状の副材料を収容する副材料容器53と、レーズン、ナッツなどの比較的体積の大きな副材料を収容する副材料容器54とが取り付けられている。副材料容器53,54は、調理容器40の上方に配置されている。外蓋52は、副材料容器53,54の上部開口部を開閉可能に取り付けられている。
副材料容器53の底壁は、開閉板53aで構成されている。開閉板53aは、副材料容器53内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。同様に、副材料容器54の底壁は、開閉板54aで構成されている。開閉板54aは、副材料容器54内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。開閉板53a,54aの開閉のタイミングは、後述する制御部90により制御される。
また、焼成室30の底壁30aの略中心部には、調理容器支持部11が設けられている。調理容器支持部11は、図4に示すように、略筒状に形成され、焼成室30の底壁30aから下方に離れるに従って、内径が段階的に小さくなるように形成されている。調理容器支持部11の外周面の下端部には、ベアリング(軸受け)12を介して第1のプーリ61が設けられている。
調理容器支持部11の下部の中心穴には、略円筒形の第3のワンウェイクラッチ13が設けられている。第3のワンウェイクラッチ13の内側には、略円筒形の本体側練り軸(第1の軸)16Aが垂直方向に延在するように設けられている。第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向(例えば、時計回り)の回転を許容する一方、本体側練り軸16Aの逆方向(例えば、反時計回り)の回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの外周下部には、第2のワンウェイクラッチ15が設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第2のハウジング部材15Aを介して第1のプーリ61と係合するように設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するとき、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる一方、第1のプーリ61が逆方向に回転するとき、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの内部には、略円柱状の本体側ミル軸(第2の軸)14Aが垂直方向に延在するように設けられている。本体側ミル軸14Aは、本体側練り軸16Aに対して相対回転可能に設けられている。本体側ミル軸14Aの下端部には、第2のプーリ62が固定されている。第1のプーリ61の直径は、第2のプーリ62の直径よりも大きく設定されている。
また、焼成室30の外側であって機器本体10の内部には、モータの一例であるインバータモータ70が設けられている。インバータモータ70は、出力軸71の単位時間当たりの回転数及び回転方向(正方向、逆方向)を自在に変更することができるモータである。
インバータモータ70の出力軸71の外周上部には、第3のプーリ63が固定されている。第3のプーリ63と第1のプーリ61には、第1のベルト65が架け回されている。インバータモータ70が駆動されて出力軸71が回転するとき、当該出力軸71の回転力は、第3のプーリ63、第1のベルト65を介して第1のプーリ61に伝達される。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周下部には、ベアリング(軸受け)67を介して第4のプーリ64が設けられている。第4のプーリ64と第2のプーリ62には、第2のベルト66が架け回されている。第1のベルト65は、第2のベルト66の上方に配置されている。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周面において第3のプーリ63と第4のプーリ64との間には、第1のワンウェイクラッチ68が第1のハウジング部材68Aを介して第4のプーリ64と係合するように設けられている。第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するとき、第4のプーリ64を逆方向に回転させる一方、出力軸71が正方向に回転するとき、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。
また、本体側ミル軸14Aの上端部には、本体側コネクタ17Aが固定されている。本体側コネクタ17Aは、略円柱形の容器側ミル軸14Bの下端部に固定された容器側コネクタ17Bと係合可能に構成されている。本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合した状態で、本体側ミル軸14Aが回転したとき、容器側ミル軸14Bが回転する。
また、本体側練り軸16Aの上端部には、係合片16Aaが設けられている。係合片16Aaは、略円筒形の容器側練り軸16Bの下端部に固定された係合片16Baと係合可能に構成されている。本体側練り軸16Aが回転するとき、係合片16Aaが係合片16Baに係合し、容器側練り軸16Bが回転する。
容器側ミル軸14Bは、容器側練り軸16Bの内側に円筒形の軸受け18を介して設けられている。容器側ミル軸14Bと容器側練り軸16Bとは、調理容器40が焼成室30内にセットされたとき、調理容器40の底部の中心部に設けられた貫通穴を通じて調理容器40内に突出するように設けられている。
調理容器40の底部には、図3に示すように、有底筒状の凹部41が形成されている。また、調理容器40の底部外面には、容器側練り軸16Bを取り囲むように筒状の台座42が設けられている。調理容器40は、台座42が調理容器支持部11に載置され、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることで焼成室30内にセットされる。一方、調理容器40は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとの係合が外されることで、焼成室30内から取り外すことができる。なお、台座42は、調理容器40とは別に形成してもよいし、調理容器40と一体的に形成してもよい。
容器側ミル軸14B及び容器側練り軸16Bの調理容器40の内部に突出する部分には、羽根ユニット80が着脱自在に取り付けられている。
羽根ユニット80は、キャップ81と、ミル羽根(第2の羽根)82と、ドーム状カバー83と、練り羽根(第1の羽根)84と、セーフティカバー85とを備えている。
キャップ81は、容器側ミル軸14Bの先端部に着脱自在に設けられている。ミル羽根82は、キャップ81の外周面から外方に突出するように設けられている。
ミル羽根82は、米粒などの穀物粒を粉砕して製パン原料を製造するための羽根である。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにキャップ81が容器側ミル軸14Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41内に位置するように設けられている。ミル羽根82の具体的構成や好ましい形状等については、後で詳しく説明する。
ドーム状カバー83は、ミル羽根82を上方から覆うように形成されている。ドーム状カバー83には、図5及び図6に示すように、ドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間とを連通する複数の窓部83aが設けられている。ミル羽根82の回転により製造された製パン原料は、複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間に排出される。
練り羽根84は、ドーム状カバー83の外面に垂直方向に立設するように設けられている。練り羽根84は、調理容器40内の製パン原料を混練してパン生地を製造するための羽根である。
セーフティカバー85は、ドーム状カバー83の下端部に取り付けられ、ミル羽根82を下方から覆うように形成されている。また、セーフティカバー85は、その一部が容器側練り軸16Bの内面に嵌合するように、容器側練り軸16Bに取り付けられている。容器側練り軸16Bが回転するとき、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84が一体的に回転する。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにセーフティカバー85が容器側練り軸16Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41よりも上方に位置するように設けられている。また、セーフティカバー85には、調理容器40内に入れられた米粒や水などの材料をドーム状カバー83内に取り込むための開口部(図示せず)が設けられている。
また、機器本体10の操作部20の下方には、各部の駆動を制御する制御部90が設けられている。制御部90には、複数の調理コースに対応する調理シーケンスが記憶されている。調理シーケンスとは、浸水、ミル、冷却、練り、発酵、焼成などの各製造工程を順に行うにあたって、各製造工程においてシーズヒータ31の通電時間、温調温度、インバータモータ70の回転方向、回転速度、開閉板53a,54aの開閉のタイミングなどが予め決められている調理の手順のプログラムをいう。制御部90は、操作部20にて選択された特定の調理コースに対応する調理シーケンスと温度センサ32の検知温度に基づいて、インバータモータ70、シーズヒータ31、開閉板53a,54aの駆動を制御する。
次に、図6A、6Bを用いて、第4のプーリ64や第1のハウジング部材68Aなどの接続関係について説明する。図6A、6Bは、第4のプーリ64周辺の部材を示す斜視図である。図6A、6Bでは、略同様の構成が示されているが、図6Aでは、後述する柔軟性部材93が図示されているのに対し、図6Bでは柔軟性部材93の図示が省略されている。なお、図6Aに示される柔軟性部材93は、図6B以外の他の図面でも図示が省略されている。
図6A、6Bに示される大略円筒形の第1のハウジング部材68Aの内部には、インバータモータ70の出力軸71に係合する第1のワンウェイクラッチ68が配置されている(図4参照)。第1のハウジング部材68Aの側面には、周方向に等間隔で並んだ複数の突起91が設けられている。図6Bに示すように、第1のハウジング部材68Aの下方には、第4のプーリ64が設けられている。第4のプーリ64の上面には、それぞれ上方に延びるとともに周方向に等間隔で並んだ複数の突起92が設けられており、突起92は第1のハウジング部材68Aの側面に係合している。すなわち、第1のハウジング部材68Aの側面上において、第1のハウジング部材68Aの突起91および第4のプーリ64の突起92が周方向にて交互に配置される。
図6Aに示すように、第4のプーリ64と第1のハウジング部材68Aとの間において、第4のプーリ64の上面と第1のハウジング部材68Aの側面に沿うように、大略円筒形の柔軟性を有する部材(柔軟性部材93)が取り付けられている。柔軟性部材93の内周面には、突起91および突起92が嵌入する凹部が設けられている。この凹部内に突起91および突起92が配置されることにより、柔軟性部材93が第1のハウジング部材68Aおよび第4のプーリ64と咬み合う。これにより、第1のハウジング部材68Aが柔軟性部材93を介して第4のプーリ64に接続される。すなわち、第1のハウジング部材68A内に配置された第1のワンウェイクラッチ68は、第1のハウジング部材68Aおよび柔軟性部材93を介して第4のプーリ64に接続され、インバータモータ70の出力軸71の回転力を第4のプーリ64に伝達可能となる。
また、本第1実施形態における柔軟性部材93としては硬度60−70のゴムが用いられている。柔軟性部材93としてはこのようなゴムに限らず、金属よりも軟らかく、かつ出力軸71の回転による荷重をプーリに正常に伝達できるものであれば良い。
第4のプーリ64の内周面の内側には、インバータモータ70の出力軸71に係合するベアリング(軸受け)67aが配置されている(図4参照)。また、ベアリング67aの下方には別のベアリング(軸受け)67bが配置されている(図4、6A、6B参照)。このベアリング67bは、第2のベルト66が回転する際の第2のベルト66のテンションによるインバータモータ70の出力軸71の傾きを防止するためのものである。なお、これらのベアリング67a、67bとしては、例えばボールベアリングなどを用いても良いが、ボールベアリング以外にもオイルレスベアリングやボール以外の金属の焼結ベアリングなど、あらゆる軸受けを用いても良い。
以上、図6A、6Bなどを用いて、第4のプーリ64、第1のハウジング部材68Aおよび第1のワンウェイクラッチ68の接続関係などについて説明したが、第3のプーリ63や第2のワンウェイクラッチ15でも同様の構成を有している。
次に、図7を用いて、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときの動作について説明する。図7は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図7において、斜線部は、正方向に回転する部品を示している。
図7に示すように、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するので、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる。このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向の回転を許容する。本体側練り軸16Aの回転力は、容器側練り軸16B、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。このとき、第1のベルト65の回転によるラジアル荷重は、軸方向において第1のベルト65および第1のプーリ61と同じ位置に設けられたベアリング12によって受けられる。言い換えれば、軸方向において第1のベルト65および第1のプーリ61とは異なる位置に設けられた第2のワンウェイクラッチ15には、第1のベルト65の回転によるラジアル荷重は直接的にはかからない。なお、ここでの軸方向とは、本体側練り軸16Aが延びる方向を意味する。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が正方向に回転するので、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。なお、第4のプーリ64と出力軸71の間にはベアリング67aが配置されているが、出力軸71の回転力はベアリング67aを介して第4のプーリ64には伝わらない。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときは、練り羽根84が正方向に回転する一方で、ミル羽根82は回転しないようになっている。
次に、図8を用いて、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときの動作について説明する。図8は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図8において、斜線部は、逆方向に回転する部品を示している。
図8に示すように、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が逆方向に回転するので、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制する。このとき、第1のベルト65の回転によるラジアル荷重はベアリング12によって受けられており、第2のワンウェイクラッチ15には、第1のベルト65の回転によるラジアル荷重は直接的にはかからない。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するので、第4のプーリ64を逆方向に回転させる。この第4のプーリ64の回転力は、第2のベルト66、第2のプーリ62、本体側ミル軸14A、容器側ミル軸14B、キャップ81、ミル羽根82に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。このとき、第2のベルト66の回転によるラジアル荷重は、軸方向において第2のベルト66および第4のプーリ64と同じ位置に設けられたベアリング67aによって受けられている。言い換えれば、軸方向において第2のベルト66および第4のプーリ64とは異なる位置に設けられた第1のワンウェイクラッチ68には、第2のベルト66の回転によるラジアル荷重は直接的にはかからない。ここでの軸方向とは、本体側ミル軸14Aが延びる方向を意味する。なお、このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側ミル軸14Aの回転力により、本体側練り軸16Aが逆方向に回転(いわゆる、共回り)することを規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときは、ミル羽根82が逆方向に回転する一方で、練り羽根84は回転しないようになっている。
上述したように、第1のワンウェイクラッチ68は、第1のハウジング部材68Aを介して第4のプーリ64に接続されるとともに、軸方向において第2のベルト66とは異なる位置に配置されている。また、第1のワンウェイクラッチ68が取り付けられるインバータモータ70の出力軸71の軸方向における第2のベルト66と同じ位置にはベアリング67aが配置されており、第2のベルト66の回転によるラジアル荷重はベアリング67aにより受けられる。このような構成によれば、第2のベルト66の回転によるラジアル荷重を第1のワンウェイクラッチ68で直接受けないため、第2のベルト66が回転する際に第1のワンウェイクラッチ68での動作音を小さくすることができる。また、第1のハウジング部材68Aが柔軟性部材93(図6A参照)を介して第4のプーリ64に接続されているため、第2のベルト66の回転による衝撃を柔軟性部材93にて吸収することができ、第1のワンウェイクラッチ68での動作音をさらに小さくすることができる。
なお、前述したように第2のワンウェイクラッチ15、第2のハウジング部材15Aおよび第3のプーリ63でも同様の構成が採用されている。すなわち、第2のワンウェイクラッチ15は、第2のハウジング部材15Aを介して第1のプーリ61に接続されるとともに、軸方向において第1のベルト65とは異なる位置に配置されている。また、第2のワンウェイクラッチ15が取り付けられる練り軸16Aの軸方向における第1のベルト65と同じ位置にはベアリング12が配置されており、第1のベルト65の回転によるラジアル荷重はベアリング12により受けられる。これにより、第2のワンウェイクラッチ15での動作音の低減という同様の効果を奏することができる。なお、第2のハウジング部材15Aは、柔軟性部材を介さずに第1のプーリ61に直接接続されているが、このような場合であっても第2のワンウェイクラッチ15での動作音を同様に低減することができる。
なお、本第1実施形態において、第1のプーリ61は、第2〜第4のプーリ62〜64に比べて大きな直径を有するように構成されている。これにより、インバータモータ70の出力軸71の回転速度に対する練り羽根84の回転速度を低速(例えば、250rpm)にするとともに、高トルクが得られるようにしている。また、練り羽根84の回転速度に対するミル羽根82の回転速度を高速(例えば、4000rpm)にするようにしている。
また、練り羽根84の練り軸16Aに対応する第1のプーリ61の直径を、ミル羽根82のミル軸14Aに対応する第2のプーリ62の直径よりも大きく設定している。一般的に、調理材料を混練する練り羽根84は大きなトルクで回転させることが好ましく、一方で、穀物粒を粉砕するミル羽根82は高速で回転させることが好ましい。前述した構成によれば、練り羽根84を直径の大きな第1のプーリ61により回転させ、ミル羽根82を直径の小さな第2のプーリ62により回転させることにより、練り羽根84を大きなトルクで回転させ、ミル羽根82を高速で回転させることができる。これにより、練り羽根84による調理材料の混練と、ミル羽根82による穀物粒の粉砕とをバランス良く行うことができる。
また、第1のプーリ61に対応する第1のベルト65は、第2のプーリ62に対応する第2のベルト66の上方に配置されており、第1のベルト65の長さは、第2のベルト66の長さよりも長い。このような構成によれば、自動製パン機1の内壁底面付近に、第1のベルト65に比べて長さが短い第2のベルト66が配されることにより、内壁底面付近における部品が配置されない空間を大きく形成することができ、自動製パン機1の小型化を図ることができる。また、このような配置により、第1のプーリ61を練り羽根84に近づけることができるため、トルクの必要な練り羽根84の回転をスムーズに行うことができる。
なお、本第1実施形態において、「ミル軸」は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることにより連結された本体側ミル軸14Aと容器側ミル軸14Bとにより構成されている。また、「練り軸」は、係合片16Aaと係合片16Baとが係合されることにより連結された本体側練り軸16Aと容器側練り軸16Bとにより構成されている。また、ミル羽根82の回転中心となるミル軸の中心軸と、練り羽根84の回転中心となる練り軸の中心軸とは、同一軸上に位置するように設けられている。
また、本第1実施形態において、「駆動力切換部」は、ベアリング12,67、第1〜第4のプーリ61〜64、第1及び第2のベルト65,66、第1〜第3のワンウェイクラッチ68,15,13により構成されている。「駆動力切換部」は、ミル軸及び練り軸へのモータ70の回転駆動力の伝達経路を切り換えるものである。
次に、図9、図10A〜図10Cを用いて、ミル羽根82の好ましい形状等について説明する。図9は、ドーム状カバー83に対するミル羽根82の相対位置を示す底面図である。図10Aはミル羽根82の斜視図であり、図10B及び図10Cはミル羽根82の側面図である。
図9に示すように、ミル羽根82の両端部は、穀物粒を切るのではなく、すり潰すように形成されている。具体的には、ミル羽根82の両端部は、平面視においてドーム状カバー83の内周端部に沿うように、一定の長さのすり潰し領域82Aを有するように形成されている。これにより、穀物粒を効率良く製パン原料にすることができ、ミル羽根82の回転速度を低下させることができる。その結果、穀物粒を製パン原料にする際、すなわちミルする際に発生する音を低減することができる。
また、ミル羽根82の両端部のエッジは、波形状に形成されている。これにより、当該エッジと穀物粒との接触面積を増やし、穀物粒のすり潰し効果を向上させることができる。また、好ましくは、ミル羽根82の両端部のエッジは、正弦波状(曲線で構成される波状)に形成される。これにより、ユーザがミル羽根82に触れることにより、ユーザの指が切れることを抑えることができる。
また、ミル羽根82の両端部のエッジは、一定の厚さ(例えば、1.5mm)を有する(すなわち、刃先を有しない)ように構成されている。これにより、ユーザがミル羽根82に触れることにより、ユーザの指が切れることをより一層抑えることができる。また、当該エッジと穀物粒との接触面積を増やし、穀物粒のすり潰し効果を向上させることができる。また、ミル羽根82の全体としての強度を確保することができる。なお、ミル羽根82は、エッジを含めて均一な厚さに構成されてもよい。
また、ミル羽根82の両端部は、図10B及び図10Cに示すように、正面から見て互いに逆方向に傾斜している。具体的には、ミル羽根82の両端部は、ミル羽根82の回転方向の下流側(最初に米粒に衝突する側)に位置する部分が、その上流側に位置する部分よりも下方に位置するように傾斜している。また、ミル羽根82の両端部の水平面に対する傾斜角度は、従来よりも大きく、例えば13度とされている。これにより、穀物粒を効率良く製パン原料にすることができ、ミル羽根82の回転速度をより一層低下させることができる。その結果、穀物粒を製パン原料にする際、すなわちミルする際に発生する音をより一層低減することができる。
なお、本第1実施形態では、ミル羽根82の両端部のエッジを波形状に形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ミル羽根82の両端部のエッジは曲線状であってもよい。なお、図11は、エッジを曲線状としたミル羽根82により穀物粒を粉砕する際に、ミル羽根82にかかる応力を示す図である。図12は、従来の刃先を有するミル羽根により穀物粒を粉砕する際に、当該ミル羽根にかかる応力を示す図である。図11及び図12より、エッジを曲線状としたミル羽根82の方が、従来のミル羽根よりも穀物粒に対してより大きな力を加えられることが分かる。
次に、図13を用いて、本第1実施形態にかかる自動製パン機1によって実行される米粒用製パンコースの流れの一例を説明する。図13は、本第1実施形態にかかる自動製パン機1によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図13に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸水工程と、ミル工程と、冷却工程と、練り(提ね)工程と、発酵工程と、焼成工程とが順次に実行される。
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、以下の動作を行う。
まず、ユーザは、容器側ミル軸14Bにキャップ81を取り付けるとともに、セーフティカバー85の一部を容器側練り軸16Bの内面に嵌合させる。これにより、羽根ユニット80が、図3に示すように、調理容器40内にセットされる。
その後、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば、食塩、砂糖、ショートニング)等の主材料を調理容器40内に入れるとともに、パンの製造工程の途中で自動投入するドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を副材料容器53,54に入れる。
その後、ユーザは、調理容器40を焼成室30内にセットし、蓋50により焼成室30の上面開口部を閉じる。その後、ユーザは、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御部90が、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
米粒用製パンコースがスタートされると、制御部90の指令によって浸水工程が開始される。浸水工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われるミル工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくするための工程である。浸水工程では、調理容器40に予め投入された主材料の静置状態が所定時間(本第1実施形態では30分)維持される。
浸水工程の開始から所定時間が経過すると、制御部90の指令によって浸水工程が終了され、ミル工程が開始される。ミル工程は、調理容器40内に入れられた米粒を粉砕して製パン原料を製造する工程である。ミル工程において、制御部90は、インバータモータ70を制御して出力軸71を逆方向に回転させ、図8を用いて上述したように、米粒と水とが含まれる混合物の中でミル羽根82を回転(例えば、4000rpm)させる。これにより、米粒が粉砕される。
粉砕された米粒と水とが含まれる混合物は、ドーム状カバー83の複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の外側の空間に排出される。これに伴い、調理容器40の凹部41内の米粒と水とを含む混合物がセーフティカバー85に設けられた開口部(図示せず)からドーム状カバー83の内側の空間に取り込まれる。このようにして、次々に米粒がミル羽根82によって粉砕され、その結果、ペースト状の粉砕粉を含む製パン原料が製造される。
なお、ミル羽根82と衝突する米粒の大きさが大きいときは、大きな衝突音が発生する。このため、制御部90は、ミル工程の開始から所定時間(例えば、5分間)は、ミル羽根82を低速回転させ、その後、ミル羽根82を高速回転させるようにインバータモータ70を制御することが好ましい。
これにより、ミル工程における大きな衝突音の発生を抑えることができる。
ミル工程の開始から所定時間(本第1実施形態では70分)経過すると、制御部90の指令によってミル工程が終了され、冷却工程が開始される。冷却工程は、ミル工程によって上昇した調理容器40内の製パン原料の温度を、ドライイーストが活発に働く温度(例えば、30℃前後)まで下げる工程である。冷却工程において、制御部90は、インバータモータ70の駆動を停止させる。
冷却工程の開始から所定時間(本第1実施形態では32分)経過すると、制御部90の指令によって冷却工程が終了され、練り工程が開始される。練り工程は、製パン原料にドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を投入し、これらを混練して、パン生地を製造する工程である。練り工程において、制御部90は、開閉板53a,54aを開放して調理容器40内に副材料を投入するとともに、インバータモータ70を制御して出力軸71を正方向に回転させ、図7を用いて上述したように、製パン原料と副材料とが含まれる混合物の中で練り羽根84を低速回転(例えば、250rpm)させる。これにより、製パン原料と副材料とが含まれる混合物が混練され、所定の弾力を有するパン生地が製造される。
なお、練り工程の間、練り羽根84を同じ速度で継続して回転させると、特に製パン原料と副材料とが含まれる混合物の混練が進んでいない練り工程の初期において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散るおそれがある。このため、制御部90は、図14に示すように、練り工程が進むに連れて練り羽根84の回転数が徐々に増加するようにインバータモータ70を制御することが好ましい。これにより、練り工程において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散ることを抑えることができる。
練り工程の開始から所定時間(本第1実施形態では23分)経過すると、制御部90の指令によって練り工程が終了され、発酵工程が開始される。発酵工程は、パン生地を発酵させる工程である。発酵工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば、38℃)に維持する。
発酵工程の開始から所定時間(本第1実施形態では75分)経過すると、制御部90の指令によって発酵工程が終了され、焼成工程が開始される。焼成工程は、発酵したパン生地を焼成してパンを焼き上げる工程である。焼成工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば、125℃)まで上昇させる。
焼成工程の開始から所定時間(本第1実施形態では40分)経過すると、制御部90の指令によって焼成工程が終了される。これにより、全ての製パン工程が終了する。全ての製パン工程が終了したことは、例えば、操作部20の液晶パネルの表示や報知音などにより、ユーザに知らされる。
本第1実施形態にかかる自動製パン機1によれば、第1のワンウェイクラッチ68は、第1のハウジング部材68Aを介して第4のプーリ64に接続されるとともに軸方向において第2のベルト66とは異なる位置に配置され、第1のワンウェイクラッチ68が取り付けられるモータ70の出力軸71の軸方向における第2のベルト66と同じ位置には軸受け(ベアリング)67aが配置される。これにより、第1のワンウェイクラッチ68での動作音をより低減することができる。
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機について説明する。図15は、本第2実施形態にかかる自動製パン機のインバータモータに関連する部品の構成を示す断面図である。本第2実施形態にかかる自動製パン機が前記第1実施形態にかかる自動製パン機と異なる点は、ベアリング12、第2のワンウェイクラッチ15、第1のプーリ61、第3のプーリ63、第1のベルト65、第1のワンウェイクラッチ68に代えて、遊星ギヤ100、第4のワンウェイクラッチ101を備えている点である。
遊星ギヤ100は、インバータモータ70の出力軸71の外周上部に設けられている。遊星ギヤ100は、出力軸71の回転数よりも減速した回転数で第4のプーリ64を回転させるものである。
第4のワンウェイクラッチ101は、本体側練り軸16Aの外周下部に、第2のプーリ62と係合するように設けられている。第4のワンウェイクラッチ101は、第2のプーリ62が正方向に回転するとき、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる一方、第2のプーリ62が逆方向に回転するとき、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制するように構成されている。
次に、図16を用いて、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときの動作について説明する。図16は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図16において、斜線部は、正方向に回転する部品を示している。
図16に示すように、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、遊星ギヤ100に伝達される。より具体的には、出力軸71の回転力が、遊星ギヤ100、遊星ギヤ100の出力軸100A、第4のプーリ64へと伝達される。このように、遊星ギヤ100を設けることにより、出力軸71の回転数よりも減速した回転数で第4のプーリ64が正方向に回転される。
第4のプーリ64の回転力は、第2のベルト66、第2のプーリ62、第4のワンウェイクラッチ101に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。第4のワンウェイクラッチ101は、第2のプーリ62が正方向に回転するので、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる。このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向の回転を許容する。本体側練り軸16Aの回転力は、容器側練り軸16B、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
また、第2のプーリ62の回転力は、本体側ミル軸14A、容器側ミル軸14B、キャップ81、ミル羽根82に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときは、ミル羽根82及び練り羽根84の両方が正方向に減速され回転するようになっている。
次に、図17を用いて、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときの動作について説明する。図17は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図17において、斜線部は、逆方向に回転する部品を示している。
図17に示すように、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、ワンウェイクラッチにより、遊星ギヤ100に伝達されずに、遊星ギヤ100の出力軸100Aに伝達されるので、出力軸71の回転速度と同じ速度でプーリ64を回転させることができる。より具体的には、出力軸71の回転力が、遊星ギヤ100の出力軸100A、第4のプーリ64へと伝達される。
第4のプーリ64の回転力は、第2のベルト66、第2のプーリ62、第4のワンウェイクラッチ101に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。第4のワンウェイクラッチ101は、第2のプーリ62が逆方向に回転するので、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制する。
一方、第2のプーリ62の回転力は、本体側ミル軸14A、容器側ミル軸14B、キャップ81、ミル羽根82に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。なお、このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側ミル軸14Aの回転力により、本体側練り軸16Aが逆方向に回転(いわゆる、共回り)することを規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときは、ミル羽根82が逆方向に回転する一方で、練り羽根84は回転しないようになっている。
次に、図18を用いてワンウェイクラッチの一例を説明する。ワンウェイクラッチは、クラッチ本体200とローラ201とスプリング202と保持器203より構成され、内部に軸204を挿入し、外周をハウジング205(伝達部品)に圧入することにより、クラッチ200と軸204との相対回転により、クラッチ200と軸204との間で回転力を伝達する所謂かみ合いの状態、或いは、クラッチ200と軸204との間で回転力を伝達しない所謂オーバーランの状態を作ることが可能である。
図18(a)はクラッチ200と軸204とがかみ合っていない状態を示しており、図18(b)はクラッチ200と軸204とがかみ合った状態を示している。また、図18(a)に示すクラッチ200と軸204とがかみ合っていない状態は、軸204が停止している状態でハウジング205が回転する場合と、ハウジング205が停止している状態で、軸204が回転する場合とがある。一方、図18(b)に示すクラッチ200と軸204とがかみ合っている状態は、軸204が例えば図中矢印方向(時計回りの方向)に回転すると同様にクラッチ200(及びハウジング205)も図中矢印方向(時計回りの方向)に回転する。逆に、軸204が例えば図中反時計回りの方向に回転すると同様にクラッチ200も図中反時計回りの方向に回転する。
図18(b)に示すように、かみ合っている状態では、スプリング202の力でローラ201がクラッチ200のくさび面に入りかみ合い状態になり、ハウジング205と軸204が同じ方向に回転する。一方、図18(a)に示すように、クラッチ200のオーバーラン時は、ローラ201はくさび面から開放されオーバーランとなる。
図18(b)のかみ合った状態では、軸204を駆動するときとハウジング205を駆動するときでは、それぞれ回転方向が反対方向となる。例えば、軸204を駆動する場合には図18(b)に示すように軸204とクラッチ200が図中矢印方向(時計周りの方向)に回転し、一方、ハウジング205を駆動する場合には逆方向、即ち、軸204とクラッチ200が図中反時計周りの方向に回転する。
図18(a)のオーバーランの状態においても同様に、軸204が停止してハウジング205が回転する際のハウジング205の回転方向と、ハウジング205が停止して軸204が回転する際の軸204の回転方向とでは逆の方向となる。尚、ワンウェイクラッチに多大なラジアル荷重が加わると変形等による異音発生、更には破損に至ることも考えられ、ベルト等による荷重が直接受けないようにする必要がある。このような事態を回避するために、ローラ201の保持器203は例えば樹脂製で形成している。
本第2実施形態にかかる自動製パン機によれば、単一のインバータモータ70によりミル羽根82と練り羽根84の両方を回転させるようにしているので、モータを2つ備える従来の自動製パン機よりも装置の小型化を実現することができる。
また、本第2実施形態にかかる自動製パン機によれば、駆動力切換部として機能する遊星ギヤ100、ベアリング67、第4のプーリ64、第2のベルト66、第2のプーリ62、第3及び第4のワンウェイクラッチ13、101を全て機器本体10の内部であって焼成室30の外部に設けているので、当該各部品に製パン原料等が詰まるなどの不具合を抑えることができる。これにより、インバータモータ70の回転駆動力の伝達経路の切り換えをより確実に行うことができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、「モータ」として、インバータモータを用いたが、本発明はこれに限定されず、他のモータを用いてもよく、ACモータ、DCモータいずれのモータを使用してもよい。
なお、前記では、第1の羽根が練り羽根82であり、第2の羽根がミル羽根84である場合について説明したが、このような場合に限らず、第1の羽根がミル羽根で、第2の羽根が練り羽根であっても良い。また、前記では、第1のワンウェイクラッチ68が第2の羽根の回転を制御し、第2のワンウェイクラッチ15が第1の羽根の回転を制御する場合について説明したが、このような場合に限らず、第1のワンウェイクラッチ68が第1の羽根の回転を制御し、第2のワンウェイクラッチ15が第2の羽根の回転を制御しても良い。
また、前記では、第1のワンウェイクラッチ68、第1のハウジング部材68A、ベアリング67a、67bおよび柔軟性部材93などが第4のプーリ64側(図4における左側、モータ70の出力軸71側)に取り付けられる場合について説明したが、このような場合に限らず、第2のプーリ62側(図4における右側、本体側ミル軸14A側)に取り付けられても良い。すなわち、前記では、第1のワンウェイクラッチ68がモータ70の出力軸71に取り付けられる場合について説明したが、このような場合に限らず、本体側ミル軸14A(第2の軸14A)に取り付けられても良い。
同様に、前記では、第2のワンウェイクラッチ15、第2のハウジング部材15Aおよびベアリング12などが第1のプーリ61側(図4における右側、本体側練り軸16A側)に取り付けられる場合について説明したが、このような場合に限らず、第3のプーリ63側(図4における左側、モータ70の出力軸71側)に取り付けられても良い。すなわち、前記では、第2のワンウェイクラッチ15が本体側練り軸16A(第1の軸16A)に取り付けられる場合について説明したが、このような場合に限らず、モータ70の出力軸71に取り付けられても良い。
また、前記では、ミルと練りの両方を行う自動製パン機にインバータモータを使用したが、本発明はこれに限定されない。練りのみを行う一般的な自動製パン機にインバータモータを使用してもよい。この場合、練り羽根の回転数を可変できるので、例えば、練り工程が進むに連れて練り羽根の回転数が徐々に増加するようにインバータモータを制御することが可能になる。これにより、製パン原料や副材料が調理容器の外側に飛び散ることを抑えることができる。