JP5974974B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、シリコン単結晶の低酸素濃度化や大口径結晶を容易に製造することなどを目的に、水平磁場を印加しながらCZ法でシリコン単結晶を引き上げるHMCZ法が広く知られている。
石英ルツボ104の中に原料の多結晶シリコンを充填し、これを、保温筒107で囲まれた抵抗加熱ヒーター(以下、ヒーターともいう)106により加熱・溶融してシリコン融液103とする。シリコン融液103の上方には一般的にパージチューブや輻射シールド、ヒートキャップ等と呼ばれる熱遮蔽体111が設置される。
メインチャンバー101の天井中央には開口部112を有し、これに接続したサブチャンバー113の中を通って、先端に種結晶114を保持した回転および上下動自在の引上げ軸109を設ける。
特許文献1においては、中性子照射用のHMCZ低酸素濃度シリコン単結晶に関して、不活性ガス流量と炉内圧力の変化による酸素濃度の挙動が通常CZ法とは真逆であり、不活性ガス流量を炉内圧力で除した値を比流速と定義し、これを1.0以下とすることで低酸素濃度の単結晶が得られることを示しているが、こうしたHMCZ法における特異な酸素濃度挙動の原因を解明するには至っていない。
以下に、本発明者の調査によるHMCZ法における特異な酸素濃度挙動の例を示す。なお、酸素濃度は結晶中心部におけるものである。
<ケース1>
図8にHMCZ法にて結晶回転数(SR)を変化させた際のシリコン単結晶の酸素濃度を示す。
磁場を印加しない通常のCZ法では結晶回転の増加による結晶中心部の酸素濃度の変化は無く、結晶周辺部の酸素濃度が上昇して面内均一性が改善されるというのが従来知見であるが、HMCZ法では結晶回転を増加させると、ある回転速度から結晶中心酸素濃度が上昇する現象や、成長後半部で急激に高酸素濃度化するなど成長軸方向に不安定な挙動を示した。
図9にHMCZ法にて融液直上に設置された熱遮蔽体の下端部分と融液との間隔d’(図7参照)を変化させた際に得られたシリコン単結晶の酸素濃度を示す。
前記間隔d’を小さくするほど結晶冷却を強化することができ、高速成長による生産性の向上を図ることが出来るが、間隔d’を50mm未満とした際に急激に結晶全長に亘って高酸素濃度化するという特異な現象が見られ、かつ成長軸方向に不安定な挙動を示すという、従来知見には無い現象が生じていた。
図10にHMCZ法にてメインチャンバーの炉内圧を変化させた際のシリコン単結晶の酸素濃度を示す。
ガス流速が増加する低炉内圧条件下では高酸素濃度化し、ガス流速が低下する高炉内圧条件下では低酸素濃度化するという、CZ法による従来知見とは異なる結果であった。
石英ルツボから溶解したSiOの大部分はシリコン融液の自由表面から蒸発し、炉内に導入された不活性ガスによって炉外へと排出されるが、溶解したSiOのわずかはシリコン融液の融液対流によって結晶成長界面へと運ばれ、偏析現象を伴いながら、製造するシリコン単結晶中へと取り込まれる。すなわち、結晶中の酸素濃度に影響する主な物理現象は、石英ルツボからの溶解、融液からの蒸発、融液対流、成長界面での偏析現象であり、HMCZ法による特異な酸素濃度挙動は、水平磁場による対流抑制により顕在化した現象に起因すると考えるのが妥当である。
通常のCZ法では自然対流が強いため、結晶成長界面の下方で自然対流と対向する結晶回転による融液対流を増加させても結晶中心部の酸素濃度は変化しない。しかしながら、HMCZ法では水平磁場の印加により自然対流が抑制されているため、成長界面の下方では相対的に結晶回転による融液対流が強くなっており、結晶回転を速くすることで結晶回転による高酸素濃度の融液対流が支配的となって結晶成長界面へと到達するようになり、結晶の急激な高酸素濃度化をもたらすということを示唆している。小口径の結晶では問題になりにくく、結晶回転による融液対流がより大きくなる大口径の結晶でこの現象が顕在化しやすいことも、なんら矛盾していない。
実際の操業データや総合伝熱解析ソフトによるシミュレーションより、炉内圧力の変更に伴う変化はガス流速のみであり、ヒーター電力、結晶成長界面温度勾配、融液温度分布にはほとんど影響を与えない、つまり、炉内の熱分布には影響していないことを示している。すなわちこの現象は、石英ルツボからのSiO溶解や熱分布の変化に伴う対流の変化に起因するものではなく、またその振る舞いから融液表面からのSiO蒸発に起因するものではないことは明白である。このことから、ガス流が融液対流強度に直接影響を与えているという推定が可能であり、HMCZ法では水平磁場により自然対流を抑制しているので、ガス流速が大きい条件下においては、融液表面で自然対流と対向するガス流が、自然対流の流れを抑制するように作用し、相対的に結晶回転による融液対流が支配的となることで高酸素濃度化すると考えられる。
また、<ケース2>においても同様であり、間隔d’を小さくすることで融液表面のガス流速が増加したことが原因と考えられる。
そこで、本発明のHMCZ法による製造方法のように、上記ガス整流筒および遮熱部材を配設するとともに、上記関係式を満たすように、メインチャンバー内に導入されるガスの流速vおよび前記結晶回転数Rを制御しつつシリコン単結晶を製造すれば、結晶成長軸方向において安定した酸素濃度を有する低酸素濃度のシリコン単結晶を製造することが可能である。従来では特異な酸素濃度挙動の現象が顕在化し得るような磁場強度、磁場位置、結晶径の条件であったとしても、本発明であれば上記のような高品質のシリコン単結晶を得ることが可能になる。
このようにすれば、上記ガスの流速vの制御を簡便に行うことができる。
前記ガスの流量を50〜300l/minに調整し、前記メインチャンバーの炉内圧を100〜300hPaに調整し、前記遮熱部材の最下端部と前記シリコン融液面との間隔dを10〜50mmに調整し、前記遮熱部材の最下端部と前記遮熱部材の最内径部分の最下端部の垂直方向高さの差分hを0〜150mmに調整することができる。
またガス流量を300l/min以下に調整することで、流量が高すぎることでSiO等の異物がシリコン融液表面に落下するなどして操業性が低下するのをより防ぐことができる。
一方炉内圧を300hPa以下に調整することで、SiOの排出不足による操業性の悪化をより防ぐことができる。
酸素濃度をこのような範囲内に制御すれば、成長軸方向において十分に安定した、より高品質の大口径シリコン単結晶を得ることができる。
図1に本発明のシリコン単結晶の製造方法を実施可能なシリコン単結晶製造装置の一例を示す。
シリコン単結晶製造装置15においては、メインチャンバー1のほぼ中央に、黒鉛サセプタ5に保持された石英ルツボ4が設けられており、この黒鉛サセプタ5の底部中央が、回転および上下動自在の支持軸10で下方から支持されている。
石英ルツボ4の中には原料の多結晶シリコンが充填されており、保温筒7で囲まれた抵抗加熱ヒーター(以下、ヒーターともいう)6により加熱・溶融してシリコン融液3となっている。
前述したように、遮熱部材17の形状例としては、図2のようにシリコン融液面側において内側がテーパ形状になっているものや、水平になっているものとすることができる。
また、遮熱部材17の配設位置に関しても特に限定されない。
遮熱部材17の形状や配設位置は適宜決定することができ、それによって、前述した関係式(v≦−0.12R+1.52)が満たされるように、遮熱部材の最下端部とシリコン融液面との間隔dや、遮熱部材の最下端部と遮熱部材の最内径部分の最下端部の垂直方向高さの差分hを適切に調整することが可能になっている。
石英ルツボ内に充填した多結晶シリコンをヒーター6で加熱・溶融してシリコン融液3を得る。そして、メインチャンバー1内に不活性ガス(Arなど)を導入しつつ、また磁場印加装置8によりシリコン融液3に水平磁場を印加しつつ、引上げ軸9を降下させ、種結晶14をシリコン融液3に浸漬した後、引上げ軸9及び石英ルツボ4を回転させながら種結晶14を引き上げることにより、その下に棒状のシリコン単結晶2を成長させる。
この制御について以下に詳述する。
HMCZ法に関して本発明者が従来問題となっていた結晶成長軸方向の特異な酸素濃度挙動について鋭意調査を行ったところ、育成するシリコン単結晶の結晶回転数や、メインチャンバー内に導入され、遮熱部材の最内径部分の最下端部と、シリコン融液面において前記最下端部から垂直位置にあたる部分からなる断面積Sを通過するガスの流速が大きく影響していることが分かった。
一方、狙いよりも高濃度であったり、成長軸方向においてばらつきが大きい場合を×印で示している。
図3から分かるように、上記関係式(v≦−0.12R+1.52)を満たす場合に高品質のシリコン単結晶が得られている。
本発明では上記関係式を満たすような制御のもとでシリコン単結晶を製造するので、上記のような成長軸方向に安定した酸素濃度分布を有する低酸素濃度のシリコン単結晶を得ることができる。
図1において、リング状の遮熱部材の最内径部の最下端部18における半径をrとすると、該最下端部18から垂直下のシリコン融液面の部分20までの距離はd+hであることから、最下端部18とシリコン融液面の部分20で囲まれる断面積Sは数式1により求められる。
一方、ガス流速vの制御は、例えばサブチャンバー内に導入するガス流量や、メインチャンバーの炉内圧、さらには遮熱部材の最下端部とシリコン融液面との間隔d、遮熱部材の最下端部と遮熱部材の最内径部分の最下端部の垂直方向高さの差分hのいずれか1つ以上を調整することにより行うことができる。これらを調整することで、簡便にガス流速vを制御することが可能である。
図2(A)に示す形状の遮熱部材は差分h>0とすることで内側下端部がテーパー形状となっており、図2(B)に示すh=0とした水平のものよりも断面積Sが大きく、すなわち、同じガス流量、炉内圧、間隔dであっても図2(A)の方が結晶近傍のシリコン融液面のガス流速を抑制することができている。
図4にhのみを変化させた場合のシリコン単結晶の酸素濃度を示す。(A)はh=60mmとした場合のグラフ、(B)はh=0mmとした場合のグラフである。(A)では低酸素濃度で軸方向に安定した酸素濃度のシリコン単結晶が得られたのに対し、(B)では高酸素濃度で軸方向に不安定な酸素濃度となった。この結果は、最も断面積が小さくなる(すなわちシリコン融液面上で最もガス流速が大きくなる)結晶近傍のシリコン融液面のガス流速が酸素濃度の安定性に大きく影響していることを示しており、断面積Sを遮熱部材の最内径部分の最下端部に規定することの妥当性を証明するものである。
ガス流量を50l/min以上に調整することで、SiOの排出不足による操業性の悪化をより防ぐことができる。また、結晶の冷却効率の低下を防ぎ、結晶の引上速度が低下するのをより防ぐことができる。
またガス流量を300l/min以下に調整することで、流量が高すぎることでSiO等の異物がシリコン融液表面に落下するなどして操業性が低下するのをより防ぐことができる。
炉内圧を100hPa以上に調整することで、ガス流速の増加により酸素濃度の制御が不安定になるのをより防ぐことができる。
一方炉内圧を300hPa以下に調整することで、SiOの排出不足による操業性の悪化をより防ぐことができる。
このような比較的狭い範囲とすることで、結晶冷却効率が上昇し、引上速度を上げることができ、生産性を向上させることができる。
テーパー形状の方が結晶近傍のシリコン融液面上のガス流速を低下させることができ、結晶中の酸素濃度を安定化させやすいが、テーパー面による輻射熱の反射により結晶が温められ、結晶冷却効率を低下に伴う生産性の低下を招くためである。
印加する水平磁場の条件は特に限定されないものの、このように制御することで、効率的な融液対流の抑制を図ることができ、より確実に低酸素濃度のシリコン単結晶を製造することができる。このような低酸素濃度化(例えば13ppma(JEIDA)以下)を図る場合、従来では酸素濃度が不安定化したが、本発明では上記関係式を満たしながらシリコン単結晶を製造するので、従来と異なり、成長軸方向における酸素濃度の安定化も同時に図ることができる。
また、酸素濃度の安定性の基準は特に限定されないが、例えば、図3の場合のように、コーン部から20cm以降(シリコン単結晶長さ20cm以降)の部位において、狙い値に対して±0.8ppma(JEIDA)以内におさまるのを基準とすることができる。このような基準を達成することができれば、酸素濃度分布に関して十分に高品質なものといえる。
(実施例)
図1に示した装置を用い、本発明によりシリコン単結晶を製造した。
380kgの多結晶シリコンを直径81cmの石英ルツボにチャージし、多結晶シリコンを溶解した。磁場印加装置によって水平磁場を中心磁場強度が0.2〜0.4T(2000〜4000G)となるように適宜印加し、シリコン融液の熟成工程を経て、<001>面を有する種結晶をシリコン融液に浸した。このときのメインチャンバーに導入するAr流量は200l/min、メインチャンバー内の圧力は排気管に抵抗を設けることにより50hPaに調整した。そして、ネッキング後に所望の直径300mmまで拡径させた。その後、製品部である定径の比抵抗が10Ω・cmに調整されたボロンドープの直径300mmのシリコン単結晶を育成した。
また、例として、図3において長丸で囲った部分の2つの○印のケースについて、成長軸方向における酸素濃度分布を図5に示す。図5に示すように、酸素濃度は狙い値(12ppma(JEIDA))に沿っており、成長軸方向において安定して分布していることが分かる。
図7に示した装置を用い、従来法でシリコン単結晶を製造した。
コーン部までは実施例と同様の条件とし、製品部の成長条件は実施例とは異なるようにしてシリコン単結晶の製造を行った。
具体的には、間隔dの値を30mmとなるように遮熱部材を配設し、炉内圧力(80〜120hPa)、ガス流量(100〜250l/min)、差分h(0〜60mm)及び結晶回転数(6〜10rpm)を実施例とは異なる成長条件で、7本のシリコン単結晶を育成した。
また、例として、図3において長丸で囲った部分の2つの×印のケースについて、成長軸方向における酸素濃度分布を図5に示す。図5に示すように、酸素濃度は狙い値(12ppma(JEIDA))よりも比較的高濃度であったり、成長軸方向において、中盤〜後半部に急激に高濃度になってしまい、安定性を欠いていた。
4…石英ルツボ、 5…黒鉛サセプタ、 6…抵抗加熱ヒーター、
7…保温筒、 8…磁場印加装置、 9…引上げ軸、
10…支持軸、 11…熱遮蔽体、 12…開口部、 13…サブチャンバー、
14…種結晶、 15…シリコン単結晶製造装置、 16…ガス整流筒、
17…遮熱部材、 18…遮熱部材の最内径部分の最下端部、
19…シリコン融液面、
20…遮熱部材の最内径部分の最下端部から垂直下のシリコン融液面の部分。
Claims (4)
- メインチャンバー内に石英ルツボを配設し、該石英ルツボを挟んで対向配備した磁場印加装置によって、石英ルツボ内に収容したシリコン融液に水平磁場を印加しつつ、シリコン融液からシリコン単結晶を引上げて製造するシリコン単結晶の製造方法であって、
前記引上げるシリコン単結晶を直径が300mm以上のものとし、
前記メインチャンバー内に導入されるガスの流れを整えるためのガス整流筒を前記引上げるシリコン単結晶を囲繞するようにシリコン融液面の上方に配設するとともに、該ガス整流筒のシリコン融液面側に遮熱部材を配設し、かつ、
前記遮熱部材の最内径部分の最下端部と、前記シリコン融液面において前記最下端部から垂直位置にあたる部分からなる断面積Sを通過するガスの流速v(m/s)と、前記引上げるシリコン単結晶の結晶回転数R(rpm)とが、v≦−0.12R+1.52の関係式を満たすように、前記ガスの流速vおよび前記結晶回転数Rを制御しつつシリコン単結晶を製造することで、直胴部において、コーン部から20cm以降の部位の酸素濃度を狙い値に対して±0.8ppma(JEIDA)以内に制御することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 前記遮熱部材の最内径部分の最下端部と、前記シリコン融液面において前記最下端部から垂直位置にあたる部分からなる断面積Sを通過するガスの流速vの制御を、前記ガスの流量、前記メインチャンバーの炉内圧、前記遮熱部材の最下端部と前記シリコン融液面との間隔d、前記遮熱部材の最下端部と前記遮熱部材の最内径部分の最下端部の垂直方向高さの差分hのいずれか1つ以上を調整することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
- 前記遮熱部材の最内径部分の最下端部と、前記シリコン融液面において前記最下端部から垂直位置にあたる部分からなる断面積Sを通過するガスの流速vを制御するとき、
前記ガスの流量を50〜300l/minに調整し、前記メインチャンバーの炉内圧を100〜300hPaに調整し、前記遮熱部材の最下端部と前記シリコン融液面との間隔dを10〜50mmに調整し、前記遮熱部材の最下端部と前記遮熱部材の最内径部分の最下端部の垂直方向高さの差分hを0〜150mmに調整することを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。 - 前記印加する水平磁場の中心磁場強度を2000G以上に制御し、かつ、
前記シリコン融液の深さをLとしたとき、前記シリコン単結晶の引上げを開始するときの水平磁場中心の垂直方向における位置を、シリコン融液面から、L/4から3L/4までの深さに制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
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