JP5950427B1 - 銀鏡膜層形成用組成液の製造方法及び銀鏡膜層の形成方法 - Google Patents

銀鏡膜層形成用組成液の製造方法及び銀鏡膜層の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱することなく、常温下で短時間に銀鏡膜層を形成でき、しかも、有害な成分や腐食性副成物の発生がない銀鏡膜層形成用組成液及びこれを用いた銀鏡膜層の形成方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様の銀鏡膜層形成用組成液は、アルコール溶媒中に高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀及び炭酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に超音波を照射することにより得られた、銀ナノ粒子の分散溶液からなる。この銀鏡膜層形成用組成液を被塗装物の表面にスプレー塗装し、常温下で乾燥することにより銀鏡膜層を形成することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、加温することなく、常温下で短時間に銀鏡膜層を形成でき、しかも、有害な成分や腐食性副成物の発生がない銀鏡膜層形成用組成液及びこれを用いた銀鏡膜層の形成方法に関する。
銀(Ag)は、光の反射率が可視領域において高く、美しい金属光沢を有している。樹脂や金属等の基材上に銀鏡膜層を形成すると美しい金属光沢を呈するので、自動車の内装部品や外装部品、携帯電話、ノートパソコン、化粧品容器等に銀鏡膜層を施すことが期待される。例えば、自動車は、自動車の主材料(ほとんどの場合は、鋼板)の保護及び自動車の美観の向上を目的として、塗装が施されている。同一形状、同一性能の自動車を比べると、美しく塗装された車の方が良く見え、商品としての価値が向上する。メタリック塗装は、金属的な質感に高級感があり、車の外観を見た際に、車を見る角度によって色相が異なって見え、車の形状にメリハリを与えることができるので、車の塗装として人気がある。車のメタリック塗装は、光輝材としてアルミフレークが多く使用されている。このようなメタリック塗装は他の製品おいても採用されており、高級品では光輝材ないし鏡面形成膜として銀の使用が検討されている。
従来、基材に銀鏡膜を形成する際には、トレンス試薬を用いた銀鏡反応を利用した銀鏡メッキが行なわれている。このトレンス試薬を用いた銀鏡反応は、例えば以下の反応に基づくものである。
硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると、酸化銀の沈殿が生じる(反応式(1))。
2Ag+2OH → AgO+HO ・・・(1)
この水溶液にアンモニア水を過剰に添加すると、酸化銀が溶解して透明なアンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)が得られる(反応式(2))。
AgO+4NH+HO → 2[Ag(NH+2OH・・・(2)
このトレンス試薬中にアルデヒド基(−CHO)を持つ化合物を含有する水溶液(例えば糖(RCHO)のアルカリ性水溶液)を添加して穏やかに加熱すると、銀アンモニア錯イオンが還元されて、銀が析出する(反応式(3))。
RCHO+2[Ag(NH+2OH
→ RCOOH+2Ag+4NH+HO ・・・(3)
トレンス試薬による銀鏡反応を利用した銀鏡メッキは、銀鏡膜にメッキ特有の白亜化(白化又はシケともいう。)を生じたり、銀鏡膜にクラックが生じたり、銀鏡膜の膜厚が均一にならなかったり、銀ナノ粒子の凝集にばらつきがある等の原因により、銀鏡面の発色(金属光沢)にムラを生じたりすることがある。さらに、この銀鏡メッキは、本来銀鏡メッキを施す必要がない部分が銀鏡メッキされてしまったりすることもあり、不良率が高いという問題や、形成した銀鏡膜面が基材等の表面から剥がれやすいという問題もある。
しかも、従来のトレンス試薬を用いた銀鏡反応を利用した銀鏡メッキにより基材等の表面に銀鏡膜を形成するには、多数の工程が必要であり、殆ど各工程の終了毎に水洗工程を必要としており、そのために、製造工程が複雑になっており、製造工程面でも改善の余地がある。また、吹き付け手段としては二頭式の塗装用ガンが必要であり、設備面の負担が大きい。このため、トレンス試薬を用いた銀鏡膜層の形成方法(銀鏡メッキ)は、ニーズとは裏腹に普及しているとはいえない。
一方、上述したトレンス試薬を用いる際の問題点を解決するために、銀化合物錯体としてアンモニウムに換えてアミン化合物やアンモニウムカルバメート系化合物が配位した銀化合物錯体を用いることも知られている。
例えば、特許文献1(特許第52434091号公報)には、下記化学式1の1つ以上の銀化合物と、下記化学式2ないし化学式4から選択される1種又は2種以上のアンモニウムカルバメート系又はアンモニウムカーボネート系化合物とを反応して得られる銀錯体化合物を含有することを特徴とする反射膜コーティング液組成物が開示されている。
(式中、Xは、酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、アセチルアセトネート、カルボキシレート、及びこれらの誘導体から選択される置換基であり、nは、1〜4の整数であって、R1乃至R6は、互いに独立して、水素、C1〜C30の脂肪族や脂環族アルキル基、アリール基又はアラルキル(aralkyl)基、官能基が置換されたアルキル及びアリール基、ヘテロ環化合物基と高分子化合物及びその誘導体から選択される置換基であって、但し、R1〜R6が全て水素である場合は除く。)
また、特許文献2(特許第5610359号公報)には、アルコール系溶媒中に、銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体と、銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した第2の錯体と、還元剤と、を含み、前記第1の錯体と前記第2の錯体との混合割合は、銀原子のモル比で、6:4〜8:2である、銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及び銀鏡膜塗面の形成方法の発明が開示されている。
この銀鏡膜層形成組成液の具体例としては、
(1)アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種が用いられており、
(2)銀化合物としては、酸化銀(AgO)、炭酸銀(AgCO)及びシュウ酸銀(Ag)からなる群から選択される少なくとも1種が用いられており、
(3)前記アンモニウムカルバメート系化合物としては、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートが用いられており、
(4)アミン系化合物としては、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン及びイソブチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種が用いられており、
(5)還元剤としては、室温では還元作用を示さず、室温を超えた温度で還元作用を示すものが用いられ,具体的には、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール及び1,2−プロパンジオールの群から選択される少なくとも1種が用いられている。
また、一旦銀ナノ粒子を形成してから塗膜として銀鏡膜層を形成する方法も知られている。例えば、特許文献3(特開2008−106315号公報)には、25℃において、硝酸銀と、分散剤としてのポリビニルピロリドンと、錯化剤としてのクエン酸三ナトリウムとを含む水溶液に、超音波を照射しながら還元剤としての過酸化水素及びテトラヒドロほう酸ナトリウム添加して銀ナノ粒子を生成させる方法が開示されている。
また、特許文献4(特開2007−031799号公報)には、液相法により銀化合物の金属塩からなる溶液を用いて金属ナノ粒子を合成する方法において、予めプレカーサーを調製し、該プレカーサーを連続的に反応場に輸送して、反応場の超音波照射セルでの照射エネルギーが10〜1000W/mlの超音波を照射することにより金属ナノ粒子を合成する、金属ナノ粒子の製造方法が開示されている。ここでは、銀化合物として硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、ヨウ化銀、過塩素酸銀等を用いることができ、還元剤としてはヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等を用いることができることが示されている(段落[0023]〜[0024])。
さらに、特許文献5(特開2013−036114号公報)には、アルゴン置換した水に超音波を照射して機能水を得る調製工程と、前記機能水と金属塩溶液とを混合する工程とを備える、金属塩の還元反応を利用した金属ナノ粒子の製造方法が開示されている。ここには、銀ナノ粒子を作成した具体例は示されていないが、銀塩溶液としては溶液中で例えばAg、Ag(CN) になり得る各種銀塩、例えば、AgAsF,AgBF,AgBr,AgCl,AgClO,AgClO,AgF,AgF,AgFP,AgFSb,AgI,AgIO,AgMnO,AgNO,AgNO,AgOV,AgORe,AgCrO,AgO,AgS,AgS,AgS,AgSe,AgTe,AgAsO,AgAsO,AgAsO,AgP,Ag16,KAg(CN),CHCOAg,AgCN,AgCNO,AgCNS,AgCOの水溶液を使用し得ることが示されている。
特許第5243409号公報 特許第5610359号公報 特開2008−106315号公報 特開2007−031799号公報 特開2013−036114号公報
上記特許文献1及び2に開示されているアミン化合物やアンモニウムカルバメート系化合物が配位した銀化合物錯体溶液から銀鏡膜層を形成する方法によれば、得られた銀鏡膜層は、トレンス試薬を用いる場合よりも均一で、高反射率なものが得られるという優れた効果を奏する。
しかしながら、アミン化合物やアンモニウムカルバメート系化合物が配位した銀化合物錯体溶液を用いて銀鏡膜層を形成するには、上記特許文献1に開示されている発明では例えば赤外線オーブンで10分間熱処理することが必要であり、また、上記特許文献2に開示されている発明で約70℃以上120℃程度までの加温が必要であった。加えて、このようなアミン化合物やアンモニウムカルバメート系化合物が配位した銀化合物錯体溶液から銀鏡膜層を形成するには大量の有機溶媒や保護分子、毒性の高い還元液などを必要とし、環境負荷が大きいという課題が存在しており、さらに余分の保護分子や還元液から生じる残留アニオンや残留有機物の除去に関する問題があり、長時間の複雑な工程を必要としていた。
また、上記特許文献3及び4に開示されている銀ナノ粒子の製造方法は、両者共に還元剤が添加されており、銀イオンの還元反応を超音波照射により促進させるいわゆるソノケミカル反応を利用しているものと認められる。しかも、上記特許文献3及び4に開示されている銀ナノ粒子の製造方法は、上記特許文献1及び2に開示されている発明の場合と同様に、得られた銀ナノ粒子を用いて銀鏡膜層を得るには余分の分散剤や還元液から生じる残留アニオンや残留有機物の除去に関する問題が残留している。
さらに、上記特許文献5には、超音波を照射することにより生成された機能水が有する新規な成分、性質を用いて金属塩用液を還元して金属ナノ粒子を生成し、かつ生成された金属ナノ粒子を凝集せずに安定させるもの(段落[0009]参照)であり、還元助剤や補助剤を用いることなく金属ナノ粒子を製造することが可能であるため、純粋な金属ナノ粒子を提供することが可能となる(段落[0013]参照)とされている。しかしながら、上記特許文献5に開示されている発明では、超音波を照射することにより生成された機能水と金属塩溶液を撹拌混合した後、所定の温度を保ちながら120分程度静置する(段落[0018]参照)ことにより金属ナノ粒子が作成されており、金属ナノ粒子形成までの時間が長いという課題が存在している。
加えて、上記特許文献5に開示されている発明における機能水の新規な成分及び性質は、水素ラジカルによるものではなく、水のソノケミカル反応の副生成物である過酸化水素や硝酸でもないとされており(段落[0009]、[0010]参照)、しかもその詳細は不明であるとされている。また、上記特許文献5には、種々多様な金属塩を用いることによりその金属のナノ粒子を作成し得ることが示唆されているが、具体的には塩化金酸(HAuCl)からなる金属塩溶液を用いて金ナノ粒子を製造した例のみしか記載されておらず、しかも前記の多様な金属塩には水に難溶性の成分が多く例示されていること及び多種のアニオンが含まれていることから、このような場合にも純粋な金属ナノ粒子を生成することができるかどうかは不明である。
発明者等は、上述の従来技術の問題点を解決すべく、加熱することなく常温かつ短時間で銀鏡膜層を形成することができ、銀鏡膜層形成後には特に余分の保護分子や還元剤から生じる残留アニオンや残留有機物の除去する必要がない銀鏡膜層の形成方法について種々検討を重ねてきた。その結果、アルコール溶媒中で銀化合物を高分子分散剤の存在下で、特に還元剤を添加することなく常温下で超音波を照射すると、速やかに銀化合物を還元することができて褐色の銀ナノ粒子の分散溶液が得られること、さらには、この褐色の銀ナノ粒子の分散溶液を非メッキ物の表面にスプレー塗布して常温下で乾燥するだけで銀鏡膜層を短時間で形成させることができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、加温することなく、常温下で短時間に銀鏡膜層を形成でき、しかも、有害な成分や腐食性副成物の発生がない銀鏡膜層形成用組成液の製造方法及びこの製造方法により製造された銀鏡膜層形成用組成液を用いた銀鏡膜層の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、アルコール溶媒中にスチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀及び炭酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に超音波を照射することにより銀ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることからなる銀鏡膜層形成用組成液の製造方法が提供される。
液体や溶剤中に超音波を照射すると、液体や溶剤中に激しく気泡(キャビテーション)が生じ、化学作用、侵食作用、発光作用などを示すことがある。このキャビテーションの生成・圧壊に伴う高温の局所反応場は溶質・溶媒との相互作用によりラジカル生成を助け、様々な物理・化学的な作用をもたらす。これがソノケミカル反応である。
スチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解したアルコール系溶媒に、酸化銀ないし炭酸銀を添加すると、酸化銀ないし炭酸銀が分散した固−液二相の不均一状態のアルコール溶液が得られる。このアルコール溶液に超音波を照射すると、キャビテーションのもつ物理化学的な作用によってソノケミカル反応が進行し、別途還元剤を添加しなくても酸化銀ないし炭酸銀に分解還元反応が生起されて銀ナノ粒子が析出するとともに、副成物として酸素(酸化銀の場合)又は酸素と二酸化炭素(炭酸銀の場合)が得られる。
酸化銀及び炭酸銀の場合の化学反応式は、それぞれ以下に示すとおりとなる。

酸素及び炭酸ガスは揮発性であり、アルコール溶媒も揮発性であり、かつこれらの物質はいずれも非腐食性の成分である。そのため、本発明の一態様の銀鏡膜形成用組成物の製造方法により製造された銀鏡膜形成用組成物においては、銀及び高分子分散剤以外は全て揮発・除去することができ、しかも、別途有害成分を処理する必要も不要となる。したがって、高分子分散剤は微量添加成分であるから、得られた銀ナノ粒子の分散溶液からなる銀鏡膜層形成用組成物を被塗装物の表面にスプレー塗布して常温で乾燥させるだけで、別途副成物の除去処理を行う必要がなく、容易に銀鏡膜層を得ることができるようになる。
なお、前記高分子分散剤は酸価が150以下であることが好ましい。アルコール溶液中の銀ナノ粒子の分散状態は高分子分散剤の種類によって大きく変化する。本発明の一態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法により製造された銀鏡膜層形成用組成液においては、高分子分散剤の酸価が0〜150の範囲であれば良好な銀鏡膜層が得られるが、高分子分散剤の酸価が150を超えると銀鏡膜を形成し難くなる。
なお、銀化合物として蟻酸銀、硝酸銀及び酢酸銀を用いても銀ナノ粒子の分散溶液からなる銀鏡膜形成用組成液を得ることができるが、副成物として、蟻酸、硝酸ないし酢酸等の腐食性の副成物が生成されるため、銀鏡膜層形成時にはこれらの副成物の除去処理が必要となるので、好ましくない。同じく、銀化合物として水酸化銀を用いても銀ナノ粒子の分散液からなる銀鏡膜形成用組成液が得られるが、水酸化銀は不安定なため、最終的に得られる銀鏡膜層の外観にムラが生じるため、好ましくない。また、この明細書における「常温」とは、日本工業規格に定める「20℃±15℃」の範囲を示すものとして用いられている。
係る態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法においては、前記アルコール溶液中の銀化合物の濃度5〜40質量%とすることが好ましい。
アルコール溶液中の銀化合物の濃度が5質量%未満であると、銀鏡膜層形成用組成物中の銀ナノ粒子の濃度が薄いので、所定の膜厚の銀鏡膜層を得るためには複数回の銀鏡膜形成用組成物の塗布及び乾燥を繰り返す必要が生じるようになる。また、アルコール溶液中の銀化合物の濃度が40質量%を超えると、1回の銀鏡膜形成用組成物の塗布及び乾燥により厚膜の銀鏡膜層を得ることができるが、外観にムラが生じやすくなる。外観上、より好ましいアルコール溶液中の銀化合物の濃度は10〜20質量%である。
また、係る態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法においては、前記アルコール溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール及び1−メトキシ−2−プロパノールなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
アルコール溶媒としてのメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール及び1−メトキシ−2−プロパノールは、ソノケミカル法による銀(I)化合物を還元するための還元剤としても有効に作用し、高分子分散剤の溶解性にも優れている。加えて、これらのアルコール溶媒は、常温での蒸発速度が速く、しかも、銀鏡膜を形成する基材としてのプラスチックや下塗り層に対して作用がマイルドであり、基材のクレージングなどの浸食作用がないので、短時間に、平坦性に優れ、高反射率を有する銀鏡膜を形成することができるようになる。
また、係る態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法においては、前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール鎖とポリプロピレングリコール鎖のモル比率は6/4〜8/1、分子量は500〜3000のものを用いることが好ましい。
このような構成の高分子分散剤を使用すると、特に銀ナノ粒子が凝集し難くなって沈殿が生じ難くなり、長時間にわたって分散状態を良好に維持することができるので、良好な銀鏡膜層を得ることができるようになる。
さらに、係る態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法においては、前記高分子分散剤の前記銀化合物に対する添加量不揮発分比で2〜25質量%とすることが好ましい。
係る態様の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法においては、高分子分散剤の銀化合物に対する添加量2質量%未満とする場合及び25質量%を越えるようにする場合には得られる銀鏡膜層のくもりや白化が目立つようになる。なお、高分子分散剤の銀化合物に対する添加量4質量%未満とすると得られる銀鏡膜層の黄味が強くなり(色差計のb値が増加)、同じく15質量%を超えるようにすると青味が強くなり(色差計のb値が減少)、光沢も低下する傾向となる。そのため、好ましい高分子分散剤の銀化合物に対する添加量は4〜15質量%であり、より好ましくは5〜10質量%である。
さらに、本発明の別の態様によれば、上記何れかに記載の製造方法により得られた銀鏡膜層形成用組成液を被塗装物の表面にスプレー塗装する工程と、前記スプレー塗装された被塗装物を常温下で乾燥する工程と、を備える、銀鏡膜層の形成方法が提供される。
係る態様の銀鏡膜層の形成方法によれば、従来例のような高価な大型チャンバーや高温加熱装置等を必要とせず、被塗装物の表面に良質な銀鏡膜層を経済的かつ容易に形成することができるようになる。
実験例1で得られた銀ナノ粒子分散液の波長と吸光度との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る銀鏡膜層形成用組成液の製造方法及び銀鏡膜層の形成方法について、各種実験例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明をこれらの実験例に示したものに特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。

スチレン−マレイン酸コポリマー構造を有する高分子分散剤及びこれの無水マレイン酸の一部を末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性した高分子分散剤は既に市販されている。例えば、ベースレジンとしてのスチレン−マレイン酸コポリマーは、SMA(登録商標名)ベースレジン1000、2000、3000、SMAエステルレジン1440,2625(以上、Cray Valley USA、LLC製)、アラスター700(荒川化学製)、等が挙げられる。これらのSMA構造を有するベースレジンの酸価は175〜500と大きい。また、Disperbyk 190、2015(不揮発分40%、酸価10、BYK社製)は、スチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、この無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール等によって変性されたものからなり、不揮発分の酸価は共に25である。
このように、市販されている高分子分散剤は、酸価が大きいものも小さいものも存在するが、酸価が所定の値に固定されている。そこで、スチレン−マレイン酸コポリマー構造を有する高分子分散剤の一つであるSMAベースレジン1000を用いて、スチレン−マレイン酸コポリマー構造の無水マレイン酸の一部を末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性することにより酸価を適宜の値に調整できることを明らかにする。
[第1の高分子分散剤合成]
SMAベースレジン1000(酸価480)を400質量部、CH−(EO)14−(PO)−OH(平均分子量1000)300質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部を反応釜に仕込み、窒素気流下140℃に加熱し、パラトルエンスルフォン酸ナトリウム0.3質量部を添加し、真空ポンプで減圧下において5時間反応せしめ、酸価250の第1の高分子分散剤を得た。この第1の高分子分散剤の不揮発分は70%である。なお、「EO」はエチレンオキサイド鎖を示し、「PO」はポリエチレンオキサイド鎖を示す。
[第2の高分子分散剤合成]
SMAベースレジン1000を80質量部、ジェファーミンM−1000(Huntsman社製、末端アミノ基ポリアルキレングリコール、EO/POモル比6.3、平均分子量1000)190質量部、酢酸ブチル300質量部、ラウリルアミン0.5質量部、ジブチルスズジラウレート0.5質量部を反応釜に仕込み、窒素気流下75〜80℃で1.5時間加熱し、次いで130〜135℃に昇温して減圧下3時間反応せしめ、酸価17の第2の高分子分散剤を得た。この第2の高分子分散剤は、反応終了後に純水を加えて不揮発分を40%に調整して用いた。
このように、スチレン−マレイン酸コポリマーからなる高分子分散剤は、酸価が大きいが、スチレン−マレイン酸コポリマー構造の無水マレイン酸の一部を末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性すると、酸価が小さい任意の値のスチレン−マレイン酸コポリマーからなる高分子分散剤を得ることができることがわかる。
[実験例1]
200mlガラスビーカーを用いて、高分子分散剤としてDisperbyk2015(不揮発分40%、酸価10、BYK社製)4gを2−プロパノール(イソプロピルアルコール)100g中に溶解し、酸化銀粉末25gを懸濁させた。この高分子分散剤の不揮発分の酸価は25であり、高分子分散剤の含有割合は酸化銀に対して質量比で(4×0.4/25)×100=6.4%となる。なお、Disperbyk2015は、スチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、この無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコールによって変性されたものからなる。
次いで、この懸濁液に超音波装置H3 650((有)カワジリマシナリー社製)を使用して、15〜17℃の室温下で2時間、20KHzで照射した。次に1μmのフィルターでろ過して褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この銀ナノ粒子分散液の波長と吸光度との関係を図1に示した。図1に示すように、この銀ナノ粒子分散液は425nm付近に銀ナノ粒子に由来する表面プラスモンバンドも観測できている。この銀ナノ粒子分散液は室温下での保管で沈殿や増粘も無く、安定していた。
[実験例2]
実験例1で使用した2−プロパノールをエチルアルコールに変更した以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この銀ナノ粒子分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く、安定していた。
[実験例3]
実験例1で使用した2−プロパノールを2−メチル−1−プロパノールに変更した以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例4]
実験例1で使用した2−プロパノールを1−メトキシ−2−プロパノールに変更した以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例5]
Disperbyk2015 5gを2−プロパノール100gに溶解し、酸化銀粉末12gを懸濁させた。得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して質量比で(5×0.4/12)×100=16.7%となる。それ以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例6]
Disperbyk2015 2gを2−プロパノール100に溶解し、酸化銀粉末25gを懸濁させた。得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して質量比で(2×0.4/25)×100=3.2%となる。それ以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例7]
実験例1で使用した2−プロパノールを1−プロパノールに変更し、Disperbyk2015の添加量を6.3gに変更した以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対し質量比で(6.3×0.4/25)=10%となる。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例8]
実験例1で使用した2−プロパノールを1−ブタノールに変更し、Disperbyk2015の添加量を3.1gに変更した以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対し質量比で(3.1×0.4/25)×100=5%となる。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例9]
前記第2の高分子分散剤5gを2−プロパノール100gに溶解し、酸化銀粉末25gを懸濁させた。この高分子分散剤の不揮発分の酸価は17であり、得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して質量比で(5×0.4/25)×100=8%となる。それ以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液も、室温下での保管で沈殿や増粘も無く安定していた。
[実験例10]
高分子分散剤を添加しなかった以外は実験例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。
[実験例11]
高分子分散剤にHiplaad ED117(ポリエステル酸のアミン塩、楠本化成社製、不揮発分50%、酸価33)4gを2−プロパノール100g中に溶解し、酸化銀粉末25gを懸濁させた。この高分子分散剤の不揮発分の酸価は66であり、得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して質量比で(4×0.5/25)×100=8%となる。それ以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。
[実験例12]
前記第1の高分子分散剤の樹脂3gを2−プロパノール100g中に溶解し、酸化銀粉末25gを懸濁させた。この高分子分散剤の不揮発分の酸価は250であり、得られた銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対し質量比で(3×0.7/25)×100=8.4%となる。それ以外は実験例1の場合と同様にして褐色の銀ナノ粒子分散液を得た。
[銀鏡膜塗装の作製]
上述のようにして調製された実験例1〜12のそれぞれの銀ナノ粒子分散液をエチルアルコールで5倍に稀釈して黒色ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)板にスプレー塗装し、常温下で30分間乾燥させた。得られた銀鏡膜層の外観を目視により確認し、表面に形成されている銀鏡膜層の外観に異常やその一部にふくれが認められなかったものを◎、銀鏡膜層の外観に異常やその一部にふくれが認められたものを×、銀鏡膜層の外観に若干の白化が認められたものを○として評価した。
また、得られた銀鏡膜発色性の指標として、色差計Color Reader CR−10(コニカミノルタ株式会社製)を使用してb値を、また光沢計UNI−GLOSS60(コニカミノルタ株式会社製)を使用して60度−60度鏡面膜反射率(%)を複数箇所において測定し、平均値として求めた。結果をまとめて表1に示した。

なお、実験例10では、銀鏡膜を形成せず、ビーカー壁面に銀粒子が析出していた。また、実験例11及び12では、銀鏡膜を形成せず、黒褐色の沈殿が見られた。
表1に示した結果から、以下のことが分かる。実験例1〜4の結果によれば、アルコールの種類が、2−プロパノール、エチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール及び1−メトキシ−2−プロパノールのいずれであっても、良好な銀鏡膜が得られている。このことから銀ナノ粒子分散液中の高分子分散剤の含有割合が酸化銀に対して質量比で6.4%程度の場合においては、アルコールの種類は銀鏡膜層形成に影響を与えないことが分かる。
また、アルコールの種類が2−プロパノールであり、高分子分散剤の酸価が25であり、高分子分散剤の含有割合のみが異なる実験例1、5及び6の結果を参照すると,以下のことがわかる。すなわち、高分子分散剤の含有割合が酸化銀に対して質量比で6.4%の場合(実験例1)は、最も良好な銀鏡膜層が得られている。しかし、高分子分散剤の含有割合が酸化銀に対して質量比で16.7%(実験例5)の場合及び3.2%(実験例6)の場合は、塗膜の外観に若干の白化が認められた。一方、高分子分散剤が添加されていない実験例10では銀鏡膜層が形成できないことを考慮すると、アルコール溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して質量比で2〜25%の範囲内であれば一応良好な銀鏡膜層を形成することができる。
しかし、予備実験によると、高分子分散剤の銀化合物に対する添加量が質量比で4%未満であると得られる銀鏡膜層の黄味が強くなり(色差計のb値が増加)、同じく15%を超えると青味が強くなり(色差計のb値が減少)、光沢も低下する傾向となる。そのため、好ましい高分子分散剤の銀化合物に対する添加量は質量比で4〜15%であり、より好ましくは5〜10%である。
[実験例13]
黒色ABS板の表面に、下塗り塗料としてアクリルポリオール樹脂(アクリディックWXU−880):イソシアネート硬化剤(タケネートD−160N):シンナー=100:6:60(質量比)となるように混合し、スプレー塗装して80℃で30分間加熱した。次いで、実験例1の銀ナノ粒子分散液をエチルアルコールで5倍に希釈してスプレー塗装し、常温下で30分間乾燥した。
このようにして形成された銀鏡膜層の表面に、上塗り塗料として、アクリルポリオール樹脂(アロタン2050−55):イソシアネート硬化剤(タケネートD−160N):シンナー=70:10:50となるように混合し、スプレー塗装して80℃で30分間加熱した。その後、常温下で5日間放置し、実験例13の上塗り層が設けられた銀鏡膜層形成試料を得た。この試料を用いて、以下に示す各種試験に供した。
(1)付着性評価試験、
(2)不粘着性評価試験、
(3)耐湿付着性試験、
(4)冷熱繰り返し付着性試験、
(5)耐水性試験、
(6)紫外線耐光試験、
(7)耐衝撃性試験、
(8)耐アルカリ性試験、
(9)耐酸性試験、及び、
(10)耐人工汗試験を行なった。
結果をまとめて表2に示した。なお、それぞれの試験の判断基準は以下に示したとおりである。
(1)付着性評価試験
付着性評価試験は、JIS5600−5−6(2007)に準じて評価した。すなわち、実験例13の試料の表面に形成されている上塗り層にカッターナイフを垂直に当てて、2mm×2mm角の碁盤目(100マス)に切込みを入れた後、各々の表面に接着強度0.44±0.05kgf/mmの接着テープを貼り付け、その後、これを45°の角度で急激に引き剥がす付着性試験を行い、上塗り層の剥離の有無を調べた。結果は、目視により、碁盤目(100マス)中上塗り層の剥離が1箇所も認められなかったものを○、上塗り層の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(2)不粘着性評価試験
50℃±2℃に設定された恒温槽内に、500gの重り(直径(φ):40mm)、複数枚のガーゼ、実験例13の試料を収容し、2時間放置した後、恒温槽内で上塗り層の表面上にガーゼを5枚を重ね、更にその上に500gの重りを載置し、更に2時間放置した。その後、この試料を恒温槽内から取り出して、常温(25℃)となるまで放置した。結果は、目視により、上塗り層の表面の重りを載置した部分にガーゼの痕が視認できる場合は×、できない場合は○として評価した。
(3)耐湿付着性試験
耐湿付着性試験は、実験例13の試料を、40℃±1℃、相対湿度(RH):95%以上の恒温槽内に収容して120時間放置し、その後、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。結果は、目視により、碁盤目(100マス)中、この試料の上塗り層の剥離が1箇所もなかったものを○、上塗り層の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(4)冷熱繰り返し付着性試験
冷熱繰り返し付着性試験は、実験例13の試料を、−30℃に1時間放置し、その後、60℃に2時間放置するというサイクルを3回行った後、この試料について上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。結果は、目視により、碁盤目(100マス)中、この試料の上塗り層の剥離が1箇所も認められなかったものを○、1箇所でも認められたものを×として評価した。
(5)耐水性試験
耐水性試験は、実験例13の試料を、40℃の水に24時間浸漬した後、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。結果は、目視により、碁盤目(100マス)中、上塗り層の剥離が1箇所もなかったものを○、上塗り層の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(6)紫外線耐光試験
紫外線オートフェーダドメーター(U48AU、スガ試験機株式会社製)を用い、実験例13の試料に紫外線を200時間照射した後、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。結果は、目視により、碁盤目(100マス)中、上塗り層の剥離が1箇所も認められなかったものを○、上塗り層の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(7)耐衝撃性試験
耐衝撃性試験は、JIS K5600−5−3に準拠して行なった。すなわち、デュポン式衝撃試験機を用いて、実験例13の試料の表面に500gの重りを300mmの高さから落下した。結果は、目視により、上塗り層に割れや剥離が認められなかったものを○、上塗り層に割れや剥離が認められものを×として評価した。
(8)耐アルカリ性試験
耐アルカリ性試験は、JIS K5600−6−1に準拠して行なった。すなわち、実験例13の試料を、55℃の0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した後、表面に形成されている上塗り層を目視により観察し、上塗り層の外観に異常や、その一部にふくれが認められなかったものを○、上塗り層の外観に異常や、その一部にふくれが認められたものを×として評価した。
(9)耐酸性試験
耐酸性試験は、JIS K5600−6−1に準拠して行なった。すなわち、実験例13の試料を、55℃の0.1Nの硫酸水溶液に24時間浸漬した後、表面に形成されている上塗り層を目視により観察し、上塗り層の外観に異常や、その一部にふくれが認められなかったものを○、上塗り層の外観に異常や、その一部にふくれが認められたものを×として評価した。
(10)耐人工汗試験
人工汗は、JIS−L−1047に準じて調製した。すなわち、L−ヒスチジン塩酸塩(1水塩)0.5g、塩化ナトリウム5g、燐酸水素二ナトリウム(12水塩)5g、(1/10)N水酸化ナトリウム溶液25mlと蒸留水を加え、pH8.0で全容が1リットルになるよう調整したものである。この人工汗を、実験例13の試料の表面に滴下し、室温(25℃)にて8時間処理した。この処理の後、上塗り層上の人工汗をふき取り、表面状態を目視観察し、上塗り層の外観に異常や、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められなかったものを○、上塗り層に異常や、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められ、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められた場所と人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められない場所との色相との違いが観察されたものを×として評価した。
表2に示した結果によれば、実験例1で得られた銀鏡膜層形成用組成液を用いれば、良好な特性を有する銀鏡膜層を形成できることが確認された。
なお、上記実験例1〜9では、高分子量分散剤としてスチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものを用いた例を示した。しかしながら、予備実験による結果によれば、例えば、Disperbyk111(酸価129)、Disperbyk192(酸価0,ノニオン系)等、スチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有さないものであっても酸価が150以下の高分子分散剤であれば、良好な銀鏡膜層を形成し得ることが確認されている。
また、上記各実験例では、銀化合物として酸化銀を用いた例のみ示したが。炭酸銀を用いても同様の結果が得られている。

Claims (6)

  1. アルコール溶媒中にスチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀及び炭酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に超音波を照射することにより銀ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることからなる銀鏡膜層形成用組成液の製造方法
  2. 前記アルコール溶液中の銀化合物の濃度5〜40質量%とした、請求項1に記載の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法
  3. 前記アルコール溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種を用いた、請求項1又は2に記載の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法
  4. 前記ポリアルキレングリコールとして、ポリエチレングリコール鎖とポリプロピレングリコール鎖のモル比率が6/4〜8/1であり、分子量は500〜3000のものを用いた、請求項1〜3のいずれかに記載の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法
  5. 前記高分子分散剤の前記銀化合物に対する添加量不揮発分の質量比で2〜25%とした、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成用組成液の製造方法
  6. 請求項1〜の何れかに記載の製造方法により得られた銀鏡膜層形成用組成液を被塗装物の表面にスプレー塗装する工程と、
    前記スプレー塗装された銀鏡膜層形成用組成液を常温下で乾燥する工程と、
    を備える、銀鏡膜層の形成方法。
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