JP5942968B2 - レンジ切換制御装置 - Google Patents

Description

本発明は、モータを駆動源としてシフトレンジを切り換えるレンジ切換制御装置に関する発明である。

近年、自動車においても、省スペース化、組立性向上、制御性向上等の要求を満たすために、機械的な駆動システムを、モータによって電気的に駆動するシステムに変更する事例が増加する傾向にある。その一例として、車両の自動変速機のレンジ切換機構をモータで駆動するようにしたものがある。このものは、運転者のシフト操作等によって要求レンジが変更されたときに、モータを要求レンジに相当する目標位置まで回転させることで、シフトレンジを要求レンジに切り換えるようにしている。

また、特許文献１（特開２００４−２３８９０号公報）に記載されているように、モータの回転駆動中に目標位置が変更されてモータの回転方向を反転させる必要が生じたときに、モータを停止保持する処理を所定時間実行し、その後、モータの回転駆動を再開してモータを変更後の目標位置まで回転駆動するようにしたものがある。

特開２００４−２３８９０号公報

ところで、モータは、回転駆動中に急停止させたり、即座に回転方向を逆転させたりすることができない。このため、モータの回転駆動中（シフトレンジの切換中）に運転者のシフト操作等によって要求レンジが変更されたときに、その時点で即座に目標位置を変更すると、モータを目標位置で停止させることができない可能性がある。

上記特許文献１では、モータの回転駆動中に目標位置が変更されてモータの回転方向を反転させる必要が生じたときに、モータを停止保持する処理を所定時間実行した後に、モータの回転駆動を再開してモータを変更後の目標位置まで回転駆動することで対策している。しかし、モータの回転駆動中に目標位置が変更されたときに、モータの回転方向を反転させる必要がない場合でも、変更後の目標位置が近過ぎると、モータを目標位置で停止させることができない可能性がある。

そこで、モータの回転駆動中（シフトレンジの切換中）に要求レンジが変更された場合には、モータが変更前の要求レンジに相当する目標位置まで回転して変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に、モータを変更後の要求レンジに相当する目標位置まで回転させて変更後の要求レンジに切り換えるようにしたものがある。

しかし、この方法では、モータの回転駆動中に要求レンジが変更された場合には、毎回、変更前の要求レンジへの切り換えが完了するまで待ってから、変更後の要求レンジに切り換えることになる。このため、変更後の要求レンジへの切り換えが完了するまでの時間が長くなってしまい、レンジ切り換えの応答性が低下して、シフトフィーリングが悪化するという問題がある。

そこで、本発明が解決しようとする課題は、モータの回転駆動中に要求レンジが変更された場合のレンジ切り換えの応答性を向上させることができるレンジ切換制御装置を提供することにある。

上記課題を解決するために、請求項１に係る発明は、モータ（２７）を駆動源としてシフトレンジを複数のレンジ間で切り換えるレンジ切換機構（１６）と、要求レンジを変更する要求レンジ変更手段（１５）と、モータ（２７）を要求レンジに基づいて設定した目標位置まで回転させることでシフトレンジを要求レンジに切り換える制御手段（２３）とを備えたレンジ切換制御装置において、制御手段（２３）は、モータ（２７）の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ（２７）の回転方向が変更後の要求レンジに相当するモータ回転位置（以下「変更後の要求位置」という）へ向かう方向と同方向で且つ変更後の要求位置と現在のモータ回転位置（以下「現在位置」という）との差が所定の判定値よりも大きい場合には、その時点で目標位置を変更後の要求位置で更新するようにしたものである。

モータの回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータの回転方向が変更後の要求位置へ向かう方向と同方向の場合（つまりモータの回転方向を反転させる必要がない場合）には、変更後の要求位置が現在位置から十分に離れていれば、モータを変更後の要求位置で停止させることが可能である。

この点に着目して、本発明は、モータの回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータの回転方向が変更後の要求位置へ向かう方向と同方向で且つ変更後の要求位置と現在位置との差が判定値よりも大きい場合には、モータを変更後の要求位置で停止させることが可能であると判断して、その時点で目標位置を変更後の要求位置で更新するようにしている。

このようにすれば、変更前の要求レンジへの切り換えが完了するまで待つ必要がなく、速やかにモータを変更後の要求位置（目標位置）まで回転させて、速やかに変更後の要求レンジに切り換えることができる。これにより、モータの回転駆動中に要求レンジが変更された場合のレンジ切り換えの応答性を向上させて、シフトフィーリングを改善することができる。

図１は本発明の一実施例における自動変速制御システムの概略構成を示す図である。 図２はレンジ切換機構の斜視図である。 図３は目標位置設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 図４は要求レンジがＰ→Ｒ→Ｄと変更された場合の実行例を示すタイムチャートである。 図５は要求レンジがＰ→Ｄ→Ｒと変更された場合の実行例（その１）を示すタイムチャートである。 図６は要求レンジがＰ→Ｄ→Ｒと変更された場合の実行例（その２）を示すタイムチャートである。

以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図１に基づいて車両の自動変速制御システムの概略構成を説明する。
エンジン１１の出力軸（クランク軸）に、自動変速機１２の入力軸が連結されている。この自動変速機１２には、変速歯車機構（図示せず）と油圧制御回路１３等が設けられている。変速歯車機構には、変速段（変速比）を切り換えるための複数のクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素（図示せず）が設けられている。また、油圧制御回路１３には、摩擦係合要素に作用させる油圧を制御する油圧制御弁１４や、摩擦係合要素の作動油の油圧回路を切り換えるマニュアル弁１７が設けられている。このマニュアル弁１７は、レンジセレクタ１５の操作に連動してレンジ切換機構１６によって駆動される。

エンジン１１を制御するエンジンＥＣＵ１８は、アクセル開度（アクセルペダルの操作量）を検出するアクセルセンサ１９の出力信号等に基づいて、スロットル装置２０のスロットル開度（スロットルバルブの開度）や燃料噴射弁２１の燃料噴射量等を制御する。ここで、「ＥＣＵ」は「電子制御ユニット」を意味する（以下、同様）。

自動変速機１２の変速動作を制御するＡＴ−ＥＣＵ２２は、油圧制御回路１３の各油圧制御弁１４の開閉動作を制御して各摩擦係合要素に供給する油圧を制御することで自動変速機１２の変速段を目標変速段に切り換える。

自動変速機１２のレンジ切換動作を制御するＳＢＷ−ＥＣＵ２３は、レンジセレクタ１５（要求レンジ変更手段）で選択された要求レンジを検出するセレクタセンサ２４の出力信号に基づいてレンジ切換機構１６のモータ２７を制御する。これにより、運転者のレンジ切換操作に応じてマニュアル弁１７の切換動作を制御して自動変速機１２のシフトレンジを切り換える。レンジ切換機構１６とＳＢＷ−ＥＣＵ２３等からシフトバイワイヤシステムが構成されている。

エンジンＥＣＵ１８とＡＴ−ＥＣＵ２２とＳＢＷ−ＥＣＵ２３と通知装置２５等は、通信ライン２６（例えば車内ＬＡＮ回線等）を介して接続され、ＣＡＮ通信等により必要な情報を相互に送受信する。

図２に示すように、レンジ切換機構１６は、自動変速機１２のシフトレンジを、例えば、Ｐレンジ（パーキングレンジ）とＲレンジ（リバースレンジ）とＮレンジ（ニュートラルレンジ）とＤレンジ（ドライブレンジ）との間で切り換える４ポジション式のレンジ切換機構である。このレンジ切換機構１６の駆動源となるモータ２７は、例えばスイッチトリラクタンスモータにより構成されている。このモータ２７の回転軸が減速機構２８（図１参照）を介してマニュアルシャフト２９に連結され、このマニュアルシャフト２９にディテントレバー３０が固定されている。このディテントレバー３０には、ディテントレバー３０の回転に応じて直線運動するマニュアル弁１７（図１参照）が接続され、このマニュアル弁１７によって自動変速機１２の油圧回路を切り換えることで、シフトレンジを切り換えるようになっている。以上により、自動変速機１２のシフトレンジをモータ２７の回転角度に応じて制御することができるようになっている。

また、ディテントレバー３０にはＬ字形のパーキングロッド３８が固定され、このパーキングロッド３８の先端部に設けられた円錐体３９がロックレバー４１に当接している。このロックレバー４１は、円錐体３９の位置に応じて軸４２を中心にして上下動してパーキングギヤ４０をロック／ロック解除するようになっている。パーキングギヤ４０は、自動変速機１２の出力軸に設けられ、このパーキングギヤ４０がロックレバー４１によってロックされると、車両の駆動輪が回り止めされた状態（パーキング状態）に保持される。

一方、ディテントレバー３０をＰ、Ｒ、Ｎ、Ｄの各レンジに保持するためのディテントバネ４３が支持ベース３７に固定され、ディテントレバー３０には、Ｐ、Ｒ、Ｎ、Ｄの各レンジ保持凹部４４が形成されている。ディテントバネ４３の先端に設けられた係合部４３ａがディテントレバー３０の各レンジ保持凹部４４に嵌まり込んだときに、ディテントレバー３０が各レンジの位置に保持されるようになっている。これらディテントレバー３０とディテントバネ４３とからディテントレバー３０の回転位置を各レンジの位置に係合保持する（つまりレンジ切換機構１６を各レンジの位置に保持する）ためのディテント機構４５（節度機構）が構成されている。

Ｐレンジでは、パーキングロッド３８がロックレバー４１に接近する方向に移動して、円錐体３９の太い部分がロックレバー４１を押し上げてロックレバー４１の凸部４１ａがパーキングギヤ４０に嵌まり込んでパーキングギヤ４０をロックした状態となり、それによって、自動変速機１２の出力軸（駆動輪）がロックされた状態（パーキング状態）に保持される。

一方、Ｐレンジ以外のレンジでは、パーキングロッド３８がロックレバー４１から離れる方向に移動して、円錐体３９の太い部分がロックレバー４１から抜け出てロックレバー４１が下降し、それによって、ロックレバー４１の凸部４１ａがパーキングギヤ４０から外れてパーキングギヤ４０のロックが解除され、自動変速機１２の出力軸が回転可能な状態（走行可能な状態）に保持される。

図１に示すように、モータ２７には、ロータの回転角（回転位置）を検出するための回転角センサとしてエンコーダ３１が設けられている。このエンコーダ３１は、例えば磁気式のロータリエンコーダにより構成されており、モータ２７のロータの回転に同期して所定角度毎にパルス信号をＳＢＷ−ＥＣＵ２３に出力するように構成されている。ＳＢＷ−ＥＣＵ２３は、エンコーダ３１のパルス信号をカウントして、そのカウント値（以下「エンコーダカウント値」という）に応じてモータ２７の通電相を所定の順序で切り換えることでモータ２７を回転駆動する。上述したように自動変速機１２のシフトレンジはモータ２７の回転角度に応じて変化するため、エンコーダカウント値は、実際のシフトレンジを間接的に表している。

また、マニュアルシャフト２９又はディテントレバー３０の回転角（回転位置）を検出する回転角センサ３３が設けられている。この回転センサ３３は、マニュアルシャフト２９又はディテントレバー３０の回転角度に応じた電圧を出力するセンサ（例えばポテンショメータ）によって構成され、その出力電圧によって実際のシフトレンジが、Ｐレンジ、Ｒレンジ、Ｎレンジ、Ｄレンジのいずれであるかを確認できるようになっている。また、セレクタセンサ２４は、運転者がレバー式又はボタン式等のレンジセレクタ１５を操作することによって選択した要求レンジを検出し、その検出信号をＳＢＷ−ＥＣＵ２３へ出力する。

ＳＢＷ−ＥＣＵ２３は、運転者によるレンジセレクタ１５の操作によって要求レンジが変更されると、エンコーダカウント値に基づいてモータ２７を要求レンジに相当する目標位置まで回転させることで、シフトレンジを要求レンジに切り換えるようにしている。

ところで、モータ２７は、回転駆動中に急停止させたり、即座に回転方向を逆転させたりすることができない。このため、モータ２７の回転駆動中（シフトレンジの切換中）に運転者の操作によって要求レンジが変更されたときに、その時点で即座に目標位置を変更すると、モータ２７を目標位置で停止させることができない可能性がある。

そこで、本実施例では、ＳＢＷ−ＥＣＵ２３により後述する図３の目標位置設定ルーチンを実行することで、要求レンジが変更されたときに目標位置を次のようにして変更するようにしている。

ＳＢＷ−ＥＣＵ２３は、現在のモータ回転位置（エンコーダカウント値）を現在位置として算出し、要求レンジに相当するモータ回転位置（エンコーダカウント値）を要求位置として算出する。

そして、前回のシフトレンジの切り換え完了後（つまりモータ２７の回転停止中）に要求レンジが変更された場合には、その時点で、目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。

また、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と同方向の場合（つまりモータ２７の回転方向を反転させる必要がない場合）には、要求位置が現在位置から十分に離れていれば、モータ２７を要求位置で停止させることが可能である。

この点に着目して、本実施例では、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と同方向で且つ要求位置と現在位置との差が判定値よりも大きい場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが可能であると判断して、その時点で目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。このようにすれば、変更前の要求レンジへの切り換えが完了するまで待つ必要がなく、速やかにモータ２７を変更後の要求位置（目標位置）まで回転させて、速やかに変更後の要求レンジに切り換えることができる。

一方、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と逆方向の場合（つまりモータ２７の回転方向を反転させる必要がある場合）や、要求位置が現在位置からあまり離れていない場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが困難である。

そこで、本実施例では、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と逆方向の場合又は要求位置と現在位置との差が判定値以下の場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが困難であると判断して、変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。このようにすれば、変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に、確実にモータ２７を変更後の要求位置（目標位置）まで回転させて、確実に変更後の要求レンジに切り換えることができる。

以下、本実施例でＳＢＷ−ＥＣＵ２３が実行する図３の目標位置設定ルーチンの処理内容を説明する。
図３に示す目標位置設定ルーチンは、ＳＢＷ−ＥＣＵ２３の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。

本ルーチンが起動されると、まず、ステップ１０１で、要求レンジが現在レンジ（現在のシフトレンジ）と一致しているか否かを判定する。このステップ１０１で、要求レンジが現在レンジと一致していると判定された場合には、ステップ１０２以降の処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。

その後、要求レンジが変更されて、上記ステップ１０１で、要求レンジが現在レンジと一致していないと判定された場合には、ステップ１０２に進み、要求レンジに相当するモータ回転位置（要求エンコーダカウント値）を要求位置として算出する。

この後、ステップ１０３に進み、モータ２７の回転駆動中であるか否かを判定する。このステップ１０３で、モータ２７の回転駆動中ではない（モータ２７の回転停止中である）と判定された場合には、ステップ１０６に進み、レンジ切換完了状態（シフトレンジの切り換えが完了した状態）であるか否かを、例えば、現在位置が目標位置と一致した状態であるか否かによって判定する。このステップ１０６で、レンジ切換完了状態であると判定された場合には、ステップ１０７に進み、目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。

一方、上記ステップ１０３で、モータ２７の回転駆動中であると判定された場合には、ステップ１０４に進み、現在のモータ２７の回転速度に応じた判定値をマップ又は数式等により算出する。ここで、判定値のマップ又は数式等は、モータ２７の回転速度が高いほどモータ２７を正常に停止させるまでに必要な回転量が大きくなるのに対応して、モータ２７の回転速度が高いほど判定値が大きくなるように設定されている。判定値のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ＳＢＷ−ＥＣＵ２３のＲＯＭ等に記憶されている。

この後、ステップ１０５に進み、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と同方向で且つ要求位置と現在位置との差が判定値よりも大きいか否かを判定する。具体的には、モータ２７の正回転時（モータ２７がエンコーダカウント値の増加方向に回転しているとき）には、要求位置から現在位置を減算した値（要求位置−現在位置）が判定値よりも大きいか否かを判定する。一方、モータ２７の逆回転時（モータ２７がエンコーダカウント値の減少方向に回転しているとき）には、現在位置から要求位置を減算した値（現在位置から要求位置）が判定値よりも大きいか否かを判定する。

このステップ１０５で、「Ｙｅｓ」と判定された場合、つまり、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と同方向で且つ要求位置と現在位置との差が判定値よりも大きいと判定された場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが可能であると判断して、ステップ１０７に進み、目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。

これに対して、上記ステップ１０５で、「Ｎｏ」と判定された場合、つまり、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と逆方向の場合又は要求位置と現在位置との差が判定値以下の場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが困難であると判断して、ステップ１０６に進み、レンジ切換完了状態（シフトレンジの切り換えが完了した状態）であるか否かを判定する。

このステップ１０６で、レンジ切換完了状態ではないと判定された場合には、そのまま本ルーチンを終了する。その後、上記ステップ１０６で、レンジ切換完了状態であると判定された場合には、ステップ１０７に進み、目標位置を要求位置（変更後の要求レンジに相当する要求位置）で更新する。

次に、図４乃至図６のタイムチャートを用いて本実施例の目標値設定の実行例を説明する。
図４は、要求レンジがＰレンジからＲレンジに変更され、それに伴ってシフトレンジをＰレンジからＲレンジに切り換える途中で、要求レンジがＲレンジからＤレンジに変更された場合の実行例である。

図４に示すように、モータ２７の回転停止中に要求レンジがＰレンジからＲレンジに変更された場合には、その時点ｔ1 で、要求位置をＰレンジ位置（Ｐレンジに相当するモータ回転位置）からＲレンジ位置（Ｒレンジに相当するモータ回転位置）に変更する。更に、目標位置を要求位置（Ｒレンジ位置）で更新して、目標位置をＰレンジ位置からＲレンジ位置に変更する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｒレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＲレンジに切り換える制御）が開始される。

このモータ２７の回転駆動中（シフトレンジの切換中）に要求レンジがＲレンジからＤレンジに変更された場合には、その時点ｔ2 で、要求位置をＲレンジ位置からＤレンジ位置（Ｄレンジに相当するモータ回転位置）に変更する。

この際、モータ２７の回転方向が要求位置（Ｄレンジ位置）へ向かう方向と同方向で且つ要求位置（Ｄレンジ位置）と現在位置との差が判定値よりも大きい場合には、その時点ｔ2 で、目標位置を要求位置（Ｄレンジ位置）で更新して、目標位置をＲレンジ位置からＤレンジ位置に変更する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｄレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＤレンジに切り換える制御）が開始される。
その後、モータ２７の現在位置が目標位置（Ｄレンジ位置）に到達した時点ｔ3 で、Ｄレンジへの切り換えが完了する。

図５及び図６は、要求レンジがＰレンジからＤレンジに変更され、それに伴ってシフトレンジをＰレンジからＤレンジに切り換える途中で、要求レンジがＤレンジからＲレンジに変更された場合の実行例である。

図５及び図６に示すように、モータ２７の回転停止中に要求レンジがＰレンジからＤレンジに変更された場合には、その時点ｔ1 で、要求位置をＰレンジ位置からＤレンジ位置に変更する。更に、目標位置を要求位置（Ｄレンジ位置）で更新して、目標位置をＰレンジ位置からＤレンジ位置に変更する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｄレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＤレンジに切り換える制御）が開始される。

このモータ２７の回転駆動中（シフトレンジの切換中）に要求レンジがＤレンジからＲレンジに変更された場合には、その時点ｔ2 で、要求位置をＤレンジ位置からＲレンジ位置に変更する。

この際、図５に示すように、要求レンジがＤレンジからＲレンジに変更された時点ｔ2 で、モータ２７の回転方向が要求位置（Ｒレンジ位置）へ向かう方向と同方向で且つ要求位置（Ｒレンジ位置）と現在位置との差が判定値よりも大きい場合には、その時点ｔ2 で、目標位置を要求位置（Ｒレンジ位置）で更新して、目標位置をＤレンジ位置からＲレンジ位置に変更する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｒレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＲレンジに切り換える制御）が開始される。

これに対して、図６に示すように、要求レンジがＤレンジからＲレンジに変更された時点ｔ2 で、要求位置（Ｒレンジ位置）と現在位置との差が判定値以下の場合（又はモータ２７の回転方向が要求位置（Ｒレンジ位置）へ向かう方向と逆方向の場合）には、目標位置を変更前の要求位置（Ｄレンジ位置）に維持する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｄレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＤレンジに切り換える制御）を継続する。

その後、モータ２７の現在位置が目標位置（Ｄレンジ位置）に到達して、Ｄレンジへの切り換えが完了した時点ｔ2'で、目標位置を要求位置（Ｒレンジ位置）で更新して、目標位置をＤレンジ位置からＲレンジ位置に変更する。これにより、モータ２７を目標位置（Ｒレンジ位置）まで回転駆動する制御（シフトレンジをＲレンジに切り換える制御）が開始される。
その後、図５及び図６に示すように、モータ２７の現在位置が目標位置（Ｒレンジ位置）に到達した時点ｔ3 で、Ｒレンジへの切り換えが完了する。

以上説明した本実施例では、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と同方向で且つ要求位置と現在位置との差が判定値よりも大きい場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが可能であると判断して、その時点で目標位置を要求位置で更新するようにしている。このようにすれば、変更前の要求レンジへの切り換えが完了するまで待つ必要がなく、速やかにモータ２７を変更後の要求位置（目標位置）まで回転させて、速やかに変更後の要求レンジに切り換えることができる。これにより、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更された場合のレンジ切り換えの応答性を向上させて、シフトフィーリングを改善することができる。

また、本実施例では、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更されたときに、モータ２７の回転方向が要求位置へ向かう方向と逆方向の場合又は要求位置と現在位置との差が判定値以下の場合には、モータ２７を要求位置で停止させることが困難であると判断して、変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に目標位置を要求位置で更新するようにしている。このようにすれば、変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に、確実にモータ２７を変更後の要求位置（目標位置）まで回転させて、確実に変更後の要求レンジに切り換えることができる。これにより、モータ２７の回転駆動中に要求レンジが変更された場合のレンジ切り換えの信頼性を確保することができる。

更に、本実施例では、モータ２７の回転速度に応じて判定値を設定するようにしている。このようにすれば、モータ２７の回転速度に応じて、モータ２７を正常に停止させるまでに必要な回転量が変化するのに対応して、判定値を変化させて判定値を適正値に設定することができる。

尚、上記実施例では、モータ２７の回転速度に応じて判定値を設定するようにしたが、これに限定されず、モータ２７の温度と電源電圧のうちの一方に応じて判定値を設定するようにしても良い。或は、モータ２７の回転速度と温度と電源電圧のうちの二つ又は三つに応じて判定値を設定するようにしても良い。しかしながら、判定値を予め設定した固定値としても良い。

また、上記実施例では、現在位置と要求位置と目標位置を、エンコーダカウント値で設定するようにしたが、これに限定されず、例えば、モータ２７の回転角度で設定するようにしても良い。

また、上記実施例では、シフトレンジをＰレンジとＲレンジとＮレンジとＤレンジの四つのレンジ間で切り換えるレンジ切換機構を備えたシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、シフトレンジをＰレンジとＮｏｔＰレンジの二つのレンジ間で切り換えるレンジ切換機構を備えたシステムに本発明を適用しても良い。或は、シフトレンジを三つのレンジ間又は五つ以上のレンジ間で切り換えるレンジ切換機構を備えたシステムに本発明を適用しても良い。

その他、本発明は、自動変速機（ＡＴ、ＣＶＴ、ＤＣＴ等）に限定されず、電気自動車用の減速機のシフトレンジを切り換えるレンジ切換装置に適用しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。

１５…レンジセレクタ（要求レンジ変更手段）、１６…レンジ切換機構、２３…ＳＢＷ−ＥＣＵ（制御手段）、２７…モータ

Claims (3)

1. モータ（２７）を駆動源としてシフトレンジを複数のレンジ間で切り換えるレンジ切換機構（１６）と、要求レンジを変更する要求レンジ変更手段（１５）と、前記モータ（２７）を前記要求レンジに基づいて設定した目標位置まで回転させることで前記シフトレンジを前記要求レンジに切り換える制御手段（２３）とを備えたレンジ切換制御装置において、
   前記制御手段（２３）は、前記モータ（２７）の回転駆動中に前記要求レンジが変更されたときに、前記モータ（２７）の回転方向が変更後の前記要求レンジに相当するモータ回転位置（以下「変更後の要求位置」という）へ向かう方向と同方向で且つ前記変更後の要求位置と現在のモータ回転位置（以下「現在位置」という）との差が所定の判定値よりも大きい場合には、その時点で前記目標位置を前記変更後の要求位置で更新することを特徴とするレンジ切換制御装置。
2. 前記制御手段（２３）は、前記モータ（２７）の回転駆動中に前記要求レンジが変更されたときに、前記変更後の要求位置と前記現在位置との差が前記判定値以下の場合には、変更前の要求レンジへの切り換えが完了した後に前記目標位置を前記変更後の要求位置で更新することを特徴とする請求項１に記載のレンジ切換制御装置。
3. 前記制御手段（２３）は、前記モータ（２７）の回転速度に応じて前記判定値を設定することを特徴とする請求項１又は２に記載のレンジ切換制御装置。

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