本発明の本実施例にかかる調理器(例えば自動製パン器)の全体構成について説明する。図1は、本実施例にかかる自動製パン器の斜視図であり、図2は、当該自動製パン器の蓋体を開けた状態を示す斜視図である。図3は、本実施例にかかる自動製パン器の断面図である。図4は、本実施例にかかる自動製パン器の一部拡大断面図である。
図1〜3において、本実施例にかかる自動製パン器1は、略直方体形状の機器本体10を備えている。機器本体10の上面の一部には、操作部20が設けられている。
操作部20は、操作キー群と、表示部とによって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの調理コースなどを選択する選択キー等が含まれる。調理コースには、例えば、米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコースなどが含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成され、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示するものである。
機器本体10の内部には、焼成室30が設けられている。焼成室30は、上面が開口した箱形状に形成されている。焼成室30の内部には、パン生地、ケーキ、餅などの調理材料を収容する調理容器40が着脱自在に収納される。
また、焼成室30の内部には、図3に示すように、調理容器40を加熱する加熱部の一例であるシーズヒータ31と、焼成室30内の温度を検知する温度検知部の一例である温度センサ32とが設けられている。
シーズヒータ31は、焼成室30に収容された調理容器40の下部を、隙間を空けて包囲するように配置されている。温度センサ32は、焼成室30内の平均的な温度を検知することができるように、シーズヒータ31から少し離れた位置に配置されている。
焼成室30の上面開口部は、機器本体10の上部に設けられた蓋体50によって開閉される。蓋体50は、機器本体10の上方後部(図3の右上側)に設けられたヒンジ部10Aに回動自在に取り付けられている。蓋体50は、蓋体本体51と、外蓋体52とを備えている。蓋体本体51には、グルテンやドライイーストなどの粉状の副材料を収容する副材料容器53と、レーズン、ナッツなどの比較的体積の大きな副材料を収容する副材料容器54とが取り付けられている。副材料容器53,54は、調理容器40の上方に配置されている。外蓋体52は、副材料容器53,54の上部開口部を開閉可能に取り付けられている。
副材料容器53の底壁は、開閉板53aで構成されている。開閉板53aは、副材料容器53内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。同様に、副材料容器54の底壁は、開閉板54aで構成されている。開閉板54aは、副材料容器54内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。開閉板53a,54aの開閉のタイミングは、後述する制御部90により制御される。
また、焼成室30の底壁30aの略中心部には、調理容器支持部11が設けられている。調理容器支持部11は、図4に示すように、略筒状に形成され、焼成室30の底壁30aから下方に離れるに従って、内径が段階的に小さくなるように形成されている。調理容器支持部11の外周面の下端部には、ベアリング12を介して第1のプーリ61が設けられている。
調理容器支持部11の下部の中心穴には、略円筒形の第3のワンウェイクラッチ13が設けられている。第3のワンウェイクラッチ13の内側には、略円筒形の本体側練り軸16Aが垂直方向に延在するように設けられている。第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向(例えば、時計回り)の回転を許容する一方、本体側練り軸16Aの逆方向(例えば、反時計回り)の回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの外周下部には、第2のワンウェイクラッチ15が設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61と係合するように設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するとき、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる一方、第1のプーリ61が逆方向に回転するとき、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの内部には、略円柱状の本体側ミル軸14Aが垂直方向に延在するように設けられている。本体側ミル軸14Aは、本体側練り軸16Aに対して相対回転可能に設けられている。本体側ミル軸14Aの下端部には、第2のプーリ62が固定されている。
また、焼成室30の外側であって機器本体10の内部には、モータの一例であるインバータモータ70が設けられている。インバータモータ70は、出力軸71の単位時間当たりの回転数及び回転方向(正方向、逆方向)を自在に変更することができるモータである。
インバータモータ70の出力軸71の外周上部には、第3のプーリ63が固定されている。第3のプーリ63と第1のプーリ61には、第1のベルト65が架け回されている。インバータモータ70が駆動されて出力軸71が回転するとき、当該出力軸71の回転力は、第3のプーリ63、第1のベルト65を介して第1のプーリ61に伝達される。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周下部には、ベアリング67を介して第4のプーリ64が設けられている。第4のプーリ64と第2のプーリ62には、第2のベルト66が架け回されている。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周面において第3のプーリ63と第4のプーリ64との間には、第1のワンウェイクラッチ68が設けられている。第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するとき、第4のプーリ64を逆方向に回転させる一方、出力軸71が正方向に回転するとき、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。
また、本体側ミル軸14Aの上端部には、本体側コネクタ17Aが固定されている。本体側コネクタ17Aは、略円柱形の容器側ミル軸14Bの下端部に固定された容器側コネクタ17Bと係合可能に構成されている。本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合した状態で、本体側ミル軸14Aが回転したとき、容器側ミル軸14Bが回転する。
また、本体側練り軸16Aの上端部には、係合片16Aaが設けられている。係合片16Aaは、略円筒形の容器側練り軸16Bの下端部に固定された係合片16Baと係合可能に構成されている。本体側練り軸16Aが回転するとき、係合片16Aaが係合片16Baに係合し、容器側練り軸16Bが回転する。
容器側ミル軸14Bは、容器側練り軸16Bの内側に円筒形の軸受け18を介して設けられている。容器側ミル軸14Bと容器側練り軸16Bとは、調理容器40が焼成室30内にセットされたとき、調理容器40の底部の中心部に設けられた貫通穴を通じて調理容器40内に突出するように設けられている。
調理容器40の底部には、図3に示すように、有底筒状の凹部41が形成されている。また、調理容器40の底部外面には、容器側練り軸16Bを取り囲むように筒状の台座42が設けられている。調理容器40は、台座42が調理容器支持部11に載置され、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることで焼成室30内にセットされる。一方、調理容器40は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとの係合が外されることで、焼成室30内から取り外すことができる。なお、台座42は、調理容器40とは別に形成してもよいし、調理容器40と一体的に形成してもよい。
容器側ミル軸14B及び容器側練り軸16Bの調理容器40の内部に突出する部分には、羽根ユニット80が着脱自在に取り付けられている。
羽根ユニット80は、キャップ81と、ミル羽根82と、ドーム状カバー83と、練り羽根84と、セーフティカバー85とを備えている。
キャップ81は、容器側ミル軸14Bの先端部に着脱自在に設けられている。ミル羽根82は、キャップ81の外周面から外方に突出するように設けられている。ミル羽根82は、米粒などの穀物粒を粉砕して製パン原料を製造するための羽根である。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにキャップ81が容器側ミル軸14Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41内に位置するように設けられている。
ドーム状カバー83は、ミル羽根82を上方から覆うように形成されている。ドーム状カバー83には、図5及び図6に示すように、ドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間とを連通する複数の窓部83aが設けられている。ミル羽根82の回転により製造された製パン原料は、複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間に排出される。
練り羽根84は、ドーム状カバー83の外面に垂直方向に立設するように設けられている。練り羽根84は、調理容器40内の製パン原料を混練してパン生地を製造するための羽根である。
セーフティカバー85は、ドーム状カバー83の下端部に取り付けられ、ミル羽根82を下方から覆うように形成されている。また、セーフティカバー85は、その一部が容器側練り軸16Bの内面に嵌合するように、容器側練り軸16Bに取り付けられている。容器側練り軸16Bが回転するとき、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84が一体的に回転する。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにセーフティカバー85が容器側練り軸16Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41よりも上方に位置するように設けられている。また、セーフティカバー85には、調理容器40内に入れられた米粒や水などの材料をドーム状カバー83内に取り込むための開口部(図示せず)が設けられている。
また、機器本体10の操作部20の下方には、各部の駆動を制御する制御部90が設けられている。制御部90には、複数の調理コースに対応する調理シーケンスが記憶されている。調理シーケンスとは、浸水、ミル、冷却、練り、発酵、焼成などの各製造工程を順に行うにあたって、各製造工程においてシーズヒータ31の通電時間、温調温度、インバータモータ70の回転方向、回転速度、開閉板53a,54aの開閉のタイミングなどが予め決められている調理の手順のプログラムをいう。制御部90は、操作部20にて選択された特定の調理コースに対応する調理シーケンスと温度センサ32の検知温度に基づいて、インバータモータ70、シーズヒータ31、開閉板53a,54aの駆動を制御する。
次に、図6を用いて、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときの動作について説明する。図6は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図6において、斜線部は、正方向に回転する部品を示している。
図6に示すように、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するので、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる。このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向の回転を許容する。本体側練り軸16Aの回転力は、容器側練り軸16B、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が正方向に回転するので、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときは、練り羽根84が正方向に回転する一方で、ミル羽根82は回転しないようになっている。
次に、図7を用いて、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときの動作について説明する。図7は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図7において、斜線部は、逆方向に回転する部品を示している。
図7に示すように、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が逆方向に回転するので、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制する。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するので、第4のプーリ64を逆方向に回転させる。この第4のプーリ64の回転力は、第2のベルト66、第2のプーリ62、本体側ミル軸14A、容器側ミル軸14B、キャップ81、ミル羽根82に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。なお、このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側ミル軸14Aの回転力により、本体側練り軸16Aが逆方向に回転(いわゆる、共回り)することを規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときは、ミル羽根82が逆方向に回転する一方で、練り羽根84は回転しないようになっている。
なお、本実施例において、第1のプーリ61は、第2〜第4のプーリ62〜64に比べて大きな直径を有するように構成されている。これにより、インバータモータ70の出力軸71の回転速度に対する練り羽根84の回転速度を低速(例えば、250rpm)にするとともに、高トルクが得られるようにしている。また、練り羽根84の回転速度に対するミル羽根82の回転速度を高速(例えば、4000rpm)にするようにしている。
なお、本実施例において、「ミル軸」は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることにより連結された本体側ミル軸14Aと容器側ミル軸14Bとにより構成されている。また、「練り軸」は、係合片16Aaと係合片16Baとが係合されることにより連結された本体側練り軸16Aと容器側練り軸16Bとにより構成されている。また、ミル羽根82の回動軸となるミル軸の中心軸と、練り羽根84の回動軸となる練り軸の中心軸とは、同一軸上に位置するように設けられている。
また、本実施例において、「駆動力切換部」は、ベアリング12,67、第1〜第4のプーリ61〜64、第1及び第2のベルト65,66、第1〜第3のワンウェイクラッチ68,15,13により構成されている。「駆動力切換部」は、ミル軸及び練り軸へのモータ70の回転駆動力の伝達経路を切り換えるものである。
次に、図8を用いて、本実施例にかかる自動製パン器1によって実行される米粒用製パンコースの流れの一例を説明する。図8は、本実施例にかかる自動製パン器1によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図8に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸水工程と、ミル工程と、冷却工程と、練り(提ね)工程と、発酵工程と、焼成工程とが順次に実行される。
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、以下の動作を行う。
まず、ユーザは、容器側ミル軸14Bにキャップ81を取り付けるとともに、セーフティカバー85の一部を容器側練り軸16Bの内面に嵌合させる。これにより、羽根ユニット80が、図3に示すように、調理容器40内にセットされる。
その後、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば、食塩、砂糖、ショートニング)等の主材料を調理容器40内に入れるとともに、パンの製造工程の途中で自動投入するドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を副材料容器53,54に入れる。
その後、ユーザは、調理容器40を焼成室30内にセットし、蓋体50により焼成室30の上面開口部を閉じる。その後、ユーザは、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御部90が、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
米粒用製パンコースがスタートされると、制御部90の指令によって浸水工程が開始される。浸水工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われるミル工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくするための工程である。浸水工程では、調理容器40に予め投入された主材料の静置状態が所定時間(本実施例では30分)維持される。
浸水工程の開始から所定時間が経過すると、制御部90の指令によって浸水工程が終了され、ミル工程が開始される。ミル工程は、調理容器40内に入れられた米粒を粉砕して製パン原料を製造する工程である。ミル工程において、制御部90は、インバータモータ70を制御して出力軸71を逆方向に回転させ、図7を用いて上述したように、米粒と水とが含まれる混合物の中でミル羽根82を回転(例えば、4000rpm)させる。これにより、米粒が粉砕される。
粉砕された米粒と水とが含まれる混合物は、ドーム状カバー83の複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の外側の空間に排出される。これに伴い、調理容器40の凹部41内の米粒と水とを含む混合物がセーフティカバー85に設けられた開口部(図示せず)からドーム状カバー83の内側の空間に取り込まれる。このようにして、次々に米粒がミル羽根82によって粉砕され、その結果、ペースト状の粉砕粉を含む製パン原料が製造される。
なお、ミル羽根82と衝突する米粒の大きさが大きいときは、大きな衝突音が発生する。このため、制御部90は、ミル工程の開始から所定時間(例えば、5分間)は、ミル羽根82を低速回転させ、その後、ミル羽根82を高速回転させるようにインバータモータ70を制御することが好ましい。これにより、ミル工程における大きな衝突音の発生を抑えることができる。
ミル工程の開始から所定時間(本実施例では70分)経過すると、制御部90の指令によってミル工程が終了され、冷却工程が開始される。冷却工程は、ミル工程によって上昇した調理容器40内の製パン原料の温度を、ドライイーストが活発に働く温度(例えば、30℃前後)まで下げる工程である。冷却工程において、制御部90は、インバータモータ70の駆動を停止させる。
冷却工程の開始から所定時間(本実施例では32分)経過すると、制御部90の指令によって冷却工程が終了され、練り工程が開始される。練り工程は、製パン原料にドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を投入し、これらを混練して、パン生地を製造する工程である。練り工程において、制御部90は、開閉板53a,54aを開放して調理容器40内に副材料を投入するとともに、インバータモータ70を制御して出力軸71を正方向に回転させ、図6を用いて上述したように、製パン原料と副材料とが含まれる混合物の中で練り羽根84を低速回転(例えば、250rpm)させる。これにより、製パン原料と副材料とが含まれる混合物が混練され、所定の弾力を有するパン生地が製造される。
なお、練り工程の間、練り羽根84を同じ速度で継続して回転させると、特に製パン原料と副材料とが含まれる混合物の混練が進んでいない練り工程の初期において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散るおそれがある。このため、制御部90は、図13に示すように、練り工程が進むに連れて練り羽根84の回転数が徐々に増加するようにインバータモータ70を制御することが好ましい。これにより、練り工程において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散ることを抑えることができる。
練り工程の開始から所定時間(本実施例では23分)経過すると、制御部90の指令によって練り工程が終了され、発酵工程が開始される。発酵工程は、パン生地を発酵させる工程である。発酵工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば、38℃)に維持する。
発酵工程の開始から所定時間(本実施例では75分)経過すると、制御部90の指令によって発酵工程が終了され、焼成工程が開始される。焼成工程は、発酵したパン生地を焼成してパンを焼き上げる工程である。焼成工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば、125℃)まで上昇させる。
焼成工程の開始から所定時間(本実施例では40分)経過すると、制御部90の指令によって焼成工程が終了される。これにより、全ての製パン工程が終了する。全ての製パン工程が終了したことは、例えば、操作部20の液晶パネルの表示や報知音などにより、ユーザに知らされる。
本実施例にかかる自動製パン器1によれば、単一のインバータモータ70によりミル羽根82と練り羽根84の両方を回転させるようにしているので、モータを2つ備える従来の自動製パン器よりも装置の小型化を実現することができる。
また、本実施例にかかる自動製パン器1によれば、駆動力切換部として機能するベアリング12,67、第1〜第4のプーリ61〜64、第1及び第2のベルト65,66、第1〜第3のワンウェイクラッチ68,15,13を全て機器本体10の内部であって焼成室30の外部に設けているので、当該各部品に製パン原料等が詰まるなどの不具合を抑えることができる。これにより、インバータモータ70の回転駆動力の伝達経路の切り換えをより確実に行うことができる。
また、本実施例にかかる自動製パン器1によれば、モータとしてインバータモータ70を用いているので、ミル羽根82及び練り羽根84の回転数を可変することができる。これにより、例えば、ミル工程の開始から所定時間はミル羽根82を低速回転させることにより、ミル工程における大きな衝突音の発生を抑えることができる。
また、本実施例にかかる自動製パン器1によれば、インバータモータ70の出力軸71の回転方向に応じて、インバータモータ70の回転駆動力をミル軸に伝達するか、練り軸かを切り換えるようにしているので、インバータモータ70の回転駆動力の伝達経路の切り換えをより確実に行うことができる。
また、本実施例にかかる自動製パン器1によれば、練り軸16A,16Bを中空管構造とし、当該練り軸の内部にミル軸14A,14Bを設けるようにしている。これにより、より一層の装置の小型化を図ることができる。
また、前記では、ミルと練りの両方を行う自動製パン器にインバータモータを使用したが、本発明はこれに限定されない。練りのみを行う一般的な自動製パン器にインバータモータを使用してもよい。この場合、練り羽根の回転数を可変できるので、例えば、練り工程が進むに連れて練り羽根の回転数が徐々に増加するようにインバータモータを制御することが可能になる。これにより、製パン原料や副材料が調理容器の外側に飛び散ることを抑えることができる。
次に、本実施例の振動吸収部材の取り付け構造について詳細に説明する。
図10は、自動製パン器の断面図である。
図10において、駆動ユニット200は内部にインバータモータを搭載しており、この駆動ユニット200に脚部板金部品240がネジで固定されている。また、この脚部板金部品240には後ほど詳細に説明する完成シャーシクッション230が固定されている。
又、この完成シャーシクッション230は中央部分にネジを通すための孔部が形成されており、自動製パン器の底部にある脚ゴム220が脚固定ネジ210により、完成シャーシクッション230に固定されている。
従来のベーカリーでは、駆動ユニットの板金部品に対して外殻と脚ゴムを直接ネジで固定を行っていたが、この状態では駆動ユニットと外殻及び床面がネジを介して接しており駆動の振動が機器本体の外殻、床面に伝わり共振音を発生させることがある。
そこで本実施例では駆動ユニット200と機器本体の外殻との間に振動吸収部材231を備えた完成シャーシクッション230を設置し、脚固定ネジ210が駆動ユニット200に直接接しない構造となっている。
図11は完成シャーシクッション230の斜視図を示している。
完成シャーシクッション230は、図11に示すように、振動吸収部材231の側面に形成された凹部234に略U字状のストッパープレート232が嵌めこまれ、更にこのストッパープレート232が嵌めこまれた振動吸収部材231上には爪部235を左右両端に有するロックプレート233が配置された構造となっている。振動吸収部材231は、例えばゴム部材等からなる振動を吸収する材料で形成されている。一方、ロックプレート233とストッパープレート232は例えば樹脂等で形成されている。
ストッパープレート232は、脚部板金部品240を嵌め合わせるために真ん中に溝2
36を形成しており、この溝236の部分に脚部板金部品240を嵌合させることにより、ストッパープレート232を脚部板金部品240に固定させることができる。尚、脚部板金部品240に直接ゴム等の材料からなる振動吸収部材231を固定させようとすると、振動吸収部材231が切れる可能性があるために、このストッパープレート232に脚部板金部品240を固定させている。
図12は完成シャーシクッション230の分解斜視図である。
図12において、振動吸収部材231の側面に形成されている凹部234に、略U字状のストッパープレート232を嵌めこむようになっている。又、ロックプレート233の裏面には下に突出した凸部237が形成されておりこの凸部237に中央に孔238が形成された振動吸収部材231を嵌めこむようになっている。
更に、この凸部237の中央部分には孔が形成されており、この孔部分にビスを通す構成となっている。換言すれば、振動吸収部材231の中央部分と、ロックプレート233の中央部分に、脚固定ネジ210が螺合されるような構成となっている(但し、脚固定ネジ210は、凸部237により振動吸収部材231に接触しない)。
完成シャーシクッション230を脚部板金部品240に取付ける際には、ロックプレート233の左右側に形成されている爪部235を脚部板金部品240の穴部239に係合させることにより、より確実に取付けることが可能である。
このときロックプレート233は振動吸収部材231の反発力で持ち上げられておりロックプレート233の爪部235が確実に脚部板金部品240の穴部239に引っ掛かることができる。この仮固定によって外殻を組付ける際に完成シャーシクッション230が衝撃等で外れる事が無く従来品と比較して作業性を損なうことが無い。
駆動ユニット200の脚部板金部品240に対してロックプレート233が仮固定されている状態では、図13に示すように、ロックプレート233が脚部板金部品240に接した状態であり、このままではモータの振動が、駆動ユニット200、脚部板金部品240、ロックプレート233を介して脚固定ネジ210に伝達されるが、図14に示すように、ロックプレート233のネジボス部の長さは振動吸収部材231全長よりも短く設定されているので、脚固定ネジ210を締め付けていく(回転していく)と、ロックプレート233の上方部分が振動吸収部材231の弾性力に反して下方に下りていく。すると、図15に示すように、ロックプレート233(の爪部235近傍部分)と脚部板金部品240とが離れ、本体外殻と駆動ユニット200は振動吸収部材231によって浮いた状態とすることが可能となる。
このため、駆動ユニット200からの振動はストッパープレート232のみに伝わり、ストッパープレートに伝わった振動は、振動吸収部材231により吸収されるため、駆動ユニット200からの振動が脚固定ネジ210に伝わることを防止することができる。
このように、本実施例装置では、駆動ユニットの脚部板金部品240に対してロックプレート233の爪部235を脚部板金部品240の穴部239に引っ掛けることによって仮固定できる。このときロックプレート233は振動吸収部材の反発力で持ち上げられておりロックプレート233の爪部235が確実に脚部板金部品240の穴部239に引っ掛かることができる。この仮固定によって外殻を組付ける際に完成シャーシクッション230が衝撃等で外れる事が無く従来品と比較して作業性を損なうことが無い。
また、駆動ユニット200の脚部板金部品240に対してロックプレート233が仮固定されている状態では、ロックプレート233が脚部板金部品240に接した状態であり、このままでは振動が伝わってしまうが、機器本体10の外殻と駆動ユニット200をネジで固定する際(或いは、脚ゴム220を機器本体10の外殻に固定する際)にロックプレート233は下方に下がることによって、振動吸収部材231が撓みロックプレート233と脚部板金部品240が離れ、機器本体10の外殻と駆動ユニット200は振動吸収部材231によって浮いた状態とすることが可能となる。