JP6987584B2 - 保持パッドの製造に用いるための積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
片面研磨機を使用した研磨加工では、保持定盤および研磨パッド間の平行度のバラツキや研磨加工中に発生する偏荷重を吸収し、被研磨物を保持定盤に略平坦に保持する目的で、保持定盤に保持パッドが装着されている。通常、保持パッドには、湿式成膜法で形成されたポリウレタン樹脂製の発泡シートが使用されている。湿式成膜法では、ポリウレタン樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中に浸漬することで樹脂がシート状に凝固再生される。得られた発泡シートは、被研磨物と接触する面側にスキン層を有し、スキン層より内側に厚さ方向に縦長で、スキン層の反対の面(以下、裏面という。)側で拡径された複数の気泡(涙形状気泡)と、当該気泡の平均径より小さい平均径の多数の微細孔とが連続状に形成された構造を有している。このような構造を有することで、研磨加工中にクッション性が発揮され、被研磨物を略平坦に保持することができる。スキン層は、表面が平坦で被研磨物との接触性に優れ、水張り吸着により固定することで被研磨物を確実に保持できる。つまり、スキン層の表面が被研磨物を保持するための保持面となる。
また、被研磨物の薄型化により、従来問題とならなかったレベルの保持パッド表面の凹凸が被研磨物の平坦性に影響するようになってきた。保持パッド表面に凹凸が生じる原因としては、樹脂溶液作製時に生じた溶解不十分な樹脂分や樹脂溶液中の分散不十分なカーボンブラック凝集物のシート内への包含、水系凝固液中に混入した浮遊物の樹脂表面への付着、水系凝固液中への浸漬前における雰囲気中の浮遊物の樹脂溶液の表面への付着、樹脂溶液から水系凝固液中に溶出した界面活性剤等で水系凝固液との接触が妨げられる、いわゆる、はじき現象により生じる凝固再生の不均等などを挙げることができる。これらは、スキン層表面に突出したスポット状の凸部や凹部を形成する。通常、これらの凹凸を有する保持パッドは製造時の検査工程で不良品として排除されるが、目視で排除されないミクロンオーダーの凹凸が被研磨物の平坦性に影響するようになってきた。
特許文献2の方法は、ポリウレタンシートを巻物状にしてから加熱処理するため、保持パッドがカールしやすく、研磨定盤への貼付作業が難しくなり、作業性が悪化する。また、吸着性も十分ではない。
すなわち、本発明は以下を提供する。
フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルムを用意する工程;及び
粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するように粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせて積層体を得る工程、
を含む、保持パッドの製造に用いるための積層体の製造方法。
〔2〕 加熱することなく粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせる、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度が0.020〜0.150kg/10mmの範囲内である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法により得られた積層体から粘着性フィルムを剥がして保持パッドを得る工程を含む、保持パッドの製造方法。
〔5〕 複数の涙形状気泡を有し且つ被研磨物を保持するための保持面を有するポリウレタンシート、及び
フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルム
を含む、保持パッドの製造に用いるための積層体であって、
前記粘着性フィルムは、ポリウレタンシート上に、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして貼り合わされており、且つ
前記粘着性フィルムを構成するフィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルムから選択される、前記積層体。
〔6〕 粘着性フィルムを剥がして保持パッドとして用いるための〔5〕に記載の積層体。
〔7〕 前記ポリウレタンシートは、その保持面側にスキン層を有する、〔5〕又は〔6〕に記載の積層体。
〔8〕 粘着層を構成する粘着剤が、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素樹脂系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤から選択される、〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層体。
〔9〕 粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度が、0.020〜0.150kg/10mmの範囲内である、〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の積層体。
〔10〕 〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の積層体から粘着性フィルムを剥がしてなる、保持パッド。
〔11〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法により得られる積層体或いは〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の積層体を用意する工程;
前記積層体から粘着性フィルムを剥がして保持パッドを得る工程;及び
前記保持パッド用いて被研磨物を保持しながら、前記被研磨物を研磨パッドで研磨する工程、
を含む、被研磨物の研磨方法。
本発明の第1の態様は、複数の涙形状気泡を有し且つ被研磨物を保持するための保持面を有するポリウレタンシートを用意する工程;フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルムを用意する工程;及び、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するように粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせて積層体を得る工程を含む、保持パッドの製造に用いるための積層体の製造方法である。
以下、各工程について詳しく説明する。
ポリウレタンシートを用意する工程において、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンシートを用意する。ポリウレタンシートは(湿式成膜法によって形成される)涙形状気泡を複数有することが好ましい。また、ポリウレタンシートは、被研磨物を保持するための保持面にスキン層を有することが好ましい。ポリウレタンシートは、市販されているものを用いてもよく、自ら製造したものを用いてもよい。ポリウレタンシートは、例えば、下記(i)〜(iv)の工程を経て製造することができる。
ポリウレタンシートの原料となるポリウレタン樹脂を、ポリウレタン樹脂を溶解することのできる水混和性の有機溶媒に溶解することにより、ポリウレタン樹脂含有溶液を調製する。また、有機溶媒に溶解後、得られた溶液を減圧下で脱泡してもよい。
ポリウレタン樹脂の種類に特に制限はなく、種々のポリウレタン樹脂の中から使用目的に応じて選択すればよい。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、又はそれらの共重合系、混合系の樹脂を用いることができる。
ポリエステル系の樹脂としては、エチレングリコールやブチレングリコール等とアジピン酸等とのポリエステルポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のジイソシアネートとの重合物が挙げられる。
ポリエーテル系の樹脂としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。
ポリカーボネート系の樹脂としては、ポリカーボネートポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。
これらの樹脂は、DIC(株)製の商品名「クリスボン」や、三洋化成工業(株)製の商品名「サンプレン」、大日精化工業(株)製の商品名「レザミン」など、市場で入手可能な樹脂を用いてもよく、所望の特性を有する樹脂を自ら製造してもよい。
ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれる全固形分に対して50〜98質量%含まれることが好ましく、60〜95質量%含まれることがより好ましく、70〜90質量%含まれることがさらにより好ましい。
モジュラスとは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を単位面積で割った値である(以下、100%モジュラスと呼ぶことがある。)。この値が高い程、硬い樹脂である事を意味する。
ポリウレタン樹脂は、1〜20MPaの樹脂モジュラスを有することが好ましく、2〜10MPaであることがより好ましく、3〜8MPaであることがさらにより好ましい。モジュラスが上記範囲内であると、研磨後の被研磨物の平坦性を良好にでき、かつ被研磨物を研磨パッドを用いて研磨した場合に応力集中による破損リスクやスクラッチが低減される。
前記有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂を溶解することができ且つ水混和性であれば特に制限なく用いることが出来る。例としては、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)などが挙げられる。これらの中でも、DMF又はDMAcが好ましく用いられる。
ポリウレタン樹脂含有溶液中の固形分濃度は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。上記範囲内の濃度であれば、ポリウレタン樹脂含有溶液が適度な流動性を有し、後の塗布工程において成膜基材に均一に塗布することができる。
孔形成剤としては、ポリオールやセルロース誘導体などが挙げられる。ポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。セルロース誘導体としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバレレート、セルロースアセテートブチレート等のエステル系セルロース誘導体や、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のエーテル系セルロース誘導体、アセチルエチルセルロース、アセトキシプロピルセルロース等のエーテルエステル系セルロース誘導体を挙げることができる。孔形成剤を含む場合、孔形成剤は、ポリウレタン樹脂溶液中に含まれる全固形分に対して0.001〜5質量%含まれることが好ましく、0.01〜2質量%含まれることがより好ましく、0.01〜1.0質量%含まれることがさらにより好ましい。孔形成剤を含むことにより、保持面に容易に開孔部を形成調整することができる。
親水性添加剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、親水性のエステル系、エーテル系、エステル・エーテル系、アミド系等のノニオン界面活性剤が挙げられる。また、疎水性添加剤としては、例えば、炭素数3以上のアルキル鎖が付加したノニオン系界面活性剤、より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。界面活性剤を含む場合、界面活性剤は、ポリウレタン樹脂溶液中に含まれる全固形分に対して0.01〜10質量%含まれることが好ましく、0.1〜10質量%含まれることがより好ましく、0.2〜8質量%含まれることがさらにより好ましく、0.3〜8質量%含まれることがさらにより好ましい。界面活性剤を上記範囲内で含んでいると、発泡を促進させることやポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させることができる。
上記で得られたポリウレタン樹脂含有溶液を、ナイフコーター、リバースコーター等により成膜基材上に略均一となるように、連続的に塗布する。このとき、ナイフコーター等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ウレタン樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材としては、本技術分野で通常用いられる基材であれば特に制限なく用いることができる。例としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等の可撓性のある高分子フィルム、弾性樹脂を含浸固着させた不織布等が挙げられ、中でもポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
ポリウレタン樹脂含有溶液が塗布された基材を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に浸漬する。
凝固液としては、水、水とDMF等の極性有機溶媒との混合溶液などが用いられる。極性有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂を溶解するのに用いた水混和性の有機溶媒、例えばDMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトンが挙げられる。また、混合溶媒中の極性有機溶媒の濃度は0〜20質量%が好ましい。これらの中でも、凝固液としては、水又は水とDMFとの混合液が好ましく、水とDMFとの混合液(混合液中のDMFの割合は1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい)がより好ましい。
凝固液の温度や浸漬時間に特に制限はなく、例えば10〜60℃(好ましくは15〜50℃)で5〜120分間浸漬すればよい。
凝固液中では、まず、ウレタン樹脂溶液の表面側に緻密なスキン層が形成される。その後、スキン層を通じてウレタン樹脂溶液中の溶媒と凝固液との置換の進行によりウレタン樹脂が成膜基材上にシート状に凝固再生されて内部に(即ち、保持面を上面とした場合に、スキン層よりも下層に)涙形状気泡が複数形成された樹脂シートが形成される。
凝固浴で凝固させて得られたシート状のポリウレタン樹脂を成膜基材から剥離した後又は剥離せずに、洗浄、乾燥処理を行う。
洗浄処理により、ポリウレタン樹脂中に残留する有機溶媒が除去される。洗浄に用いられる洗浄液としては、水が挙げられる。
洗浄後、ポリウレタン樹脂を乾燥処理する。乾燥処理は従来行われている方法で行えばよく、例えば80〜150℃で5〜60分程度乾燥機内で乾燥させればよい。上記の工程を経て、ポリウレタンシートを得ることができる。
本発明の製造方法は、フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルムを用意する工程を有する。粘着性フィルムを構成するフィルムは、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルムから選択されるフィルムである。これらの中でも、ポリオレフィンフィルムであることがさらにより好ましく、炭素数2〜8のオレフィンをモノマー単位とするポリオレフィンフィルムがさらにより好ましく、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンフィルムがさらにより好ましく、ポリエチレンフィルムであることが特に好ましい。
粘着性フィルムは、フィルムの片面に粘着層を有する。粘着層を有することにより、粘着性フィルムをポリウレタンシート上に熱を加えることなく密着させることができ、粘着性フィルムの粘着層とポリウレタンシートの保持面とが接するようにして粘着性フィルムをポリウレタンシート上に積層する(貼り合わせる)ことができる。また、粘着層が存在することにより、粘着性フィルムを剥離した後のポリウレタンシートの保持面の単位面積あたりの開口個数を、粘着性フィルムを貼り付ける前のポリウレタンシート保持面の単位面積あたりの開口個数よりも増加させることができる。
粘着層を構成する粘着剤成分は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素樹脂系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤から選択されることが好ましく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤から選択されることがより好ましく、アクリル系粘着剤であることがさらにより好ましい。アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
粘着層の粘着力は、0.05〜1.0N/25mmの微粘着性であることが好ましく、0.1〜0.5N/25mmであることがより好ましい。粘着力は、粘着剤成分を片面に有するテープをステンレス板に貼り、一定時間経過後、180°方向に剥がした時の測定値であり、JIS Z 0237に基づき測定することができる。
本発明の製造方法は、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するように粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせて積層体を得る工程を有する。
粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして粘着性フィルムがポリウレタンシート上に貼り合わさることにより、保持パッドの製造に用いるための積層体を得ることができる。
粘着性フィルムをポリウレタンシートの保持面と貼り合わせる方法としては、ラミネート加工が挙げられる。このとき、加熱することなく粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせることが好ましく、常温(約15℃〜25℃)で粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせることがより好ましい。加熱することなく貼り合わせることにより、加熱によるスキン層表面の微小な孔の縮小又は消失を防ぐことができる。これにより、被研磨物の剥離が容易になる。また、エア噛みこみ時に微小孔を通じてポリウレタンシートの内部に取り込むことができ、エア噛みこみによる研磨後の被研磨物の平坦性の悪化を抑制できる。
本発明の製造方法において、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして貼り合わされている粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度は、0.020〜0.150kg/10mmであることが好ましく、0.023〜0.100kg/10mmであることがより好ましく、0.025〜0.080kg/10mmであることがさらにより好ましく、0.028〜0.075kg/10mmであることがさらにより好ましく、0.030〜0.070kg/10mmであることがさらにより好ましい。剥離強度が上記範囲内になるように粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせることにより、粘着性フィルムを剥がして保持パッドを得たときに、保持パッドの保持面の表面平滑性が向上する。これにより、研磨中に保持パッドと被研磨物の間にスラリーが浸み込みにくくなり、当該浸み込みによる経時的な吸着性の低下を抑えることができる。また、被研磨物を密着させた場合に生じるエア噛みこみを抑制することができる。さらに、開口数、開口径の調整もでき、剥離力を適度な範囲に制御することができる。
本発明の保持パッドの製造方法では、上記ラミネート工程後、ポリウレタンシートの被研磨物を保持する面とは反対側の面に他の層(下層、支持層)を貼り合わせてもよい。他の層の特性は特に限定されるものではないが、ポリウレタンシートよりも硬い(A硬度の高い)層が貼り合わされていることが好ましい。ポリウレタンシートよりも硬い層が設けられることにより、作業性が向上する。
本発明の第2の態様は、第1の態様の製造方法により得られる積層体又は下記第3の態様の積層体から粘着性フィルム(すなわち、フィルム及び粘着層)を剥がして保持パッドを得る工程を含む、保持パッドの製造方法である。
積層体から粘着性フィルムを剥がすのは、保持パッドとしての使用時、すなわち、被研磨物を保持するための保持パッドとして使用する直前であることが好ましい。
本発明の保持パッドは、ポリウレタンシート本体から粘着性フィルムを剥がすことによって得られるものである。従って、本発明の保持パッドは、粘着性フィルムを含まない。
本発明の保持パッドの製造方法において、ポリウレタンシート上に粘着性フィルムを貼り合わせる前のポリウレタンシート保持面の開口個数に対する、積層体から粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシート(保持パッド)の保持面の開口個数の比は1より大きいことが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらにより好ましく、3以上であることがさらにより好ましく、3〜20であることがさらにより好ましく、3〜15であることがさらにより好ましく、4〜12であることがさらにより好ましい。
また、本発明の保持パッドの製造方法において、ポリウレタンシート上に粘着性フィルムを貼り合わせる前のポリウレタンシート保持面に存在する開口部の平均開口径に対する、積層体から粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシート保持面に存在する開口部の平均開口径の比(以下、単に平均開口径比ということがある。)は、1より大きいことが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2〜2.0であることがさらにより好ましく、1.2〜1.5であることがさらにより好ましい。
本発明の第3の態様は、複数の涙形状気泡を有し且つ被研磨物を保持するための保持面を有するポリウレタンシート、及びフィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルムを含む、保持パッドの製造に用いるための積層体であって、
前記粘着性フィルムは、ポリウレタンシート上に、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして貼り合わされており、且つ前記粘着性フィルムを構成するフィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルムから選択される、前記積層体である。
本発明の積層体は、粘着性フィルムを除去して(剥がして)保持パッドとして用いるために好ましく用いることができる。本発明の積層体は、被研磨物を保持するための保持パッドとして使用する直前に、粘着性フィルムが剥がされる(除去される)ことが好ましい。
ポリウレタンシートは、複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡を有する。涙形状気泡は、湿式成膜法によってポリウレタンシート内部に形成される気泡(異方性があり、樹脂シートの上部から下部(基材と接する側)に向けて径が大きい構造を有する気泡)を意図するものであり、乾式成型法によって形成される略球状の気泡と区別するために用いられる。従って、本発明の複数の涙形状気泡を有するポリウレタンシートは、湿式成膜法により形成されたポリウレタンシートと言い換えることができる。湿式成膜法とは、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後、該有機溶媒は溶解するが該樹脂は溶解しない凝固液中に通して該有機溶媒を置換し、凝固させ、乾燥して発泡層を形成する方法を意味する。通常、湿式成膜法によりポリウレタンシートを製造すると、ポリウレタンシート内部に略涙形状のマクロ気泡(涙形状気泡)が生じる。
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリウレタンシートとは、ポリウレタン樹脂を主成分(50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上)とするシートを意味しており、他の樹脂(シリコン樹脂など)を主成分とするシートとは明確に区別される。
ポリウレタンシートは、被研磨物を保持する保持面側にスキン層を有することが好ましい。すなわち、スキン層の表面が保持面となることが好ましい。スキン層とは、湿式成膜法によってポリウレタンシート表面(保持面側表面)から深さ方向(厚さ方向)に3μmまでの領域に形成されている、ポリウレタンシート内部よりも気泡の少ない緻密な表皮層のことである。スキン層は、ポリウレタンシート内部に比べて気泡が少ない(或いは気泡サイズが小さい)ため、シート内部よりも密度が大きくなっている。従って、スキン層は、湿式成膜法によって形成されるポリウレタンシート表面(保持面側表面)から深さ方向(厚さ方向)3μm以下の厚さ領域に形成されている緻密層と言い換えることができる。スキン層を有することにより、被研磨物を保持面に密着させ十分に吸着させることができる。
なお、上記のとおり、スキン層は、ポリウレタンシート中に存在する高密度で緻密な層であり、ポリウレタンシートと同一原料から得られるものである。スキン層は、ポリウレタンシート上に積層されたポリウレタンシートとは異なる層ではない。また、スキン層は、ポリウレタン樹脂を主成分(50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上)とする層であり、他の樹脂(シリコーン系樹脂(例えばポリオルガノシロキサン)など)を主成分とする層ではない。
ポリウレタンシートの厚みに特に制限はないが、0.3〜3mmであることが好ましく、0.5〜2.5mmであることがより好ましく、0.5〜2mmであることがさらにより好ましい。ポリウレタンシートの厚みが上記範囲内であると、クッション性を発揮することができ、被研磨物の表面品質を向上させることができる。
粘着性フィルムとしては、上記第1の態様の中で記載した粘着性フィルムを用いることができる。
本明細書及び特許請求の範囲において、剥離強度は、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するように貼り合わせた粘着性フィルムとポリウレタンシートを含む積層体を20mm×150mmに切り出して試験片を作製し、試験片の長手方向の一端のポリウレタンシートおよび粘着性フィルム部分をそれぞれ引張試験機の把持部につかみ間隔が10mmとなるように引張試験機に取り付け、毎分200mmの引張速度で引っ張り、長辺方向に長さ50mmの貼付部分(すなわち、20mm×50mm)を剥離(T字剥離)したときの最大荷重である。
剥離強度は、日本工業規格(JIS K6772)に準じた方法で、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機、RTF−1210)を使用して測定することができる。
本発明の積層体は、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして貼り合わせた粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度が、0.020〜0.150kg/10mmであることが好ましく、0.023〜0.100kg/10mmであることがより好ましく、0.025〜0.080kg/10mmであることがさらにより好ましく、0.028〜0.075kg/10mmであることがさらにより好ましく、0.030〜0.070kg/10mmであることがさらにより好ましい。剥離強度が上記範囲内であると、保持面の表面平滑性を改善させることができる。これにより、研磨中に保持パッドと被研磨物との間にスラリーが浸み込みにくくなり、当該浸み込みによる吸着性の経時的な低下を抑えることができる。また、剥離後のポリウレタンシート保持面の開口個数を剥離前よりも多くすることができ、及び/又は剥離後のポリウレタンシート保持面の開口径を剥離前よりも大きくすることができるため、被研磨物と密着させた際に生じるエア噛み込みを抑制しやすくなる。すなわち、剥離強度を変えることでポリウレタンシートの保持面の開孔個数、開口径を調整でき、保持力(剥離性)等を最適な範囲にコントロールすることが可能となる。
一方、剥離強度が0.020kg/10mm未満であると、粘着性フィルムを貼り付ける効果に乏しく、平滑性の改善効果が低下し、研磨中にスラリーが保持パッドと被研磨物の間に浸み込みやすくなる。その結果、吸着力が経時的に低下しやすい。剥離強度が0.150kg/10mmよりも大きいと、剥離する際にスキン層の開口個数、開口径が増加しすぎてポリウレタンシートの保持表面の荒れがかえって大きくなり、研磨中にスラリーが保持パッドと被研磨物の間にスラリーが浸み込みやすくなる。その結果、吸着力が経時的に低下しやすい。
本明細書及び特許請求の範囲において、開口個数とは、ポリウレタンシート表面(保持面)に存在する開口部の個数を意味する。開口個数は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影されたスキン層表面の画像を画像処理ソフトにより二値化処理することで測定することができる。
本発明の積層体は、ポリウレタンシート上に粘着性フィルムを貼り合わせる前のポリウレタンシート保持面の開口個数に対する、積層体から粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシート保持面の開口個数の比(以下、単に開口個数比ということがある。)が、1より多くなるように、粘着性フィルムがポリウレタンシート上に貼り合わされていることが好ましい。開口個数比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらにより好ましく、3〜20であることがさらにより好ましく、3〜15であることがさらにより好ましく、4〜12であることがさらにより好ましい。
本発明の積層体は、粘着性フィルムを貼り合わせる(積層する)前のポリウレタンシートの保持面10000μm2当たりに存在する開口部の個数が100個未満であることが好ましく、80個以下であることがより好ましい。
本発明の積層体は、積層体から粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシートの保持面10000μm2当たりに存在する開口部の個数が、5〜800個であることが好ましく、5〜700個であることがより好ましく、5〜600個であることがさらにより好ましい。また、前記開口部の個数は、50〜800個であることも好ましく、100〜600個であることも好ましく、150〜500個であることも好ましく、200〜400個であることも好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、平均開口径とは、スキン層表面に存在する微小な間隙の面積を基に算出される円相当直径を示す。平均開口径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影されたスキン層表面の画像を画像処理ソフトにより二値化処理することで測定することができる。
本発明の積層体は、ポリウレタンシート上に粘着性フィルムを貼り合わせる前のポリウレタンシート保持面に存在する開口部の平均開口径に対する、積層体から粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシート保持面に存在する開口部の平均開口径の比(以下、単に平均開口径比ということがある。)が、1より大きくなるように、粘着性フィルムがポリウレタンシート上に貼り合わされていることが好ましい。平均開口径比は、1.1以上であることがより好ましく、1.2〜2.0であることがさらにより好ましく、1.2〜1.5であることがさらにより好ましい。
粘着性フィルムを貼り合わせる(積層する)前のポリウレタンシートの保持面に存在する開口部の平均開口径は、0.20〜0.70μmであることが好ましく、0.30〜0.60μmであることがより好ましい。
積層体から粘着性フィルム及び粘着層を剥がした後のポリウレタンシートの保持面に存在する開口部の平均開口径は、0.30〜1.00μmであることが好ましく、0.35〜0.90μmであることがより好ましく、0.40〜0.90μmであることがさらにより好ましい。また、前記開口部の平均開口径は、0.50〜0.80μmであることも好ましく、0.60〜0.70μmであることも好ましい。
本発明の第4の態様は、前記積層体から粘着性フィルムを剥がしてなる(剥がすことによって得られる)保持パッドである。
本発明の保持パッドは、積層体から粘着性フィルムを剥がすことによって得られる。従って、本発明の保持パッドは、粘着性フィルム(すなわち、フィルム及び粘着層)を含まない。
本発明の保持パッドは、シリコンウエハ、ガラス基板を研磨する際の保持パッドとして好適に用いることができる。これらの中でも、本発明の保持パッドは、ガラス基板(特に液晶ディスプレイ用ガラス基板やカバーガラス基板)の保持パッドとして、好適に用いることが出来る。
本発明の保持パッドは、保持面10000μm2当たりに存在する開口部の個数が、5〜800個であることが好ましく、5〜700個であることがより好ましく、5〜600個であることがさらにより好ましい。また、前記開口部の個数は、50〜800個であることも好ましく、100〜600個であることも好ましく、150〜500個であることも好ましく、200〜400個であることも好ましい。
本発明の保持パッドは、保持面に存在する開口部の平均開口径が、0.30〜1.00μmであることが好ましく、0.35〜0.90μmであることがより好ましく、0.40〜0.90μmであることがさらにより好ましい。また、前記開口部の平均開口径は、0.50〜0.80μmであることも好ましく、0.60〜0.70μmであることも好ましい。
本発明の第4の態様は、第1の態様の製造方法により得られる積層体又は第3の態様の積層体から粘着性フィルムを除去して(剥がして)保持パッドを得る工程;及び前記保持パッド用いて被研磨物を保持しながら、前記被研磨物を研磨パッドで研磨する工程を含む、被研磨物の研磨方法である。
被研磨物としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス基板、が挙げられる。これらの中でも、被研磨物としては、ガラス基板(特に液晶ディスプレイ用ガラス基板やカバーガラス基板)が好ましい。
被研磨物を研磨する方法としては、例えば、酸化セリウム、コロイダルシリカなどから選ばれる研磨材を含む研磨液を用いて、ガラス基板の表面を研磨する方法が挙げられる。
従来の保持パッドは、保持面が保護されていないため、保管中に傷や異物の付着が生じやすい。また、ポリウレタンシートの成膜工程において、保持面となるスキン層表面に異物が顕在化し、保持パッド表面に異物による凸状欠陥や異物が脱離した凹状欠陥が形成されることがある。保持パッド表面に異物や傷が存在すると、吸着力が低下するため、保持パッド面内において吸着力に差が生じ、研磨加工中にスラリーが吸着力の不足している箇所に入り込み、被研磨物が浮き、脱離しやすくなる。また、保持パッド表面に異物が付着していると、保持パッドの当該異物部分と接する被研磨物部分が***し、過研磨される。これにより、研磨ムラが生じ、研磨加工後の被研磨物の平坦性が低下する(比較例1参照)。
一方、本発明の保持パッドは、使用時まで保持面が粘着性フィルムで保護されているため、傷がつきにくく、異物の付着を防ぐことができる。従って、吸着性が高く、被研磨物を研磨加工したときの被研磨物の平坦性が低下しにくい。また、保持表面の微小な凹部については、粘着性フィルムを貼ることにより表面に引きだされ、粘着層を剥がした後は凹部が除かれた平坦な保持面となる。一方、保持パッド内に内包された凝集物と見られる保持表面のミクロンオーダーの凸部はフィルムを貼ることにより粘着性フィルムにより押し込まれる。また、ポリウレタンシート成膜後に付着した異物は、粘着性フィルムを剥がす際に一緒に取り除くことが出来る。これにより、研磨加工したときの被研磨物の平坦性が向上し、吸着性が安定する。
一方、本発明の保持パッドは、保持面に適度に開口部が存在しており、適度な剥離性が得られる。また、被研磨物を保持するための保持パッドとして使用すると、被研磨物の研磨加工時の平坦性に優れる。
一方、本発明の保持パッドは、湾曲形状にならないため、被研磨物を保持するための保持パッドとして使用すると、被研磨物の研磨後の平坦性に優れる。また、吸着力が高く、被研磨物と保持パッドとの間へスラリーの浸み込みも発生しないため吸着力を持続させることができる。
各実施例及び比較例並びに表1において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
実施例1では、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが6MPaのポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂30%のDMF溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、カーボンブラックを10%含むDMF分散液の15部、セルロースアセテートブチレート0.1部、界面活性剤(大日本インキ株式会社製、商品名:クリスボンSD−11)の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液を調製し、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を塗布した。この際、塗布装置のクリアランスを1.2mmに設定した。次いで、得られた塗膜を成膜用基材と共に、凝固液である10質量%DMF水溶液からなる18℃の凝固浴に浸漬し、樹脂を凝固再生後、凝固浴から取り出し、成膜用基材をポリウレタンシートから剥離した後、水からなる室温の洗浄液(脱溶剤浴)に浸漬し、溶媒であるDMFを除去して樹脂シートを得た。その後、樹脂シートを乾燥しつつ巻き取り、厚さ1mmのポリウレタンシートを得た。得られたポリウレタンシートの保持面と反対の面側を、約100μmバフィングし、厚みを均一化させた後、バフ処理面に両面テープを貼り合わせた。
次に、粘着力が0.45N/25mmのアクリル酸エステル系粘着剤が片面に付いたポリエチレンフィルムを用意し、ポリエチレンフィルムの粘着剤が付着した面(粘着層)がポリウレタンシートの保持面と接するようにして、ポリエチレンフィルムをポリウレタンシートの保持面側にラミネート機により貼りあわせ、保持パッドに用いるための積層体を製造した。各評価試験の直前に、実施例1の積層体から粘着性フィルムを剥がし、保持パッドとした。
なお、実施例1の積層体において、アクリル系粘着剤が片面に付いたポリエチレンフィルムとポリウレタンシートとの間の剥離強度は、0.060kg/10mmであった。
剥離強度は、日本工業規格(JIS K6772)に準じた方法で、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機、RTF−1210)を使用して測定した。すなわち、ポリウレタンシートおよび粘着性フィルムを(粘着層が保持面と接するようにして)貼り合わせ20mm×150mmに切り出した試験片を作製し、試験片の長手方向の一端のポリウレタンシートおよび粘着性フィルムをそれぞれ引張試験機の把持部につかみ間隔が10mmとなるように引張試験機に取り付けた。毎分200mmの引張速度で引っ張り、長辺方向に長さ50mm分の貼付部分(すなわち、20mm×50mm)を剥離し(T字剥離)、最大荷重を求めた。測定回数を2回とし、平均値を評価した。
粘着力が0.25N/25mmのアクリル酸エステル系粘着剤が片面に付いたポリエチレンフィルムを使用する以外実施例1と同様にして保持パッド積層体を製造した。なお、実施例2の積層体において、アクリル系粘着剤が片面に付いたポリエチレンフィルムとポリウレタンシートとの間の剥離強度は、0.040kg/10mmであった。
孔形成剤の添加量を0.01部とした以外は実施例1と同様にして実施例3の保持パッドを得た。
粘着性フィルムを貼り合わせなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の保持パッドを得た。
特許文献1記載内容に基づき厚さ1.2mmのポリウレタンシートを成膜した。具体的には、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが6MPaのポリエステルMDIポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂30%のDMF溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、カーボンブラックを30%含むDMF分散液の20部、界面活性剤(大日本インキ株式会社製、商品名:クリスボンSD−11)の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液を調製し、成膜用基材のPETフィルム上に塗布した。クリアランスを1.3mmに設定し、得られた塗膜を成膜用基材と共に、凝固液である10質量%DMF水溶液からなる18℃の凝固浴に浸漬し、樹脂を凝固再生後、凝固浴から取り出し、成膜用基材をポリウレタンシートから剥離した後、水からなる室温の洗浄液(脱溶剤浴)に浸漬し、溶媒であるDMFを除去することにより、厚さ1.2mmのポリウレタンシートを成膜した。その後、得られたポリウレタンシートの両表面を平滑なPETフィルム2枚で挟み、間隙が1.0mmで150℃に加熱された2本のヒートロール間を1.0m/minで通過させた。ヒートロール後、PETフィルムをポリウレタンシートの両表面から取り除き、実施例1と同様にポリウレタンシートの片面に両面テープを貼り合わせ、比較例2の保持パッドを得た。
実施例1と同様にしてポリウレタンシートを成膜した。その後、得られたポリウレタンシートのスキン層側の表面と、表面粗さRaが0.39μmのPET基材の表面とを加圧力0.5MPaで密着させ、巻取ドラフト(PET基材を加圧してポリウレタンシートと密着するための1対の加圧ローラの表面速度に対するPET基材が密着したポリウレタンシートを巻き取るためのローラの表面速度の比)1.06で巻き取って巻取体を得た。得られた巻取体を40℃で24時間加熱した。加熱処理後、PET基材をポリウレタンシートから取り除き、保持面と反対面側を実施例1同様にバフ処理し、両面テープを貼り合わせ、比較例3の保持パッドを得た。
実施例1〜3において、粘着層を片面に有する粘着性フィルムを貼り付ける前のポリウレタンシートの保持面の開口部の開口個数(保持面10000μm2あたり)及び平均開口径、及び粘着性フィルムを剥がした後のポリウレタンシート(保持パッド)の保持面の開口部の開口個数及び平均開口径を表1に示す。また、比較例1〜3の保持パッドの開口部の開口個数及び平均開口径も表1に示す。開口個数及び平均開口径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5500LV)で約5mm四方の範囲を1000倍に拡大し9カ所観察した。この画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver.1.3、ニコン製)により二値化処理して開口個数を確認し、各々の開口の面積から円相当径及びその平均値を平均開口径として算出した。
各実施例および比較例の保持パッドを用い、以下に示す研磨条件にてガラス基板の研磨加工を行い、研磨加工後の被研磨物(ガラス基板)の平坦性を評価した。この評価では、日本工業規格(JIS B0601:1982)に準じた方法で、ろ波中心うねりから平坦度aを測定した。平坦度aの測定では、表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製、サーフコム480A)を使用し、以下に示す測定条件に設定した。研磨加工後のガラス基板表面の凹凸に起因して得られる測定曲線から、隣り合う凸部(山部)と凸部との間の幅W、および、凸部と凹部(谷部)との高さSを算出した後、幅Wを横軸、高さSを縦軸とした散布図を作成した。得られた散布図から、一次式S=aWの近似直線を求め、傾きaを研磨加工後の最終の平坦度aとした。一般に、平坦性が高くなるほど幅Wが大きくなり高さSが小さくなるため、傾きaが小さくなる。すなわち、傾きaが小さいほど平坦性に優れることを示すこととなる。被研磨物の研磨後の平坦性を下記の基準に基づいて評価した。なお、研磨条件は以下の通りである。
・被研磨物:ガラス基板(370mm×235mm×0.4mm)
・研磨パッド:硬質発泡ウレタン
・使用研磨機:オスカー研磨機(スピードファム社製、SP−1200)
・研磨速度(回転数):30rpm
・加工圧力:100gf/cm2
・スラリ:セリウムスラリ
・研磨時間:20分
[評価基準]
A:研磨後の被研磨物の平坦度aが0.003以下
B:研磨後の被研磨物の平坦度aが0.003超過〜0.08以下
C:研磨後の被研磨物の平坦度aが0.008超過
実施例1〜3の保持パッドを用いた場合、粘着性フィルムを貼らない従来の比較例1よりもうねりが低減し、被研磨物平坦性が向上した。比較例2、比較例3では比較例1よりも周期うねりが改善されているものの実施例に比べ平坦性の改善が少なかった。
実施例1〜3及び比較例1〜3の保持パッドを約100mm×100mmの正方形に切り出した。また、吸着対象物として直径φ60mm、厚さ約1mmのガラス基板を準備した。固定した定盤上に、切り出した保持パッドを装着した。次いで、保持パッドに備えられる樹脂シートの保持面に適量の水を吹き付け、適度に水切りをした後、ガラス基板を保持パッドにしっかり押し付けて吸着させた。次に、ガラス基板の保持パッド側とは反対側の面に、ガラス基板と同じサイズの両面テープを介して、引張用の治具をしっかり押し付けて貼り付けた。その後、引張用の治具をガラス基板とは反対側に引っ張り、ガラス基板が保持パッドから引き離された際の引張荷重の最大値を読み取った。引張試験機としてTENSILON(ORIENTEC社製)を用いた。被研磨物ホルダに装着した保持パッドを交換することなく、上記操作を40回繰り返して(ただし、2回目以降は、引張用の治具がガラス基板に貼り付けられた状態でガラス基板を保持パッドに吸着させた。)全データを相加平均して吸着力とした。被研磨物の吸着力を下記の基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
[評価基準]
A:引張荷重の最大値の相加平均が20kgf以上
B:引張荷重の最大値の相加平均が17kgf以上20kgf未満
C:引張荷重の最大値の相加平均が17kgf未満
実施例1〜3、比較例2では吸着力が20kgfを越し、良好な吸着力を示した。比較例1、比較例3では吸着力が20kgf未満となり、実施例1〜3に比べて吸着力に劣っていた。
実施例1〜3及び比較例1〜3の保持パッドを用いて被研磨物を研磨し、研磨後の被研磨物端部へのスラリーの浸み込みの有無を確認した。スラリーの浸み込みがある場合は、研磨処理を継続していくうちに、スラリーが被研磨物裏面に入り込み、被研磨物が保持パッドから浮いてしまい、被研磨物の横ずれや移動による損傷につながる。つまり、吸着性の持続力が弱いことを示す指標となる。よって、吸着性持続力を下記の基準に基づいて評価した。なお、研磨条件は評価試験1と同条件で行った。その結果を表1に示す。
[評価基準]
A:スラリーの浸み込みなし
C:スラリーの浸み込みあり
実施例1〜3、比較例2では被研磨物と保持パッドの間にスラリーの浸み込みは見られず、吸着性が良好なものであった。一方、比較例1、比較例3では端部よりスラリーの浸み込みが確認された。
実施例1〜3及び比較例1〜3の保持パッドについて、研磨後の剥離性を以下の方法で評価した。面積42cm2の6角形にカットした保持パッドの保持面と反対側の面を、両面テープの粘着剤層を介して、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機、RTF−1210)の台に貼り付けた。保持パッドの保持面に水をスプレーで吹き付けた後、表面の水をワイパーで軽く除いた。次に、保持面上に厚さ1mm、直径150mmの円形ガラス板を載置した。ガラス板の上面全面に均等に面圧500g/cm2の荷重がかかるように吸着させ、保持面に対して2度斜め上方向の角度に10mm/分の速度で引っ張った。保持パッドからガラス板が徐々に剥がれていくので、剥離の開始から完全に剥離するまでの時間と引きはがしに要した引張荷重を測定した。剥がれるまでの時間や引張荷重が大きすぎると、被研磨物を保持する能力に優れるものの保持パッドの取り外しに時間がかかり、作業効率が低下するという問題や、被研磨物に過剰な負荷がかかるという問題を生ずる。従って、保持パッドには、十分な保持力を備えつつ、取り外す際には必要以上に時間や引張荷重を要しない程度の剥離性が求められる。以上を踏まえ、剥離性については以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
[評価基準]
A:ガラス板が保持パッドから剥がれるまでの時間が6秒以下
かつ、引きはがし荷重が20kgf以下
B:ガラス板が保持パッドから剥がれるまでの時間が6秒超過〜8秒以下
かつ、引きはがし荷重が20kgf超過〜23kgf以下
C:ガラス板が保持パッドから剥がれるまでの時間が8秒超過
あるいは、引きはがし荷重が23kgf超過
剥離性評価の結果、比較例2の保持パッドは、取り外すのに実施例1の保持パッドの2倍程度時間を要することが判った。一方、実施例1〜3及び比較例1、3の保持パッドは、被研磨物から剥離するのに要する時間が短く、剥離性に優れていた。
Claims (11)
- 複数の涙形状気泡を有し且つ被研磨物を保持するための保持面を有するポリウレタンシートを用意する工程;
フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルムを用意する工程;及び
粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するように粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせて積層体を得る工程、
を含む、保持パッドの製造に用いるための積層体の製造方法。 - 加熱することなく粘着性フィルムとポリウレタンシートとを貼り合わせる、請求項1に記載の製造方法。
- 粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度が0.020〜0.150kg/10mmの範囲内である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られた積層体から粘着性フィルムを剥がして保持パッドを得る工程を含む、保持パッドの製造方法。
- 複数の涙形状気泡を有し且つ被研磨物を保持するための保持面を有するポリウレタンシート、及び
フィルムの片面に粘着層を有する粘着性フィルム
を含む、保持パッドの製造に用いるための積層体であって、
前記粘着性フィルムは、ポリウレタンシート上に、粘着性フィルムの粘着層がポリウレタンシートの保持面に接するようにして貼り合わされており、且つ
前記粘着性フィルムを構成するフィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルムから選択される、前記積層体。 - 粘着性フィルムを剥がして保持パッドとして用いるための請求項5に記載の積層体。
- 前記ポリウレタンシートは、その保持面側にスキン層を有する、請求項5又は6に記載の積層体。
- 粘着層を構成する粘着剤が、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素樹脂系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤から選択される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の積層体。
- 粘着性フィルムとポリウレタンシートの剥離強度が、0.020〜0.150kg/10mmの範囲内である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の積層体。
- 請求項5〜9のいずれか1項に記載の積層体から粘着性フィルムを剥がしてなる、保持パッド。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られる積層体或いは請求項5〜9のいずれか1項に記載の積層体を用意する工程;
前記積層体から粘着性フィルムを剥がして保持パッドを得る工程;及び
前記保持パッド用いて被研磨物を保持しながら、前記被研磨物を研磨パッドで研磨する工程、
を含む、被研磨物の研磨方法。
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