JPH08134615A - 機械的性質の均衡性に優れた高力Ti合金の製造方法 - Google Patents

機械的性質の均衡性に優れた高力Ti合金の製造方法

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JPH08134615A
JPH08134615A JP6276798A JP27679894A JPH08134615A JP H08134615 A JPH08134615 A JP H08134615A JP 6276798 A JP6276798 A JP 6276798A JP 27679894 A JP27679894 A JP 27679894A JP H08134615 A JPH08134615 A JP H08134615A
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strength
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JP6276798A
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Toshio Matsumoto
年男 松本
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 引張強度、疲労強度、クリープ強度、破壊靭
性値、疲労亀裂伝播特性および弾性係数等の機械的性質
が、いずれもTi−6Al−4V合金と同等以上を示し
て該合金を凌駕する様な、機械的性質の均衡性に優れた
高力Ti合金を製造する為の有用な方法を提供する。 【構成】 Al:4.5〜5.5%,Sn:1.5〜
2.5%,Zr:3.5〜4.5%,Cr:2.5〜
3.5%,Mo:2.5〜3.5%を夫々含有し、残部
がTiおよび不可避不純物からなるTi合金を、(β変
態点−35℃)〜(β変態点未満)の温度範囲で保持し
た後冷却して溶体化処理を行ない、その後(β変態点−
220℃)〜(β変態点−160℃)の温度範囲で4〜
6時間保持するという時効処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、航空機用ジェットエン
ジンや航空機々体部品等に適用して航空機の軽量化・高
強度化を達成することのできる高力Ti合金を製造する
為の方法に関し、特に各種の機械的性質の均衡性に優
れ、従来のTi−6Al−4V合金を凌駕する高力Ti
合金の製造を可能にした方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Ti合金は、比強度、靭性および耐熱性
等に優れた特性を有していることから、航空機用材料と
して重要な位置を占めており、その使用量も益々増加す
る傾向にある。特に航空機の軽量化への要求から、板材
等の非回転構造物に限らず、ジェットエンジンのファン
・ディスク等の回転構造物にも適用されている。こうし
たTi合金は、航空機等の軽量化・高強度化を実現する
為に、夫々の使用目的に応じたTi合金の種類と熱処理
が採用されている。
【0003】ところでTi合金は、大きく分けてα型、
α+β型およびβ型の3種類が知られているが、350
℃以下の比較的低温の使用条件で最も多く使用されてい
るTi合金は、α+β型であるTi−6Al−4V合金
(以下、Ti−6−4合金と略記する)である(例え
ば、「チタン合金に於ける最近の進歩」、チタニウム協
会創立30周年記念国際シンポジウム、1982年、第161
〜170 頁)。またこのようなTi合金の高強度化を達成
するには、α+β2相高温域の溶体化を含む溶体化時効
処理または溶体化過時効処理が行なわれるのが一般的で
ある。
【0004】Ti−6−4合金が最も多く使用されてい
る理由は、この合金が引張強度、疲労強度(高サイクル
疲労強度、低サイクル疲労強度等)、破壊靭性値等の機
械的性質が共に優れ、換言すれば機械的性質の均衡性に
優れていると言われているからである。即ち、航空機用
の素材として設計上必要とされる機械的性質は、引張強
度、疲労強度、クリープ強度、破壊靭性値、疲労亀裂伝
播特性および弾性係数等様々であるが、上記Ti−6−
4合金は、要求される機械的特性を最も多く具備した合
金であると言われている。
【0005】上記の様なTi−6−4合金に対して、前
記α型Ti合金やβ型Ti合金について機械的性質の均
衡性という観点から考察すれば、いずれも航空機用の素
材として設計上必要とされる機械的性質を必ずしも具備
しているとは言えない。即ち、前記α型Ti合金はクリ
ープ強度に優れ、且つ弾性係数も高いという利点を有し
ているものの、強度的に不十分であり、且つ熱間鍛造性
が悪いという欠点がある。また前記β型Ti合金は、引
張強度や破壊靭性に優れているが、クリープ強度や弾性
係数が低いという欠点がある(前記「チタン合金に於け
る最近の進歩」)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、航空機用
の素材としてはその機械的性質の均衡性から、Ti−6
−4合金が汎用されてきたのであるが、航空機等の軽量
化・高強度化に対する要求は益々高まっており、上記T
i−6−4合金の機械的性質を凌駕する様なTi合金の
実現が望まれているのが実情である。
【0007】本発明はこうした技術的背景の下になされ
たものであって、その目的は、引張強度、疲労強度(高
サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度等)、クリープ
強度、破壊靭性値、疲労亀裂伝播特性および弾性係数等
の機械的性質が、いずれも上記Ti−6−4合金よりも
同等以上を示して該合金を凌駕する様な、機械的性質の
均衡性に優れた高力Ti合金を製造する為の有用な方法
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すること
のできた本発明方法とは、Al:4.5〜5.5%,S
n:1.5〜2.5%,Zr:3.5〜4.5%,C
r:2.5〜3.5%,Mo:2.5〜3.5%を夫々
含有し、残部がTiおよび不可避不純物からなるTi合
金を、(β変態点−35℃)〜(β変態点未満)の温度
範囲で保持した後冷却して溶体化処理を行ない、その後
(β変態点−220℃)〜(β変態点−160℃)の温
度範囲で4〜6時間保持する時効処理を行なう点に要旨
を有する機械的性質の均衡性に優れた高力Ti合金の製
造方法である。尚この方法において、溶体化処理の際
に、上記温度範囲で保持する時間は2〜5時間程度が好
ましく、また冷却する手段は水冷または空冷のいずれも
採用できるが、水冷である方が好ましい。
【0009】また本発明においては、前記の溶体化処理
を行なった後、(β変態点−115℃)〜(β変態点−
55℃)の温度範囲で保持した後冷却して再度溶体化処
理を行ない、その後(β変態点−220℃)〜(β変態
点−160℃)の温度範囲で4〜6時間保持する前記時
効処理を行なう様にしても良く、これによって本発明の
効果をより一層向上させることができる。
【0010】
【作用】本発明者は、航空機用の素材として要求される
機械的性質のうち、近年特に注目されている疲労亀裂伝
播特性を改善するという観点から、Ti合金成分組成に
ついて、かねてより検討を重ねてきた。その結果、少な
くとも疲労亀裂伝播特性に有利なTi合金成分組成は、
上記した様な成分組成、即ちTi−5Al−2Sn−4
Zr−3Cr−3Moの合金成分系であることを明らか
にし(以下、この成分系の合金をTi−5−2−4−3
−3合金と略称する)、その技術的意義が認められたの
で、同一出願人によって先に出願している(特願平6−
205646号)。また上記Ti−5−2−4−3−3
合金は、上記疲労亀裂伝播特性が良好である他、0.2
%耐力が約115kgf/mm2 の強度レベルが得られ、疲労
強度(高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度等)、
クリープ強度および破壊靭性値等の機械的特性について
も比較的良好な値が得られたのである。
【0011】まず上記Ti合金が完成された経緯および
合金成分限定理由について説明する。本発明者は、Ti
合金の基本的な合金成分系として「Ti−Al−Sn−
Zr−Cr−Mo」系を選び、疲労亀裂伝播特性を改善
するという観点から各合金元素(Al,Sn,Zr,C
rおよびMo)の最適な範囲について種々検討を重ね
た。
【0012】そして本発明者らは、Mo当量=Mo
(%)+1.6Cr(%)とし、Crが0〜4%で且つ
Mo当量が6〜10%の範囲内のTi−6Al−2Sn
−4Zr−xCr−yMo系合金(但し、0≦x≦4,
2≦y≦6)について、主に疲労亀裂伝播特性の観点か
ら最適なCr,Moの範囲について検討した。具体的に
は、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo,Ti−6
Al−2Sn−4Zr−2Cr−3Mo,Ti−6Al
−2Sn−4Zr−2Cr−6Mo,Ti−6Al−2
Sn−4Zr−3Cr−3Mo,Ti−6Al−2Sn
−4Zr−4Cr−2Mo,Ti−6Al−2Sn−4
Zr−4Cr−4Moの各種合金系について比較検討し
た。
【0013】疲労亀裂伝播特性を検討するに当たって
は、疲労強度(高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強
度)、クリープ強度および破壊靭性値等の機械的特性に
与える影響についても加味して総合的に判断した。尚用
いたTi合金のミクロ組織は等軸α組織とし、強度レベ
ルとしては0.2%耐力が約115kgf/mm2 となる様
に、β変態点温度未満での2回の溶体化処理および時効
処理を施した。またTi合金中の酸素含有量は、ほぼ
0.1重量%の一定とし、N,C等の不純物元素は低い
レベルに一定に保った。
【0014】上記と同様にして、Al,SnおよびZr
についても検討した。このとき、Alの効果について
は、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6Moと
Ti−4.5Al−2Sn−4Zr−2Cr−6Moに
ついて比較検討し、SnおよびZrの効果については、
Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Moを基本系とし
て、Ti−6Al−1Sn−4Zr−6MoとTi−6
Al−2Sn−2Zr−6Moについて比較検討した。
尚Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo以外の比較材
として、Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Cr−4M
oについても適宜使用した。
【0015】そして上記の各合金元素の最適範囲の検討
の結果、前記の如く、各合金元素をAl:4.5〜5.
5%,Sn:1.5〜2.5%,Zr:3.5〜4.5
%,Cr:2.5〜3.5%,Mo:2.5〜3.5%
とすれば、疲労亀裂伝播特性の良好なTi合金が実現で
きることを見出したのである。次に、各合金元素の範囲
限定理由について、更に詳細に説明する。
【0016】Al:4.5〜5.5% Alはα相に固溶してα相を強化し、材料の強度を上げ
るのに有効な合金元素である。ところでAlは、Snと
Zrとの関係で、下記(1)式を満足する必要があるこ
とが知られており(「Beta Titanium Alloys in the 8
0's」,A publication of the Metallurgical Society o
f AIME(1983),第239 〜255 頁)、この式を満足しない
ときは、α2 相(Ti3 Al)という規則相を生じ、脆
化の原因になると言われている。 Al当量(%)=Al(%)+1/3Sn(%)+1/
6Zr(%)+10×O2 (%)<9 …(1)
【0017】上記(1)式におけるパラメーターのう
ち、SnおよびZrについては、後述する様に平均的に
2%(1.5〜2.5%)および4%(3.5〜4.5
%)と夫々規定した。従って、上記(1)式からAl
(%)は、<6.67(%)となる。
【0018】上記の範囲内においてAlの含有量を下げ
ると、破壊靭性値および疲労亀裂伝播特性が良好になる
ことが、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6M
oとTi−4.5Al−2Sn−4Zr−2Cr−6M
oの比較によって明らかであった。しかしながら、Al
の含有量を下げると強度およびクリープ強度が下がるこ
とが、前記Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6
MoとTi−4.5Al−2Sn−4Zr−2Cr−6
Moの比較、およびTi−6Al−2Sn−4Zr−3
Cr−3MoとTi−5Al−2Sn−4Zr−3Cr
−3Moの比較によって明らかであった。またAlの含
有量を上げると、高サイクル疲労にとって不利であるこ
とが、前記Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6
MoとTi−4.5Al−2Sn−4Zr−2Cr−6
Moの比較によって明らかであった。以上の結果から、
特に疲労亀裂伝播特性を良好にしつつ他の機械的特性も
劣化させないAl含有量の範囲としては、4.5〜5.
5%が最適であると判断できた。
【0019】Sn:1.5〜2.5%およびZr:3.
5〜4.5% SnおよびZrは、α相とβ相にほぼ均等に固溶し、合
金の強度を上げるのに有効な合金元素である。SnやZ
rの含有量を下げると、クリープ強度が大きく低下し且
つ強度も低下することが、Ti−6Al−2Sn−4Z
r−6Mo、Ti−6Al−1Sn−4Zr−6Moお
よびTi−6Al−2Sn−2Zr−6Moの比較によ
って明らかであった。またSnやZrの含有量を下げて
も、破壊靭性や疲労亀裂伝播特性にはそれほど有利には
作用しないことが、上記と同様の比較によって明らかで
あった。
【0020】以上の実験事実、従来のTi合金Ti−6
Al−2Sn−4Zr−6MoにおけるSnやZrの含
有量、および前記(1)式を考慮し、SnおよびZrの
含有量は平均的には夫々2%および4%必要であると判
断できた。こうしたことから、Sn:1.5〜2.5
%,Zr:3.5〜4.5%と規定した。
【0021】Cr:2.5〜3.5%およびMo:2.
5〜3.5% CrおよびMoは、β相に固溶し、β相を強化するのに
有効な合金元素である。本発明者らは、疲労亀裂伝播特
性および破壊靭性の観点から、Ti−6Al−2Sn−
4Zr−xCr−yMo系におけるCrおよびMoの最
適含有量について検討した。
【0022】その結果、下記に示す様な知見が得られ
た。まず同じMo当量であっても、Moの単独添加より
もCrとMoとの複合添加の方が、疲労亀裂伝播特性お
よび破壊靭性には有利であることが、Ti−6Al−2
Sn−4Cr−6MoとTi−6Al−2Sn−4Zr
−2Cr−3Moの比較によって明らかであった。また
同じMo添加量であっても、Crを添加した方が疲労亀
裂伝播特性が良好である(即ち、疲労亀裂伝播速度が小
さい)ことが、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo
とTi−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6Moの比
較によって明らかであった。更に、Cr添加量が同じで
あっても、Mo添加量が少ない方が疲労亀裂伝播特性お
よび破壊靭性には有利であることが、Ti−6Al−2
Sn−4Zr−2Cr−6MoとTi−6Al−2Sn
−4Zr−2Cr−3Moの比較によって明らかであっ
た。一方Cr添加量が4%にもなると、疲労亀裂伝播特
性が急激に悪化し、且つ破壊靭性も大きく低下すること
が、Ti−6Al−2Sn−4Zr−4Cr−4Moと
Ti−6Al−2Sn−4Zr−4Cr−2Moによっ
て明らかであった。
【0023】以上のことから、少なくともTi−6Al
−2Sn−4Zr−xCr−yMo系については、Cr
添加量は4%未満(即ち、上記X<4)とする必要があ
り、Cr添加量が4%以上になるとCr化合物の析出す
る可能性があることが推定された。
【0024】そこで本発明者は、Moの添加量を3%の
一定とし、Cr添加量を3%から2%と変えて検討した
ところ、Crの添加量が3%であるときの方が疲労亀裂
伝播特性に良好な結果をもたらすことが、Ti−6Al
−2Sn−4Zr−3Cr−3MoとTi−6Al−2
Sn−4Zr−2Cr−3Moの比較によって明らかに
なった。以上のことから、Cr添加量は3%が最適であ
ると判断できた。本発明ではその許容量も考慮してCr
添加量を2.5〜3.5%とした。
【0025】一方、Cr添加量を一定として、Moの添
加量を下げると疲労亀裂伝播特性や破壊靭性に有利であ
ることが、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−6
MoとTi−6Al−2Sn−4Zr−2Cr−3Mo
の比較によって明らかになった。即ち、合金系にも依存
することは当然予想されるが、Moの添加量としては6
%よりも3%の方が疲労亀裂伝播特性や破壊靭性にとっ
て有利であることがわかった。このMo添加量の範囲内
で既述の機械的性質が単調に変化するものと考えると、
Mo添加量は実験範囲内では3%以下であることが好ま
しい。ここで、Mo添加量を2%とし、最適Cr添加量
の3%を採用すると、Mo当量は6.8%となってNe
arβ型Ti合金(後述する)としてはβ安定化能が若
干低くなる。従って、Mo添加量は3%が妥当なところ
であると判断できた。またこのときのMo当量は、7.
8%である。尚本発明に係る合金では、許容量も考慮し
てMo添加量の範囲を2.5〜3.5%と規定した。
【0026】本発明に係るTi−5−2−4−3−3合
金は、α+β型の中でもβ型に近いNearβ型Ti合
金であり、前記Ti−6−4合金に比べて、よりβ型に
近いものである。β型に近いということは、熱処理硬化
性が高く、熱処理によって厚肉材であっても高強度化が
図れることを意味する。
【0027】本発明に係るTi−5−2−4−3−3合
金の高強度熱処理材は、他の従来合金を同一レベルの強
度に熱処理したものに比較して疲労強度等の機械的性質
が優れているものであるが、高強度の為に破壊靭性値は
若干低くなる。0.2%耐力が約115kgf/mm2 の強度
レベルというのは、Ti−6−4合金で言えば、図1に
示される様に、1/2インチ(12.7mm)以下の薄
肉材で、熱処理によって得られる最高の値に近いもので
ある。また図1から明らかな様に、Ti−6−4合金に
おいても、厚肉材になれば、強度が下がるのである。
【0028】本発明に係るTi−5−2−4−3−3合
金においても、時効熱処理温度を上げていき、完全焼鈍
させれば、強度が下がることが予想される。しかしなが
ら、上記Ti−5−2−4−3−3合金は、元来高強度
材となる様にその合金成分組成を設計してあるので、同
一厚みではTi−6−4合金よりも高強度となることが
予測される。この完全焼鈍したTi−5−2−4−3−
3合金が、同一寸法のTi−6−4合金に比べて、引張
強度以外の他の重要な機械的性質である破壊靭性値の絶
対値そのものも高く、且つ疲労強度やクリープ強度が優
れていれば、従来のTi−6−4合金よりも優れたTi
合金材料として使用できることが期待できる。
【0029】本発明者は、こうした着想に基づき、上記
Ti−5−2−4−3−3合金の最適な熱処理条件につ
いて検討を重ねた。その結果、溶体化処理および時効処
理(焼鈍処理も含む)の条件を適切にすれば、各種の機
械的性質の優れた、即ち機械的性質の均衡性に優れた、
前記Ti−6−4合金を凌駕するTi合金が得られるこ
とを見い出し、本発明を完成した。本発明における熱処
理条件について、更に詳細に説明する。尚以下の説明で
は、β変態点を「Tβ」と略記する。
【0030】本発明において、最初に行なう溶体化処理
は、(Tβ−35℃)〜(Tβ未満)の温度範囲で保持
した後冷却して行なう必要がある。この溶体化処理の目
的は、初析α粒(等軸α粒)の微細化を図るものである
が、その為には溶体化温度を(Tβ−35℃)以上にす
る必要がある。また初析α粒を微細にするという観点か
らすれば、溶体化温度はできるだけ高い方が良いが、T
β以上になると針状組織になるので、Tβ未満にする必
要がある。
【0031】上記溶体化処理における保持時間は、溶質
原子を十分に拡散させるという観点から、1時間以上と
すべきであるが、あまり長時間保持するとα粒が成長す
るので、5時間以下とすべきである。上記溶体化処理に
おいては、上記温度に保持された後冷却され、その冷却
する手段は水冷または空冷のいずれでも採用できるが、
初析α粒の粗大化を防止するという観点からすれば、で
きるだけ早い冷却速度で行なうのが良いので、水冷を行
なう方が好ましい。
【0032】本発明においては、上記の溶体化処理を行
なった後、(Tβ−220℃)〜(Tβ−160℃)の
温度範囲で4〜6時間保持する時効処理を行なう必要が
ある。このときの熱処理は、引張強度を下げる目的で行
なわれる所謂焼鈍であるが、本発明者は比較的高温であ
る700℃程度が適当であると考え、その最適範囲を検
討した。即ち、本発明で対象とするTi−5−2−4−
3−3合金を開発した時点では、比較的低温である61
0℃程度で時効を行なうことによって、初期の目的が達
成されたのであるが、本発明では前述した如く、比較的
高い温度領域で完全焼鈍を行なうことによって、機械的
性質の均衡性に優れたTi合金が得られたのである。ま
たこのときの熱処理には、初析α粒のマトリックスであ
る微細針状組織(ラメラーα相)を粗大化して機械的性
質を向上させるという作用も発揮する。即ち、Ti合金
における破壊靭性等の特性を良好にするには、初析α粒
が微細で且つ前記微細針状組織がある程度粗大であるこ
とが必要であることが知られているが、この熱処理には
前記微細針状組織を粗大化する作用も発揮するのであ
る。これらの作用を発揮させる為には、焼鈍温度は少な
くとも(Tβ−220℃)以上とする必要があるが、こ
の温度があまり高くなり過ぎると強度上昇をもたらすの
で、(Tβ−160℃)以下とすべきである。
【0033】また上記焼鈍熱処理における保持時間は、
十分原子拡散させる、且つ針状αの粗大化させるという
観点から、4時間以上とする必要があるが、あまり長時
間保持すると針状α相が粗大化し過ぎるので、6時間以
下とする必要がある。また上記温度に保持された後の冷
却は、空冷で良く、熱応力による残留応力の発生を防止
するという観点からも空冷であることが好ましい。
【0034】本発明においては、上記の溶体化処理を行
った後、必要によって2回目の溶体化処理を、(Tβ−
115℃)〜(Tβ−55℃)の温度範囲で保持した後
冷却する条件で行なっても良い。この2回目の溶体化処
理は、1回目の溶体化処理で生じた初析α粒のマトリッ
クスである前記微細針状組織を粗大化して破壊靭性等の
機械的性質を向上させるものである。即ち、前記焼鈍熱
処理だけでは、前記微細針状組織を粗大化するには不十
分な場合があるので、こうした溶体化処理を行なうこと
は前記微細針状組織を粗大化する上で極めて有効であ
り、これによってTi合金の機械的性質を更に向上させ
ることができる。こうした作用を発揮させるためには、
1回目の溶体化温度の様に高温にする必要はないが、2
回目の溶体化処理の際の熱処理温度は、少なくとも(T
β−115℃)以上とする必要がある。また溶体化温度
の上限については、α相を増加させるという観点から、
(Tβ−55℃)と規定した。
【0035】この2回目の溶体化処理における保持時間
は、前記微細針状組織を粗大化し機械的性質を向上させ
るという観点から、4時間以上とする必要があるが、あ
まり長時間保持するとα相が粗大化し過ぎるので、5時
間以下とすべきである。また上記温度に保持された後の
冷却は、1回目の溶体化処理のとき程速く冷却する必要
はなく、空冷以上の冷却速度であれば良い。
【0036】以下実施例によって、従来のTi合金との
比較を通じて、本発明合金の有用性を具体的に示す。
【0037】
【実施例】本発明に係るTi−5−2−4−3−3合金
について、真空アーク2重溶解法によって直径:260
mm,重量:100kgの鋳塊を製造した。得られた鋳
塊の化学成分を下記表1に示す。但し、表1中において
水素(H)含有量だけは、熱処理後の値である。
【0038】
【表1】
【0039】得られた鋳塊について、β温度域の120
0℃でアップセットおよび鍛伸を施して210×210
(mm)の角材とし、次いで(α+β)温度域の(Tβ
−40℃)の温度で鍛伸して180×180(mm)の
角材とした。引き続き、Tβ以上の温度である(Tβ+
50℃)の温度で1時間保持、および水冷却の条件でβ
処理を行なった。更に、(α+β)温度域の(Tβ−4
0℃)の温度で減面率70%の鍛伸を行ない、100×
100(mm)の角材とし、下記表2に示す条件で熱処
理を施した。尚表2には、当該合金材のTβも同時に示
した。
【0040】
【表2】
【0041】熱処理後のTi合金材のミクロ組成につい
て調査したところ、等軸α粒と比較的粗大なラメラー相
からなる組織であり、当初意図していた組織が得られて
いた。上記Ti合金材の室温引張試験結果(0.2%耐
力、引張強さ、伸びおよび絞り)を表3に示す。その結
果、0.2%耐力値は100kgf/mm2 であり、延
性は十分高い値を示していることが分かる。
【0042】
【表3】
【0043】上記で得られたTi−5−2−4−3−3
合金の機械的特性について、Ti−6−4合金の強度と
寸法(厚みまたは直径)の関係について示した前記図1
に基づいて比較検討すれば、次の様に考察できる。即
ち、100×100(mm)の角材についての上記本発
明材は、Ti−6−4合金と比べ平均的に見て約10k
gf/mm2 高い0.2%耐力値が得られていることが
分かる。尚図1から明らかな様に、0.2%耐力値が1
00kgf/mm2 という値は、Ti−6−4合金では
約20mm以下の厚みでしか達成できない値である。
【0044】Ti合金の弾性係数が高いことは、航空機
等への適用に当たって極めて有用な要件である。上記で
得られたTi−5−2−4−3−3合金の弾性係数につ
いて、Ti−6−4合金の弾性係数と比較して下記表4
に示すが、両者はほぼ同等の値を示していることが分か
る。β型Ti合金は高強度であるが、α+β型Ti合金
に比べて弾性係数が約15%程度低いことが欠点である
とされている。しかしながら、Nearβ型Ti合金で
ある上記Ti−5−2−4−3−3合金は、代表的なα
+β型Ti合金であるTi−6−4合金とほぼ同等の値
を示しているのである。
【0045】
【表4】
【0046】上記で得られたTi−5−2−4−3−3
合金において、高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強
度、クリープ強度、破壊靭性値および疲労亀裂伝播特性
等の機械的性質について、従来のTi−6−4合金と比
較した結果を以下に示す。
【0047】図2は、室温における高サイクル疲労試験
結果を示すグラフである。尚図2におけるTi−6−4
合金のデータは、「Titanium Net Shape Technologies
」,(The Metallurgical Society of AIME(1984) ,
第1〜6頁)の記載内容に基づくものである。この結果
から明らかな様に、本発明に係るTi−5−2−4−3
−3合金は、高サイクルにおいて、Ti−6−4合金よ
りも優れた疲労強度を示していることが分かる。
【0048】図3は、室温における低サイクル疲労試験
結果を示すグラフである。この結果から明らかな様に、
本発明に係るTi−5−2−4−3−3合金は、低サイ
クルにおいて、Ti−6−4合金と同等または若干優れ
た疲労強度を示していることがわかる。
【0049】図4に、クリープ強度試験結果を示す。図
4において、T(°K)・[20+logt(hr)]
は、ある応力下で一定クリープ量に達する時間(t)お
よび温度(T)を求めることによって決定されるラーソ
ン−ミラー常数である。この結果から明らかな様に、本
発明に係るTi−5−2−4−3−3合金は、クリープ
特性に関しても、従来のTi−6−4合金よりも、ラー
ソン−ミラー常数で1桁優れた値を示していることがわ
かる。
【0050】図5に、破壊靭性値(KIC)を比較して示
す。尚図5におけるTi−6−4合金のデータは、「Ti
tanium Alloys Handbook」[METALS AND CERAMICS INFO
RMATION CENTER(1972),1-4:72-14]の記載内容に基づく
ものである。本発明に係るTi−5−2−4−3−3合
金のKICは、Ti−6−4合金の上限値に位置している
ことが分かる。Ti−6−4合金のKICのバンド中の上
限は、仕上加工率が低い場合に対応し、その場合には疲
労強度が低くなる傾向がある。しかしながら、本発明に
係るTi−5−2−4−3−3合金は仕上加工率が高い
場合である。この点は、本発明の上記Ti−5−2−4
−3−3合金が、従来のTi合金と比べて優位であるこ
とを明白に示すものである。
【0051】図6は、疲労亀裂伝播特性を比較して示し
たグラフである。この結果から明らかな様に、本発明に
係るTi−5−2−4−3−3合金は、疲労亀裂伝播特
性においても、Ti−6−4合金とほぼ同等であること
がわかる。
【0052】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、本
発明によって得られたTi合金は、従来最も使用されて
いるTi−6−4合金と比べて、広範囲の機械的性質が
改善できるので、より軽量で機能性を向上した合金材料
として航空機等の素材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−6−4合金における寸法と0.2%耐力
の関係を示すグラフである。
【図2】室温における高サイクル疲労試験結果を示すグ
ラフである。
【図3】室温における低サイクル疲労試験結果を示すグ
ラフである。
【図4】クリープ強度試験結果を示すグラフである。
【図5】破壊靭性値を比較して示したグラフである。
【図6】疲労亀裂伝播特性を比較して示したグラフであ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al:4.5〜5.5%(重量%の意
    味、以下同じ),Sn:1.5〜2.5%,Zr:3.
    5〜4.5%,Cr:2.5〜3.5%,Mo:2.5
    〜3.5%を夫々含有し、残部がTiおよび不可避不純
    物からなるTi合金を、(β変態点−35℃)〜(β変
    態点未満)の温度範囲で保持した後冷却して溶体化処理
    を行ない、その後(β変態点−220℃)〜(β変態点
    −160℃)の温度範囲で4〜6時間保持する時効処理
    を行なうことを特徴とする機械的性質の均衡性に優れた
    高力Ti合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記の溶体化処理を行なった後、(β変
    態点−115℃)〜(β変態点−55℃)の温度範囲で
    保持した後冷却して再度溶体化処理を行ない、その後
    (β変態点−220℃)〜(β変態点−160℃)の温
    度範囲で4〜6時間保持する前記時効処理を行なう請求
    項1に記載の製造方法。
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CN109554639A (zh) * 2018-12-14 2019-04-02 陕西科技大学 一种高铌TiAl合金片层结构细化的方法

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