以下に、図面を参照しながら開示された発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1において、電動車両システム1は、電動車両に搭載されている。電動車両は、蓄電池と電動機とを備える電気的な駆動システムを含む車両である。電動車両は、道路走行車両、船舶、または航空機である。電動車両は、電気的な駆動システムだけを備えるいわゆる電気自動車によって提供することができる。電動車両は、電気的な駆動システムに加えて、燃料タンクと内燃機関と備える内燃機関システムを備えるハイブリッド車両によって提供されてもよい。
電動車両システム1は、高圧電池(HVBT)2を備える。高圧電池2は二次電池である。高圧電池2は、リチウムイオン電池などによって提供することができる。高圧電池2は、数百ボルトの比較的高い電圧を供給する。高圧電池2は、広域電力網から、定置型の小規模発電施設から、または車両に搭載された発電機から充電される。電動車両システム1は、電池制御装置(BTCU)3を備える。電池制御装置3は、高圧電池2の充放電を監視し、その充放電を制御する。
電動車両システム1は、走行用の電動機(DRMT)4を備える。電動機4は、電動車両の駆動輪を駆動する。高圧電池2は、主として電動機4に給電するために設計されている。
電動車両システム1は、電動車両に搭載された高圧機器(HVDV)5を備える。高圧機器5は、電動機4を含まない。高圧機器5は、高圧電池2からの給電に適合した定格電圧をもつ機器である。
電動車両システム1は、コンバータ(CONV)6と低圧電池(LVBT)7とを備える。コンバータ6は、高圧電池2から供給される電力を変換し、低圧電池7に供給する。コンバータ6は、低圧電池7を充電する。コンバータ6は、高圧機器5のひとつでもある。低圧電池7は、比較的低い電圧の二次電池である。低圧電池7は、十ボルト程度、例えば12ボルト、または24ボルトといった電圧を供給する。低圧電池7は、コンバータ8を経由して高圧電池2から充電される。
高圧電池2の残量が十分に多い場合、コンバータ6は、低圧電池7の残量を目標レベルに維持するように低圧電池7を充電する。高圧電池2が電動機4を駆動できない程度に放電した時であっても、低圧電池7は複数の負荷に給電し、それらを作動させることができるように低圧電池7が充電される。高圧電池2の残量が少ないときには、コンバータ6は低圧電池7への充電を停止してもよい。これにより、高圧電池2の残量の過剰な低下が抑制される。コンバータ6が低圧電池7への充電を停止しても、所定時間の間は、低圧電池7は、それに接続された複数の負荷へ給電を継続することができる。例えば、低圧電池7の容量は、高圧電池2の残量が少ないと判定されてから、高圧電池2が充電されるまでの低蓄電量期間にわたって負荷への給電を継続することができるように設定することができる。
電動車両システム1は、複数の低圧機器(LVDV)8を備える。複数の低圧機器8は、高圧電池2の電圧より低い電圧で作動する。複数の低圧機器8は、低圧電池7から供給される電力によって作動する。複数の低圧機器8は、後述する空調装置20のほとんどの機器を含む。唯一、空調装置20の電動圧縮機41だけが低圧機器8に含まれない。
電動車両システム1は、車両のウインドシールド9を備えることができる。ウインドシールド9は、車両の運転者の前方に設置されている。ウインドシールド9は、フロントガラスとも呼ばれる。ウインドシールド9は、窓ガラス9とも呼ばれる。窓ガラス9は、曇り抑制制御の対象である。
電動車両システム1は、窓ガラス9に設けられた窓ヒータ(WDSH)10を備える。窓ヒータ10は、窓ガラス9に設けられ、窓ガラス9を直接的に加熱することができる電気的なヒータ装置である。窓ヒータ10は、窓ガラス9に敷設された電熱線、または窓ガラス9に貼り付けられた透明発熱体によって提供することができる。窓ヒータ10は、低圧機器8のひとつであって、低圧電池7から給電される。
窓ヒータ10は、電動圧縮機が停止しているときにも窓ガラス9に対する加熱機能を発揮できる要素である。窓ヒータ10は、窓ガラス9を直接的に加熱できる唯一の加熱要素である。窓ヒータ10は、窓ガラス9の温度を直接的に上昇させることにより、直接的に窓ガラス9の曇りを抑制する。窓ヒータ10は、電力によって曇りを抑制する電力防曇機器のひとつである。
電動車両システム1は、車両用の空調装置(AIRC)20を備える。窓ヒータ10は、空調装置20のひとつの構成要素として考えることができる。空調装置20は、空調ユニット(HVAC)21を備える。空調ユニット21は、HVAC(Heating Ventilating and Air-Conditioning)21とも呼ばれる。HVAC21は、電動車両の室内の暖房、換気、および冷房のための複数の要素22−31を備える。HVAC21は、室内に向けて空気を流すことができるダクトを提供する。
内外気切換装置22は、HVAC21に導入する空気を選択する。内外気切換装置22は、内気(RCL)、または外気(FRS)のいずれかを選択することができる。内外気切換装置22は、内気と外気との割合を連続的にまたは段階的に調節してもよい。内外気切換装置22は、内気通路と、外気通路と、切換えダンパ機構とによって提供することができる。
内気は、室内から循環的に導入された空気である。外気は、室外から新たに導入された空気である。室内に暖房が求められるとき、外気は内気より低温であることが多い。このため、外気は内気より低湿度であることが多い。また、室内に居る利用者に起因して、外気はないきより低湿度であることが多い。よって、外気は、HVAC21からの吹出空気の湿度を低下させるために、または室内の湿度を低下させるために利用することができる。
内外気切換装置22は、室外から外気を導入する外気モードと、内気を循環する内気モードとを切換える。内外気切換装置22は、外気モードを選択しているときに室内の湿度を低下させる。内外気切換装置22は、電動圧縮機が停止しているときにも室内の湿度を低下させる湿度低下装置のひとつである。内外気切換装置22は、室内の湿度を低下させることにより、間接的に窓ガラス9の曇りを抑制する。内外気切換装置22は、曇り抑制装置のひとつである。
送風機23は、HVAC21内において、室内に向かう空気流を発生させる。送風機23は、ブロワファンとも呼ばれる。
冷却用熱交換器24は、後述する冷凍サイクル40の一部である。冷却用熱交換器24は、冷却HE24とも呼ばれる。冷却HE24は、冷凍サイクル40の冷却用の室内熱交換器である。冷却HE24は、冷凍サイクル40の蒸発器によって提供される。冷却HE24は、冷媒によってHVAC21内を流れる空気を冷却する。冷却HE24には、冷凍サイクル40を流れる低温低圧の冷媒が流れる。冷却HE24は、HVAC21内を流れる空気の全量を冷却するように配置されている。
冷却HE24は、高圧機器5である電動圧縮機41が作動するときにだけ、空気を冷却することができる。よって、冷却HE24は、電動圧縮機41が停止しているときに空気を冷却する機能を失う空気冷却要素である。冷却HE24は、冷凍サイクル40が冷却運転されるときにだけ冷却機能を発揮する。冷却HE24は、空調装置20における唯一の空気冷却要素である。
エアミックスダンパ25は、HVAC21内において温風と冷風との割合を調節することにより、吹出空気の温度を調節する。エアミックスダンパ25は、後述する空気加熱要素を通過する空気量と、空気加熱要素をバイパスする空気量との割合を調節する。エアミックスダンパ25は、吹出空気の温度を調節する温度調節部材を提供する。
加熱用熱交換器26は、後述する冷凍サイクル40の一部である。加熱用熱交換器26は、加熱HE26とも呼ばれる。加熱HE26は、冷凍サイクル40の加熱用の室内熱交換器である。加熱HE26は、冷凍サイクル40の凝縮器によって提供される。加熱HE26は、冷媒によってHVAC21内を流れる空気を加熱する。加熱HE26には、高温高圧の冷媒が流れる。加熱HE26は、HVAC21内を流れる空気の少なくとも一部を加熱するように配置されている。加熱HE26は、空気加熱要素のひとつである。
加熱HE26は、高圧機器5である電動圧縮機41が作動するときにだけ、空気を加熱することができる。よって、加熱HE26は、電動圧縮機41が停止しているときに窓ガラス9に対する加熱機能を失う空気加熱要素である。
電気ヒータ27は、HVAC21内を流れ室内に吹出される空気を電力によって加熱する。電気ヒータ27は、HVAC21内を流れる空気の少なくとも一部を加熱するように配置されている。電気ヒータ27は、電気的な発熱素子によって提供される。電気ヒータは、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータと呼ばれる発熱素子によって提供される。電気ヒータ27は、低圧機器8のひとつである。電気ヒータ27は、低圧電池7から給電される。
電気ヒータ27は、電動車両の室内に吹出される空気を加熱し、窓ガラス9を間接的に加熱する空気加熱要素のひとつである。電気ヒータ27は、電動圧縮機41が停止しているときにも窓ガラス9に対する加熱機能を発揮できる空気加熱要素である。電気ヒータ27は、窓ガラス9を間接的に加熱できる加熱要素のひとつである。電気ヒータ27は、窓ガラス9の温度を上昇させることにより、間接的に窓ガラス9の曇りを抑制する。電気ヒータ27は、電力によって曇りを抑制する電力防曇機器のひとつである。
空調装置20は、電気ヒータ27に追加して、または電気ヒータ27の代わりに温媒体熱交換器28を備えることができる。温媒体熱交換器28は、車両に搭載された機器(HS)29を冷却するための冷却媒体によってHVAC21内を流れ室内に吹出される空気を加熱する。温媒体熱交換器28は、HVAC21内を流れる空気の少なくとも一部を加熱するように配置されている。温媒体熱交換器28は、機器29を冷却するための冷却システムの一部である。冷却媒体は、水などの熱輸送流体である。機器29は、発熱する機器であって、例えば、車両に搭載された電気機器、インバータ回路、または内燃機関によって提供される。温媒体熱交換器28は、媒体が循環しているとき、機器29から供給される熱によって空気を加熱することができる。
温媒体熱交換器28を含む冷却システムは、冷却媒体を加熱するための電気的な媒体ヒータ30を備える。媒体ヒータ30は、温媒体熱交換器28を通して、電力によってHVAC21内を流れる空気を加熱する。媒体ヒータ30は、HVAC21内を流れる空気の少なくとも一部を、間接的に加熱するように配置されている。媒体ヒータ30は、電気的な発熱素子によって提供される。媒体ヒータ30は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータと呼ばれる発熱素子によって提供される。媒体ヒータ30は、高圧機器5のひとつである。媒体ヒータ30は、高圧電池2から給電される。
媒体ヒータ30は、媒体と温媒体熱交換器28とを介して、空気を加熱することができる。よって、媒体ヒータ30は、温媒体熱交換器28とともに作動状態におかれることによって、空気を加熱する。よって、温媒体熱交換器28並びに媒体ヒータ30を含む組合せ装置は、空気加熱装置のひとつを提供する。媒体ヒータ30は、電動圧縮機41が停止しているときにも窓ガラス9に対する加熱機能を発揮できる空気加熱要素である。媒体ヒータ30は、窓ガラス9を間接的に加熱できる加熱要素のひとつである。媒体ヒータ30は、窓ガラス9の温度を上昇させることにより、間接的に窓ガラス9の曇りを抑制する。媒体ヒータ30は、電力によって曇りを抑制する電力防曇機器のひとつである。
吹出モード切換装置31は、HVAC21から室内への空気の吹出モードを切換える。吹出モード切換装置31は、複数の吹出口を選択的に開閉することにより、複数の吹出モードを提供する。吹出モード切換装置31は、複数の空気通路と、それら空気通路を開閉する複数のダンパ装置とを備えることができる。例えば、吹出モード切換装置31は、デフロスタ吹出口(DEF)、フェイス吹出口(FC)、およびフット吹出口(FT)を提供する。吹出モード切換装置31は、これら複数の吹出口を組み合わせて、複数の吹出モードを提供する。デフロスタ吹出モードにおいては、HVAC21内を流れた空気がデフロスタ吹出口から主として窓ガラス9に向けて吹出される。デフロスタ吹出モードは、DEFモードとも呼ばれる。フェイス吹出モードにおいては、HVAC21内を流れた空気がフェイス吹出口から主として乗員の上半身に向けて吹出される。フット吹出モードにおいては、HVAC21内を流れた空気がフット吹出口から主として乗員の足元に向けて吹出される。吹出モード切換装置31は、デフロスタ吹出口とフット吹出口との両方から空気を吹き出すフット・デフロスタ併用モードを提供することができる。
空調装置20は、冷凍サイクル(CYCL)40を備える。冷却HE24は、冷凍サイクル40の冷却用の室内熱交換器を提供する。加熱HE26は、冷凍サイクル40の加熱用の室内熱交換器を提供する。冷凍サイクル40は、少なくとも空気の冷却を可能とするために、少なくとも冷却HE24を備える。この実施形態の冷凍サイクル40は、空気の冷却および空気の加熱の両方が可能なヒートポンプサイクルである。冷凍サイクル40は、ヒートポンプサイクルとして機能するとき、窓ガラス9に対する加熱機能を発揮できる空気加熱要素である。冷凍サイクル40は、窓ガラス9を間接的に加熱できる加熱要素のひとつである。冷凍サイクル40は、窓ガラス9の温度を上昇させることにより、間接的に窓ガラス9の曇りを抑制する。冷凍サイクル40は、電力によって曇りを抑制する機器のひとつである。
冷凍サイクル40は、ヒートポンプサイクルとして機能するとき、比較的少ない消費電力によって窓ガラス9の曇りを抑制することができる。ヒートポンプサイクルは、室外の空気の熱を汲み上げて室内の空気を加熱するからである。冷凍サイクル40は、電動車両システム1において最も効率的な曇り抑制装置である。他の電力を利用する曇り抑制装置は、冷凍サイクル40より消費電力が大きい。例えば、窓ヒータ10の消費電力は、冷凍サイクル40の消費電力より大きい。
冷凍サイクル40は、電動圧縮機41を備える。電動圧縮機41は、圧縮機42と、電動機(CPMT)43とを備える。圧縮機42の回転軸は、電動機43の回転軸に連結されている。電動機43は、圧縮機42を駆動する。圧縮機42は、電動機43によって駆動されることにより、冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を吐出する。電動機43は、高圧機器5のひとつである。電動機43は、高圧電池2から高電圧を給電されて回転する。
圧縮機42の吸入側には気液分離器44が設けられている。圧縮機42は、気液分離器44から冷媒を吸入する。圧縮機42の吐出側には、加熱HE26が設けられている。圧縮機42は、高温高圧の冷媒を加熱HE26に供給する。加熱HE26は、冷凍サイクル40における放熱器、または凝縮器として機能する。
冷凍サイクル40は、室外熱交換器45を備える。室外熱交換器45は、室外HE45と呼ばれる。室外HE45は、電動車両の室外に設置され、外気と熱交換可能に構成されている。室外HE45は、蒸発器、または放熱器として機能することができる。室外HE45は、加熱HE26と冷却HE24との間に設けられている。加熱HE26を流れた冷媒は、室外HE45に供給される。室外HE45を流れた冷媒は、冷却HE24に供給可能である。
加熱HE26と室外HE45との間には、減圧器46と開閉弁47とを含む並列回路が配置されている。並列回路は、冷凍サイクル40における切換装置の一部を提供する。減圧器46は、膨張弁またはキャピラリチューブによって提供することができる。開閉弁47は、電磁アクチュエータを備える電磁弁である。加熱用熱交換機26を流れた冷媒は、減圧器46または開閉弁47を通して室外HE45へ流入する。開閉弁47が開かれているとき、冷媒は、開閉弁47を流れる。よって、加熱HE26を流れた冷媒は、高温高圧のまま、室外HE45に流れる。開閉弁47が開かれて入るとき、室外HE45は、放熱器として機能する。
室外HE45と冷却HE24との間には、減圧器48と切換弁49とを含む直列回路が配置されている。直列回路は、冷凍サイクル40における切換装置の一部を提供する。減圧器48は、膨張弁またはキャピラリチューブによって提供することができる。切換弁49は、電磁アクチュエータを備える電磁弁である。切換弁49は、3ポート切換弁である。切換弁49は、室外HE45に連通する共通ポートと、減圧器48に連通する第1ポートと、気液分離器44に連通する第2ポートとを有する。第2ポートは、室外HE45を流れた冷媒が、減圧器48および冷却HE24を経由することなく、気液分離器44に流れることができるバイパス通路を提供する。切換弁49は、共通ポートと第1ポートとの間の連通状態と、共通ポートと第2ポートとの間の連通状態とを選択的に提供する。切換弁49が共通ポートと第1ポートとを連通するとき、冷媒は、減圧器48と冷却HE24とを流れる。よって、室外HE45を流れた冷媒は、減圧器48によって減圧され、冷却HE24を流れる。このとき、低温低圧の冷媒は、冷却HE24において蒸発し、HVAC21内の空気を冷却する。よって、切換弁49が減圧器48に冷媒を流すとき、冷却HE24は蒸発器として機能する。切換弁49が共通ポートと第2ポートとを連通するとき、冷媒は冷却HE24をバイパスして流れる。よって、室外HE45を流れた冷媒は、そのまま気液分離器44を経由して、圧縮機42に吸入される。このとき、加熱HE26だけが機能する。
開閉弁47および切換弁49は連動して制御される。開閉弁47が開くとき、切換弁49は、減圧器49と冷却HE24とに冷媒を流す。このとき、冷却HE24は蒸発器として機能することによってHVAC21内を流れる空気を冷却し、加熱HE26は放熱器として機能することによってHVAC21内を流れる空気を加熱する。HVAC冷媒を開閉弁47が閉じるとき、切換弁49は、減圧器49と冷却HE24とをバイパスして冷媒を流す。このとき、冷却HE24は無効化され、加熱HE26は放熱器として機能することによってHVAC21内を流れる空気を加熱する。
空調装置20は、空調のための制御装置(ACCU)60を備える。制御装置60は、ECU60とも呼ばれる。ECU60は、空調装置20を制御するための制御システムを構成する。ECU60は、複数のセンサを含む複数の入力装置から信号を入力し、それら信号と予め設定された制御プログラムとに基づいて複数のアクチュエータを制御する。
例えば、ECU60は、室内の温度制御に関連する複数のアクチュエータを制御する。ECU60は、室内の温度である室温Trが目標温度Tsetに一致するように、エアミックスダンパ25、および送風機23を制御することができる。また、ECU60は、電池制御装置3によって許容された可用電力量Pcmの範囲内で、電動圧縮機41を運転することができる。さらに、ECU60は、複数の弁47、49を制御することによって、冷却HE24および加熱HE26を所定の温度状態に制御することができる。さらに、ECU60は、窓ガラス9の曇りの抑制に直接的に、または間接的に関与できる複数のアクチュエータを制御する。
空調装置20は、操作パネル(PANL)61を備える。操作パネル61は、空調装置20を操作するための複数のスイッチと、空調装置20の作動状態を示す表示装置とを備える。よって、操作パネル61は、入力装置のひとつであるとともに、制御システムの出力装置のひとつでもある。複数のスイッチは、目標温度を設定するための設定器、内気または外気を選択する内外気スイッチ、風量を設定する風量スイッチ、冷房または暖房を選択するエアコンスイッチ、および吹出モードを選択する吹出モードスイッチを含むことができる。吹出モードスイッチは、DEFモードを選択するためのDEFスイッチを含むことができる。利用者は、操作パネル61を操作することにより、DEFモードを要求することができる。さらに、複数のスイッチには、ECU60によって空調装置20を自動制御するオートモードを要求するためのAUTOスイッチを含むことができる。
空調装置20は、複数のセンサを備える。複数のセンサは、窓ガラス9の内側の表面における相対湿度RHWを検出する結露センサ(FGSN)62を含む。結露センサ62は、窓ガラス9の曇りを検出するセンサを提供する。結露センサ62の出力信号は、窓ガラス9の内側表面温度における相対湿度RHWを示す。よって、結露センサ62が出力する相対湿度RHWが100%を上回ると、窓ガラス9に曇りが生じる可能性があるといえる。一方、結露センサ62が出力する相対湿度RHWが100%を下回る場合、窓ガラス9に曇りが生じる可能性はないと判定できる。また、結露センサ62が出力する相対湿度RHWが100%を大幅に上回る場合、窓ガラス9に曇りが生じる可能性が高いと判定できる。
ECU60は、例えば、室温Trを検出する室温センサ、目標温度Tsetを設定する設定器、および外気温度Tamを検出する外気温度センサから信号を入力する。ECU60は、日射量を検出する日射センサ、および冷却HE24の熱交換用フィンの表面温度を検出するセンサから信号を入力することができる。ECU60は、冷凍サイクル40の現在の運転状態、すなわち冷房運転か暖房運転かを示す信号を入力することができる。ECU60は、冷凍サイクル40の各部における冷媒圧力、および/または冷媒温度を検出する複数のセンサから信号を入力することができる。例えば、冷凍サイクル40の高圧冷媒の圧力を検出するセンサ、および低圧冷媒の圧力を検出するセンサから信号を入力することができる。
さらに、ECU60は、電動圧縮機41の現在の消費電力量(VA)を示す信号を内部的に、または外部から取得することができる。さらに、ECU60は、電動圧縮機41の現在の出力指示値(IVOout)を示す信号を内部的に、または外部から取得することができる。さらに、ECU60は、電動圧縮機41において利用可能な電力量の上限を示す可用電力量Pcmを電池制御装置3から取得することができる。さらに、ECU60は、高圧電池2に充電されている電力の残量Brmを電池制御装置3から取得することができる。
電池制御装置3および空調のための制御装置60は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
電池制御装置3は、高圧電池2に充電されている電力量の残量Brmを示す信号を出力する。さらに、電池制御装置3は、高圧電池2から給電される複数の機器に許容された可用電力量を示す信号を出力する。例えば、電池制御装置3は、空調装置20の電動圧縮機41が利用可能な可用電力量Pcmを示す信号を出力する。
ECU60は、曇り判定部(FOGDT)63を備える。曇り判定部63は、窓ガラス9に曇りが発生する可能性の高さが、予め設定された複数の段階のいずれに属するのかを判定する。窓ガラス9に曇りが発生する可能性の高さは、曇りの可能性と呼ぶことができる。曇り判定部63は、防曇制御が不要な状態であるか否かを判定する第1の判定部を提供する。曇り判定部63は、低可曇状態であるか否かを判定する第2の判定部を提供する。低可曇状態は、曇りの可能性がある状態である。曇り判定部63は、高可曇状態であるか否かを判定する第3の判定部を提供する。高可曇状態は、曇りの可能性が低可曇状態より高い状態である。
ECU60は、サイクル防曇部(RCY−ANTIFG)64を備える。サイクル防曇部64は、冷凍サイクル40を作動させることにより曇りを抑制する制御を実行する。サイクル防曇部64は、曇り判定部63の判定結果に応答して冷凍サイクル40を作動させる。
サイクル防曇部64は、曇り判定部63が低可曇状態を判定するときに冷凍サイクル40を作動させる。サイクル防曇部64は、冷凍サイクル40をヒートポンプサイクルとして作動させる。これにより、暖房時においても、曇りの抑制が可能となる。サイクル防曇部64は、ヒートポンプ運転により、窓ガラス9を間接的に加熱する。
サイクル防曇部64は、空調装置20がオートモードにあるとき、室温を目標温度にフィードバック制御するための室温フィードバックを実行するように冷凍サイクル40を運転する。
サイクル防曇部64は、空調装置20がDEFモードであるとき、加熱HE26による空気加熱の目標温度TAVを最高温度に固定制御する。DEFモードにおいては、空調装置20は曇りを抑制するために固定的に制御される。DEFモードにおいては、吹出モード切換装置31および内外気切換装置22は所定の状態に固定的に制御される。
ECU60は、電力防曇部(ELC−ANTIFG)65を備える。電力防曇部65は、冷凍サイクル40を作動させることにより窓ガラス9の曇りを抑制する制御を実行する。電力防曇部65は、曇り判定部63の判定結果に応答して冷凍サイクル40以外の電力防曇機器を作動させる。電力防曇部65は、曇りを抑制するために消費される消費電力が、冷凍サイクル40よりも大きい電力防曇機器を作動させる。電力防曇部65は、ヒートポンプ運転に加えて、さらに他の電力防曇機器を作動させる。
電力防曇部65は、曇り判定部63が高可曇状態を判定するときに窓ヒータ10を作動させる。窓ヒータ10が曇りを抑制するために消費する電力は、冷凍サイクル40が曇りを抑制するために消費する電力より多い。窓ヒータ10は、曇りの抑制に関して、冷凍サイクル40よりも高い効果を発揮する。言い換えると、冷凍サイクル40では曇りを抑制することができないほどに、曇りが発生しやすい状態においても、窓ヒータ10は、曇りを抑制することができる。
図2は、この実施形態の作動特性を示すグラフである。図において、横軸は、曇りの可能性を示す。この実施形態では、曇りの可能性は、相対湿度RHWによって検出され、示される。図中において、(a)はオートモードにおける窓ヒータ10の作動状態(ON/OFF)とヒートポンプ運転の作動状態(ON/OFF)とを示す。(b)はDEFモードにおける窓ヒータ10の作動状態とヒートポンプサイクルの運転状態とを示す。図示されるように、窓ヒータ10の作動状態とヒートポンプサイクルの運転状態とは、相対湿度RHWに応じて作動状態(ON)と停止状態(OFF)とに切替えられている。それらの切替点には、ヒステリシス特性が設定されている。
曇り判定部63は、曇りの可能性が、予め設定された第1範囲R1、第1範囲R1より曇りの可能性が高い第2範囲R2、および第2範囲R2より曇りの可能性が高い第3範囲R3のいずれに属するかを判定する。第1範囲R1は、曇りが発生する可能性が低い状態に対応する。第1範囲R1は、防曇制御が不要な状態に対応する。第2範囲R2は、曇りが発生する可能性があるが、その可能性が比較的低い低可曇状態に対応する。第3範囲R3は、第2範囲R2より、窓ガラス9が曇りやすい状態に対応する。第3範囲R3は、曇りが発生する可能性があり、しかもその可能性が比較的高い高可曇状態に対応する。
曇り判定部63は、曇りの可能性(RHW)が、第1閾値RHL(RHLa、RHLd)を上回るか否かを判定する。さらに、曇り判定部63は、曇りの可能性が、第2閾値RHH(RHHa、RHHd)を上回るか否かを判定する。第2閾値RHH(RHHa、RHHd)は、第1閾値RHL(RHLa、RHLd)よりも窓ガラス9が曇りやすい状態に対応する。
第1閾値RHLを下回る範囲(RHW<RHL)が、第1範囲R1である。第1閾値RHLを上回り、第2閾値RHHを下回る範囲(RHL<RHW<RHH)が、第2範囲R2である。第2閾値RHHを上回る範囲(RHH<RHW)が、第3範囲R3である。第1範囲R1は、曇りの可能性の下限値までとすることができる。第3範囲R3は、曇りの可能性の上限値までとすることができる。第1閾値RHLは、第1範囲R1または第2範囲R2の一部とすることができる。第2閾値RHHは、第2範囲R2または第3範囲R3の一部とすることができる。
第1閾値RHLには、空調装置20がオートモードにあるときと、DEFモードにあるときとで異なる値が設定される。ECU60は、空調装置20がDEFモードにあるときは、空調装置20がオートモードにあるときより曇りを発生しにくくするように、第1閾値RHLを調節する。
第2閾値RHHには、空調装置20がオートモードにあるときと、DEFモードにあるときとで異なる値が設定される。ECU60は、空調装置20がDEFモードにあるときは、空調装置20がオートモードにあるときより曇りを発生しにくくするように、第2閾値RHHを調節する。
空調装置20がオートモードにあるとき、第1閾値RHLには、第1オート閾値RHLaが設定される。空調装置20がオートモードにあるとき、第2閾値RHHには、第2オート閾値RHHaが設定される。第2オート閾値RHHaは、第1オート閾値RHLaより曇りやすい状態に対応している。
空調装置20がDEFモードにあるとき、第1閾値RHLには、第1デフロスタ閾値RHLdが設定される。空調装置20がDEFモードにあるとき、第2閾値RHHには、第2デフロスタ閾値RHHdが設定される。第2デフロスタ閾値RHHdは、第1デフロスタ閾値RHLdより曇りやすい状態に対応している。
第1オート閾値RHLaは、第1デフロスタ閾値RHLdより曇りやすい状態に対応している。DEFモードにおいては、曇りの抑制を確実に図るためである。第2オート閾値RHHaは、第2デフロスタ閾値RHHdより曇りやすい状態に対応している。DEFモードにおいては、曇りの抑制を確実に図るためである。よって、この実施形態では、RHLd<RHLa、かつ、RHHd<RHHaである。この構成に代えて、RHLd<RHLaのみが満たされてもよい。また、RHHd<RHHaのみが満たされてもよい。
曇り判定部63は、第1範囲R1と第2範囲R2との間の第1閾値(RHL)、および第2範囲R2と第3範囲R3との間の第2閾値(RHH)を含む複数の閾値に基づいて判定を実行している。少なくともひとつの閾値は、オートモードが要求されるとき、DEFモードが要求されるときより、曇りの可能性が高い側にずれて設定されている。
曇り判定部63においてRHLa<RHW、または、RHLd<RHWが判定されるとき、サイクル防曇部64は、窓ヒータ10を作動させることなく、冷凍サイクル40を作動させる。曇り判定部63においてRHHa<RHW、または、RHHd<RHWが判定されるとき、サイクル防曇部64は、冷凍サイクル40に加えて、窓ヒータ10を作動させる。
オートモードにおいて、相対湿度RHWが第1オート閾値RHLaを下回る場合、窓ヒータ10はOFF状態に維持され、ヒートポンプ運転は防曇制御ではOFF状態に維持される。この場合でも、ヒートポンプ運転は室温を制御、すなわち暖房のためにON状態に切換えられる場合がある。相対湿度RHWが徐々に上昇し、相対湿度RHWが第1オート閾値RHLaを上回ると、ヒートポンプ運転が防曇制御のためにON状態に切換えられる。ヒートポンプ運転が室温制御のためにON状態になっている場合、ON状態が維持される。この結果、曇りの可能性が比較的低いときに、窓ヒータ10を使用することなく、ヒートポンプ運転による防曇制御が提供される。ヒートポンプ運転により暖房が提供されることで窓ガラス9が加熱される。この結果、曇りの発生が抑制される。
ヒートポンプ運転の下でも相対湿度RHWが上昇することがある。相対湿度RHWが第2オート閾値RHHaを上回ると、窓ヒータ10がON状態に切換えられる。この結果、曇りの可能性が比較的高いときに、窓ヒータ10による防曇制御が提供される。この結果、曇りの発生が抑制される。別の観点では、ヒートポンプ運転だけでは曇りの発生を防止できない場合に、窓ヒータ10による防曇制御が提供される。相対湿度RHWが第2オート閾値RHHaを上回る場合、窓ヒータ10はON状態に維持され、ヒートポンプ運転はON状態に維持される。
DEFモードにおいて、相対湿度RHWが第1デフロスタ閾値RHLdを下回る場合、窓ヒータ10はOFF状態に維持され、ヒートポンプ運転は防曇制御ではOFF状態に維持される。この場合でも、ヒートポンプ運転は他の制御、例えば暖房のためにON状態に切換えられる場合がある。相対湿度RHWが徐々に上昇し、相対湿度RHWが第1デフロスタ閾値RHLdを上回ると、ヒートポンプ運転が防曇制御のためにON状態に切換えられる。ヒートポンプ運転が他の制御のためにON状態になっている場合、ON状態が維持される。この結果、曇りの可能性が比較的低いときに、窓ヒータ10を使用することなく、ヒートポンプ運転による防曇制御が提供される。ヒートポンプ運転により暖房が提供されることで窓ガラス9が加熱される。この結果、曇りの発生が抑制される。
ヒートポンプ運転の下でも相対湿度RHWが上昇することがある。相対湿度RHWが第2デフロスタ閾値RHHdを上回ると、窓ヒータ10がON状態に切換えられる。この結果、曇りの発生が抑制される。別の観点では、ヒートポンプ運転だけでは曇りの発生を防止できない場合に、窓ヒータ10による防曇制御が提供される。相対湿度RHWが第2デフロスタ閾値RHHdを上回る場合、窓ヒータ10はON状態に維持され、ヒートポンプ運転はON状態に維持される。
図3は、窓ガラス9における曇りを抑制するための曇り抑制処理170を示す。ECU60は、曇り抑制処理170を所定周期で繰り返して実行する。
ステップ171では、ECU60は、曇り抑制処理170に必要な情報を取得する。例えば、冷却HE24の冷却作用の停止を示す冷凍サイクル40の運転状態を示す信号、および相対湿度RHWを取得する。
ステップ172では、ECU60は、空調装置20に暖房運転が求められているか否かを判定する。ステップ172において否定的に判定される場合、ステップ173へ進む。ステップ172において肯定的に判定される場合、ステップ174へ進む。
ステップ173では、ECU60は、冷房換気制御を実行する。ステップ173では、ECU60は、冷凍サイクル40による冷房運転が必要である場合、電動圧縮機41を含む冷凍サイクル40を制御する。ここでは、可用電力量Pcm、結露センサ62により検出された相対湿度RHW、および冷却HE24の表面温度などの信号に基づいて電動圧縮機41の回転数が制御される。例えば、電動圧縮機41は、結露センサ62からの信号により示される窓ガラス9の曇りを抑制するように制御される。窓ガラス9に曇りが発生しているときには、冷却HE24によって除湿された空気を室内に供給するように電動圧縮機41が運転されることがある。結露センサ62からの信号により窓ガラス9が曇らないと判定されるときには、電動圧縮機41が停止されることがある。また、冷房運転が必要ではないと判定されるとき、電動圧縮機41が停止されることがある。
ステップ173では、開閉弁47および切換弁49も制御される。例えば、利用者が冷房運転から暖房運転への切換えを要求した場合、開閉弁47および切換弁49の状態は反転される。利用者が暖房運転から冷房運転への切換えを要求した場合にも、開閉弁47および切換弁49の状態は反転される。さらに、室温Trを目標温度Tsetに制御するための必要な吹出温度が得られるように、開閉弁47および切換弁49は自動的に制御される場合がある。
ステップ174では、ECU60は、オートモードが選択されているか否かを判定する。ステップ174は、オートモードが利用者により要求されているか否かを判定するオートモード判定部を提供する。オートモードは、室内の温度Trを目標温度Tsetに自動的にフィードバック制御するためのモードである。オートモードが選択されている場合、ステップ176へ進む。ステップ176では、後述する暖房オート制御が実行される。
ステップ174において否定的に判定される場合、ステップ175へ進む。ステップ175では、ECU60は、DEFモードが選択されているか否かを判定する。ステップ175は、利用者によりDEFモードが要求されているか否かを判定するDEFモード判定部を提供する。DEFモードが選択されている場合、ステップ177へ進む。ステップ177では、ECU60は、暖房デフロスタ吹出制御を実行する。
ステップ175において否定的に判定される場合、ステップ178へ進む。ステップ178では、ECU60は、暖房マニュアル制御を実行する。暖房マニュアル制御では、操作パネル61の操作状態に応じて空調装置20が制御される。
図4には、ステップ176において提供される暖房オート制御が図示されている。ステップ181では、ECU60は、窓ガラス9が低可曇状態にあるか否かを判定する。ステップ181では、ECU60は、RHLa<RHWが成立するか否かを判定する。ステップ181において肯定的に判定される場合、ステップ182へ進む。
ステップ182では、ECU60は、電動圧縮機41を作動させ、冷凍サイクル40を作動させる。ここでは、冷凍サイクル40は、ヒートポンプ運転される。ステップ182では、暖房運転のための熱源としてヒートポンプ運転が必要であるか否かにかかわらず、強制的にヒートポンプ運転が実行される。ステップ181において否定的に判定される場合、ステップ182を経由することなくステップ183へ進む。
ステップ183では、ECU60は、吹出温度制御を実行する。ここでは、室温フィードバック制御が実行される。ここでは、室温Trを目標温度Tsetに接近させ、さらに維持するように吹出温度が制御される。よって、吹出温度は最高温度に固定的に維持されることなく可変的に調節される。より具体的には、ECU60は、エアミックスダンパ25を最大暖房位置に固定的に制御する。さらに、ECU60は、加熱HE26の下流における空気温度が、室温Trを目標温度Tsetに制御するために必要な必要吹出温度に一致するように電動圧縮機41の回転数を制御する。ステップ183は、ヒートポンプ防曇部64を提供する。ステップ183は、オートモードが要求されるとき、室内の温度Trを目標温度Tsetにフィードバック制御するように、加熱HE26の目標温度TAVを制御する。
ステップ182を経由する場合、冷凍サイクル40が作動している状態の下で、吹出温度制御が実行される。よって、ヒートポンプ運転される冷凍サイクル40によって空気が加熱され、窓ガラス9の曇りが抑制される。
ステップ184では、ECU60は、窓ガラス9が高可曇状態にあるか否かを判定する。ステップ184では、ECU60は、RHHa<RHWが成立するか否かを判定する。ステップ184において肯定的に判定される場合、ステップ185へ進む。
ステップ185では、ECU60は、ヒートポンプ運転を提供する冷凍サイクル40以外の電気機器による窓加熱制御を実行する。ここでは、窓ヒータ10が作動状態、すなわちON状態におかれる。この結果、窓ガラス9は窓ヒータ10によって直接的に加熱される。
ステップ184において肯定的に判定される場合は、ステップ181においても肯定的に判定されている。よって、ヒートポンプ運転が実行されている。ヒートポンプ運転によって曇りを抑制したにもかかわらず、相対湿度RHWが第2オート閾値RHHaを上回っている。すなわち、ステップ184において肯定的に判定される場合は、ヒートポンプ運転だけでは、曇りの発生を十分に抑制できない場合である。この場合、ステップ185において、窓ヒータ10による曇り抑制制御が、ヒートポンプ運転に追加して提供される。よって、強力な曇り防止効果が提供される。一方で、消費電力が増加する。
ステップ186では、ECU60は、吹出制御を実行する。ここでは、吹出モードがフット・デフロスタ併用モードに切換えられる。これにより、暖房運転を継続しながら、曇りを抑制するための空気吹出しを提供することができる。ステップ187では、ECU60は、内外気制御を実行する。ここでは、外気モードが提供される。これにより、暖房運転を継続しながら、湿度が低い外気を導入し、曇りを抑制することができる。ステップ186および187の処理は、補助的な曇り抑制制御を提供する。
ステップ184において否定的に判定される場合、ステップ188へ進む。ステップ184では、ECU60は、通常の暖房制御を実行する。ここでも内外気制御と、吹出制御とが実行される。
図5には、ステップ177において提供される暖房デフロスタ吹出制御が図示されている。ステップ191では、ECU60は、窓ガラス9が低可曇状態にあるか否かを判定する。ステップ191では、ECU60は、RHLd<RHWが成立するか否かを判定する。ステップ191において肯定的に判定される場合、ステップ192へ進む。
ステップ192では、ECU60は、電動圧縮機41を作動させ、冷凍サイクル40を作動させる。ここでは、冷凍サイクル40は、ヒートポンプ運転される。ステップ182では、暖房運転のための熱源としてヒートポンプ運転が必要であるか否かにかかわらず、強制的にヒートポンプ運転が実行される。ステップ191において否定的に判定される場合、ステップ192を経由することなくステップ193へ進む。
ステップ193では、ECU60は、吹出温度制御を実行する。ここでは、室温フィードバック制御は実行されない。ここでは、吹出温度は、空調装置20によって安定的に供給可能な最高吹出温度に調節される。空調装置20からの吹出温度は最高温度に固定的に維持される。より具体的には、ECU60は、エアミックスダンパ25を最大暖房位置に固定的に制御する。さらに、ECU60は、加熱HE26の目標温度TAVを最高温度TAVHに設定する。目標温度TAVは、加熱HE26の表面温度、または加熱HE26によって加熱された空気の温度である。ECU60は、加熱HE26において最高温度TAVHが得られるように冷凍サイクル40を制御する。ステップ193は、ヒートポンプ防曇部64を提供する。ステップ193は、DEFモードが要求されるとき、加熱HE26の目標温度TAVを最高温度TAVHに設定することにより冷凍サイクル40を固定制御する。
ステップ192を経由する場合、冷凍サイクル40が作動している状態の下で、吹出温度制御が実行される。よって、ヒートポンプ運転される冷凍サイクル40によって空気が加熱され、窓ガラス9の曇りが抑制される。
ステップ194では、ECU60は、窓ガラス9が高可曇状態にあるか否かを判定する。ステップ194では、ECU60は、RHHd<RHWが成立するか否かを判定する。ステップ194において肯定的に判定される場合、ステップ195へ進む。
ステップ195では、ECU60は、ヒートポンプ運転を提供する冷凍サイクル40以外の電気機器による窓加熱制御を実行する。ここでは、窓ヒータ10が作動状態、すなわちON状態におかれる。この結果、窓ガラス9は窓ヒータ10によって直接的に加熱される。
ステップ194において肯定的に判定される場合は、ステップ191においても肯定的に判定されている。よって、ヒートポンプ運転が実行されている。ヒートポンプ運転によって曇りを抑制したにもかかわらず、相対湿度RHWが第2デフロスタ閾値RHHdを上回っている。すなわち、ステップ194において肯定的に判定される場合は、ヒートポンプ運転だけでは、曇りの発生を十分に抑制できない場合である。この場合、ステップ195において、窓ヒータ10による曇り抑制制御が、ヒートポンプ運転に追加して提供される。よって、強力な曇り防止効果が提供される。一方で、消費電力が増加する。
ステップ196では、ECU60は、吹出制御を実行する。ここでは、吹出モードがDEFモードに切換えられる。これにより、曇りを抑制するための空気吹出しを提供することができる。ステップ197では、ECU60は、内外気制御を実行する。ここでは、外気モードが提供される。これにより、暖房運転を継続しながら、湿度が低い外気を導入し、曇りを抑制することができる。ステップ196および197の処理は、補助的な曇り抑制制御を提供する。
以上に述べたように、この実施形態によると、暖房時に曇りの可能性が低いときには、冷凍サイクル40のヒートポンプ運転によって曇りが抑制される。ヒートポンプ運転の下でも曇りの可能性が高くなる場合がある。曇りの可能性が高いときには、ヒートポンプ運転以外の電気機器、すなわち窓ヒータ10と、ヒートポンプ運転との両方によって曇りが抑制される。この結果、消費電力の抑制を図りながら、曇りの抑制が図られる。
この実施形態では、上記曇り防止制御は、オートモードにおいても、DEFモードにおいても提供される。よって、オートモードにおいても、DEFモードにおいても、消費電力の抑制を図りながら、曇りの抑制が図られる。
さらに、曇りの可能性の高低を判定するための閾値は、DEFモードにおいて低く、オートモードにおいて高く設定されている。これにより、DEFモードにおいては曇りの抑制の確実性が高められる。オートモードにおいては、曇りの可能性が高くなっても、快適な空調が提供される。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ステップ177において、RHLd<RHWが成立する場合にのみヒートポンプ運転を実行した。これに代えて、ステップ175において肯定的に判定される場合には、曇りの可能性にかかわらず、ヒートポンプ運転を実行してもよい。この実施形態では、ステップ177に代えて、図6に図示されるステップ277が採用されている。ステップ277においては、ステップ191が設けられていない。また、ステップ193に代えて、ステップ293が採用されている。ステップ293は、曇り判定部63とヒートポンプ防曇部64とを提供する。
ステップ293では、ECU60は、予め設定された特性に基づいて加熱HE26の目標温度TAVを設定する。目標温度TAVは、結露センサ62によって検出される相対湿度RHWに応じて設定される。相対湿度RHWが高くなるにつれて、目標温度TAVは高く設定される。
相対湿度RHWが上限値RH2にあるとき、窓ガラス9には高い確率で曇りが発生する。相対湿度RHWが下限値RH1にあるとき、窓ガラス9には稀に曇りが発生する。よって、相対湿度RHWが上限値RH2にあるときは、窓ガラス9が曇り得る状態にあると考えることができる。相対湿度RHWが上限値RH2にあるとき、目標温度TAVは最高温度TAVHに設定される。一方、相対湿度RHWが下限値RH1にあるとき、目標温度TAVは最低温度TAVLに設定される。上限値RH2と下限値RH1との間においては、相対湿度RHWに比例するように目標温度TAVが設定される。上限値RH2は、第1デフロスタ閾値RHLdである。目標温度TAVの設定特性には、ヒステリシス特性が付与されている。
相対湿度RHWが上限値RH2より低いとき、目標温度TAVは最高温度TAVHより低く設定される。相対湿度RHWが高くなるほど、曇りの可能性は高くなる。このステップにおける特性は、曇りの可能性が高くなるほど、加熱HE26の目標温度、すなわち吹出温度を高く設定する。このため、曇りの可能性の高さに比例して、曇り抑制作用の強度が高められる。
相対湿度RHWが上限値RH2に到達すると、すなわち曇りの可能性が極めて高い状態となると、目標温度TAVは最高温度TAVHに設定される。この実施形態では、相対湿度RHWが上限値RH2であることが、低可曇状態に相当する。よって、このステップにおける特性は、上述の実施形態におけるステップ191の可曇状態であるか否かの判定を包含している。
ステップ293における設定特性は、窓ガラス9に曇りが発生する可能性の高さを示す相対湿度RHWが、低可曇状態に相当する上限値RH2に向けて高くなるほど、空気加熱装置26による空気の加熱量TAVを大きく設定する。言い換えると、曇り判定部63とヒートポンプ防曇部64とは、ウインドシールド9における曇りの可能性(RHW)が第1範囲R1と第2範囲R2との間の第1閾値RHLに向けて高くなるほど、目標温度TAVを高く設定する設定特性によって提供されている。設定特性は、曇りの可能性(RHW)が第1閾値RHLにあるとき、目標温度TAVを最高温度TAVHに設定するように設定されている。
この実施形態によると、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、この実施形態によると、相対湿度RHWが上限値RH2より低いとき、すなわち可曇状態よりも曇りの発生可能性が低いときにも、目標温度TAV、すなわち吹出温度が高められる。しかも、相対湿度RHWの上昇につれて、目標温度TAV、すなわち吹出温度は上昇する。よって、曇りの発生可能性の高まりに応じて、曇り抑制作用の強度を高めることができる。よって、曇りの発生が効果的に抑制される。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、曇りの可能性を示す相対湿度RHWを検出するための結露センサ62を採用した。これに代えて、この実施形態では、結露センサ62を用いることなく、曇り抑制制御170が実行される。この実施形態では、ステップ181に代えて、図7に図示されるステップ381が採用される。ステップ184、191、194に代えて、ステップ381に類似の処理が採用される。ステップ381は、ウインドシールド9の温度に影響を与える情報SPD、Tam、Tr、TAOに基づいて、曇りの可能性を判定する曇り判定部を提供する。
図中には、判定のための閾値の具体的な温度値(°C)が例示されている。これらの閾値は、オートモードのための低可曇状態に相当する。ステップ381では、結露センサ62を用いることなく、複数のセンサによって検出された情報に基づいて窓ガラス9が曇り可能性が低可曇状態に相当する状態であるか否かを判定する。
ステップ381aでは、ECU60は、電動車両の走行速度SPDが所定の閾値を上回るか否かを判定する。閾値は、窓ガラス9が走行風によって冷却され、窓ガラス9の温度が低下するような速度に設定される。ステップ381aにおける判定特性は、ヒステリシス特性をもつ関数f1(SPD)によって与えられる。走行速度SPDが閾値より低い場合、処理はNO、すなわちステップ182へ進む。走行速度SPDが閾値より高い場合、処理はステップ381bへ進む。
ステップ381bでは、ECU60は、外気温度Tamが所定の閾値を上回るか否かを判定する。閾値は、窓ガラス9に曇りが生じる可能性のある温度に設定される。ステップ381bにおける判定特性は、ヒステリシス特性をもつ関数f2(Tam)によって与えられる。外気温度Tamが閾値より高い場合、処理はNO、すなわちステップ182へ進む。外気温度Tamが閾値より低い場合、処理はステップ381cへ進む。
ステップ381cでは、ECU60は、室温Trが所定の閾値を上回るか否かを判定する。閾値は、窓ガラス9に曇りが生じる可能性のある温度に設定される。ステップ381cにおける判定特性は、ヒステリシス特性をもつ関数f3(Tr)によって与えられる。室温Trが閾値より高い場合、処理はNO、すなわちステップ182へ進む。室温Trが閾値より低い場合、処理はステップ381dへ進む。
ステップ381dでは、ECU60は、目標吹出温度TAOが所定の閾値を上回るか否かを判定する。目標吹出温度TAOは、室温Trを目標温度Tsetにフィードバック制御するために必要な吹出空気の温度である。目標吹出温度TAOはECU60内において演算される室温制御のための制御変数のひとつである。例えば、目標吹出温度TAOは、目標温度Tset、室温Tr、外気温度Tam、日射量Ts、定数C、および係数Ks、Kr、Ka、Ksから演算することができる。例えば、TAO=Tset・Kset−Tr・Kr−Tam・Ka−Ts・Ks+Cの演算式が知られている。閾値は、窓ガラス9に曇りが生じる可能性のある温度に設定される。ステップ381dにおける判定特性は、ヒステリシス特性をもつ関数f4(TAO)によって与えられる。目標吹出温度TAOが閾値より高い場合、処理はNO、すなわちステップ182へ進む。目標吹出温度TAOが閾値より低い場合、処理はYES、すなわちステップ182へ進む。
ステップ184、191、194には、ステップ381と類似であって、図中に例示された複数の閾値が異なる処理が採用される。ステップ184においては、オートモードのための高可曇状態に相当する閾値が採用される。ステップ191においては、DEFモードのための低可曇状態に相当する閾値が採用される。ステップ194においては、DEFモードのための高可曇状態に相当する閾値が採用される。
この実施形態によると、窓ガラス9の温度に影響を与える情報、および室内の空調状態を示す情報の組み合わせに基づいて、可曇状態であるか否かの判定を実行できる。よって、結露センサ62に依存することなく、可曇状態であるか否かを判定することができる。
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された複数の発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された複数の発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された複数の発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、それぞれ独立して実施可能である。開示された複数の発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
例えば、上記実施形態では、2つの室内熱交換器24、26を備える冷凍サイクル40によってヒートポンプサイクルを提供した。これに代えて、単一の室内熱交換器を備え、この単一の室内熱交換器を冷却用途と加熱用途とに切換えるヒートポンプサイクルを採用してもよい。例えば、室内熱交換器を蒸発器とする運転モードと、室内熱交換器を放熱器とする運転モードとを切換え可能な反転型のヒートポンプサイクルを採用することができる。
上記実施形態では、窓ヒータ10は低圧電池7から給電される低圧機器である。これに代えて、窓ヒータ10は高圧電池2から給電される高圧機器でもよい。
上記実施形態では、高可曇状態において窓ヒータ10のみを作動させたが、他の電力防曇機器を作動させてもよい。例えば、窓ヒータ10に代えて、または窓ヒータ10に加えて、電気ヒータ27、または媒体ヒータ30を作動させてもよい。さらに、高可曇状態において、曇りの可能性が増加するにつれて、複数の電力防曇機器を累積的に作動させてもよい。
上記実施形態では、低可曇状態において冷凍サイクル40のヒートポンプ運転のみを実行し、高可曇状態において窓ヒータ10を追加的に作動させた。これに代えて、高可曇状態においては、ヒートポンプ運転を停止し、窓ヒータ10のみを作動させてもよい。
上記実施形態に加えて、室内の空気の湿度を低下させる除湿装置を備えてもよい。除湿装置は、HVAC21内を流れる空気の湿度を低下させるように、HVAC21内に設けることができる。例えば、ゼオライトのような除湿剤を備える除湿装置を設けることにより、窓ガラス9に向けて吹出す空気の湿度を低下させることができる。このような除湿装置は、窓ヒータ10に代えて、または窓ヒータ10に加えて作動させることができる。