JP5855973B2 - ポリエステル樹脂およびそれを用いたポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
成分Aと成分Bのモル比が80:20〜95:5の範囲で、成分Cと成分Dのモル比が75:25〜95:5の範囲にあること、そして
成分Cと結合している成分B(成分BC)と、成分Dと結合している成分B(成分BD)とのモル比が、20:80〜35:65の範囲にある固有粘度が0.55以上であるポリエステル樹脂およびそれを用いたポリエステルフィルムが提供される。
本発明における成分Aは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分である。これを使用することにより力学的特性の点からまた耐熱性の点からも本発明の目的を達成することができる。
本発明における成分Bは成分Aとは異なる芳香族または脂環族ジカルボン酸成分であり、具体的には、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分などが挙げられる。
本発明における成分Cはエチレングリコール成分である。
本発明における成分Dは脂肪族ダイマージオール成分である。ダイマージオールは、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であるダイマー酸を触媒存在下で水素添加して、ダイマー酸のカルボン酸部分をアルコールとした炭素数36程度のジオールを主成分としたものである。ダイマー酸の工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11〜22の不飽和脂肪酸又はその低級アルコールエステルを粘土触媒等にて2量化し、トリマー酸、モノマー酸等の副生成物を除去した後に得られる。具体的なダイマージオールとしては、クローダ社製のPripol2033などが挙げられる。
本発明のポリエステルは、酸成分が主として前記成分Aと前記成分B、グリコール成分が主として前記成分Cと前記成分Dからなるものである。
本発明において、前記成分Aと成分Bのモル比は80:20〜95:5の範囲である。前記範囲にあることで、耐熱性と湿度変化に対する寸法安定性とを高度に発現させることができる。好ましい前記成分Aと成分Bのモル比の下限は85:15、上限は93:7である。
本発明のポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が好ましくは0.4〜1.5dl/g、より好ましくは0.5〜1.3dl/gの範囲である。
つぎに、本発明におけるポリエステルの製造方法について、以下で説明する。
まず、成分A〜Dの原料を用意する。具体的には、成分Aの原料として芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体を、成分Bの原料として芳香族または脂環族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体を、成分Cの原料としてエチレングリコールを、成分Dの原料として脂肪族ダイマージオールを用意する。そして、これら成分A〜Dの原料を、エステル化反応もしくはエステル交換反応を経由し、重縮合反応させればよい。ただ、これら成分A〜Dの原料を、最初から所望の割合で混合して反応させるだけでは、前述の組成や結合状態にすることは困難であり、以下、成分Aの原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、成分Bとして、ジメチルテレフタレートを用いた場合を例にとって説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、前述のポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。
本発明のポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現するため、フィルム面方向における少なくとも一方向に延伸された配向ポリエステルフィルムであることが好ましく、さらに製膜方向と幅方向の両方向に延伸された二軸配向ポリエステルフィルムであることがさらに好ましい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。
なお、ポリエステルフィルムの厚みは、用いる用途に応じて適宜選定すればよいが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いる場合、10μm以下、さらに8μm以下が好ましく、厚みの下限は特に制限されないが、1μm以上、さらに3μm以上が好ましい。
また、上述の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その一方の面に非磁性層および磁性層がこの順で形成され、他方の面にバックコート層が形成することなどで磁気記録テープとすることができる。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
ガラス転移点と融点は、DSC(TAインスツルメンツ(株)製、商品名:DSC2920)によりサンプル重量20mg、昇温速度10℃/minで測定した。
ポリマーをHFIP(ヘキサフロロイソプロパノール)に溶解し、GPC(Shodex GPC−101)にて測定を行った。本数平均分子量はポリスチレン換算で求めた。
試料20mgを重トリフルオロ酢酸:重クロロホルム=1:1の混合溶媒0.6mLに溶解し、室温で1H−NMRスペクトル(日本電子製 JEOL A600)を測定した。NMRのスペクトルより、共重合量の割合を見積もった。
得られたフィルムを50±2℃に保った恒温槽中で24±1時間乾燥し、デシケータ内で放冷し、23±2℃のイオン交換水の入った容器に入れ、完全に浸せき液中に24時間浸せきする。フィルムサンプルを取り出した後、表面を清浄な乾いた布でふきとり、浸漬前後の重量変化を浸漬前の重量で割り、吸水率を測定した。
重合したポリマーの約20mgを重トリフルオロ酢酸:重クロロホルム=1:1の混合溶媒0.6mLに溶解し、室温で1H−NMRスペクトル(日本電子製 JEOL A600)を測定した。NMRのスペクトルより、成分BC、BD、CA、DA、DBの割合を見積もった。
実施例1に記載した条件で、縦方向、および横方向に延伸して製膜し、安定に製膜できるか観察した。下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
×:1時間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない
モル比1:1.25でジメチルテレフタレート、脂肪族ダイマージオールとしてpripol2033(クローダ社製)を反応器に仕込み、更に触媒として酢酸マンガン(ジメチルテレフタレートのモル数を基準として30mmol%)を添加した。180℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらリン化合物としてフェニルホスホン酸(ダイマー酸のモル数を基準として40mmol%)を添加し、エステル化反応を終了させた。続いて5分後に、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加し(ダイマー酸のモル数を基準として20mmol%)、280℃まで加熱して、徐々に真空度を高めてポリエステル低分子量前駆体F1を作成した。
モル比1:1.22でシクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、ダイマージオールとしてpripol2033(クローダ社製)を反応器に仕込んだこと以外は、参考例1と同様に行い、ポリエステル低分子量前駆体F2を作成した。
モル比1:1.05でジメチルテレフタレート、ダイマージオールとしてpripol2033(クローダ社製)を反応器に仕込んだこと以外は、参考例1と同様に行い、ポリエステル低分子量前駆体F3を作成した。
モル比1:2でジメチルテレフタレート、ダイマージオールとしてpripol2033(クローダ社製)を反応器に仕込んだこと以外は、参考例1と同様に行い、ポリエステル低分子量前駆体F4を作成した。
エステル交換反応容器に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、エチレングリコール、酢酸マンガン(2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのモル数を基準として30mmol%)を仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらリン化合物としてフェニルホスホン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸のモル数を基準として50mmol%)を添加し、エステル交換反応(以下、EI反応と略す)を終了させた。続いて5分後に、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加し(2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのモル数を基準として20mmol%)、240℃まで加熱して一部のエチレングリコールを留出させて、ポリエステル前躯体E1を作成した。
このようにして得られたポリエステル前躯体E1とポリエステル低分子量前駆体F1とを、内部に撹拌翼を有する重縮合装置に移行した。この際、ポリエステル低分子量前駆体F1を2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルの20wt%となるように仕込んだ。その後、10分間溶解攪拌させた後に、徐々に真空度を高めながら35分間を要して、反応温度を290℃に到達せしめた。この温度を保持して真空度を40Paに保ち、重縮合反応(PN反応と略す)を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.61dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性について表1に記す。
このようにして得られたポリエステルを、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度がTg+25℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度Tg+30℃で横延伸倍率3.5倍、熱固定処理(205℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ4.5μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを構成するポリエステル樹脂の特性を表1に示す。
ポリエステル低分子量F1との仕込みを、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルの40wt%となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
ポリエステル低分子量前躯体F1の代わりにF2を使用したこと、また添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
ポリエステル前躯体F1の添加のタイミングを、実施例1におけるポリエステル前躯体E1のエステル交換反応の始めに変更したこと、また添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
ポリエステル前躯体F1をF3に変更したこと以外は、また添加量を変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行なった。重縮合反応は進まず、高い粘度のポリマーを得ることができず、また製膜を行うことができなかった。得られたポリマー物性について表1に記す。
ポリエステル前躯体F1をF4に変更したこと、また添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
ポリエステル前躯体F1を重合する際に、1,6−ヘキサンジオールではなく、1,4−ブタンジオールを用いて重合したものを前駆体F3とする。ポリエステル前駆体F1の代わりにポリエステル前駆体F3を使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリマー物性と、二軸延伸フィルムの物性について表1に記す。
Claims (5)
- 酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(成分A)とテレフタル酸成分、イソフタル酸成分、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分(成分B)とからなり、グリコール成分がエチレングリコール成分(成分C)と脂肪族ダイマージオール成分(成分D)とからなるポリエステルであって、
成分Aと成分Bのモル比が80:20〜95:5の範囲で、成分Cと成分Dのモル比が75:25〜95:5の範囲にあること、そして
成分Cと結合している成分B(成分BC)と、成分Dと結合している成分B(成分BD)とのモル比が、20:80〜35:65の範囲にある固有粘度が0.55以上であるポリエステル樹脂。 - 成分Aとのみ結合している成分C(成分CA)の割合が、成分Cのモル数を基準として90モル%以上である請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 成分Aと結合している成分D(成分DA)と、成分Bと結合している成分D(成分DB)とのモル比が、40:60〜5:95の範囲にある請求項1または2のいずれか記載のポリエステル樹脂。
- 数平均分子量が1,500〜10,000である成分Bと成分Dからなる低分子量前駆体を用いた請求項1〜3のいずれか記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜4のいずれか記載のポリエステル樹脂からなるポリエステルフィルム。
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