以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置は、シリアル型インクジェット記録装置である。装置本体1の左右の側板21A、21Bに架け渡したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を搭載している。2つの記録ヘッド34で、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。また、記録ヘッド34は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有している。記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。また、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10からインクが供給される。供給ポンプユニット24は、インクカートリッジ10の各色のインクを、供給チューブ36を介してヘッドタンク35に送液する。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に用紙42が積載される。用紙42は、半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44によって、1枚ずつ分離されて給紙される。分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、給紙された用紙42は、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47とを介して、搬送手段である搬送ベルト51と加圧コロ49との間に送り込まれる。搬送ベルト51は、用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置に搬送する。
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。
また、搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。
維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)を備えている。
また、維持回復機構81は、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83を備えている。さらに、維持回復機構81は、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
また、この維持回復機構81の下方側には、維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク99が装置本体に対して交換可能に装着される。
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置している。この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送される。そして、用紙42は、先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電される。この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動する。そして、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。図3及び図4は同ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合している。これにより、液滴を吐出するノズル104が貫通孔105を介して通じる個別液室106、液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成される。そして、フレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ部109を介して液体(インク)が液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して液室106にインクが供給される。
流路板101は、SUSなどの金属板を積層して、貫通孔105、液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材102は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
そして、振動板部材102の液室106と反対側に、柱状の積層型圧電部材112が接合されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段としての圧電アクチュエータ111を構成している。
なお、この例では、圧電部材112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードでもよい。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図3に示すように、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veから下げる。これによって、圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入する。その後、図4に示すように、圧電部材112に印加する電圧を上げる。これにより、圧電部材112が積層方向に伸長して、振動板部材102をノズル104方向に変形させて液室106の容積を収縮させる。液室106の容積が収縮することで、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
そして、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生する。このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。図5は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラムを含む各種プログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503を備えている。また、制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504を備えている。さらに、制御部500は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
また、制御部500は、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509を備えている。また、制御部500は、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554と、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555とを備えている。また、制御部500は、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動、吸引ポンプ812などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510を備えている。また、制御部500は、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っている。そして、制御部500は、I/F506を介して、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置などのホスト900側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
ここで、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト900側のプリンタドライバ901で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送する。また、印刷制御部508は、画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。さらに、印刷制御部508は、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含む。そして、印刷制御部508は、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて、印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して記録ヘッド34の圧力発生手段に与えて記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
次に、ヘッド駆動制御装置を構成する印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図6のブロック説明図を参照して説明する。
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数のパルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701を備えている。また、印刷制御部508は、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702を備えている。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号である。この滴制御信号は、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711を備えている。また、ヘッドドライバ509は、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713を備えている。また、ヘッドドライバ509は、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714を備えている。また、ヘッドドライバ509は、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715を備えている。
このアナログスイッチ715は、各圧電部材112の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvが入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにする。これにより、共通駆動波形Pvを構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)、記録ヘッド34の圧電部材112に印加される。
次に、本発明の第1実施形態について図7を参照して説明する。図7は同実施形態における駆動波形の説明図である。
この駆動波形Pv1は、1駆動周期内で、記録ヘッド34の圧力発生手段(圧電部材112)に与える、少なくとも第1駆動パルスP1と、第2駆動パルスP2を時系列で含む波形である。
ここで、第1駆動パルスP1は、引き込み波形要素である第1波形要素a1と、第1波形要素a1に続く保持波形要素である第2波形要素b1と、第2波形要素b1に続く押し込み波形要素である第3波形要素c1とを含む。
第1波形要素a1は、基準電位(ここでは、中間電位)Veから電位V1分立ち下がることで圧電部材112を収縮させて個別液室106を膨張させる立下り波形要素である。第2波形要素b1は、第1波形要素a1で立ち下がった電位を所定時間(パルス幅Pw1)保持するホールド波形要素である。第3波形要素c1は、第2波形要素b1で保持された電位から基準電位(中間電位)Veまで電位V1分立ち上がることで圧電部材112を伸長させて個別液室106を収縮させる立ち上がり波形要素である。
第2駆動パルスP2は、引き込み波形要素である第1波形要素a2と、第1波形要素a2に続く保持波形要素である第2波形要素b2と、第2波形要素b2に続く押し込み波形要素である第3波形要素c2とを含む。
第1波形要素a2は、基準電位(ここでは、中間電位)Veから電位V2分立ち下がることで圧電部材112を収縮させて個別液室106を膨張させる立下り波形要素である。第2波形要素b2は、第1波形要素a2で立ち下がった電位を所定時間(パルス幅Pw2)保持するホールド波形要素である。第3波形要素c2は、第2波形要素b2で保持された電位から基準電位(中間電位)Veまで電位V2分立ち上がることで圧電部材112を伸長させて個別液室106を収縮させる立ち上がり波形要素である。
本実施形態では、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2とは同じ波形としているので、電位V1=V2の関係にある。この電位V1、V2は、目的とする滴速度に応じて調整することができる。
この場合、第1駆動パルスP1で吐出される液滴の滴速度Vj1と、第2駆動パルスP2で吐出される液滴の滴速度Vj2とが、Vj1<Vj2、の関係になるように、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2の波形に関する電位V、立ち下がり時間Tf、立ち上がり時間Tr、パルス幅(保持時間)Pwを設定している。
さらに、ここでは、第1駆動パルスP1で吐出される液滴と第2駆動パルスP2で吐出される液滴とが、飛翔中に1滴にマージするように、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2の波形に関する電位V、立ち下がり時間Tf、立ち上がり時間Tr、パルス幅(保持時間)Pwを設定している。
そして、本実施形態の駆動波形Pvは、第1駆動パルスP1の押し込み波形要素である第3波形要素c1の終点T1から第2駆動パルスP2の引き込み波形要素である第1波形要素a2の始点T2までの時間(パルス間隔)Tdが、個別液室106の固有振動周期Tcの整数倍(ここでは、Td=1×Tc)である波形としている。
このように、第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2のパルス間隔Td、即ち、第1駆動パルスP1の第3波形要素c1の終点から第2駆動パルスP2の第1波形要素a2の始点までの時間を、個別液室106の固有振動周期Tcの整数倍である波形とすることで、2つの駆動パルスで1滴を形成する場合に簡単な構成でサテライトの発生を抑制できる。
この点について具体的に説明する。まず、1つのパルス(単パルス)の構成について図8及び図9を参照して説明する。図8は単パルスの波形形状を示す説明図、図9は同単パルスのホールド期間(パルス幅Pw)を変化させたときの滴速度の変化の一例を説明する説明図である。
滴吐出を行う単パルスは、引き込み波形要素a、ホールド波形要素b、押し込み波形要素cとで構成される。
ここで、引き込み波形要素(立ち下がり波形要素)aは、基準電位Veから立ち下がって圧電部材112を収縮させて、個別液室106を膨張させる。立ち下がり波形要素aの始点から終点までを立ち下がり時間Tfとする。
ホールド波形要素bは、立ち下り波形要素aの立ち下がり電位を所定時間保持する。ホールド波形要素bによる保持時間(ホールド時間)をパルス幅Pwという。
押し込み波形要素(立ち上がり波形要素)cは、ホールド波形要素bで保持された電位から立ち上がって圧電部材112を伸張させることによって個別液室106を収縮させる。立ち上がり波形要素cの始点から終点までの時間を立ち上がり時間Trとする。
そして、この単パルスのパルス幅Pwを変化させることで滴吐出速度が変化する。この場合、図9に示すように、個別液室106の固有振動周期Tcは、パルス幅PwaとPwbとの差から算出することができる。
次に、2つの滴を飛翔中にマージさせて1滴とする駆動波形の基本構成について図10を参照して説明する。
この駆動波形は、前記図7で説明した駆動波形と同様な構成であり、第1駆動パルスP1で吐出させた液滴と、第2駆動パルスP2で吐出させた液滴とを、飛翔中にマージさせて1滴として、被記録媒体に着弾させる。
ここで、第1駆動パルスP1の第3波形要素c1の終点から第2駆動パルスP2の第1波形要素a2の始点までの時間をパルス間隔Tdとする。このパルス間隔Tdが変化することは、即ち第2駆動パルスP2を加えるタイミングが変わることを意味し、第2駆動パルスP2によって吐出される液滴の滴速度が大きく影響される。
この第1駆動パルスP1の第3波形要素c1の終点から第2駆動パルスP2の第1波形要素a2の始点までのパルス間隔(時間)Tdに対するサテライトTj及び第1駆動パルスP1の電圧の変化の一例を図11に示している。
ここで、サテライトTjについて図12の模式的説明図を参照して説明する。なお、図12では理解しやすいように吐出滴が1滴の場合で示している。サテライトTjは、吐出開始から着弾までの時間である。
まず、単パルスが印加されて、ノズル面103aからインク滴600が吐出し始める。この時間をt1とする。次に、時間t2、t3と時間が経過するにつれ、段々とインク滴600が仮想の被記録媒体42aに向かって近づいていく。ここで、ノズル面103aから被記録媒体42aまでの距離Gが実際に使用されるノズル面−被記録媒体間の距離と同じになるようにしている。
そして、示すように時間t4で、インク滴600は被記録媒体42aのラインに到達する。
さらに、時間t5でインク滴600(主滴)に追従したサテライト601が被記録媒体42aのラインに到達する。
ここで、インク滴600の時間Tjとは、インク滴600が吐出されてから被記録媒体42aのラインに到達するまでの時間、即ち時間(t4−t1)である。
また、サテライトTjとは、インク滴600が吐出されてからインク滴600に追従するサテライトが被記録媒体42aのラインに到達するまでの時間、すなわち時間(t5−t1)である。
この時間(t5−t1)は、長くなるほど、サテライトの速度は遅く、主滴との速度差が大きくなるのである。これは、実際、被記録媒体に着弾する際の画像が悪化する方向に働いてしまうため、高品質な画像を形成するにはサテライトTjを短くする必要がある。
ここで、図11に戻って、図11の測定条件として、まず、第2駆動パルスP2単独で与えたときのインク滴のサテライトTjが200μsになるように、電圧V2を固定している。
次に、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2を連続で加えたとき、それぞれの駆動パルスによって吐出されたインク滴が飛翔中にマージし、そのインク滴のサテライトTjが200μsとなるように電圧を調整している。つまり、第2駆動パルスP2はパルス間隔Tdによらず固定された波形であり、第1駆動パルスP1の電圧V1はパルス間隔Tdを変えるのと同時に調整している。
ここで、図11の破線700の箇所は、ある周期で第1駆動パルスP1の電圧V1が小さくなっていることを表している。電圧が小さいということは、効率良くインク滴を吐出させることができると言い換えられるので、この箇所が共振ポイントである。
これに着目すると、サテライトTjは共振ポイントで小さくなる傾向であることが分かる。さらに、二番目、三番目というように時間Tdが長くなる方向の共振ポイントのほうが、サテライトTjを小さくすることが可能であるという結果も読み取ることができる。
以上より、本実施形態のように、第1駆動パルスP1の第3波形要素c1の終点T1から第2駆動パルスP2の第1波形要素a2の始点T2までの時間であるパルス間隔Tdが、個別液室106の固有振動周期Tcと同じ(Td=1・Tc)である波形とすることで、2つの駆動パルスで1滴を形成する場合に簡単な構成でサテライトの発生を抑制できる。つまり、時間(パルス間隔)Tdが固有振動周期Tcの長さよりも短い波形である場合よりもサテライトを抑制することが可能となる。
次に、本発明の第2実施形態について図13を参照して説明する。図13は同実施形態における駆動波形の説明図である。
本実施形態では、第1駆動パルスP1の第3波形要素c1の終点T1から第2駆動パルスP2の第1波形要素a2の始点T2までの時間(パルス間隔)Tdが、個別液室106の固有振動周期Tcの2倍(Td=2・Tc)である波形としている。
このように構成することで、図11で説明したように、パルス間隔Tdを固有振動周期Tcとした場合よりもサテライトを抑制できる。
この点について、図14も参照して説明する。図14(a)は第1実施形態における滴吐出からマージまでの様子を、図14(b)は第2実施形態における滴吐出からマージまでの様子をそれぞれ示している。
ここで、図14(a)に示すように、第1実施形態における第1駆動パルスP1によって吐出される滴611の滴速度をVj1、第2駆動パルスP2によって吐出される滴612の滴速度をVj2とする。また、図14(b)に示すように、第2実施形態における第1駆動パルスP1によって吐出される滴611の滴速度をVj12、第2駆動パルスP2によって吐出される滴612の滴速度をVj22とする。また、時間Ta1、Ta2は、滴611、612が吐出される時間間隔を示している。
第2駆動パルスP2の電圧は、第2駆動パルスP2が単独で加えられたとき、サテライトTjが200μsとなるような電圧に設定されるため、二滴目の滴速度に関してはパルス間隔Tdに依存することになる。
そして、当然、固有振動周期Tcの方が2倍の固有振動周期Tcの時点よりもメニスカス振動が大きくなっているため、二滴目の滴速度を比較すると、Vj2>Vj22、の関係が成り立つ。
つまり、パルス間隔Td=2×Tcにした方が、Td=Tcにした場合よりも、二滴目の滴速度が遅くなる。
さらに、パルス間隔Tdを2×Tcにする方が、二滴目が吐出するまでに要する時間が当然長くなる。
したがって、飛翔中に2つの滴をマージさせなければならないことを考えると、一滴目の滴速度は固有振動周期Tcの間隔での滴速度よりも、遅く設定する必要がある。つまり、Vj1>Vj12、という関係が成り立つ。
ここで、滴速度Vj12が遅すぎると、マージしたとしても所望のサテライトTjを得ることができないため、ある程度の滴速度は必要である。
そのため、ちょうど良いバランスで第1駆動パルスP1の電圧を調整する必要がある。その結果、図14に示すように、第1実施形態のように固有振動周期Tcの間隔でのマージ位置L1よりも、第2実施形態のように2倍の固有振動周期Tc(2Tc)の間隔〔時間td〕でのマージ位置L2の方が着弾位置面に近い状態となる。すなわち、L1<L2、の関係が成り立つ。
これらのことから、第2実施形態の滴速度Vj12と滴速度Vj22の速度差は必然的に小さくなっていることが分かる。
また、図14(a)、(b)の2パターンに関しては、圧力振動の観点からサテライトとの関係を推測することもできる。
時間Tdが固有振動周期Tcの間隔の場合、2×Tcの間隔より圧力振動は大きいため、二滴目のサテライトが出やすい状態にある。これは、二滴目の滴速度が速くなることと同義である。これに対して、パルス間隔Tdが固有振動周期Tcの2倍(=2×Tc)の間隔では圧力振動は小さくなるため、二滴目のサテライトが出にくい状態となっている。
したがって、第2実施形態では第1実施形態よりもさらなるサテライトを抑制できるという効果が得られる。
次に、本発明の第3実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態における駆動波形の説明図である。
本実施形態では、第2駆動パルスP2は、引き込み波形要素である第1波形要素a2と、第1波形要素a2に続く保持波形要素である第2波形要素b2と、第2波形要素b2に続く押し込み波形要素である第3波形要素c2と、第3波形要素c2に続く第4波形要素d2と、第4波形要素d2に続く押し込み波形要素である第5波形要素e2と、第5波形要素e2に続く第6波形要素f2と、第6波形要素f2に続く第7波形要素g2とを含む。
第1波形要素a2は、基準電位(ここでは、中間電位)Veから電位V2分立ち下がることで圧電部材112を収縮させて個別液室106を膨張させる立下り波形要素である。第2波形要素b2は、第1波形要素a2で立ち下がった電位を所定時間(パルス幅Pw2)保持するホールド波形要素である。第3波形要素c2は、第2波形要素b2で保持された電位から基準電位(中間電位)Veよりも高い電位Ve2まで電位V3分立ち上がることで圧電部材112を伸長させて個別液室106を収縮させる立ち上がり波形要素である。
第4波形要素d2は、第3波形要素c2で立ち上がった電位を所定時間Tw2の間保持するホールド波形要素である。第5波形要素e2は、第4波形要素d2で保持された電位から更に電位Ve2よりも高い電位Ve3まで電位V4分立ち上がることで圧電部材112を伸長させて個別液室106を更に収縮させる立ち上がり波形要素である。
第6波形要素f2は、第5波形要素e2で立ち上がった電位を所定時間保持するホールド波形要素である。第7波形要素g2は、第6波形要素f2で保持された電位から基準電位Veまで立ち下がる立ち下がり波形要素である。
このように、第2駆動パルスP2を二段押し形状にすることで、サテライトの速度を速めることができ、被記録媒体に着弾するまでにサテライトが主滴に追い付き、吸収されるのである。
ここで、波形のホールド時間Tw2の長さ、電位Ve2から電位Ve3の間の電位V22の大きさによってサテライトの抑制度合いが変わってくるので、最適化する必要がある。
このような第3実施形態の駆動波形を使用することで、二滴目のサテライト発生を更に抑制することができるため、より高品質な画像を作ることが可能となる。
また、第2駆動パルスP2のみを使用することで、2パルス1ドットの滴径よりも小さいドットを形成することができる。第2駆動パルスP2が元々サテライト発生を抑制するような二段押し形状となっているため、綺麗な小ドットの形成が可能となる。
次に、本発明の第4実施形態について図16を参照して説明する。図16は同実施形態における駆動波形の説明図である。
本実施形態の駆動波形は、駆動パルスP11〜P15の5パルスで構成されている。この5つの駆動パルスP11〜P15を、前述した画像データと滴制御信号によって選択することで、大滴、中滴、小滴のような3種類の滴種を打ち分けることができる。なお、5パルスに限らず、3パルスでもよいし、あるいは、6パルス以上のパルスを生成してもよい。
ここでは、例えば、大滴は駆動パルスP11〜P15のすべての駆動パルスを使用して、中滴は駆動パルスP13、P15の2つの駆動パルスを使用して、小滴は駆動パルスP15の1つのパルスを使用して形成する。
この駆動波形においては、駆動パルスP13が本発明の第1駆動パルスに、駆動パルスP15が同じく第2駆動パルスに相当し、駆動パルスP13と駆動パルスP15の間隔を、固有振動周期Tcの2倍(2×Tc)に設定している。
そして、駆動パルスP13と駆動パルスP15との間に第3駆動パルスとしての駆動パルスP14を介在させている。
前述したように、中滴は、駆動パルスP13と駆動パルスP15とで形成し、そのパルス間隔は2×Tcであるので、サテライト発生を抑制して、綺麗な中ドットを形成することが可能になる。
そして、駆動パルスP13と駆動パルスP15との間に、駆動パルスP14を挿入することにより、全体の波形長を長くすることなく、効率的な多種類の波形を得ることができる。
すなわち、大滴は、上述したように、駆動パルスP11〜P15の5パルス全てを使用する。ここで、駆動パルスP13と駆動パルスP15との間に別の駆動パルスを挿入しない場合、1パルス分駆動波形の全体の波形長が長くなってしまうことになる。
このように1周期で様々な滴種を打ち分ける方式では、全体の波形長によって最大で駆動可能な周波数が決まるため、波形長は重要なファクターである。この全体の波形長を短くすることで、より高い周波数で駆動させることができるため、印刷速度を高めることができるようになる。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。