JP5897409B2 - 薄膜形成方法及び切削工具の製造方法 - Google Patents

薄膜形成方法及び切削工具の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとする薄膜の形成方法、及び、ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして形成されたコーティング膜を持つ切削工具の製造方法に関する。
金属を塑性変形し且つせん断する加工、つまり、切削加工にとって工具の性能は極めて重要な要素であり、例えば工具材料の性能向上は切削加工の進歩に大きく貢献する。一方、切削加工における摩擦、切削熱及び構成刃先の溶着等は工具の機能性を低下させてしまう。そのため、切削加工に使用されている工具鋼に、例えば窒化チタン(TiN)膜又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質で且つ耐摩耗性、耐溶着性、耐反応性に優れた薄膜をコーティングして切削性を向上させている場合がある。
ところが、切削時の工具鋼に大きなせん断力や熱応力等が加わると、皮膜表面の割れ、界面の疲労損傷及びはく離等が生じて工具寿命が著しく短くなってしまう。
それに対して、硬質皮膜と工具鋼との間に傾斜膜や中間膜等を設けることにより、言い換えると、工具鋼に対して多層コーティングを実施することにより、はく離強度を向上させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2012−61555号公報
しかしながら、前述のような多層コーティングを実施すると、製造コストが増大するのみならず、成膜時間が長くなってスループットの低下が避けられなくなる。
前記に鑑み、本発明は、例えば工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行えるようにすることを目的とする。
本願発明者らによるこれまでの研究において、溶体化処理を施した高速度鋼の表面に対して、例えばアルゴンイオンを含むプラズマによる処理(具体的にはスパッタエッチング)を行うと、高速度鋼表面に微細な炭化物が析出すると同時に、該炭化物が素地である高速度鋼と共にスパッタリングされることによって、高さ数μm程度の円錐状突起物が形成されることを発見している。また、アルゴンイオンに加えて、アルゴンイオンよりもスパッタリング率が小さいイオン、例えば水素イオンを含むプラズマによる処理(具体的にはスパッタエッチング)を行うことにより、ナノマイクロワイヤ突起物が形成されることも発見している。ここで、ナノマイクロワイヤ突起物とは、10μm程度以下の直径(小さいものは1μmを下回るナノオーダーの直径)及び2程度以上のアスペクト比(高さ/直径)を持つ円柱状突起物を意味する。
本願発明者らは、これらの円錐状突起物やナノマイクロワイヤ突起物を形成した基材表面にコーティングを行った場合、これらの突起物がコーティング材のアンカーとして機能すると共にこれらの突起物を含む基材とコーティング材との接触面積が増大するので、コーティング材のはく離強度を改善できるのではないかと考えた。
しかしながら、実際に、円錐状突起物やナノマイクロワイヤ突起物を形成した基材表面にコーティングを行い、コーティング材のはく離強度を評価したところ、十分な結果が得られなかった。
そこで、本願発明者らは、さらなる検討を積み重ねた結果、プラズマ処理によりナノマイクロワイヤ突起物を形成した後に熱処理を実施することによって、ナノマイクロワイヤ突起物を成長強化させることができることを見出した。すなわち、このように形成されたナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとしてコーティングを行うことによって、コーティング材のはく離強度を大きく改善することができた。
例えば工具鋼等の基材の表面にプラズマ処理によってナノマイクロワイヤ突起物を形成した後、熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物を強化し、その後、該ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして基材表面にコーティング材を形成することにより、従来の多層コーティングを行うことなく、コーティング材のはく離強度を改善することができた。これにより、工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行えるようになった。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであって、本発明に係る薄膜形成方法は、基材表面に対して水又は水素が添加された不活性ガス雰囲気中でスパッタエッチングによるプラズマ処理を行うことにより、前記基材表面上に垂直側壁面をもつナノマイクロワイヤ突起物を形成する工程と、前記基材に対して前記プラズマ処理の温度よりも高い温度で熱処理を行う工程と、前記ナノマイクロワイヤ突起物が形成された前記基材表面上に薄膜を形成する工程とを備えている。
本発明に係る薄膜形成方法によると、基材表面上にプラズマ処理によりナノマイクロワイヤ突起物を形成した後に、熱処理によって、ナノマイクロワイヤ突起物を成長強化している。このため、成長強化後のナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとしてコーティングを行うことによって、従来の多層コーティングを行うことなく、コーティング材のはく離強度を大きく改善することができる。従って、工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行うことができる。
尚、ナノマイクロワイヤ突起物が形成される基材の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、高速度鋼(SKH51)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)、Cr−Mo鋼(SCM435)、合金工具鋼(SKD5)等のクロム含有鋼材であれば、クロム炭化物からなるナノマイクロワイヤ突起物を形成可能である。また、鋼材の種類によっては、タングステン炭化物からなるナノマイクロワイヤ突起物を形成することも可能である。尚、炭素については、基材中に初めから含まれていてもよいし、或いは、基材に対して浸炭処理を行って炭素を含有させてもよい。
本発明に係る薄膜形成方法において、前記プラズマ処理を、水又は水素が添加された不活性ガス雰囲気中で行うことによって、基材表面上にナノマイクロワイヤ突起物を確実に形成することができる。
本発明に係る薄膜形成方法において、前記プラズマ処理で、前記基材表面に対するスパッタエッチング及び加熱を行ってもよい。このようにすると、基材表面上にナノマイクロワイヤ突起物を確実に形成することができる。
本発明に係る薄膜形成方法において、前記熱処理の温度は、前記プラズマ処理の温度よりも高くすることによって、熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物を確実に成長強化することができる。ここで、ナノマイクロワイヤ突起物が例えばクロム炭化物から構成されている場合、ナノマイクロワイヤ突起物の溶融を避けるためには、熱処理温度を900℃程度以下に設定することが好ましい。
本発明に係る薄膜形成方法によると、熱処理によって強化したナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして基材表面上に薄膜を形成するため、該薄膜のはく離強度を改善することができる。従って、該薄膜をコーティング膜として形成すれば、従来の多層コーティングを行うことなく、例えば工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行うことができる。ここで、薄膜が例えばSiC(炭化シリコン)から構成されている場合、薄膜のはく離強度の低下を避けるためには、薄膜の厚さは3μm程度以下であることが好ましく、1μm程度以下があることがより好ましい。
本発明に係る薄膜形成方法において、前記薄膜をスパッタ成膜してもよい。このようにすると、薄膜の品質を向上させることができる。
本発明に係る切削工具の製造方法は、工具基材表面に対して、水又は水素が添加された不活性ガス雰囲気中でスパッタエッチングによるプラズマ処理を行うことにより、前記工具基材表面上に垂直側壁面をもつナノマイクロワイヤ突起物を形成する工程と前記工具基材に対して、前記プラズマ処理の温度よりも高い温度で熱処理を行う工程と、前記ナノマイクロワイヤ突起物が形成された前記工具基材表面上にコーティング膜を形成する工程とを有する。
本発明に係る切削工具の製造方法によると、熱処理によって強化したナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして形成されたコーティング膜を持つため、該コーティング膜のはく離強度が増大する。このため、切削工具に大きなせん断力や熱応力等が加わっても、皮膜表面の割れ、界面の疲労損傷又ははく離等を防止することができるので、工具寿命を長くすることができる。
本発明に係る切削工具の製造方法において、前記コーティング膜は、SiC膜、TiN膜又はDLC膜であってもよい。このようにすると、硬質で且つ耐摩耗性、耐溶着性、耐反応性に優れたコーティング膜によって、切削工具の切削性を向上させることができる。
本発明によると、例えば工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行うことが可能となる。
図1は、実施形態に係る薄膜形成方法(実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法を含む)のフロー図である。 図2(a)〜(c)は、実施形態に係る薄膜形成方法の各工程を示す断面図である。 図3(a)〜(c)は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法におけるナノマイクロワイヤ突起物の形成過程を模式的に示す図である。 図4(a)は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法に用いたプラズマ処理装置の概略構成を示す図であり、図4(b)は、図4(a)に示すプラズマ処理装置における基材ホルダー周辺の拡大図である。 図5(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法におけるナノマイクロワイヤ突起物の形成前及び形成後の基材に対してX線回折により相同定を行った結果を示す図である。 図6は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施前の基材表面のSEM写真である。 図7は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施後の基材表面のSEM写真である。 図8は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施前後のナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の分布を示す図である。 図9は、実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施前後のナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の平均値及び標準偏差をアスペクト比の平均値と共に示す図である。 図10は、比較例に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施前の基材表面のSEM写真である。 図11は、比較例に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法における熱処理実施後の基材表面のSEM写真である。 図12は、実施形態に係る薄膜形成方法により形成された薄膜の「はく離割合」を、比較例に係る薄膜形成方法により形成された薄膜の「はく離割合」と比較して示す図である。 図13は、第1比較例において円錐状突起物が形成された基材表面のSEM写真である。 図14(a)は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径の分布を示す図であり、図14(b)は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径の平均値、最小値及び最大値を密度及びアスペクト比の平均値と共に示す図である。 図15は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径の確率分布を高さ及び半径の標準偏差と共に示す図である。 図16(a)及び(b)は、第1比較例において形成された薄膜がせん断力を受けてはく離する様子を模式的に示す図である。 図17は、第2比較例においてナノマイクロワイヤ突起物が形成された基材表面(薄膜形成前)のSEM写真である。 図18は、第2比較例においてナノマイクロワイヤ突起物形成後に薄膜が形成された基材表面のSEM写真である。 図19は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の分布をアスペクト比の平均値と共に示す図である。 図20は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の高さの確率分布を平均値と共に示す図である。 図21は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の直径の確率分布を平均値と共に示す図である。 図22(a)及び(b)は、第2比較例において形成された薄膜がせん断力を受けてはく離する様子を模式的に示す図である。
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法、該方法により形成されたナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとする薄膜の形成方法、及び、該方法により形成された薄膜をコーティング膜とする切削工具について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る薄膜形成方法(本実施形態に係るナノマイクロワイヤ突起物の形成方法を含む:以下同じ)のフロー図である。また、図2(a)〜(c)は、本実施形態に係る薄膜形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、ステップS1において、図2(a)に示すように、基材1の表面に対してプラズマ処理を行うことにより、基材1の表面上にナノマイクロワイヤ突起物2を形成する。ステップS1のプラズマ処理は、例えば水又は水素が添加されたアルゴンガス雰囲気中でのプラズマ処理であってもよい。これにより、基材1の表面に対して、アルゴンイオンによるスパッタリングが生じると共に、アルゴンイオンよりもスパッタリング率の小さい水素イオンによって、アルゴンイオンによる過度のスパッタリングが防止される結果、後述するように、ナノマイクロワイヤ突起物2が形成される。また、ステップS1において、基材1の表面上に円錐状突起物3が形成されてもよい。
次に、ステップS2において、図2(b)に示すように、基材1に対して熱処理を行うことにより、ナノマイクロワイヤ突起物2を成長させる。ここで、ステップS2の熱処理の温度を、例えば、ステップS1のプラズマ処理の温度(例えば700K〜800K程度)よりも高い温度(例えば800K〜900K程度)に設定すると、ナノマイクロワイヤ突起物2を確実に成長強化することができる。
次に、ステップS3において、図2(c)に示すように、ナノマイクロワイヤ突起物2が形成された基材1の表面上に薄膜4を形成する。薄膜4の形成には、例えばスパッタ法を用いてもよい。これにより、薄膜4の品質を向上させることができる。ここで、基材1が、例えば工具鋼等の工具基材であり、薄膜4が、例えばSiC膜、TiN膜又はDLC膜等のコーティング膜であれば、従来の多層コーティングが施された切削工具と比べて、低コスト、高スループットでコーティングが施された切削工具を得ることができる。
図3(a)〜(c)は、本実施形態のナノマイクロワイヤ突起物2の形成過程を模式的に示す図である。
まず、図3(a)に示すように、水又は水素が添加されたアルゴンガス雰囲気中においてArイオン(Ar+ )及びHイオン(H+ )によるプラズマ放電が生じると、Ar+ によるスパッタリング(スパッタエッチング)によって基材1の表面(スパッタリング面)の温度が上昇し、その結果、固溶炭素が、素地である基材構成材料と結合して、基材1の表面近傍に微細炭化物(図示省略)が析出されてくる。一方、Ar+ よりもスパッタリング率が小さいH+ の存在によって、基材1及び微細炭化物のスパッタ量は小さくなる。すなわち、H+ の主要な作用は基材1の表面の加熱であると考えられる。
ここで、基材1のスパッタリング面の反対面(基材ホルダー側の面)が例えば冷却水によって冷やされていると、基材1内部に温度勾配が生じる。このように、基材1のスパッタリング面の温度が上昇すると共に基材1内部に温度勾配が生じることによって、基材1内部に溶け込んでいる炭素がスパッタリング面に供給されてくる。
従って、プラズマ放電時間の増加に伴い、基材1の表面近傍に析出した微細炭化物が成長する結果、図3(b)に示すように、ナノマイクロワイヤ突起物2及び円錐状突起物3が形成される。
さらに、プラズマ放電時間が増加すると、図3(c)に示すように、ナノマイクロワイヤ突起物2が成長する一方、Ar+ のエッチング作用などによってナノマイクロワイヤ突起物2が折れてしまう場合もある。但し、ナノマイクロワイヤ突起物2が折れたとしても、再度、図3(a)〜(c)に示す過程によってナノマイクロワイヤ突起物2の成長が生じると考えられる。そのため、ナノマイクロワイヤ突起物2には、高さのばらつきは大きく、直径のばらつきは小さいという特徴がある。
図4(a)は、本実施形態のナノマイクロワイヤ突起物形成に用いたプラズマ処理装置の一例(具体的には最大出力800Wの高周波マグネトロンスパッタ装置)の概略構成を示す図であり、図4(b)は、図4(a)に示すプラズマ処理装置における基材ホルダー周辺の拡大図である。
図4(a)に示すように、プラズマ処理装置10は、真空チャンバー11と、真空チャンバー11内に支持部材13を介して配置された基材ホルダー12と、基材ホルダー12に冷却水を供給する冷却機構14と、基材ホルダー12と真空チャンバー11との間に高周波電力を印加するマッチングボックス15及び高周波(RF)電源16と、真空チャンバー11内にArガスを供給するArガス供給機構17と、真空チャンバー11内にH2 ガスを供給するH2 ガス供給機構18と、真空チャンバー11内の排気を行う真空ポンプ19とを備えている。ここで、H2 ガス供給機構18に代えて、水蒸気供給機構を設けてもよい。
図4(a)に示すプラズマ処理装置10においては、図4(b)に示すように、冷却機構14によって基材ホルダー12を冷却することができるため、基材ホルダー12上に載置された基材20のホルダー側の面を冷却することができる。これにより、基材20内部に温度勾配を生じさせて、基材20内部に溶け込んでいる炭素をスパッタリング面に供給することができる。
図4(a)に示すプラズマ処理装置10を用いたナノマイクロワイヤ突起物の具体的な形成方法は、例えば以下の通りである。まず、真空ポンプ19を用いて真空チャンバー11内の排気を行い、真空チャンバー11内の真空度を2.0×10-2Pa〜3.0×10-2Pa程度に設定する。続いて、Arガス供給機構17を用いてArガス(純度99.999%)を流量約5.7cm3 /分(標準状態)で真空チャンバー11内に導入しながら真空ポンプ19により排気速度を制御して真空チャンバー11内の圧力を5.0Pa程度に保持する。そして、H2 ガス供給機構18を用いてH2 ガスを流量2.1cm3 /分(標準状態)〜3.0cm3 /分(標準状態)程度で真空チャンバー11内に導入すると共に、高周波電源16の出力を300W〜500Wに設定して0.6×103 秒〜5.4×103 秒程度プラズマ放電を行うことによって、ナノマイクロワイヤ突起物が形成される。
図5(a)及び(b)はそれぞれ、ナノマイクロワイヤ突起物の形成前及び形成後の基材に対してX線回折により相同定を行った結果を示している。尚、図5(a)及び(b)に示す結果は、基材として、固溶化熱処理を施した高速度鋼(SKH51)を用いて得られたものである。尚、高速度鋼(SKH51)からなる基材の寸法は、縦1.4mm、横1.4mm、高さ6mmであり、高速度鋼(SKH51)の化学組成は、炭素が0.8質量%〜0.88質量%、シリコンが0.45質量%未満、マンガンが0.40質量%未満、リンが0.030質量%未満、クロムが3.8質量%〜4.5質量%、モリブデンが5.9質量%〜6.7質量%、タングステンが1.7質量%〜2.1質量%で、残りが鉄である。また、固溶化熱処理は、高周波加熱装置を用いてアルゴンガス雰囲気中で以下のように実施した。まず、室温から973Kまでは昇温速度500K/分で、973Kから1273Kまでは昇温速度300K/分で、1273Kから1323Kまでは昇温速度100K/分で昇温した後、1323Kで5.4×103 秒保持し、その後、水冷を行った。さらに、固溶化熱処理後の基材のスパッタリング面をエメリーペーパーで研磨した後、バフ研磨を粒度0.01μmまで行ってスパッタリング面を鏡面に仕上げ、その後、アセトン中で超音波洗浄を行った。
図5(a)に示すように、ナノマイクロワイヤ突起物の形成前においては、回折角が43°、63°、82°、97°、117°にそれぞれ鉄(Fe)に相当するピークを確認できる。一方、図5(b)に示すように、ナノマイクロワイヤ突起物の形成後においては、回折角が39°でCr3 2 に相当するピークを、回折角が114°でCrC に相当するピークを確認できる。以上の結果から、基材として高速度鋼(SKH51)を用いた場合には、ナノマイクロワイヤ突起物がCr炭化物から構成されていると考えられる。
ところで、ナノマイクロワイヤ突起物は成長する際に炭素を必要とする。そのため、ナノマイクロ突起物の近傍では炭素濃度が低くなる結果、ナノマイクロワイヤ突起物底部の強度が低くなる恐れがある。
そこで、前述のように、本実施形態では、ナノマイクロワイヤ突起物の形成後に適切な熱処理を施すことにより、基材内の炭素原子を拡散させてナノマイクロワイヤ突起物底部の強度を向上させている。具体的には、前述のステップS2の熱処理を、アルゴン雰囲気中で873K(昇温温度20K/分、保持時間1.5時間)で実施することによって、ナノマイクロワイヤ突起物を成長強化することができた。
図6及び図7はそれぞれ、この873Kでの熱処理の実施前及び実施後の基材表面のSEM(走査電子顕微鏡)写真である。尚、図6及び図7に示すSEM写真は、図5(a)及び(b)で説明した基材を用いて得られたものである。
図6及び図7に示すように、熱処理の実施後においては、熱処理の実施前と比べて、基材表面にナノマイクロワイヤ突起物を含む微細突起物が多数形成されていることが確認できる。また、ナノマイクロワイヤ突起物の直径方向への成長に起因する凹凸がナノマイクロワイヤ突起物表面に確認できることから、熱処理によって基材内で炭素原子が拡散していることが確認できる。すなわち、873Kでの熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物を成長強化することができることが確認できる。
図8は、873Kでの熱処理の前後それぞれにおけるナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の分布を示しており、図9は、873Kでの熱処理の前後それぞれにおけるナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の平均値及び標準偏差をアスペクト比(高さ/直径)の平均値と共に示している。
図8及び図9に示すように、873Kでの熱処理によって、ナノマイクロワイヤ突起物は高さ方向に17%程度、直径方向に12%程度成長している。特に、熱処理によって直径が大きくなっているため、ナノマイクロワイヤ突起物に負荷が加わったときの応力が減少するので、ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして形成される薄膜のはく離強度を増大させることが可能となる。
図10及び図11はそれぞれ、比較例として、973Kでの熱処理(アルゴン雰囲気、昇温温度20K/分、保持時間1.5時間)の実施前及び実施後の基材表面のSEM写真である。尚、図10及び図11に示すSEM写真は、図5(a)及び(b)で説明した基材を用いて得られたものである。
図10及び図11に示すように、熱処理の実施後においては、熱処理の実施前と比べて、基材表面の粗さが増加している。また、ナノマイクロワイヤ突起物が成長して他のナノマイクロワイヤ突起物と合体している様子も観察できる。このような基材表面の変化は、基材表面の再結晶によってナノマイクロワイヤ突起物が回転して他のナノマイクロワイヤ突起物と互いに接触していることや、相互拡散に起因するナノマイクロワイヤ突起物の形状変化が原因と考えられる。すなわち、基材として高速度鋼(SKH51)を用いてCr炭化物からなるナノマイクロワイヤ突起物を形成する場合、熱処理温度973Kは高すぎると考えられる。
以下、本実施形態のステップS3における薄膜4の形成及び該薄膜4のはく離強度評価について詳述する。
本実施形態では、ステップS1のプラズマ処理及びステップS2の熱処理が施された基材1、つまり成長強化したナノマイクロワイヤ突起物2が形成された基材1の表面上に、例えばヘリコンスパッタ装置を用いて、SiCからなる薄膜4を形成した。具体的には、ヘリコンスパッタ装置のチャンバー内の真空度が5×10-4Pa程度になるまで排気を行った後、チャンバー内にArガス(純度99.9%)を流量18cm3 /分で導入しながら、カソード及びコイルに所定の高周波電力を加えてSiCターゲットに対して32.4×103 秒間スパッタリングを行うことにより、基材1の表面上に厚さ1μm程度の薄膜4を形成した。ここで、薄膜4の厚さを均一にするために、基材1を5rpmで回転させた。このように形成された薄膜4におけるはく離の有無をSEM画像で確認したところ、基材1の全面に亘ってはく離は見られなかった。
一方、比較例として、ステップS1のプラズマ処理のみが施された(言い換えると、ステップS2の熱処理が施されなかった)基材1上には薄膜を成膜することができなかった。また、ステップS2の熱処理を行った場合でも、SiCからなる薄膜4の厚さが3μm程度よりも大きくなると、はく離が生じた。
尚、薄膜4の成膜にヘリコンスパッタ装置を用いる場合、ステップS2の熱処理を、ヘリコンスパッタ装置に設けられている加熱ランプによって実施してもよい。また、ステップS1のプラズマ処理からステップS3の薄膜形成までを大気開放せずに行うことが好ましいが、仮にステップS1のプラズマ処理の後に大気開放に起因して基材1の表面に不純物が付着したとしても、前述の加熱ランプによって基材1を加熱することによって、不純物を除去することができる。
本実施形態では、以上のように形成された薄膜4に対して、ビッカース硬さ試験機 を用いた圧子押し込み法により、はく離強度の定性的な評価を行った。具体的には、SiCからなる薄膜4を成膜した基材1にビッカース圧子を9.8Nの荷重で10秒間押し込んだ後、該荷重を除荷し、その後、光学顕微鏡を用いて圧痕を観察し、圧痕近傍の薄膜4のはく離の有無を確認した。本実施形態では、60個程度の圧痕を生成し、はく離が生じた圧痕数を全圧痕数で除した値を「はく離割合」と定義した。
図12は、ステップS1のプラズマ処理及びステップS2の熱処理が施された基材1上に形成された薄膜4の「はく離割合」を、ステップS1のプラズマ処理のみが施された(つまり、ステップS2の熱処理が施されなかった)基材1上に形成された薄膜4の「はく離割合」と比較して示している。
図12に示すように、ステップS2の熱処理によって、「はく離割合」は明らかに低下している。すなわち、ステップS2の熱処理によって、薄膜4のはく離強度を増大させることができる。ここで、ステップS2の熱処理の有無に関わらず、ナノマイクロワイヤ突起物2の高さ(平均高さ)は、薄膜4の厚さ(1μm)よりも大きいので(図9参照)、ナノマイクロワイヤ突起物2の高さは、薄膜4のはく離強度にあまり影響しないものと考えられる。そうすると、ステップS2の熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物2の直径が大きくなり、それにより、ナノマイクロワイヤ突起物2が強化されたことによって、薄膜4のはく離強度が向上したものと考えられる。
以上に説明したように、本実施形態によると、基材1の表面上にプラズマ処理によりナノマイクロワイヤ突起物2を形成した後、熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物2を成長強化し、その後、ナノマイクロワイヤ突起物2をアンカーとして基材1の表面上に薄膜4を形成する。このため、薄膜4のはく離強度を改善することができる。従って、薄膜4をコーティング膜として形成すれば、従来の多層コーティングを行うことなく、例えば工具鋼等の基材に対するコーティングを低コスト、高スループットで行うことができる。
また、本実施形態のように形成された薄膜4をコーティング膜として持つ切削工具によると、熱処理によって強化したナノマイクロワイヤ突起物2をアンカーとしてコーティング膜が形成されている。このため、切削工具に大きなせん断力や熱応力等が加わっても、皮膜表面の割れ、界面の疲労損傷又ははく離等を防止できるので、工具寿命を長くすることができる。
尚、本実施形態において、ナノマイクロワイヤ突起物2が形成される基材1の種類は、特に限定されるものではない。基材1として、固溶化熱処理したクロム含有鋼材、例えば、高速度鋼(SKH51)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)、Cr−Mo鋼(SCM435)、合金工具鋼(SKD5)等を用いた場合、クロム炭化物からなるナノマイクロワイヤ突起物を形成することができる。また、基材1として、タングステン含有鋼材を用いることによって、タングステン炭化物からなるナノマイクロワイヤ突起物を形成することも可能である。尚、炭素については、これらの基材中に初めから含まれていてもよいし、或いは、基材に対して浸炭処理を行って炭素を含有させてもよい。
また、本実施形態において、ステップS1のプラズマ処理を、例えば水又は水素が添加されたアルゴンガス雰囲気中で行った。しかし、これに代えて、水又は水素が添加された他の不活性ガスの雰囲気中でプラズマ処理を行ってもよい。また、水又は水素の添加に代えて、不活性ガス構成元素による過度のスパッタリングを防止できる他の質量数の小さい元素を添加してもよい。
また、本実施形態において、ステップS1のプラズマ処理を実施するプラズマ処理装置として、高周波マグネトロンスパッタ装置を用いたが、これに代えて、基材表面に対するスパッタエッチング及び加熱を行うことができる他のプラズマ処理装置を用いてもよい。
また、本実施形態において、ステップS2の熱処理の温度を、例えば、ステップS1のプラズマ処理の温度(例えば700K〜800K程度)よりも高い温度(例えば800K〜900K)に設定したが、これに代えて、ステップS1のプラズマ処理と同程度以下の温度での熱処理をより長時間行ってもよい。また、ナノマイクロワイヤ突起物が例えばクロム炭化物から構成されている場合、ナノマイクロワイヤ突起物の溶融を避けるためには、熱処理温度を900K程度以下に設定することが好ましい。
また、本実施形態において、ステップS2の熱処理を行う熱処理装置は、特に限定されるものではないが、例えば均温加熱炉等を用いてもよい。
また、本実施形態において、ステップS3の薄膜4の形成にスパッタ法を用いたが、これに代えて、例えばCVD(化学気相成長)法等の他の成膜方法を用いてもよい。また、薄膜4を例えば切削工具のコーティング膜として形成する場合、薄膜4は、硬質で且つ耐摩耗性、耐溶着性、耐反応性に優れた膜、例えば、SiC膜、TiN膜又はDLC膜等であってもよい。これにより、切削工具の切削性を向上させることができる。また、薄膜4が例えばSiC(炭化シリコン)から構成されている場合、薄膜4のはく離強度の低下を避けるためには、薄膜4の厚さは3μm程度以下であることが好ましく、1μm程度以下があることがより好ましい。
(第1比較例)
第1比較例では、前述の実施形態におけるステップS1のプラズマ処理を、水又は水素を添加しないアルゴンガス雰囲気中で行った。この場合、基材1の表面上には、ナノマイクロワイヤ突起物2は形成されず、円錐状突起物3のみが形成された。
図13は、第1比較例において円錐状突起物が形成された基材表面のSEM写真である。尚、図13に示すSEM写真は、図5(a)及び(b)で説明した基材を用いて得られたものである。
図13に示すように、水又は水素を添加せずにプラズマ処理を行うと、基材表面には円錐状突起物を含む微細突起物が多数形成されている一方、ナノマイクロワイヤ突起物は形成されていないことが確認できる。
図14(a)は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径(円錐状突起物の底面の半径)の分布を示しており、図14(b)は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径の平均値、最小値及び最大値を密度及びアスペクト比(高さ/直径)の平均値と共に示している。また、図15は、第1比較例において形成された円錐状突起物の高さ及び半径の確率分布を高さ及び半径の標準偏差と共に示している。
図14(a)、(b)及び図15に示すように、大部分の円錐状突起物の高さは1μm以下であり、ナノマイクロワイヤ突起物の高さと異なり、2μmを超えることはほとんどない。
第1比較例において円錐状突起物が形成された基材表面上に、SiCからなる薄膜を3μm程度の厚さで成膜し、該薄膜のはく離強度の評価を行ったところ、円錐状突起物によるアンカー効果によって、円錐状突起物を形成しない場合と比較すると、薄膜のはく離強度が向上した。しかし、前述のように、円錐状突起物の平均高さが薄膜厚さよりも小さい1μm程度以下であるのに対して、ナノマイクロワイヤ突起物の平均高さは、薄膜厚さよりも大きい数μm程度以上であるため、第1比較例の薄膜のはく離強度は、実施形態と比較すると、小さいものであった。
図16(a)及び(b)は、第1比較例の薄膜がせん断力を受けてはく離する様子を模式的に示している。尚、図16(a)及び(b)において、図2(a)〜(c)と同じ構成要素には同じ符号を付している。
図16(a)及び(b)に示すように、円錐状突起物3の側壁面は、ナノマイクロワイヤ突起物2(図2(a)〜(c)参照)の垂直側壁面と異なり、傾斜面であるため、薄膜4はせん断力を受けると、円錐状突起物3の傾斜側壁面を滑るようにしてはく離する。言い換えると、実施形態のように垂直側壁面を持つナノマイクロワイヤ突起物2をアンカーとして薄膜4を形成した場合の方が、第1比較例のように傾斜側壁面を持つ円錐状突起物3をアンカーとして薄膜4を形成した場合と比較して、薄膜4のはく離強度を向上させることができる。
(第2比較例)
第2比較例では、前述の実施形態におけるステップS1のプラズマ処理を行って、基材1の表面上にナノマイクロワイヤ突起物2を形成した後、ステップS2の熱処理を行うことなく、ナノマイクロワイヤ突起物2が形成された基材1の表面上に薄膜4を形成した。
図17は、第2比較例においてナノマイクロワイヤ突起物が形成された基材表面(薄膜形成前)のSEM写真であり、図18は、第2比較例においてナノマイクロワイヤ突起物形成後に薄膜が形成された基材表面のSEM写真である。尚、図17及び図18に示すSEM写真は、図5(a)及び(b)で説明した基材を用いて得られたものである。
また、図19は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の高さ及び直径の分布をアスペクト比(高さ/直径)の平均値と共に示しおり、図20は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の高さの確率分布を平均値と共に示しており、図21は、第2比較例において形成されたナノマイクロワイヤ突起物の直径の確率分布を平均値と共に示している。
図17、図19〜図21に示すように、第2比較例においては、実施形態と比較して、高さ及び直径共に小型のナノマイクロワイヤ突起物が形成されている。また、図18に示すように、第2比較例のナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして形成された薄膜は湾曲しており、内部応力(残留応力)に起因するせん断力によって、はく離が生じていることが確認できる。ここで、薄膜はく離後の基材表面にはナノマイクロワイヤ突起物が残っていなかった。
図22(a)及び(b)は、第2比較例の薄膜がせん断力を受けてはく離する様子を模式的に示している。尚、図22(a)及び(b)において、図2(a)〜(c)と同じ構成要素には同じ符号を付している。
図22(a)及び(b)に示すように、第2比較例においては、せん断力を受けて薄膜4がはく離する際には、ナノマイクロワイヤ突起物2も薄膜4と共に基材1から剥脱している。この点は、第1比較例において薄膜4が円錐状突起物3の傾斜側壁面を滑るようにしてはく離していることと大きく異なっている(図16参照)。
以上のことから、プラズマ処理のみによって(つまり、プラズマ処理後の熱処理を行うことなく)ナノマイクロワイヤ突起物を形成した第2比較例においては、ナノマイクロワイヤ突起物と基材との接合強度が薄膜の残留応力に耐えられずに薄膜のはく離が起こるものと考えられる。すなわち、薄膜の残留応力に起因してナノマイクロワイヤ突起物底部には、せん断力が作用するところ、第2比較例ではナノマイクロワイヤ突起物底部の強度が小さいために、ナノマイクロワイヤ突起物のせん断破壊と、それに伴う薄膜のはく離とが起こるものと考えられる。
それに対して、前述のように、実施形態では、プラズマ処理後の熱処理によってナノマイクロワイヤ突起物(特に底部)を成長強化できるので、薄膜の残留応力に起因するせん断力に対して十分な耐性を有するようになり、薄膜のはく離強度を向上させることができる。
本発明は、例えば切削工具のコーティング膜の密着性を向上させるナノマイクロワイヤ突起物の形成方法、ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとする薄膜の形成方法、及び、ナノマイクロワイヤ突起物をアンカーとして形成されたコーティング膜を持つ切削工具として有用である。
1 基材
2 ナノマイクロワイヤ突起物
3 円錐状突起物
4 薄膜
10 プラズマ処理装置
11 真空チャンバー
12 基材ホルダー
13 支持部材
14 冷却機構
15 マッチングボックス
16 高周波電源
17 Arガス供給機構
18 H2 ガス供給機構
19 真空ポンプ
20 基材

Claims (6)

  1. 基材表面に対して、水又は水素が添加された不活性ガス雰囲気中でスパッタエッチングによるプラズマ処理を行うことにより、前記基材表面上に垂直側壁面をもつナノマイクロワイヤ突起物を形成する工程と、
    前記基材に対して、前記プラズマ処理の温度よりも高い温度で熱処理を行う工程と、
    前記ナノマイクロワイヤ突起物が形成された前記基材表面上に薄膜を形成する工程とを備えていることを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 請求項1に記載の薄膜形成方法において、
    前記熱処理を行う工程は、前記突起物を形成する工程の後、大気開放せずにアルゴン雰囲気中で行われることを特徴とする薄膜形成方法。
  3. 請求項1又は2に記載の薄膜形成方法において、
    前記薄膜をスパッタ成膜することを特徴とする薄膜形成方法。
  4. 工具基材表面に対して、水又は水素が添加された不活性ガス雰囲気中でスパッタエッチングによるプラズマ処理を行うことにより、前記工具基材表面上に垂直側壁面をもつナノマイクロワイヤ突起物を形成する工程と
    前記工具基材に対して、前記プラズマ処理の温度よりも高い温度で熱処理を行う工程と、
    前記ナノマイクロワイヤ突起物が形成された前記工具基材表面上にコーティング膜を形成する工程とを有することを特徴とする切削工具の製造方法
  5. 請求項4に記載の切削工具の製造方法において、
    前記コーティング膜は、SiC膜、TiN膜又はDLC膜であることを特徴とする切削工具の製造方法
  6. 請求項4に記載の切削工具の製造方法において、
    前記熱処理を行う工程は、前記突起物を形成する工程の後、大気開放せずにアルゴン雰囲気中で行われることを特徴とする切削工具の製造方法。
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