本発明を実施するための形態を、図面に基づいて、具体的に説明する。
図1は本発明に係る横型ベローズポンプの一例を示す縦断側面図であり、図2は図1と異なる状態を示す図1相当の縦断側面図であり、図3は図1及び図2と異なる状態を示す図1相当の縦断側面図であり、図4は図3の要部を拡大して示す縦断側面図であり、図5は図4のV−V線に沿う要部の縦断背面図である。なお、以下の説明において、上下,左右とは、図1〜図4における上下,左右をいうものとする。
図1〜図3に示す横型ベローズポンプは、厳格な性状管理を必要とする液体(前記した薬液やスラリ液等)Aを連続的に送液するために使用される複動型のもの(以下「第1複動型ベローズポンプ」という)であって、吐出通路1及び吸込通路2を形成したポンプヘッド3と、ポンプヘッド3の両側に設けられた左右一対のシリンダケース4,4と、各シリンダケース4内に配して、ポンプヘッド3に軸線方向(水平方向)に伸縮自在に取り付けられた左右一対の円筒状のベローズ5,5と、各ベローズ5によって囲繞形成された左右一対のポンプ室6,6と、各ポンプ室6に突出する状態で当該ポンプ室6の上部に配してポンプヘッド3に取り付けられた左右一対の吐出側逆止弁7,7と、各ポンプ室6に突出する状態で当該ポンプ室6の下部に配してポンプヘッド3に取り付けられた左右一対の吸込側逆止弁8,8とを具備して、両ベローズ5,5を交互に伸縮動作させることにより、液体Aを一方のポンプ室6から吐出側逆止弁7を介して吐出通路1へと送液させる吐出工程と吸込通路2から吸込側逆止弁8を介して他方のポンプ室6へと給液させる吸込工程とを同時に行うように構成されたものである。なお、第1複動型ベローズポンプを構成する両シリンダケース4,4、両ベローズ5,5、両ポンプ室6、6、両吐出側逆止弁7,7及び両吸込側逆止弁8,8は、夫々、左右対称構造となっている点を除いて同一構造をなすものである。
ポンプヘッド3は、送液ラインに接続された吐出通路1及び給液ラインに接続された吸込通路2を形成した円板形状をなすもので、図1〜図4に示す如く、その左右両面には吐出通路1の上流端及び吸込通路2の下流端が夫々分岐して開口されている。
各シリンダケース4は、図1〜図4に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた有底円筒形状のものであり、両シリンダケース4,4とポンプヘッド3とで内部をポンプヘッド3で左右に2分割したポンプ本体を構成している。
各ベローズ5は、図1〜図3に示す如く、周壁51を断面波型の蛇腹構造となす有底円筒体であり、軸線方向(左右水平方向)に伸縮することによりポンプ室6の容積を拡縮させるものである。各ベローズ5は、その開口端部52をポンプヘッド3に密着固定したものであって、当該ベローズ5内をポンプヘッド3で閉塞されたポンプ室6に構成する。両ベローズ5,5は、その底壁53,53に固定した円盤状の可動板9,9を連結杆10で連結することによって、同期して逆方向に伸縮動作されるようになっている。すなわち、連結杆10は、図1に例示する如く、一方のベローズ5が最縮小状態にあるときは他方のベローズ5が最伸長状態となるように、両ベローズ5,5を連動連結するものであり、一方のベローズ5が縮小動作するときは、これに連動して他方のベローズ5が伸長動作されるようになっている。
なお、ベローズ5を伸縮動作させる動作手段は、一般にピストン・シリンダ機構、クランク機構やエアシリンダ機構等で構成されるが、この例ではエアシリンダ機構で構成してある。すなわち、動作手段は、シリンダケース4の端部壁に形成した給排気口41からベローズ5及び可動板9とシリンダケース4との間に形成される空間に加圧空気42を給排させることにより、ベローズ5を軸線方向に伸縮動作させるように構成されている。両給排気口41,41からの給排気は交互に同期して行われ、一方の給排気口41から給気させると同時に他方の給排気口41から排気させることにより、両ベローズ5,5の伸縮動作つまり両ポンプ室6,6の拡縮動作を逆方向に同期して行うようになっている。すなわち、一方のポンプ室6における吸込工程(又は吐出工程)と他方のポンプ室6における吐出工程(又は吸込工程)とが同期して行われ、両ポンプ室6,6における吐出工程(液体Aがポンプ室6から吐出側逆止弁7を介して吐出通路1へ送液される工程)と吸込工程(液体Aが吸込通路2から吸込側逆止弁8を介してポンプ室6へ給液される工程)との切換が同時に行われるようになっている。なお、図1は左側のポンプ室6における吸込工程及び右側のポンプ室6における吐出工程の終了状態を示しており、図2は左側のポンプ室6における吐出工程及び右側のポンプ室6における吸込工程の開始状態を示しており、図3は左側のポンプ室6における吐出工程及び右側のポンプ室6における吸込工程の進行途中の状態を示している。
各吐出側逆止弁7は、図4に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた弁ケース71と、弁ケース71に形成された弁入口通路72と、弁ケース71に内装された弁体73及びスプリング74とを具備してなる。
各弁ケース71は、図4及び図5に示す如く、ポンプ室6にその軸線と平行をなして突出させた状態で基端部をポンプヘッド3に取り付けた有底円筒体であり、基端開口部は吐出通路1の上流端に連通接続されている。両弁ケース71,71は、軸線が一致する水平状態でポンプ室6,6の上部に配置されている。この例では、各弁ケース71は、その軸線がポンプ室6の軸線を通過する鉛直線(直径線)上に位置し且つその外周面がベローズ5の上側内周面に近接した状態で、ポンプヘッド3に取り付けられている。
各弁入口通路72は、図1〜図4に示す如く、弁ケース71の先端部に形成された貫通孔であって、一端が弁ケース71内に開口する弁座口75に構成されると共に他端がポンプ室6に開口されている。この例では、弁入口通路72が、図4に示す如く、弁ケース71の先端部の中心を軸線方向に貫通する貫通孔で構成されている。
各弁体73は、図1〜図4に示す如く、弁座口75に衝合してこれを閉塞する閉弁位置(図1に示す左側の吐出側逆止弁7における弁体73の位置又は図2〜図4に示す右側の吐出側逆止弁7における弁体73の位置)と弁座口75から離間してこれを開放する開弁位置(図2〜図4に示す左側の吐出側逆止弁7における弁体73の位置又は図1に示す右側の吐出側逆止弁7における弁体73の位置)とに亘って軸線方向に進退自在に弁ケース71に内装されている。各スプリング74は、図1〜図4に示す如く、弁体73を閉弁位置へと押圧附勢するコイルスプリングである。而して、各弁体73は、ベローズ5が伸長動作する(ポンプ室6の容積が拡大変化する)吸込工程においてはスプリング74の附勢力により閉弁位置に保持され、ベローズ5が縮小動作する(ポンプ室6の容積が縮小変化する)吐出工程においてはポンプ室6の圧力上昇によりスプリング74の附勢力に抗して開弁位置に変位される。
各吸込側逆止弁8は、図4に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた弁ケース81と、弁ケース81に形成された弁出口通路82と、弁ケース81に内装された弁体83及びスプリング84とを具備してなる。
各弁ケース81は、図4及び図5に示す如く、ポンプ室6にその軸線と平行をなして突出させた状態で基端部をポンプヘッド3に取り付けた有底円筒体であり、基端開口部は吸込通路2の上流端に弁座口85を介して連通接続されている。この例では、弁座口85は、図4に示す如く、ポンプヘッド3の端面における吸込通路2の開口部(上流端)で構成されている。両弁ケース81,81は、軸線が一致する水平状態でポンプ室6の下部であって吐出側逆止弁7の弁ケース71の直下位置に配置されている。この例では、各弁ケース81は、その軸線がポンプ室6の軸線を通過する鉛直線(直径線)上に位置し且つその外周面がベローズ5の下側部分に近接した状態で、ポンプヘッド3に取り付けられている。
各弁出口通路82は、図1〜図4に示す如く、弁ケース81の先端部に形成された貫通孔であって、一端が弁ケース81内に開口すると共に他端がポンプ室6に開口されている。
各弁体83は、図1〜図4に示す如く、弁座口85に衝合してこれを閉塞する閉弁位置(図2〜図4に示す左側の吸込側逆止弁8における弁体83の位置又は図1に示す右側の吸込側逆止弁8における弁体83の位置)と弁座口85から離間してこれを開放する開弁位置(図1に示す左側の吸込側逆止弁8における弁体83の位置又は図2〜図4に示す右側の吸込側逆止弁8における弁体83の位置)とに亘って軸線方向に進退自在に弁ケース81に内装されている。各スプリング84は、図1〜図4に示す如く、弁体83を閉弁位置へと押圧附勢するコイルスプリングである。而して、各弁体83は、ベローズ5が縮小動作する(ポンプ室6の容積が縮小変化する)吐出工程においては背圧(ポンプ室6の圧力)及びスプリング84の附勢力により閉弁位置に保持され、ベローズ5が伸長動作する(ポンプ室6の容積が拡大変化する)吸込工程においてはポンプ室6の圧力降下によりスプリング84の附勢力に抗して開弁位置に変位される。
なお、ポンプヘッド及びベローズ5等のポンプ構成部材のうち液体Aと接触するものについては、液体Aの性状等に応じて適宜の材質が選定されるが、この例では、耐食性及び耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッソ樹脂系プラスチックで構成してある。
以上のように構成された横型ベローズポンプにあっては、冒頭で述べた従来ポンプと同様に、一方のポンプ室6における吐出工程と他方のポンプ室6における吸込工程とが同時に行われ、これらの工程が両ポンプ室6,6において交互に連続して行われることにより、液体Aを吸込通路2から吐出通路1へと連続的に送液させることができるものであるが、本発明に従って、更に次のように構成しておくことによって、各吸込側逆止弁8の弁ケース81とベローズ5の下側部分との上下対向周面間領域である下側ポンプ室部分62における液体滞留を可及的に防止するように工夫してある。なお、以下の説明においては、便宜上、吐出工程にあるポンプ室6及びこれに内装された逆止弁7,8等と吸込工程にあるポンプ室6及びこれに内装された逆止弁7,8等とを区別する必要がある場合には、前者に「第1」の頭語を付し、後者に「第2」の頭語を付することとする。
各吸込側逆止弁8の弁ケース81の先端部に形成された弁出口通路82を、図1〜図4に示す如く、一端が弁ケース81内に開口すると共に他端が弁ケース81の一箇所において又は弁ケース81の周方向における複数箇所及び/又は弁ケース81の軸線方向における複数箇所において下側ポンプ室部分62に開口する特殊形状に構成してある。
すなわち、弁出口通路82は、図4に示す如く、弁ケース81の先端部の中心に位置して当該弁ケース81内に開口する断面円形の凹部86とこの凹部86に連通して下側ポンプ室部分62に開口する一個又は複数個の吹出孔87とからなる。この例では、図4及び図6に示す如く、3個の吹出孔87を凹部86の軸線に直交する断面上に配して当該凹部86の軸線を中心とする放射状をなして形成してある。各吹出孔87は断面円形の真直孔であり、図6に示す如く、中央の吹出孔87は弁ケース81の中心を通過する直径線上を上下方向に延びるものであり、その両側対称位置に他の2個の吹出孔87,87が位置している。また、各吹出孔87は、その凹部86への開口の周縁が、その少なくとも一箇所において、凹部86の底面(この例では弁ケース81の軸線に直交する円形面とされている)の周縁上に位置するように、凹部86に連通している。すなわち、各吹出孔87は、その軸線を通過する平面(当該軸線を含む平面)であって凹部86の軸線(弁ケース81の軸線)に平行する平面で断面した形状(例えば、上記中央の吹出孔87については図4に示す断面形状)において、当該吹出孔87の上記周縁と凹部86の底面の周縁とが齟齬することなく(段差なく)直接に連結された形態をなすように、凹部86に連通されている。なお、凹部86の断面径及び各吹出孔87の断面径は、これらによって構成される弁出口通路82からの流出量が弁入口通路72からの流入量と一致するように設定されている。
而して、吸込工程にある第2ポンプ室6においては、液体Aが吸込通路2から第2弁ケース81及び第2弁出口通路82を経て第2ポンプ室6に流出するが、このとき液体Aは各吹出孔87から第2下側ポンプ室部分62に向けて噴出される。すなわち、第2弁出口通路82から第2ポンプ室6への給液が第2下側ポンプ室部分62から開始されることになり、第2下側ポンプ室部分62の液体Aは第2ベローズ内面の谷部54内の液体Aを含めて当該下側ポンプ室部分62から下側ポンプ室部分62外の領域へと強制流動されることになる。したがって、吸込工程においては、液体Aがスラリ液や高粘度液である場合にも第2下側ポンプ室部分62における液体Aの滞留はこれが可及的に防止される。
このように吸込工程において下側ポンプ室部分62における液体Aの滞留が可及的に防止されることから、各ポンプ室6においては吐出工程から吸込工程に或いは吸込工程から吐出工程に切り替わることによる液置換が良好に行われることになり、その結果、下側ポンプ室部分62に滞留する液体Aが吐出通路1から吐出される液体Aに断続的且つ不規則に混入するようなことが極めて少なくなり、液体Aをその性状を一定に保持しつつ安定した状態で送液させることができる。第1複動型ベローズポンプは、このように液置換性に優れたものであるから、厳格な性状管理を必要とする液体を扱う送液ポンプとしても好適に実用することができる。
ところで、本発明に係る複動型の横型ベローズポンプの構成は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。
例えば、上記した第1複動型ベローズポンプにあっては、弁出口通路82が弁ケース81の複数箇所(三箇所)において下側ポンプ室部分62に開口するように、弁ケース81に複数個の吹出孔87を形成したが、この吹出孔87は、例えば、図6及び図7に示す如く、弁ケース81の一箇所に形成するようにしてもよい。ところで、このように吹出孔87が一個である場合、弁ケース81の形状によっては吹出孔87を一定以上の大きな円形断面とすること(つまり弁出口通路82からの流量を十分に確保するために吹出孔87の径を大きくすること)が軸線方向のスペースから困難な場合がある。かかる場合には、吹出孔87の断面形状を、図8に示す如く、弁ケース81の周方向に長尺な長円形ないし楕円形としておけばよい。このような工夫は、吹出孔87を複数個設ける場合において断面円形の吹出孔87では流量が不足するときにも採用される。複数個の吹出孔87を設ける場合にあって、それらの個数及び配置等は液体Aの性状等のポンプ条件に応じて適宜に設定することができ、複数個の吹出孔87を弁ケース81の周方向における複数箇所及び/又は弁ケース81の軸線方向における複数箇所において下側ポンプ室部分62に開口するものとしておくことができる。
また、一個又は複数個の吹出孔87は、弁ケース81の軸線に直交する方向に当該弁ケース81を貫通するものに限定されず、当該軸線に対して傾斜するものでもよい。例えば、吹出孔87を、図9に示す如く、ベローズ5の縮小方向に向けて(又は逆の伸張方向に向けて)傾斜する状態で下側ポンプ室部分62に開口するものとしてもよく、更には、図10に示す如く、両方向に向けて傾斜する状態で下側ポンプ室部分62に開口する一対の吹出孔87を1組又は複数組設けるようにすることも可能である。
ところで、液体Aの性状によっては或いは上下弁ケース71,81の形状や位置関係によっては、両逆止弁7,8の弁ケース71,81の上下対向周面間領域である中間ポンプ室部分63においても液体滞留が生じる可能性があるが、このような液体滞留は、次のように構成することで効果的に防止することができる。
すなわち、各吸込側逆止弁8の弁ケース81に、図11に示す如く、一端が弁出口通路82(凹部86)内に開口すると共に他端が中間ポンプ室部分63に開口する上側吹出孔88を形成しておく。このように構成しておけば、吸引工程において、第2上側吹出孔88から中間ポンプ室部分63に向けて液体Aが噴出されて、第2中間ポンプ室部分63の液体Aが当該ポンプ室部分63外の領域へと強制流動されることになり、中間ポンプ室部分63における液体滞留が可及的に防止される。なお、上側吹出孔88の形成数は適宜に設定することができ、複数個の上側吹出孔88を設ける場合には、弁ケース81の周方向及び/又は軸線方向における複数個所において中間ポンプ室部分63に開口させておくことができる。また、両逆止弁7,8(弁ケース71,81)の長さ(軸線方向におけるポンプヘッド3からの突出長さ)は、液体滞留防止を行う上で、吸込側逆止弁8を吐出側逆止弁7より長くしておくことが好ましい(例えば、図4を参照)。
なお、図6〜図11に示す各複動型ベローズポンプは、図1〜図5に示す第1複動型ベローズポンプについて上述した作用効果を当然に奏しうるものであり、上記した点を除いて第1複動型ベローズポンプと同一構成をなすものである。図6〜図11に示す各複動型ベローズポンプにおいて第1複動型ベローズポンプと同一構成をなす部分については、図6〜図11に図1〜図5と同一の符号を付することによって、その詳細な説明は省略することとする。また、図6〜図11に示す各複動型ベローズポンプにおける吹出孔87及び上側吹出孔88は、第1複動型ベローズポンプにおける吹出孔87と同様に、前述した如く、凹部86への開口の周縁が、その少なくとも一箇所において、凹部86の底面の周縁上に位置するように、凹部86に連通させておくことが好ましい。また、両逆止弁7,8(弁ケース71,81)の長さ(軸線方向におけるポンプヘッド3からの突出長さ)は、液体滞留防止を行う上で、吸込側逆止弁8を吐出側逆止弁7をより長くしておくことが好ましい(例えば、図4を参照)。
また、本発明は、図1〜図11に示す複動型の横型ベローズポンプの他、図12〜図15に示す如き単動型の横型ベローズポンプにも好適に適用することができる。
すなわち、図12は本発明に係る単動型の横型ベローズポンプの一例を示す縦断側面図であり、図13は図12と異なる状態を示す図12相当の縦断側面図であり、図14は図13の要部を拡大して示す縦断側面図であり、図15は図14のXV−XV線に沿う要部の縦断背面図である。なお、以下の説明において、上下,左右とは、図12〜図14における上下,左右をいうものとする。
図12及び図13に示す横型ベローズポンプは、厳格な性状管理を必要とする液体(前記した薬液やスラリ液等)Aを送液するために使用される単動型のもの(以下「第1単動型ベローズポンプ」という)であって、吐出通路1及び吸込通路2を形成したポンプヘッド3と、ポンプヘッド3の片側(図19及び図20における右側)に設けられたシリンダケース4と、シリンダケース4内に配して、ポンプヘッド3に軸線方向(水平方向)に伸縮自在に取り付けられた円筒状のベローズ5と、ベローズ5によって囲繞形成されたポンプ室6と、ポンプ室6に突出する状態でポンプ室6の上部に配してポンプヘッド3に取り付けられた吐出側逆止弁7と、各ポンプ室6に突出する状態でポンプ室6の下部に配してポンプヘッド3に取り付けられた吸込側逆止弁8とを具備して、ベローズ5を伸縮動作させることにより、液体Aをポンプ室6から吐出側逆止弁7を介して吐出通路1へと送液させる吐出工程(図19及び図21参照)と吸込通路2から吸込側逆止弁8を介して他方のポンプ室6へと給液させる吸込工程(図20及び図22参照)とを交互に行うように構成されたものである。
ポンプヘッド3は、送液ラインに接続された吐出通路1及び給液ラインに接続された吸込通路2を形成した円板形状をなすもので、図12〜図14に示す如く、その右側面には吐出通路1の上流端及び吸込通路2の下流端が開口されている。
各シリンダケース4は、図12〜図14に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた有底円筒形状のものであり、ポンプヘッド3と共にポンプ本体を構成している。
ベローズ5は、図12及び図13に示す如く、周壁51を断面波型の蛇腹構造となす有底円筒体であり、軸線方向(左右水平方向)に伸縮することによりポンプ室6の容積を拡縮させるものである。ベローズ5は、その開口端部52をポンプヘッド3に密着固定したものであって、ベローズ5内をポンプヘッド3で閉塞されたポンプ室6に構成する。ベローズ5は、その底壁53に固定した円盤状の可動板9を適宜の動作手段によりベローズ5の軸線方向に進退させることにより、伸縮動作されるようになっている。この動作手段は、一般にピストン・シリンダ機構、クランク機構やエアシリンダ機構等で構成されるが、この例では、図12及び図13に示す如く、先端部を可動板9に連結した作動軸11を、図示しない周知の駆動手段によりベローズ5の軸線方向(水平方向)に進退させるように構成されている。すなわち、作動軸11の進退によりベローズ5が軸線方向に伸縮動作され、ベローズ5の縮小動作によって吐出工程が行われ、ベローズ5の伸長動作によって吸込工程が行われる。なお、図12は吐出工程の終了状態(つまり吸込工程への切り替え直前の状態)を示しており、図13及び図14は吸込工程の終了状態(つまり吐出工程への切り替え直前の状態)を示している。
吐出側逆止弁7は、図12〜図14に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた弁ケース71と、弁ケース71に形成された弁入口通路72と、弁ケース71に内装された弁体73及びスプリング74とを具備してなる。
弁ケース71は、図12〜図14に示す如く、ポンプ室6にその軸線と平行をなして突出させた状態で基端部をポンプヘッド3に取り付けた有底円筒体であり、基端開口部は吐出通路1の上流端に連通接続されている。弁ケース71は、その軸線を水平とした状態でポンプ室6の上部に配置されているが、この例では、弁ケース71は、その軸線がポンプ室6の軸線を通過する鉛直線(直径線)上に位置し且つその外周面がベローズ5の上側内周面に近接した状態で、ポンプヘッド3に取り付けられている。
弁入口通路72は、図12〜図14に示す如く、弁ケース71の先端部に形成された貫通孔であって、一端が弁ケース71内に開口する弁座口75に構成されると共に他端がポンプ室6に開口されている。この例では、弁入口通路72が、図12〜図14に示す如く、弁ケース71の先端部の中心を軸線方向に貫通する貫通孔で構成されている。
弁体73は、図12〜図14に示す如く、弁座口75に衝合してこれを閉塞する閉弁位置(図13及び図14に示す位置)と弁座口75から離間してこれを開放する開弁位置(図12に示す位置)とに亘って軸線方向に進退自在に弁ケース71に内装されている。各スプリング74は、図13及び図14に示す如く、弁体73を閉弁位置へと押圧附勢するコイルスプリングである。而して、弁体73は、ベローズ5が伸長動作する(ポンプ室6の容積が拡大変化する)吸込工程においてはスプリング74の附勢力により閉弁位置に保持され、ベローズ5が縮小動作する(ポンプ室6の容積が縮小変化する)吐出工程においてはポンプ室6の圧力上昇によりスプリング74の附勢力に抗して開弁位置に変位される。
吸込側逆止弁8は、図12〜図14に示す如く、ポンプヘッド3に取り付けられた弁ケース81と、弁ケース81に形成された弁出口通路82と、弁ケース81に内装された弁体83及びスプリング84とを具備してなり、この例では吐出側逆止弁7の直下位置に配置されている。
弁ケース81は、図12〜図14に示す如く、ポンプ室6にその軸線と平行をなして突出させた状態で基端部をポンプヘッド3に取り付けた有底円筒体であり、基端開口部は吸込通路2の上流端に弁座口85を介して連通接続されている。この例では、弁座口85は、図12〜図14に示す如く、ポンプヘッド3の端面(右側端面)における吸込通路2の開口部(下流端)で構成されている。弁ケース81は、吐出側逆止弁7の弁ケース71に軸線が平行する水平状態でポンプ室6の下部であって当該弁ケース71の直下位置に配置されている。この例では、弁ケース81は、その軸線がポンプ室6の軸線を通過する鉛直線(直径線)上に位置し且つその外周面がベローズ5の下側部分に近接した状態で、ポンプヘッド3に取り付けられている。
弁出口通路82は、図12〜図14に示す如く、弁ケース81の先端部に形成された貫通孔であって、一端が弁ケース81内に開口すると共に他端がポンプ室6に開口されている。
弁体83は、図12〜図14に示す如く、弁座口85に衝合してこれを閉塞する閉弁位置(図12に示す位置)と弁座口85から離間してこれを開放する開弁位置(図13及び図14に示す位置)とに亘って軸線方向に進退自在に弁ケース81に内装されている。各スプリング84は、図12に示す如く、弁体83を閉弁位置へと押圧附勢するコイルスプリングである。而して、弁体83は、ベローズ5が縮小動作する(ポンプ室6の容積が縮小変化する)吐出工程においては背圧(ポンプ室6の圧力)及びスプリング84の附勢力により閉弁位置に保持され、ベローズ5が伸長動作する(ポンプ室6の容積が拡大変化する)吸込工程においてはポンプ室6の圧力降下によりスプリング84の附勢力に抗して開弁位置に変位される。
なお、ポンプヘッド及びベローズ5等のポンプ構成部材のうち液体Aと接触するものについては、液体Aの性状等に応じて適宜の材質が選定されるが、この例では、耐食性及び耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッソ樹脂系プラスチックで構成してある。
以上のように構成された第1単動型ベローズポンプにあっては、周知の単動型ベローズポンプと同様に、ポンプ室6における吐出工程と吸込工程とが交互に行われることにより、液体Aを吸込通路2から吐出通路1へと送液させることができるものであるが、本発明に従って、更に次のように構成しておくことによって、吸込側逆止弁8の弁ケース81とベローズ5の下側部分(周壁51の下側部分)との上下対向周面間領域である下側ポンプ室部分62における液体滞留を可及的に防止するように工夫してある。
吸込側逆止弁8の弁ケース81の先端部に形成された弁出口通路82を、図12〜図14に示す如く、一端が弁ケース81内に開口すると共に他端が弁ケース81の一箇所において又は弁ケース81の周方向における複数箇所及び/又は弁ケース81の軸線方向における複数箇所において下側ポンプ室部分62に開口する特殊形状に構成してある。
すなわち、弁出口通路82は、図14に示す如く、弁ケース81の先端部の中心に位置して弁ケース81内に開口する断面円形の凹部86とこの凹部86に連通して下側ポンプ室部分62に開口する一個又は複数個の吹出孔87とからなる。この例では、図14及び図15に示す如く、3個の吹出孔87を凹部86の軸線に直交する断面上に配して当該凹部86の軸線を中心とする放射状をなして形成してある。各吹出孔87は断面円形の真直孔であり、図15に示す如く、中央の吹出孔87は弁ケース81の中心を通過する直径線上を上下方向に延びるものであり、その両側対称位置に他の2個の吹出孔87,87が位置している。また、各吹出孔87は、その凹部86への開口の周縁が、その少なくとも一箇所において、凹部86の底面(この例では弁ケース81の軸線に直交する円形面とされている)の周縁上に位置するように、凹部86に連通している。すなわち、各吹出孔87は、その軸線を通過する平面(当該軸線を含む平面)であって凹部86の軸線(弁ケース81の軸線)に平行する平面で断面した形状(例えば、上記中央の吹出孔87については図14に示す断面形状)において、当該吹出孔87の上記周縁と凹部86の底面の周縁とが齟齬することなく(段差なく)直接に連結された形態をなすように、凹部86に連通されている。なお、凹部86の断面径及び各吹出孔87の断面径は、これらによって構成される弁出口通路82からの流出量が弁入口通路72からの流入量と一致するように設定されている。
而して、吸込工程においては、液体Aが吸込通路2から弁ケース81及び第弁出口通路82を経てポンプ室6に流出するが、このとき液体Aは各吹出孔87から第2下側ポンプ室部分62に向けて噴出される。すなわち、弁出口通路82からポンプ室6への給液が下側ポンプ室部分62から開始されることになり、下側ポンプ室部分62の液体Aはベローズ内面の谷部54内の液体Aを含めて下側ポンプ室部分62から下側ポンプ室部分62外の領域へと強制流動されることになる。したがって、吸込工程においては、液体Aがスラリ液や高粘度液である場合にも下側ポンプ室部分62における液体Aの滞留はこれが可及的に防止される。
このように吸込工程において下側ポンプ室部分62における液体Aの滞留が可及的に防止されることから、各ポンプ室6においては吐出工程から吸込工程に或いは吸込工程から吐出工程に切り替わることによる液置換が良好に行われることになり、その結果、下側ポンプ室部分62に滞留する液体Aが吐出通路1から吐出される液体Aに断続的且つ不規則に混入するようなことが極めて少なくなり、液体Aをその性状を一定に保持しつつ安定した状態で送液させることができる。第1単動型ベローズポンプは、このように液置換性に優れたものであるから、厳格な性状管理を必要とする液体を扱う送液ポンプとしても好適に実用することができる。
ところで、本発明に係る単動型の横型ベローズポンプの構成は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。
例えば、上記した第1単動型ベローズポンプにあっては、弁出口通路82が弁ケース81の複数箇所(三箇所)において下側ポンプ室部分62に開口するように、弁ケース81に複数個の吹出孔87を形成したが、この吹出孔87は、例えば、図16及び図17に示す如く、弁ケース81の一箇所に形成するようにしてもよい。ところで、このように吹出孔87が一個である場合、弁ケース81の形状によっては吹出孔87を一定以上の大きな円形断面とすること(つまり弁出口通路82からの流量を十分に確保するために吹出孔87の径を大きくすること)が軸線方向のスペースから困難な場合がある。かかる場合には、吹出孔87の断面形状を、図18に示す如く、弁ケース81の周方向に長尺な長円形ないし楕円形としておけばよい。このような工夫は、吹出孔87を複数個設ける場合において断面円形の吹出孔87では流量が不足するときにも採用される。複数個の吹出孔87を設ける場合にあって、それらの個数及び配置等は液体Aの性状等のポンプ条件に応じて適宜に設定することができ、複数個の吹出孔87を弁ケース81の周方向における複数箇所及び/又は弁ケース81の軸線方向における複数箇所において下側ポンプ室部分62に開口するものとしておくことができる。
また、一個又は複数個の吹出孔87は、弁ケース81の軸線に直交する方向に当該弁ケース81を貫通するものに限定されず、当該軸線に対して傾斜するものでもよい。例えば、吹出孔87を、図19に示す如く、ベローズ5の縮小方向に向けて(又は逆の伸張方向に向けて)傾斜する状態で下側ポンプ室部分62に開口するものとしてもよく、更には、図20に示す如く、両方向に向けて傾斜する状態で下側ポンプ室部分62に開口する一対の吹出孔87を1組又は複数組設けるようにすることも可能である。
ところで、液体Aの性状によっては或いは上下弁ケース71,81の形状や位置関係によっては、両逆止弁7,8の弁ケース71,81の上下対向周面間領域である中間ポンプ室部分63においても液体滞留が生じる可能性があるが、このような液体滞留は、次のように構成することで効果的に防止することができる。
すなわち、各吸込側逆止弁8の弁ケース81に、図21に示す如く、一端が弁出口通路82(凹部86)内に開口すると共に他端が中間ポンプ室部分63に開口する上側吹出孔88を形成しておく。このように構成しておけば、吸引工程において、第2上側吹出孔88から中間ポンプ室部分63に向けて液体Aが噴出されて、第2中間ポンプ室部分63の液体Aが当該ポンプ室部分63外の領域へと強制流動されることになり、中間ポンプ室部分63における液体滞留が可及的に防止される。なお、上側吹出孔88の形成数は適宜に設定することができ、複数個の上側吹出孔88を設ける場合には、弁ケース81の周方向及び/又は軸線方向における複数個所において中間ポンプ室部分63に開口させておくことができる。
なお、図16〜図21に示す各単動型ベローズポンプは、図12〜図15に示す第1単動型ベローズポンプについて上述した作用効果を当然に奏しうるものであり、上記した点を除いて第1単動型ベローズポンプと同一構成をなすものである。図16〜図21に示す各単動型ベローズポンプにおいて第1単動型ベローズポンプと同一構成をなす部分については、図16〜図21に図12〜図15と同一の符号を付することによって、その詳細な説明は省略することとする。また、図16〜図21に示す各単動型ベローズポンプにおける吹出孔87及び上側吹出孔88は、第1単動型ベローズポンプにおける吹出孔87と同様に、前述した如く、凹部86への開口の周縁が、その少なくとも一箇所において、凹部86の底面の周縁上に位置するように、凹部86に連通させておくことが好ましい。また、両逆止弁7,8(弁ケース71,81)の長さ(軸線方向におけるポンプヘッド3からの突出長さ)は、液体滞留防止を行う上で、吸込側逆止弁8を吐出側逆止弁7より長くしておくことが好ましい(例えば、図14を参照)。