JP6017767B2 - 高熱伝導性二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
また、デバイスで発生した熱の放熱経路を実装基板のデバイス実装面に形成した放熱性実装基板の検討(特許文献3)や、炭素繊維の種類に着目した熱放熱性シートの検討(特許文献4)などがなされている。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との重縮合によって得られる。
ジカルボン酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸およびセバシン酸が挙げられ、またジオール成分として、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。これらのジカルボン酸成分およびジオール成分を重縮合して得られるポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特に耐熱性の観点から、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分が挙げられる。
本発明の繊維状炭素材料は、平均繊維径が0.05〜1μmで平均アスペクト比が100以上である。
平均繊維径の小さい極細繊維状炭素材料を用いることにより、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する際にボイドが発生しにくく、繊維状炭素材料自体の熱伝導性がフィルムの状態でも損なわれずに効率的に発現される。また、平均アスペクト比が高い極細繊維状炭素材料を用い、さらにその繊維状炭素材料およびポリエステルフィルムの配向度を上げることにより、極細繊維状炭素材料の含有量が2〜20重量%でありながら、高いフィルム面方向の熱伝導性が発現する。
本発明における繊維状の形状には円柱状の形状のみならず、かまぼこ状、板状のものも包含される。
本発明における繊維状炭素材料の平均アスペクト比は、平均繊維長/平均繊維径で表わされ、板状である場合の平均アスペクト比は平均長径/平均厚みで表わされる。また、かまぼこ状である場合は半円状断面の外縁のうち直線状部分を測定して平均繊維径を求めることができる。
これら平均繊維径、平均繊維長は、走査型電子顕微鏡を用いて50本測定した平均値より求めることができる。
なお、繊維状炭素材料には必要に応じて表面処理が施されていても良い。かかる表面処理としては、フィルム中での分散性を高めるための表面活性化処理が挙げられる。
カーボンナノチューブとは炭素の同素体であり、複数の炭素原子が結合して筒状に並んでおり、平均繊維径は好ましくは0.1μm以下である。
カーボンナノチューブとしては、任意のカーボンナノチューブを用いることができる。カーボンナノチューブの例として、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、およびこれらがコイル状になったものが挙げられる。
単層カーボンナノチューブはグラファイト状炭素原子が一重で並んでいるものであり、多層カーボンナノチューブはグラファイト状炭素原子が2層以上同心円状に重なったものであり、いずれのカーボンナノチューブを用いてもよい。また、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、その頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質、両側に穴があいたカーボンナノチューブなども用いることができる。
カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブは、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、クロマトグラフィーなどによって精製されたものであっても未精製のものであってもよい。また、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブはフィルム中で1本ずつ分離した状態で分散していてもよく、または複数本が束になった状態で分散していてもよい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムのフィルム面方向の熱伝導率は、2W/(m・
K)以上である。かかる熱伝導率は、好ましくは2.5W/(m・K)以上、より好まし
くは3.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは3.5W/(m・K)以上、最も好ま
しくは5.0でW/(m・K)以上である。
また、面方向の熱伝導率はより高い方が好ましいが、フィルム製膜性との関係でその
上限は、20W/(m・K)以下であることが好ましく、より好ましくは10W/(m・
K)以下である。
厚み方向の熱伝導率もかかる範囲にあることにより、フィルム厚み方向への放熱効果も高まり、放熱経路がさらに増える。
熱伝導度λ=α・Cp・ρ ・・・(1)
また厚み方向の熱伝導率は、フィルムサンプルを25mmφに切り取り、その厚み方向を測定方向として測定することにより求めることができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは5μm以上150μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上120μm以下である。フィルム厚みは用途に応じて選択でき、例えば放熱性実装基板に用いる場合は50μm以上150μm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは75μm以上120μm以下である。また粘着テープなどに用いる場合は5μm以上100μm以下の範囲が好ましく、さらには10μm以上50μm以下の範囲が好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムはさらに電気絶縁層を設けなくても十分な電気絶縁性を備えるが、フィルム自身の有する高熱伝導性が損なわれない範囲内であればフィルムの片面、あるいは両面に電気絶縁層を積層してもよい。かかる電気絶縁層の厚みは3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下の範囲内である。
上限を超える厚みの電気絶縁層を有する場合は層の熱抵抗が大きくなり、電気絶縁層の存在によりフィルムを介した熱の流れが阻害されることがある。
そのため、電気絶縁層は熱伝導性フィラーを実質的に含有しない態様(好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である態様)が好ましい。
熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム、セラミクス材料といった電気絶縁性で熱伝導性のフィラーが例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する方法として、ポリエステル樹脂を溶融押出し、固化成形したシートを同時に二方向に延伸させる同時二軸延伸法が挙げられる。
本発明は平均繊維径が細く、平均アスペクト比の大きい極細の繊維状炭素材料を上述に記載の範囲で含み、かかる炭素材料がポリエステルの結晶化を促進するため、逐次二軸延伸法による製膜ではポリエステルフィルムを十分に高配向させることが難しく、フィルム面方向の熱伝導率を高めることが難しかった。それに対して、同時二軸延伸法で軸延伸ポリエステルフィルムを製造することにより、逐次二軸延伸法では難しかった高延伸倍率での製膜が可能となり、フィルム面方向の熱伝導率を高めることができる。
具体的には、未延伸フィルムをポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+60)℃の温度範囲内で、縦方向、横方向それぞれ2.5倍以上4.0倍以下の範囲で二方向に同時に延伸を行い、さらに3.0倍以上4.0倍以下の範囲で行うことが好ましい。縦延伸倍率が下限に満たない場合、繊維状炭素繊維およびポリエステル樹脂が十分に配向せず、面方向の熱伝導率が十分上がらないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。また縦延伸倍率が上限を超える場合、製膜中にフィルム破断が発生しやすくなる。
なお、本発明では縦方向について機械軸方向、長手方向、MDと称する場合があり、また横方向について機械軸方向と垂直な方向、幅方向、TDと称する場合がある。
さらに弛緩処理を行う場合は、加熱処理をフィルムの(Tg+65)〜(Tg+130)℃の温度において行うことが効果的である。弛緩処理の方法は公知の方法を用いることができ、供給側の速度に対して引き取り側の速度の減速率を0.1〜10%にして弛緩処理を行うことが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、発熱量の大きなデバイス類や小型化が要求される電子機器などの放熱性実装基板として好適に用いられる。具体的には発熱性素子の実装された各種の実装基板などに広く用いることができ、特にLEDチップなどの発光素子などの実装基板として好適に用いることができる。
また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは放熱性粘着テープの基材などにも好適に用いることができる。粘着テープの基材として用いる場合、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面、好ましくは両面に粘着層を形成した構成で高熱伝導性粘着テープとして用いることが好ましい。
電界放出型走査電子顕微鏡(日立S−4700)を用いて10000倍にて繊維状炭素材料50本の繊維径および繊維長を測定し、それぞれの平均値から平均繊維径、ならびに平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)を求めた。
サンプルを長手方向1cm、幅方向3cmに切り出し、かみそり刃を用いて幅方向に垂直に切断した。サンプル断面を光学顕微鏡を用いて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
連続製膜機にて1000m製膜した時のフィルムが切断した回数に応じて下記の通り評価した。
○:破断なし(0回)
△:1〜2回
×:3回以上
キセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製;LFA447)により、面方向の熱拡散率α(cm2/sec)を測定し、別に測定した比熱容量Cp(J/g・K)と密度ρ(g/cc)から、面方向の熱伝導率λ(W/cm・K)をλ=α・Cp・ρで求め、単位換算を実施した値を用いて評価を行った。
なお、面方向の熱拡散率αはフィルムサンプルを3mm幅にスリットし、直径が10mmφになるよう直径2mmの円柱状木材へ巻きつけ、測定した。また厚み方向の熱拡散率αはフィルムサンプルを25mmφに切り取り測定した。
密度ρは硝酸カルシウム水溶液を用いて密度勾配管法にて測定して得ることができる。
また、比熱容量Cpは、JIS K 7123に準じて測定された値である。
下記実施例および比較例で得られた二軸延伸ポリエステルフィルム(MD7cm、TD3cm)の短辺の一方に図1のように市販の小型セラミックヒーター(ミスミ製 MMCPH−15−15)をシリコーンゲルシート(Taica製 COH−4000 厚み0.5μm)を用いて貼り合わせ、ヒーターに0.1Aの電流を流した。電流を流してから2時間経過した後、図1に示した2か所の表面温度(測定位置A:ヒーターから1cm離れた位置、測定位置B:ヒーターから3cm離れた位置)を測定した。
ポリエステルとしてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を用い、平均アスペクト比167の繊維状炭素材料(多層カーボンナノチューブ 保土谷化学工業株式会社製 MWNT7(平均繊維径0.06μm、平均繊維長10μm))をフィルム重量を基準として5重量%の含有量となるよう添加し、かかる樹脂組成物を押出機に供給し、290℃で溶融混練した。
さらにダイスより押出したシート状成形物を表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化し、この未延伸フィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き140℃に加熱された雰囲気中で縦方向に3.0倍、横方向に3.0倍の倍率で同時に延伸した。その後テンタ−内で230℃の熱固定を行い、均一に徐冷して室温まで冷やして100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。また、熱拡散性評価を行ったところ、熱拡散性に優れており、ヒーターからの測定位置による温度差が小さくヒートスポットが生じなかった。
実施例1と同じ繊維状炭素材料を用いて炭素材料の含有量を10重量%に変更した以外は実施例1と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
実施例1と同じ繊維状炭素材料を用いて炭素繊維の含有量を15重量%に変更した以外は実施例1と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
繊維状炭素材料の種類を昭和電工株式会社製のVGCF−S(カーボンナノファイバー(気相成長炭素繊維) 平均繊維径0.08μm、平均繊維長10μm、平均アスペクト比125)に変更した以外は実施例2と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
フィルム延伸倍率について、縦方向に3.5倍、横方向に3.5倍で延伸した以外は実施例2と同様の方法によって100μm厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
フィルム延伸倍率について、縦方向に4.0倍、横方向に4.0倍で延伸した以外は実施例2と同様の方法によって100μm厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
熱伝導層用に実施例2と同じ樹脂組成物を押出機に供給して290℃で溶融混練し、さらに電気絶縁層用にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を別の押出機に供給して290℃で溶融混練した。
それぞれの溶融混練した樹脂を2層に積層し(高熱伝導性層厚み:電気絶縁層厚み=99:1)、かかる積層状態を維持したままスリットダイから押出した以外は実施例2と同様の方法によって100μm厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
未延伸フィルムを130℃に加熱したロール群に導き、逐次二軸延伸法を用いて縦方向に1.5倍で延伸し、60℃のロール群で冷却し、続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、140℃に加熱された雰囲気中で横方向に3.0倍で延伸した以外は実施例2と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
未延伸フィルムを130℃に加熱したロール群に導き、逐次二軸延伸法を用いて縦方向に3.0倍で延伸し、60℃のロール群で冷却し、続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、140℃に加熱された雰囲気中で横方向に3.0倍で延伸しようとしたがフィルム破断が生じ、二軸延伸フィルムが得られなかった。
フィルム延伸倍率について、縦方向に2.0倍、横方向に2.0倍で延伸した以外は実施例2と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
実施例2の方法でダイスより押出し、表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得、かかる未延伸フィルムを用いて測定を行った結果を表1に示す。
繊維状炭素材料の種類を昭和電工株式会社製のVGCF−H(カーボンナノファイバー(気相成長炭素繊維) 平均繊維径0.15μm、平均繊維長6μm、平均アスペクト比40)に変更した以外は実施例2と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
繊維状炭素材料に代えて平均粒径5μmのアルミナ球状粒子(昭和電工株式会社製 アルミナビーズ CB−A05S)を用いた以外は実施例1と同様の方法によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
CNT: 多層カーボンナノチューブ
CNF1: カーボンナノファイバー(気相成長炭素繊維) 平均繊維径0.08μm、平均アスペクト比125
CNF2: カーボンナノファイバー(気相成長炭素繊維) 平均繊維径0.15μm、平均アスペクト比40
Al2O3: アルミナ球状粒子
2.フィルムサンプル
3.温度測定位置A(ヒーターから1cm)
4.温度測定位置B(ヒーターから3cm)
Claims (3)
- ポリエステルがホモポリマーもしくは、全酸成分を基準として共重合体成分が、20モル%以下の共重合体であって、平均繊維径が0.05〜1μmで平均アスペクト比が100以上である繊維状炭素材料をフィルム重量を基準として2〜15重量%の範囲で含み、フィルム面方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上で且つフィルム厚み方向の熱伝導率が、0.30W/(m・K)以上のポリエステルフィルムの製造方法であって、未延伸フィルムを該ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+60)℃の温度範囲内で、縦方向、横方向それぞれ3.0倍以上4.0倍以下の範囲で二方向に同時に延伸を行うことを特徴とする高熱伝導性同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを少なくとも含む請求項1に記載の高熱伝導性同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 少なくとも片面に電気絶縁層を有する請求項1に記載の高熱伝導性同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
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