以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る走査型内視鏡システムについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る走査型内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走査型内視鏡システム1は、共焦点顕微鏡の原理を応用して設計されたシステムであり、高倍率かつ高解像度の被写体を観察するのに好適に構成されている。図1に示されるように、走査型内視鏡システム1は、システム本体100、共焦点プローブ200、モニタ300を有している。走査型内視鏡システム1を用いた共焦点観察は、可撓性を有する管状の共焦点プローブ200の先端面を被写体に当て付けた状態で行う。
システム本体100は、光源102、光分波合波器(フォトカプラ)104、ダンパ106、CPU108、CPUメモリ110、光ファイバ112、受光器114、映像信号処理回路116、画像メモリ118、映像信号出力回路120、判定回路122を有している。共焦点プローブ200は、光ファイバ202、共焦点光学ユニット220、サブCPU206、サブメモリ208、走査ドライバ210を有している。
光源102は、CPU108の駆動制御に従い、患者の体腔内に投与された薬剤を励起する励起光を出射する。励起光は、光分波合波器104に入射する。光分波合波器104のポートの1つには、光コネクタ152が結合している。光分波合波器104の不要ポートには、光源102から出射された励起光を無反射終端するダンパ106が結合している。前者のポートに入射した励起光は、光コネクタ152を通過して共焦点プローブ200内に配置された光学系に入射する。
光ファイバ202の基端は、光コネクタ152を通じて光分波合波器104と光学的に結合している。光ファイバ202の先端は、共焦点プローブ200の先端部に組み込まれた共焦点光学ユニット220内に収められている。光分波合波器104から出射された励起光は、光コネクタ152を通過して光ファイバ202の基端に入射後、光ファイバ202を伝送して光ファイバ202の先端から出射される。
図2は、共焦点光学ユニット220の構成を概略的に示す図である。図2(a)は、共焦点光学ユニット220の側断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図、図2(c)は、図2(a)のB−B断面図、図2(d)は、図2(a)のC−C断面図である。以下、共焦点光学ユニット220を説明する便宜上、共焦点光学ユニット220の長手方向をZ方向と定義し、Z方向に直交しかつ互いに直交する2方向をX方向、Y方向と定義する。図2(a)〜(d)に示されるように、共焦点光学ユニット220は、各種構成部品を収容する金属製の外筒221を有している。外筒221は、外筒221の内壁面形状に対応する外壁面形状を持つ内筒222を同軸(Z方向)にスライド自在に保持している。光ファイバ202の先端(以下、符号「202a」を付す)は、外筒221及び内筒222の各基端面に形成された開口に挿通され、内筒222に固定、支持されており、光ファイバ202は、外筒221から光コネクタ152に延びるファイバ保護チューブ203で覆われている。なお、後述するように、光ファイバ202の先端202aは、走査型内視鏡システム1の二次的な点光源として機能し、点光源である先端202aの位置は、CPU108による制御に基づいて周期的に変化する。また、図2(a)中、中心軸AXは、Z方向に配置された光ファイバ202の軸心を示しており、光ファイバ202の先端202aが振動していない状態のとき、中心軸AXは、光ファイバ202の光路と一致する。
サブメモリ208(図1)は、共焦点プローブ200の識別情報や各種プロパティ等のプローブ情報を格納している。サブCPU206は、システム起動時にサブメモリ208からプローブ情報を読み出して、システム本体100と共焦点プローブ200とを電気的に接続する電気コネクタ154を介してCPU108に送信する。CPU108は、送信されたプローブ情報をCPUメモリ110に格納する。CPU108は、格納したプローブ情報を必要時に読み出して共焦点プローブ200の制御に必要な信号を生成して、サブCPU206に送信する。サブCPU206は、CPU108から送信された制御信号に従って走査ドライバ210に必要な設定値を指定する。
走査ドライバ210は、指定された設定値に応じたドライブ信号を生成して、先端202a付近の光ファイバ202の外周面に接着固定された筒状の圧電アクチュエータ223を駆動制御する。図3は、圧電アクチュエータ223の構成を概略的に示す図である。図3に示されるように、圧電アクチュエータ223は、走査ドライバ210と接続された5つの電極(図中「223A」、「223B」、「223C」、「223D」、「223E」)を圧電体上に形成したアクチュエータであり、各電極がそれぞれ独立した5つのアクチュエータを構成している。電極223A〜223Eは、圧電アクチュエータ223のXY平面による断面において、円周上に等間隔に配置されている。
走査ドライバ210は、交流電圧AV1を圧電アクチュエータ223の電極223Aに印加し、交流電圧AV1と同一周波数でかつ略同一の振幅であって、位相が2π/5遅れた交流電圧AV2を電極223Bに印加する。同様に、交流電圧AV2に対して位相が2π/5遅れた交流電圧AV3を電極223Cに、交流電圧AV3に対して位相が2π/5遅れた交流電圧AV4を電極223Dに、交流電圧AV4に対して位相が2π/5遅れた交流電圧AV5を電極223Eにそれぞれ印加する。各電極への印加電圧の詳細については後述する。なお、交流電圧AV1〜AV5は、位相を2π/5ずつ進ませて電極に印加してもよい。各交流電圧AV1〜AV5は、それぞれ振幅が時間に比例して線形に増加して、時間(AV1)、(AV2)、(AV3)、(AV4)、(AV5)かけて実効値(AV1)、(AV2)、(AV3)、(AV4)、(AV5)に達する電圧として定義される。
このように、電極223A〜223Eに交流電圧AV1〜AV5を印加することにより圧電体が共振する結果、光ファイバ202の先端202aは、圧電アクチュエータ223によるX方向、Y方向への運動エネルギーが合成されて、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように回転する。先端202aの回転軌跡は、印加電圧に比例して大きくなり、実効値(AV1)、(AV2)、(AV3)、(AV4)、(AV5)の交流電圧が印加された時点で最も大きい径を有する円の軌跡を描く。図4に、XY近似面上の先端202aの回転軌跡を示す。
励起光は連続光であり、圧電アクチュエータ223への交流電圧AV1〜AV5の印加開始直後から印加停止までの期間中、光ファイバ202の先端202aから出射される。以下、説明の便宜上、この期間を「サンプリング期間」と記す。サンプリング期間が経過して圧電アクチュエータ223への交流電圧AV1〜AV5の印加が停止すると、光ファイバ202の振動が減衰する。XY近似面上における先端202aの円運動は、光ファイバ202の振動の減衰に伴って収束し、所定時間後に中心軸AX上で停止する。以下、説明の便宜上、サンプリング期間が終了してから先端202aが中心軸AX上に停止するまでの期間(より正確には、中心軸AX上での停止を保証するため、停止までに要する計算上の時間より僅かに長い期間)を「制動期間」と記す。1フレームに対応する期間は、1つのサンプリング期間と1つの制動期間で構成される。制動期間を短縮するため、制動期間の初期段階に圧電アクチュエータ223に逆相電圧を印加して制動トルクを積極的に加えてもよい。図5に、XY近似面上における先端202aのX(又はY)方向の変位量(振幅)と、サンプリング期間及び制動期間との関係を示す。
光ファイバ202の先端202aの前方には、対物光学系224(図2)が設置されている。対物光学系224は、複数枚の光学レンズで構成されており、図示省略されたレンズ枠を介して内筒222に保持されている。そのため、レンズ枠に保持された光学レンズ群は、内筒222と一体となってZ方向にスライドする。なお、後述するように、本実施形態においては、4つの磁気センサ227a、227b、227c、227dで構成されるファイバ位置検出センサ227が外筒221の内壁面に沿って取り付けられているため(図2(a)、(c))、ファイバ位置検出センサ227と内筒222とが干渉しないように、内筒222のファイバ位置検出センサ227に対応する位置には、軸心方向に沿って(すなわち、中心軸AXに沿って)延びるスリット222aが形成されている。また、外筒221の最先端(すなわち、対物光学系224の前方)には、図示省略されたカバーガラスが保持されている。
外筒221の基端面には、Z方向に延びる回転軸226aを備えたモータ226が取り付けられている。回転軸226aの表面にはネジが切られており、回転軸の先端は、内筒222の基端部に設けられたネジ穴に挿通されている。また、内筒222の基端面と外筒221の内壁面との間には、圧縮コイルばね225が取り付けられている。圧縮コイルばね225は、自然長からZ方向に初期的に圧縮挟持されており、モータ226に対してプリロードを与えている。走査ドライバ210は、サブCPU206が指定した設定値に応じたドライブ信号を生成して、モータ266を制御する。モータ226は、入力されるドライブ信号に応じて内筒222を光ファイバ202ごとZ方向に進退させる。
光ファイバ202の先端202aから出射した励起光は、対物光学系224を透過して被写体の表面又は表層でスポットを形成する。スポット形成位置は、点光源である先端202aの進退に応じてZ軸方向に変位する。すなわち、共焦点光学ユニット220は、2軸アクチュエータ223による先端202aのXY近似面上の周期的な円運動とZ方向の進退を併せることで、被写体を三次元走査する。
光ファイバ202の先端202aは、対物光学系224の前側焦点位置に配置されているため、共焦点ピンホールとして機能する。従って、先端202aには、励起光により励起された被写体の散乱成分(蛍光)のうち先端202aと光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射する。蛍光は、光ファイバ202によって伝搬され、光コネクタ152を通過して光分波合波器104に入射する。光分波合波器104は、入射した蛍光を光源102から出射される励起光と分離して光ファイバ112に導く。蛍光は、光ファイバ112を伝搬して受光器114で検出される。受光器114には、微弱な光を低ノイズで検出するため、例えば光電子増倍管等の高感度光検出器が用いられる。
受光器114によって検出された検出信号は、映像信号処理回路116に入力する。映像信号処理回路116は、CPU108の制御下で動作して、検出信号を一定のレートでサンプルホールド及びAD変換してデジタル検出信号を得る。ここで、サンプリング期間中の光ファイバ202の先端202aの位置(軌跡)が決まると、当該位置に対応する観察領域(走査領域)中のスポット形成位置、当該スポット形成位置からの戻り光を検出してデジタル検出信号を得る信号取得タイミングがほぼ一義的に決まる。後述するように、本実施形態においては、あらかじめ、光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を検出し、回転軌跡に歪みがある場合には自動で補正を行っている。従って、サンプリング期間中の光ファイバ202の先端202aの位置(軌跡)が安定的に求まるため、光ファイバ202の先端202aの位置から求まる所定のタイミングでデジタル検出信号を取得している。CPUメモリ110には、決定されたデジタル検出信号の信号取得タイミングと画素位置(画素アドレス)とを関連付けたリマップテーブルが格納されている。
映像信号処理回路116は、リマップテーブルを参照して、各デジタル検出信号により表現される点像の画素アドレスへの割り当てを信号取得タイミングに応じて行う。以下、説明の便宜上、上記の割り当て作業をリマッピングと記す。映像信号処理回路116は、リマッピング結果に従って、各点像の空間的配列によって構成される画像の信号を画像メモリ118にフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングで画像メモリ118から映像信号出力回路120に掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ300に出力される。モニタ300の表示画面には、高倍率かつ高解像度の被写体の三次元共焦点画像が表示される。
上述したように、本実施形態においては、圧電アクチュエータ223を構成する電極223A〜223Eに交流電圧AV1〜AV5をそれぞれ印加し、圧電アクチュエータ223をX方向及びY方向に共振(すなわち、屈曲)させることで、光ファイバ202の先端202aを渦巻状のパターンを描くように回転させている。ここで、圧電アクチュエータ223のX方向及びY方向における変位量(振幅)は、基本的に各電極に印加する電圧に依存するところ、各アクチュエータを構成するセラミックの結晶構造のバラツキ、分極時の温度設定のバラツキ、分極時の印加電圧のバラツキ等に因り、各アクチュエータの特性にバラツキが生じる。このため、各電極に同一の電圧を印加しても必ずしも同じ量だけ変位するとは限らず、各アクチュエータの特性が異なる場合、光ファイバ202の先端202aは理想的な円形の渦巻状のパターンとはならない。そこで、本実施形態においては、後述するように、あらかじめ、光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を検出し、回転軌跡に歪みがある場合には自動で補正を行うように構成されている。
図6は、ファイバ位置検出センサ227の構成を概略的に示す図であり、図2における外筒221の先端側から外筒221の基端側(すなわち、図2の左側から右側)を見たときの正面図である。但し、説明の便宜のため、図6においては、対物光学系224を省略して示している。
図2及び図6に示すように、光ファイバ202の先端202a近傍であって、圧電アクチュエータ223よりも光ファイバ202の先端202a側に、環状のマグネット228が取り付けられている。また、マグネット228を取り囲むように、ファイバ位置検出センサ227が外筒221の内壁面に沿って取り付けられている。本実施形態においては、ファイバ位置検出センサ227は、マグネット228と対向するように配置された4つの磁気センサ227a、227b、227c、227dで構成される。磁気センサ227a〜227dは、光ファイバ202の中心軸AXを中心とする円周上に一定の間隔をおいて配置されている。磁気センサ227a〜227dは、例えば、ホール素子で構成され、X方向に沿って配置される磁気センサ227a及び227bで検出される磁界の向きと、Y方向に沿って配置される磁気センサ227c及び227dで検出される磁界の向きとが逆向きになるように(すなわち、磁気センサの向きを180°反転して)配置されている。
各磁気センサで検出された磁界のデータは、電圧に変換されて走査ドライバ210、サブCPU206及び電気コネクタ154を経由してCPU108に送られる。CPU108は、入力される磁界のデータを判定回路122に出力する。判定回路122は、磁界のデータに基づいて、光ファイバ202の先端202aの振幅が正常か否かを判断する。詳細については、後述する。
上述したように、光ファイバ202の先端202aが渦巻状のパターンを描くように回転すると、光ファイバ202の先端202a近傍に配置されたマグネット228と、磁気センサ227a〜227dとの相対的な位置関係が変化する。本実施形態においては、光ファイバ202の先端202aが中心軸AX上で停止している場合、マグネット228と磁気センサ227a〜227dとの間の距離が十分に大きく、マグネット228の磁束(磁界)が磁気センサ227a〜227dによって検出されないように構成されている。一方、光ファイバ202の先端202aが回転するときには、マグネット228が磁気センサ227a〜227dに近づくあるいは離れるため、マグネット228と磁気センサ227a〜227dとの間の距離に応じた磁束が磁気センサ227aによって検出される(マグネットと磁気センサとが、中心軸AXから当該磁気センサまでの距離以上に離れている場合は検出されない)ように構成されている。
光ファイバ202の先端202aが渦巻状のパターンを描くように回転するとき、磁気センサ227a〜227dは、マグネット228との距離に応じた電圧を出力する。例えば、光ファイバ202の先端202aが中心軸AXを中心として1回転すると、マグネット228は、磁気センサ227a〜227dに囲まれた空間を1回転する。このとき、マグネット228は、磁気センサ227a、227c、227b、227dに順次一定の速度で接近し、離間する。従って、磁気センサ227a〜227dからの出力電圧は、横軸を時間としたときに4つの山形の波形を組み合わせた波形となる。このように、本実施形態の走査型内視鏡システム1においては、各磁気センサ227a〜227dの出力電圧の波形に基づいて光ファイバ202の先端202aの回転軌道が検出される。
また、光ファイバ202の先端202aがZ方向に移動するときは、マグネット228と磁気センサ227a〜227dの相対的な位置関係が変化するため、磁気センサ227a〜227dの出力電圧のピーク値が変化する。本実施形態においては、このような磁気センサ227a〜227dの出力電圧のピーク値の変化を利用し、光ファイバ202の先端202aのZ方向への移動量をモニタしている。従って、内筒222とモータ226の回転軸226aとの間でバックラッシュがあるような場合であっても、光ファイバ202の先端202aの位置がZ方向において正確に制御される。
次に、本実施形態のCPU108において実行される回転軌跡確認処理について説明する。図7は、本実施形態のCPU108において実行される回転軌跡確認処理のフローチャートである。本実施形態の回転軌跡確認処理は、走査型内視鏡システム1の画像取得・表示動作に先立って行われる一種のサブルーチンであり、走査型内視鏡システム1のシステム起動時に、CPU108が不図示のメモリに記憶されているプログラムをCPUメモリ110に読み出して実行することにより行われる。説明の便宜上、本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。図7に示すように、電源投入時にCPU108はS101を実行する。
S101では、CPU108は、システム本体100の各部を起動すると共に、電気コネクタ154を介してサブCPU206に指示を出して共焦点プローブ200を起動する。また、CPU108は、サブCPU206、走査ドライバ210を介してモータ226を駆動し、光ファイバ202の先端202aを初期位置まで移動させる。次に、処理はS103に進む。
S103では、CPU108は、CPUメモリ110に格納されている基準の設定値を読み込む。ここで、基準の設定値とは、光ファイバ202の先端202aを基準の渦巻状のパターンを描くように回転させるための走査ドライバ210のパラメータであり、これによって電極223A〜223Eには基準の交流電圧AV1〜AV5がそれぞれ印加される。次いで、処理はS105に進む。
S105では、CPU108は、読み込んだ基準の設定値をサブCPU206を介して走査ドライバ210に送信し、走査ドライバ210が、圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに交流電圧AV1〜AV5をそれぞれ印加する。次いで、処理はS107に進み、CPU108は、磁気センサ227a〜227dからの出力電圧を受信して光ファイバ202の先端202aの軌道検出を行い、振幅の確認を行う。
ここで、図8(a)、(b)を参照しながら、本実施形態における光ファイバ202の先端202aの回転軌跡について説明する。図8(a)、(b)に示すように、本実施形態では、一例として、電極223Cが破損しているために電極223Cに所定の電圧を印加しても所望の振幅を得ることができない現象が生じているとする。図8(a)は、圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに対する印加電圧の時間T1〜T5の推移を示すグラフである。図8(b)には、図8(a)に示す電圧が印加されたときの光ファイバ202の先端202aの回転軌跡Pを示す。なお、便宜上、回転軌跡Pは、圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに対する印加電圧が上述した実効値(AV1)〜(AV5)である場合の軌跡であるとする。また、図8(b)において、P1〜P5は、時間T1〜T5における光ファイバ202の先端202aの位置をそれぞれ示す。光ファイバ202の先端202aの振幅とは、中心軸AXから回転軌跡Pまでの距離である。図8(b)の走査領域Wは、光ファイバ202の先端202aの走査によって画像を取得するのに必要な最低限の走査領域を示しており、正常な画像を取得するには、回転軌跡P内に走査領域Wが含まれている必要がある。S107では、CPU108が、磁気センサ227a〜227dからの出力電圧をモニタし、光ファイバ202の先端202aの振幅を確認する。次いで、処理はS109に進む。
S109では、判定回路122が、光ファイバ202の先端202aの振幅が所定の閾値以上か否かを判断する。ここで所定の閾値とは、回転軌跡P内に走査領域Wが含まれるために必要な振幅の値である。振幅が所定の閾値より小さいと、光ファイバ202の先端202aを走査しても正常な画像を取得できない。本実施形態では電極223Cが破損しているため、図8(b)に示すように、回転軌跡Pが変形して、光ファイバ202の先端202aは電極223C側において走査領域Wの一部を走査できない状態となっている。このため、判定回路122は、電極223Cに異常が生じているために振幅が所定の閾値より小さいと判定する。従って、S109では、振幅異常と判断されて(S109:Yes)、処理がS111に進む。なお、S109において、光ファイバ202の先端202aの走査領域に走査領域Wが含まれている、すなわち振幅が所定の閾値以上であると判断された場合は(S109:No)、振幅正常としてS129に進み、システムの起動を完了して本ルーチン(回転軌跡確認処理)を終了する。
S111では、CPU108は、補正回数パラメータiを「0」にリセットする。ここで、補正回数パラメータiは、後述する補正処理(S113)の実行回数をカウントする変数である。次いで、処理はS113に進む。
S113では、CPU108は、判定回路122の判定結果に基づいて、光ファイバ202の先端202aの走査領域が走査領域Wを含むように補正処理を実行する。具体的には、磁気センサ227a〜227dからの出力電圧をモニタし、圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに印加される交流電圧AV1〜AV5の振幅をそれぞれ所定量調整する。図8(c)は、S113の補正処理を説明するグラフであり、図8(a)と同様、圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに対する印加電圧の時間T1〜T5の推移を示している。本実施形態では、電極223Cに異常が生じ、光ファイバ202の先端202aの走査領域が電極223C側において走査領域Wの一部を含んでいないため(図8(b))、電極223Cに隣接する電極223B、223Dに印加する交流電圧AV2、AV4の振幅が所定量増加するように調整している。具体的には、図8(c)中、「R1」及び「R2」で示すように、時間T2においてAV2の電圧を正側に増加させ、時間T4においてAV4の電圧を正側に増加させるように、走査ドライバ210の設定値を変更する。次いで、処理はS115に進む。
S115では、CPU108は、補正回数パラメータiを1だけインクリメントし、処理はS117に進む。
S117では、S107と同様に、光ファイバ202の先端202aの振幅を確認する。次いで、処理はS119に進み、S109と同様に、光ファイバ202の先端202a振幅が所定の閾値以上か否かを判断する。S119において、振幅が所定の閾値以上であると判断された場合は(S119:No)、処理はS121に進む。また、振幅が所定の閾値より小さいと判断された場合は(S119:Yes)、S125に進む。
S121では、CPU108は、振幅正常として回転軌跡の補正処理を完了し、処理はS123に進む。S123では、補正後の圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに対する印加電圧の各値をCPUメモリ110に記憶して、処理はS129に進み、システムの起動を完了する。
S125では、CPU108は、補正回数パラメータiが所定の上限値に達したか否かを判断する。圧電アクチュエータ223の電極223A〜223Eに印加できる電圧には所定の許容範囲があるため、補正回数パラメータiが所定の上限値に達したか否かを判断することにより、圧電アクチュエータ223の不具合(故障)を判断している。S125において、補正回数パラメータiが所定の上限値に達していると判断された場合(S125:Yes)、CPU108は、圧電アクチュエータ223に不具合があると判断し、モニタ300にエラー表示(異常情報出力)を行って(S127)、S129に進みシステムの起動を完了する。一方、S125において、補正回数パラメータiが所定の上限値に達していないと判断された場合(S125:No)、処理は、S113に戻る。
そして、S113からS119までの処理が繰り返され、S119において振幅が正常と判断されると(すなわち、光ファイバ202の先端202aの走査領域に走査領域Wが含まれていると判断されると)、システムの起動を完了して(S129)本ルーチン(回転軌跡確認処理)を終了する。図8(d)は、本ルーチン終了後の光ファイバ202の先端202aの回転軌跡P’を示す図である。なお、図8(d)において、P’1〜P’5は、時間T1〜T5における光ファイバ202の先端202aの位置をそれぞれ示している。
このように、回転軌跡確認処理のサブルーチンが実行されることにより、光ファイバ202の先端202aの走査領域内に画像取得に最低限必要な走査領域Wが含まれるように自動的に校正される。そして、本実施形態の走査型内視鏡システム1においては、この状態で、光ファイバ202の先端202aを渦巻状のパターンで回転させながらZ方向に移動させ、被写体を三次元走査することにより、三次元画像を取得している。
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば、本実施形態においては、5つの電極223A〜223Eを備える圧電アクチュエータ223を用いる構成として説明したが、電極を6極以上設けた圧電アクチュエータを用いる構成としてもよい。
図9(a)〜(d)は、本発明の別の実施形態として、8つの電極223A’〜223H’を備える圧電アクチュエータ223’を用いて回転軌跡の補正を行う場合における、各電極への印加電圧の推移及び光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を示す図である。なお、説明の便宜上、時間T1〜T8における光ファイバ202の先端202aの位置の図示及び説明は省略する。なお、本実施形態においては、電極223C’が破損しており、所定の電圧を印加しても所望の振幅を得られないものとして説明する。
図9(a)に示すように、各電極223A’〜223H’への印加電圧AV1’〜AV8’の位相は、AV1’から順次π/4だけ遅れている。このように位相を順次ずらした電圧を電極223A’〜223H’に印加することにより、図9(b)に示すように、光ファイバ202の先端202aが回転軌跡P’’を描く。但し、電極223C’が破損しているため、光ファイバ202の先端202aの走査領域が、電極223C’に対向する位置において、走査領域Wの一部を含まない状態となっている。
そこで、走査型内視鏡システム1の電源投入時に、CPU108が回転軌跡確認処理を行う。当該処理のフローチャートは、図7に示すものと同じであるため、図7を参照しながら説明するが、5つの電極223A〜223Eを備える圧電アクチュエータ223を使用する場合と同じ処理を行うステップの説明は省略する。
本実施形態では、S103において、CPU108は、CPUメモリ110に格納されている基準の設定値を読み込み、電極223A’〜223H’に基準の交流電圧AV1’〜AV8’がそれぞれ印加される。本実施形態では、光ファイバ202の先端202aの走査領域が、走査領域Wの一部を含まない状態となっているため、上述の通り判定回路122により電極223C’に異常が生じていると判定され、S109において振幅異常と判断される(S109:Yes)。
S113では、CPU108は、光ファイバ202の先端202aの走査領域が走査領域Wを含むように補正処理を実行する。具体的には、磁気センサ227a〜227dからの出力電圧をモニタし、圧電アクチュエータ223’の電極223A’〜223H’に印加される交流電圧AV1’〜AV8’の振幅をそれぞれ所定量調整する。本実施形態では、電極223C’に異常が生じ、光ファイバ202の先端202aの走査領域が電極223C’側において走査領域Wの一部を含んでいないため(図9(b))、図9(c)に示すように、電極223C’に隣接する電極223B’、223D’に印加する交流電圧AV2’、AV4’の振幅が所定量増加するように調整し、さらに電極223C’に対向する電極223G’に隣接する電極223F’、223H’に印加する交流電圧AV6’、AV8’の振幅が所定量増加するように調整している。具体的には、図9(c)中、「R3」及び「R4」で示すように、時間T2においてAV2’の電圧を正側に増加させ、時間T4においてAV4’の電圧を正側に増加させる。また、図9(c)中、「R5」及び「R6」で示すように、時間T2においてAV6’の電圧を負側に増加させ、時間T4においてAV8’の電圧を負側に増加させる。このように、本実施形態においては、破損している電極223C’に隣接する電極223B’、223D’、及び、これらに対向して配置されている電極223F’、223H’に印加する電圧を変更するように、走査ドライバ210の設定値を変更する。図9(d)は、本実施形態の回転軌跡確認処理が終了した後の、光ファイバ202の先端202aの回転軌跡P’’’を示す図である。
以上により、本実施形態においても、所定の電圧を印加しても所望の振幅を得ることができない電極(223C’)があり、回転軌跡(P’’)が異常となる場合でも、他の電極への印加電圧を調整することにより、所望の観察画像を取得することができるように回転軌跡を正常に戻すことができる。すなわち、光ファイバ202の先端202aの走査領域内(回転軌跡P’’’内)に画像取得に最低限必要な走査領域Wが含まれるように自動的に校正される。
また、上記の説明においては、4つの磁気センサ227a〜227dを中心軸AXを中心とした円周上に配置して、光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を追跡する構成として説明したが、光ファイバ202の先端202aの走査領域が、画像取得に最低限必要な走査領域Wを含むか否かが判ればよいため、少なくとも3つ以上の磁気センサを中心軸AXを中心とした円周上に配置した構成とすればよい。さらに、磁気センサの代わりに、例えば光ファイバ202の先端202aの回転軌跡検出用の光学的な位置センサを共焦点プローブ200の先端に取り付けて、光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を追跡する構成としてもよい。
また、上記の説明においては、電極223C’に隣接する電極223B’、223D’に加えて電極223F’、223H’に印加する電圧を変更しているが、印加する電圧を変更する電極は、必ずしも異常と判断された電極に隣接する電極と対向する電極に限らず、異常と判断された電極と対向する側に配置されている電極を対象として印加する電圧を変更する構成としても本発明の効果を得ることができる。
また、上記の説明において、回転軌跡確認処理のS103では、走査ドライバ210に基準の設定値を送信して、圧電アクチュエータ223、223’の電極223A〜223E、223A’〜223H’に基準の交流電圧AV1〜AV5、AV1’〜AV8’を印加する構成としたが、S103において、以前の回転軌跡確認処理の実行時にS123において保存された補正後の設定値をCPUメモリ110から読み出す構成としてもよい。このような構成とすれば、回転軌跡確認処理にかかる時間が短縮される。
また、上記の説明においては、走査型内視鏡システム1は、励起光を出射する共焦点プローブ220を備える構成として説明したが、この構成に限定されるものではなく、白色光を出射する通常の走査型内視鏡システムに適用することも可能である。