以下、本発明に係るワーク交換装置を歯車加工装置に適用した場合の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ここでは、歯車を加工する歯車加工装置と、加工対象である歯車の交換を行うワーク交換装置とで構成された歯車加工システムについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、歯車加工システムの側面図である。以下では、まず、歯車加工装置について説明し、その後、ワーク交換装置について説明する。なお、以下では、図1に示すX−Y方向、図2に示すY−Z方向を参照しつつ説明を行う。
まず、歯車加工装置から説明する。図1に示すように、この歯車加工装置10は、基台101を有しており、この基台101上には、ワークWを回転自在に挟持する主軸台102及び心押し台103が設けられている。主軸台102は、基台101上に配置された支持部104上を同図のX方向に移動可能となっており、心押し台103に近接することで、ワークWを回転自在に挟持するようになっている。また、これら主軸台102と心押し台103との間には、工具が取り付けられた工具ユニット105が設けられている。主軸台102及び心押し台103の先端には、それぞれ、ワークWを軸方向から支持する軸部材1021、1031がそれぞれ回転自在に設けられている。主軸台102の軸部材1031は、内蔵されているモータ(図示省略)によって回転駆動する。
図1に示すように、工具ユニット105は、内歯車形状の砥石からなる工具1051が回転自在に取り付けられた環状の本体部1052を備えている。この本体部1052は、図1のX方向に開口を向けるように配置され、本体部1052の上端には、モータ1053が固定されている。そして、このモータ1053を駆動すると内歯車形状の工具1051が本体部1052に対して回転する。このように構成された工具ユニット105は、図示を省略する切り込み駆動部によって支持され、Y方向に移動する。
次に、ワーク交換装置について、図面を参照しつつ説明する。図2はX方向から見たワーク交換装置の正面図、図3は図2において後述する支持板よりも前側の部材を取り外した状態を示す正面図、図4は図2の平面図である。このワーク交換装置1は、Y−Z平面上を回転可能な回転部4を備え、この回転部4によって、待機位置にある加工前のワークと、加工位置にある加工後のワークを入れ替えるためのものである。具体的には、回転部4の両端部に加工前のワークと加工後のワークをそれぞれ固定し、この状態で回転部4を回転させて両者の位置を入れ替える。待機位置とは図示を省略するが、加工前のワークが配置されているパレットなどで構成されている。加工位置とは、上述した歯車加工装置の主軸台に支持される位置を意味する。なお、以下では、説明の便宜上、図2の正面図を基準として、図1の右側を「前」又は「前面側」、左側を「後」又は「背面側」と称するとともに、図2の左右方向を「左」、「右」、または幅方向と称することがある。
図2〜図4に示すように、このワーク交換装置1は、上述した主軸台102の支持部104上に配置されている。支持部104上には、主軸台102の左側から上方に延びる連結部材106が設けられており、この連結部材106の上端に、ワーク交換装置1が取り付けられている。ワーク交換装置1は、連結部材106に取り付けられる支持板2と、この支持板2の前面に取り付けられた移動板3とを備えており、移動板3が支持板2に対して上下動するようになっている。移動板3には、上述した回転部4が回転支持部5を介して回転自在に支持されており、回転部4の両端には、着脱自在にワークWを把持する第1及び第2のワーク固定具6,7が取り付けられている。このように、このワーク交換装置1では、移動板3の上下動、回転部4の回転、及び各ワーク固定具6,7によるワークWの着脱という3種類の動作が行われ、これらの動作を組み合わせることでワークWの交換を行う。そして、これらの動作は、支持板2に取り付けられた駆動ユニット8を駆動源として行われる。
そこで、まず、駆動ユニット8について説明する。駆動ユニット8は、直方体状に形成され、支持板2の背面に取り付けられている。駆動ユニット8の前面には回転軸(図示省略)が突出し、右側面には上下方向に揺動する第1アーム81が取り付けられ、左側面には前後方向に揺動する第2アーム82が取り付けられている。これら回転軸の回転、及び各アーム81,82の揺動は、駆動ユニット8に内蔵されたモータにより行われる。
次に、各動作のための機構を順に説明する。最初に、移動板3の上下動について、図5及び図6も参照しつつ説明する。図5は図2の右側面図、図6は図2において回転支持部よりも前側の部材を取り外した状態を示す正面図である。上述したように、移動板3の駆動は、駆動ユニット8の右側面に設けられ、上下方向に揺動する第1アーム81によって行われる。図3〜図6に示すように、第1アーム81の先端の左側には、円筒状のカムフォロワー811が取り付けられており、左右方向に延びる軸線周りに回転可能となっている。このように構成された第1アーム81が移動板3を上下動させる。
次に、移動板3について説明する。図3に示すように、支持板2の前面には、上下方向に平行に延びる一対のレール21が取り付けられており、移動板3は、このレール21に沿って上下動可能となっている。また、図4に示すように、移動板3の右側の端部には、駆動ユニット8からの動力を受ける動力受け部22が設けられている。この動力受け部22は、上下方向に隙間を空けて配置された2個の板部材2211,2212を備えている。そして、これら板部材2211,2212の隙間には、第1アーム81のカムフォロワー811が配置されている。すなわち、第1アーム81は、駆動ユニット8の右側面から移動板3の右側の端部まで延び、先端のカムフォロワー811が一対の板部材2211,2212の間に配置されている。この構成により、第1アーム81が上下に揺動すると、カムフォロワー811が板部材2211,2212を上下に押し遣り、移動板3が上下動する。カムフォロワー811は、板部材2211,2212の間の隙間で回転しつつ、前後方向にも移動可能であるため、第1アーム81の揺動は、スムーズに移動板3の上下動に変換される。なお、上下動を行う移動板3の最も高い位置が本発明の第1の位置に相当し、最も低い位置が第2の位置に相当する。
また、動力受け部22には、上方に延びるブラケット222が取り付けられており、このブラケット222の上端部には、下方に延びるバランス用エアシリンダ223が取り付けられている。より詳細に説明すると、エアシリンダ223は、シリンダ本体2231と、このシリンダ本体2231に対して進退するピストン部2232とで構成されており、図3に示すように、シリンダ本体2231が支持板2の右側に取り付けられ、ピストン部2232の先端がブラケット222に取り付けられている。このバランス用エアシリンダ223は、第1アーム81の急速な動作を吸収し、移動板3が上下動するときに衝撃が伝達しないようになっている。
次に、回転部4の動作について、図7も参照しつつ説明する。図7は図2のA−A線断面図である。上述したように、回転部4の回転は、駆動ユニット8の回転軸により行われる。この回転軸は、駆動ユニット8の上部側に設けられており、支持板2を貫通して、支持板2の前面に突出している。回転軸80の先端には、円板状の係合部801が取り付けられている。係合部801の前面には、径方向に直線状に延びる凸部802が設けられており、この凸部802が後述する被係合部に係合し、これを回転させる。
図6に示すように、移動板3の前面には、回転部4を支持する回転支持部5が取り付けられている。回転支持部5は、上下方向に延びる中央フレーム51を有しており、この中央フレーム51の内部には、上下方向に並ぶ第1収容部511及び第2収容部512が形成されている。また、中央フレーム51の両側には、後述するワーク固定具6,7の駆動機構を支持する側部フレーム52,53がそれぞれ設けられている。中央フレーム51の収容部511,512は円形状に形成され、連通するように接触している。そして、図7に示すように、第1収容部511には、伝動歯車54が収容され、この伝動歯車54に固定された回転軸541が第1収容部511内で回転自在に支持されている。伝動歯車54の回転軸541は、移動板3に形成された貫通孔から背面側に突出し、その先端に上述した被係合部542が取り付けてられている。図4に示すように、被係合部542には、係合部801の凸部802と係合する直線状の凹部543が形成されており、これら凸部802と凹部543とが係合した状態で駆動ユニット8の回転軸が回転すると、伝動歯車54が回転するようになっている。
図7に示すように、第2収容部512には、円筒状の軸部材55が固定されており、軸部材55は回転支持部5から前方へ突出している。軸部材55の外周面には、軸受け551を介して、後述するする回転部4のスリーブ41が回転自在に支持されている。このスリーブ41の外周面には歯が形成されており、伝動歯車54と噛み合っている。したがって、上述した係合部801と被係合部542とが係合しているときに、駆動ユニット8の回転軸が回転すると、その回転力が係合部801、被係合部542、及び伝動歯車54を介して、スリーブ41に伝動され、回転部4が回転するように構成されている。なお、移動板3は、上下動するため、支持板2から突出する係合部801と、移動板3の背面に設けられている被係合部542とは、移動板3が支持板2の上部側に配置されているときに係合する。すなわち、移動板3が支持板2の下方に移動したときは、係合部801から被係合部542が離間するため、駆動ユニット8からの回転軸の回転は伝動しない。
続いて、回転部4及び各ワーク固定具6、7の向きを調整する回転調整機構について、図8も参照しつつ説明する。図8(a)は図2のA−A線断面図、図8(b)は図8(a)のC−C線断面図である。図4及び図8(a)に示すように、回転部4は、長方形状に延びる回転部本体42と、上述したように、この回転部本体42の背面側に取り付けられる円筒状のスリーブ41とを有している。回転部本体42の両端部には、第1ワーク固定具6及び第2ワーク固定具7がそれぞれ、回転自在に取り付けられている。スリーブ41は、上述したように、回転支持部5の第2収容部512に回転自在に支持され、伝動歯車54と噛み合っている。スリーブ41の内部に配置されている軸部材55は、回転部本体42の内部まで延び、先端に中央スプロケット43が固定されている。
図8(a)に示すように、各ワーク固定具6,7は、回転部本体42から前方へ突出する本体部61,71をそれぞれ有しており、この本体部61,71が軸受けを介して回転部本体42に回転自在に支持されている。すなわち、各ワーク固定具6,7の本体部61,71は、回転部本体42から前方へ水平に延びる軸線周りに回転するようになっている。また、図2及び図8(a)に示すように、各本体部61,71において、回転部本体42に収容されている部分の外周面にはスプロケットが取り付けられている(以下では、説明の便宜上、第1ワーク固定具6のスプロケットを第1スプロケット62、第2ワーク固定具7のスプロケットを第2スプロケット72と称することとする)。また、中央スプロケット43、第1及び第2スプロケット62,72は、同じ径を有している。中央スプロケット43と第1スプロケット62には、第1無端ベルト部材44が掛け渡されており、中央スプロケット43の回転が第1スプロケット62に伝動される。また、第1無端ベルト部材44の外周面には第1テンションローラ46が接触しており、これにより第1無端ベルト部材44に所定の張力が作用するようになっている。第1テンションローラ46は、回転部本体42において、中央スプロケット43と第1スプロケット62との間に、回転自在に取り付けられている。
一方、中央スプロケット43と第2スプロケット72には、第2無端ベルト部材45が掛け渡されており、中央スプロケット43の回転が第2スプロケット72に伝動される。図8(a)に示すように、第2無端ベルト45は、中央スプロケット43において、第1無端ベルト部材44よりも軸方向に前方へずれた位置に掛け渡されており、第1無端ベルト部材44と干渉しないように配置されている。また、第2無端ベルト部材45の外周面には第2テンションローラ47が接触しており、これにより第1無端ベルト部材44に所定の張力が作用するようになっている。第2テンションローラ47は、回転部本体42において、中央スプロケット43と第2スプロケット72との間に、回転自在に取り付けられている。以上のような構成から、駆動ユニット8の回転軸が回転すると、回転部4のスリーブ41が回転し、これと一体となって回転部本体42も回転する。このとき、中央スプロケット43は回転しないが、回転部4が回転するため、相対的には、回転部4に対して中央スプロケット43は回転することになる。そのため、この回転力が各無端ベルト部材44,45に伝動し、第1及び第2スプロケット62,72が回転する。このとき、中央スプロケット43、第1及び第2スプロケット62,72は、同じ径を有しているため、中央スプロケット43の相対的な回転角度と、同じ回転角度だけ第1及び第2スプロケット62,72が回転する。すなわち、回転部本体42と同じ回転角だけ、第1及び第2スプロケット62,72が回転部本体42に対して相対的に回転するため、両ワーク固定具6,7は回転部4が回転しても向きが変わらないようになっている。この点は、後に詳述する。
また、図4に示すように、両ワーク固定具の本体部の後端には、スリーブ側を向く突起がそれぞれ形成されている。そして、第1ワーク固定具6の突起68は、回転支持部5の第1側部フレーム52に形成されたレール521に係合している。このレール521は、回転部4の回転方向に沿って円弧状に延びている。一方、第2ワーク固定具7の突起78も同様に、回転支持部5の第2側部フレーム53に形成されたレール531に係合している。このレール531も、回転部4の回転方向に沿って円弧状に延びている。以上の構成により、回転部4は、レール521、531に支持された状態で回転するため、鉛直面内で安定的に回転する。
次に、各ワーク固定具6、7によるワークWの着脱機構について、図9も参照しつつ説明する。図9は図8の状態から挟持アームが離間した状態を示す動作図であり、図9(a)は図2のA−A線断面図、図9(b)は図9(a)のD−D線断面図である。まず、各ワーク固定具6、7について説明する。両ワーク固定具6、7は、同様の構成をしているため、以下では、第1ワーク固定具6について説明し、第2ワーク固定具7の説明は省略する。
図8に示すように、ワーク固定具6には、下方に延びる一対の挟持アーム63が設けられており、これら挟持アーム63が近接離間することでワークWを挟持する。上述したワーク固定具6の本体部61は筒状に形成されており、本体部61の先端には下側に開口を有するカバー部材64が取り付けられている。本体部61の内部には、作動棒65が前後方向に移動可能に支持されている。作動棒65の後端部は、本体部61から突出し、さらに回転部本体42の背面から突出可能になっている。作動棒65の前端部には、作動棒65よりも径の大きい円筒状の押圧部651が取り付けられている。押圧部651の先端にはバネ652が配置されており、このバネ652によって押圧部651が背面側へ付勢されている。これにより、作動棒65の後端は常時は、回転部本体42から背面側へ突出した状態となり、後述する固定具駆動機構が駆動すると、前方へ移動するようになっている。
押圧部651の前方には、これを挟むように、一対の揺動部材66が配置されている。この揺動部材66は前後方向に延びる棒状に形成され、中央付近に設けられた上下方向に延びる回転軸を中心に、揺動するように構成されている。より詳細に説明すると、各揺動部材66の背面側の端部には、カムフォロワー661が回転自在に設けられており、図9(a)に示すように、作動棒65が前進すると、押圧部651が揺動部材66の間に進入し、両揺動部材66のカムフォロワー661同士が離間するように、両者を外側に押し遣る。これにより、揺動部材66は揺動し、前方の先端部同士が近接する。揺動部材66の先端はカバー部材64の内部に進入し、カバー部材64内に支持されている一対のアーム支持部67と係合している。図8(b)に示すように、各アーム支持部67は上下方向に延びる部材であり、上端部同士がバネ671で連結され、互いに離間するように付勢されている。一方、各アーム支持部67の下端部は回転軸672により回転自在に支持されており、上端部同士が近接離間するように揺動する。また、上述した揺動部材66の先端は、アーム支持部67の上下方向の中央部に係合している。そして、各挟持アーム63は、各アーム支持部67に連結され、下方に延びている。
このような構成により、図8に示すように、アーム支持部67は、バネ671によって常時は、上端部同士が離間するように付勢されており、これに伴って、アーム支持部671から下方に延びる挟持アーム63は、常時は互いに近接した位置にある。これにより、両挟持アーム63は、ワークWの挟持が可能となる。この態様が本発明の第1のポジションに相当する。一方、図9に示すように、作動棒65が押し込まれて前進し、揺動部材66の先端部同士が近接すると、アーム支持部67の上端部同士がバネ671に抗して近接する。これに伴って、アーム支持部67から下方に延びる挟持アーム63は、互いに離間するように移動するため、挟持アーム63からワークWが離脱する。この態様が本発明の第2のポジションに相当する。
次に、作動棒65を押し込む固定具駆動機構について、図10及び図11も参照しつつ説明する。図10は図6のE−E線断面図、図11は図6に示す回転支持部の下部の拡大正面図である。図1に示すように、駆動ユニット8の第2アーム82は、前後に揺動するように構成されているが、その先端には前後方向に延びる棒状部材83が回転自在に取り付けられている。これにより、第2アームが揺動すると、棒状部材83が前後進するように構成されている。図4に示すように、棒状部材83は、支持板2の側面を超えて前方に突出している。支持板2の前面の左側には前方へ突出するブラケット24が取り付けられており、このブラケット24は、移動板3の上方から移動板3を超えてその前方まで延びている。そして、ブラケット24の先端には上下方向に延びる第1作動軸91が回転自在に支持されている。図6に示すように、第1作動軸91においてブラケット24の下面側には、径方向に延びる連結部材911が固定されており、この連結部材911の先端が、棒状部材83の先端と回転自在に連結されている。したがって、棒状部材83が前後進すると、連結部材911が揺動し、これによって第1作動軸91が軸線周りに回転するようになっている。
図6及び図10に示すように、第1作動軸91において、連結部材911の下方には径方向に前側へ延びる第1固定片912が固定されている。また、第1作動軸91とは反対側の回転支持部5の右側端部には、上下方向に延びる第2作動軸92が回転自在に支持されている。この第2作動軸92にも、第1固定片912と同様の構成の第2固定片922が固定されている。両固定片912,922は上下方向の同じ位置に配置されており、同じ向きになるように各作動軸91,92から径方向に延びている。そして、両固定片912,922の先端は、幅方向に延びる連結棒93で連結されている。連結棒93の各端部と固定片912,922とは回転自在に連結されている。これにより、第1作動軸91が回転すると、これに伴って第1固定片912が揺動する。第1固定片912の揺動は、連結棒93を介して第2固定片922に伝動され、第2固定片922も第1固定片912と同じ角度で揺動する。これにより、第2作動軸92が回転する。したがって、両作動軸91,92は、同じ角度だけ回転するように構成されている。
図6に示すように、両作動軸91,92は、それぞれ回転支持部5の側部フレーム52,53に支持されつつ、下方に延びている。ここで、第2作動軸92は右側の側部フレーム53が主軸台102と干渉するのを避けるため、第1作動軸91よりも短くなっている。そして、図8(a)に示すように、各作動軸91,92の下端部には、それぞれ3個のリンク部材、つまり第1〜第3リンク部材941〜943,951〜953が連結されたリンク機構94,95が設けられている。各第1リンク部材941,951は、第1及び第2作動軸91,92にそれぞれ固定されている。そして、最も先端側に配置されている第3リンク部材943、953は、中心付近に設けられた回転軸周りに揺動するようになっており、第3リンク部材943、953の先端が前後方向に揺動するようになっている。そして、各第3リンク部材943、953の先端が各ワーク固定具6,7の作動棒65,75を押圧するようになっている。より詳細には、各作動軸91,92により動作する第3リンク部材943、953は、幅方向の外側にそれぞれ突出するように延びており、各作動軸91,92の回転により、第3リンク部材943、953の先端が揺動する。ここで、常時は、図8に示すように、各第3リンク部材943、953の先端部は、後退しており、作動棒65,75から離間している。また、第3リンク部材943、953が作動棒65,75を押圧可能となるのは、回転部本体42が水平になっているときであり、回転部本体42が水平となる回転位置にあり、両ワーク固定具6,7が回転部本体42の両端部で水平に支持されているときに、第3リンク部材943、953の先端と作動棒65,75とが対向する位置にある。したがって、回転部本体42が水平になっているときに、駆動ユニット8の第2アーム82が駆動すると、図9に示すように、各第3リンク部材943、953の先端が前方に揺動し、作動棒65,75を押圧する。これにより、各ワーク固定具6,7の挟持アーム63,73が離間する。
続いて、上記のように構成された歯車加工システムの動作について、図12及び図13を参照しつつ説明する。まず、図12(a)に示すように、ワーク交換装置1の左側には加工前のワークW1が待機位置に配置されており、右側には加工後のワークW2が配置されている。加工後のワークW2は主軸台102に支持されている。この状態で、固定具駆動機構を駆動し、各ワーク固定具6,7の挟持アーム63,73を離間させる。すなわち、両挟持アーム63,73の間にワークW1,W2が入るようにする。次に、図12(b)に示すように、駆動ユニット8の第1アーム81を下方に揺動させ、移動板3を降下させる。移動板3は、各ワーク固定具6,7の挟持アーム63,73の間にワークW1,W2が入る位置まで降下させる。この動作とともに、固定具駆動機構を駆動し、各ワーク固定具6,7の挟持アーム63,73を近接させ、それぞれワークW1,W2を挟持させる。この状態で、加工後のワークW2については、主軸台102を移動してワークW2から軸部材1021を離脱させる。
これに続いて、図12(c)に示すように、駆動ユニット8の第1アーム81を上方に揺動させ、移動板3を上昇させる。移動板3が上昇すると、駆動ユニット8の回転軸の係合部801と、伝動歯車54の回転軸541の被係合部542とが係合し、回転軸の回転が回転部4に伝動可能な状態となる。続いて、回転軸を回転させると、回転部4が鉛直平面内で回転する。図12(d)は回転部4が矢印の方向に回転を開始した直後の状態を示しており、第1ワーク固定具6が下降し、第2ワーク固定具7が上昇している様子を示している。このとき、回転部4の回転に伴って中央スプロケット43が回転部4に対して相対的に回転するが、この回転は第1及び第2無端ベルト44,45を介して第1及び第2スプロケット62,72に伝動される。上述したように、中央スプロケット43、第1及び第2スプロケット62、72は径が同じであるため、回転部4の回転角と同じ角度だけ、第1及び第2スプロケット62,72が回転する。これにより、両ワーク固定具6,7は、下向きを維持したまま、つまりワークW1,W2を下向きに把持したまま、回転部4とともに中央スプロケット43の周りを回転する。
図12(d)の状態から、回転部4がさらに回転すると、第1ワーク固定具6は中央スプロケット43の下側を通過し、第2ワーク固定具7は上側を通過する。そして、回転部4は、図13(a)の状態を経て図13(b)の状態まで180度回転する。こうして、図13(b)の状態では、第1ワーク固定具6が右側に配置され、第2ワーク固定具7が左側に配置され、両ワークW1,W2の位置が入れ替わる。すなわち、第1ワーク固定具6に挟持されている加工前のワークW1は、主軸台102の上方に配置され、第2ワーク固定具7に挟持されている加工後のワークW2は、待機位置の上方に配置される。ここから、図13(c)に示すように、第1アーム81を駆動して、移動板3を下降させた後、加工前のワークW1を主軸台102に固定する。そして、この動作とともに、図13(d)に示すように、固定具駆動機構を駆動し、挟持アーム63、73を開くと、ワークW1,W2がワーク固定具6、7から離脱可能な状態となる。以上の動作を繰り返すことで、加工前のワークと加工後のワークを連続的に交換することができる。
上述した一連の動作は、駆動ユニット8の第1及び第2アーム81、82、回転軸を、図14に示すタイミングチャートに基づいて駆動することで行われる。まず、時刻t0において第2アーム82は前方に位置しており、これによって挟持アーム63、73は開いた状態となっている。そして、時刻t1からt3において第1アーム81が下方へ揺動すると、これに伴って移動板3が下降する。移動板3の下降は時刻t3で完了するが、その直前の時刻t2において、第2アーム82が後方への揺動を開始し、挟持アーム63、73が閉じる動作が開始される。すなわち、移動板3が完全に下降してから挟持アーム63、73がワークWを挟持するのではなく、移動板3の下降完了の直前から挟持アーム63、73が動作を開始し、移動板3の下降完了後、すみやかに挟持アーム63、73がワークWを挟持するようになっている。そして、時刻t4においてワーク固定具6,7によってワークWの挟持が完了すると、第1アーム81が上方への揺動を開始する。すなわち、移動板3が上昇を開始する。そして、時刻t5において第1アーム81の揺動が完了し、移動板3の上昇が完了すると、駆動ユニット8の回転軸が回転を開始する。回転軸は時刻t5からt6の間に180°回転し、これによって回転部4が180°回転する。これにより、各ワーク固定具6、7の左右の位置が入れ替わる。
回転部4の回転が完了すると、時刻t6からt8に亘って第1アーム81が下方に揺動し、移動部3が再び下降する。そして、第1アーム81の下降が完了する時刻t8の直前の時刻t7に、第2アーム82が前方へ揺動を開始し、挟持アーム63、73を開いていく。そして、移動部3の下降の完了後、すみやかに挟持アーム63、73がワークWを離脱する。時刻t9において、挟持アーム63,73が完全に開き、ワークWが離脱すると、第1アーム81が上方への揺動を開始し、移動部3が上昇していく。そして、時刻t10で、移動部3の上昇が完了すると、一連の動作が終了する。
以上のように、本実施形態によれば、ワークWを着脱自在に固定する2つのワーク固定具6,7を両端部に設けた回転部4を備えているため、各ワーク固定具6,7にワークW1,W2を固定した状態で回転部4を回転させると、両ワークW1,W2の位置を入れ替えることができる。また、回転調整機構を備えているため、例えば、ワークW1,W2を下向きで固定するようにワーク固定具6、7の向きを設定すると、この向きのままで回転部4を回転させることができる。これにより、ワークW1,W2の向きを変えずに2つのワークW1,W2の位置を同時に入れ替えることができるため、ワークW1,W2の交換時間を短縮することができる。また、ワークW1,W2を固定する向きが変わらないため、ワーク固定具6、7に不要な負荷が作用するのを防止することができる。さらに、回転部4は、鉛直平面内で回転するため、水平面内でワークを交換するのに比べ、ワークの交換に要するスペースを小さくすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記回転調整機構は、機械的な機構で、各ワーク固定具6、7の向きが一定とのなるように調整しているが、回転部4の回転位置に関わらず、ワーク固定具6,7の向きを一定とするように調整できるのであれば、その構成は特には限定されない。例えば、電気的な構成を採用することもできる。例えば、各ワーク固定具6、7の回転具(例えば、第1及び第2スプロケット)をモータで回転させ、各モータの回転を同期させれば、各ワーク固定具6、7の向きを一定とすることができる。
ワーク固定具6、7の構成は、ワークを着脱自在に固定できるのであれば、特には限定されない。
上記実施形態では、本発明に係るワーク交換装置を、歯車加工装置のワーク(歯車)を交換する場合に適用したが、これに以外の工作機械に適用できるのはいうまでもなく、歯車以外のワークを交換することもできる。