JP5991676B2 - ビワ果実の剥皮方法及び剥皮ビワ果実 - Google Patents
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Description
しかし、カット加工の工程は、ほとんどを人手に頼っている。とりわけ、剥皮の工程には多くの労力を要している。
従って、果実類の酵素剥皮の成否は、いかにして果実類の果皮組織に酵素液を導入できるかに影響される。
しかるにカンキツ類果実やカキ果実などの果皮の表面は、撥水性が高いため、果実をペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性を中心とした酵素液に浸漬しただけでは、果皮への酵素液の導入は難しい。
このため、カンキツ類果実やカキ果実などを酵素液に浸漬処理する前に、果皮に酵素液の導入する経路を確保するための前処理が必須である。
また、カキ果実では、カキ果実を加熱処理することにより、果皮表面のクチクラ層に亀裂を発生させて酵素液の導入する経路を確保する前処理法が行われている(特許文献2参照)。
さらに、カキ果実に、剣山などで傷を付けた後に加熱処理する前処理法も行われている(特許文献3参照)。
ビワ果実についても、カンキツ類果実やカキ果実などと同様に、ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性を中心とした酵素液浸漬処理のみでは、剥皮不可能である。
しかも、ビワ果実の場合には、カンキツ類果実やカキ果実などのように酵素液浸漬処理の前処理としての「傷付け処理」を行ったときには、酵素液浸漬処理を行って剥皮した後に、果肉のえぐれや変色などの悪影響を及ぼすため、商品価値のある良好な(美麗な)剥皮果実が得られないという問題があった。
また、ビワ果実の場合には、カキ果実などのように酵素液浸漬処理の前処理としての「加熱処理」を行ったとしても、剥皮することができず、しかもビワ果実の皮が黒ずみ、果皮直下が着色してしまうという問題があった。
このため、果皮の傷付け処理や加熱処理といった前処理を施す必要の無い、ビワ果実の剥皮方法の開発が望まれている。
その結果、本発明者らは、酵素液として、従来のようなペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性を中心としたものではなく、ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性以外に、セルラーゼ活性等の植物性多糖類分解酵素活性を有する酵素液を用いることにより、酵素による細胞壁多糖類の分解作用を強化できることを見出した。
さらに、本発明者らは、洗浄処理した後のビワ果実を、上記の如き酵素液と共に界面活性剤を併用した液で処理することにより、この液が果皮の気孔から果皮組織にしみ込みやすくなり、その結果、ビワ果実の果皮を傷付けたり、或いは加熱したりするといった前処理を経ることなく、一段階での酵素剥皮処理のみで、ビワ果実を見栄えよく良好に(美麗に)剥皮することができることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
(1)ビワ果実を洗浄処理し、続いてペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する液で処理し、次いでビワ果実の少なくとも外果皮を除去する処理を行うことを特徴とする、ビワ果実の剥皮方法である。
(2)ビワ果実を加熱処理する工程を含まない(行わない)、前記(1)記載の方法である。
(3)酵素液及び界面活性剤を含有する液での処理が、酵素液及び界面活性剤を含有する液への浸漬処理である、前記(1)又は前記(2)記載の方法である。
(4)界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法である。
(5)ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、前記(4)記載の方法である。
(6)酵素液が、ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性及びセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いた酵素液である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法である。
また、本発明によれば、人手に頼ることなく、ビワ果実を効率よく剥皮することができる。
本発明は、ビワ果実の剥皮方法に関し、ビワ果実を洗浄処理し、続いてペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する液で処理し、次いでビワ果実の少なくとも外果皮を除去する処理を行うことを特徴とするものである。
本発明は、このビワ果実を剥皮する方法に関するものである。
ビワ果実としては、例えば、「茂木」、「田中」、「大房」、「瑞穂」、「白茂木」、「長崎早生」などの品種の他に、「希房」のような種無し品種を挙げることができる。
本発明においては、まずビワ果実を洗浄する。洗浄処理は、水流コンベアなどを用いて行うことができる。
ビワ果実を洗浄した後、続けてペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する改良酵素液で処理する。
即ち、本発明においては、果皮の傷付け処理や加熱処理といった前処理を行うことなく、ビワ果実を洗浄した後、これに続いてビワ果実を速やかに(直ちに)酵素処理する。そして、酵素処理するにあたり、ペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する改良酵素液で処理することが必要である。
即ち、酵素処理の前処理として、ビワ果皮の傷付け処理を行った場合には、酵素処理を行って剥皮した後に、果肉のえぐれが生じて、維管束が露出し、維管束から褐変してしまい、外観や形状に悪影響を及ぼしてしまう。一方、前処理として、加熱処理を行ったとしても、剥皮することができず、しかも果皮や果肉の濃色化を生じ、外観が悪化してしまう。
本発明においては、ビワ果皮の傷付け処理や加熱処理を行わないため、これらによる果肉の品質低下を有効に抑えることができる。
ビワ果実剥皮用改良酵素液として、ペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する改良酵素液で処理することにより初めて、見栄えよく良好に(美麗に)剥皮された剥皮ビワ果実を得ることができる。
本発明によれば、ペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する改良酵素液で処理することにより、ビワ果皮の傷付け処理や加熱処理といった前処理を行っていないにもかかわらず、ビワ果実を見栄えよく良好に(美麗に)剥皮することが初めて可能となった。
即ち、ビワ果実の表面には気孔が存在し、この気孔はリンゴ果実やナシ果実のようなコルク化が進行していない。このため、気孔は水分の蒸散以外に、果実外部からの物質の導入経路としても寄与しうる。以上のことから、この気孔を通して改良酵素液を果皮組織にしみ込ませ、その結果、ビワ果皮の傷付けによる物理的な穿孔処理や加熱処理といった手段を行うことなく、効率よくビワ果実を剥皮することができるものと考えられる。
この点で、ビワ果実の剥皮方法に関する本発明による剥皮のメカニズムは、カキ果皮表面のクチクラ層に亀裂を発生させて酵素液を導入する経路を確保し、この経路(亀裂)を通じて酵素液をカキ果皮組織に導入することにより、カキ果実を剥皮するカキ剥皮技術のメカニズムとは、明らかに異なるものと認められる。
本発明においては、酵素液として、ペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液を用いる。
ここで「ペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液」とは、ペクチン質分解酵素(ペクチナーゼ)活性と植物性多糖類分解酵素活性を有している酵素液であればよく、「ペクチン質分解酵素」と「植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)」とを組み合わせて用いてもよいし、或いは、両活性を有している酵素剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、これまでカンキツ類果実やカキ果実などの果実類の酵素剥皮技術に用いられてきたペクチン質分解酵素(ペクチナーゼ)活性以外に、セルラーゼ活性等の植物性多糖類分解酵素活性を有する酵素液を用いることにより、酵素による細胞壁多糖類の分解作用を強化することができる。
ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)としては、トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)など酵母及び酵母近縁微生物由来のプロトペクチナーゼ類の他;アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)由来のポリガラクチュロナーゼ類;トリコスポロン・ペニシラタム(Trichosporon penicillatum)由来のポリメトキシポリガラクチュロナーゼ類;などを挙げることができる。
ペクチナーゼ(ペクチン質分解酵素剤)として、このプロトペクチナーゼIGA(IGAバイオリサーチ株式会社製)のようにペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性のみを有すると見なせる酵素剤を用いる場合には、これを単独で用いても剥皮効果がなく、これと共に、セルラーゼ活性等の植物性多糖類分解酵素活性を有する酵素剤を併用することが必要である。
セルラーゼ活性を有する酵素剤として具体的には、例えば、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム社製)、スミチームC(協和化成社製)などが挙げられる。
また、ヘミセルラーゼ活性を有する酵素剤として具体的には、例えば、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)、スミチームX(協和化成社製)などが挙げられる。
また、酵素液(酵素含有液)中の植物性多糖類分解酵素の濃度については、セルラーゼ活性が5U/ml以上になるように希釈した酵素液(酵素含有液)を用いることが好ましい。より好ましくは、セルラーゼ活性が5〜15U/mlになるように希釈した酵素液(酵素含有液)、特に好ましくは、セルラーゼ活性が10〜12U/mlになるように希釈した酵素液(酵素含有液)を用いる。
従って、この酵素処理工程においては、10〜37℃、好ましくは15〜35℃、より好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜25℃の温度とした上記改良酵素液中に、ビワ果実を浸漬することが好適である。
具体的には、このように高濃度のものを用いた場合には、4〜6時間程度の短時間で十分に剥皮可能である。
従って、酵素処理の時間は、最大で4〜24時間の範囲ということができる。但し、このように高濃度のものを用いた場合には、短時間処理といえども、酵素液や界面活性剤の種類によっては、酵素液や界面活性剤由来の異臭が付与される場合があるので注意を要する。
本発明においては、洗浄処理工程に続く酵素処理工程を、上記した酵素液(酵素含有液)と共に、界面活性剤を含有する改良酵素液を用いて行うことが必要である。
この酵素処理工程における酵素処理の態様としては、上記したように、上記酵素液(酵素含有液)、並びに、この界面活性剤を含有する「改良酵素液」を、ビワ果実の表面に吹き付けたり、塗布したり、或いは、前記改良酵素液中にビワ果実を浸漬するなどの態様が挙げられるが、均一処理の観点から、水槽での処理を可能とする、上記改良酵素液中にビワ果実を浸漬する態様が最も好ましい。
ノニオン系界面活性剤のHLB値としては、5〜19が好ましく、より好ましくは13〜18であり、さらに好ましくは14〜17、特に好ましくは15〜17である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばデカグリセリンモノラウリレート、デカグリセリンモノカプリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8〜22のものを用いることができ、特に炭素数8〜18のものが好ましく、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸などを挙げることができる。
そのようなものとして、具体的には例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステルM−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノミリスチレート;HLB値16)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート;HLB値15)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノステアリレート;HLB値14)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルCA−F4(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値5)などを挙げることができる。
これらはいずれも、植物油由来のグリセリンと植物油由来の脂肪酸を用いて製造された、食品添加物として認められた食品用乳化剤である。
界面活性剤は、水に可溶なもの、水中で分散するもの、水に不溶なもの、に分類できる。界面活性剤を酵素液に混合させるためには、水に可溶なものと水中で分散するものが好ましく、水に不溶なものは好ましくない。
具体的には、上記段落に記載した製品でいうと、水に可溶なものがリョートー(登録商標)ポリグリエステルM−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノミリスチレート;HLB値16)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値17)であり、水中で分散するものがリョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノカプリレート;HLB値15)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノステアリレート;HLB値14)であり、水に不溶なものがリョートー(登録商標)ポリグリエステルCA−F4(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノラウリレート;HLB値5)である。
記載してある界面活性剤の中では、リョートー(登録商標)ポリグリエステルM−7D(三菱化学フーズ株式会社製;デカグリセリンモノミリスチレート;HLB値16)が、水に可溶で、かつ、臭いのレベルが最も低く好ましい。
例えば、ビワ果実を洗浄処理し、続いて界面活性剤で処理した後に酵素液で処理したとしても、或いは、その逆に、ビワ果実を洗浄処理し、続いて酵素液で処理した後に界面活性剤で処理したとしても、いずれも本発明の目的を達成することはできない。
なお、この酵素処理工程において、ビワ果実に褐変が生じるような場合には、改良酵素液に既存の方法でビタミンCを添加することで、剥皮後ビワ果実の褐変を抑制することも可能である。
これらの工程は、従来のような人手に頼った果皮の傷付け作業ではないため、作業を簡略化することができる。また、機械化する場合であっても、特殊な装置が不要となることから、従来の機械装置よりもコストを低くすることができるメリットがある。
なお、本発明においては、加熱処理を行っていないため、冷却処理などは不要であり、加熱処理によるビワ果実の果肉の品質低下を生じることがない。
本発明においては、上記した如き、「洗浄処理工程」、これに続く「酵素液及び界面活性剤を含有する液での酵素処理工程」に引き続いて、前記工程を行った後のビワ果実の少なくとも外果皮を除去処理する工程を行う。
この外果皮除去処理工程を行うことにより、それまでの工程を施すことによって既に崩壊状態となっているビワ果実の果皮組織を、ビワ果実表面から有効に除去することができる。
このようにして得られた剥皮ビワ果実は、手剥きと同等で表面が平滑なものであって、そのまま食品として用いることができる。
即ち、本発明の製法により得られた、剥皮ビワ果実は、これを適宜サイズにカットするだけで皮を剥いてすぐに食べられる状態のカットフルーツとなる。
さらに、本発明の製法は、乾燥加工、糖蔵等の加工時の最初の剥皮処理としても利用することができる。
なお、以下の実施例、比較例においては、特に断っていない限り、pHは無調整である。
(1)洗浄処理工程
ビワ果実(品種:茂木)を、水道水に10分間浸漬して洗浄処理した。
表2に示す酵素剤・界面活性剤を含有する酵素液4Lを調製し、これを常温(20〜25℃)で容量5Lの水槽に入れ、この水槽中に上記洗浄処理を施されたビワ果実を、その全面が浸るようにして浸漬し、一晩(16時間)常温下に酵素処理を行った。
・アクレモセルラーゼ:協和化成社製のアクレモセルラーゼKM;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性と共に、セルラーゼ活性を有する酵素剤
・Peelzym:Novozymes社製のPeelzym;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性を主体とし、セルラーゼ活性も有する酵素剤
・IGA:IGAバイオリサーチ株式会社製のプロトペクチナーゼIGA;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性のみを有する酵素剤
・ヘミセルラーゼ「アマノ」90:天野エンザイム社製のペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性と共に、ヘミセルラーゼ活性を有する酵素剤
・L−7D:三菱化学フーズ株式会社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルL−7D;HLB値17
・M−7D:三菱化学フーズ株式会社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルM−7D;HLB値16
・CE−19D:三菱化学フーズ株式会社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルCE−19D;HLB値15
・SWA−10D:三菱化学フーズ株式会社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D;HLB値14
・CA−F4:三菱化学フーズ株式会社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルCA−F4;HLB値5
*2:ポリグリセリン構成部位に対する脂肪酸構成部位の炭素数比。ポリグリセリン脂肪酸エステルの分子内で、疎水的な部位である脂肪酸の炭素数と親水的な部位であるポリグリセリンの炭素数の比。数値が大きいほど親油性が強く、数値が小さいほど親水性が強い。数値の大小関係はHLB値の逆である。
*3:CE−19D基準の比較
上記(1)に示す処理、(2)に示す処理を順に施されたビワ果実を取り出し、流水中で軽く擦った。これにより、ビワ果実の外果皮組織の脱離除去作業(剥皮作業)を行った。
このときの果皮脱離の作業性(剥皮性)を次の4段階の判定基準で評価した。結果を表2に示す。
なお、◎と○の評価が得られたものを許容範囲内と判定し、△と×の評価のものを許容範囲外と評価した。
・◎:優;果皮脱離が短時間・容易。所要時間30秒以内。
・○:良;◎の場合よりも丁寧に時間をかけて果皮表面を擦ることで、剥ける。所要時間1分〜2分程度。
・△:難;○の場合よりも力をかけて果皮直下の果肉もえぐれば、果皮脱離が可能。
・×:不可;剥ける箇所が全くない、または、部分的に剥ける程度。
[果肉の状態(えぐれ、褐変の有無やその程度)の判定基準]
・◎:無;剥皮面にえぐれと褐変がなく外観良好。
・○:微;剥皮面でえぐれと褐変が発生する部位が僅かだが存在。
・△:有;剥皮面でえぐれと褐変が発生する部位の方が多い。
・×:甚大;剥皮面でえぐれと褐変がほぼ全面で発生。
[総合評価の判定基準]
・○:剥皮性も果肉の状態のいずれもが許容範囲内である。
・×:剥皮性と果肉の状態のいずれか、或いは両方が許容範囲外である。
実施例1において、酵素剤として、アクレモセルラーゼの代わりに、IGA(IGAバイオリサーチ株式会社製のプロトペクチナーゼIGA;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性のみを有すると見なせる酵素剤)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、界面活性剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。結果を表2に示す。
実施例2において、界面活性剤を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。結果を表2に示す。
比較例1において、界面活性剤を用いなかったこと以外は、比較例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。結果を表2に示す。
実施例1によれば、酵素剤としてアクレモセルラーゼ(協和化成社製のアクレモセルラーゼKM;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性と共に、セルラーゼ活性を有する酵素剤)を用い、これを界面活性剤(L−7D)と組み合わせて用いることにより、果皮が果実全体で弱体化し、最外層のみが剥がれる部分が多く、尻周りの皮が少しだけ残ったものの、楽に剥け、良好な剥皮性を示し、しかも剥皮したときの果肉のえぐれは少なく、褐変も少なかった。
実施例1において、界面活性剤(L−7D)の濃度を1.0%(10,000ppm)としたこと以外は、実施例1と同様にして(アクレモセルラーゼの濃度0.2%+L−7Dの濃度1.0%)ビワ果実の剥皮作業を行った。
その結果、剥皮性は良好であり、全体が剥けた。但し、少し凹凸が見られることから、果肉が僅かにえぐれているものと認められた。
即ち、比較例2のように界面活性剤(L−7D)の濃度が0%の場合には、一部に亀裂が入り、果皮が果実全体で弱体化して、剥けるものの、剥皮面のほとんどでえぐれや褐変が生じ、汚い外観となった。
また、実施例1のように界面活性剤(L−7D)の濃度が0.1%(1,000ppm)の場合には、尻周りの皮が残るだけでほぼ剥け、この実施例3のように界面活性剤(L−7D)の濃度が1.0%(10,000ppm)の場合には、上記のように全体が剥けた。
これらのことから、界面活性剤の濃度としては、0.1%(1,000ppm)以上であることが好ましいことが分かった。
実施例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
実施例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、実施例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
比較例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
比較例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
比較例3において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例3と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
比較例4において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例4と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表3に示す。
また、いずれの場合も、加熱処理により、ビワ果実の皮が黒ずみ、果皮直下が着色してしまった。
実施例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。
剣山による傷付け処理は、具体的には、剣山を用い、洗浄処理後のビワ果実の表面の全面に針の刺し跡が目視で確認できるように傷付けをすることで行った(以下、同様)。剥皮性の結果を表4に示す。
実施例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、実施例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表4に示す。
比較例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、比較例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表4に示す。
比較例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、比較例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表4に示す。
比較例3において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、比較例3と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表4に示す。
比較例4において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、剣山による傷付け処理工程を設けたこと以外は、比較例4と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表4に示す。
実施例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
実施例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、実施例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
比較例1において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
比較例2において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例2と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
比較例3において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例3と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
比較例4において、(1)洗浄処理工程と、(2)酵素処理工程との間に、「剣山による傷付け処理工程」と、「加熱30秒直後に、氷水にて急冷30秒の条件で加熱処理する加熱処理工程」を設けたこと以外は、比較例4と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。剥皮性の結果を表5に示す。
実施例1において、界面活性剤(L−7D)の種類を「CE−19D」に変更し、かつ、その濃度を0.01%(100ppm)(実施例4)、0.1%(1000ppm)(実施例5)、1.0%(10,000ppm)(実施例6)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして(酵素剤:アクレモセルラーゼの濃度0.2%)ビワ果実の剥皮作業を行った。
その結果は、界面活性剤の種類が「CE−19D」に変更されても、十分に剥皮可能であることが分かった。
しかも、実施例1で用いている界面活性剤(L−7D;HLB値17)よりも、この実施例4〜6で用いている界面活性剤(CE−19D;HLB値15)の方が、疎水性が高い分、剥皮効果が高いと考えられた。
また、この界面活性剤(CE−19D)の場合も、界面活性剤の濃度依存的に剥皮性が向上していることが分かった。
即ち、界面活性剤(CE−19D)の濃度が0.01%(100ppm)(実施例4)の場合には、亀裂が生じた付近が剥けた。次に、界面活性剤(CE−19D)の濃度が0.1%(1000ppm)(実施例5)の場合は、亀裂が生じた付近が剥ける点では同じであるものの、その濃度が0.01%(100ppm)(実施例4)の場合よりも亀裂が多く入り、より剥皮効果があることが認められた。さらに、実施例6のように界面活性剤(CE−19D)の濃度が1.0%(10,000ppm)の場合には、果実全体が剥けた。
実施例1において、界面活性剤(L−7D)を使用せず、かつ、酵素剤(アクレモセルラーゼ)の量を、0.2%(比較例23)、1.0%(比較例24)、5.0%(比較例25)としたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。
一方、比較例24(アクレモセルラーゼの量:1.0%)や比較例25(アクレモセルラーゼの量:5.0%)のように、酵素剤(アクレモセルラーゼ)の量が1.0%以上であると、剥皮が一応可能であった。
しかしながら、酵素剤のみを用い、界面活性剤を併用していないためと思われるが、脱皮(剥皮)時に時間をたっぷりかける必要があり、果皮は除去できるものの、作業性が非常に悪いものであった。
また、比較例24や比較例25の場合、気孔直下に酵素液が浸透し、気孔直下が脱皮(剥皮)の足がかりになり剥けたものの、気孔直下がえぐれる傾向であり、ムラがあって均一に剥けなかった。しかも、果肉が軟化傾向となり、比較例25(アクレモセルラーゼの量:5.0%)のように、より高濃度になると、歩留まりが大きく低下してしまった。
従って、酵素剤(アクレモセルラーゼ)のみを使用し、界面活性剤を使用しない場合には、高濃度にしたとしても、実際上ビワ果実の剥皮に用いるのには不適であると判断された。
実施例1において、酵素剤(アクレモセルラーゼ)の量を、5.0%とし、かつ、界面活性剤(L−7D)の量を1.0%(10,000ppm)に増やすと共に、浸漬時間を「一晩(16時間)」から「5時間」に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。
実施例1において、酵素剤(アクレモセルラーゼ)の量を、5.0%とし、かつ、界面活性剤とその量を「L−7D:0.1%」から「CE−19D:1.0%(10,000ppm)」に変えると共に、浸漬時間を「一晩(16時間)」から「5時間」に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。
いずれも気孔直下に酵素液が浸透し、気孔直下が脱皮の足がかりになり剥けるものと認められた。高濃度の酵素剤と界面活性剤とを併用することで、気孔直下のえぐれが減る傾向であり、剥け方の不均一さを軽減できた。
但し、いずれの場合も、酵素剤と界面活性剤由来の異臭が付与された。
即ち、界面活性剤としてL−7Dを用いたとき、その濃度が1.0%(10,000ppm)と高いことに起因して、若干の異臭が認められ、また、界面活性剤としてCE−19Dを用いたとき、その濃度が1.0%(10,000ppm)と高いことに起因して、同様の異臭が認められた。
特に界面活性剤について、より低い濃度で処理したり、より臭いのレベルが低いものを利用したりする方がよいものと考えられた。
実施例1において、酵素剤としてアクレモセルラーゼ[協和化成社製のアクレモセルラーゼKM;ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性と共に、セルラーゼ活性を有する酵素剤]を用い、これを表6に示すように5種の界面活性剤とそれぞれ組み合わせて用いたこと以外は、実施例1と同様にしてビワ果実の剥皮作業を行った。
剥皮性の結果、剥皮の仕方、剥皮したときの果肉の状態を表6に示す。
なお、臭いの点では、CE−19DよりもL−7Dの方が臭いが少なく、L−7DよりもM−7Dの方が一層臭いが少なかったことから、M−7Dが最も良好であると認められた。
以上より、作業性と臭いの二点から、M−7Dが最も良好であると認められた。
実施例1において、界面活性剤(L−7D)の種類を「M−7D」に変更し、かつ、その濃度を0.01%(100ppm)(実施例14)、0.1%(1000ppm)(実施例15)、1.0%(10,000ppm)(実施例16)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして(酵素剤:アクレモセルラ−ゼの濃度0.2%)ビワ果実の剥皮作業を行った。
具体的には、界面活性剤(M−7D)の濃度が0.01%(100ppm)(実施例14)の場合には、亀裂付近から広がるように剥けた。一部残るが、手剥きで除去可能であった。若干酵素処理の意味が希薄であった。
次に、界面活性剤(M−7D)の濃度が0.1%(1000ppm)(実施例15)の場合には、亀裂付近から全体を剥皮することができ、作業性は良好であった。酵素液が僅かに白濁した。
さらに、界面活性剤(M−7D)の濃度が1.0%(10,000ppm)(実施例16)の場合には、亀裂付近から全体を剥皮することができ、作業性は良好であった。酵素液が明らかに白濁した。但し、これら実施例14〜16の中で冷蔵保存中に褐変が最も生じた。
なお、全体としては、亀裂直下がえぐれやすいこと、気孔直下がやや凹む傾向であることが分かった。
従って、ビワ果実加工の剥皮工程の省力化、さらに、ビワ果実の消費拡大に寄与しうるものと考えられる。
Claims (6)
- ビワ果実を洗浄処理し、続いてペクチン質分解酵素及び植物性多糖類分解酵素(但し、ペクチン質分解酵素を除く。)を含む酵素液と、界面活性剤と、を含有する液で処理し、次いでビワ果実の少なくとも外果皮を除去する処理を行うことを特徴とする、ビワ果実の剥皮方法。
- ビワ果実を加熱処理する工程を含まない(行わない)、請求項1記載の方法。
- 酵素液と、界面活性剤と、を含有する液での処理が、酵素液と、界面活性剤と、を含有する液への浸漬処理である、請求項1又は2記載の方法。
- 界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- ノニオン系界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる、請求項4記載の方法。
- 酵素液が、ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)活性及びセルラーゼ活性を有する酵素剤を用いた酵素液である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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