JP5898703B2 - 疎水性材料の表面処理剤、及び表面処理方法 - Google Patents

疎水性材料の表面処理剤、及び表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、疎水性の高い含ケイ素ポリマーの表面を親水化し、潤滑性を付与できるポリマー型表面処理剤および当該表面処理剤を用いた表面処理方法に関する。
ポリジメチルシロキサン(シリコーン(登録商標)ゴム)に代表される含ケイ素ポリマーは、撥水性、耐薬品性、熱安定性、柔軟性、気体透過性、光学特性などの優れた性質を有していることから、産業界のみならず医療においても広く利用されている。しかしながら、その化学構造に起因する疎水性により医療応用する際に、組織に対する刺激が大きい、生体成分が表面に吸着するなどの問題を抱えている。従って、疎水性ポリマー材料を生体環境で使用する際には、材料と生体とのなじみを考慮しなければならないため、水を主体とする環境においても直ちになじむような、表面の親水処理が求められている。
従来、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンエッチング等の手法で、疎水性ポリマー材料の表面に親水性の官能基を発生させる方法が採られてきた(非特許文献1〜7参照)。しかしながら、これらの手法では、例えば、ポリマー鎖の運動性(官能基の向きなおり)が高いポリジメチルシロキサン等のようなポリマー材料の表面を長期間安定して親水化させることはできないという問題があった(非特許文献8〜10参照)。すなわち、ポリジメチルシロキサン等においては、一旦発生させた親水性官能基が、時間経過と共に再度ポリマー材料内部に進入するため、長期にわたり安定した表面親水性が得られないという問題があった。さらに、カテーテルや内視鏡などの細いチューブ状の部材の場合には、内部表面にプラズマ処理を行うことは困難である。
また、疎水性ポリマー材料の表面親水化の手法としては、親水性ポリマーによる化学修飾も行われているが(非特許文献11参照)、この手法は操作が煩雑な上、通常、表面処理の過程でクロロホルム等の非極性有機溶媒が使用されるため、生体への悪影響等が懸念される。さらに、疎水性ポリマー材料を用いて義歯等のオーダーメイドのデバイスを作製した場合、このようなデバイスは、表面処理によって変形してはならないため、表面親水化の際、プラズマ処理等の厳しい処理条件の手法は適しておらず、穏やかで且つ簡便な処理条件による手法が必要であると考えられている。
これらを背景に、簡便に表面を親水化し、また表面での生体成分の吸着や潤滑性を高める表面処理が強く求められている。
J.G. Alauzum, S. Young, R. D’Souza, L. Liu, M.A. Book and H.D. Sheardown, Biomaterials 31 (2010) 3471 A. Wu, B. Zhao, Z. Dai, J. Qin and B. Lin, Lab Chip 6 (2006) 942 Y. Yuan, X. Zang, F. Ai, J. Zhou, J. Shen and S. Lin, Polym. Int. 53 (2004) 121 S. Pintro, P. Alves, C.M. Matos, A.C. Santos, L.R. Rodrigues, J.A. Teixeira and M.H. Gil, Colloids Surf. B: Biointerfaces 81 (2010) 20 H. Makamba, Y.Y. Hsieh, W.C. Sung, and S.H. Chen, Anal. Chem. 77 (2005) 3971 M. Farrell and S. Beaudoin, Colloids Surf. B: Biointerfaces 81 (2010) 468. H. Chen, Z. Zhang, Y. Chen, M.A. Brook and H.D. Sheardown, Biomaterials 26 (2005) 2391 M. Ouyang, C. Yuan, R.J. Muisener, A. Boulares, and J.T. Koberstein, Chem. Mater. 12 (2000) 1591 D. Bodas and C.K. Malek, Microelectr. Eng. 83 (2006) 1277 M. Morra, E. Occhiello. R. Marola, F. Garbassi, P. Humphrey and D. Johnson, J. Colloid Interface Sci. 137 (1990) 11 Y. Iwasaki, M. Takamiya, R. Iwata, S. Yusa and K. Akiyoshi, Colloids Surf. B: Biointerfaces 57 (2007) 226
そこで、本発明が解決しようとする課題は、効率的且つ簡便であり、耐久性に優れた、含ケイ素ポリマーの表面の濡れ性の向上と、これに基づく摩擦特性、耐生物汚染性などを、該含ケイ素ポリマーが有する構造や物性を変化させることなく改善できるポリマー型の親水化処理剤(表面処理剤)及び親水化処理方法(表面処理方法)を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、水を中心とした媒体から表面に吸着固定し、安定化させることのできるポリマー型表面処理剤と表面処理方法を見出した。すなわち、含ケイ素ポリマー表面とポリマー型表面処理剤との間で、水媒体中で作用する分子間力である疎水性相互作用及び静電相互作用の両方を効果的に利用し、簡便かつ安定に表面に吸着処理することができるポリマー型表面処理剤、及び、当該表面処理剤が効果的に作用する条件を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、疎水性ポリマー材料用の表面処理剤であって、側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有する共重合体を含むことを特徴とする、表面処理剤に関する。
また、一態様において、本発明の表面処理剤は、水とエタノールとの混合溶媒をさらに含む。好ましくは、混合溶媒中における水の含有量が、20〜80体積パーセントである。
ここで、本発明の表面処理剤に含まれる共重合体としては、例えば、下記式(1)で示される構造を有する共重合体が挙げられる。
Figure 0005898703

式中、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンを表し、Rは、炭素数4〜15の直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンを表し、各Rは、それぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキルであり;x、y、及びzは、互いに独立して、2以上の整数を表し:各モノマーユニットはランダムな順序で結合している。
好ましくは、式(1)において、Rはエチレン基であり、Rはエチルヘキシル基であり、Rはエチレン基であり、及び、各Rはいずれもメチル基あるいはエチル基である。また、x/(x+y+z)が0.15〜0.4であり、y/(x+y+z)が0.6〜0.8であり、z/(x+y+z)が0.05〜0.2である。
本発明の表面処理剤中における共重合体成分の濃度は、好ましくは、0.2〜1.5重量パーセントである。
本発明の表面処理剤で処理される疎水性ポリマー材料は、好ましくは、含ケイ素ポリマーであり、より好ましくは、ポリジメチルシロキサンである。
また、別の側面において、本発明は、上記の表面処理剤を疎水性ポリマー材料の表面に塗布する工程を含む、疎水性ポリマー材料の表面処理方法に関する。好ましくは、本発明の表面処理方法は、表面処理剤を塗布する工程の前に、疎水性ポリマー材料の表面をプラズマ処理する工程を要しないものである。また、当該方法は、疎水性ポリマー材料の表面を親水化する方法であることができる。
更なる側面において、本発明は、側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有する共重合体のコーティング膜を表面に有する、疎水性ポリマー材料に関する。例えば、上記の表面処理方法によって、表面処理されてなる疎水性ポリマー材料に関する。
本発明の疎水性ポリマー材料は、好ましくは、含ケイ素ポリマーであり、より好ましくは、ポリジメチルシロキサンである。
本発明によれば、効率的且つ簡便であり、耐久性に優れた、疎水性ポリマー材料表面の表面処理剤及び表面処理方法を提供することができる。また、本発明の表面処理剤は、各種疎水性ポリマー材料の表面を効率的且つ簡便に親水化することができるほか、例えば、ポリジメチルシロキサンのようなポリマー鎖の運動性が高い材料に対しても、長期間にわたり安定した表面親水化をすることができる点で、極めて有用である。
本発明の表面処理剤は、疎水性基と第三級アミンを有する共重合体を含むため、水を含む溶媒中で、共重合体側鎖と疎水性ポリマー材料表面との間における疎水性相互作用及び静電相互作用の両方を効果的に利用することが出来、それによって、疎水性ポリマー材料表面における共重合体の吸着を安定化することができるという効果を奏する。
本発明の表面処理方法は、水とエタノールの混合溶媒を用いて親水性を有する共重合体をコーティングすることができるため、上記の疎水性相互作用及び静電相互作用の両方を利用することで吸着安定性が向上することに加え、従来用いられていた非極性の有機溶媒を用いる必要がなく、生体或いは環境への悪影響も抑制することができる。
さらに、本発明の表面処理方法は、従来のようなプラズマ処理等による前処理を行う必要がないため、カテーテルや内視鏡などの細いチューブ状の部材のように内部表面にプラズマ処理を行うことは困難である場合、または、オーダーメイドのデバイスのようにプラズマ処理等の厳しい条件下での表面処理による変形等を避けるべきものに対しては、本発明の表面処理剤を用いた穏やかな条件下での表面処理が可能であり、処理対象となる疎水性ポリマー材料の物性、形状、或いは用途等に応じて適した表面処理を行うことができる点で、極めて実用性に優れたものである。
すなわち、優れた材料的性質を有する含ケイ素ポリマーの表面特性を改善することで、水濡れ性、摩擦特性、生物汚染などが低減でき、人工肺、コンタクトレンズ、カテーテル、センサーとしての医療分野への応用範囲を広げられるほか、精密加工により作製されるために過度の条件を用いた後処理での表面処理が困難なバイオチップ、マイクロデバイスなどの新しい応用を開拓できる。
図1は、共重合体溶液におけるANS−Na蛍光の極大波長のピークのグラフである。 図2は、ポリジメチルシロキサン表面における水中接触角を示すグラフである。棒グラフのうち、白抜きが表面処理直後、黒抜きが水に1時間浸漬後の値を示す。 図3は、ポリジメチルシロキサン表面におけるP/Si比に対する水中接触角を示すグラフである。 図4は、PMED溶液で表面処理を行ったポリジメチルシロキサン表面におけるリン原子とシリコン原子の比(P/Si)の時間依存性を示すグラフである。 図5は、PMEH溶液で表面処理を行ったポリジメチルシロキサン表面におけるリン原子とシリコン原子の比(P/Si)の時間依存性を示すグラフである。 図6は、PMED溶液で表面処理を行ったポリジメチルシロキサン表面における動的摩擦係数の時間依存性を示すグラフである。 図7は、ポリジメチルシロキサン表面におけるPMED及びPMEHの吸着挙動を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.表面処理剤
本発明の疎水性ポリマー材料用の表面処理剤は、側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有する共重合体を主要成分として含んでなるものである。
(1)共重合体
表面処理剤の主要成分となる前記共重合体は、側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有するものであり、いわゆる3元共重合体(ターポリマー)である。しかしながら、これら以外のモノマーユニットを有することを除外するものではない。また、これらのモノマーユニットは、それぞれランダムに結合する態様が代表的であるが、何らかの規則性・周期性を有する態様も本発明の範囲に含まれるものであり、例えば、統計ポリマー、交互ポリマー、周期ポリマー、ブロックコポリマーであることができ、場合にはよっては、グラフトポリマーであることもできる。
当該共重合体中、ホスホリルコリン基(PC基)は、生体膜の主成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン)の極性基と同様の構造を有する極性基である。従って、ホスホリルコリン基を側鎖に含むことにより、当該共重合体に、親水性(ぬれ性)、具体的には、生体膜の表面が有する極めて良好な生体適合性、特に生体分子の非吸着性、及び非活性化特性が付与され、各種分子に対する非特異的吸着を効果的に抑制することができるため、ひいては疎水性ポリマー材料等の疎水性ポリマー材料表面に優れた防汚性を付与することができる。また、当該共重合体中、疎水性基は、疎水性相互作用により処理対象である疎水性ポリマー材料表面との吸着性を有し、当該共重合体による表面コーティングの安定性を向上させることができる。
さらに、当該共重合体中、第三級アミンは、溶媒中に水を含む場合に正の電荷を有するため、負の電荷を有する疎水性ポリマー材料(特に、ポリジメチルシロキサン)の表面との間の静電相互作用によって、上記疎水性相互作用とともに当該共重合体の表面吸着を安定化させることができる。
上記共重合体における主鎖(骨格)を形成するモノマーユニットにおける骨格部位は、互いに重合反応してポリマーを形成することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビニル系モノマー残基、アセチレン系モノマー残基、エステル系モノマー残基、アミド系モノマー残基、エーテル系モノマー残基及びウレタン系モノマー残基等が好ましく、これらの中でも、ビニル系モノマー残基がより好ましい。ビニル系モノマー残基としては、限定はされないが、例えば、ビニル部分が付加重合している状態のメタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基及びスチリルアミド基等が好ましく、これらの中でも、メタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基及びアクリルアミド基がより好ましく、さらに好ましくはメタクリルアミド基及びアクリルアミド基であり、特に好ましくはメタクリルアミド基である。そして、上記骨格部位は、各モノマーユニットについて同一であることもでき、それぞれ独立に異なることもできるが、いずれもメタクリルアミド基である態様が好ましい。
従って、ホスホリルコリン基を有するモノマーの具体例としては、限定はされないが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−(2−メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−メタクリロイルオキシデシルシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリン及び4−スチリルオキシブチルホスホリルコリン等に由来する構造単位が好ましく挙げられる。これらの中でも、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構造単位が特に好ましい。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、“Kazuhiko Ishihara, Tomoko Ueda, and Nobuo Nakabayashi, Polymer Journal, 22, 355−360 (1990)”に記載の方法等により合成することができ、また、その他のホスホリルコリン系化合物(モノマー化合物)についても、当該方法及び常法に基づいて容易に合成できる。
上記共重合体は、限定はされないが、例えば、下記式(1)で示される構造を有するポリマーが好ましく挙げられる。
Figure 0005898703
式(1)中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンであるが、好ましくは、炭素数2の直鎖アルキレンであり、すなわち、ホスホリルコリン基を有するモノマーが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであることが好ましい。
また、Rは、炭素数4〜15の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、好ましくは、炭素数4〜10の分岐鎖のアルキルであり、さらに好ましくは、炭素数8の分岐鎖のアルキルである。最も好ましいアルキルは、エチルヘキシル基であり、すなわち、疎水性基を有するモノマーが2−エチルヘキシルメタクリレートであることが好ましい。
は、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンであり、好ましくは、炭素数2〜4の直鎖のアルキレンであり、さらに好ましくは、エチレン基である。また、各Rは、それぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキルであるが、好ましくは、各Rは、メチル基又はエチル基であり、最も好ましくはいずれもメチル基である。すなわち、最も好ましい第三級アミンを有するモノマーは、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレートである。
x、y、及びzは、互いに独立して、2以上の整数を表すが、ここで、x/(x+y+z)の値は0.15〜0.4が好ましく、より好ましくは0.2〜0.35、最も好ましくは0.2〜0.3である。当該値が0.4を超えると水のみ対して可溶化するため、疎水性ポリマー材料への表面吸着性が減少するため好ましくない。また、y/(x+y+z)の値は0.6〜0.8が好ましく、重合体の適度な疎水性を確保する観点から、より好ましくは0.6〜0.65である。z/(x+y+z)の値は0.05〜0.2が好ましく、より好ましくは、0.05〜0.10である。
本発明の表面処理剤で用いられる共重合体の重量平均分子量(Mw)は、限定はされないが、例えば、5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜300,000である。
上述のとおり、発明の表面処理剤で用いられる共重合体は、必要に応じ、他のモノマー由来の構造単位を含むものであってもよく、限定はされないが、通常、他のモノマー由来の構造単位の割合は、ポリマーを構成する全構造単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下である。
なお、上記共重合体の合成については、モノマー化合物の調製及びそれらの重合を含め、基本的には、当業者の技術水準に基づき、常法により行うことができる。
(2)表面処理剤
本発明の疎水性ポリマー材料用表面処理剤は、前述の通り、上記共重合体を主要成分として含むものであり、疎水性ポリマー材料の表面を親水化することができるものである。本発明の表面処理剤は、上記共重合体以外に、一般的に基材の表面処理剤の成分として用いられる任意の他の成分を含むものであってもよく、限定はされない。
溶媒としては、水とエタノールとの混合溶媒等が好ましく、当該混合溶媒中における水の含有量は、好ましくは、20〜80体積パーセント、より好ましくは、20〜50体積パーセントである。溶媒が水のみの場合には、上記共重合体は不溶であり、一方、水が20体積パーセント以下の場合には上記共重合体の疎水性ポリマー材料表面への吸着安定性が減少する。
本発明の表面処理剤は、通常、溶液状のものであることが好ましく、主要成分として含まれる前記共重合体の濃度は、例えば、0.2〜1.5重量パーセントが好ましく、より好ましくは0.5〜1.25重量パーセント、さらに好ましくは0.75〜1.0重量パーセントである。当該濃度が、1.5重量パーセントを超えると、溶液中で上記共重合体の会合が顕著となるため好ましくない。
本発明の表面処理剤の対象となる疎水性ポリマー材料としては、限定はされないが、例えば、各種疎水性ポリマー材料等が好ましく挙げられる。疎水性ポリマー材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(メタクリル樹脂;PMMA)、ケイ素置換メタクリル酸エステルポリマー等のアクリル系ポリマー;ポリジメチルシロキサン等の各種シリコーンゴム(置換シリコーン、変性シリコーンを含む等);ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリオレフィン等の有機物からなるもの;金属、セラミックスあるいはガラス系基材にシランカップリング剤で表面処理したもの等が挙げられる。好ましくは、含ケイ素ポリマーであり、より好ましくはポリジメチルシロキサンである。
当該疎水性ポリマー材料の形状は、特に限定はされず、例えば、フィルム状、板状、ビーズ状、繊維状及び中空管状の形状のほか、板状の基材に設けられた穴や溝なども挙げられる。
また、基材の用途としては、限定はされないが、例えば、歯科材料、歯科用器具、各種医療用デバイス、コンタクトレンズ、人工臓器、バイオチップ、バイオセンサー、酸素富加膜及び細胞保存器具等が挙げられる。歯科材料としては、例えば、有床義歯、架工義歯、インプラント義歯及びクラウン等の歯科用補綴物が好ましく挙げられる。
2.表面処理方法
(1)表面処理方法
本発明の表面処理方法は、対象基材である疎水性ポリマー材料の表面を親水化する方法であり、具体的には、上述した本発明の表面処理剤に浸漬すること等により、共重合体を基材の表面に塗布する工程を含む方法である。塗布工程においては、光反応性ポリマーである前記共重合体を主要成分として含む表面処理剤を用いて行えばよく、限定はされない。本発明の表面処理方法の対象基材となる疎水性ポリマー材料としては、限定はされないが、その種類、形状及び用途等は、前記1.(2)項で列挙したものと同様のものが例示できる。
(2)防汚性に優れた疎水性ポリマー材料
本発明の疎水性ポリマー材料は、表面が前記共重合体によりコーティング処理されてなる基材であり、表面が親水化されたものであるため防汚性に優れたものである。本発明の疎水性ポリマー材料は、詳しくは、前記共重合体中の疎水性基と第3級アミンがそれぞれ疎水性相互作用及び静電相互作用の両方によって表面に吸着することにより、安定化した表面コーティングがなされたものであるため、表面親水化による防汚性が長期にわたり保持され得るものである。
本発明の疎水性ポリマー材料は、上述した本発明の表面処理方法により疎水性ポリマー材料を表面処理することで得ることができる。本発明の疎水性ポリマー材料としては、限定はされないが、その種類、形状及び用途等は、前記1.(2)項で列挙したものと同様のものが例示できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.モノマー
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)は、上述のとおり、“Kazuhiko Ishihara, Tomoko Ueda, and Nobuo Nakabayashi, Polymer Journal, 22, 355−360 (1990)”に記載の方法等によって合成した。また、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、及び2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)は、市販のものを用いた(東京化成工業)。
2.MPC−EHMA−DMAEMA共重合体の合成
MPC:EHMA:DMAEMAが、モル比で30:60:10となる条件下において、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用い、エタノール中に当該技術分野において慣用されているラジカル重合反応により、MPC−EHMA−DMAEMA共重合体(PMED)を合成した。反応終了後、過剰量のエーテル:クロロホルム=8:2の溶媒を注ぎ、得られたポリマーを精製し、さらに、沈殿したポリマーを砕き、水で2時間洗浄することにより未反応のモノマーを除去した。その後、ポリマーをろ過し、凍結乾燥を行った。収率は33%であった。得られたポリマーの化学構造をH−NMR(CDCDOD中)により同定し、分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(JASCO社)により測定した。その結果、PMEDは、モノマー組成比がMPC:EHMA:DMAEMA=26:64:10の共重合体であり、重量平均分子量は、2.3x10であった。得られたPMED(実施例1)の構造を以下に示す。
Figure 0005898703
実施例1のPMEDと同様に、MPC:EHMA:DMAEMAのモノマーのモル比で30:60:10となる条件下において、重合開始剤の添加量を変化させて、種々のPMEDを合成した。その結果、共重合体中におけるモノマー組成比及び重量平均分子量が異なるPMEDが得られた(実施例2〜4)。また、MPC:EHMA:DMAEMAのモノマーのモル比を、20:70:10(実施例5)、及び35:60:15(実施例6)として同じ手順でPMEDを合成した。さらに、EHMAに代えて、BMAを用いたこと以外は、同様にして共重合体PMBDを合成した(実施例7)。得られた実施例2〜7の共重合体におけるモノマー組成比及び重量平均分子量を表1に示す。
3.ポリジメチルシロキサン(PDMS)の調製
液体PDMS(製品名:Silpot 184(登録商標)、東レ・ダウコーニング株式会社)と硬化剤を10:1(v/v)で混合し、硬化反応を60℃で4時間行った。得られた混合物を減圧下に置き、気泡を除去し、PDMS基板を得た。
4.基板表面のコーティング
本実施例においては、処理対象となる疎水性ポリマー材料としてPDMSを使用した。PMEDポリマーを所定比率のエタノール:水の混合溶媒に溶解し、水の含有量が、それぞれ0、20、50、80v/v%のポリマー溶液を得た。各ポリマー濃度は、1.0wt%に調製した。PDMS基板は事前にエタノールで洗浄した。PDMS基板を、PMED溶液に数秒間ずつ5回浸漬し、その後乾燥させた。この工程を2回繰返し、当該基板を減圧乾燥させた。
比較例として、DMAEMAユニットを含まないMPC−EHMA共重合体(PMEH)を上記と同様に合成した。PMEHのモノマー組成比はMPC:EHMA=33:67であり、重量平均分子量は、1.2x10であった。これを用いて、上記と同様に、水の含有量が0、20、50、80v/v%の水:エタノール混合溶媒のポリマー溶液を調製し、同条件にてPDMS基板の表面処理を行った。PMEHの構造を以下に示す。
Figure 0005898703
5.水−エタノール混合溶媒中におけるPMED及びPMEHの挙動
ANS−Naを蛍光プローブとして用いて、混合溶媒中におけるPMED(実施例1)及びPMEHの溶解状態の評価を行った。ポリマー濃度は1wt%、ANS−Naの濃度は1.0x10−5Mである。ポリマーの凝集における内部極性をANS−Naの蛍光の極大波長を用いて算出した(励起波長:350nm)。当該極大波長は、疎水性環境となるに伴って、短波長側にブルーシフトすることが知られている。結果を図1に示す。水が50及び80v/v%の場合には、PMED及びPMEHのいずれについても、溶媒に比べて極大波長が短波長側にブルーシフトしていることが分かる。この結果は、混合溶媒における水の比率が増えるにつれて、ポリマーが凝縮することを示している。特に、80v/v%の場合には、ポリマー凝縮の内部の極性は、エタノール溶媒のみの極性とほぼ等しいものであることが分かった。
6.水中における接触角測定による表面の親水性の評価
水中接触角測定により、水中における表面の親水性を評価した。この接触角測定は、水中でPDMS基板表面に気泡を接触させ、当該気泡の接触角を測定することによって行った(captive bubble法)。測定は、静的接触角計(協和界面科学社製、製品名:CA−W)を用い、室温、常圧のもとで2μLの気泡を水中で表面に接触させ、接触角を測定した。測定には、10x20x0.70mmの寸法に切断したPDMS基板を用いた。上記PMED及びPMEHによる処理を施した基板は、それぞれ、水中に1時間、24時間、72時間、120時間、168時間浸漬したものを測定し、共重合体層の安定性を比較した。
PMED(実施例1)について得られた結果を図2に示す。ここで、「PMED−0」は、PDMS基板を水:エタノール=0:100(すなわち、エタノール100%溶液)のPMED溶液でコーティング処理を行ったもの、「PMED−20」は、PDMS基板を水:エタノール=20:80のPMED溶液でコーティング処理を行ったものを意味する。PMEHについても同様である。また、接触角は、その角度が小さいほど、基板表面の親水性が高いことを意味する。
図2より、PMED及びPMEHで表面処理を行ったPDMS基板は、未処理の場合と比較して、接触角が大きく減少すること、すなわち親水性となっていることが分かる。ただし、エタノール100%の溶液で処理した場合(PMED−0、PMEH−0)には、未処理の場合とほぼ同じであり、これは、共重合体が基板表面に十分に吸着していないことを示すものである。ここで、PMED−20、50、80では、水に1時間浸漬した後であっても、小さな接触角を示し、表面の親水性が維持された。PMEH20、50、80では、水への浸漬後は、接触角が増大した(特に、PMEH−80については、0°から70°に増大した)。この結果は、PMEHでは、PDMS基板と弱い相互作用で吸着しているため、水への浸漬によって容易に剥離することを示すものである。一方、PMEDでは、側鎖のアミン基が正荷電を有することで、より強固にPDMS基板表面と相互作用しているものと考えられる。
種々のPMED(実施例2〜6)及びPMBD(実施例7)についても、上記PMED(実施例1)の場合と同様に、接触角を測定し、得られた結果を表1に示す。
Figure 0005898703
7.PDMS表面におけるPMED及びPMEHの安定性
PDMS表面のおける元素組成をX線光電子分光により分析した(AXIS−His 165 Kratos/島津製作所)。図3は、PDMS表面におけるリン(P)原子とシリコン(Si)原子の存在比に対して、接触角を示したものである。ここで、接触角は、ポリマーで表面処理したPDMS基板を水に1時間浸漬させた後の値を用いている。リン原子はポリマー中のMPCユニットのホスホリルコリン基のみに含まれる元素であるため、P/Siの比によりコーティング膜の存在を評価できる。図3に示す結果から、溶媒がエタノール100%の場合(PMED−0、PMEH−0)には、P原子の存在が観測されなかったことから、表面処理を行ったにもかかわらず、PDMS表面にポリマーが存在しないことが分かる。また、P/Siの比が大きくなるにつれて接触角が減少している。このことは、すなわち、PDMS表面の親水化が生じ、これが親水性であるホスホリルコリン基に起因することを示唆するものである。
さらに、同様にX線光電子分光により、PDMS表面におけるP/Si比の時間依存性を測定した。結果を図4及び図5に示す。図4において、PMED−50及び80の場合には、水に24時間浸漬後は、P/Si比が0.25から0.10まで減少したが、一方、PMED−20の場合には、0.25に維持された。さらに、PMED−20、50、及び80では、168時間浸漬後であっても、約0.05のP/Si比が維持されていた。
ここで、PDMS表面のP/Si比とフィブリノゲンの吸着との関係性について、表面が0.035のP/Si比を有する場合、未処理のPDMS表面に比して、約75%もフィブリノゲンの表面吸着量が減少することが報告されている(K. Ishihara, B. Ando and M. Takai, Nanobiotechnol. 3 (2007) 83)。これに基づけば、上記PMED処理表面は、水に168時間浸漬した後でも、優れた生物付着耐性を有することが示唆される。
一方、PMEH−20及び50は、水への24時間浸漬によって、P/Si比が0.25から0.05以下に減少し、さらに、PMEH−80では、わずか1時間の浸漬で約0.15から0.05へと劇的に減少した。そして、いずれの場合も、72時間の浸漬後には、P/Si比がほぼ0を示した。
これらの結果から、PMEDでは側鎖にアミンを有することにより、溶媒に水が含まれる場合にはプロトン化して正の電荷を有するため、PMEHに比較して、PDMS表面により強固に吸着しているものと考えられる。なお、DMAEMAポリマーのpKaは、約8.0であることが知られており、pH5.6の水中であれば、ジメチルアミノ基の90%がプロトン化し、正荷電を有することになる。
8.PMED処理表面の潤滑性の評価
動的摩擦係数により、PMEDで表面処理したPDMS表面の潤滑性の評価を行った。表面性測定機(Heidon Type32、新東科学)を用いて、Co−CrボールとPDMS表面の動的摩擦係数を測定した。PDMS基板を65x35x3.0mmの長方形に成形し、室温、0.98Nの負荷、純水中において、最大1.0x10サイクルにて摩擦試験を行った。各サンプルにて3回行い、その平均値を求めた。
得られた摩擦係数の時間依存性を図6に示す。未処理のPDMS及び(ポリマーが吸着していない)PMED−0では、約1.16という非常に高い摩擦係数を示した。一方、PMED−20、50、及び80で表面処理を行った場合には、それぞれ、摩擦係数が0.030、0.030、及び0.015という劇的な減少を示した。この結果は、親水性のPMEDで表面処理することによって、強い疎水性相互作用が取り除かれ、水を主体とする潤滑層が形成されて、摩擦力が減少したものと考えられる。当該結果は、上記の接触角測定の結果と整合するものである。さらに、1.0x10サイクルの後も、良好に低い摩擦係数が維持されたことは、PDMS基板の表面に形成されたPMED層の安定性を実証するものであるといえるものである。
図7は、以上の実験結果を踏まえて、PDMS表面におけるPMEDとPMEHの吸着挙動を模式的に示したものである。PMEDは、DMAEMAを含むことによって水系溶媒中で正電荷を有し、一方PDMS表面は負に帯電するが、このことが、PMEH層に比べてPMED層が非常に高い安定を有することの理由と考えられる。すなわち、PMEHとPMEDにおける安定性の相違は、疎水性相互作用のみならず、静電相互作用によってPDMS表面に結合するためであり、かかる2つの分子間相互作用によって、本発明の表面処理剤に含まれる共重合体とPDMS表面における安定な結合がもたらされるのである。

Claims (16)

  1. 疎水性ポリマー材料用の表面処理剤であって、
    側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有する共重合体を含み、
    前記共重合体がアクリル系主鎖骨格を有し、
    前記疎水性基が炭素数4〜15の直鎖または分岐鎖のアルキルであることを特徴とする、表面処理剤。
  2. 水とエタノールとの混合溶媒をさらに含む、請求項1に記載の表面処理剤。
  3. 前記混合溶媒中における水の含有量が、20〜80体積パーセントである、請求項2に記載の表面処理剤。
  4. 前記共重合体が、以下の式(1)で示される構造を有する共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理剤。
    Figure 0005898703

    (ここで、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンを表し、Rは、炭素数4〜15の直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレンを表し、各Rは、それぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキルであり;x、y、及びzは、互いに独立して、2以上の整数を表し:各モノマーユニットはランダムな順序で結合している。)
  5. がエチレン基であり、Rがエチルヘキシル基であり、Rがエチレン基であり、及び、各Rがいずれもメチル基である、請求項4に記載の表面処理剤。
  6. x/(x+y+z)が0.15〜0.4であり、y/(x+y+z)が0.6〜0.8であり、z/(x+y+z)が0.05〜0.2である、請求項4又は5に記載の表面処理剤。
  7. 前記表面処理剤中の共重合体成分の濃度が、0.2〜1.5重量パーセントである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理剤。
  8. 前記疎水性ポリマー材料が、含ケイ素ポリマーである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面処理剤。
  9. 前記疎水性ポリマー材料が、ポリジメチルシロキサンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面処理剤。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理剤を疎水性ポリマー材料の表面に塗布する工程を含む、疎水性ポリマー材料の表面処理方法。
  11. 前記表面処理剤を塗布する工程の前に、疎水性ポリマー材料の表面をプラズマ処理する工程を要しない、請求項10に記載の方法。
  12. 疎水性ポリマー材料の表面を親水化する方法である、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法によって表面処理されてなる疎水性ポリマー材料。
  14. 側鎖にホスホリルコリン基を有するモノマーユニット、側鎖に疎水性基を有するモノマーユニット、及び側鎖に第三級アミンを有するモノマーユニットを有する共重合体であって、
    前記共重合体がアクリル系主鎖骨格を有し、
    前記疎水性基が炭素数4〜15の直鎖または分岐鎖のアルキルである、
    前記共重合体のコーティング膜を表面に有する、疎水性ポリマー材料。
  15. 含ケイ素ポリマーである、請求項14に記載の材料。
  16. ポリジメチルシロキサンである、請求項15に記載の材料。
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