JP2006152423A - ボロンドープダイヤモンド被膜およびダイヤモンド被覆加工工具 - Google Patents

ボロンドープダイヤモンド被膜およびダイヤモンド被覆加工工具 Download PDF

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Abstract

【課題】 ダイヤモンド被膜の耐酸化性や潤滑性を向上させる。
【解決手段】 ボロンドープダイヤモンド被膜20にはボロンがドーピングされているため、そのダイヤモンド被膜20の表面には、酸化を受けた際にボロンの酸化物(例えばB2 3 )の層が形成され、その酸化物の層により被膜内部への酸化の進行が抑制されて、被膜20の耐酸化性が向上するとともに、摩擦係数が小さくなって潤滑性が向上する。特に、本実施例のダイヤモンド被膜20は、低ドーピング層22と高ドーピング層24とを交互に積層した多層構造を成しているとともに、最上層は高ドーピング層24にて構成されているため、ダイヤモンド被膜の本来の特性である耐摩耗性等を維持しつつ、ボロンの酸化物による耐酸化性および潤滑性の向上効果を良好に得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、加工工具などの所定の部材にコーティングされるダイヤモンド被膜に係り、特に、耐酸化性および潤滑性を向上させる技術に関するものである。
超硬合金等の母材の表面にダイヤモンド被膜をコーティングしたダイヤモンド被覆加工工具が、例えばエンドミルやバイト、タップ、ドリルなどの切削工具、或いはその他の加工工具として提案されている。特許文献1や特許文献2に記載されている工具はその一例で、このようなダイヤモンド被覆加工工具は非常に高い硬度を有し、優れた耐摩耗性、耐溶着性が得られる。また、特許文献3、特許文献4には、導電性を持たせたり耐酸化性を向上させたりするために、マイクロ波プラズマCVD(化学気相成長)法等によりダイヤモンドを結晶成長させる際に、ボロン(硼素;B)をドーピングする技術が記載されている。
特許第2519037号公報 特開2002−79406号公報 特開2004−193522号公報 特開平10−146703号公報
しかしながら、工具母材等の表面にコーティングされるダイヤモンド被膜については、未だボロンのドーピングについて提案されておらず、耐酸化性が低いとともに潤滑性(表面粗さ)が悪いことから、鉄系の材料を含む複合材料の切削加工や、切削点が高温になるチタン合金等の耐熱合金に対する切削加工などでは、ダイヤモンド被膜が酸化により早期に摩耗して十分な耐久性が得られないことがあった。また、摩擦による発熱で耐久性が低下したり、被削材の加工面品質が損なわれたりすることがあった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ダイヤモンド被膜の耐酸化性や潤滑性を向上させることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、所定の部材の表面にコーティングされるダイヤモンド被膜であって、ボロンがドーピングされているとともに、そのボロンのドーピング量は膜厚方向において変化しており、被膜表面では多くされていることを特徴とする。
第2発明は、第1発明のボロンドープダイヤモンド被膜において、前記ボロンのドーピング量が0.05〜2.0原子%の範囲内の低ドーピング層と、ボロンのドーピング量が1.0〜10原子%の範囲内で且つ前記低ドーピング層よりも多い高ドーピング層とを有することを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明のボロンドープダイヤモンド被膜において、ダイヤモンドの結晶粒径が2μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されていることを特徴とする。
第4発明は、所定の工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされているダイヤモンド被覆加工工具に関するもので、所定の加工を行なう加工部の表面に、ダイヤモンド被膜として第1発明〜第3発明の何れかのボロンドープダイヤモンド被膜がコーティングされていることを特徴とする。
なお、ボロンドープダイヤモンドは、炭素原子の一部がボロン原子によって置き換えられたもので、正の電荷を持つ正孔を有するp型半導体である。また、ボロンの原子%は、ボロン原子に置き換えられた原子数の割合で、例えば二次イオン質量分析法等によって調べられる。
このようなボロンドープダイヤモンド被膜においては、表面が酸化を受けた際に表面にボロンの酸化物(例えばB2 3 )の層が形成されるため、その酸化物の層により被膜内部への酸化の進行が抑制されて、被膜の耐酸化性が向上するとともに、摩擦係数が小さくなって潤滑性が向上する。特に、本発明ではボロンのドーピング量が膜厚方向において変化しており、被膜表面で多くされているため、ダイヤモンド被膜の本来の特性である耐摩耗性等を維持しつつ、ボロンの酸化物による耐酸化性および潤滑性の向上効果を得ることができる。これにより、鉄系の材料を含む複合材料の切削加工や、切削点が高温になるチタン合金等の耐熱合金に対する切削加工などにおいても、酸化によるダイヤモンド被膜の早期摩耗や剥離が抑制されて優れた耐久性が得られるようになる。また、潤滑性が良くなることから、摩擦による発熱が抑制され、この点でもダイヤモンド被膜の耐久性が向上するとともに、被削材の加工面品質が向上する。
第3発明では、ダイヤモンドが微結晶であるため、通常のダイヤモンド被膜に比較して表面が平滑であり、その表面にボロンの酸化物の層が形成されることにより、摩擦係数が一層小さくなって優れた潤滑性が得られる。
加工部の表面に上記ボロンドープダイヤモンド被膜がコーティングされている第4発明のダイヤモンド被覆加工工具においても、実質的に上記と同様の効果が得られる。
本発明のボロンドープダイヤモンド被膜は、耐摩耗性や耐酸化性、潤滑性が要求される切削工具などの加工工具、すなわちダイヤモンド被覆加工工具に好適に適用されるが、例えば半導体装置などの硬質被膜として用いることもできるなど、加工工具以外にも適用され得る。
ダイヤモンド被覆加工工具の場合、ボロンドープダイヤモンド被膜をコーティングすべき工具母材としては超硬合金などの超硬質工具材料が好適に用いられるが、セラミックス等の他の工具材料を用いることもできる。密着性を高めるために、その工具母材の表面に粗面化処理を施したり、他の被膜を下地として設けたりするなど、所定の前処理を行うことができる。
また、ボロンドープダイヤモンド被膜の膜厚は、5μmより薄いと十分な耐摩耗性が得られない一方、25μmを超えると剥離し易くなるため、5〜25μmの範囲内が好ましく、10〜20μm程度が適当である。加工工具以外に適用する場合は、そのコーティング対象の材質や目的等に応じて適宜定められる。
ボロンドープダイヤモンド被膜のコーティングにはCVD法が好適に用いられ、特にマイクロ波プラズマCVD法が望ましいが、ホットフィラメントCVD法や高周波プラズマCVD法等の他のCVD法を用いることもできる。ボロンのドーピング技術については、前記特許文献3や特許文献4に記載されているものなど、ダイヤモンドに対するボロンのドーピング技術として従来から知られている種々の手法を採用できる。
ボロンドープダイヤモンド被膜は、例えば第2発明のようにドーピング量が少ない低ドーピング層とドーピング量が多い高ドーピング層とを有し、所定の部材の表面に接する部分に設けられる低ドーピング層の上に高ドーピング層を設けた2層構造としたり、それ等を交互に繰り返し積層して最表面を高ドーピング層とした多層構造としたりすることができる。第1発明の実施に際しては、ボロンドープ無しのダイヤモンド層とボロンドープ有りのボロンドープ層との2層構造や、それ等を交互に繰り返し積層した多層構造、ボロンドープ無しのダイヤモンド層と低ドーピング層と高ドーピング層とを有する3種類の層構造、或いはボロンのドーピング量を連続的に変化(漸増)させたり段階的に増加させたりした徐変構造など、種々の態様が可能である。
ボロンのドーピング量(含有量)は、0.05原子%より少ないと耐酸化性、潤滑性の効果が十分に得られないため、被膜の最表面を含めてボロンをドーピングする層には少なくとも0.05原子%以上ドーピングすることが望ましく、0.5原子%以上が更に望ましい。
第3発明の微結晶ダイヤモンドは、例えば前記特許文献2に記載のように核生成工程および結晶成長工程を繰り返すことにより形成することが可能である。結晶粒径は2μm以下で、1μm以下が望ましい。この結晶粒径は、結晶成長方向と直角な方向の最大径寸法で、総てのダイヤモンドの結晶粒径が2μm以下であることが望ましいが、表面或いは所定の横断面における結晶粒径の少なくとも80%以上が2μm以下であれば良い。また、結晶成長方向の長さ寸法を2μm以下とすれば、その結晶成長方向と直角な方向の結晶粒径も一般には2μm以下となる。なお、結晶成長方向の寸法が2μmより大きくても、結晶粒径が2μm以下であれば良い。第1発明、第2発明の実施に際しては、結晶粒径が2μmより大きい粗結晶のダイヤモンド被膜を用いることもできる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたダイヤモンド被覆加工工具、具体的にはダイヤモンド被覆切削工具としてのエンドミル10を示す図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は刃部14の表面付近の断面図である。このエンドミル10は、4枚刃のスクエアエンドミルであり、工具母材12は超硬合金にて構成されており、その工具母材12にはシャンクおよび刃部14が軸方向に一体に設けられている。刃部14は加工部に相当し、切れ刃として外周刃16および底刃18を備えているとともに、刃部14の表面にはボロンがドーピングされたボロンドープダイヤモンド被膜20(以下、単にダイヤモンド被膜20という)が20μm程度の膜厚でコーティングされている。なお、図1(a) の斜線部は、工具母材12の表面にコーティングされたダイヤモンド被膜20を表している。
ダイヤモンド被膜20は、結晶粒径が1μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されているとともに、ボロンのドーピング量が0.05〜2.0原子%の範囲内で例えば1.0原子%程度の低ドーピング層22と、ボロンのドーピング量が1.0〜10原子%の範囲内で且つ低ドーピング層22よりも多い、例えば5.0原子%程度の高ドーピング層24とを交互に繰り返し積層した多層構造を成している。工具母材12の表面には低ドーピング層22が設けられ、最上層は高ドーピング層24とされている。また、低ドーピング層22および高ドーピング層24の厚さは本実施例では略同じであるが、低ドーピング層22を高ドーピング層24よりも厚くするなど、適宜変更することが可能である。
上記エンドミル10は、超硬合金に研削加工等を施すことにより、切れ刃として外周刃16および底刃18を有する工具母材12を形成した後、ダイヤモンド被膜20の密着性を高めるために、工具母材12の刃部14の表面に粗面化処理を施す。粗面化処理としては、例えば電解研磨などの化学的腐食や、SiC等の砥粒などによるサンドブラストが適当である。その後、図2のマイクロ波プラズマCVD装置30を用いて、粗面化された刃部14の表面に気相合成法、具体的にはマイクロ波プラズマCVD法により、ボロンをドーピングしながらダイヤモンド粒子を生成・成長させてダイヤモンド被膜20をコーティングする。
図2のマイクロ波プラズマCVD装置30は、反応炉32、マイクロ波発生装置34、原料ガス供給装置36、真空ポンプ38、および電磁コイル40を備えて構成されている。円筒状の反応炉32内にはテーブル42が設けられダイヤモンド被膜20をコーティングすべき複数の工具母材12がワーク支持具44に支持されて、それぞれ刃部14が上向きになる姿勢で配置されるようになっている。マイクロ波発生装置34は、例えば2.45GHz等のマイクロ波を発生する装置で、このマイクロ波が反応炉32内へ導入されることにより工具母材12が加熱されるとともに、マイクロ波発生装置34の電力制御によって加熱温度が調節される。
原料ガス供給装置36は、メタン(CH4 )や水素(H2 )、一酸化炭素(CO)などの原料ガスを反応炉32内に供給するためのもので、それ等のガスボンベや流量を制御する流量制御弁、流量計などを備えて構成されているが、本実施例ではボロンをドーピングするために、例えば酸化ボロンをメタノールに溶かした液体を原料ガスに混ぜて反応炉32内に供給できるようになっている。真空ポンプ38は、反応炉32内の気体を吸引して減圧するためのもので、圧力計46によって検出される反応炉32内の圧力値が予め定められた所定の圧力値になるように、真空ポンプ38のモータ電流などがフィードバック制御される。電磁コイル40は、反応炉32内を取り巻くように反応炉32の外周側に円環状に配設されている。
このようなマイクロ波プラズマCVD装置30を用いたダイヤモンド被膜20のコーティング処理は、図3に示すように核付着工程のステップR1と、結晶成長工程のステップR2とを有して行なわれる。ステップR1の核付着工程では、メタンの濃度が10%〜30%の範囲内で定められた設定値となるようにメタンおよび水素の流量調節を行うとともに、工具母材12の表面温度が700℃〜900℃の範囲内で定められた設定温度になるようにマイクロ波発生装置34を調節し、反応炉32内のガス圧が2.7×102 Pa〜2.7×103 Paの範囲内で定められた設定圧になるように真空ポンプ38を作動させ、その状態を0.1時間〜2時間継続する。これにより、工具母材12の表面、或いはステップR2の結晶成長処理で結晶成長させられた多数のダイヤモンド結晶の表面に、ダイヤモンドの結晶成長の起点となる核の層が付着される。
ステップR2の結晶成長工程は、メタンの濃度が1%〜4%の範囲内で定められた設定値になるようにメタンおよび水素の流量調節を行うとともに、工具母材12の表面温度が800℃〜900℃の範囲内で定められた設定温度になるようにマイクロ波発生装置34を調節し、反応炉32内のガス圧が1.3×103 Pa〜6.7×103 Paの範囲内で定められた設定圧になるように真空ポンプ38を作動させ、その状態を、ダイヤモンドの結晶粒径が1μm以下に維持されるように予め定められた所定時間、具体的にはダイヤモンドの結晶長さ(結晶成長方向の長さ寸法)が1μmになる予め求められた時間よりも短い所定の処理時間だけ継続する。すなわち、本実施例の結晶成長処理では、結晶成長方向の長さ寸法が1μm以下であれば、その結晶成長方向と略直角な平面内の結晶粒径は1μm以下に維持されるのである。
そして、次のステップR3では、工具母材12の表面上に結晶成長させられたダイヤモンド被膜20の膜厚が予め定められた設定膜厚(本実施例では20μm)に達したか否かを、例えばステップR2の実行回数などで判断し、設定膜厚になるまで上記ステップR1およびR2を繰り返す。ステップR1の実行時には、ダイヤモンドの結晶成長が中止し、その結晶上に新たに核の層が形成されるとともに、以後の結晶成長処理(ステップR2)では、核の層の下のダイヤモンドの結晶が再成長させられることはなく、新たな核を起点として新たにダイヤモンドが結晶成長させられることにより、結晶粒径および結晶長さが共に1μm以下の微結晶で多層構造のダイヤモンド被膜20が工具母材12の表面にコーティングされる。
また、上記ダイヤモンド被膜20のコーティング処理に際しては、水素等の原料ガスを供給する際に、前記酸化ボロンをメタノールに溶かした液体をその原料ガスに混ぜて反応炉32内に所定流量で供給することにより、そのダイヤモンド被膜20にボロンをドーピングする。ボロンのドーピング量は、酸化ボロンを溶かした液体の供給流量を変更することによって調節でき、これによりドーピング量が異なる低ドーピング層22および高ドーピング層24を所定の厚さで交互に積層できる。これ等の低ドーピング層22、高ドーピング層24の厚さは、前記ステップR1およびR2の1回の処理で形成される微結晶ダイヤモンドの厚さ(本実施例では約1μm)と同じか或いはその整数倍に設定され、一連のステップR1およびR2では一定のドーピング量でボロンがドーピングされる。
このような本実施例のエンドミル10においては、ダイヤモンド被膜20にボロンがドーピングされているため、そのダイヤモンド被膜20の表面には、酸化を受けた際にボロンの酸化物(例えばB2 3 )の層が形成され、その酸化物の層により被膜内部への酸化の進行が抑制されて、ダイヤモンド被膜20の耐酸化性が向上するとともに、摩擦係数が小さくなって潤滑性が向上する。特に、本実施例のダイヤモンド被膜20は、低ドーピング層22と高ドーピング層24とを交互に積層した多層構造を成しているとともに、最上層は高ドーピング層24にて構成されているため、ダイヤモンド被膜の本来の特性である耐摩耗性等を維持しつつ、ボロンの酸化物による耐酸化性および潤滑性の向上効果を良好に得ることができる。また、本実施例のダイヤモンド被膜20は結晶粒径が1μm以下の微結晶であるため、通常のダイヤモンド被膜に比較して表面が平滑であり、その表面にボロンの酸化物の層が形成されることにより、摩擦係数が一層小さくなって優れた潤滑性が得られる。
これにより、本実施例のエンドミル10によれば、鉄系の材料を含む複合材料の切削加工や、切削点が高温になるチタン合金等の耐熱合金に対する切削加工などにおいても、酸化によるダイヤモンド被膜20の早期摩耗や剥離が抑制されて優れた耐久性が得られるようになる。また、潤滑性が良くなることから、摩擦による発熱が抑制され、この点でもダイヤモンド被膜20の耐久性が向上するとともに、被削材の加工面品質が向上する。
因みに、図4の(a) は、通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜すなわち1回の結晶成長処理(図3のステップR2)で所定の膜厚となるまでダイヤモンドを結晶成長させた場合の被膜表面の電子顕微鏡写真で、図4の(b) は、本実施例のダイヤモンド被膜20と同様な微結晶ダイヤモンド被膜の表面の電子顕微鏡写真であり、ダイヤモンドの結晶粒径の違いが明らかである。
図5は、図4と同じ通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜および微結晶ダイヤモンド被膜について、その表面粗さ(輪郭曲線)を調べた結果である。図5の(a) は通常の結晶粒径のダイヤモンド被膜の場合で、その最大高さRzは3.0μmであるのに対し、図5の(b) は微結晶ダイヤモンドで、その最大高さRzは0.7μmであり、極めて平滑な被膜表面が得られることが分かる。このことから、被削材の加工面についても、面粗さが大幅に向上するものと推定される。
図6は、前記ダイヤモンド被膜20と同じダイヤモンド被膜をコーティングしたドリル(本発明品)と、ボロンドープ無しの微結晶ダイヤモンド被膜をコーティングした従来品と、一定のドーピング量(1.0原子%)でボロンドープした微結晶ダイヤモンド被膜をコーティングした比較品とを用いて、アルミ合金(ADC12)に対する切削加工の耐久性試験を行なった場合で、(a) は加工条件、(b) は試験結果である。この試験結果から明らかなように、3段目の本発明品においては、1段目のボロンドープ無しの従来品に比較して3倍程度の耐久性が得られるとともに、2段目の一定のドーピング量でボロンドープした比較品に対しても、約1.4倍の耐久性が得られる。なお、加工条件の「Minimum Quantity of Lubricant 」は最少量潤滑で、ここではミスト状の潤滑剤雰囲気での加工を意味する。
図7は、ボロンドープ無しの通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜と、ボロンドープ無しの微結晶ダイヤモンド被膜と、前記ダイヤモンド被膜20と同じ条件で形成したドーピング量が異なる多層のボロンドープ微結晶ダイヤモンド被膜とを、それぞれコーティングしたピンを用いて、それ等の摩擦係数を調べた場合で、(a) は試験条件、(b) は試験結果である。この試験結果から明らかなように、多層ボロンドープ微結晶ダイヤモンド被膜によれば、粗結晶のダイヤモンド被膜は勿論、ボロンドープ無しの微結晶ダイヤモンド被膜に比べても、摩擦係数が小さくなる。これは、ダイヤモンド被膜の表面にボロンの酸化物の層が形成されるためと考えられる。
図8は、通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜について、0.5〜1.0原子%の一定のドーピング量でボロンをドーピングしたものとボロンドープ無しのものとを用意し、それぞれ被膜だけを母材から剥がして加熱するとともに、加熱前後の質量を測定し、酸化による質量損失(%)を調べた結果である。試験は、15℃/分の昇温速度で各試験温度(700℃、725℃、750℃、775℃、800℃)まで加熱するとともに、その試験温度に30分保持した後、常温まで自然冷却して質量の変化を測定した。図8から明らかなように、ボロンドープ無しでは、700℃程度から酸化が始まるのに対し、ボロンドープ有りの場合には775℃程度から酸化が始まり、75℃程度の差が認められた。なお、この試験結果は、一定のドーピング量でボロンをドーピングした通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜に関するものであるが、耐酸化性の違いはボロンドープの有無によるものと考えられるので、ドーピング量が異なる多層の粗結晶または微結晶のボロンドープダイヤモンド被膜についても同様の結果が得られるものと推定される。
図9は、ボロンを0.5〜1.0原子%の一定のドーピング量でドーピングした通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜を20μmの膜厚でコーティングした2枚刃のスクエアエンドミルの外観写真で、このボロンドープ品と、ボロンドープ無しの通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜を20μmの膜厚でコーティングした非ボロンドープ品とを用いて、酸化試験を行なったところ、図10に示す結果が得られた。酸化試験は、15℃/分の昇温速度で750℃まで加熱するとともに、その750℃に30分保持した後、常温まで自然冷却して被膜の状態(消失した面積)を調べた。図10の左側のエンドミルは非ボロンドープ品で、酸化や工具母材との熱膨張差に起因する剥離などでダイヤモンド被膜が略100%消失しているのに対し、右側のボロンドープ品では、10%程度消失しているだけで、大部分が残っている。図10の黒い部分がダイヤモンド被膜で、ボロンドープ品では、先端の底刃部分においても17〜18μmの厚さでダイヤモンド被膜が残っていた。この場合も、一定のドーピング量でボロンをドーピングした通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜に関するものであるが、耐酸化性の違いはボロンドープの有無によるものと考えられるので、ドーピング量が異なる多層の粗結晶または微結晶のボロンドープダイヤモンド被膜についても同様の結果が得られるものと推定される。
なお、前記図8では、750℃においてボロンドープ品では被膜消失が0%で、非ボロンドープ品でも被膜消失は8〜10%程度であり、図10の試験結果に比べて被膜の消失量が少ないが、これは、図10では工具母材との熱膨張差に起因する剥離が影響しているものと考えられる。
図11の(a) 、(b) は、前記図1とは異なる構造のボロンドープダイヤモンド被膜を説明する図で、それぞれ図1(b) に対応する断面図であり、図11(a) のボロンドープダイヤモンド被膜50は、結晶粒径が1μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されているとともに、ボロンのドーピング量が例えば0.05原子%から10原子%まで連続的に漸増させられている場合である。具体的には、約1μmの厚さの微結晶ダイヤモンドの1層毎に例えば0.5原子%ずつドーピング量を増大させるのである。
図11の(b) のボロンドープダイヤモンド被膜60は、結晶粒径が1μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されているとともに、ボロンのドーピング量が0.05〜2.0原子%の範囲内で例えば1.0原子%程度の低ドーピング層62と、ボロンのドーピング量が1.0〜10原子%の範囲内で且つ低ドーピング層62よりも多い、例えば5.0原子%程度の高ドーピング層64とから成る2層構造を成しているものである。また、低ドーピング層62の厚さは12〜15μmの範囲内で、高ドーピング層64の厚さは2〜4μmの範囲内である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるエンドミルを示す図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は刃部の表面付近の断面図である。 ダイヤモンド被膜をコーティングするマイクロ波プラズマCVD装置の一例を説明する概略構成図である。 図2の装置を用いて微結晶ダイヤモンド被膜をコーティングする際の手順を説明するフローチャートである。 通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜の表面の電子顕微鏡写真と、微結晶ダイヤモンド被膜の表面の電子顕微鏡写真とを比較して示す図である。 通常の結晶粒径(粗結晶)のダイヤモンド被膜の面粗さ(輪郭曲線)と、微結晶ダイヤモンド被膜の面粗さ(輪郭曲線)とを比較して示す図である。 ボロンドープ無しの微結晶ダイヤモンド被膜と、一定のドーピング量でボロンをドーピングした微結晶ダイヤモンド被膜と、ボロンのドーピング量が異なる多層の微結晶ダイヤモンド被膜とについて、その耐久性の違いを調べた結果を説明する図で、(a) は加工条件、(b) は試験結果である。 ボロンドープ無しの粗結晶ダイヤモンド被膜と、ボロンドープ無しの微結晶ダイヤモンド被膜と、ボロンのドーピング量が異なる多層の微結晶ダイヤモンド被膜とについて、その摩擦係数の違いを調べた結果を説明する図で、(a) は試験方法、(b) は試験結果である。 ボロンドープの有無によるダイヤモンド被膜の酸化の違い(質量の変化割合)を複数の試験温度で調べた結果を示す図である。 ボロンドープダイヤモンド被膜がコーティングされた2枚刃のスクエアエンドミルの外観写真を示す図である。 図9の工具に酸化試験を行なった後の外観写真(右側)を、ボロンドープ無しのダイヤモンド被膜をコーティングした工具(左側)と比較して示す図である。 ボロンドープダイヤモンド被膜の他の態様を説明する図で、図1の(b) に対応する表面付近の断面図である。
符号の説明
10:エンドミル(ダイヤモンド被覆加工工具) 12:工具母材 14:刃部(加工部) 20、50、60:ボロンドープダイヤモンド被膜 22、62:低ドーピング層 24、64:高ドーピング層

Claims (4)

  1. 所定の部材の表面にコーティングされるダイヤモンド被膜であって、
    ボロンがドーピングされているとともに、該ボロンのドーピング量は膜厚方向において変化しており、被膜表面では多くされている
    ことを特徴とするボロンドープダイヤモンド被膜。
  2. 前記ボロンのドーピング量が0.05〜2.0原子%の範囲内の低ドーピング層と、該ボロンのドーピング量が1.0〜10原子%の範囲内で且つ前記低ドーピング層よりも多い高ドーピング層とを有する
    ことを特徴とする請求項1に記載のボロンドープダイヤモンド被膜。
  3. ダイヤモンドの結晶粒径が2μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のポロンドープダイヤモンド被膜。
  4. 所定の加工を行なう加工部の表面に、請求項1〜3の何れか1項に記載のボロンドープダイヤモンド被膜がコーティングされていることを特徴とするダイヤモンド被覆加工工具。
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