JP6305429B2 - ポリオキサゾリンコポリマー - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
[関連出願の相互参照]
本出願は2012年12月19日出願の米国特許仮出願第61/739162号の利益を主張し、その開示の全内容を参照により本明細書に援用する。
[背景]
多くの分野において、生物付着の防止は困難な課題である。これらの分野には、生物医学的応用、海水用塗装技術、水ろ過、輸送、及び貯蔵システムが包含されるが、これらに限定されない。この普遍的な課題に関係する望ましくない結果として、装置の有効性/感度の低下、操作性の低下、血栓症、及び微生物感染などを挙げることができる。したがって、微生物の何らかの望ましくない付着を低減、又は完全に防止する新技術及び新材料の開発は非常に重要である。高効率の付着阻止材料を目的に合わせて作製するには、関係している相互作用を理解することが求められるものの、そのプロセスの複雑さゆえに解明しにくく、課題に対する解決方法を提供することが非常に難しくなっている。
一般的には、ある材料(例えば、医療用インプラント)が、血液、都市用水、及び/又は海水などの水性環境に置かれてから数秒以内にはバイオフィルムの生成が開始されている。単一種によってもバイオフィルムが形成され得るが、多くの場合、数種の異なる微生物群から成り立っている。このプロセスの第1段階は、多くの場合、基材表面へのタンパク質の吸着であり、その後、バクテリア、菌類などの微生物、及び藻類を含むより大型で複雑な種が次々と吸着される。それゆえ、大型の微生物が清浄な表面と相互作用することは稀であり、むしろその表面に吸着しているタンパク質と相互作用するとも言える。生物付着プロセスを防止する方法として使用されてきた方法の1つに、抗菌作用をもつ成分を材料に組み込むものがある。これには、製造の際に活性物質を材料に混ぜ込む方法、材料の表面に活性物質を共有結合的に結合させる方法、又は表面に抗菌剤をコーティング/塗工して、その後材料から浸出させる方法がある。しかし、一度、ある程度の量の有機物質(例えば、細胞片)が形成されると、活性材料はその標的に到達できなくなり、表面活性が低下してしまう。別の手法としては、様々な種の生物の殺傷ではなく、付着そのものを防止して生物付着を防止するものがある。
バイオフィルム生成を防止するうえで重要な課題は、タンパク質、微生物細胞、及び胞子を包含する様々な種の生物の不可逆的な付着を効果的に防止することができる、高性能材料、又は機能性表面を設計することである。様々な手法が研究されてきたが、なかでも優れた濡れ性を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)、及び双極性イオンポリマーを利用した表面の親水性改質が最も期待されている。しかし、タンパク質のみならず大型の微生物も元来両親媒性である。なかには疎水性表面に対して吸着親和性が高いものもあれば、親水性表面に対して高いものあり、それぞれ異なったメカニズムで付着を行う。それゆえ、望ましい抗生物付着コーティングは、複数の種に対してステルス挙動を示すものとして定義され得るであろう。これらの発見から、生物体と同じように、環境によって表面を再構成する機能性材料、特に両親媒性物質への要求が高まっている。しかし、様々な種の生物に対してバイオフィルムの形成を効果的に防止するためには、親水性と疎水性(又は両媒性)との微妙なバランスを個別の表面/コーティングについて考慮しなければならないことに留意すべきである。
[概要]
本開示はポリオキサゾリンコポリマー(POx)を提供するものである。より具体的には、本開示によって、新規コポリマーが提供され、実施形態によっては、ポリオキサゾリンを親水性構成要素として利用し、かつパーフルオロ基を疎水性構成要素として利用する両媒性コポリマーが提供される。本開示のコポリマーは、バイオフィルム形成に抵抗する、あるいは形成されたバイオフィルムの剥離を促すコーティングを形成するのに有益である。
一実施形態では、本開示は、以下の式
Figure 0006305429

[式中、Qは、O又はNであり、R10は、H又はCHであり、R11は、加水分解性シリル基を含む有機基であり、R12は、H又はCHであり、Pは、
Figure 0006305429

である
(式中、Rは、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、Rは、アルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及びR−Y−(CH−基から選択され、Rはパーフルオロアルキル基であり、Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、ここでnは、2より大きい整数であり、xは、少なくとも2の整数であり、及びyは、少なくとも1の整数である)。]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるコポリマーを提供する。
Pにおいて、()はモノマーB中のQに対する結合位置を示している。
一実施形態では、本開示は、以下の式
Figure 0006305429

[式中、Qは、O又はNであり、R10は、H又はCHであり、R11は、−Z−Si(R13であり、R12は、H又はCHであり、R13は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、それらの組み合わせ(すなわち、アルカリル基又はアラルキル基)、及び加水分解性基から選択され、少なくとも1つのR13は加水分解性基であり、Zは、アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせ(すなわち、アルカリーレン又はアラルキレン)から選択され、場合により、−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを鎖内に含み、Pは、
Figure 0006305429

である
(式中、Rは、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、Rは、R−Y−(CH−基であり、Rは、パーフルオロ(C1〜C8)アルキル基であり、Yは−S(O)−N(CH)−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、又は−(CHCHO)−の結合であり、nは20から100の整数であり、xは2から20の整数であり、かつyは1から20の整数である)]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるブラシ状コポリマーを提供する。
Pにおいて、()はモノマーB中のQに対する結合位置を示している。
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、脂肪族基、環状基又は脂肪族基と環状基との組み合わせ(例えば、アルカリル及びアラルキル基)として分類される、炭化水素基(酸素、窒素、硫黄、ケイ素、及びハロゲンのような、炭素及び水素以外の任意元素を含む)を意味する。本発明に関して、有機基は、コポリマーの形成に干渉しないものである。用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含するのに使用される。用語「アルキル基」は以下に定義する。用語「アルケニル基」は、ビニル基のような、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を表す。用語「環状基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉じた環状炭化水素基を表す。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性と類似する特性を有する環状炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」を以下に定義する。用語「複素環式基」は、環の1つ以上の原子が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄等)である閉じた環状炭化水素を表す。有機基の価数はいくつでもよいが、一価又は二価であることが多い。
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルであり、並びに直鎖、分枝状、環状、及び二環式アルキル基、並びにそれらの組み合わせを含み、無置換及び置換アルキル基のいずれも含む、一価の基を表す。別途記載のない限り、アルキル基は、典型的には、1〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。別途記載のない限り、アルキレン基は一般的に1〜30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,4−シクロヘキシレン、及び1,4−シクロヘキシルジメチレンが挙げられる。
用語「芳香族」は、炭素環式、又は複素環式で、完全に不飽和である基を指す。
用語「アリール」は、芳香族、及び場合により炭素環式である一価の基を指す。アリールは少なくとも1個の芳香環を有する。追加の環は、不飽和、部分的に飽和、飽和、又は芳香環であってよい。場合により、芳香環は、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。別途記載のない限り、アリール基は、典型的には、6〜30個の炭素原子を含有する。一部の実施形態では、アリール基は炭素原子を6〜20個、6〜18個、6〜16個、6〜12個、又は6〜10個含有する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナンスリル、及びアントラシルが挙げられる。
用語「アリーレン」は、芳香族かつ場合により、炭素環式である、二価の基を指す。アリーレンは少なくとも1個の芳香環を有する。追加の環は、不飽和、部分飽和、又は飽和であってもよい。場合により、芳香環は、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。別途記載のない限り、アリーレン基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
用語「アラルキル」は、(例えば、ベンジル基のように)アリール基で置換されたアルキル基である、一価の基を表す。用語「アルカリル」は、(例えば、トリル基のように)アルキル基で置換されたアリールである、一価の基を表す。別途記載のない限り、両方の基について、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。
用語「アラルキレン」は、アリール基によって置換されたアルキレン基、又はアリーレン基に結合されたアルキレン基である二価の基を指す。用語「アルカリーレン」は、アルキル基によって置換されたアリーレン基、又はアルキレン基に結合されたアリーレン基である二価の基を指す。別途記載のない限り、両方の基について、一般的に、アルキル又はアルキレン部分は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。別途記載のない限り、両方の基について、一般的に、アリール又はアリーレン部分は、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
用語「パーフルオロ化アルキル基(perfluorinated alkyl group)」又は「パーフルオロアルキル基(perfluoroalkyl group)」は全てのC−H結合がC−F結合に置き換えられているアルカン基を指す。
用語「シリル」は、Rが、加水分解性基又は非加水分解性基である式−Si(Rの一価の基を指す。多くの実施形態では、シリル基は、「加水分解性シリル」基であり、これは、シリル基が、加水分解性基である少なくとも1つのR基を含有することを意味する。
用語「加水分解性基」は、大気圧条件下で1〜10のpHを有する水と反応しうる基を指す。加水分解性基は、多くの場合、反応するときにヒドロキシル基に変換される。ヒドロキシル基は、多くの場合、縮合反応など更なる反応を受ける。典型的な加水分解性基は、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリルオキシ、アシルオキシ、又はハロを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、本用語は、多くの場合、シリル基中のケイ素原子に結合された1つ以上の基に関して使用される。
用語「非加水分解性基」は、大気圧の条件下で1〜10のpHを有する水と反応しえない基を指す。典型的な非加水分解性基には、アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリルが含まれるが、これに限定されない。本明細書で使用するとき、本用語は、多くの場合、シリル基中のケイ素原子に結合された1つ又はそれ以上の基に関して使用される。
用語「アルコキシ」は、アルキル基に直接結合するオキシ基を有する一価の基を指す。
用語「アリールオキシ」は、アリール基に直接結合するオキシ基を有する一価の基を指す。
用語「アラルキルオキシ」及び「アルカリルオキシ」は、それぞれアラルキル基、又はアルカリル基に直接結合しているオキシ基を有する一価の基を指す。
用語「アシルオキシ」は、Rが、アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキルである式−O(CO)Rの一価の基を指す。多くの場合、好適なアルキルR基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、好適なアリールR基は、例えば、フェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。好適なアラルキル及びアルカリルR基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有する。
用語「ハロ」は、フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ等のハロゲン原子を指す。反応性シリルの一部であるとき、多くの場合、ハロ基はクロロである。
用語「(メタ)アクリロイルオキシ基」には、アクリロイルオキシ基(−O−(CO)−CH=CH)、及びメタクリロイルオキシ基(−O−(CO)−C(CH)=CH)が含まれる。
用語「(メタ)アクリロイルアミノ基」には、アクリロイルアミノ基(−NR−(CO)−CH=CH)、及びメタクリロイルアミノ基(−NR−(CO)−C(CH)=CH)が含まれる。ここでアミド窒素が水素、メチル基、又はエチル基(RがH、メチル、又はエチル)であるような実施形態も含まれる。
用語「ブラシ状コポリマー」は、少なくとも1つの反復ユニットがマクロモノマーから誘導されているコポリマーを指す。マクロモノマーとは、(一般的には少なくとも10個の反復ユニットをもつ)高分子鎖で、一端に重合可能な基(例えば、エチレン性不飽和基)をもつものである。
用語「含む(comprise)」及びこの変形は、これらの用語が現れる明細書及び請求項を制限する意図を持たない。
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で、特定の効果をもたらし得る本開示の実施形態のことを指す。しかしながら、同一又は他の環境下では、他の実施形態も好ましい可能性がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを目的としたものではない。
本願では、「a」、「an」、及び「the」等の用語は、1つの実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示のために用いることができる一般分類を含む。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と共に、互換的に使用される。列挙を伴った、「の少なくとも1つ」及び「の少なくとも1つを含む」という表現は、その列挙の項目の任意の1つ、及びその列挙の項目の2つ以上の任意の組み合わせを指す。
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、内容が明確にそれ以外を指図しないかぎり、一般的に「及び/又は」を含む意味で使用される。用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ又は全てを、若しくは列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
同様に、本明細書においては、全ての数は「約」という用語で修飾されたとみなされ、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されたとみなされる。本明細書において測定した量と関連して使用されるとき、用語「約」は、測定を行い測定の目的及び使用測定機器の精度に対応するレベルの注意を払う熟練した技術者によって予想されるような測定量の変動を指す。
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数及び端点(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)が包含される。
ある基が本明細書で記載した式中に2回以上存在するとき、各基は特に記載の有無に関わらず、「独立して」選択される。例えば、式中に1つ以上のR基が存在するとき、各R基は独立して選択される。更に、これらの基の中に含まれるサブグループも独立して選択される。例えば、各R基がY基を含むとき、各Yも独立して選択される。
本明細書で使用するとき、用語「室温」は、20℃〜25℃又は22℃〜25℃の温度を指す。
本開示の上記概要は、本開示の開示される各実施形態又は全ての実現形態を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願の全体を通じていくつかの箇所で、実施例の列挙によって指針が与えられるが、これらの実施例は異なる組み合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載される列挙は、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって、排他的な列挙として解釈するべきではない。
本開示はポリオキサゾリンコポリマー(POx)を提供するものである。
近年、PEGに似た、高い生体適合性及びステルス挙動を示すことに起因し、生物医学的用途においてポリオキサゾリン(POx)の使用が注目を集めている。POxは、様々な種類の明確に定義されたポリマーを簡単に得る方法を提供する、リビングカチオン性開環重合によって得られる。更に、反応開始剤、モノマー、及び末端基を変更するだけで、POxの機能性及び得られる物理特性を調整することができる。ポリ(メチル−オキサゾリン)及びポリ(エチル−オキサゾリン)は、生体からのより迅速なクリアランスを示し、PEGよりも親水性であるポリ(メチル−オキサゾリン)の場合、非生物付着用途について利点を提供し得る。
本開示によって、新規のコポリマーが提供され、実施形態によっては、ポリオキサゾリンを親水性構成要素として利用し、かつパーフルオロ基を疎水性構成要素として利用する両媒性コポリマーが提供される。このようなポリオキサゾリンコポリマー、特に両親媒性コポリマーは、バイオフィルムの形成に抵抗し、又はバイオフィルムの剥離を促進する点において有益である。
一実施形態では、本開示は、下式
Figure 0006305429

のモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるコポリマーを提供する。
本明細書で使用するとき、コポリマーとは、2つ又はそれ以上の異なるモノマー(反復)部分を含有するポリマー(ターポリマー、テトラポリマーを含む)である。このようなコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又は他のいかなるモノマー部分の構造配置であってもよい。特定の実施形態では、このようなコポリマーはブラシ状コポリマーである。
このような本開示のコポリマーは少なくとも2,000g/molの重量平均分子量を有する。
特定の実施形態では、Qは、O又はNである。特定の実施形態では、QはOである。
特定の実施形態では、R10は、H又はCHである。特定の実施形態では、R10は、Hである。
特定の実施形態では、R11は、加水分解性シリル基を含む有機基である。特定の実施形態では、R11は、−Z−Si(R13である。
特定の実施形態では、R12は、H又はCHである。特定の実施形態では、R12は、Hである。
特定の実施形態では、R13基は、それぞれ独立して加水分解性基又は非加水分解性基(例えば、アルキル基、アリール基、又はそれらの組み合わせ(すなわち、アルカリル基、又はアラルキル基))である。特定の実施形態では、R13は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及び加水分解性基から選択され、少なくとも1つのR13は加水分解性基である。特定の実施形態では、加水分解性基は、ハロ、アルコキシ基、及びアシルオキシ基から選択される。特定の実施形態では、加水分解性基は、ハロ、(C1〜C4)アルコキシ基、及び(C1〜C4)アシルオキシ基から選択される。
特定の実施形態では、Zはアルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせ(すなわち、アルカリーレン基又はアラルキレン基)から選択され、場合により、−O−、−C(O)−、−NR−(式中、Rは、H、メチル、又はエチルであり、典型的にはHである)、−S−、又はそれらの組み合わせを鎖内に含む。この文脈において、「内」とはそのような原子又は基がシリル基又は−C(O)Q−基と直接結合していないことを意味する。特定の実施形態では、Zは、(C1〜C20)アルキレン基、(C6〜C12)アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択され、場合により、−O−、−C(O)−、−NR−(式中、Rは、H、メチル、又はエチルであり、一般的にHである)、−S−、又はそれらの組み合わせを鎖内に含む。
特定の実施形態では、Pは、
Figure 0006305429

である(ここで()はモノマーB中のQに対する結合位置である)。
特定の実施形態では、Rは、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、Rは、H、(C1〜C20)アルキル基、(C6〜C12)アリール基、(C6〜C12)ar(C1〜C20)アルキル基、又は(C1〜C20)alk(C6〜C12)アリール基である。特定の実施形態では、Rは、H、メチル、及びエチルから選択される。
特定の実施形態では、Rは、アルキル基、アリール基、及びR−Y−(CH−基から選択される。
特定の実施形態では、Rは、R−Y−(CH−基である。
特定の実施形態では、Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択される。特定の実施形態では、Yは、−S(O)−N(CH)−、−C(O)−NH−、及び−(CHCHO)−の結合から選択される。
特定の実施形態では、Rは、パーフルオロアルキル基である。特定の実施形態では、Rは、パーフルオロ(C1〜C8)アルキル基である。特定の実施形態では、Rは、パーフルオロ(C1〜C5)アルキル基又はパーフルオロ(C1〜C4)アルキル基である。特定の実施形態では、Rは、パーフルオロC4アルキル基である。
特定の実施形態では、nは、2より大きい整数である。特定の実施形態では、nは10より大きい。特定の実施形態では、nは少なくとも20である。特定の実施形態では、nは500以下である。特定の実施形態では、nは100以下である。特定の実施形態では、nは20から100の間である。
特定の実施形態では、xは、少なくとも2の整数である。特定の実施形態では、xは20以下である。特定の実施形態では、xは10以下である。特定の実施形態では、xは6以下である。
特定の実施形態では、yは、少なくとも1の整数である。特定の実施形態では、yは20以下である。特定の実施形態では、yは5以下である。
一実施形態では、本開示は、以下の式
Figure 0006305429

[式中、Qは、O又はNであり、R10は、H又はCHであり、R11は、加水分解性シリル基を含む有機基であり、R12は、H又はCHであり、Pは(式中()はモノマーB中のQに対する結合位置である)、
Figure 0006305429

であり、
は、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、Rは、アルキル基、アリール基、及びR−Y−(CH−基から選択され、Rは、パーフルオロアルキル基であり、Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、nは、2より大きい整数であり、xは、少なくとも2の整数であり、及びyは、少なくとも1の整数である]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるコポリマーを提供する。
特定の実施形態では、モノマーAの例に以下が含まれる。
Figure 0006305429
Figure 0006305429
特定の実施形態では、モノマーBは以下の式で表される。
Figure 0006305429

[式中、Rは、H、アルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせから選択され、Rは、R−Y−(CH−であり、Rは、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルアミノ基であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、nは10より大きい整数であり、xは2から20の整数であり、及びyは、少なくとも1の整数である]。
モノマーBは、重合性ポリオキサゾリンである。モノマーBの例として、以下が含まれる。
Figure 0006305429
いくつかのより具体的な例では、これらの式のnは20〜40の範囲にあり、35〜35の範囲にあり、又は30と等しい。
このような化合物は、従来の手法を使って作製可能である。反応スキームの例を「実施例(スキームI)」に示してある。一般的には、オキサゾリン、特に2−の位置にRを含む2−オキサゾリンは、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル)中で、反応開始剤(例えば、メチルトリフルオロメタンスルホネート(すなわち、メチルトリフレート)、パーフルオロブチルエチレントリフレート、パーフルオロブチルスルホンアミドトリフレート、メチルトルエンスルホネート(すなわち、メチルトシレート)、及びヨウ化メチル)の存在下、過熱すること(例えば、80℃の温度)により開環反応を受け、続いて重合性基を含むように改変される(例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、(メタ)アクリル酸との反応による)。
一実施形態では、本開示は、以下の式
Figure 0006305429

[式中、Qは、O又はNであり、R10は、H又はCHであり、R11は、−Z−Si(R13であり、R12は、H又はCHであり、R13は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、又はそれらの組み合わせ、及び加水分解性基から選択され、少なくとも1つのR13は、加水分解性基であり、Zは、アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択され、場合により、−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを鎖内に含むことができ、Pは、
Figure 0006305429

である(式中、Rは、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、Rは、R−Y−(CH−基であり、Rは、パーフルオロ(C1〜C8)アルキル基であり、Yは、−S(O)−N(CH)−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、又は−(CHCHO)−の結合であり、nは20から100の整数であり、xは2から20の整数であり、かつyは1から20の整数である。ここで()はモノマーB中のQに対する結合位置である。)]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるブラシ状コポリマーを提供する。
モノマーAは、コポリマーを架橋させるため、コポリマーを基材に結合させるため、又はその両方のために利用できる、加水分解性シリル基を有している。すなわち、加水分解性シリル基が、加水分解、及び/若しくは縮合反応を経て、1つ以上のケイ素−酸素−ケイ素結合を形成する。2個の加水分解性シリル基が互いに反応しあうと、コポリマー内部で架橋が形成される。加水分解性シリル基が基材のシラノール基と反応すると、基材へ付着できる。
本開示のコポリマーを形成する際に、モノマーAの量は、モノマーの総量を基準として一般的に少なくとも1重量%(wt−%)、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%である。本開示のコポリマーを形成する際に、モノマーAの量は、モノマーの総量を基準として一般的に50重量%以下である。その残部(50〜99重量%)は多くの場合モノマーBを含むものの、モノマーAとBは、エチレン性不飽和モノマーのような他のモノマーとの共重合により好適なコーティングを形成することもできる。任意のモノマーのいくつかの例としては、種々のアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アリールアクリレート、アリールメタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、及びスチレンが挙げられる。使用する際には、これらの追加のモノマーは、例えばモノマーの総量の最大10重量%、最大20重量%、又は最大30重量%など、好ましいいかなる量でも存在させることができる。
モノマーA及びモノマーBは、フリーラジカル重合反応を利用して共重合する。すなわち、モノマーA及びモノマーBは、一般的にはフリーラジカル反応開始剤と混合されて、重合に適した条件下に置かれる。フリーラジカル反応開始剤は、熱反応開始剤又は光開始剤であってよい。反応開始剤は、典型的には、重合性反応混合物中の重合性材料(例えば、モノマーA、モノマーB、及び他の任意のモノマー)の総重量に基づき0.01〜5重量パーセントの範囲、0.01〜2重量パーセントの範囲、0.01〜1重量パーセントの範囲、又は0.01〜0.5重量パーセントの範囲の量で存在する。
一実施形態では、熱反応開始剤が使用される。熱開始剤は、使用される特定の重合方法に依存して水溶性又は非水溶性(すなわち、油溶性)とすることができる。適切な水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの過硫酸塩;過硫酸塩の反応生成物、及びメタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)若しくは重硫酸塩(例えば、重硫酸ナトリウム)などの還元剤などの酸化−還元開始剤;又は4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム又はカリウム)が挙げられるが、これに限定されない。好適な油溶性反応開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリルであるVAZO 67、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)であるVAZO 64、及び(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)であるVAZO 52を含む、商品名VAZOでE.I.DuPont de Nemours Co.から市販されているもの等の種々のアゾ化合物、並びに過酸化ベンゾイル、過酸化シクロヘキサン、過酸化ラウロイル、及びこれらの混合物等の種々の過酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
多くの実施形態において、光開始剤が使用される。いくつかの代表的な光開始剤は、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル若しくはベンゾインイソプロピルエーテル)又は置換ベンゾインエーテル(例えば、アニソインメチルエーテル)である。他の光開始剤の例として、2,2−ジエトキシアセトフェノン又は2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASF Corp.(米国、NJ、Florham Park)から商品名IRGACURE 651で、又はSartomer(米国、PA、Exton)から商品名ESACURE KB−1で市販されている)などの置換アセトフェノンがある。更に別の代表的な光開始剤は、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α−ケトール、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどの芳香族スルホニルクロライド、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシムである。他の適切な光開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCUR 1173)が挙げられる。
重合可能な混合物は、所望により、結果として生じるエラストマー材料の分子量を制御するために、連鎖移動剤を更に含有してもよい。有益な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール類、チオグリコール酸イソオクチルなどのメルカプタン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。使用される場合、重合可能な混合物は、重合性材料の総重量に基づいて最高0.5重量の連鎖移動剤を含んでもよい。例えば、重合可能な混合物は、0.01〜0.5重量パーセント、0.05〜0.5重量パーセント、又は0.05〜0.2重量パーセントの連鎖移動剤を含有することができる。
所望であれば、本開示のコポリマーは金属ケイ酸塩(例えば、リチウムケイ酸塩)などの構成要素と混合されて、当該技術分野において公知であるように、ハードコートを形成できる。
このようなポリオキサゾリンコポリマーは、バイオフィルム抵抗性コーティング(すなわち、少なくとも1つの微生物の繁殖に対し耐性を示すことにより明らかであるように、バイオフィルムの形成に耐性であり、及び/若しくは形成されたバイオフィルムの剥離を促進するようなコーティング)を形成するのに有益である。よって、基材をコーティングして(コーティングのない基材に比較して)バイオフィルム抵抗性を向上させる方法が本開示により提供される。
一実施形態では、コーティング組成物は、本開示のポリオキサゾリンコポリマーと溶媒を含んでおり、これによってコーティング組成物を基材に塗布することで、基材にバイオフィルム抵抗性コーティングを付与する。このコーティング組成物は、多くの場合ペンダント加水分解性シリル基をもつコポリマーを含む。すなわち、コーティング組成物中のコポリマーは架橋されていない(例えば、硬化していない)。別の実施形態では、本開示のコーティング組成物で基材、具体的には硬質基材をコーティングすることで、基材上にバイオフィルム抵抗性コーティングをもたらす方法が提供される。ブラッシング、スプレー、ディッピング、ローリング、スプレッディング等のような広範なコーティング方法を用い、本開示の組成物を塗布することができる。基材上で得られたコーティングは、室温又は高温(例えば、40〜300℃)で硬化され得る。いくつかの実施形態では、室温又は高温にて、硬化は触媒の影響を受け得る。硬化は、多くの場合、ペンダント加水分解性シリル基の反応による、−Si−O−Si−連結基を含む架橋の形成を伴う。
コーティング組成物に有用な溶媒としては、(コーティング溶媒が重合プロセスにおいて使用されるものと同じものである場合)モノマーの重合に阻害的に作用するものでなく、構成要素が少なくとも1重量%溶解可能であるものが挙げられる。溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、キシレン及びエチレングリコールアルキルエーテルである。それらの溶媒は、単独で又はそれらの混合物として使用することができる。コポリマーがペンダント加水分解性シリル基を含有する場合、好ましくは溶媒成分は、これらの基の間の反応を一時的に遅延させる傾向があるアルコール溶媒を含有する。
コーティング組成物は、一般的に塗布条件と手法に適した粘度を有する均質混合物である。例えば、ブラシ又はローラーコーティングされる材料は、ディップコーティング溶液より高い粘度を有することが好ましい可能性がある。コーティング組成物は一般的に希釈溶液であり、多くの場合、コポリマーを少なくとも0.1重量%、又は少なくとも1重量%含んでいる。典型的なコーティング組成物は、多くの場合、50重量%以下、又は25重量%以下のコポリマーを含む。
バイオフィルム抵抗性コーティングの形成のためにコーティングを配置することのできる基材は、幅広く種々の材料であり得る。有用な基材としては、セラミックス、ガラスを含むシリカ質基材、金属、天然及び人工石、織布及び不織布物品、高分子材料、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーのようなスチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートのような、熱可塑性及び熱硬化性のものなどの高分子材料、医療用チューブで用いられるようなシリコーン、アクリル樹脂ベースのもののような塗料、ポリウレタン又はハイブリッド粉末コーティングのような粉末コーティング、及び木材が挙げられる。基材は、例えば、フィルム、織布、又は不織布の形態であってよい。
いくつかの実施形態では、基材には、本開示のポリオキサゾリンコポリマーと反応し得る基を有するものが選択される。例えば、基材は、トリアルコキシシリルアルキル基から選択されるR13基との縮合反応を受けるシラノール基を有するガラス又はセラミック表面を有し得る。この反応の生成物が、ポリオキサゾリン及び基材間での−Si−O−Si−結合部を形成する。
様々な物品を、本発明のコーティング組成物により硬化的に処理して、物品上にバイオフィルム抵抗性コーティングを提供することができる。また、本発明はフィルムのようなコーティングされた物品を提供する。本開示において、物品は基材(例えば、フィルム)を含む物品であり、その基材は、本開示のコポリマーを含む層を配置された少なくとも1つの表面を含有する。
コーティングが塗布される基材は、最適な特性と耐久性を得るために塗布前には清浄であることが好ましい。金属並びにガラス表面は、有機汚染物で覆われていることが多い。このような表面に本発明のコーティングが塗布され得る前に、少なくとも溶媒で拭き取ることにより表面を洗浄すべきである。肉眼で見える(gross)汚染物質の場合、金属又はガラス表面は、エッチング、陽極酸化、又は当業者に既知の方法で処理しなければならない場合がある。例えば、鋼の表面がさびで覆われている場合、さびを酸処理によりエッチングしなければならない場合がある。金属の表面が露出すれば、コーティングを施すことができる。
バイオフィルムは、典型的には、基材が水に接触している又は多湿条件に曝露されている場合に成長する。本開示のコーティングは、特に循環水に曝露された場合、そのようなバイオフィルムの生成を遅延することができる。微生物は、コーティングされた表面に付着することができない又は最小限にしか付着することができないと考えられる。更に、実存するバイオフィルムは、コーティングされた表面からより容易に除去されると考えられる。したがって、硬化性組成物は、医療用カテーテルコーティング、抗生物付着船舶コーティング、水取扱設備用コーティング、熱交換器及び他のHVAC設備、濾材用コーティング、並びに歯科用設備、口腔で用い得る装置及び材料のような、湿潤又は多湿環境にある基材に特に好適である。
本開示の明示的な実施形態を下記に示す。
実施形態1は、以下の式
Figure 0006305429

[式中、
Qは、O又はNであり、
10は、H又はCHであり、
11は、加水分解性シリル基を含む有機基であり、
12は、H又はCHであり、及び
Pは、
Figure 0006305429

である
(式中、
は、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、
は、アルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及びR−Y−(CH−基から選択され、
は、パーフルオロアルキル基であり、
Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、
−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、
−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、
−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、
nは、2より大きい整数であり、
xは、少なくとも2の整数であり、並びに
yは、少なくとも1の整数である)]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されたコポリマーである。
実施形態2は、前記コポリマーがランダム又はブロックコポリマーである、実施形態1のコポリマーである。
実施形態3は、ブラシ状コポリマーである、実施形態1又は2のコポリマーである。
実施形態4は、重量平均分子量が少なくとも2,000g/molである、実施形態1〜3のいずれかの1つの実施形態のコポリマーである。
実施形態5は、R11が−Z−Si(R13である[式中、
13が、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及び加水分解性基から選択され、
少なくとも1つのR13が加水分解性基であり、及び
前記Zが、場合により鎖内に−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを含む、アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択される]、実施形態1〜4のいずれかのコポリマーである。
第6の実施形態は、前記加水分解性基が、ハロ、(C1〜C4)アルコキシ基、及び(C1〜C4)アシルオキシ基から選択される、第5の実施形態のコポリマーである。
実施形態7は、前記Zが、場合により−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを含む、(C1〜C20)アルキレン基、(C6〜C12)アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態5又は6のコポリマーである。
実施形態8は、前記Rが、H、メチル、及びエチルから選択される、実施形態1〜7のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態9は、前記Rが前記R−Y−(CH−基である、実施形態1〜8のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態10は、前記Yが−S(O)−N(CH)−、−C(O)−NH−、及び−(CHCHO)−の結合から選択される、実施形態1〜9のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態11は、前記Rがパーフルオロ(C1〜C8)アルキル基である、実施形態1〜10のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態12は、前記Rがパーフルオロ(C1〜C5)アルキル基である、実施形態11のコポリマーである。
実施形態13は、前記RがパーフルオロC4アルキル基である、実施形態12のコポリマーである。
実施形態14は、前記nが500以下の整数である、実施形態1〜13のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態15は、前記nが10より大きい整数である、実施形態14のコポリマーである。
実施形態16は、前記nが20から100の整数である、実施形態15のコポリマーである。
実施形態17は、前記xが20以下の整数である、実施形態1〜16のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態18は、前記xが2〜10の整数である、実施形態1〜17のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態19は、前記xが2から6の整数である、実施形態18のコポリマーである。
実施形態20は、前記yが20以下の整数である、実施形態1〜19のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態21は、前記yが1から5の整数である、実施形態20のコポリマーである。
実施形態22は、少なくとも1重量%のモノマーから誘導された、実施形態1〜21のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態23は、少なくとも5重量%のモノマーAから誘導された、実施形態22のコポリマーである。
実施形態24は、少なくとも10重量%のモノマーAから誘導された、実施形態23のコポリマーである。
実施形態25は、50重量%以下のモノマーAから誘導された、実施形態1〜24のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態26は、モノマーBが次式のものである
Figure 0006305429

[式中、
がH、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、
が、R−Y−(CH−であり、
が、(メタ)アクリルオイルオキシ基又は(メタ)アクリルオイルアミノ基であり、
が、パーフルオロアルキル基であり、
Yが、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、
−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、
−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、
nは10より大きい整数であり、
xは2から20の整数であり、並びに
yは、少なくとも1の整数である]、実施形態1〜25のいずれか1つのコポリマーである。
実施形態27は、式
Figure 0006305429

[式中、
Qは、O又はNであり、
10は、H又はCHであり、
11は、−Z−Si(R13であり
12は、H又はCHであり、
13は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及び加水分解性基から選択され、
少なくとも1つのR13は、加水分解性基であり、
Zは、場合により鎖内に−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを含む、アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択され、及び
Pは、
Figure 0006305429

である
(式中、
は、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、
は、R−Y−(CH−基であり、
は、パーフルオロ(C1〜C8)アルキル基であり、
Yは、−S(O)−N(CH)−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、又は
−(CHCHO)−であり、
nは、20〜100の整数であり、
xは2から20の整数であり、並びに
yは1から20の整数である)]で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるブラシ状コポリマーである。
実施形態28は、実施形態1〜27のいずれか1つのコポリマーと溶媒を含む組成物である。
実施形態29は、基材の少なくとも1つの表面に、実施形態28の組成物を塗布することを含む、前記基材のバイオフィルム抵抗性を向上するためのコーティング方法である。
実施形態30は、基材が、少なくとも1つの表面を含み、表面の上に配置された実施形態1〜27のいずれか1つのコポリマーを含む層を有する、物品である。
実施形態31は、前記基材がフィルムの形態である、実施形態30の物品である。
本開示の目的及び利点を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に引用された特定の物質及びその量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限すると解釈されるべきではない。
ポリマー合成の一般的な手順
ガラス器具は、使用前に150℃の乾燥機で一晩乾燥させた。試薬はFisher Scientific又はSigma Aldrichより購入した。アセトニトリルは無水等級のものを使用した。ヨウ化メチル、メチルトシレート、及びオキサゾリンモノマーはCaHで蒸留し、3Åのモレキュラー・シーブにて保存した。オキサゾリンの重合に使用する他の試薬は、使用するまで、3Åのモレキュラー・シーブにて保存した。溶媒は減圧下でロータリーエバポレーターを使用して除去した。
スキームI:ポリ(オキサゾリン)ポリマーの合成の一般的なスキーム(式中、「LG」は脱離基を、及びは基の結合部の位置を表している)
Figure 0006305429
調製例1:重合性ポリオキサゾリンの合成(モノマーB)
Figure 0006305429
冷却器及びストップコックを取り付けた三つ口フラスコを窒素で置換し、アセトニトリル(15mL)及びメチルp−トルエンスルホネート(0.73g、3.9mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却し、2−メチル−2−オキサゾリン(10.0g、117mmol)をシリンジにて添加した。2時間の間、ゆっくりと室温まで温めながら攪拌した後、この溶液を油浴にて80℃まで加温し、20時間攪拌した。室温まで冷却した後、アクリル酸(0.42g、5.9mmol)及びトリエチルアミン(0.79g、7.8mmol)をこの順にシリンジで添加した。この溶液を再び80℃まで加温し、更に24時間攪拌した。冷却後、溶液をろ過し、激しく攪拌しながら、200mLのジエチルエーテルを滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた懸濁液を2日間攪拌した。沈殿をろ過で分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下80℃で一晩乾燥し、11gの白い固体を得た。トリエチルアンモニウムトシレート不純物の存在を勘案すると、収率はほぼ定量どおりだった。H−NMR分光法を用いた末端部の分析では、n=30のポリマーが得られていた。
調製例2:重合性ポリオキサゾリンの合成(モノマーB)
Figure 0006305429
冷却器及びストップコックを取り付けた三つ口フラスコを窒素で置換し、アセトニトリル(15mL)及びメチルトリフルオロメタンスルホネート(0.165g、1.01mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却し、2−エチル−2−オキサゾリン(3.0g、30.2mmol)をシリンジにて添加した。2時間の間、ゆっくりと室温まで温めながら攪拌した後、この溶液を油浴にて80℃まで加温し、20時間攪拌した。室温まで冷却した後、アクリル酸(0.37g、5.1mmol)及びトリエチルアミン(0.6g、6.06mmol)をこの順にシリンジで添加した。この溶液を再び80℃まで加温し、更に24時間攪拌した。冷却後、溶液をろ過し、激しく攪拌しながら、200mLの冷ジエチルエーテルに滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた懸濁液を15分間攪拌した。沈殿をろ過で分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下80℃で一晩乾燥し、2.9gの白い固体を得た。H−NMR分光法を用いた末端部の分析では、n=30のポリマーが得られていた。
調製例3:重合性ポリオキサゾリンの合成(モノマーB)
Figure 0006305429
冷却器及びストップコックを取り付けた三つ口フラスコを窒素で置換し、アセトニトリル(30mL)及びメチルトリフルオロメタンスルホネート(0.39g、2.3mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却し、次に、2−メチル−2−オキサゾリン(6.0g、70.6mmol)をシリンジにて添加した。2時間の間、ゆっくりと室温まで温めながら攪拌した後、この溶液を油浴にて80℃まで加温し、20時間攪拌した。この溶液を0℃まで冷却し、20mlのNaCO飽和溶液を添加した。得られた混合物を油浴で80℃まで加温し、次に12時間攪拌した。溶媒を真空下で取り除き、ジクロロメタンを使用して溶質からポリマーを抽出した。余剰のジクロロメタンを真空下で除去して収量5.9gの白い固体を得た。H−NMR分光法を用いた末端部の分析では、n=30のポリマーが得られていた。
次のステップとして、冷却器及びストップコックを取り付け、内部を窒素で置換した三つ口フラスコ内で、5.0gのヒドロキシル末端のポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)ポリマーを50mlの無水アセトニトリルに溶解した。この溶液を0℃まで冷却し、塩化メタクリロイル(0.42g、4.0mmol)及びトリエチルアミン(0.5g、5.0mmol)をこの順でシリンジにて添加した。この溶液をゆっくりと室温まで温め、更に20時間攪拌した。最終のポリマーを、激しく攪拌しながら、200mLの冷ジエチルエーテルに滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた懸濁液を15分間攪拌した。沈殿をろ過で分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下80℃で一晩乾燥し、4.8gの白い固体を得た。
調製例4:R−LGの合成
Figure 0006305429
ストップコックを取り付けた丸底フラスコを窒素で置換し、次に無水ジクロロメタン(20ミリリットル(mL))、1,4−ジオキサン(20mL)、ピリジン(2.0グラム(g)、24.6ミリモル(mmol))及び1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキサノール(5.0g、18.9mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却して、激しく攪拌中の溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(7.0g、24.6mmol)をシリンジを使って滴下した。0℃で2時間攪拌した後、溶液をゆっくりと室温まで温め、その後更に10時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過して沈殿した塩を取り除いた。この溶液を1規定(N)HCl、飽和NaHCO液、10%硫化銅溶液、及び食塩水の順で、洗浄した。この有機相を、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で余剰の溶媒を取り除いた。得られた茶色のオイル状物質を減圧下で蒸留して、収量3.0gの無色の液体の生成物を得た。
調製例5:重合性ポリオキサゾリンの合成(モノマーB)
Figure 0006305429
冷却器及びストップコックを取り付けた三つ口フラスコを窒素で置換し、アセトニトリル(20mL)及び調製例4からのパーフルオロブチルエチレントリフレート(R−LG)反応開始剤(0.4g、1.0mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却し、2−メチル−2−オキサゾリン(2.6g、30mmol)をシリンジにて添加した。2時間の間、ゆっくりと室温まで温めながら攪拌した後、この溶液を油浴にて80℃まで加温し、20時間攪拌した。室温まで冷却した後、アクリル酸(0.36g、5.0mmol)及びトリエチルアミン(0.61g、6.0mmol)をこの順にシリンジで添加した。この溶液を再び80℃まで加温し、更に24時間攪拌した。冷却後、溶液をろ過し、激しく攪拌しながら、200mLのジエチルエーテルを滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた懸濁液を15分間攪拌した。沈殿をろ過で分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下80℃で一晩乾燥し、2.6gの白い固体を得た。H−NMR分光法を用いた末端部の分析では、n=30のポリマーが得られていた。
調製例6:R−LGの合成
Figure 0006305429
ストップコックを取り付けた丸底フラスコを窒素で置換し、無水ジクロロメタン(50mL)、1,4−ジオキサン(50mL)、ピリジン(3.6g、45.4mmol)及びN−メチル−1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロ−N−(2−ヒドロキシエチル)ブタン−1−スルホンアミド(12.5g、34.9mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却して、激しく攪拌中の溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(12.8g、45.4mmol)をシリンジを使って滴下した。0℃で2時間攪拌した後、溶液をゆっくりと室温まで温め、その後更に10時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過して沈殿した塩を取り除いた。この溶液を1N HCl、飽和NaHCO液、10%硫化銅溶液、及び食塩水の順番で洗浄した。この有機相を、無水NaSO上で乾燥し、真空下で余剰の溶媒を取り除いた。冷トルエンからの得られた固体の再結晶化で7.5gの白い固体の生成物が得られた。
調製例7:重合性ポリオキサゾリンの合成(モノマーB)
Figure 0006305429
冷却器及びストップコックを取り付けた三つ口フラスコを窒素で置換し、アセトニトリル(15mL)及び調製例6からのパーフルオロブチルスルホンアミドトリフレート(R−LG)反応開始剤(0.74g、1.5mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却し、2−メチル−2−オキサゾリン(3.9g、46mmol)をシリンジにて添加した。15分間の攪拌の後、この溶液を80℃まで温め、更に16時間攪拌した。室温まで冷却した後、アクリル酸(0.16g、2.3mmol)及びトリエチルアミン(0.31g、3.0mmol)をこの順にシリンジで添加した。この溶液を再び80℃まで加温し、更に4時間攪拌した。冷却後、アセトニトリルを窒素を流しながら蒸発させ、残部を50mLのクロロホルムに溶解した。この溶液をろ過して約20mLまで濃縮した。溶液を激しく攪拌しながら、200mLのジエチルエーテルを滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた懸濁液を冷凍庫に一晩入れた。沈殿をろ過で分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下80℃で一晩乾燥し、4.7gの白い固体を得た。トリエチルアンモニウムトリフレート不純物の存在を勘案すると、収率は96%であった。H−NMR分光法を用いた末端部の分析では、n=30のポリマーが得られていた。
調製例8:重合性ポリエチレングリコールの合成
Figure 0006305429
ストップコックを取り付けた丸底フラスコを窒素で置換し、次に無水ジクロロメタン(150mL)、トリエチルアミン(5.3g、52.7mmol)、及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn〜2000g/mol)(20.0g、10.5mmol)を導入した。この溶液を0℃まで冷却して、激しく攪拌中の溶液に塩化アクリロイル(4.8g、52.7mmol)をシリンジを使って滴下した。0℃で2時間攪拌した後、溶液をゆっくりと室温まで温め、その後更に10時間攪拌した。その後この溶液を食塩水(3×200ml)で洗浄した。この有機相を、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で余剰の溶媒を取り除いた。冷無水ジエチルエーテルからの、得られた固体の再結晶化で、17.5gの白い固体が得られた。
スキームII:ブラシ状コポリマーの一般的な合成
Figure 0006305429
比較例1:PEG−Siブラシ状コポリマーの合成
冷却器を取り付けたフラスコに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20g)、調製例8のアクリル酸末端のポリマー(2.0g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(20mg)、トルエン(5mL)、及びメタノール(5mL)を導入した。この溶液に窒素を10分間注入した。5分間放置後、更に5分間溶液に注入した。この溶液を16時間還流しつつ熱し、その後NMRで分析したところ、アクリレートは90〜95%消費されていることがわかった。この溶液を冷却し、更なる修飾をせずにコーティング実験に使用した。
実施例1:ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)−Siブラシ状コポリマーの合成
凝縮器を取り付けたフラスコに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20g)、調製例1のアクリル酸末端のポリマー(2.0g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(20mg)、及びメタノール(10mL)を導入した。この溶液に窒素を10分間注入した。5分間放置後、更に5分間溶液に注入した。この溶液を16時間還流しつつ熱し、その後NMRで分析したところ、アクリレートは90〜95%消費されていることがわかった。この溶液を冷却し、更なる修飾をせずにコーティング実験に使用した。
実施例2:ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)−Siブラシ状コポリマーの合成
凝縮器を取り付けたフラスコに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.10g)、調製例2のアクリル酸末端ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(1.0g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10mg)、及びメタノール(5mL)を導入した。この溶液に窒素を10分間注入した。5分間放置後、更に5分間溶液に注入した。この溶液を16時間還流しつつ熱し、その後NMRで分析したところ、アクリレートは90〜95%消費されていることがわかった。この溶液を冷却し、更なる修飾をせずにコーティング実験に使用した。
実施例3:C−ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)−Siブラシ状コポリマーの合成
冷却器を取り付けたフラスコに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20g)、調製例5のアクリル酸末端C−ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)(2.0g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(20mg)及びメタノール(10mL)を導入した。この溶液に窒素を10分間注入した。5分間放置後、更に5分間溶液に注入した。この溶液を16時間還流しつつ熱し、その後NMRで分析したところ、アクリレートは90〜95%消費されていることがわかった。この溶液を冷却し、更なる修飾をせずにコーティング実験に使用した。
実施例4:C−SO−NCH−ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)−Siブラシ状コポリマーの合成
冷却器を取り付けたフラスコに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(86mg)、調製例7のアクリル酸末端ポリマー(857mg)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(9mg)及びメタノール(3mL)を導入した。この溶液に窒素を10分間注入した。5分間放置後、更に5分間溶液に注入した。この溶液を16時間還流しつつ熱し、その後NMRで分析したところ、アクリレートは90〜95%消費されていることがわかった。この溶液を冷却し、更なる修飾をせずにコーティング実験に使用した。
実施例5:ブラシ状コポリマーコーティングの調製と特性評価
以上の実施例のポリマーを20重量%になるようにメタノールで希釈した。これらは、PETフィルム上に第22番のワイヤー巻きロッド(BYK instruments)で2ミルの厚みで塗布するか、又はピラナ溶液(7:3の体積比率の濃硫酸及び過酸化水素の混合溶液)で洗浄された直後のガラス基板に直接塗布した。これらのコーティングフィルムは、80℃で一晩硬化させ、接触角分析を実施した。
実施例6:コーティングの接触角分析
動的接触角分析並びに透過率及びヘイズの測定によりコーティングの特性評価をした。動的接触角測定は、DSA 100ビデオ接触角ゴニオメーター(Kruss Inc.)に、先端がフラットな形状のニードルを備えるハミルトンシリンジを取り付けて実施した。脱イオン水及びn−ヘキサデカンを試験液体として用いた。前進接触角及び後退接触角については、シリンジを介して接触している液滴から水を出し入れして測定した(液滴の体積は約5マイクロリットル(μL)である)。報告されている値は、それぞれの試料の3箇所の異なる場所での接触角を測定した6回(それぞれの液滴の左右の角度を測定)の平均値である。報告されている誤差は1σ(標準偏差)である。
結果を以下の表1にまとめる。
極性反応開始剤(メチルトリフレート又はメチルトシレート)を用い反応を開始したポリ(オキサゾリン)で作製されたコーティングは、全て、水(<50°)に対してもヘキサデカンに対しても低い接触角(<5°)を有し、高親水性表面を示していた(表1の比較例1、並びに実施例2及び3)。これらのなかで、ポリ(メチル−オキサゾリン)系コーティング(実施例1)が最も高い親水性を示し、PEG系コーティング(比較例1)の親水性は最も低かった。疎水性、フッ素含有POxポリマー(実施例3及び4)を含むコーティングは両親媒性であった。両コーティング(表1の実施例3及び4)とも水に対して小さい接触角を有し、ヘキサデカンに対して大きい接触角を有していた。
調製したコーティングの接触角のデータを表1にまとめた。データによると、実施例1は実施例2よりも親水性の表面をもたらす。実施例3及び4のようにフッ素化された側鎖が含まれる場合には、より疎水的な表面を得ることができる。実施例3及び4を互いに比較した場合、実施例4は水、ヘキサデカンのいずれに対しても大きい接触角を示し、より疎水的であることを示している。
Figure 0006305429
表1において、「w」及び「z」はモノマーの相対量であり、出発物質の量から算出できる。これらの代表例は、コポリマーをブロックコポリマーに限定すると解釈してはならない。むしろ、ランダム、ブロック、又はその他に関わらず、コポリマー中のモノマー部分の代表例を示しているに過ぎない。
実施例7:生物学的評価:CDCバイオフィルムリアクター内での、表皮ブドウ球菌及び大腸菌によるバイオフィルム生成に対するコーティングの抵抗能
CDCバイオフィルムリアクター(Biosurface Technologies,Bozeman,MT)及び以下に記述する手法を用い、高剪断環境下での表皮ブドウ球菌及び大腸菌によるバイオフィルム生成に対する試料の抵抗能を評価した。生物学的評価に関しては、表1のブラシ状コポリマー1〜5を(1)直接ガラス片に塗布するか、(2)実施例5のようにPETフィルムに塗布するかで行った。
ガラス片に直接塗布されたコーティングについては、3個の再現テスト試料をCDCリアクター試料片ホルダーに載せ、CDCリアクターに設置した。試料材料から染み出して生物学的特性評価に影響を与える可能性がある残留成分を除去するために、18から24時間にわたって、流量約8mL/分、130RPMの攪拌速度で、リアクターに脱イオン水を流し、試料を洗浄した。洗浄後、リアクターから試料片ホルダーを取りだし、空のリアクターを121℃で15分間オートクレーブしたのち、冷ました。次に、サンプル材料を取り付けた試料片ホルダーをイソプロピルアルコールに浸して滅菌し、滅菌済みのCDCリアクター内に配置した。リアクターに約400mLの滅菌希釈Bactoトリプシン大豆ブロス(TSB、Becton、Dickinson and Co.(Sparks、Maryland、MD))を入れた。これらの実験では、10%TSB(3gTSB/リットル)を使用した。リアクターに、攪拌しながらTSB中で37℃で増殖させた表皮ブドウ球菌(ATCC# 35984)又は大腸菌(ATCC# 25922)の一晩培養物0.4mLを接種し、攪拌速度を130RPMに設定して、この系で細菌を増殖及び付着させるためのバッチ培養として、この系を37℃で24時間インキュベートした。24時間後、滅菌10%TSBを約11.5mL/分の速度で更に24時間リアクターに通し(130RPMの撹拌と37℃でのインキュベーションを継続)、バイオフィルムの成長を促進した。
バイオフィルム形成を分析するために、試料片ホルダー、試料、及び付着バイオフィルムをリアクターから取りだし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に5回浸漬して洗浄し、1%クリスタル・バイオレット水溶液で1分間染色した。試料片ホルダーと試料をPBSに30回漬けて洗浄して、余剰のクリスタル・バイオレットを取り除いた。それぞれの試料片をロッドから取り外し、4mLのエタノールの入った15mLのコニカルチューブ(BD Biosciences,Bedford,MA)に入れた。約10秒間ボルテックスし、クリスタル・バイオレットを溶出させ、エタノール溶液の590nmでの吸光度を分光光度計(model LAMBDA 12,Perkin−Elmer Corporation,Waltham,MA)で測定して、試料片に付着したバイオフィルムの量を算出した。それぞれの材料について、3試料を評価した。表2に提示された値は以下のように定義されている。
Figure 0006305429

式中、A590試料=3試料のA590の値の平均
及びA590参照試料=コーティングされていないガラス表面の3試料のA590の値の平均
Figure 0006305429

式中、σ試料=3試料のA590の値の1σ(標準偏差)
及びσ試料=コーティングされていないガラス表面の3試料のA590の値の1σ(標準偏差)
PETフィルムにコーティングされた試料の評価の手順は上記に示したものと同様であるが、以下の点を変更した。3つの試料片の代わりに、コーティングされたフィルムをそれぞれ5.4cm×1.9cm(2 1/8インチ×3/4インチ)の大きさに切り出し、8つの空の(試料片孔無し)のホルダーに取り付けた。取り付けにはシリコーン接着剤を使用して、一晩硬化させた後、すすぎ洗いした。評価の際、上記のように試料をクリスタル・バイオレットで染色した後、ピンセットを使ってホルダーから取り外し、10mLのエタノールが入った15mLのコニカルチューブに入れた。表3のA590の比の値は、上記のように算出された。しかし、コーティングされたフィルム試料の場合には、それぞれに1つの試料と対照材料を、2つの別個の実験で評価した。
結果:
ガラス片に直接塗布されたコーティング
上記で定義されたA590比の値は表2にまとめた。A590の比の値が1より小さい場合は、ガラスの対照表面と比較して、バイオフィルムが試料表面に付着した量が少ないことを示す。
Figure 0006305429
PETフィルムに塗布されたコーティング−親水性対両親媒性ポリマーコーティング
上記で定義されたA590比の値は表3にまとめた。A590の比の値が1より小さい場合は、下塗りPET(ポリエチレンテレフタレート)対照表面と比較して、試料表面上のバイオフィルムが少ないことを示す。
Figure 0006305429
微生物単一種によってバイオフィルムが形成可能であるが、多くの場合、数種の異なる微生物のコミュニティから成り立っている。異なる微生物は異なるメカニズムで基材に付着するため、材料のバイオフィルム生成耐性に関する能力を評価する際には、微生物の種において代表的なものを採用することは重要である。これらのバイオフィルム研究において、表皮ブドウ球菌及び大腸菌はそれぞれグラム陽性及びグラム陰性細菌の代表として選択した。
表2に非フッ素化又は親水性表面の比較データをまとめた。試験した表面のうち、実施例1が、どちらの種に対しても最も低いバイオフィルム生成を示した。
表3に、バイオフィルム形成データについての実施例1(純粋に親水性コーティング)と実施例3及び4(両親媒性コーティング)の比較をまとめた。実施例1は、表皮ブドウ球菌に対してはバイオフィルム生成が小さいものの、大腸菌に対しては十分な性能は発揮しなかった。しかし、同じポリマーにフッ素化側鎖が導入された実施例4では、表皮ブドウ球菌及び大腸菌のいずれについてもバイオフィルム形成が小さいことが観察される。この比較により、異なる種に対してバイオフィルム形成を防止することを可能にするには、両親媒性のバランスが好ましいことが示される。これは更に実施例3と4都の比較によって支持される。いずれの試料も類似の組成を持つにも関わらず、実施例4はスルホンアミド基のおかげでより疎水性の表面をもたらし(表1の接触角の分析からから観察される通り)、システムをよりバイオフィルム耐性なものにするのに必要な両媒性を提供する。
本明細書に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容は、あたかもそれぞれが個々に組み込まれたのと同様に、それら全体が参照により組み込まれる。本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく本開示に対する様々な改変及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本開示は本明細書に記載される説明的実施形態及び実施例によって不要に限定されるものではない点、更にこうした実施例及び実施形態はあくまで一例として示されるものであって本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである点は理解されるはずである。

Claims (5)


  1. Figure 0006305429

    [式中、
    Qは、O又はNであり、
    10は、H又はCHであり、
    11は、加水分解性シリル基を含む有機基であり、
    12は、H又はCHであり
    Pは、
    Figure 0006305429

    である
    (式中、
    は、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、
    は、アルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及びR−Y−(CH−基から選択され、
    は、パーフルオロアルキル基であり、
    Yは、−S(O)−N(CH)−、−S(O)−N(CHCH)−、−S(O)−O−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)−S−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、−C(O)−N(CH)−、−C(O)−N(CHCH)−、−(CHCHO)−、−O−、及び、−O−C(O)−CH=CH−C(O)−O−の結合から選択され、
    nは、2より大きい整数であり、
    xは、少なくとも2の整数であり、並びに
    yは、少なくとも1の整数である
    で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されたコポリマー。

  2. Figure 0006305429

    [式中、
    Qは、O又はNであり、
    10は、H又はCHであり、
    11は、−Z−Si(R13であり、
    12は、H又はCHであり、
    13は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、それらの組み合わせ、及び加水分解性基から選択され、
    少なくとも1つのR13は加水分解性基であり、
    Zは、場合により鎖内に−O−、−C(O)−、−NH−、−S−、又はそれらの組み合わせを含む、アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせから選択され、
    Pは、
    Figure 0006305429

    である
    (式中、
    は、H、アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせから選択され、
    は、R−Y−(CH−基であり、
    は、パーフルオロ(C1〜C8)アルキル基であり、
    Yは、−S(O)−N(CH)−、−C(O)−O−、−C(O)−NH−、又は−(CHCHO)−の結合であり、
    nは、20〜100の整数であり、
    xは、2〜20の整数であり、及び
    yは、1〜20の整数である
    で表されるモノマーを含むモノマー混合物から誘導されるブラシ状コポリマー。
  3. 請求項1に記載のコポリマーと溶媒を含む組成物。
  4. 基材の少なくとも1つの表面に、請求項に記載の組成物を塗布することを含む、前記基材のバイオフィルム防止性を向上するための基材のコーティング方法。
  5. 基材を含む物品であって、
    前記基材が、少なくとも1つの表面を含み、前記表面の上に配置された請求項1に記載のコポリマーを含む層を有する、物品。
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