JP5858417B2 - Ti合金の接合継手、Ti合金の加工方法及び構造体 - Google Patents

Ti合金の接合継手、Ti合金の加工方法及び構造体 Download PDF

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Description

本発明は、Ti合金の接合継手、Ti合金の加工方法及び構造体に関する。
摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)は、継手特性を始めとして種々の優れた特性を有し、アルミニウム合金に対しては、開発されて間もなく産業分野で適用されてきた。一方、鉄鋼材料やTi合金のように比較的に融点の高い材料の摩擦攪拌接合に関しては、回転ツールの耐久性が問題となり、完全に実用化には至っていない。そのため、従来は、下記の特許文献1のように回転ツールの高強度化によって長寿命化を図る研究が数多く行われている。しかしながら、回転ツールの高強度化によって長寿命化を図る方法には限界がある。
Ti合金は、常温では、最密立方格子の構造を有するα相あるいはα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相であり、高温に至るにつれて、α相からβ相への相変態が生じ、β相の1相からなる金属組織となる。Ti合金はα相ではすべり系の数が少なく、組成変形し難いため、摩擦攪拌接合は難しいとされてきた。そのため、一般にTi合金の摩擦攪拌接合は、α相から100%β相へ相変態する温度であるβトランザス(β相が100%となる温度)を超える温度で行われている。
特開2008−114258号公報
しかしながら、α相から100%β相へ相変態する温度であるβトランザスを超える温度で摩擦攪拌接合を行った場合には、接合時の高温で安定なβ相への相変態が生じた後に、接合終了後に常温に戻る際に常温で安定なα相あるいはα+β相への相変態が再度行われる。この場合、旧β粒内にラメラ状(針状)のα相が生成し、靱性及び疲労特性が大幅に低下する。
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、接合部の強度を高めることが可能なTi合金の接合継手、Ti合金の加工方法及び構造体を提供することにある。
本発明は、Ti合金の接合後の金属組織が、最密立方格子の構造を有するα相の等軸組織、α相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相の等軸組織、及びβ相の等軸組織のいずれかであるTi合金の接合継手である。
この構成によれば、Ti合金の接合継手において、Ti合金の接合後の金属組織が、最密立方格子の構造を有するα相の等軸組織、α相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相の等軸組織、及びβ相の等軸組織のいずれかである。そのため、従来のTi合金の接合継手のように、β粒内にラメラ状のα相が含まれていないため、靱性や、疲労特性が大幅に向上したTi合金の接合継手とすることができる。
また、本発明は、Ti合金の加工部の温度を、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを通過して変化しないようにしつつ加工するTi合金の加工方法である。
この構成によれば、Ti合金の加工方法において、Ti合金の加工部の温度を、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを通過して変化しないようにしつつ加工する。このため、加工中にα相からβ相への変態が生じず、加工後に加工部のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、加工後の加工部の金属組織は、α相の等軸組織や、α相とβ相とが共存しているα+β相の等軸組織や、β相の等軸組織とすることができ、加工部の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。
この場合、加工部の温度を、βトランザス以下の温度に制御しつつ加工するものとできる。
この構成によれば、加工部の温度を、βトランザス以下の温度に制御しつつ加工する。このため、加工中にα相からβ相への変態が生じず、加工後に加工部のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、加工後の加工部の金属組織は、α相の等軸組織や、α相とβ相とが共存しているα+β相の等軸組織とすることができ、加工部の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。
また、加工前の加工部が100%β相であるTi合金を加工するものとできる。
この構成によれば、加工前の加工部が100%β相であるTi合金を加工する。このため、加工により加工部の温度が上昇したとしても、加工中にα相からβ相への変態が生じず、加工後に加工部のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、加工後の加工部の金属組織は、β相の等軸組織とすることができ、加工部の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。また、この構成によれば、加工部を変形能に優れ、加工しやすいβ相の状態で加工を行うことにより、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、本発明は、Ti合金の加工後の加工部の冷却速度を40℃/s以上に制御しつつ加工するTi合金の加工方法である。
この構成によれば、Ti合金の加工方法において、Ti合金の加工後の加工部の冷却速度を40℃/s以上に制御しつつ加工する。このため、α相あるいはα+β相から100%β相への変態する温度であるβトランザスを超える温度に加工部が達したとしても、加工後に加工部のβ粒内に生成するラメラ状のα相が微細化する。このため、加工部の静的な引張特性や、靱性や、疲労特性を向上させることができる。また、この構成によれば、加工部をβトランザス以上の温度とし、変形能に優れ、加工しやすいβ相の状態で加工を行うことにより、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、本発明は、Ti合金の加工後の加工部の冷却速度を100℃/s以上に制御しつつ加工するTi合金の加工方法である。
この構成によれば、Ti合金の加工方法において、Ti合金の加工後の加工部の冷却速度を100℃/s以上に制御しつつ加工する。このため、α相あるいはα+β相から100%β相への変態する温度であるβトランザスを超える温度に加工部が達したとしても、加工後に加工部のβ粒内に生成するラメラ状のα相がさらに微細化する。このため、加工部の静的な引張特性や、靱性や、疲労特性を向上させることができる。また、この構成によれば、加工部をβトランザス以上の温度とし、変形能に優れ、加工しやすいβ相の状態で加工を行うことにより、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
この場合、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを上昇させるAl以外の物質が少なくとも加工部に添加されたTi合金を加工することが好適である。
この構成によれば、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを上昇させるAl以外の物質が少なくとも加工部に添加されたTi合金を加工する。このため、加工部の温度をβトランザス以下の温度に制御しつつ加工を行うことが容易となる。また、βトランザスを上昇させる物質としてAl以外が添加されているため、加工性への悪影響が抑えられ、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
この場合、βトランザスを上昇させる物質として、H、He、Li、Be、B、C、N及びOから選択される少なくともいずれか1つの物質が少なくとも加工部に添加されたTi合金を加工することが好適である。
この構成によれば、βトランザスを上昇させる物質として、H、He、Li、Be、B、C、N及びOから選択される少なくともいずれか1つの物質が少なくとも加工部に添加されたTi合金を加工する。α安定化元素であるC、N等が添加されることにより、βトランザスを上昇させることができる。また、置換型元素よりも拡散係数が大きいこれらの侵入型元素がTi合金の格子間に入ることにより、同じα安定化元素であるAl等が添加されるよりも、加工性への影響を抑え、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、加工部のAl濃度を5.0重量%以下とし、かつβトランザスを上昇させる物質として、下式(1)で示されるAl当量[Al]eqが4.5重量%以上となる物質が加工部に添加されたTi合金を加工することが好適である。
[Al]eq=[Al]+([Zr]/6)+([Sn]/3)+10[O] ([]内は重量%) (1)
この構成によれば、加工部のAl濃度を5.0重量%以下とし、かつβトランザスを上昇させる物質として、上式(1)で示されるAl当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が加工部に添加されたTi合金を加工する。加工部のAl濃度を5.0重量%以下とし、加工部のα安定化元素であるAlの濃度を減少させることにより、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。また、Al当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が加工部に添加されていることにより、加工部のAl濃度が5.0重量%以下であっても、βトランザスの低下を抑えつつ、α安定化元素を添加することによる加工性の悪化を抑えることができる。
また、Vより拡散係数が大きい物質が少なくとも加工部に添加されたTi合金を加工することが好適である。
この構成によれば、Vより拡散係数が大きい物質が加工部に添加されたTi合金を加工する。このため、β安定化元素であり、Vより拡散係数が大きいCr,Fe等が加工部に添加されていることで、同じβ安定化元素であるVが添加されているよりも、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
この場合、加工部のV濃度を3.5重量%以下とし、且つ下式(2)で示されるMo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が加工部に添加されたTi合金を加工することが好適である。
[Mo]eq=[Mo]+([Ta]/5)+([Nb]/3.6)+([W]/2.5)+([V]/1.5)+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ([]内は重量%) (2)
この構成によれば、加工部のV濃度を3.5重量%以下とし、且つ上式(2)で示されるMo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が加工部に添加されたTi合金を加工する。このため、加工部のV濃度が3.5重量%以下であっても、Mo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が加工部に添加されていることにより、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、Ti合金の加工部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させてTi合金を加工することが好適である。
この構成によれば、Ti合金の加工部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させてTi合金を加工する。本発明の加工方法は、このような摩擦攪拌接合によりTi合金を加工した場合でも、加工部の靱性や、疲労特性を向上させることができる。
なお、本発明のTi合金の加工方法においては、(1)板状のTi合金の端部同士を突き合わせて加工部(接合部)とし、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させてTi合金同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状のTi合金の端部同士を突き合わせて加工部(接合部)とし、回転ツールをその加工部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)Ti合金同士を加工部(接合部)において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させてTi合金同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)Ti合金同士を加工部(接合部)において重ね合わせ、加工部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその加工部の長手方向に沿って回転させつつ移動させてTi合金同士を接合する摩擦攪拌接合の(1)〜(4)の4つの態様およびこれらの組み合わせを含む。あるいは、本発明のTi合金の加工方法においては、Ti合金の加工部に回転ツールを当接し、回転ツールを回転させて接合部におけるTi合金の表面部位を改質する態様を含む。これにより、Ti合金の強度と伸びを改善することができる。
また、本発明は、上記本発明のTi合金の加工方法によって、2つ以上のTi合金を接合して形成された構造物である。
上記本発明のTi合金の加工方法によって、2つ以上のTi合金を接合して形成された構造物は、接合部の靱性や、疲労特性が向上したものとできる。
本発明のTi合金の接合継手、Ti合金の加工方法及び構造体によれば、靱性や、疲労特性が大幅に向上したTi合金の接合継手とすることができる。
本発明の実施形態に係るTi合金の接合方法を示す斜視図である。 β安定化元素密度と温度をパラメータにしたTi合金の相図である。 Ti‐6Al‐4V合金の代表的な接合条件における接合温度と冷却速度とを示す表である。 接合温度(最高到達温度)ごとの金属組織を示す図である。 図4の微細組織を示す図である。 接合温度と冷却速度との金属組織への影響を示す図である。 各種のTi合金の性質を示す表である。 各種のTi合金の組成を示す表である。 各種のTi合金の回転ツールの回転速度と最大荷重との関係を示すグラフ図である。 各種のTi合金の接合時の荷重を示すグラフ図である。 各種のTi合金の接合条件ごとの平均荷重を示すグラフ図である。 接合時の温度を示すグラフ図である。 実験例において、接合部の温度を測定する方法を示す斜視図である 各種のTi合金の接合条件ごとの金属組織を示す図である。 図15の拡大視を示す図である。 各種のTi合金の接合条件ごとの金属組織を示す図である。 各種のTi合金の接合部の硬さ試験の結果を示す図である。 各種のTi合金の接合継手の引張強度を示すグラフ図である。 Ti‐6Al‐4V合金の接合条件ごとの衝撃強度を示す図である。 合金Aの接合条件ごとの衝撃強度を示す図である。 合金Bの接合条件ごとの衝撃強度と金属組織とを示す図である。 各種のTi合金の接合時の温度を示すグラフ図である。 接合速度と最高到達温度との関係を示すグラフ図である。 接合条件と最高到達温度との関係を示すグラフ図である。 接合速度と冷却速度との関係を示すグラフ図である。 合金Bの接合条件(冷却速度)ごとの接合部の金属組織を示す図である。 合金Bの接合条件(冷却速度)ごとの接合部の硬さ試験の結果を示すグラフ図である。 純Tiを接合時の温度を示すグラフ図である。 各接合条件における純Tiの摩擦攪拌接合後の接合部を示す図である。 純Tiの摩擦攪拌接合後のSEMによる金属組織であり、(a)は回転数300rpm−接合速度50mm/minの場合の金属組織であり、(b)は回転数350rpm−接合速度50mm/minの場合の金属組織であり、(c)は純Ti母材の金属組織である。 Ti‐6Al‐4V合金の接合条件ごとの最高到達温度と冷却速度とを示すグラフ図である。 Ti‐6Al‐4V合金の接合部のSEMによる金属組織であり、(a)は母材の金属組織であり、(b)(e)は回転数400rpm−接合速度100mm/minの場合の金属組織であり、(c)(f)は回転数400rpm−接合速度50mm/minの場合の金属組織であり、(d)は回転数400rpm−接合速度25mm/minの場合の金属組織である。 Ti‐6Al‐4V合金の接合条件ごとの引張強度を示すグラフ図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るTi合金の接合継手、Ti合金の接合方法及び構造体について説明する。本実施形態では、図1に示すように、板状のTi合金1,2の端部同士を接合部(加工部)3において突き合わせ、接合部3の表面側から回転ツール5のプローブ6を挿入してTi合金1,2同士を接合する。接合部3の表面側では、回転ツール5を囲繞するようにシールドカバー8が配置されている。
回転ツール5は、図1に示すように略円筒状をなし、先端に本体の径(ショルダー径)より小径の略円柱状のプローブ6を備えている。回転ツール5の材質は、WC等の超硬合金、Si,PCBN等のセラミックス、W,Mo,Co,Ir合金等の高融点金属等が望ましいが、本実施形態の接合方法によれば、回転ツール5への負担も軽減されるため、破壊靱性が高く比較的に安価なWC合金からなる従来の形式の回転ツール5を適用することができる。
シールドカバー8は略円筒形をなし、回転ツール5を囲繞するように配置されている。シールドカバー8は、接合時に回転ツール5が接合部3の長手方向に沿って移動するとともに、回転ツール5を囲繞しつつ同方向に移動することができるようになっている。接合時には、シールドカバー8内に不活性ガスがシールドガスとして供給される。シールドガスとして用いられる不活性ガスとしては、例えば、Arガス等を用いることができる。
図1に示すように、本実施形態では、接合部3に回転ツール5のプローブ6を挿入し、シールドカバー8内にシールドガスを供給しながら、回転ツール5を回転させつつ接合部3の長手方向に沿って移動させることによって、Ti合金1,2を接合することができる。後述するように、本実施形態では、接合部3の最高到達温度と冷却速度とを制御する必要があるため、回転ツール5の回転速度と移動速度(接合速度)は、条件となる最高到達温度と冷却速度とを満たすように制御される。
以下、本実施形態のTi合金の接合条件について説明する。図2に示すように、Ti合金の結晶構造は、低温においては、最密立方格子の構造(hcp構造)を有するα相である。Ti合金の結晶構造は、βトランザスと呼ばれる変態点を超える高温においては、体心立方格子の構造(bcc構造)を100%有するβ相となる。βトランザスは、例えば、Ti‐6Al‐4V合金では980℃であり、Ti‐4.5Al‐3V‐2Fe‐2Mo合金(以下、合金Aとする)では900℃である。Ti‐4.5Al‐2.5Cr‐1.2Fe‐0.1C合金(以下、合金Bとする)では970℃である。また、Ti合金は、α安定化元素やβ安定化元素といった添加元素の量や割合によって、常温での結晶構造をα相の単相、α相とβ相との2相共存、及びβ相の単相とすることができ、それぞれα合金、α‐β合金及びβ合金と呼ばれている。なお、上記のβトランザスは平衡温度であり、摩擦攪拌接合により歪が導入された場合には、実質のβトランザスが上記温度よりも下がる可能性がある。
β相ではTi合金はbcc構造を有する。bcc構造では、すべり系の数が12個と多いため、Ti合金が塑性変形し易く、摩擦攪拌接合等により加工し易い。一方、α相ではTi合金はhcp構造を有する。hcp構造では、すべり系の数が3個と少ないため、Ti合金が塑性変形し難く、摩擦攪拌接合等により加工し難い。そのため、従来はTi合金の摩擦攪拌接合は、βトランザスを超える温度でTi合金がβ相に相変態をした状態で行われている。しかしながら、この場合、接合終了後に常温で安定なα相あるいはα+β相への相変態が再度行われ際に、旧β粒内にラメラ状(針状)のα相が生成し、接合部の靱性が劣化することは上述した通りである。
そこで、本発明では、逆転の発想で、βトランザス温度以下の温度で旧β粒内にラメラ状のα相が生成しないように接合を行いつつ、接合温度付近におけるTi合金の塑性変形能を向上させることにより、接合部の特性の向上と接合のし易さとの両立を図る手法を開発した。あるいは、βトランザス温度を超える温度で摩擦攪拌接合を行ったとしても、旧β粒内に生成したラメラ状のα相の悪影響を抑制して、接合部の特性の向上と接合のし易さとの両立を図る手法を開発した。
図3に示すように、Ti‐6Al‐4V合金を図1に示すような装置により3種類の接合条件で摩擦攪拌接合を行う。Ti‐6Al‐4V合金の融点は1600℃であり、βトランザスは980℃である。ここで、摩擦攪拌接合時の接合部3の最高到達温度と冷却速度とは、回転ツール5の回転速度と接合速度とを変化させることにより制御できる。例えば、回転ツール5の回転速度(rpm)及び接合速度(mm/min)について、1000rpm、400mm/minのときは、接合部3の最高到達温度は1032℃でβトランザスを超え、接合部3の冷却速度は100.3℃/sと高冷却速度となる。400rpm、25mm/minのときは、接合部3の最高到達温度は994.2℃でβトランザスを超え、接合部3の冷却速度は15.18℃/sと低冷却速度となる。300rpm、25mm/minのときは、接合部3の最高到達温度は921.1℃でβトランザス以下となり、接合部3の冷却速度は9.89℃/sと低冷却速度となる。
図4及び図5に示すように、接合部3の最高到達温度がβトランザスを超える1000rpm、400mm/minのときと、400rpm、25mm/minのときとでは、旧β粒にラメラ状のα相が生成していることが判る。一方、接合部3の最高到達温度がβトランザス以下となる300rpm、25mm/minのときは、相変態が生じないため、旧β粒が見られず、α+β相の等軸組織となっていることが判る。また、接合部3の最高到達温度がβトランザスを超える1000rpm、400mm/minのときは、接合部3の最高到達温度がβトランザスを超えるものの、ラメラ状のα相は、400rpm、25mm/minのときより、微細化していることが判る。これは、図6に示すように、1000rpm、400mm/minのときは、冷却速度が極めて大きいため、ラメラ状のα相が微細化したものと考えられる。
以上より、接合部3の最高到達温度及び冷却速度の接合条件を制御することにより、接合後のTi合金の接合部3の金属組織を制御することが可能であることが判る。すなわち、以下の手法が考えられる。
(1)接合部の温度をβトランザスを通過して変化しないようにしつつ接合する。
(i)接合部の最高到達温度をβトランザス以下とする。
(ii)接合前の接合部が100%β相であるTi合金を接合する。
(2)接合部の冷却速度を40℃/s以上、より好ましくは100℃/s以上とする。
一方、本発明では、従来の回転ツールの素材を改良する手法とは逆に、接合されるTi合金1,2の組成について考察が行われた。図7に示すように、Ti合金には、強度、延性のバランスがとれ、広く使用されているが高強度であるが故に加工性が悪いTi‐6Al‐4V合金の他に、合金Aや、合金Bがある。図7に示すように、Ti‐6Al‐4V合金は、βトランザスが980℃なのに対し、合金Aが900℃と低く、合金Bはほぼ同じ970℃である。また、合金A及び合金B合金は、室温での引張強度においてTi‐6Al‐4V合金より優れている。一方、合金A及び合金B合金は、FSWの接合温度においては、Ti‐6Al‐4V合金よりも強度が低く、加工性が高いという特徴を有する。
図8に示すように、広く用いられるTi‐6Al‐4V合金に対して、合金A及び合金B等の組成は種々の元素が添加されている。ここで、α安定化元素であるAl、C、O、N等は、添加量が多くなるほど、βトランザスが上昇し、加工性が低下する。一方、β安定化元素であるV、Cr、Mo、Nb、Ta、Fe等は、添加量が多くなるほど、βトランザスが低下し、加工性が向上する。合金Aでは、β安定化元素であるVの含有量がTi‐6Al‐4V合金よりも低下し、同じβ安定化元素であるVよりも拡散係数が大きいFeが添加されることにより、熱間加工性が向上する。合金Aでは、β安定化元素であるMoが添加されることにより、ミクロ組織が微細化することにより、加工性が向上する。β安定化元素の例えばMo当量が大きくなることにより、超塑性発現温度が低下し、加工性が向上する。また、合金Aでは、α安定化元素であって、O以上に置換速度が速い置換元素であるO、C及びNが添加されていることにより、α安定化元素であるAlが5重量%以下に少なくされているにも関わらず、βトランザスの低下を防ぎ、Alが添加されているよりも、加工性への影響を抑えることができる。
また、Ti‐4.5Al‐4Cr‐0.5Fe‐0.2C合金を基に開発された合金Bでは各種特性のバランスに優れる。また、β安定化元素であるVは含まれなくなり、Vの替わりにVより拡散係数の大きいCrが添加されることにより、熱間加工性が向上するとともに、脆性が改善される。また、Vより拡散係数の大きいFeが添加されることにより、熱間加工性が向上するとともに、偏析が抑制される。また、O以上に置換速度が速いCが0.10重量%と多く添加されていることにより、α安定化元素であるAlが5重量%以下に少なくされているにも関わらず、βトランザスの低下を防ぎ、Alが添加されているよりも、加工性への影響を抑えることができる。また、合金Bでは、引張、曲げ、組織等の溶接性にも優れる。
以上より、添加元素の影響をまとめると、
α安定化元素:Al、C、O、N等。添加量が多くなるほど、βトランザスが上昇し、加工性が低下する。
β安定化元素:V、Cr、Mo、Nb、Ta、Fe等。添加量がおおくなるほど、βトランザスが低下し、加工性が向上する。
Al:引張強度、弾性率、クリープ強さを著しく増加させる。7重量%以上の添加ではα(TiAl)が形成され、著しく脆化する。5重量%以下の添加により、β相が安定化し、熱間加工性が向上する。
O,C及びN:α安定化元素。拡散速度大。α安定化元素の添加による加工性の影響を低減。
V:β安定化元素。加工性向上。
Mo:拡散速度抑制、粒径が微細化する。硬化。超塑性発生温度低下。
Fe:拡散速度大。β安定化元素。加工性向上。
Cr:熱間加工性が向上。脆性改善。
Si:0.1〜0.2%添加で転位のピン止め効果(転移運動抑制)があり、クリープ強さを向上させる。
Bi:0.1〜2.0%添加で、転位のピン止め効果があり、クリープ強さを向上させる。
Sn(中立的):クリープ強度改善(0.2〜1%)。
Zr(中立的):αおよびβ相強化(固溶強化)(2〜8%)。
特に、合金A,Bのような特性を得るためには、接合部3のAl濃度を5.0重量%以下とし、かつβトランザスを上昇させる物質として、下式(1)で示されるAl当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されたTi合金1,2を接合することが好ましい。
[Al]eq=[Al]+([Zr]/6)+([Sn]/3)+10[O] ([]内は重量%) (1)
あるいは、合金A,Bのような特性を得るためには、接合部3のV濃度を3.5重量%以下とし、且つ下式(2)で示されるMo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されたTi合金1,2を加工することが好適である。
[Mo]eq=[Mo]+([Ta]/5)+([Nb]/3.6)+([W]/2.5)+([V]/1.5)+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ([]内は重量%) (2)
図9に示すように、Ti‐6Al‐4V合金に対して、上記の添加元素が添加された合金A及び合金Bは、接合速度100mm/minで接合した場合は、いずれの回転ツールの回転速度であっても、摩擦攪拌接合時の回転ツールへの最大荷重が低減されていることが判る。また、図10に示すように、回転速度400rpm、接合速度100mm/minで接合した場合は、Ti‐6Al‐4V合金に対して合金A及び合金Bは、摩擦攪拌接合中の回転ツールへの荷重が低減されていることが判る。また、図11に示すように、Ti‐6Al‐4V合金に対して合金Bは、いずれの接合条件であっても、摩擦攪拌接合中の回転ツールへの平均荷重が低減されていることが判る。以上より、Ti‐6Al‐4V合金に対して合金A及び合金Bは、いずれの接合条件においても、より低荷重で接合が可能となり、合金Bでは、平均で約20%も回転ツールへの荷重を低減可能となる。したがって、従来型の回転ツールにより、βトランザス以下の温度で接合を行った場合であっても、回転ツールの寿命が向上し、コスト低減が可能となる。なお、これらの添加元素は、接合されるTi合金1,2の全体の組成として添加されていても良いし、接合部3のみに添加されていても良い。例えば、接合部(加工部)3のみに添加元素を添加するには、接合部3に粉末、顆粒状の添加材を供給しつつ、接合(加工)を行なったり、層状、板状の添加材をTi合金1,2同士の間に挟み込むことにより、接合部3のみに添加元素を添加することができる。
本実施形態では、Ti合金1,2の接合部(加工部)3において、Ti合金1,2の接合後の金属組織が、最密立方格子の構造を有するα相の等軸組織、α相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相の等軸組織、及びβ相の等軸組織のいずれかである。そのため、従来のTi合金の接合継手のように、β粒内にラメラ状のα相が含まれていないため、靱性や、疲労特性が大幅に向上したTi合金1,2の接合継手とすることができる。
また、本実施形態によれば、Ti合金1,2の加工方法において、Ti合金の接合部(加工部)3の温度を、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを通過して変化しないようにしつつ接合(加工)する。このため、接合中にα相からβ相への変態が生じず、接合後に接合部3のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、接合後の接合部3の金属組織は、α相の等軸組織や、α相とβ相とが共存しているα+β相の等軸組織や、β相の等軸組織とすることができ、接合部3の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、接合部(加工部)3の温度を、βトランザス以下の温度に制御しつつ接合する。このため、接合中にα相からβ相への変態が生じず、接合後に接合部3のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、接合後の接合部3の金属組織は、α相の等軸組織や、α相とβ相とが共存しているα+β相の等軸組織とすることができ、接合部3の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、接合前の接合部3が100%β相であるTi合金1,2を接合する。このため、接合により接合部3の温度が上昇したとしても、接合中にα相からβ相への変態が生じず、接合後に接合部3のβ粒内にラメラ状のα相が生成しない。したがって、接合後の接合部3の金属組織は、β相の等軸組織とすることができ、接合部3の靱性や、疲労特性を大幅に向上させることができる。また、この構成によれば、接合部3を変形能に優れ、加工しやすいβ相の状態で接合を行うことにより、Ti合金1,2の接合を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、Ti合金の加工方法において、Ti合金1,2の接合後の接合部(加工部)3の冷却速度を40℃/s以上、より好ましくは100℃/s以上に制御しつつ接合(加工)する。このため、α相あるいはα+β相から100%β相へ変態する温度であるβトランザスを超える温度に接合部3が達したとしても、接合後に接合部3のβ粒内に生成するラメラ状のα相が微細化する。このため、接合部3の靱性や、疲労特性を向上させることができる。また、この構成によれば、接合部3をβトランザス以上の温度とし、変形能に優れ、加工しやすいβ相の状態で接合を行うことにより、Ti合金1,2の接合を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、最密立方格子の構造を有するα相、及びα相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%β相へ変態する温度であるβトランザスを上昇させるAl以外の物質が少なくとも接合部3に添加されたTi合金1,2を接合する。このため、接合部3の温度をβトランザス以下の温度に制御しつつ接合を行うことが容易となる。また、βトランザスを上昇させる物質としてAl以外が添加されているため、加工性への悪影響が抑えられ、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、βトランザスを上昇させる物質として、H、He、Li、Be、B、C、N及びOから選択される少なくともいずれか1つの物質が少なくとも接合部3に添加されたTi合金1,2を接合する。α安定化元素であるC、N等が添加されることにより、βトランザスを上昇させることができる。また、置換型元素よりも拡散係数が大きいこれらの侵入型元素がTi合金1,2の格子間に入ることにより、同じα安定化元素であるAl等が添加されるよりも、加工性への影響を抑え、Ti合金の加工を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、接合部3のAl濃度を5.0重量%以下とし、かつβトランザスを上昇させる物質として、上式(1)で示されるAl当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されたTi合金1,2を加工する。接合部3のAl濃度を5.0重量%以下とし、接合部3のα安定化元素であるAlの濃度を減少させることにより、Ti合金1,2の接合を容易なものとすることができる。また、Al当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されていることにより、接合部3のAl濃度が5.0重量%以下であっても、βトランザスの低下を抑えつつ、α安定化元素を添加することによる加工性の悪化を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、Vより拡散係数が大きい物質が接合部3に添加されたTi合金1,2を接合する。このため、β安定化元素であるVより拡散係数が大きいβ安定化元素であるCr,Fe等が接合部3に添加されていることで、Vが添加されているよりも、Ti合金1,2の接合を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、接合部3のV濃度を3.5重量%以下とし、且つ上式(2)で示されるMo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されたTi合金1,2を加工する。このため、接合部3のV濃度が3.5重量%以下であっても、Mo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が接合部3に添加されていることにより、Ti合金1,2の接合を容易なものとすることができる。
また、本実施形態によれば、Ti合金1,2の接合部3に棒状の回転ツール5を挿入し、回転ツール5を回転させてTi合金1,2を接合する。本実施形態の接合方法は、このような摩擦攪拌接合よりTi合金を接合した場合でも、接合部3の靱性や、疲労特性を向上させることができる。
また、本実施形態のTi合金1,2の接合方法によって、2つ以上のTi合金1,2を接合して形成された構造物は、接合部3の靱性や、疲労特性が向上したものとできる。
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、摩擦攪拌接合により接合及び加工されたTi合金や、摩擦攪拌接合によってTi合金を接合及び加工する方法の例について中心に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記本発明の手法により、摩擦圧接や圧延等の塑性変形を伴う接合法等によって接合されたTi合金や、摩擦圧接や圧延等の塑性変形を伴う接合法等によってTi合金を接合する方法も本発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態においては、Ti合金1,2同士を接合する態様を中心に説明したが、Ti合金とTi合金以外の異材とを接合する態様も、上記本発明の手法をTi合金の側に施すことにより、本発明の範囲に含まれる。
(実験例1)
以下、Ti‐6Al‐4V合金、合金A及び合金Bを接合条件を変えつつ、図1に示した摩擦攪拌接合により接合した。試料として、Ti‐6Al‐4V合金は長さ300mm×幅35mm×厚さ2mmの物を用い、合金A及び合金Bは長さ300mm×幅50mm×厚さ2mmの物を用いた。使用した回転ツール5は、材質はWC合金からなり、ショルダー径は15mm、プローブ6の径は6mm、プローブ6の長さは1.8mmの物を用いた。シールドガスとしてはArガスを使用した。回転ツール5の前進角はいずれの測定においても3°とした。この装置により、図12に示すように、例えば接合条件が、回転ツール5の回転速度が400rpm、接合速度が25mm/minのときに、最高到達温度は887℃となった。なお、接合部3の温度の測定は、図13に示すように、接合部3の中央部であって、回転ツール5が挿入される表面とは反対側の裏面に熱電対20を設置することにより測定した。
接合された試料については、金属組織をSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)、TEM(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)により観察し、硬さ試験、引張試験及び靱性を測定する微小衝撃試験を行った。
図14のSEMによる拡大視及び図15のTEMによる拡大視に示すように、Ti‐6Al‐4V合金及び合金Aのいずれも、βトランザスを超える最高到達温度となる接合条件では、β粒内にラメラ状のα相が生成していることが判る。一方、βトランザス以下の最高到達温度となる接合条件では、β粒内にラメラ状のα相が生成していない接合前の母材(試料)と同様の等軸組織であることが判る。
図16のSEMによる拡大視に示すように、Ti‐6Al‐4V合金では、βトランザスを超える最高到達温度となる接合条件では、ラメラ組織が生成していることが判る。一方、合金A及び合金Bでは、βトランザスを超える最高到達温度となる接合条件では、ラメラ組織が生成しているものの、より微細なラメラ組織であることが判る。一方、βトランザス以下の最高到達温度となる接合条件では、Ti‐6Al‐4V合金、合金A及び合金Bのいずれも、接合前の母材と同様の等軸組織であることが判る。
図17に示すように、図16のβトランザスを超える最高到達温度となる接合条件により接合後にラメラ組織が生成している試料についての硬さ試験の結果は、Ti‐6Al‐4V合金では、接合部3付近の硬さは母材と同程度なのに対し、合金A及び合金Bでは、母材よりも硬度が向上していることが判る。これは、いずれの試料についても、比較的に冷却速度が高く生成したラメラ組織が微細であり、特に合金A及び合金Bでは、添加元素のためにラメラ組織が微細となり、硬度が向上したものと考えられる。また、図18に示すように、これらの試料の引張試験の結果は、Ti‐6Al‐4V合金、合金A及び合金Bのいずれも、母材よりも引張強度が増加していることが判る。特に、Ti‐6Al‐4V合金に比べて、合金A及び合金Bは、接合の前後において引張強度に優れることが判る。
図19〜図21に示すように、Ti‐6Al‐4V合金、合金A及び合金Bのいずれも、βトランザスを超える最高到達温度となる接合条件による物よりも、βトランザス以下の最高到達温度となる接合条件による物の方が衝撃強度に優れ、母材よりも衝撃強度の高い物とできることが判る。なお、βトランザス以下とする接合条件は、Ti‐6Al‐4V合金で回転速度200rpm−接合速度25mm/minであり、合金Aで回転速度150rpm−接合速度50mm/minであり、合金Bで150rpm-接合速度25mm/minである。図21に示すように、合金Bについては、βトランザス以下の最高到達温度となる接合条件では、ラメラ組織が9%低下し、等軸組織が23%増加しており、母材よりも高い衝撃強度が得られる物となった。一方、βトランザスを超える最高到達温度となる接合条件のものについても、後述するように、冷却速度が100℃/s以上に高いため、ラメラ組織が微細化しており、母材と同程度の衝撃強度となっている。
図22〜図25に示すように、回転ツール5の回転速度及び接合速度の接合条件を変化させることにより、接合部3の最高到達温度と冷却速度を制御することができることが判る。なお、図22は、回転速度400rpm、接合速度100mm/minによる値を示す。また、図23は、回転速度1000rpmによる値を示す。図24については、回転速度が異なる場合でも、同じ接合速度ではほとんど同じ冷却速度を示すため、種々の回転速度で得られた結果を合せて示した。また、回転ツール5の前進角はいずれも、3°である。ここで、合金Bについて、いずれもβトランザスを超える最高到達温度となる接合条件で摩擦攪拌接合を行ったものについては、図26に示すように、トランザスを超える最高到達温度となる接合条件であっても、冷却速度が100℃/s以上に高いものは、ラメラ組織の大きさが小さくなっていることが判る。図27に示すように、これらの試料について、硬度試験を行うと、冷却速度が100℃/s以上に高いものは、より高い硬度を示し、その硬度は母材よりも向上していることが判る。
(実験例2)
以下、純Tiを接合条件を変えつつ、図1に示した摩擦攪拌接合により接合した。試料として、純Tiの試料は厚さ2mmの物を用いた。使用した回転ツール5は、材質はWC合金からなり、ショルダー径は15mm、プローブ6の径は6mm、プローブ6の長さは1.8mmの物を用いた。シールドガスとしてはArガスを使用した。接合条件として、回転ツール5の回転速度を300rpmとし、接合速度を75mm/minとした場合は、接合中の接合部3の温度は、図28に示すようになり、最高到達温度がβトランザス以下の温度となる。
図29に示すように、接合条件として、回転ツール5の回転速度及び接合速度が、300rpm−50mm/min、300rpm−75mm/min、350rpm−50mm/min及び350mm−75mm/minの場合は、いずれも最高到達温度がβトランザス以下となり、良好な接合が得られていることが判る。また、図30(c)に示す純Ti母材のSEMにより観測された金属組織にくらべて、図30(a)に示す回転ツール5の回転速度及び接合速度が、300rpm−50mm/minの場合の金属組織や、図30(b)に示す350rpm−50mm/minの場合の金属組織は、α相からβ相へ変態せず、結晶粒が母材よりも小さくなっていることが判る。
(実験例3)
以下、Ti‐6Al‐4V合金について、接合条件を変えつつ、図1に示した摩擦攪拌接合により接合した。試料として、純Tiの試料は厚さ2mmの物を用いた。使用した回転ツール5は、材質はWC合金からなり、ショルダー径は15mm、プローブ6の径は6mm、プローブ6の長さは1.8mmの物を用いた。シールドガスとしてはArガスを使用した。
図31に示すように、回転ツール5の回転速度及び接合速度が、300rpm−25mm/min、400rpm−50mm/min及び400rpm−100mm/minの場合は、最高到達温度がTi‐6Al‐4V合金のβトランザス以下となっていると考えられる。しかしながら、図32(b)(e)に示す400rpm−100mm/minの金属組織や、図32(c)(f)に示す400rpm−50mm/minの場合の金属組織には、図32(a)に示す母材や、図32(d)に示す400rpm−25mm/minに比べて、β粒内にラメラ状のα相が生成していることが判る。これは、摩擦攪拌接合による歪みが導入されたことにより、実質的なβトランザスが低下して、100%β相へ変態が生じたためと考えられる。
しかしながら、図31に示すように、400rpm−50mm/minの冷却速度が20℃/sであるのに比べて、400rpm−100mm/minの場合は冷却速度が40℃/sと速くなっている。そのため、図32(b)(e)に示す400rpm−100mm/minの金属組織では、図32(c)(f)に示す400rpm−50mm/minの金属組織に比べて、ラメラ組織が微細化していることが判る。
図33に示すように、引張強度についても、実質的にβトランザスを超える最高到達温度で接合されたにも関わらず、冷却速度が40℃/sとなる400rpm−100mm/minの場合は、引張強度が母材よりも著しく高くなっていることが判る。
1,2…Ti合金、3…接合部、5…回転ツール、6…プローブ、8…シールドカバー、20…熱電対。

Claims (8)

  1. Ti合金の加工部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させて前記Ti合金を加工するTi合金の加工方法であって、
    前記加工部の温度を、最密立方格子の構造を有するα相、及び前記α相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%前記β相へ変態する温度であるβトランザスを通過して変化しないように、
    前記加工部の温度が前記βトランザス以下の温度になるように前記回転ツールの回転速度と移動速度とを制御しつつ前記Ti合金を加工する、Ti合金の加工方法。
  2. Ti合金の加工後の加工部の冷却速度が40℃/s以上になるように前記回転ツールの回転速度と移動速度とを制御しつつ前記Ti合金を加工する、請求項1に記載のTi合金の加工方法。
  3. Ti合金の加工後の加工部の冷却速度が100℃/s以上になるように前記回転ツールの回転速度と移動速度とを制御しつつ前記Ti合金を加工する、請求項1又は2に記載のTi合金の加工方法。
  4. 最密立方格子の構造を有するα相、及び前記α相と体心立方格子の構造を有するβ相との2相が共存しているα+β相のいずれから、100%前記β相へ変態する温度であるβトランザスを上昇させるAl以外の物質が少なくとも前記加工部に添加されたTi合金を加工する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のTi合金の加工方法。
  5. 前記βトランザスを上昇させる物質として、H、He、Li、Be、B、C、N及びOから選択される少なくともいずれか1つの物質が少なくとも前記加工部に添加されたTi合金を加工する、請求項4に記載のTi合金の加工方法。
  6. 前記加工部のAl濃度を5.0重量%以下とし、かつ前記βトランザスを上昇させる物質として、下式(1)で示されるAl当量[Al]eqが4.0重量%以上となる物質が前記加工部に添加されたTi合金を加工する、請求項4又は5に記載のTi合金の加工方法。
    [Al]eq=[Al]+([Zr]/6)+([Sn]/3)+10[O] ([]内は重量%) (1)
  7. Vより拡散係数が大きい物質が少なくとも前記加工部に添加されたTi合金を加工する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のTi合金の加工方法。
  8. 前記加工部のV濃度を3.5重量%以下とし、且つ下式(2)で示されるMo当量[Mo]eqが5.0重量%以上となる物質が前記加工部に添加されたTi合金を加工する、請求項7に記載のTi合金の加工方法。
    [Mo]eq=[Mo]+([Ta]/5)+([Nb]/3.6)+([W]/2.5)+([V]/1.5)+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ([]内は重量%) (2)
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