JP5922546B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は基体の表面に被覆層が成膜されている切削工具に関する。
現在、切削工具や耐摩部材、摺動部材といった耐摩耗性や摺動性、耐欠損性を必要とする部材では、超硬合金やサーメット等の焼結合金、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化硼素)の高硬度焼結体、アルミナや窒化珪素等のセラミックスからなる基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性または耐欠損性を向上させる手法が使われている。
また、上記物理蒸着法としてイオンプレーティング法やスパッタリング法を用いて成膜されるTiやAlを主成分とする窒化物からなる被覆層が盛んに研究されており、工具寿命を延命させるための改良が続けられている。これら表面被覆工具は、切削速度の高速化を初めとする切削環境の変化、被削材の多様化に対応するため、被覆材料元素以外にも様々な工夫が施されてきている。
例えば、特許文献1や特許文献2では、イオンプレーティング法にて基体の表面にTiAlN等の被膜を被覆した表面被覆工具において、成膜中に印加する負のバイアスの絶対値を成膜初期よりも成膜後期で高めることによって、Tiの含有比率を平坦部よりも切刃で多くした被覆膜が開示されている。
特開平01−190383号公報 特開平08−267306号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された切刃におけるTiの含有比率を高くしたTiAlN膜の構成でも、加工の形態によっては切刃において突発欠損や急激な摩耗が進行する場合があった。
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、局所ごとに最適な切削性能を発揮できる被覆層を備えた切削工具を提供することにある。
本発明の切削工具は、基体の表面に、Al1−a(C1−x)(ただし、MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種、0.2≦a≦0.65、0≦x≦1)からなる被覆層を被覆してなるとともに、すくい面と逃げ面との交差稜線に切刃を有しており、前記切刃における前記被覆層中のAl含有比率が前記逃げ面における前記被覆層中のAl含有比率よりも高いものである。
本発明の切削工具によれば、基体の表面を覆うAlを含有する被覆層が、切刃のほうが逃げ面よりも被覆層中のAl含有比率が高い構成となっている。これによって、切刃における被覆層の耐酸化性を向上させることができる。その結果、フライス工具、ドリル、エンドミル等の回転工具を用いて切刃の温度が高くなるような過酷な切削条件で切削加工する場合でも、従来の切削工具でしばしば発生していた切刃の境界における突発欠損や急激
な摩耗の進行を抑制できる。しかも、逃げ面における機械的なこすれ摩耗も抑制することができるために、工具寿命が延びる。
本発明の切削工具の一例を示し、(a)概略斜視図、(b)(a)のX−X断面図である。 図1の切削工具の被覆層の一例についての要部拡大図である。
本発明の切削工具についての好適な実施態様例である図1((a)概略斜視図、(b)(a)のX−X断面図)を用いて説明する。
図1によれば、切削工具1は、主面にすくい面3を、側面に逃げ面4を、すくい面3と逃げ面4との交差稜線に切刃5を有し、基体2の表面に被覆層6を具備している。
被覆層6は、Al1−a(C1−x)(ただし、MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種、0.2≦a≦0.65、0≦x≦1)からなる。
図1に示す切削工具1は、切刃5における被覆層6中のAl含有比率が逃げ面4における被覆層6中のAl含有比率よりも高く、本実施態様では、逃げ面4から切刃5に向かって被覆層6中のAl含有比率が漸次高くなっている。これによって、切刃5における被覆層6の耐酸化性を高めることができ、回転工具の過酷な切削条件における切刃5の境界での突発欠損や急激な摩耗の進行を抑制できる。しかも、逃げ面4におけるこすれ摩耗の進行も抑制することができる。
なお、切刃5における被覆層6の具体的な組成は、Al1−a(C1−x)(ただし、MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種、0.2≦a≦0.65、0≦x≦1)からなる。被覆層6において、a(金属Al組成比率)が0.2よりも小さいと被覆層6の耐酸化性および耐摩耗性が低
下する。逆に、a(金属Al組成比率)が0.65よりも大きいと、被覆層6を構成する
結晶の結晶構造が立方晶から六方晶に変化して被覆層6の耐摩耗性が低下する。aの特に望ましい範囲は0.4≦a≦0.63であり、さらに望ましくは0.52≦a≦0.60である。
なお、金属MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、Zr、Yから選ばれる1種以上であるが、中でもTi、Cr、Si、Nb、MoおよびWの1種以上を含有すると硬度に優れて、耐摩耗性に優れる。さらにその中でも、金属MがTi、Cr、NbまたはSiの1種以上を含有すると、高温での耐酸化性に優れるために、例えば、フライス工具、ドリルまたはエンドミル等の回転工具を用いて過酷な切削条件で切削加工した場合においても切刃5の境界部での突発欠損や急激な摩耗の進行を抑制できる。
また、本実施態様における切刃5における被覆層6のより具体的な組成を例示すると、AlTiCrNb(C1−x)(0.2≦a≦0.65、0.25≦b≦0.8、0≦c≦0.4、0≦d≦0.25、0≦e≦0.25、a+b+c+d+e=1、0≦x≦1)である。被覆層6がこの組成範囲になることによって、被覆層6は酸化開始温度が高くなって耐酸化性が高くなる。ここで、c>0、すなわち被覆層6がCrを含有する場合には被覆層6の耐溶着性が向上する。d>0、すなわち被覆層6がNbを含有する場合には被覆層6の酸化開始温度が高くなって耐酸化性が向上する。e>0、すなわち被覆層6がWを含有する場合には被覆層6に内在する内部応力を低減することができて、被覆層6の耐欠損性が向上する。しかも、被覆層6は硬度が高く、かつ基体2との
密着性も高いものである。そのため、回転工具の過酷な切削条件においても、切刃5の境界部での突発欠損や急激な摩耗の進行を抑制できる。
ここで、b(Ti組成比率)が0.3以上であると、被覆層6の結晶構造が立方晶から六方晶へ変化して硬度が低下することなく、耐摩耗性が高い。b(Ti組成比率)が0.8以下であると、被覆層6の耐酸化性および耐熱性が高い。bの特に望ましい範囲は0.25≦b≦0.51である。c(Cr組成比)が0.4以下であると被覆層6の耐溶着性が向上するとともに耐欠損性が向上する。cの特に望ましい範囲は0.03≦c≦0.2である。d(Nb組成比率)が0.25以下であると被覆層6の耐酸化性および硬度が低
下することなく耐摩耗性が高い。dの特に望ましい範囲は0.01≦d≦0.2である。e(W組成比率)が0.25以下であると被覆層6の耐酸化性および硬度が低下すること
なく耐摩耗性が高い。eの特に望ましい範囲は0.01≦e≦0.1である。
また、被覆層6の非金属成分であるC、Nは切削工具に必要な硬度および靭性に優れたものであり、本実施態様では、x(N組成比率)は0.9≦x≦1である。ここで、本発明によれば、上記被覆層6の組成は、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)またはX線光電子分光分析法(XPS)にて測定できる。
ここで、本実施態様においては、切刃5における被覆層6中のAl含有比率がすくい面3における被覆層6中のAl含有比率よりも高く、さらに、本実施態様においては、すくい面3から切刃5に向かって被覆層6中のAl含有比率が高くなっている。これによって、被覆層6の切刃5における被覆層6の耐酸化性が向上する。その結果、切刃5の境界における突発欠損や急激な摩耗の進行が抑制される。また、本実施態様では、逃げ面4における被覆層6のTiの含有比率が高い。この結果、硬度が高くて機械的なこすれ摩耗の進行が抑制させる。
また、本実施態様では、逃げ面4における被覆層6中のAl含有比率がすくい面3における被覆層6中のAl含有比率よりも高い。これによって、すくい面3における耐酸化性が向上して、すくい面3におけるクレータ摩耗を抑制できる。また、本実施態様によれば、逃げ面4においては被覆層6のTi含有比率が高い。その結果、被覆層6の硬度が高くなり逃げ面摩耗を抑制できる。
さらに、本実施態様において、切刃5における被覆層6の組成は、上記組成式AlTiCrNb(C1−x)において、0.2≦a≦0.65、0.25≦b≦0.8、0≦c≦0.4、0≦d≦0.25、0≦e≦0.25、a+b+c+d+e=1、0≦x≦1)である。また、逃げ面4における被覆層6の組成は、上記組成式AlTiCrNb(C1−x)において、0.19≦a≦0.63、0.27≦b≦0.82、0≦c≦0.41、0≦d≦0.25、0≦e≦0.25、a+b+c+d+e=1、0≦x≦1)である。すくい面3における被覆層6の組成は、上記組成式AlTiCrNb(C1−x)において、0.18≦a≦0.61、0.31≦b≦0.82、0≦c≦0.42、0≦d≦0.25、0≦e≦0.25、a+b+c+d+e=1、0≦x≦1)である。
なお、本発明において、被覆層6の組成や厚みを特定する際の切刃5の範囲は、切削工具1の断面において、すくい面3と逃げ面4とを延長した交点から500μm幅の領域と定義する。したがって、すくい面3の範囲は、切削工具1の主面等のすくい面3の中央から切刃5の終端である交差稜線から500μmの位置までに亘る領域、逃げ面4の範囲は、切削工具1の側面等の逃げ面4の中央から切刃5の終端である交差稜線から500μmの位置までに亘る領域である。
ここで、本実施態様によれば、被覆層6を構成する結晶が厚み方向に長い柱状結晶からなり、該柱状結晶の平均結晶幅が200nm以下である。これによって、被覆層6の表面が高温に曝された場合でも、被覆層6の内部が酸化されることを抑制できるため、被覆層6の耐酸化性がさらに向上する。前記柱状結晶の平均結晶幅の望ましい範囲は10〜200nm、特に望ましくは30〜150nmである。また、本実施態様によれば、切刃5における前記柱状結晶の平均結晶幅が、逃げ面4における前記柱状結晶の平均結晶幅よりも大きい。これによって、切刃5における耐欠損性を高めることができるとともに、逃げ面におけるこすれ摩耗の進行を抑制できる。切刃5における前記柱状結晶の平均結晶幅の望ましい範囲は50〜200nm、特に望ましい範囲は70〜150nmであり、逃げ面4における前記柱状結晶の平均結晶幅の望ましい範囲は10〜150nm、特に望ましい範囲は30〜120nmである。なお、本発明における柱状結晶の平均結晶幅は、被覆層6の厚みの中間の位置において、基体2と被覆層6との界面に平行な直線を引いて、測定した直線の長さ/この直線の中に存在する粒界の数で算出する。
また、図2の本実施態様においては、被覆層6の一例についての要部拡大図に示すように、被覆層6は、Al含有比率が高い第1被覆層6aと、Alを含まないかAl含有比率が低い第2被覆層6bとの1層ずつの合計2層が積層された2層以上の多層からなり、本実施態様によれば、図2に示すように、第1被覆層6aと第2被覆層6bとが交互に積層された多層構成となっている。これによって、被覆層6内にクラックが進展することを抑制することができ、かつ被覆層6全体が高硬度化して、耐摩耗性が向上する。なお、本発明においては、このように組成の異なる2種類以上の多層構成からなる被覆層6の組成は、被覆層6の全体組成で表わし、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等によって分析可能である。また、第1被覆層および第2被覆層の各層の組成は、透過型電子顕微鏡(TEM)に付随のエネルギー分散型X線分析(EDS)等によって分析可能である。なお、上記多層構成の被覆層6を形成するには、例えば、成膜装置のチャンバの内壁側面に、組成の異なるターゲットを一定の間隔をあけて配置した状態で、成膜する試料を回転させながら成膜することによって作製することができる。
さらに、本実施態様では、逃げ面4における被覆層6の厚みtと切刃5における被覆層6の厚みtとの比(t/t)が1.1〜3である。これによって、切刃5における耐チッピング性と逃げ面4における耐摩耗性とのバランスを保って、工具寿命を長くすることができる。
なお、本実施態様では、被覆層6の逃げ面4における厚みが、すくい面3における厚みよりも厚い。これによって、逃げ面4の耐摩耗性が向上し、工具寿命を延ばすことができる。本実施態様では、逃げ面4における被覆層6の厚みtとすくい面3における被覆層6の厚みtとの比(t/t)が1.2〜3である。
また、本実施態様では、被覆層6の表面および内部には、図1(b)に示すように、ドロップレット7と呼ばれる粒状物質が存在する。そして、本実施態様では、すくい面3の表面に存在するドロプレット7の平均組成は逃げ面4の表面に存在するドロップレット7の平均組成に比べてAl含有比率が高い構成となっている。
この構成によれば、切削時にすくい面3上を切屑が通過してもドロップレット7の存在によって切屑がすくい面にベタ当たりすることなく、被覆層6の表面がさほど高温になることがない。しかも、すくい面3のほうが逃げ面4に比べてドロップレット7中のAl含有比率が高いので、すくい面3上に存在するドロップレット7の耐酸化性が高く、かつ切削液を被覆層6の表面に保液する効果も発揮する。また、逃げ面4においてはドロップレット7中のAlの含有割合が低くて耐酸化性が低いために、早期に摩耗して消滅してしまい、加工時の仕上げ面状態が改善される。
なお、本実施態様では、被覆層6のすくい面3の表面に形成されるドロップレット7のAl含有比率AlDRは逃げ面4の表面に形成されるドロップレット7のAl含有比率AlDFに対して1.05≦AlDR/AlDF≦1.60である。これによって、すくい
面3および逃げ面4における耐摩耗性をともに最適化できる。
また、存在するドロップレット7の数は、すくい面3における10μm×10μm四方で直径が0.2μm以上のドロップレット7が15〜50個、より望ましくは18〜30個である。これによって、切屑の通過による発熱の緩和の点で望ましい。また、すくい面3におけるドロップレット7の数が逃げ面4に存在するドロップレット7の数よりも多いことが、すくい面3が切屑の通過によって高温になることを緩和するとともに、逃げ面4の表面を滑らかにして仕上げ面品位を向上する点で望ましい。
また、被覆層6のすくい面3の表面に形成されるドロップレット7のTi含有比率TiDRは逃げ面4の表面に形成されるドロップレット7のTi含有比率TiDFに対して0
.91≦TiDR/TiDF≦0.97であることが、すくい面3および逃げ面4における耐チッピング性をともに最適化できる点で望ましい。比率TiDR/TiDFの特に望ましい範囲は0.94≦TiDR/TiDF≦0.97である。さらに、被覆層6のすくい面3の表面に形成されるドロップレット7のCr含有比率CrDRは逃げ面4の表面に形成されるドロップレット7のCr含有比率CrDFに対して1.00≦CrDR/Cr
DF≦2.5であることが、すくい面3および逃げ面4における耐摩耗性をともに最適化できる点で望ましい。比率CrDR/CrDFの特に望ましい範囲は1.00≦CrDR/CrDF≦1.5である。
なお、基体2としては、炭化タングステンや炭窒化チタンを主成分とする硬質相とコバルト、ニッケル等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなる超硬合金やサーメットの硬質合金、窒化ケイ素や酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス、多結晶ダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる硬質相とセラミックスや鉄族金属等の結合相とを超高圧下で焼成する超高圧焼結体等の硬質材料が好適に使用される。
(製造方法)
次に、本発明の切削工具の製造方法について説明する。
まず、工具形状の基体を従来公知の方法を用いて作製する。次に、基体の表面に、被覆層を成膜する。被覆層の成膜方法として、イオンプレーティング法やスパッタリング法等の物理蒸着(PVD)法が好適に適応可能である。成膜方法の一例についての詳細について説明すると、被覆層をアークイオンプレーティング法で作製する場合には、金属アルミニウム(Al)、および所定の金属M(ただし、MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種以上)をそれぞれ独立に含有する金属ターゲット、複合化した合金ターゲットまたは焼結体ターゲットを用い、チャンバの側壁面位置にセットする。
このとき、ターゲットの周囲には磁石が設置され、ターゲットの裏面の中央側にはセンター磁石が設置されている。本発明によれば、この磁石の磁力の強さを制御することによって、上記実施態様の切削工具を作製することができる。すなわち、Al含有比率が多いターゲットに併設されるセンター磁石の磁力を強くし、Alを含まないかAl含有比率が少ないターゲットのセンター磁石の磁力を弱くする。これによって、各ターゲットから発生する金属イオンの拡散状態を変えて、チャンバ内に存在する金属イオンの分布状態を変化させる。その結果、基体の表面に成膜される被覆層中の各金属の含有比率、およびドロップレットの存在状態を変化させることができる。なお、各ターゲットの数は被覆層が所
望の組成となるように調整される。
成膜条件としては、これらのターゲットを用いて、アーク放電やグロー放電などにより金属源を蒸発させイオン化すると同時に、窒素源の窒素(N)ガスや炭素源のメタン(CH)/アセチレン(C)ガスと反応させるイオンプレーティング法またはスパッタリング法によって被覆層およびドロップレットを成膜する。このとき、基体のセット位置は逃げ面がチャンバの側面とほぼ平行に、かつすくい面がチャンバの上面とほぼ平行な向きにセットする。この時、センター磁石には2〜8Tの磁力を印加して成膜するが、Alを含有するターゲットに併設されるセンター磁石に印加する磁力を、Alを含まないかAl含有比率が低いターゲットに併設されるセンター磁石に印加する磁力よりも高くして成膜する。
なお、上記被覆層を成膜する際には、被覆層の結晶構造を考慮して高硬度な被覆層を作製できるとともに基体との密着性を高めるために、本実施態様では、35〜200Vのバイアス電圧を印加する。
平均粒径0.8μmの炭化タングステン(WC)粉末を主成分として、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を10質量%、平均粒径1.0μmの炭化バナジウム(VC)粉末を0.1質量%、平均粒径1.0μmの炭化クロム(Cr)粉末を0.3質量%の割合で添加し混合して、プレス成形により京セラ製切削工具BDMT11T308TR−JT形状のスローアウェイチップ形状に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1450℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。また、各試料のすくい面表面をブラスト加工、ブラシ加工等によって研磨加工した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にて刃先処理(ホーニング)を施した。
このようにして作製した基体に対して、Al含有比率が高い第1ターゲット、およびAlを含まないかAl含有比率が低い第2ターゲットに対して、表1に示すセンター磁石をセットして、表1に示すバイアス電圧を印加し、アーク電流150Aをそれぞれ流し、成膜温度540℃として表2〜3に示す組成の被覆層を成膜した。なお、被覆層の組成は下記方法にて測定した。
得られた試料に対して、被覆層の表面から、切刃、すくい面及び逃げ面の被覆層の各位置の任意3箇所について走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、エネルギー分散分光分析(EDS)(アメテック社製EDAX)によって組成を分析した。各分析結果の平均値を被覆層の組成として表記した。また、前記各位置の任意3箇所に存在するドロップレットについて、各視野で大きい順に10個ずつ観察し、エネルギー分散分光分析(EDS)(アメテック社製EDAX)によって測定し、これらの平均値を被覆層のすくい面、逃げ面の各表面上のドロップレットの組成として算出した。表中、すくい面に形成されたドロップレットについてAl,Ti,Crの平均含有量(原子%)をそれぞれAlDR、TiDR、CrDR、逃げ面に形成されたドロップレットについてAl,Ti,Crの平均含有量(原子%)をそれぞれAlDF、TiDF、CrDFと表記し、ドロップレットの比率を算出した。さらに、1視野における10μm×10μm四方の任意領域における直径0.2μm以上のドロップレットの個数を測定し、測定箇所3箇所におけるドロップレットの平均個数を算出した。また、各試料の被覆層を含む断面についてSEM観察を行い、切刃、すくい面および逃げ面の各位置における被覆層の厚みを測定した。結果は表2〜4に示した。
また、被覆層の断面について、電子線後方散乱回折法を用いて、被覆層を構成する各結晶の向きを観察し、向きが異なる結晶を異なる色で表すことによって結晶粒界を特定し、
被覆層を構成する結晶の平均結晶幅を算出したところ、試料No.1〜7については平均結晶幅は各試料とも200nm以下であり、切刃における平均結晶幅が逃げ面における平均結晶幅より大きかった。
次に、得られたスローアウェイチップを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表4に示した。
切削方法:ミリング加工
被削材 :炭素鋼(S45C)
切削速度:200m/分
送り :0.15mm/rev
切り込み:2.0mm
切削状態:乾式
評価方法:工具寿命まで加工できた加工数を確認し、そのときの切刃の状態を確認した。
Figure 0005922546
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表1〜4に示す結果より、切刃よりも逃げ面において被覆層のAl含有比率が高い試料No.8では、切刃の境界部分に突発欠損が発生して加工数が少なかった。また、切刃と逃げ面における被覆層のAl含有比率が同じ試料No.9では、境界部分において早期に摩耗が進行した。これに対して、本発明の範囲内である逃げ面よりも切刃における被覆層のAl含有比率が高い試料No.1〜7では、いずれも切刃の境界において、異常な欠損や摩耗の進行が見られず、良好な切削性能を発揮した。
1 切削工具
2 基体
3 すくい面
4 逃げ面
5 切刃
6 被覆層
7 ドロップレット

Claims (7)

  1. 基体の表面に、AlaM1−a(C1−xNx)(ただし、MはTi、Cr、Si、W、Mo、Ta、Hf、Nb、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種、0.2≦a≦0.65、0≦x≦1)からなる被覆層を被覆してなるとともに、すくい面と逃げ面との交差稜線に切刃を有しており、前記切刃における前記被覆層中のAl含有比率が前記逃げ面における前記被覆層中のAl含有比率よりも高いとともに、前記切刃における前記被覆層中のAl含有比率が前記すくい面における前記被覆層中のAl含有比率よりも高い切削工具。
  2. 前記逃げ面における前記被覆層中のAl含有比率が前記すくい面における前記被覆層中のAl含有比率よりも高い請求項記載の切削工具。
  3. 前記被覆層を構成する結晶が厚み方向に長い柱状結晶からなり、該柱状結晶の平均結晶幅が200nm以下である請求項1または2記載の切削工具。
  4. 前記切刃における前記柱状結晶の平均結晶幅が、前記逃げ面における前記柱状結晶の平均結晶幅よりも大きい請求項記載の切削工具。
  5. 前記被覆層が、Al含有比率が高い第1被覆層と、Alを含有しないかまたはAl含有比率が低い第2被覆層とが積層された2層以上の多層からなる請求項1乃至のいずれか記載の切削工具。
  6. 前記逃げ面における前記被覆層の厚みtfと前記切刃における前記被覆層の厚みtcとの比(tc/tf)が1.1〜3である請求項1乃至のいずれか記載の切削工具。
  7. 前記逃げ面における前記被覆層の厚みtfと前記すくい面における前記被覆層の厚みtrとの比(tf/tr)が1.5〜3である請求項1乃至のいずれか記載の切削工具。
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