JP5950042B2 - ガス供給管および熱処理装置 - Google Patents
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Description
この発明は、ガス供給管と、それを用いて炉体内部の被処理物に雰囲気ガスを供給しながら熱処理を行なう熱処理装置とに関するものである。
セラミックコンデンサに代表されるセラミック電子部品を得るために実施される焼成など、被処理物の熱処理には、その目的に応じた雰囲気ガスがガス供給手段から供給される熱処理装置が広く用いられている。
大量の被処理物を処理する熱処理装置として、積載部材に載置された被処理物を、搬送機構によって搬送しながら連続して処理する、ローラハース炉、メッシュベルト炉、およびプッシャ炉などの連続炉が挙げられる。
これらの連続炉において、多くの場合、雰囲気ガスは、予熱された後に被処理物に対して供給される。ガス供給手段は、ヒータによって加熱された炉体の内部空間に露出するように配設されるガス供給管を含む。雰囲気ガスの予熱は、炉体の内部空間の温度で加熱されたガス供給管の内部を流れる間に行われる。
その一例として、特開2012−225620号公報(特許文献1)には、炉体内部に配設されたガス供給管を外側管と内側管とからなる二重管とし、雰囲気ガスが内側管を流れる間と二重管の隙間を流れる間に、炉体の内部空間の温度により予熱する方法が提案されている。
特許文献1に記載のガス供給管101を図10Aおよび図10Bに示す。外側管102は、管壁に貫通孔103を備えている。内側管105は、管壁に貫通孔110を備えている。外側管102と内側管105との隙間107には、隙間107を炉体外部の雰囲気から隔絶し、外側管102の内部で内側管105を支持するためのブッシュ108が挿入されている。
また、外側管102と内側管105とは、内側管105の貫通孔110の輪郭を外側管102の内壁面に垂直投影したときの投影像と、外側管102の貫通孔103とが重ならないように配置されている。
ガス供給管101は、不図示の炉体内部に配設され、炉体外部に備えられた不図示のガス供給源に接続されている。
ガス供給管101におけるガスの流れについて説明する。ガス供給源から内側管105の両端に供給された雰囲気ガスは、矢印aで示したように内側管105の内部106を流れ、その途中で、矢印bで示したように内側管105の貫通孔110から隙間107に放出される。隙間107に放出された雰囲気ガスは、矢印cで示したように外側管102の内壁面に沿って流れ、最終的には、矢印dで示したように外側管102の貫通孔103から炉内に放出される。
そして、雰囲気ガスは、内側管105の内部106を流れる間と、隙間107を流れる間に、炉内温度によって予熱される。
特許文献1では、上記のガス供給管は、余分なスペースを要さずに、均一な温度の雰囲気ガスを被処理物に供給できるとされている。
特許文献1に記載のガス供給管では、内側管105の内部106を流れる雰囲気ガスは、内側管105と接触することにより加熱される。しかしながら、内側管105の内部106の中心軸線近傍を流れる雰囲気ガスは、内側管105の管壁から離れているため加熱されにくい。
また、炉体外部近傍にある内側管105の貫通孔110a、110gから隙間107に噴出する雰囲気ガスは、内側管105を流れる距離が短いため、内側管105に接触する距離が短い。そのため、そのような雰囲気ガスは、特に予熱が不充分となるおそれがある。
すなわち、特許文献1の熱処理装置では、雰囲気ガスの予熱が充分とは言えない。このことは、供給する雰囲気ガス量が多くなるにつれて顕著となる。
雰囲気ガスが供給経路の途中で充分に予熱されず、低い温度のままで大量の被処理物に供給されると、雰囲気ガスとの接触の具合によって、被処理物の温度にばらつきが生じる。被処理物の熱処理中の温度のばらつきは、熱処理後の状態のばらつきの原因となる。また、被処理物の熱処理後の状態のばらつきは、熱処理後の被処理物を用いて製造される各種製品の性能のばらつきの原因となる。
したがって、雰囲気ガスを充分に予熱し、熱処理中の被処理物の温度のばらつきを抑制することが求められている。
そこで、この発明の目的は、供給される雰囲気ガスを充分に予熱することができるガス供給管と、熱処理中の被処理物の温度のばらつきを抑制することができる熱処理装置とを提供することである。
この発明では、供給される雰囲気ガスを充分に予熱できるガス供給管を提供するため、ガス供給管の内部構造についての改良が図られる。
この発明に係るガス供給管は、外側管と内側管とを含む。外側管は、一端が閉じられており、管壁に長さ方向に配列された複数の貫通孔を備える。内側管は、一端がガス供給源に接続され、前記外側管の内部に挿入される。
ガス供給源から供給されたガスは、内側管を通り、外側管の内部に形成された外側管と内側管との隙間を通り、外側管の複数の貫通孔からガス供給管の周囲空間に放出される経路で流れる。供給されたガスは、内側管を流れる間と、外側管と内側管との隙間を流れる間に、ガス供給管に伝わった周囲空間の温度により加熱または冷却される。
また、内側管は、複数の小管の集合体を含む。
上記のガス供給管では、内側管は、複数の小管の集合体を含む。したがって、内側管が単なる円筒である場合に比べて、内側管と、内側管を流れるガスとが接触しやすくなっている。
上記のガス供給管では、内側管は、複数の小管の集合体を含む。したがって、内側管が単なる円筒である場合に比べて、内側管と、内側管を流れるガスとが接触しやすくなっている。
そのため、上記のガス供給管は、ガス供給源から供給されたガスを、内側管を流れる間と、外側管と内側管との隙間を流れる間との両方で、ガス供給管に伝わった周囲空間の温度に充分なじませることができる。その結果、外側管に設けられた複数の貫通孔から、充分に均一な温度のガスを周囲空間に放出することができる。
また、この発明に係るガス供給管は、内側管に含まれる小管の内部に、挿入部材が挿入されていてもよい。
上記のガス供給管では、小管の内部に挿入部材が挿入されているため、内側管の内部の表面積は、複数の小管自体の表面積と、挿入部材の表面積とを合わせたものになる。したがって、内側管が単なる円筒である場合に比べて、内側管と供給されたガスとの接触面積がさらに大きくなる。
また、この発明に係るガス供給管は、内側管を構成する小管の管壁の一部が、小管の中心軸線に向かって突出していてもよい。
上記のガス供給管では、小管の管壁の一部を、小管の中心軸線に向かって突出させているため、小管の内部の表面積自体が大きくなる。したがって、内側管が単なる円筒である場合に比べて、内側管と供給されたガスとの接触面積がさらに大きくなる。
また、この発明は、熱処理中の被処理物の温度のばらつきを抑制できる熱処理装置にも向けられる。
この発明に係る熱処理装置は、断熱壁に囲まれた内部空間を有する炉体と、炉体の内部空間に露出するように配設されたガス供給管を含むガス供給機構と、炉体の内部空間を加熱する加熱機構とを含む。
この熱処理装置は、ガス供給機構により炉体の内部空間に雰囲気ガスを供給し、雰囲気ガス環境下で被処理物を加熱機構により加熱して、被処理物を熱処理する。
ガス供給機構に含まれるガス供給管は、この発明に係るガス供給管である。
この発明に係るガス供給管は、上記のように、供給されるガスをガス供給管に伝わった周囲空間の温度に充分なじませることができる。したがって、この発明に係るガス供給管を用いた熱処理装置では、供給された雰囲気ガスが、炉体の内部空間の温度に充分になじみ、予熱された状態で、炉体内部に放出される。そのため、熱処理中の被処理物の温度のばらつきが抑制され、被処理物の熱処理後の状態が均一となる。その結果、熱処理後の被処理物を用いて製造される各種製品の性能のばらつきがなく、製品の歩留まりを高くすることができる。
この発明に係るガス供給管は、上記のように、供給されるガスをガス供給管に伝わった周囲空間の温度に充分なじませることができる。したがって、この発明に係るガス供給管を用いた熱処理装置では、供給された雰囲気ガスが、炉体の内部空間の温度に充分になじみ、予熱された状態で、炉体内部に放出される。そのため、熱処理中の被処理物の温度のばらつきが抑制され、被処理物の熱処理後の状態が均一となる。その結果、熱処理後の被処理物を用いて製造される各種製品の性能のばらつきがなく、製品の歩留まりを高くすることができる。
この発明に係るガス供給管は、ガス供給源から供給されたガスを、内側管を流れる間と、外側管と内側管との隙間を流れる間との両方で、ガス供給管に伝わった周囲空間の温度に充分なじませることができる。その結果、この発明に係るガス供給管は、外側管に設けられた複数の貫通孔から、充分に均一な温度のガスを周囲空間に放出することができる。
また、この発明に係る熱処理装置は、この発明に係るガス供給管を用いて充分に均一な温度の雰囲気ガスを被処理物に対して供給することにより、熱処理中の被処理物の温度のばらつきを抑制することができる。そのため、被処理物の熱処理後の状態が均一となる。その結果、熱処理後の被処理物を用いて製造される各種製品の性能がばらつくことがなく、製品の歩留まりを高くすることができる。
−第1の実施の形態−
この発明の第1の実施形態に係るガス供給管1について、図1A,図1B,図1Cおよび図2A,図2B,図2Cを用いて説明する。
この発明の第1の実施形態に係るガス供給管1について、図1A,図1B,図1Cおよび図2A,図2B,図2Cを用いて説明する。
ガス供給管1は、外側管2と内側管5とを含む。外側管2は、一端が閉じられており、管壁に長さ方向に配列された複数の貫通孔3(3a〜3i)を備える。また、外側管2は、例えば後述の熱処理装置11の側部断熱壁15に取り付けられる際の支持部材であるフランジ4を他端に備える。
内側管5は、一端が不図示のガス供給源に接続され、外側管2の内部に挿入される。内側管5が外側管2に挿入されることにより形成された隙間7には、隙間7を周囲空間から隔絶し、内側管5を外側管2の内部で支持するためのブッシュ8が挿入されている。
内側管5は、複数の小管5a〜5dの集合体となっている。この実施形態では、複数の小管5a〜5dは一体成形されている。
ガス供給管1におけるガスの流れについて、図2Bを用いて説明する。ガス供給源から内側管5の一端に供給されたガスは、矢印Aで示したように小管5aの内部6aおよび小管5cの内部6cを通って、矢印Bで示したように内側管5の他端から外側管2の内部に放出される。
外側管2の内部に放出されたガスは、矢印Cで示したように隙間7に沿って流れ、最終的には、矢印Dで示したように外側管2の複数の貫通孔3(3a〜3i)から周囲空間に放出される。この経路は、小管5bの内部6bおよび小管5dの内部6dをガスが流れる場合も同様である。
なお、図2Bでは、矢印Cで示したガスは、隙間7の貫通孔3に近い部分を流れているように図示されているが、実際には隙間7全体に亘って流れている。
ガス供給管1は、種々の場所に配設され得るが、いずれにしても、ガス供給管1には、ガス供給管1の周囲空間の温度が伝わっている。したがって、供給されたガスは、内側管5を流れる間と、外側管2と内側管5との隙間7を流れる間との両方で、ガス供給管1に伝わった周囲空間の温度により加熱または冷却される。
上記の内側管5が、単なる円筒に比べてガスとの接触面積が大きく、流れるガスが周囲環境の温度となじみやすくなることについて、図3A,図3Bおよび図4A,図4Bを用いて説明する。
図3Aは、比較例の内側管35の断面の拡大図である。内側管35は、通常の構造の管である。内部36の断面は、円形であって、面積Sと周長Pとを有する。すなわち、内側管35の長さをLとすると、内側管35の内容積はSLとなる。また、内側管35の内部の表面積はPLとなる。
図3Bは、この発明の内側管5の断面の拡大図である。内側管5は、上記のように複数の小管5a〜5dの集合体となっている。小管5aの内部6aの断面は円形であって、断面積Saおよび周長Paを有する。小管5bの内部6bの断面も円形であって、断面積Sbおよび周長Pbを有する。小管5cの内部6cの断面も円形であって、断面積Scおよび周長Pcを有する。小管5dの内部6dの断面も円形であって、断面積Sdおよび周長Pdを有する。
図3Bでは、内部6aの断面積Sa、内部6bの断面積Sb、内部6cの断面積Sc、および内部6dの断面積Sdは、いずれもS/4となるように設定されている。その場合、内部6aの周長Pa、内部6bの周長Pb、内部6cの周長Pcは、内部6dの周長Pdは、いずれもP/2となる。そのため、小管6a〜6dの断面積の和Sa+Sb+Sc+SdをSTとしたとき、STはSとなる。また、断面の周長の和Pa+Pb+Pc+PdをPTとしたとき、PTは2Pとなる。すなわち、内側管5の長さをLとすると、内側管5の内容積はSLとなる。また、内側管5の内部の表面積は2PLとなる。
したがって、内側管5は、内側管35と同じ内容積でありながら、内部の表面積は2倍になっており、小管5a〜5dを流れるガスとの接触面積が大きくなっている。
図4Aは、図3Aの内部36にガスが流れている場合に、そのガスの温度を、温度の高さに対応した領域に区分けして示した模式図である。また、図4Bは、図3Bの小管5a〜5dにガスが流れている場合に、それらのガスの温度を、温度の高さに対応した領域に区分けして示した模式図である。
なお、図4Aおよび図4Bでは、内側管からの放熱は、管の形状によらず同じであると仮定している。図4Aおよび図4Bにおいて、各領域間での温度の関係は、H6<H5<H4<H3<H2<H1であり、H1が最も温度の高い領域を示し、H6が最も温度の低い領域を示している。
図4Aでは、内側管35の内部36の管壁近傍を流れるガスの温度は高くなっているが、中央近傍を流れるガスの温度は低いままである。一方、図4Bでは、内側管5の小管5a〜5dを流れるガスは、中央部近傍まで温度が高くなっている。この違いは、供給されるガス量が多くなるにつれて顕著になる。これは、上記で説明したように、小管5a〜5dの集合体である内側管5は、内側管5を流れるガスとの接触面積が大きくなっており、周囲環境の温度をガスに伝えやすくなっているためである。
すなわち、この発明における内側管5では、ガス供給源から供給されたガスを、内側管5を流れる間に、ガス供給管の周囲空間の温度に充分なじませることができる。
また、内側管5は小管5a〜5dの集合体であるため、その外表面も、同じ内容積を有する単なる円筒に比べて面積が大きくなっている。そのため、ガス供給管1では、外側管2と内側管5との隙間7を流れるガスとの接触面積も大きくなっている。
したがって、上記のガス供給管1は、ガス供給源から供給されたガスを、内側管5(小管5a〜5d)を流れる間と、外側管2と内側管5との隙間7を流れる間との両方で、ガス供給管1に伝わった周囲空間の温度に充分なじませることができる。その結果、上記のガス供給管1は、外側管2に設けられた複数の貫通孔3(3a〜3i)から、充分に均一な温度のガスを周囲空間に放出することができる。
上記で説明したこの発明の第1の実施形態に係るガス供給管1を用いた熱処理装置11について、図5A,図5Bおよび図6を用いて説明する。
熱処理装置11は、炉体12と、ガス供給機構18と、加熱機構19と、搬送機構22とを備える。被処理物27は、ガス供給機構18から供給される所定の雰囲気ガスで満たされる炉体12の内部を、積載部材26に載置された状態で搬送機構22により搬送されながら、加熱機構19により加熱されることにより熱処理される。
炉体12は、上部断熱壁13と、下部断熱壁14と、側部断熱壁15とを含む。炉体12の内部空間は、熱処理ゾーン隔壁16により、複数の熱処理ゾーンに分割される。熱処理ゾーン隔壁16には、被処理物27を載置した積載部材26が搬送中に通過できる通過口17が設けられている。
ガス供給機構18は、ガス供給管1と、不図示のガス供給源とを含む。ガス供給管1は、2つある側部断熱壁15の一方側から、炉体12を横断する方向で、炉体12の内部空間に突出するように配設され、フランジ4によって側部断熱壁15に取り付けられている。各熱処理ゾーンには、入口側と出口側の熱処理ゾーン隔壁16近傍に1本ずつ、合計2本のガス供給管1が配設されている。
加熱機構19は、上部ヒータ20と、下部ヒータ21と、不図示の電源と、不図示の出力コントローラとを含む。出力コントローラは、上部ヒータ20および下部ヒータ21の出力を調整し、上記の熱処理ゾーン内部の温度環境を所定の状態に設定する。
搬送機構22は、搬送ローラ23と、不図示の基台上に支持される支持部材24と、駆動手段25とを含む。搬送ローラ23は、駆動手段25により所定の速度で回転される。被処理物27を載置した積載部材26は、搬送ローラ23上に載置されることにより、所定の速度で炉体12の内部を矢印Cの方向に搬送される。搬送速度は、熱処理ゾーン毎に設定される。
各熱処理ゾーンは、上部ヒータ18および下部ヒータ19の出力を出力コントローラで調整することにより、所定の条件の昇温ゾーン、温度保持ゾーンおよび降温ゾーンのいずれかとなっている。熱処理装置11は、昇温ゾーン、温度保持ゾーンおよび降温ゾーンを組み合わせ、かつ各ゾーンでの搬送速度を調整することにより、所定の温度プロファイルを設定することができる。したがって、被処理物24は、熱処理装置11の炉体12の内部を搬送機構22によって搬送される間に、所定の温度プロファイルで熱処理されることになる。
ガス供給源から供給される所定の雰囲気ガスは、ガス供給管1の内部を流れる際に、ガス供給管1に伝わった炉体12の内部空間の温度により予熱される。ガス供給管1の外側管2の貫通孔3からは、矢印Fの方向に予熱された雰囲気ガスが連続的に放出される。その結果、炉体12の内部空間は、所定の雰囲気ガスで満たされた状態が維持される。
図6は、ガス供給管による雰囲気ガスの予熱のされ方の違いについて、図3Aに示した内側管35を備えるガス供給管を用いた場合(比較例)と、図3Bに示した内側管5を備えるガス供給管1を用いた場合(実施例)とを比較して示したものである。なお、比較例のガス供給管は、内側管5を内側管35に変更し、その他の部材はガス供給管1と同じにしたものである。
温度測定箇所は、最高温度保持ゾーンに配設されている2本のガス供給管1のうち、入口側の熱処理ゾーン隔壁16近傍に配設されたものの「先端付近」(外側管の貫通孔3a付近)、「先端−中央間」(同3c付近)、「中央付近」(同3e付近)、「中央−根元間」(同3g付近)および「根元付近」(同3i付近)である。
ガス供給管1の内部で予熱された状態の雰囲気ガスの温度が測定できるように、各貫通孔の近傍で、放出直後の雰囲気ガスが当たるような位置に熱電対を配置した。最高温度保持ゾーンの設定温度は、通常のセラミック電子部品を焼成する際に設定する温度とした。なお、図6では、測定箇所における温度を、設定温度からの偏差の形で表している。
ガス供給管の「根元付近」および「中央−根元間」においては、比較例と実施例との間で、測定温度の違いはほとんど見られない。これは、どちらのガス供給管を用いても、ガス供給管の外側管2の貫通孔3iから放出される雰囲気ガスは、内側管5(または内側管35)と外側管2との隙間7を流れる間に充分に予熱されているからである。
しかし、隙間7を流れる距離が短くなるほど、用いたガス供給管の違いに対応した測定温度の違いが顕著になっている。比較例においては、雰囲気ガスは内側管35の内部を流れる間には充分予熱されていない。さらに、隙間7を流れる距離が短くなるほど、そこでの予熱も不充分になる。
したがって、隙間7を流れる距離が比較的短い外側管2の貫通孔3a〜3fから放出される雰囲気ガスは、温度が十分に上がらないまま放出されている。特に、隙間7を流れる距離が最も短い貫通孔3aから放出される雰囲気ガスの影響を受けるガス供給管の「先端付近」の温度の低下が著しい。その結果、放出された雰囲気ガスは、ガス供給管の「先端付近」から「中央付近」の炉体12内部の温度を下げてしまう。
一方、実施例においては、雰囲気ガスは内側管5の内部を流れる間に充分予熱されている。そのため、隙間7を流れる距離が短くても、予熱が不充分になることはない。
したがって、隙間7を流れる距離が比較的短い外側管2の貫通孔3a〜3fから放出される雰囲気ガスであっても、温度が充分に上がっている。その結果、放出された雰囲気ガスは、外側管2の貫通孔3a〜3f付近の炉体12内部の温度を下げることはない。
なお、実施例においてガス供給管の「根元付近」および「先端付近」で炉体12内部の温度が若干低くなっている理由としては、側部断熱壁15による吸熱の影響が考えられるが、詳細は不明である。また、温度の低下がこの程度であれば、被処理物の温度のばらつきは抑制され、被処理物の熱処理後の状態は、充分均一であることが確認されている。
すなわち、この発明に係る熱処理装置11では、供給された雰囲気ガスが、炉体内部の温度で充分に予熱された状態で、炉体12内部に放出される。そのため、熱処理中の被処理物の温度のばらつきが抑制され、被処理物の熱処理後の状態が均一となる。その結果、熱処理後の被処理物を用いて製造される各種製品の性能がばらつくことがなく、製品の歩留まりを高くすることができる。
この発明の第1の実施形態では、熱処理装置11として、積載部材26の搬送媒体が搬送ローラ23である、いわゆるローラハース炉を例として説明したが、この発明はその他の形態の熱処理装置にも適用できる。
また、この発明の熱処理装置は、ガラス基板などの基材に塗布された金属材料または無機材料を含むペーストの乾燥または焼成、あるいは金属材料または無機材料を含む粉体の仮焼などの熱処理に広く適用することができる。
なお、この発明の第1の実施の形態として、内側管5が、図3Bに示す複数の小管5a〜5dを一体成形したものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、図7に示すように、内側管5として、複数の小管5a〜5dを、接合材9で接合したものを用いてもよい。この場合、出来合いの小管を接合材9で接合することにより内側管5を容易に作製できる。
−第2の実施形態−
この発明の第2の実施形態に係るガス供給管1の内側管5について、図8を用いて説明する。
この発明の第2の実施形態に係るガス供給管1の内側管5について、図8を用いて説明する。
図8は、この発明の第2の実施形態に係るガス供給管1の内側管5の断面の拡大図である。図8に示す内側管5では、内側管5を構成する小管5a〜5dの内部6a〜6dに、断面が十字形で隔壁状の挿入部材10が挿入されている。そのため、内側管5の内部の表面積は、小管5a〜5d自体の表面積と、挿入部材10の表面積とを合わせたものになり、内側管5が単なる円筒である場合に比べて、供給されたガスとの接触面積がさらに大きくなる。
挿入部材10は、内側管5を構成する小管5a〜5dの温度が、その内部6a〜6dの空間内に効率的に伝わるように、小管5a〜5dの内周面と密着して挿入されている。そのため、挿入部材10の材質のモース硬度は、小管5a〜5dの材質のモース硬度以下であることが好ましい。この場合、小管5a〜5dの内部に挿入部材10を挿入する際に、小管5a〜5dの内部を傷つけることがない。
また、挿入部材10の熱膨張係数は、小管5a〜5dの材質の熱膨張係数と同一もしくは近いことが好ましい。この場合、挿入部材10が高温環境下において熱膨張した際に、小管5a〜5dの内周面に過度な応力が加わらず、小管5a〜5dが破損することがない。
なお、図8では、小管5a〜5dの内部6a〜6dに挿入される挿入部材10が、断面が十字形の隔壁状のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、挿入部材10として、糸状部材の集合体を用いてもよい。糸状部材の集合体は表面積が大きいため、供給されたガスとの接触面積を、少量でも大きくすることができる。
加えて、糸状部材の集合体は弾力性に富むため、小管5a〜5dの内部に挿入する際に、小管5a〜5dの内部を傷つけることがない。また、高温環境下において熱膨張した際に、小管5a〜5dの内周面に過度な応力が加わらず、小管5a〜5dが破損することがない。
−第3の実施形態−
この発明の第3の実施形態に係るガス供給管1の内側管5について、図9を用いて説明する。
この発明の第3の実施形態に係るガス供給管1の内側管5について、図9を用いて説明する。
図9は、この発明の第3の実施形態に係るガス供給管1の内側管5の断面の拡大図である。図9に示す内側管5では、内側管5を構成する小管5a〜5dの管壁の一部が、小管5a〜5dの中心軸線に向かって、断面が略矩形となるように突出している。この場合、小管5a〜5dの内部6a〜6dの表面積自体が大きくなる。そのため、内側管5が単なる円筒である場合に比べて、内側管5の内部の表面積自体がさらに大きくなる。この突出構造は、できるだけ小管5a〜5dの中心軸線に近い領域まで達している方が好ましい。これにより、内側管5の内部において、ガス供給源から供給されたガスとの接触面積を充分大きくすることができる。
なお、図9では、小管5a〜5dの管壁の突出構造として、断面が略矩形であるものを例示したが、これに限られるものではなく、断面が別の形状であってもよい。
この発明のガス供給管1の内側管5については、第2および第3の実施形態を組み合わせて、ガスとの接触面積をさらに大きくしてもよい。また、小管5a〜5dの形状は、全て同じである必要はなく、異なる形状の小管の集合体であってもよい。
また、この発明のガス供給管1の各構成要素の材質は、その使用目的に応じて適宜選択される。例えば、熱処理装置11に用いる場合は、高温の酸化性雰囲気にも耐えられる、アルミナなどの高融点セラミック材料を用いることができる。一方、比較的低温の環境下で用いる場合は、ステンレス鋼などの金属材料を用いてもよい。
この発明のガス供給管1は、ガス供給源から供給された低い温度のガスを、ガス供給管1の周囲温度で加熱する目的で用いてもよい。一方、ガス供給源から供給された高い温度のガスを、ガス供給管1の周囲温度で冷却する目的で用いてもよい。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
1 ガス供給管、2 外側管、3 外側管の貫通孔、5 内側管、5a、5b、5c、5d 小管、6a、6b、6c、6d 小管の内部、7 外側管と内側管との隙間、10 挿入部材、11 熱処理装置、12 炉体、18 ガス供給機構、19 加熱機構、27 被処理物。
Claims (4)
- 一端が閉じられており、管壁に長さ方向に配列された複数の貫通孔を備える外側管と、
一端がガス供給源に接続され、前記外側管の内部に挿入される内側管と
を含むガス供給管であって、
前記ガス供給源から供給されたガスは、前記内側管を通り、前記外側管の内部に形成された前記外側管と前記内側管との隙間を通り、前記外側管の複数の貫通孔から前記ガス供給管の周囲空間に放出される経路で流れ、かつ前記内側管を流れる間と、前記外側管と前記内側管との隙間を流れる間に、前記ガス供給管に伝わった周囲空間の温度により加熱または冷却され、
前記内側管は、複数の小管の集合体を含む、ガス供給管。 - 前記小管の内部に、挿入部材が挿入されている、請求項1に記載のガス供給管。
- 前記小管の管壁の一部が、前記小管の中心軸線に向かって突出している、請求項1または2に記載のガス供給管。
- 断熱壁に囲まれた内部空間を有する炉体と、
前記炉体の内部空間に露出するように配設されたガス供給管を含むガス供給機構と、
前記炉体の内部空間を加熱する加熱機構と、
を含み、
前記ガス供給機構により前記炉体の内部空間に雰囲気ガスを供給し、前記雰囲気ガス環境下で被処理物を加熱機構により加熱して、前記被処理物を熱処理する熱処理装置であって、
前記ガス供給管が、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガス供給管である、熱処理装置。
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