JP5917236B2 - 研磨パッド用シート及びその製造方法、研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨方法 - Google Patents

研磨パッド用シート及びその製造方法、研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨方法 Download PDF

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Description

本発明は、研磨パッド用シート及びその製造方法、研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨方法に関する。
従来、磁気ディスクを始めとする各種の半導体デバイス及び液晶ディスプレイ用ガラス基板などの表面を平坦化する手段として、研磨パッドを用いた研磨加工が知られている。一般に、半導体デバイスなどの製造工程における研磨では、化学的機械的研磨(以下、「CMP」と表記する。)法が採用されている。CMP法では、通常、砥粒(研磨粒子)をアルカリ又は酸溶液に分散させたスラリー(研磨液)が用いられる。被研磨物の研磨加工面にスラリーを供給しながら研磨することにより、スラリーに含まれる砥粒による機械的研磨作用と、アルカリ又は酸溶液による化学的研磨作用とにより、被研磨物が平坦化される。近年では、特に、半導体デバイスなどの被研磨物の高品質化を目的として、CMP法による研磨加工に、高い平坦性及び精密性が求められている。
例えば、特許文献1では、研磨液の能力を十分に引き出すことができ、良好な精密研磨を行うことができる精密研磨用の研磨布及びその製造方法の提供を意図して、被研磨物を精密研磨する精密研磨用の研磨布であって、表面に存在する開口した孔の内、直径が0.1〜10μmの口径を有する孔が90%以上であることを特徴とする精密研磨用の研磨布が提案されている。
特開2005−335028号公報
しかしながら、特許文献1に記載のものを始めとする従来の研磨加工では、表面品位に優れた被研磨物を得ることが可能であっても、研磨レートの低下に伴い、被研磨物の生産性も低くなってしまう。その一方で、高い生産性を確保しようとすると、被研磨物の表面品位が劣化してしまう。
そこで、本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、被研磨物の生産性を高く維持すると共に、被研磨物の表面品位を優れたものとすることのできる研磨パッド及びその製造方法、その研磨パッド用シート及びその製造方法、並びに研磨方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、研磨パッドが、特定の態様にある気泡を有することにより、被研磨物の優れた表面品位と高い研磨レートを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、細長い部分を有する複数の気泡が形成されている樹脂シートを備える研磨パッド用シートであって、上記樹脂シートの厚み方向に平行な断面により現れる複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡における上記細長い部分の長さ方向が、上記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°の角度で傾斜するように形成されており、上記樹脂シートの主面にエンボス溝が形成されており、かつ、上記樹脂シートの主面に、上記細長い部分の長さ方向が上記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されている上記気泡のうちの少なくとも一部の気泡の開口を有するシートである。なお、気泡の「細長い部分の長さ方向」は、上記断面において、気泡壁面、及び、開口がある場合は開口端、の任意の2点を結んだ線分のうち最も長い線分の方向をいう。ただし、気泡の傾斜した側の壁面が上記面内方向に対して90°未満に傾いた部分と90°以上に傾いた部分を有する場合は、その境界の接線に直交する直線(通常は上記面内方向と平行な直線)で分けられる領域のうち、90°未満に傾いた部分を含む領域を「細長い部分」とし、その細長い部分において、上記直線の上記気泡壁面との交点を両端とする線分(例えば図3の(A)における点線d)の中点(例えば図3における点e)と、気泡壁面、及び、開口がある場合は開口端、の任意の1点とを結んだ線分のうち最も長い線分(例えば図3における点線f)の方向をいう。
本発明によると、細長い部分を有する複数の気泡のうち気泡数基準で50%以上の気泡において、細長い部分の長さ方向が樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されているため、樹脂シートの主面に現れる気泡の開口は、その気泡の開口とは反対側の端部に対して、樹脂シートの厚み方向に互いにずれた配置となる。これにより、研磨パッド上を被研磨物が研磨パッドの研磨面に向けて押圧されながら、その研磨面の面内方向に移動すると、被研磨物の移動方向先端付近を経由して気泡の上記端部周辺が押圧されているとき、その端部を有する気泡の開口が、被研磨物によって塞がれ難くなる。これにより、気泡内に保持したスラリー(研磨液)を効率よく、その開口から排出することができる。また、そのエンボス溝を形成する前に樹脂シートの研磨面に現れていた開口は、エンボス溝の形成に伴う樹脂の溶融及び塑性変形により、少なくとも一部が閉塞される。これにより、スラリーを研磨パッドの全面に効率よく且つ確実に行き渡らせると共に系外に排出するという研磨パッドに形成される溝の機能を維持すると共に、被研磨物が当接する研磨面でのスラリーの保持を確実に可能とすることができる。
さらに、長さ方向が樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分を有する気泡は、気泡がそのような細長い部分を有していない場合と比較すると、気泡間に存在するマトリックス樹脂による壁の部分が樹脂シートの厚み方向に対して傾いた状態になる。そのような状態の樹脂シートに対して、切削により溝を形成すると、傾いた壁の部分の一部が切断されるため、研磨の際に樹脂シートの厚み方向に押圧されると、その壁の部分が容易に崩壊してしまい、気泡の本来の機能であるスラリーの保持が困難になると共に、崩壊した壁の部分が研磨の際の異物となって被研磨物に損傷を与えてしまう。一方、本発明によると、エンボス溝を形成する際、樹脂の溶融及び塑性変形を伴うので、切削による場合と比較して、気泡間に存在する壁の部分を切断することなく溝を形成することができる。したがって、気泡間の壁の部分が樹脂シートの厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡によるスラリーの保持能力を高く維持することが可能となり、また、異物の発生を抑制できるので、被研磨物の損傷を防止することが可能となる。そして、長さ方向が樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分を有する気泡は、気泡が樹脂シートの厚み方向に対して傾斜していない場合と比較すると、樹脂シートの厚み方向から見た投影面積が広くなる。そのため、切削により溝を形成した場合に溝の壁面に現れる開口の大きさは、気泡が樹脂シートの厚み方向に対して傾斜していない場合よりも大きくなり、スラリーの保持が困難になる。ところが、本発明によると、エンボス溝の形成により、溝の壁面において開口が現れるのを抑制することができるので、気泡間の壁の部分が樹脂シートの厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡によるスラリーの保持能力を高く維持することができる。
これらにより、本発明は、被研磨物の生産性を高く維持すると共に、被研磨物の表面品位を優れたものとすることができる。
本発明の研磨パッド用シートは、細長い部分が、樹脂シートの厚み方向内部から主面に向かって延びていると好ましい。また、主面の面積に対する上記主面に現れる開口の数の比率が、上記エンボス溝の壁面の面積に対する上記エンボス溝の上記壁面に現れる開口の数の比率よりも高いと好ましく、上記主面の面積に対する上記主面に現れる開口の総面積の割合が、上記エンボス溝の壁面の面積に対する上記エンボス溝の上記壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高いと好ましい。さらに、上記エンボス溝の開口端が、上記エンボス溝の長さ方向に直交する断面において円弧状であると好ましい。また、上記複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡は、上記気泡底部の中心M1と、上記主面に現れる開口の中心M2とを結ぶ線分を斜辺とする直角三角形における、上記中心M1から上記中心M2を見た場合の仰角をθとしたときに、上記仰角θが30〜60°の範囲となるように形成されていると好ましく、上記気泡底部の中心M1と、上記主面側の頂点M3とを結ぶ線分を斜辺とする直角三角形における、上記中心M1から上記頂点M3を見た場合の仰角をθとしたときに、上記仰角θが30〜60°の範囲となるように形成されていると好ましい。また、上記樹脂シートはポリウレタン樹脂を70質量%以上含むと好ましく、その圧縮率が7〜50%であると好ましく、そこに含まれる樹脂の100%モジュラスが2〜50MPaであると好ましい。
本発明の研磨パッド用シートの製造方法は、樹脂シートの厚み方向に平行な断面により現れる複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡における細長い部分の長さ方向が、上記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように、上記樹脂シートの前駆体シートに複数の気泡を形成する第1の工程と、上記前駆体シートの主面にエンボス溝を形成する第2の工程とを有するものである。第1の工程において、樹脂と溶媒とを含む樹脂溶液の塗膜中の樹脂をシート状に凝固再生した後に上記溶媒を除去することにより、上記前駆体シートを形成すると好ましく、上記第1の工程において、上記塗膜中の樹脂をシート状に凝固再生する際に、上記塗膜の面内方向を水平から傾けた状態で、上記気泡を形成すると好ましい。また、上記樹脂が、ポリウレタン樹脂を70質量%以上含むと好ましく、第2の工程よりも前に、上記前駆体シートを研削する工程を更に有すると好ましい。
本発明の研磨パッドは、上記研磨パッド用シートから得られるものであり、その製造方法は、上記研磨パッド用シートを形成する工程を有するものである。そして、本発明の研磨方法は、上記研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する工程を有するものであり、その工程において、上記被研磨物をCMP法により研磨するものであると好ましい。
本発明によれば、被研磨物の生産性を高く維持すると共に、被研磨物の表面品位を優れたものとすることのできる研磨パッド及びその製造方法、その研磨パッド用シート及びその製造方法、並びに研磨方法を提供することができる。
本発明の研磨パッド用シートの一例を示す概略断面図である。 図1の一部を拡大した概略断面図である。 (A)は気泡の断面形状を示す概略図であり、(B)は気泡の形状及び配置を模式的に示す説明図である。 気泡における傾斜の程度を模式的に示す説明図である。 本発明の研磨パッド用シートの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の研磨方法の一例の様子を示す概略断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本実施形態の研磨パッド用シートの一例を示す概略断面図であり、図2は、図1に示す研磨パッド用シートの一部を拡大した概略断面図である。これらの断面図は研磨パッド用シートの厚み方向に平行に切断した際に現れる断面である。研磨パッド用シート100は、そのシート100から被研磨物を研磨する研磨パッドを作製するためのものであり、基材110と、その基材110上に積層した樹脂シート120とを備える。樹脂シート120には、細長い部分122aを有する複数の気泡122(図中の符号122b、122c及び122dで表されるものは、この気泡122に包含される。)が形成されている。また、樹脂シート120の厚み方向に平行な断面により現れる複数の気泡122のうち、50%以上の気泡122における細長い部分122aの長さ方向が、樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されている。そして、樹脂シート120の主面120aにエンボス溝125が形成されている。
基材110はフィルム状であり、研磨パッド用シート100から作製した研磨パッドを用いて研磨する際に、研磨パッドが伸縮したり破断したり又は湾曲したりするのを抑制するものである。その材質は、従来の研磨パッドの基材として用いられるものであってもよく、特に限定されない。材質として、通常可撓性のものが採用され、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、その他のポリエステルが挙げられる。基材の厚さも、従来の研磨パッドの基材で採用されるような厚さであってもよく、特に限定されない。その厚さは、例えば、0.1〜5.0mmである。
樹脂シート120は、その厚み方向に基材110側から主面120aに向かって、発泡樹脂領域120cとスキン層領域120bとを一体不可分に有する。樹脂シート120の組成は、マトリックスとなる樹脂(以下、「マトリックス樹脂」という。)を最も多く含む組成であれば特に限定されず、例えば、樹脂シート120は、その全体量に対して、マトリックス樹脂を70〜100質量%含むものであってもよい。樹脂シート120は、その全体量に対して、マトリックス樹脂をより好ましくは70〜100質量%含み、更に好ましくは75〜90質量%含み、特に好ましくは80〜90質量%含む。
マトリックス樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリサルホン樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ、従来の研磨パッドの樹脂シート部分に用いられるものであってもよい。これらの中では、本発明の目的を一層有効且つ確実に奏する観点から、ポリウレタン樹脂が好ましく、マトリックス樹脂がポリウレタン樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中では、本発明の目的をより有効且つ確実に奏する観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、クリスボン(DIC(株)製商品名)、サンプレン(三洋化成工業(株)製商品名)及びレザミン(大日精化工業(株)製商品名)が挙げられる。
ポリサルホン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、ユーデル(ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製商品名)が挙げられる。
ポリイミド樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、オーラム(三井化学(株)製商品名)が挙げられる。
樹脂シート120は、マトリックス樹脂以外に、研磨パッド用シートの樹脂シートに通常用いられる材料、例えば、カーボンブラックなどの顔料、親水性添加剤及び疎水性添加剤の1種又は2種以上を含んでもよい。これらの任意に用いられる材料は、気泡122の大きさ、個数及び傾斜の度合いを制御するのに用いられてもよい。さらには、樹脂シート120の製造過程において用いられた溶媒などの各種の材料が、本発明の課題解決を阻害しない範囲で樹脂シート120内に残存していてもよい。
スキン層領域120bは、研磨パッドの研磨面となる主面120aを有するように形成されており、その厚さは数μmである。スキン層領域120bは、マトリックス樹脂中に微細な気泡が多く形成された微多孔構造を有している。その微細な気泡は、後に詳述する発泡領域120cに形成されている気泡よりも小さな容積を有する。
発泡樹脂領域120cは、スキン層領域120bの主面120aとは反対側に形成されており、その厚さは特に限定されないが、例えば0.3〜2.0mmである。発泡樹脂領域120cでは、マトリックス樹脂中に、細長い部分122aを有する複数の気泡122が形成されている。発泡樹脂領域120cに形成されている気泡として、気泡122に加えて、細長い部分を有しない気泡、細長い部分が樹脂シート120の厚み方向に対して上記一定方向に傾斜していない気泡が存在してもよい。そして、気泡122の少なくとも一部は、スキン層領域120bを経由して主面120aに通じた開口EOを有する。
気泡122は、細長い部分122aを有しており、かつ、気泡数基準で樹脂シート120中の50%以上、好ましくは55%以上の気泡における細長い部分122aの長さ方向が、樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されている。細長い部分122aは、樹脂シート120の厚み方向内部から主面120aに向かって延びていると好ましい。このような気泡122が形成されていることは、樹脂シート120を、傾斜が確認されるように厚み方向に切断して現れる断面を走査型電子顕微鏡により観察することで確認できる。また、そのような気泡の割合(気泡数基準)は、上記のようにして走査型電子顕微鏡により観察された断面の写真(画像)を画像処理することにより、測定することができる。気泡122の立体形状及び樹脂シート120の厚み方向に対する配置としては、例えば、丸みを帯びた錐体(底面が基材110側)の上部の細長い部分が上記面内方向に対して傾斜した形状、丸みを帯びた錐体(底面が基材110側)の全体が上記面内方向に対して傾斜した形状、及び、紡錘形の長さ方向の全体又は一部が上記面内方向に対して傾斜した形状(この場合、傾斜した部分は上記細長い部分に該当する。)が挙げられる。丸みを帯びた錐体(底面が基材110側)の上部の細長い部分が上記面内方向に対して傾斜した形状は、その断面形状が、例えば、図1に示す気泡122bのような形状であり、丸みを帯びた錐体(底面が基材110側)の全体が上記面内方向に対して傾斜した形状は、その断面形状が、例えば、図1に示す気泡122cのような形状であり、紡錘形の長さ方向の全体が上記面内方向に対して傾斜した形状は、その断面形状が、例えば、図1に示す気泡122dのような形状である。
気泡122は、細長い部分122aが樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に傾斜するように形成されているため、主面120aに現れた開口EOを有すると、その開口EOの中心と、開口EOとは反対側の気泡122の端部ECの中心とが、厚み方向に互いにずれた配置となる。これにより、研磨パッド用シート100から作製された研磨パッド上を被研磨物が研磨パッドの主面120aに向けて押圧されながら、その主面120aの面内方向に移動すると、被研磨物の移動方向先端付近を経由して気泡122の端部EC周辺が押圧されているとき、その端部ECを有する気泡122の開口EOが、被研磨物によって塞がれ難くなる。さらに、研磨時に、細長い部分に対してその長さ方向に気泡が押圧される傾斜していない場合と対比すると、本実施形態では、細長い部分122aに対して傾いた方向に気泡122が押圧されるため、その押圧により気泡122が変形しやすく、気泡122の体積変化が大きくなる。これらにより、気泡122内に保持したスラリーを効率よく、その開口EOから排出することができる。なお、細長い部分122aの長さ方向が、樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10°以上傾斜していることにより、気泡を大きく形成することが可能になるので、スラリーの保持及び排出をより効率的に行うことができる。
開口EOの平均径は特に限定されないが、精密研磨の観点から、例えば5〜20μmであると好ましい。開口EOの平均径が上記の範囲内であれば、目詰まりによるスクラッチが生じ難く、かつ平坦性のより高い研磨を行うことができる。開口EOの平均径(算術平均)は、樹脂シート120の任意の表面を撮影した電子顕微鏡写真を画像解析することにより得られる。
一方、従来の研磨パッドのように、気泡の細長い部分が、樹脂シートの厚み方向に対して平行又はほぼ平行になるよう形成されている(樹脂シートの面内方向に対して直交又はほぼ直交するように形成されている)と、上記と同様に被研磨物の側端付近を経由して気泡の端部が押圧されているとき、その端部を有する気泡の開口は被研磨物によって塞がれた状態になるため、気泡内に保持したスラリーを効率よく、その開口から排出するのが困難となる。
ここで、気泡122が気泡122bである場合について、好適な態様をより詳細に説明する。図2に細長い部分122aの拡大図を示す気泡122b(この気泡122bの全体の断面形状を図3の(A)に示す。)について、主面120a(図3の(A)における矢印aの位置)、並びに、樹脂シート120の厚み方向中央付近の位置(図3の(A)における矢印bの位置)及び裏面120d近傍(例えば裏面120dから50〜100μm程度内側)の位置(図3の(A)における矢印cの位置)での断面の模式斜視図を図3の(B)に示す。主面120aでは、中心Maの気泡122bの開口EOが形成されている。樹脂シート120の厚み方向中央付近の断面では、同じ気泡122bにより中心Mbの孔HBが形成され、裏面120d近傍の断面では同じ気泡122bにより中心Mcの孔HCが形成されている。開口EOの中心Ma、孔HBの中心Mb、孔HCの中心Mcは、厚み方向に互いに揃うことなく、ずれた位置にある。つまり、開口EOの中心Maを通る垂直線Lが矢印cにおける断面と交点Qで交わり、その交点Qは孔HCの外側に位置する。また、孔HCの半径をRcとし、孔HCの中心Mcと交点Qとの距離をLcとしたときに、距離Lcが半径Rcの2〜5倍の大きさを有していると、上述のスラリーの排出がより効率的になるので好ましい。
ここで、樹脂シート120に形成された気泡122の傾斜の程度について、気泡122bを例にして図4を参照しつつ説明する。図4の(A)に示すように、樹脂シート120における底面では、気泡122bにより中心M1が形成されることとなる。この中心M1を通り厚み方向(図4の上下方向)と直交する方向(図4の左右方向)の直線と、気泡122bの主面120aの開口EOの中心M2(又は、図4の(B)に示すように気泡122bが閉気孔である場合は頂点M3)を通り樹脂シート120の厚み方向の直線との交点をPとすると、中心M1と中心M2又は頂点M3とを結ぶ線分を斜辺とする直角三角形が形成される。この直角三角形では、中心M1から中心M2又は頂点M3を見たときに仰角θが形成される。傾斜の程度として、この仰角θが、30〜60°の範囲となるように気泡122bが形成されていることが好ましい。すなわち、気泡数基準で50%以上、好ましくは55%以上、の気泡の仰角θが30〜60°であると好ましい。また、この仰角θの平均値は、70°以下であると好ましく、65°以下であるとより好ましく、60°以下であると更に好ましい。また、仰角θの平均値は、30°以上であると好ましく、40°以上であるとより好ましく、50°以上であると更に好ましい。
この場合、中心M1と交点Pとを結ぶ線分の長さをxとし、中心M2又は頂点M3と交点Pとを結ぶ線分の長さをyとしたときに、tanθ=y/xが0.58〜1.73の範囲となる。ここで、仰角θは、三次元計測X線CT装置を使用して樹脂シート120の内部断面写真を非破壊で撮影し、画像解析装置にて中心M1と中心M2又は頂点M3とを位置決めすることにより得られる。簡易的には、湿式成膜時の長手方向に沿う厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡にて撮影し、中心M1と中心M2又は頂点M3とを決定することで仰角θを算出することも可能である。また、そのような気泡の割合(気泡数基準)は、研磨パッド用シートを、傾斜が確認されるように厚み方向に切断して表される断面を、走査型電子顕微鏡で観察して、その写真(画像)を画像処理することにより、測定することができる。
以上、気泡122bを例に挙げて説明したが、これらの事項は、気泡122の細長い部分が樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されていれば、気泡122bのような形状でなくても当てはまる。
なお、気泡122が気泡122bのような形状を有していると、研磨加工時に押圧されたときに被研磨物に対する応力を均等化することができる。これは、細長い部分122aの長さ方向が樹脂シート120の面内方向に対して一定の方向に10〜65°傾斜していると共に、気泡122bの形状が上部の細長い部分122aと下部とで位置がずれている形状であるためと考えられる。また、上部の細長い部分122aに比べて、下部の径が大きいためと考えられる。これらにより、被研磨物の研磨ムラを抑制することができる。この点については、上記仰角θが30〜60°の範囲、より好適には50〜60°であると更に研磨ムラを抑制できるので好ましい。
スキン層領域120bと発泡樹脂領域120cとは、明確にその境界が区別されるとは限らない。例えば、発泡樹脂領域120cの細長い部分122aを有する気泡122の先端が研磨面付近まで延びていてもよい。なお、研磨パッド用シート100の主面120aには、樹脂シート120の内部に通じる開口が現れてもよい。このような開口は、発泡樹脂領域120cに形成された気泡122がスキン層領域120bを経由して主面120aに通じた開口EOであってもよい。ただし、その少なくとも一部は、発泡樹脂領域120cに形成された気泡122がスキン層領域120bを経由して主面120aに通じた開口EOである。このような開口は、後述の研削工程により形成されてもよい。
樹脂シート120の主面120aには、エンボス溝125が形成されている。研磨パッドに形成される溝は、CMP法による研磨加工時に、スラリーを研磨パッドの全面に効率よく且つ確実に行き渡らせると共に系外に排出して循環性を高めるために設けられ、従来、切削により形成されている。エンボス溝125は、切削により形成した溝と比較して、その壁面が、エンボス加工時の加熱により硬質化するので、研磨パッド用シート100から作製した研磨パッドを用いて研磨する際に、被研磨物と樹脂シート120との摩擦に伴う溝の開口端や壁面の崩壊が発生し難い。
また、エンボス溝125を形成する場合、樹脂シート120の主面に現れていた開口は、エンボス加工での加熱及び押圧に伴うマトリックス樹脂の溶融及び変形により、エンボス溝125内では少なくとも一部が閉塞される。したがって、樹脂シート120の主面120aの面積に対する主面120aに現れる開口の数の比率は、エンボス溝125の壁面の面積に対するエンボス溝125の壁面に現れる開口の数の比率よりも高くなる。それに加えて/代えて、主面120aの面積に対する主面120aに現れる開口の総面積の割合が、エンボス溝125の壁面の面積に対するエンボス溝125の壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高くなる。それらに加えて/代えて、主面120aの面積に対する主面120aに現れる開口の平均径が、エンボス溝125の壁面に現れる開口の平均径よりも大きくなる。これらにより、スラリーを研磨パッドの全面に効率よく且つ確実に行き渡らせると共に、研磨屑や砥粒を含むスラリーを系外に排出するという研磨パッドに形成される溝の機能を維持すると共に、被研磨物が当接する研磨面でのスラリーの保持を確実に行うことができる。溝が切削により形成されると、溝の壁面にも研磨面と同程度に開口が現れるため、エンボス溝125と比較して、スラリーを研磨パッドの全面に効率よく且つ確実に行き渡らせると共に系外に排出するという溝の機能が十分ではなくなる。
さらに、長さ方向が樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分122aを有する気泡122は、気泡がそのような細長い部分を有していない場合と比較すると、気泡間に存在するマトリックス樹脂による壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いた状態になる。そのような状態の樹脂シート120に対して、切削により溝を形成すると、傾いた壁の部分の一部が切断されるため、研磨の際に樹脂シート120の厚み方向に押圧されると、その壁の部分が容易に崩壊してしまい、気泡の本来の機能であるスラリーの保持が困難になる。一方、本実施形態によるとエンボス加工によるマトリックス樹脂の溶融及び変形によりエンボス溝125を形成するので、切削による場合と比較して、気泡122間に存在する壁の部分を切断することなく溝を形成することができる。したがって、気泡122間の壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡122によるスラリーの保持能力を高く維持することが可能となる。
また、長さ方向が樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分122aを有する気泡122は、気泡が樹脂シートの厚み方向に対して傾斜していない場合と比較すると、樹脂シート120の厚み方向から見た投影面積が広くなる。そのため、切削により溝を形成した場合に溝の壁面に現れる開口の大きさは、気泡が傾斜していない場合よりも大きくなり、スラリーの保持が困難になる。ところが、本実施形態によると、エンボス溝125の形成により、溝の壁面において開口が現れるのを抑制することができるので、気泡122間の壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡122によるスラリーの保持能力を高く維持することができる。
エンボス溝125の開口端125aは、その長さ方向に直交する断面において円弧状である。これにより、研磨加工時に被研磨物と樹脂シート120とが摩擦しても、その開口端125aが崩壊し難くなるので好ましい。ただし、その形状は円弧状に限定されない。
エンボス溝125の、その長さ方向に直交する断面の形状(断面形状)は特に限定されず、図1に示すように円弧状であってもよく、U字状、V字状、矩形状、台形状及びその他の多角形状であってもよい。また、エンボス溝125の、樹脂シート120の主面120aの面内方向におけるパターン、すなわちエンボスパターンも特に制限されず、例えば、格子状、放射状、同心円状及び渦巻状、並びにこれらのうち2種以上の組み合わせであってもよい。また、エンボス溝125の深さ及び幅、並びに隣り合うエンボス溝125の間隔(ピッチ)は特に限定されないが、研磨パッドの機械的強度、及び被研磨物と当接する研磨面の面積を確保する観点、並びに、スラリーを研磨パッドの全面により効率的且つ確実に行き渡らせると共に系外に排出する観点から、深さは0.1〜1.8mmであると好ましく、幅は0.5〜5.0mmであると好ましく、間隔は2.0〜20mmであると好ましい。深さ、幅及び間隔が上記の範囲内であれば、研磨屑をより円滑に排出できるため、スクラッチの発生を一層抑えることができる。
樹脂シート120の厚さは、特に限定されないが、0.3〜2.1mmであると好ましい(ただしエンボス溝125の部分は無視する。)。樹脂シートの厚さが0.3mm以上であることにより、研磨パッドの寿命をより十分に保証することができ、2.1mm以下であることにより、樹脂シート120の適度な硬度を維持でき、被研磨物の外周ダレをより有効に防ぐことができる。
上述の本実施形態による作用効果をより有効且つ確実に奏する観点から、樹脂シート120の圧縮率は7〜50%であると好ましく、12〜20%であるとより好ましい。また、同様の観点から、樹脂シート120に含まれる樹脂(好ましくは、樹脂シート120に含まれる全ての樹脂)の100%モジュラスが2〜50MPaであると好ましく、10〜35MPaであるとより好ましい。圧縮率は日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求められる。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt1を測定し、次に最終圧力の下で5分間放置後の厚さt2を測定する。これらから、圧縮率を下記式:
圧縮率(%)=(t1−t2)/t1×100
から算出する。このとき、初荷重は100g/cm2、最終圧力は1120g/cm2とする。100%モジュラスは、樹脂シート120に含まれる樹脂と同じものを用いた無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき、すなわち元の長さの2倍に伸ばしたとき、に掛かる荷重を断面積で割った値である。圧縮率及び100%モジュラスが上記の範囲内であれば、研磨パッドに求められる適度な弾性特性から、被研磨物をより効率良くかつ一層高品位に研磨を行うことができる。
次に、本実施形態の研磨パッド用シートの製造方法について説明する。本実施形態の研磨パッド用シートの製造方法は、傾斜が確認されるように樹脂シート120の厚み方向に切断した断面に現れる複数の気泡122のうち、50%以上の気泡122における細長い部分122aの長さ方向が、樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように、樹脂シート120の前駆体シートに複数の気泡122を形成する第1の工程(気泡形成工程)と、前駆体シートの主面にエンボス溝125を形成する第2の工程(溝形成工程)とを有するものである。本実施形態の研磨パッド用シートの製造方法は、それらの工程以外に、図5に示すように、湿式成膜法に基づいて、樹脂と溶媒とを含む樹脂溶液を調製する工程(樹脂溶液調製工程)と、前駆体シートをバフ研削加工処理又はスライス処理により研削する工程(研削工程)と、前駆体シートを基材110に貼り合わせる工程(基材貼り合わせ工程)とを、それぞれ必要に応じて有していてもよい。以下、各工程について説明する。
まず、必要に応じて設けられる樹脂溶液調製工程では、上述のポリウレタン樹脂などのマトリックス樹脂と、そのマトリックス樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、必要に応じて樹脂シート120に含ませるその他の材料とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡して樹脂溶液を調製する。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。樹脂シート120の研磨能力を確保し、気泡122中にスラリーをより十分に保持する観点、及び、細長い部分122aの長さ方向が上述のように傾斜した気泡122を効率よく且つ確実に形成する観点から、樹脂溶液について、B型回転粘度計を用いて25℃で測定した粘度が3〜11Pa・sの範囲であると好ましく、5〜11Pa・sの範囲であるとより好ましい。そのような粘度の数値範囲にある樹脂溶液を得る観点、並びに後述の凝固スピードを調整する観点から、例えば、マトリックス樹脂を10〜30質量%の範囲、より好ましくは15〜25質量%の範囲で溶媒に溶解させてもよい。樹脂溶液の粘性は、用いるマトリックス樹脂の種類及び分子量にも依存するため、これらを総合的に考慮し、マトリックス樹脂の選定、濃度設定等を行うことが重要である。
気泡形成工程は、樹脂溶液を成膜用基材に塗布する工程(塗布工程)と、塗布した樹脂溶液中の樹脂をシート状に凝固再生して前駆体シートを得る工程(凝固再生工程)と、前駆体シート中に残存する溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)とを好ましくは有する。
塗布工程では、樹脂溶液を、好ましくは常温下で、ナイフコータ等の塗布装置を用いて帯状の成膜用基材にシート状に塗布する。このときに塗布する溶液の厚さは、特に限定されないが、樹脂シート120の研磨能力を確保し、気泡122中にスラリーをより十分に保持する観点、及び、細長い部分122aの長さ方向が上述のように傾斜した気泡122を効率よく且つ確実に形成する観点から、例えば0.8〜1.2mmの範囲であってもよい。成膜用基材としては、例えば、PETフィルムなどの樹脂製フィルム、布帛及び不織布が挙げられる。これらの中では、樹脂溶液を浸透し難いPETフィルムなどの樹脂製フィルムが好ましい。
凝固再生工程では、成膜用基材に塗布された樹脂溶液の塗膜を、マトリックス樹脂に対する貧溶媒(例えばポリウレタン樹脂の場合は水)を主成分とする凝固液中に連続的に案内する。凝固液には、マトリックス樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、マトリックス樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、マトリックス樹脂がポリウレタン樹脂である場合、例えば、15〜40℃であってもよい。凝固液中では、まず、樹脂溶液の塗膜と凝固液との界面に皮膜が形成され、皮膜の直近のマトリックス樹脂中にスキン層領域120bを構成する無数の微細な気泡が形成される。その後、樹脂溶液に含まれる溶媒の凝固液中への拡散と、マトリックス樹脂中への貧溶媒の浸入との協調現象により、好ましくは連続気泡構造を有するマトリックス樹脂の再生が進行する。このとき、成膜用基材が凝固液を浸透し難いもの(例えばPET製フィルム)であると、樹脂溶液中の溶媒と貧溶媒との置換がスキン層領域120b側で優先的に生じ、発泡樹脂領域120c側にスキン層領域120b側よりも大きな気泡122が形成される。
ここで、マトリックス樹脂の再生に伴う気泡形成について説明する。マトリックス樹脂では、凝集力が大きくなるために皮膜の直近のマトリックス樹脂中で急速に再生が進行し、スキン層領域120bが形成される。樹脂溶液中の樹脂は、貧溶媒と接触する部分で急速に凝固し、表面に緻密なスキン層領域120bが形成されることから、樹脂溶液中の溶媒と貧溶媒との相互拡散が抑制される。その結果、樹脂溶液内への貧溶媒の浸透量が少なくなり、マトリックス樹脂の再生が緩慢に進行する。特に、マトリックス樹脂の粘度を好ましくは上述の範囲に調整することにより、凝固スピードが緩やかとなり、さらにマトリックス樹脂の再生がより緩慢に進行する。また、凝固液中で先に再生するスキン層領域120b側と、不完全な再生状態の発泡樹脂領域120c側とで粘性の差が大きくなり、特に樹脂溶液の粘度を好ましくは3〜11Pa・sの範囲に調整すると、その粘性に差が更に大きくなる。これにより、それらの部分間での樹脂溶液の流動性に差が生じて、気泡122の細長い部分122aの長さ方向が傾斜するように形成されることとなる。さらに、溶媒を樹脂溶液から脱溶媒する、すなわち、その溶媒と貧溶媒との置換により、スキン層領域120bでの気泡、及び発泡樹脂領域120cでの気泡122が形成される。
また、成膜用基材に塗布した樹脂溶液の塗膜を連続的に凝固液中に浸漬する際、凝固液中における樹脂溶液の塗膜の搬送スピード(この搬送スピードは凝固液に浸漬するスピードと同じである。)を、好ましくは1〜10m/minに設定する。この搬送スピードの調整によって、樹脂溶液の上記流動性の差を利用した気泡122の細長い部分122aの傾斜を促進させることができる。この場合、気泡122は、成膜用基材の長さ方向(流れ方向)に傾斜するように形成される。また、成膜用基材に塗布した樹脂溶液の塗膜を連続的に凝固液中に案内する際、塗膜の面内方向を水平から傾けた状態で案内すると好ましい。これによっても、重力を利用して、樹脂溶液の上記流動性の差を利用した気泡122の細長い部分122aの傾斜を促進させることができる。こうして、前駆体シートが得られる。なお、マトリックス樹脂が成膜用基材上で再生されることから、成膜用基材の表面に接触して形成された前駆体シートの裏面では、気泡122の開口は形成されていない。
溶媒除去工程では、凝固再生工程を経て得られた前駆体シート中に残存する溶媒を除去する。溶媒の除去には、従来知られている水洗処理を用いることができる。また、溶媒を除去した後の前駆体シートを、必要に応じて乾燥してもよい。前駆体シートの乾燥には、例えば、熱風乾燥機や、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機を用いることができるが、乾燥方法はこれに限定されない。シリンダ乾燥機を用いる場合、前駆体シートがシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。さらに、得られた前駆体シートをロール状に巻き取ってもよい。
必要に応じて設けられる研削工程では、前駆体シートのスキン層領域120b側の主面と、発泡樹脂領域120c側の裏面を、バフ研削加工処理又はスライス処理で研削する。バフ研削加工処理やスライス処理により前駆体シートの厚さの均一化を図ることができるため、被研磨物に対する押圧力を一層均等化し、被研磨物の平坦性を向上させることができる。例えば、スキン層領域120bのミクロな平坦性を有効に活用して被研磨物の高精度な平坦性を得るには、裏面側の研削処理により厚さを均一化しマクロな平坦性を向上させた前駆体シートとしてもよい。また、研削工程を経ることにより、前駆体シートのスキン層領域120b側の主面に気泡122の開口EOを形成しやすくなり、その開口EOの平均径を調整することも可能となる。これにより、研磨加工時に供給されるスラリーの循環性を向上させ研磨レートの向上等を図ることができる。
必要に応じて設けられる基材貼り合わせ工程では、前駆体シートの裏面側に、基材110を貼り合わせる。基材110の前駆体シートに対向する面側に接着剤を常法により塗布した後、前駆体シートと基材110とを互いに押圧することにより、基材110と前駆体シートとを接着剤で貼り合わせた積層体を得ることができる。接着剤としては、例えば、アクリル系、ニトリル系などの感熱型接着剤が挙げられる。
溝形成工程では、前駆体シートの主面に、エンボス加工によりエンボス溝125を形成して樹脂シート120を得る。まず、基材110と前駆体シートとを貼り合わせた積層体を、平坦表面を有する台上に、台の平坦表面と基材110とが対向するようにして載置する。それと共に、エンボスパターンに合わせた凸部を有する金型を加熱しておく。次いで、加熱した金型を台上に載置した積層体における前駆体シートの主面側に当接し押圧する。これにより、前駆体シートの主面側にエンボス溝125が形成される。エンボス加工では、通常、マトリックス樹脂の融点をTm(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、エンボス金型を温度(Tm±50)℃ないし(Tg+100〜Tg+200)℃の近傍まで加熱し、一定圧力で一定時間プレスすることで、研磨面に凹凸を付与する。例えば、マトリックス樹脂がポリウレタン樹脂である場合、好ましくは、エンボス金型を100〜180℃の温度に加熱し、2.0〜10.0MPaの圧力で60〜300秒間プレスする。こうして、研磨パッド用シート100が得られる。
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、上記研磨パッド用シートの製造方法により研磨パッド用シート100を形成する工程を有するものである。例えば、本実施形態の研磨パッドは、上述のようにして得られた研磨パッド用シート100を所定形状に裁断することにより得られる。裁断する形状としては、例えば円形及びドーナツ型が挙げられる。あるいは、研磨パッド用シート100をそのまま研磨パッドとして用いてもよい。さらには、そのような研磨パッドの基材110に対して樹脂シート120とは反対側に、後述の粘着剤層や剥離基材等の別の部材を備えてもよい。いずれの場合も、研磨パッド用シート100の主面側が研磨パッドの研磨面となる。好ましくは、得られた研磨パッドを用いて研磨するまでの間で、キズや汚れ、異物等の付着がないことを確認する等の検査が行われる。
本実施形態の研磨パッドを用いた研磨方法は、得られた研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する工程を有する。その具体例の一つを以下に説明する。まず、片面研磨機の保持定盤に被研磨物を保持させる。次いで、保持定盤と対向するように配置された研磨定盤に研磨パッドを装着する。研磨定盤に研磨パッドを装着する際、研磨パッドが基材側から粘着剤層及び剥離基材を更に備えている場合は剥離基材を取り除いて粘着剤層を露出させた後、露出した粘着剤層を研磨定盤に接触させ押圧する。なお、研磨パッドが粘着剤層を備えていない場合は、基材側に粘着剤を塗布又は貼り付けてから研磨定盤に装着することもできる。そして、被研磨物と研磨パッドとの間に砥粒(研磨粒子)を含むスラリーを循環供給すると共に、被研磨物を研磨パッドの方に所定の研磨圧にて押圧しながら研磨定盤ないし保持定盤を回転させることで、被研磨物をCMP法により研磨する。
この際、図6に示すように、主面120aに現れた開口EOの中心と、開口EOとは反対側の気泡122の端部ECの中心とが、厚み方向に互いにずれた配置となるので、研磨パッド200上を被研磨物300が研磨パッド200の主面120aに向けて押圧されながら、その主面120aの面内方向(矢印方向)に移動すると、被研磨物300の移動方向先端付近を経由して気泡122の端部ECが押圧されているとき、その端部ECを有する気泡122の開口EOが、被研磨物によって塞がれ難くなる。さらに、研磨時に、細長い部分に対してその長さ方向に気泡が押圧される傾斜していない場合と対比すると、本実施形態では、細長い部分122aの長さ方向に対して傾いた方向に気泡122が押圧されるため、その押圧により気泡122が変形しやすく、気泡122の体積変化が大きくなる。これらにより、気泡122内に保持したスラリー400を効率よく、その開口EOから排出することができ、スラリー400の循環を促進することが可能となる。
また、図示しないが、気泡122の細長い部分122aの長さ方向が、樹脂シート120の面内方向から一定方向に10〜65°傾斜すると共に、被研磨物300の移動方向に傾斜しないようにすれば、被研磨物300が研磨パッド200の端部EC周辺の真上にあり、そこに研磨圧が印加されているときは、気泡122が押圧により押しつぶされて、気泡122内に収容されたスラリー400が気泡122の開口EOを経由して排出される。一方、被研磨物300が研磨パッド200の端部EC周辺の真上を通過し終えたときは、気泡122が押圧から開放されて、元の形状に戻るのに伴い、研磨パッド200上のスラリー400を吸い込む。このように、気泡122がポンプのように機能するため、スラリー400の保持と研磨面への供給をより一層効率的に行うことが可能となり、研磨レートを高めることができる。
また、エンボス溝125を形成する場合、樹脂シート120の主面に現れていた開口は、エンボス加工での加熱及び押圧に伴うマトリックス樹脂の溶融及び塑性変形により、エンボス溝125内では少なくとも一部が閉塞される。これにより、切削等により形成した溝のように、溝内に残存又は新たに形成した開口からスラリーが気泡内に取り込まれてしまう場合とは異なり、スラリー400を研磨パッド200の全面に効率よく行き渡らせると共に、研磨屑や砥粒を含むスラリー400を系外に排出するという研磨パッド200に形成される溝の機能を維持することができ、被研磨物300が当接する主面(研磨面)120aでのスラリー400の保持を確実に可能とすることができる。さらに、長さ方向が樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分122aを有する気泡122は、気泡がそのような細長い部分を有していない場合と比較すると、気泡122間に存在するマトリックス樹脂による壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いた状態になる。そのような状態の樹脂シート120に対して、切削により溝を形成すると、傾いた壁の部分の一部が切断されるため、研磨の際に樹脂シート120の厚み方向に押圧されると、その壁の部分が容易に崩壊してしまい、気泡の本来の機能であるスラリーの保持が困難になる。一方、本実施形態によるとエンボス加工によるマトリックス樹脂の溶融及び変形によりエンボス溝125を形成するので、切削による場合と比較して、気泡122間に存在する壁の部分を切断することなく溝を形成することができる。したがって、気泡122間の壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡122によるスラリー400の保持能力を高く維持することが可能となる。また、壁の部分が崩壊して発生した異物による被研磨物300の損傷を抑制できると共に、研磨パッド200の長寿命化も可能となる。
また、長さ方向が樹脂シート120の面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜した細長い部分122aを有する気泡122は、気泡が樹脂シート120の厚み方向に対して傾斜していない場合と比較すると、樹脂シート120の厚み方向から見た投影面積が広くなる。そのため、切削により溝を形成した場合に溝の壁面に現れる開口の大きさは、気泡が傾斜していない場合よりも大きくなり、スラリーの保持が困難になる。ところが、本実施形態によると、エンボス溝125の形成により、溝125の壁面において開口が現れるのを抑制することができるので、気泡122間の壁の部分が樹脂シート120の厚み方向に対して傾いているにも関わらず、気泡122によるスラリー400の保持能力を高く維持することができる。
さらに、エンボス溝125の開口端125aが、その長さ方向に直交する断面において円弧状であることにより、被研磨物300と樹脂シート120とが摩擦したり、被研磨物300の先端がその開口端125aに衝突したり、その開口端125a上を押圧しながら通過したりしても、その開口端125aが崩壊し難くなる。その結果、開口端125aが崩壊して発生した異物による被研磨物300の損傷を抑制できると共に、研磨パッド200の長寿命化も可能となる。
本実施形態の研磨パッドは、磁気ディスク等の半導体デバイス、ベアシリコン及び液晶ディスプレイ用ガラス基板の仕上げ研磨に特に好適に用いられる。ただし、本実施形態の研磨パッドの用途はそれらに限定されない。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、本発明の別の実施形態において、研磨パッドは、上記の研磨パッド用シートの他、例えば、研磨パッド用シートを支持するための基材を備えていてもよい。支持するための基材は、特に限定されず、従来の研磨パッドに備えられていた基材であってもよい。その基材の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。また、本発明の研磨パッド用シート及び研磨パッドは、図1に示す基材110と樹脂シート120との間に粘着剤層を備えてもよい。さらに、研磨パッド用シート及び研磨パッドは、粘着剤層と剥離基材とを積層して備えた粘着テープ(いわゆる両面テープ)を、基材110側に、粘着剤層を基材110に対向するようにして備えてもよい。粘着剤層の粘着剤は、従来知られているものであってもよく、感圧型であっても感熱型であってもよい。
また、研磨パッド及び研磨パッド用シートは、樹脂シート120においてスキン層領域120bを有しないものであってもよい。そのような研磨パッド及び研磨パッド用シートを得るには、研削工程において、スキン層領域120bの全てを研削除去すればよい。この場合、スキン層領域120bが除去されるので、主面120aに現れる開口は、スキン層領域120bを有する場合と比較して大きくなる。これにより、立ち上がり時間(研磨加工に使用するまでの時間)が短縮されるので、研磨加工の効率をより向上させることができる。また、研削工程を溝形成工程の後に設けてもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、30質量%のポリエステル系ポリウレタン樹脂のDMF溶液100質量部に対し、粘度調整用のDMF69質量部、水7質量部、ノニオン系界面活性剤2質量部、及びカーボンブラック3質量部を混合して、樹脂溶液を調製した。その25℃での粘度をB型回転粘度計(東機産業株式会社製、商品名「TVB−10型」)を用いて測定したところ、6.4Pa・sであった。次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を、ナイフコータを用いて塗布し、厚さ1.0mmの塗膜を得た。
次いで、得られた塗膜を成膜用基材と共に、凝固液である水からなる室温の凝固浴に浸漬し、搬送スピード1.9m/minで搬送しながら、樹脂を凝固再生して前駆体シートを得た。前駆体シートを凝固浴から取り出し、成膜用基材を前駆体シートから剥離した後、前駆体シートを水からなる室温の洗浄液(脱溶剤浴)に浸漬し、溶媒であるDMFを除去した。その後、前駆体シートを乾燥しつつ巻き取った。得られた前駆体シートの厚さは0.70mmであった。次に、前駆体シートの主面に対して、バフ研削加工処理を施し、厚さ0.60mmのシートを得た。
バフ研削加工処理後の前駆体シートを基材であるPETフィルム(厚さ:188μm)に、グラビアロールを用いて塗布した後、その塗布面に前駆体シートをプレスロールにより貼り合わせて積層体を得た。更にその積層体を乾燥して巻き取った。
次に、積層体の前駆体シートの主面に、エンボス加工を施した。その時の加工条件は、加工圧力4.5MPa、加工(金型)温度160℃、加工時間180秒であった。また、エンボスパターンは、格子状であり、エンボス溝の断面形状は、台形状であり、開口端が、丸まっており、エンボス溝の長さ方向に直交する断面において円弧状になっていることを確認した。エンボス溝の深さは0.40mm、幅は2.0mm、間隔は10mmであった。また、エンボス溝の壁面では開口の割合がその他の樹脂シートの表面と比較して明らかに少なくなっていた。すなわち、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の数の比率が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の数の比率よりも高かった。また、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の総面積の割合が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高くなっていた。
こうして得られた研磨パッド用シートの幅方向中央付近を、長さ方向に沿って切断し、現れた断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、その写真を撮影した。得られた写真について、任意に気泡を25個以上選択し、面内方向に対する細長い部分の長さ方向の傾き及び仰角θを測定して、気泡数基準で、細長い部分の長さ方向の傾きが一定方向に10〜65°である気泡の割合、仰角θの平均値、及び仰角θが30〜60°である気泡の割合を算出した。また、上述の方法により圧縮率を測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0005917236
得られた研磨パッド用シートを平面形状が外径64.0cm、内径23.2cmのドーナツ型になるよう切り抜き研磨パッドを得た。その研磨パッドを研磨機(スピードファム社製、9B−5Pポリッシングマシン)の所定位置に設置し、被研磨物としての95mmφハードディスク用アルミニウム基板に対して、下記条件にて研磨加工を施した。
研磨条件
・回転数:(定盤)30rpm
・研磨圧力:90g/cm2
・研磨剤:アルミナスラリー(平均粒子径:0.8μm、pH:2.3、濃度:5質量%)
・研磨剤吐出量:100cc/min.
・研磨時間:300秒間
この研磨加工後に研磨レートを導出し、また、被研磨物表面にスクラッチが生じているか否かを目視にて確認した。結果を表1に示す。
(実施例2)
30%ポリエステル系ポリウレタン樹脂のDMF溶液に代えて、30%ポリエーテル系ポリウレタン樹脂のDMF溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。エンボス溝の壁面では開口の割合がその他の樹脂シートの表面と比較して明らかに少なくなっていた。すなわち、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の数の比率が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の数の比率よりも高かった。また、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の総面積の割合が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高くなっていた。結果を表1に示す。
(実施例3)
各成分の配合割合を表1に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。エンボス溝の壁面では開口の割合がその他の樹脂シートの表面と比較して明らかに少なくなっていた。すなわち、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の数の比率が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の数の比率よりも高かった。また、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の総面積の割合が、エンボス溝の壁面の面積に対するエンボス溝の壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高くなっていた。結果を表1に示す。
(比較例1)
エンボス加工に代えて切削加工を用いて溝(切削溝:深さ0.40mm、幅2mm、間隔20mm)を形成した以外は実施例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。切削溝の壁面には開口が生じており、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の数の比率が、切削溝の壁面の面積に対する切削溝の壁面に現れる開口の数の比率よりも低く、樹脂シートの主面の面積に対するその主面に現れる開口の総面積の割合が、切削溝の壁面の面積に対する切削溝の壁面に現れる開口の総面積の割合よりも低くなっていた。結果を表1に示す。
(比較例2)
各成分の配合割合を表1に示すように代え、かつ搬送スピード(ラインスピード)を1.9m/minから2.0m/minに代えた以外は実施例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。結果を表1に示す。
(比較例3)
各成分の配合割合を表1に示すように代え、かつ搬送スピード(ラインスピード)を1.9m/minから2.0m/minに代えた以外は比較例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。結果を表1に示す。
(比較例4)
各成分の配合割合を表1に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、研磨パッド用シート及び研磨パッドを得た。結果を表1に示す。
本発明の研磨パッドは、磁気ディスク等の半導体デバイス、ベアシリコン及び液晶ディスプレイ用ガラス基板の仕上げ研磨に特に好適に用いられ、それらの用途に産業上の利用可能性がある。
100…研磨パッド用シート、110…基材、120…樹脂シート、120a…主面、120b…スキン層領域、120c…発泡樹脂領域、122、122b、122c、122d…気泡、122a…細長い部分、125…エンボス溝、200…研磨パッド、300…被研磨物、400…スラリー、EO…開口。

Claims (19)

  1. 細長い部分を有する複数の気泡が形成されている樹脂シートを備える研磨パッド用シートであって、
    前記樹脂シートの厚み方向に平行な断面により現れる前記複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡における前記細長い部分の長さ方向が、前記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されており、前記樹脂シートの主面にエンボス溝が形成されており、かつ、
    前記樹脂シートの主面に、前記細長い部分の長さ方向が前記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように形成されている前記気泡のうちの少なくとも一部の気泡の開口を有する、シート。
  2. 前記細長い部分は、前記樹脂シートの厚み方向内部から前記主面に向かって延びている、請求項1に記載のシート。
  3. 前記主面の面積に対する前記主面に現れる開口の数の比率が、前記エンボス溝の壁面の面積に対する前記エンボス溝の前記壁面に現れる開口の数の比率よりも高い、請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記主面の面積に対する前記主面に現れる開口の総面積の割合が、前記エンボス溝の壁面の面積に対する前記エンボス溝の前記壁面に現れる開口の総面積の割合よりも高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
  5. 前記エンボス溝の開口端が、前記エンボス溝の長さ方向に直交する断面において円弧状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
  6. 前記複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡は、前記気泡底部の中心M1と、前記主面に現れる開口の中心M2と、を結ぶ線分を斜辺とする直角三角形における、前記中心M1から前記中心M2を見た場合の仰角をθとしたときに、前記仰角θが30〜60°の範囲となるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
  7. 前記複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡は、前記気泡底部の中心M1と、前記主面側の頂点M3と、を結ぶ線分を斜辺とする直角三角形における、前記中心M1から前記頂点M3を見た場合の仰角をθとしたときに、前記仰角θが30〜60°の範囲となるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
  8. 前記樹脂シートはポリウレタン樹脂を70質量%以上含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート。
  9. 前記樹脂シートに含まれる樹脂の100%モジュラスが2〜50MPaである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート。
  10. 前記樹脂シートの圧縮率が7〜50%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨パッド用シートから得られる研磨パッド。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨パッド用シートの製造方法であって、
    樹脂シートの厚み方向に平行な断面により現れる複数の気泡のうち、気泡数基準で50%以上の気泡における細長い部分の長さ方向が、前記樹脂シートの面内方向に対して一定方向に10〜65°傾斜するように、前記樹脂シートの前駆体シートに複数の気泡を形成する第1の工程と、前記前駆体シートの主面にエンボス溝を形成する第2の工程と、を有する製造方法。
  13. 前記第1の工程において、樹脂と溶媒とを含む樹脂溶液の塗膜中の前記樹脂をシート状に凝固再生した後に前記溶媒を除去することにより、前記前駆体シートを形成する、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記第1の工程において、前記塗膜中の前記樹脂をシート状に凝固再生する際に、前記塗膜の面内方向を水平から傾けた状態で、前記気泡を形成する、請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 前記樹脂はポリウレタン樹脂を70質量%以上含む、請求項14に記載の製造方法。
  16. 前記第2の工程よりも前に、前記前駆体シートを研削する工程を更に有する、請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 請求項12〜16のいずれか1項に記載の製造方法により研磨パッド用シートを形成する工程を有する、研磨パッドの製造方法。
  18. 請求項11に記載の研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する工程を有する、研磨方法。
  19. 前記工程において、前記被研磨物を化学的機械的研磨により研磨する、請求項18に記載の研磨方法。
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