以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
本実施例の画像形成装置1は、インクジェットプリンタである。この画像形成装置1は、図1に示すように、給紙機構10と、用紙搬送機構20と、印字機構30と、制御ユニット50と、ASFモータM1と、モータドライバDR1と、LFモータM2と、モータドライバDR2と、CRモータM3と、モータドライバDR3と、ヘッド駆動回路DR4と、を備える。ASFモータM1は、給紙機構10に動力を付与する直流モータである。モータドライバDR1は、ASFモータM1を駆動する。LFモータM2は、用紙搬送機構20に動力を付与する直流モータである。モータドライバDR2は、LFモータM2を駆動する。CRモータM3は、印字機構30に動力を付与する直流モータである。モータドライバDR3はCRモータM3を駆動する。ヘッド駆動回路DR4は、記録ヘッド31を駆動する。
給紙機構10は、図2に示すように、給紙トレイ101に収容された用紙Qを1枚ずつ分離して用紙搬送機構20に供給するものである。この給紙機構10は、給紙トレイ101と、給紙ローラ103と、アーム104と、ロータリエンコーダ105(図1参照)と、を備える。給紙トレイ101には、複数枚の用紙Qが積層される。給紙ローラ103は、ASFモータM1の動力を受けて回転する。アーム104は、給紙ローラ103を回転可能な状態で保持する。ロータリエンコーダ105は、給紙ローラ103の回転に伴ってエンコーダ信号を出力する。
また、アーム104は、重力又はバネによる付勢力を用いて、給紙ローラ103を給紙トレイ101に収容された用紙Qの表面に押し当てるものである。この給紙機構10では、給紙ローラ103が用紙Qに押し当てられた状態でASFモータM1の動力を受けて回転することによって、用紙Qが用紙搬送機構20に繋がる用紙搬送路に送り出される。用紙搬送機構20と給紙機構10との間の用紙搬送路は、U字形状の搬送路であるUターンパス111から構成されている。そして、給紙トレイ101から送り出される用紙Qは、Uターンパス111により移動を規制されて湾曲した状態で、用紙搬送機構20が有する搬送ローラ201とピンチローラ202との間に搬送される。
用紙搬送機構20は、搬送ローラ201及びピンチローラ202を備えると共に、ロータリエンコーダ205(図1参照)と、排紙ローラ211と、ピンチローラ212と、を備える。ピンチローラ202は、搬送ローラ201に対向配置される。ロータリエンコーダ205は、搬送ローラ201の回転に応じたパルス信号をエンコーダ信号として出力する。ピンチローラ212は、排紙ローラ211に対向配置される。
また、ロータリエンコーダ205は、搬送ローラ201の回転軸上に取り付けられる回転板(図示せず)を備え、回転板に形成されたスリットを読み取って、読取結果に応じたエンコーダ信号を出力する周知のインクリメンタル型のロータリエンコーダである。
また、排紙ローラ211は、搬送ローラ201よりも用紙搬送路下流に設けられている。搬送ローラ201及び排紙ローラ211は、例えば各ローラ201,211をベルトで連結する動力伝達機構220(図1参照)を通じてLFモータM2からの動力を受けて、互いに連動するように回転する。具体的には、互いに周方向に同量回転する。搬送ローラ201及び排紙ローラ211は、この回転により協働して、給紙機構10から供給された用紙Qを、排紙ローラ211下流の図示しない排紙トレイまで搬送する。
尚、ピンチローラ202は、搬送ローラ201との間に用紙Qを挟んだ状態で、搬送ローラ201に従動するように回転し、ピンチローラ212は、排紙ローラ211との間に用紙Qを挟んだ状態で、排紙ローラ211に従動するように回転する。用紙Qは、このように搬送ローラ201とピンチローラ202との間で挟持され、更には、排紙ローラ211とピンチローラ212との間で挟持された状態で、搬送ローラ201及び排紙ローラ211の回転により用紙搬送路下流に搬送される。
また、搬送ローラ201と排紙ローラ211との間には、プラテン240が設けられている。プラテン240は、搬送ローラ201から搬送される用紙Qを下方から支持して排紙ローラ211へ導く。搬送ローラ201から排紙ローラ211へと搬送される用紙Qに対しては、このプラテン240上で、印字機構30を構成する記録ヘッド31から吐出されるインク液滴により画像が形成される。
印字機構30は、図1に示すように、記録ヘッド31と、記録ヘッド31を搭載するキャリッジ32と、リニアエンコーダ36と、光学センサ37とを備える。記録ヘッド31は、ヘッド駆動回路DR4から入力される駆動信号に応じたインク液滴を、プラテン240に対向するノズル面から吐出する。また、この印字機構30は、CRモータM3からの動力を受けてキャリッジ32を主走査方向(図2紙面の法線方向)に搬送するキャリッジ搬送機構として、図3に示すように、CRモータM3に駆動される駆動プーリ331と、従動プーリ332と、ベルト333と、主走査方向に延びるガイドレール34aを備えるフレーム34と、主走査方向に延びるガイドレール35aを備えるフレーム35と、を備える。駆動プーリ331、及び、従動プーリ332は、副走査方向の上流側のフレーム34に配置されている。そして、ベルト333は、フレーム34に配置される駆動プーリ331と従動プーリ332との間に巻き回される。
キャリッジ32は、このキャリッジ搬送機構を構成するガイドレール34a,35aに設けられる。フレーム34,35は、図2に示すように、長手方向(主走査方向)に垂直な断面がL字形状にされたものである。そしてフレーム34,35の上方に向く凸部が、キャリッジ32の移動を主走査方向(図2紙面の法線方向)に規制するガイドレール34a,35aとして機能する。キャリッジ32は、下面において主走査方向に平行に形成された溝部32a,32bにガイドレール34a,35aが挿入されるようにしてガイドレール34a,35aに設置される。この状態で、ガイドレール34a,35aは、キャリッジ32の溝部32a,32bの上面と接触し、キャリッジ32を下方から上方に支持する。
また、キャリッジ32は、ガイドレール34a,35aに併設されたベルト333に固定され、ベルト333を通じてCRモータM3からの動力を間接的に受けて、主走査方向に移動する。駆動プーリ331(図3参照)には、CRモータM3がギヤを介して接続されており、駆動プーリ331は、CRモータM3から発生する動力を、ギヤを介して受けて回転する。この駆動プーリ331の回転によって、駆動プーリ331と従動プーリ332との間に巻回されたベルト333は、CRモータM3からの動力を間接的に受けて回転する。そして、従動プーリ332は、ベルト333を介して、駆動プーリ331に従動する。上述したように、キャリッジ32は、ガイドレール34a,35aによって、その移動が主走査方向に規制されている。従って、CRモータM3が回転すると、ベルト333の回転に連動して、キャリッジ32は、主走査方向に移動する。本実施例では、このキャリッジ搬送機構を通じて、キャリッジ32が主走査方向に搬送される。
また、リニアエンコーダ36は、周知のリニアエンコーダと同様、キャリッジ32の主走査方向への移動に応じたパルス信号をエンコーダ信号として制御ユニット50(図1参照)に出力するものである。リニアエンコーダ36は、エンコーダスケール36aと、エンコーダスケール36aを読み取るセンサ部36bとを備える。エンコーダスケール36aは、図3に示すように、主走査方向に沿って延設されており、キャリッジ32の上面において主走査方向に平行に設けられた溝部32c(図2参照)に挿入されている。一方、センサ部36bは、キャリッジ32の溝部32cに設けられている。即ち、リニアエンコーダ36によれば、キャリッジ32の移動に伴って、センサ部36bがエンコーダスケール36aを読み取る。これによりリニアエンコーダ36は、センサ部36bからキャリッジ32の主走査方向への移動に対応したパルス信号をエンコーダ信号として制御ユニット50に出力する。
また、光学センサ37は、プラテン240と対向するようにしてキャリッジ32に固定される。この光学センサ37は、プラテン240上の用紙Qを撮影し、その撮影画像を解析することにより、光学センサ37に対する相対的な用紙Qの変位量を検出する。具体的に、光学センサ37は、用紙Qを撮影して、予め定められた微小時間毎に、この微小時間におけるプラテン240の表面に沿う第一の方向への用紙変位量ΔDy、及び、この微小時間におけるプラテン240に沿う上記第一の方向とは直交する第二の方向への用紙変位量ΔDxを検出する。以下では、光学センサ37が用紙変位量ΔDyを検出する方向を第一検出方向と表現し、光学センサ37が用紙変位量ΔDxを検出する方向を第二検出方向と表現する。光学センサ37は周知のものであるので詳細な説明については省略するが、光学センサ37としては、例えば、光電変換素子が第一検出方向及び第二検出方向に沿って二次元配列された光学センサを挙げることができる。
また、制御ユニット50(図1参照)は、給紙制御機能と、用紙搬送制御機能と、キャリッジ搬送制御機能と、インク液滴吐出制御機能と、を備える。給紙制御機能とは、給紙トレイ101から用紙搬送機構20への用紙Qの搬送制御を実現する機能である。用紙搬送制御機能とは、用紙搬送機構20に供給された用紙Qの搬送制御を実現する機能である。キャリッジ搬送制御機能とは、キャリッジ32の搬送制御を実現する機能である。インク液滴吐出制御機能とは、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出制御を実現する機能である。
給紙制御機能は、ロータリエンコーダ105から入力されるエンコーダ信号に基づき、給紙制御を実現する。具体的には、給紙ローラ103の回転量を検出し、この検出結果に基づき、モータドライバDR1からASFモータM1に印加する駆動電流又は電圧を調整する。この給紙制御機能によって、給紙トレイ101から用紙搬送機構20へは、用紙Qが1枚ずつ供給される。
一方、用紙搬送制御機能は、ロータリエンコーダ205から入力されるエンコーダ信号、及び、光学センサ37によって検出される用紙Qの変位量に基づいて、用紙Qの搬送制御を実現する。具体的には、ロータリエンコーダ205から入力されるエンコーダ信号、及び、光学センサ37から入力される用紙変位量ΔDx,ΔDy等に基づき、用紙Qの搬送制御開始時点からの用紙搬送量Pを特定する。そして、特定された用紙搬送量Pに基づき、LFモータM2を制御する。この搬送制御により、用紙Qは、主走査方向とは垂直な副走査方向に搬送される。
また、キャリッジ搬送制御機能は、リニアエンコーダ36から入力されるエンコーダ信号に基づいて、キャリッジの搬送制御を実現する。具体的には、キャリッジ32の位置及び速度を検出し、この検出結果に基づき、モータドライバDR3を通じてCRモータM3を制御する。これにより、キャリッジ32及び記録ヘッド31を主走査方向に定速搬送する。このキャリッジ搬送制御機能により、キャリッジ32及び記録ヘッド31は主走査方向に往復動し、折返し地点付近では加減速を伴いながらも、他の領域では定速搬送される。
また、インク液滴吐出制御機能は、キャリッジ32が定速搬送されている期間において、記録ヘッド31を制御して、インク液滴の吐出制御を実現する。具体的には、記録ヘッド31に、外部のPC(パーソナルコンピュータ)3から入力された印刷対象の画像データに対応するインク液滴を吐出させて、用紙Qに所定幅のライン画像を形成する。
制御ユニット50は、これらの機能を用いて、用紙搬送機構20に用紙Qを1枚ずつ供給する。また制御ユニット50は、用紙搬送機構20に供給された用紙Qをプラテン240上の画像形成地点に用紙搬送機構20を通じて所定量ずつ順次送り出す。そして制御ユニット50は、当該送り出し毎の用紙Qの停止時には、印字機構30を通じて用紙Qに、上記送り出し量に対応した所定幅のライン画像を形成する。この動作によって外部のPC3から入力された印刷対象の画像データに対応する一連の画像を、用紙Qに形成する。
図4には、制御ユニット50の制御によって実現される用紙Qの搬送動作、及び、キャリッジ32(記録ヘッド31)の搬送動作、及び、用紙Qへの画像形成動作の実行タイミングを、タイムチャートを用いて示す。このタイムチャートからも理解できるように、本実施例の画像形成装置1は、キャリッジ32(記録ヘッド31)を搬送しつつ、用紙Qへの画像形成動作を実行する。そして画像形成装置1は、画像形成動作が終了すると、キャリッジ32を減速・停止させて、その搬送動作を完了する。そして、キャリッジ32が停止すると、用紙Qの搬送動作を開始して、次の画像形成動作に必要な量、用紙Qを送り出す。そして、用紙の搬送動作が完了する前に、タイミングを見計らって、キャリッジ32の搬送動作を開始し、用紙の搬送動作が完了した直後のタイミングで、効率よく画像形成動作を開始する。
続いて、制御ユニット50の一部構成であって、制御ユニット50が用紙搬送制御機能及びキャリッジ搬送制御機能を実現するために備える構成を、図5を用いて説明する。制御ユニット50は、用紙搬送制御機能及びキャリッジ搬送制御機能を実現するための構成として、エンコーダ信号処理部701,702と、センサ信号処理部703と、モータ制御部705と、を備える。
エンコーダ信号処理部701は、ロータリエンコーダ205から入力されるエンコーダ信号に基づき、搬送ローラ201の回転量Gyを検出するものである。上述したように、用紙Qは、搬送ローラ201及び排紙ローラ211の回転により搬送されるため、搬送ローラ201により用紙Qが搬送されている時の回転量Gyの変化分は、その時の用紙Qの搬送量に対応する。即ち、エンコーダ信号処理部701は、搬送ローラ201の回転量Gyを検出することにより、間接的には、用紙Qの搬送量を検出する。尚、エンコーダ信号処理部701により検出される搬送ローラ201の回転量Gyは、リセット時を原点とする搬送ローラ201の回転位置とも解釈できる。このため、以下では、搬送ローラ201の回転量Gyのことをローラ位置Gyとも表現する。
また、エンコーダ信号処理部702は、リニアエンコーダ36から入力されるエンコーダ信号に基づき、キャリッジ32の搬送路におけるキャリッジ32の位置Gx(以下、キャリッジ位置Gxとも表現する。)を検出するものである。
一方、センサ信号処理部703は、光学センサ37により検出される微小時間毎の用紙変位量ΔDx,ΔDyの情報を逐次、光学センサ37から取得し、用紙変位量ΔDxの累積値Dx及び用紙変位量ΔDyの累積値Dyを算出するものである。即ち、センサ信号処理部703は、図6に示すように、光学センサ37から用紙変位量ΔDx,ΔDyの情報を取得し(S110)、これまでに算出した累積値Dxに、今回取得した用紙変位量ΔDxを加算して、累積値Dxを更新すると共に、これまでに算出した累積値Dyに、今回取得した用紙変位量ΔDyを加算して、累積値Dyを更新する(S120)処理を、光学センサ37による用紙変位量ΔDx,ΔDyの検出周期に合わせて繰返し実行する。尚、検出周期は、後述するLFモータM2の制御周期以下の周期に設定される。
この他、モータ制御部705は、LFモータM2及びCRモータM3を制御するものである。このモータ制御部705は、LFモータM2に対する操作量Uを演算して、この操作量Uに対応した制御信号(例えばPWM信号)をモータドライバDR2に入力することにより、LFモータM2の回転を制御する。一方で、このモータ制御部705は、CRモータM3に対する操作量Uを演算して、この操作量Uに対応した制御信号(例えばPWM信号)をモータドライバDR3に入力することにより、CRモータM3の回転を制御する。モータドライバDR2は、このモータ制御部705から入力された制御信号(操作量U)に対応する駆動電圧又は電流でLFモータM2を駆動する。また、モータドライバDR3は、このモータ制御部705から入力された制御信号(操作量U)に対応する駆動電圧又は電流でCRモータM3を駆動する。
具体的に、モータ制御部705は、キャリッジ搬送制御に際しては、所定の制御周期毎に、エンコーダ信号処理部702により検出されるキャリッジ32の現在速度と、予め設定された目標速度軌跡に従う現在の目標速度との偏差に対応した操作量Uを算出する。そして、この操作量Uに対応した制御信号をモータドライバDR3に入力することにより、キャリッジ32の速度を目標速度軌跡に沿うように制御する。
一方、用紙搬送制御に際して、モータ制御部705は、所定の制御周期毎に、搬送制御開始時点(用紙Qの搬送開始地点)からの用紙搬送量Pを特定し、この用紙搬送量Pと、目標位置軌跡に従う現在の目標位置Prとの偏差Pr−Pに基づき、操作量Uを算出する。用紙搬送量Pは、センサ信号処理部703により算出される累積値Dx及び累積値Dyの組合せ、又は、センサ信号処理部703により算出される累積値Dy及びエンコーダ信号処理部702により検出されるキャリッジ32の位置Gxの組合せに基づいて特定される(詳細後述)。そして、モータ制御部705は、算出された操作量Uに対応した制御信号をモータドライバDR2に入力することにより、用紙搬送量Pを目標位置軌跡に沿うように制御する。但し、光学センサ37と対向する位置に用紙Qが存在しない間は、エンコーダ信号処理部701によって検出されるローラ位置Gyに基づいて、用紙搬送量Pを特定する。
図5における点線で囲まれた領域には、モータ制御部705が用紙搬送制御に用いる目標位置軌跡の形状を示す。目標位置軌跡は、目標位置Prが、用紙Qの搬送開始地点での位置Pr=0から目標停止位置Ptまで単調増加し、目標停止位置Ptに到達した時点以降では、目標停止位置Ptで一定値を採るものである。
ところで、モータ制御部705は、光学センサ37を用いて用紙Qの搬送開始時点からの用紙搬送量Pを特定する場合、キャリッジ32の移動中における任意の第一の時点から第二の時点までの用紙搬送量Lを次式(1)又は式(2)により算出する。
L=(My+Ex・sinθ)/cosθ …(1)
L=My・cosθ+Mx・sinθ …(2)
ここで、Myは、第一の時点でセンサ信号処理部703から得られる用紙変位量ΔDyの累積値Dy=Dy0と第二の時点でセンサ信号処理部703から得られる用紙変位量ΔDyの累積値Dy=Dy1との差分My=Dy1−Dy0で求められる。つまりMyは、光学センサ37の検出結果に基づく第一検出方向の用紙移動量Myである。また、Mxは、第一の時点でセンサ信号処理部703から得られる用紙変位量ΔDxの累積値Dx=Dx0と第二の時点でセンサ信号処理部703から得られる用紙変位量ΔDxの累積値Dx=Dx1との差分Mx=Dx1−Dx0で求められる。つまりMxは、光学センサ37の検出結果に基づく第二検出方向の用紙移動量Mxである。
また、Exは、第一の時点でエンコーダ信号処理部702から得られるキャリッジ位置Gx=Gx0と第二の時点でエンコーダ信号処理部702から得られるキャリッジ位置Gx=Gx1との差分Ex=Gx1−Gx0で求められる第一の時点から第二時点までのキャリッジ32の移動量Exである。但し、ここでのキャリッジ位置Gxの座標系は、キャリッジ32の搬送方向を、正方向とする座標系である。
この他、角度θは、図7に示すように、キャリッジ32の搬送方向に対し、光学センサ37によって用紙変位量ΔDxが検出される上記第二検出方向がなす角度である。一方で、角度θは、用紙搬送方向に対し、光学センサ37によって用紙変位量ΔDyが検出される上記第一検出方向がなす角度とも言える。これは、キャリッジ32の搬送方向と用紙搬送方向とは互いに直交関係にあり、第一検出方向と第二検出方向との間にも直交関係があるためである。
さて、式(1)又は式(2)を用いて用紙搬送量Lを特定するのは、次の理由からである。光学センサ37は、キャリッジ32が静止している状態で、第一検出方向が用紙搬送方向と平行となり、第二検出方向がキャリッジ搬送方向と平行となるように、キャリッジ32に固定される。従って、この場合の角度θ=0であり、キャリッジ32が静止している状態では、光学センサ37により検出される用紙変位量ΔDyを指標に、用紙搬送量Lを算出することができる。但し、ここでは、キャリッジ32が静止している状態で第一検出方向が用紙搬送方向と一致し、第一検出方向である用紙搬送方向の正方向に対して、用紙変位量ΔDyが正値を採るものとする。同様に、第二検出方向がキャリッジ搬送方向と一致し、第二検出方向であるキャリッジ搬送方向の正方向に対して、用紙変位量ΔDxが正値を採るものとする。
しかしながら、キャリッジ32の溝部32a,32bとガイドレール34a,35a(図2参照)との間には、滑らかにキャリッジ32を搬送するために若干の隙間がある。一方、キャリッジ32の移動時には、ベルト333からキャリッジ32に作用する力の作用点F付近(図3及び図7参照)にあるキャリッジ32の部位から力が伝播することになる。作用点Fは、キャリッジ32において用紙搬送方向の上流側に位置する。これは、ベルト333が、副走査方向の上流側、つまり用紙搬送方向上流側のフレーム34に配置されているためである。従って、キャリッジ32の移動時には、力の作用点F付近にあるキャリッジ32の部位(キャリッジ32の用紙搬送方向の上流側の部位)が進行方向に先行する。一方で、力の作用点Fから遠いキャリッジ32の部位(キャリッジ32の用紙搬送方向の下流側の部位)が力の作用点F付近の部位に引っ張られるような状態となる。そして、キャリッジ32において力の作用点F付近の部位が引っ張られると、上記隙間によってキャリッジ32が傾く。
そして、キャリッジ32が傾くと、キャリッジ32に固定されている光学センサ37も傾くことになり、キャリッジ搬送方向と第二検出方向との間、及び、用紙搬送方向と第一検出方向との間にゼロでない角度θが生じる。つまり、ゼロでない角度θを考慮して光学センサ37により検出される用紙変位量ΔDyを補正しなければ、用紙搬送方向における用紙Qの移動量、即ち、用紙搬送量Lを正確に特定することができない。このような理由から、本実施例では、式(1)又は式(2)を用いて用紙搬送量Lを特定する。
式(1)又は式(2)によって正確な用紙搬送量Lを特定できる理由は、図8に示す幾何学的関係から理解できる。原点Oは、任意の第一の時点での、キャリッジ32の位置であり、また、用紙Qの位置である。点Aは、上記第一の時点から任意の時間経過後の時点である第二の時点でのキャリッジ32の位置である。点Bは、上記第一の時点から任意の時間経過後の時点である第二の時点での用紙Qの位置である。図8に示すベクトルOAは、上記第二の時点でのキャリッジ32の位置Aと上記第一の時点でのキャリッジ32の位置である原点Oとを結んだキャリッジ32の移動ベクトルOAを示すものである。一方、図8に示すベクトルOBは、上記第二の時点での用紙Qの位置Bと上記第一の時点での用紙Qの位置である原点Oとを結んだ用紙Qの移動ベクトルOBを示すものである。
ここで、それぞれが直交する第一検出方向と第二検出方向とを有する光学センサ37の座標系で考える。すると、光学センサ37は、キャリッジ32に固定されているので、用紙Qは、光学センサ37に対してベクトルOAとベクトルOBとの合成ベクトルOCに対応する量変位することになる。一方、光学センサ37が、キャリッジ搬送方向に対して角度θ傾いているものとすると、光学センサ37によって計測される用紙変位量ΔDxの累積値Dxについての第一の時点から第二の時点までの変化分Mxは、合成ベクトルOCの第二検出方向成分であるベクトルOJの長さに一致する。また、光学センサ37によって計測される用紙変位量ΔDyの累積値Dyについての第一の時点から第二の時点までの変化分Myは、合成ベクトルOCの第一検出方向成分であるベクトルJCの長さに一致する。
そして、用紙搬送量Lは、長さOB及び長さACに一致する。従って、図8に示す幾何学的関係に従えば、式(2)に従って用紙搬送量Lを算出可能であることが簡単に理解できる。また、図8に示す点Wと点Bとを結ぶ辺の長さWB、換言すればベクトルOBの第一検出方向の成分のベクトルWBの大きさは、用紙搬送量L及び角度θを用いてL・cosθで表すことができる。更に、この長さWBは、図8に示すベクトルJCの延長線上に位置する点Rと点Jとを結んだ辺の長さJRに一致する。そして、点Bと点Cとを結んだ辺の長さBCは、キャリッジ32の移動量Exに一致することから、点Cと点Rとを結んだ辺の長さは、キャリッジ32の移動量Ex及び角度θを用いてEx・sinθで表すことができる。更に、ベクトルJCの長さは、光学センサ37によって計測される用紙変位量ΔDyの累積値Dyについての第一の時点から第二の時点までの変化分Myに一致する。これらの幾何学的関係から、式(1)に従って用紙搬送量Lを算出可能であることが理解できる。本実施例では、このような幾何学的関係に従って導出した式(1)又は式(2)に従って、用紙搬送量Lを特定する。
また、角度θについては、ベクトルOCがベクトルOAに対してなす角度θ2及びベクトルOCがベクトルOJに対してなす角度θ1に基づき、θ=θ2−θ1により算出することができる。そして、θ1=arctan(My/Mx)であり、θ2=arctan(Ey/Ex)である。従って、本実施例のモータ制御部705では、画像形成装置1の起動時又は画像形成装置1の出荷時に、自動で又は外部からの指令に従って、図9に示す角度パラメータ算出処理を実行し、角度θ及び角度パラメータK(θ)={cosθ,sinθ}を、関係式θ=arctan(Ey/Ex)−arctan(My/Mx)に従って算出する。また、算出した角度θ及び角度パラメータK(θ)をモータ制御部705に設けられたメモリ705aに記憶する。但し、本実施例では、種々の実施形態を簡単に説明にするために角度θ及び角度パラメータK(θ)の両者をメモリ705aに記憶するが、いずれか一方のみをメモリ705aに記憶させれば十分であることは言うまでもない。
具体的に、本実施例のモータ制御部705は、上記角度パラメータ算出処理を、画像形成装置1が備える印刷モード毎に実行する。画像形成装置1によれば、モータ制御部705は、印刷画質や印刷速度に応じた複数の印刷モードを備えており、外部のPC3から指定された印刷モードで、PC3から入力された印刷対象の画像データを、用紙Qに形成する。また、この際、印刷モードに応じて、キャリッジ32の定速搬送時の速度Vcを変更する。例えば、高画質の画像を印刷する印刷モードでは、キャリッジ32の速度Vcは小さく設定される。また、低画質の画像を印刷する印刷モードや、高速に印刷を行う印刷モードでは、キャリッジ32の速度Vcは大きく設定される。そして、速度Vcの変更に伴って、キャリッジ32が速度Vcに到達するまでの加速度Aも変更される。従って、印刷モード毎に、上記角度θが異なる可能性がある。そこで、本実施例では、印刷モード毎に、角度パラメータ算出処理を実行して、角度θ及び角度パラメータK(θ)を算出する。この角度パラメータ算出処理の実行に先立っては、制御ユニット50が備える給紙制御機能により、給紙トレイ101に載置された用紙Qが一枚分離され、この用紙Qが、光学センサ37によって用紙Qの移動量を検出可能な位置まで、搬送される。
尚、上記角度パラメータ算出処理を実行する際に、搬送ローラ201の回転速度は、用紙Qに画像を形成する際の回転速度よりも小さくすることが好ましい。これは、例えば搬送ローラ201の回転速度が大きければ大きいほど、搬送ローラ201に対して、用紙Qがスリップし易くなる傾向があるためである。この場合、搬送ローラの回転量Eyと、用紙Qの搬送量とが一致しない。また、上記角度パラメータ算出処理を、用紙Qが搬送ローラ201と排紙ローラ211とによって搬送されているときに実行することが望ましい。例えば、搬送ローラ201のみによって搬送されている時は、用紙Qの搬送方向の下流端がプラテン240から浮く場合がある。すると、光学センサ37による計測結果が不安定になり、正しく変位量Exの計測ができない。また、例えば、排紙ローラ211のみによって、搬送されている時は、用紙Qの搬送方向の上流端がプラテン240から浮く場合がある。すると、光学センサ37による計測結果が不安定になり、正しく変位量Exの計測ができない。つまり、arctan(Ey/Ex)の値に信頼性がなくなり、引いては角度θ及び角度パラメータK(θ)の値が不正確となる。よって、上記角度パラメータ算出処理は、搬送ローラ201の回転速度を小さくして実行することと、搬送ローラ201及び排紙ローラ211とによって搬送されているときに実行することが好ましい。
そして、用紙Qが、このような条件を満足する位置であって光学センサ37によって当該用紙Qの移動量を検出可能な位置まで、搬送されると、モータ制御部705は、図9に示される角度パラメータ算出処理を開始する。まず、モータ制御部705は、今回の角度パラメータ算出処理で角度θ及び角度パラメータK(θ)を算出する対象の印刷モードと同一の制御態様で、CRモータM3を通じたキャリッジ32の搬送制御及びLFモータM2を通じた用紙Qの搬送制御を開始することで、上記印刷モードと同一の搬送態様で、用紙Q及びキャリッジ32の搬送を開始する(S210)。具体的には、図4に示すように、LFモータM2を通じた用紙Qの搬送制御を開始した後、CRモータM3を通じたキャリッジ32の搬送制御を開始する。但し、ここでは、光学センサ37の検出結果に基づいた用紙Qの搬送制御については行わず、エンコーダ信号処理部701で検出されるローラ位置Gyから特定される用紙搬送量Pに基づいた用紙Qの搬送制御を行う。
そして、モータ制御部705は、キャリッジ32の搬送が開始される時点で、エンコーダ信号処理部701が保持する現在のローラ位置Gyを基準値Gy0として記憶し、エンコーダ信号処理部702が保持する現在のキャリッジ位置Gxを基準値Gx0として記憶する(S220)。一方でS220においては、センサ信号処理部703が保持する用紙変位量ΔDx,ΔDyの累積値Dx,Dyを、ゼロにリセットする。
その後、モータ制御部705は、ローラ位置Gyをエンコーダ信号処理部701から逐次取得し、このローラ位置Gy及び上記基準値Gy0に基づき、搬送ローラ201がN回転したか否かの判断を肯定判断するまで繰り返す(S230)。尚、Nは、設計段階で予め定められた1以上の整数である。そして、搬送ローラ201がN回転したと判断すると(S230でYes)、モータ制御部705は、この時点でエンコーダ信号処理部701が保持するローラ位置Gy=Gy1、この時点でエンコーダ信号処理部702が保持するキャリッジ位置Gx=Gx1、センサ信号処理部703が保持する累積値Dx=Mx,Dy=Myを記憶する(S240)。また、S210で開始したキャリッジ32及び用紙Qの搬送制御を終了する(S250)。
その後、モータ制御部705は、S220の実行時点である第一の時点からS240の実行時点である第二の時点までのキャリッジ32の移動量Ex=Gx1−Gx0を算出し、上記第一の時点から上記第二の時点までの搬送ローラ201の回転量Ey=Gy1−Gy0を算出する(S260)。
そして、S260で算出したキャリッジ32の移動量Ex及び搬送ローラ201の回転量Ey、並びに、S240で記憶した累積値Dx=Mx,Dy=Myに基づいて、モータ制御部705は、式θ=arctan(Ey/Ex)−arctan(My/Mx)に従う角度θを算出する(S270)。更に、モータ制御部705は、角度パラメータK(θ)として、cosθ及びsinθの組を算出する(S280)。そして、モータ制御部705は、これら角度θ及び角度パラメータK(θ)を、対応する印刷モードの情報と関連付けて、モータ制御部705のメモリ705aに記憶させる(S290)。その後、当該角度パラメータ算出処理を終了する。モータ制御部705は、このような角度パラメータ算出処理を、印刷モード毎に実行することにより、メモリ705aに、印刷モード毎の角度θ及び角度パラメータK(θ)を登録する。
また、モータ制御部705は、光学センサ37の下方に用紙Qが位置し用紙Qの変位量を光学センサ37により検出可能な期間において、用紙Qの搬送開始タイミングが到来すると、図10に示す用紙搬送制御処理を実行する。当該用紙搬送制御処理により、目標停止位置Ptまでの用紙搬送を実現する。そして、この際には、メモリ705aに登録された角度θ又は角度パラメータK(θ)であって、今回の印刷モードに対応する角度θ又は角度パラメータK(θ)を用いて、用紙搬送量Pを算出する。
図10に示す用紙搬送制御処理を開始すると、モータ制御部705は、現時点でセンサ信号処理部703が保持する累積値Dxを基準値Dx0として記憶すると共に、センサ信号処理部703が保持する累積値Dyを基準値Dy0として記憶する。更に、現時点でエンコーダ信号処理部702が保持する現在のキャリッジ位置Gxを基準値Gx0として記憶する(S310)。
更に、モータ制御部705は、用紙Qの搬送開始時からの総搬送量である用紙搬送量Pをゼロに初期化する(S320)。その後、モータ制御部705は、所定の制御周期(換言すれば操作量演算周期)が到来する度に(S330でYes)、S340〜S395の処理を実行する。つまり、制御周期毎に、LFモータM2に対する操作量Uを更新し、操作量Uに対応する制御信号をモータドライバDR2に入力することで、用紙搬送量Pが予め設定された上記目標位置軌跡に従って変化するように、用紙Qの搬送制御を行う。
具体的に、S340では、モータ制御部705は、最新の累積値Dx,Dyをセンサ信号処理部703から取得して、現在の累積値Dy=Dy1と基準値Dy0との差分である第一検出方向への用紙移動量My=Dy1−Dy0を算出する。また同時にS340では、モータ制御部705は、現在の累積値Dx=Dx1と基準値Dx0との差分である第二検出方向への用紙移動量Mx=Dx1−Dx0を算出する。
続くS350では、モータ制御部705は、最新のキャリッジ位置Gxをエンコーダ信号処理部702から取得し、現在のキャリッジ位置Gx=Gx1と基準値Gx0との差分であるキャリッジ移動量Ex=Gx1−Gx0を算出する。
続くS360では、モータ制御部705は、キャリッジ32が移動中であるか否かを判断する。具体的には、キャリッジ移動量Exがゼロか否かを判断することで、キャリッジ32が移動中であるか否かを判断することができる。そして、モータ制御部705が、キャリッジ32が移動中でないと判断すると(S360でNo)、S370に移行する。一方でモータ制御部705が、キャリッジ32が移動中であると判断すると(S360でYes)、S375に移行する。
S370では、モータ制御部705は、1制御周期での用紙搬送量Lを、S340により算出された第一検出方向への用紙移動量Myと同一値に設定する(L=My)。一方、S375では、モータ制御部705は、キャリッジ32及び光学センサ37がキャリッジ32の移動に伴って角度θ傾いているとの前提の下で、1制御周期での用紙搬送量Lを次の手法で算出する。具体的にS375における処理の実施形態としては、式(1)に従って用紙搬送量Lを算出する第一の実施形態の他、式(2)に従って用紙搬送量Lを算出する第二の実施形態が考えられる。
第一の実施形態によれば、S375では、モータ制御部705は、S340により算出された第一検出方向への用紙移動量Myと、S350で算出されたキャリッジ移動量Exと、メモリ705aに登録された今回の印刷モードに対応する角度θ又は角度パラメータK(θ)を用いて、式(1)に従って、用紙搬送量L=(My+Ex・sinθ)/cosθを算出する。一方、第二の実施形態によれば、S375では、モータ制御部705は、S340により算出された第一検出方向への用紙移動量Myと、S340により算出された第二検出方向への用紙移動量Mxと、メモリ705aに登録された今回の印刷モードに対応する角度θ又は角度パラメータK(θ)を用いて、式(2)に従って用紙搬送量L=My・cosθ+Mx・sinθを算出する。尚、第一の実施形態及び第二の実施形態のいずれに対しても言えるが、用紙搬送量Lを算出するに当たっては、角度パラメータK(θ)を用いることによって簡単な四則演算で用紙搬送量Lを算出することができる。従って、第一の実施形態及び第二の実施形態のいずれにおいても、用紙搬送量Lの算出には角度パラメータK(θ)を用いるのが良い。
S370又はS375でこのようにして用紙搬送量Lを設定又は算出すると、モータ制御部705は、S380に移行し、この用紙搬送量Lを、現在保持している用紙搬送量Pに加算する。この動作によって、用紙搬送時からの総搬送量を表す用紙搬送量Pを最新値に更新する(S380)。更に、モータ制御部705は、基準値Dx0をS340で取得した最新の累積値Dx1に更新し、基準値Dy0をS340で取得した最新の累積値Dy1に更新し、基準値Gx0をS350で取得した最新のキャリッジ位置Gx1に更新する(S385)。
その後、モータ制御部705は、S380で算出した現在の用紙搬送量Pと目標位置Prとの偏差e=Pr−Pに対応した操作量Uを演算し、この操作量Uに対応する制御信号をモータドライバDR2に入力して、操作量Uに対応した駆動電流又は電圧でLFモータM2を駆動する(S390)。
モータ制御部705は、用紙搬送制御の終了条件が満足されるまで(S395でNo)、制御周期の到来毎に、このような内容の処理(S350〜S390の処理)を繰返し実行する。そして、用紙搬送制御の終了条件が満足されると(S395でYes)、当該用紙搬送制御処理を終了する。S395では、例えば、用紙搬送量Pが所定時間一定値で保持されると、用紙搬送制御の終了条件が満足されたと判断することができる。その他、用紙搬送制御の開始時刻から所定時間が経過すると、終了条件が満足されたと判断されてもよい。
以上、本実施例の画像形成装置1について説明したが、本実施例によれば、光学センサ37の傾きにより、光学センサ37による用紙変位量ΔDx,ΔDyの検出方向が、用紙Qの搬送方向からずれている場合でも、正確な用紙搬送量Pを算出することができる。
即ち、本実施例によれば、キャリッジ32の停止時において、用紙搬送量Pを、光学センサ37を用いて、ロータリエンコーダ205を用いるよりも高精度に特定できる。これはロータリエンコーダ205から得られる用紙搬送量Pは、搬送ローラ201の回転量から得るので間接的である。一方で、光学センサ37から得られる用紙搬送量Pは、搬送される用紙Qを撮影するので直接的であるためである。更に、キャリッジ32の移動時においても、光学センサ37を用いて、用紙搬送量Pを高精度に特定することができる。従って、本実施例の画像形成装置1によれば、この用紙搬送量Pに基づいて、高精度且つ効率的な用紙Qの搬送制御を実現することができ、用紙Qに高品質な画像を形成することができる。また、本実施例によれば、角度θ及び角度パラメータK(θ)を算出する際、搬送ローラ201を整数倍(N倍)回転させ、この整数倍回転期間中の移動量Mx,My,Ex及び回転量Eyに基づき、角度θ及び角度パラメータK(θ)を算出する。従って、本実施例によれば、偏心等により回転動作の周期的な乱れが生じることが原因で角度θ及び角度パラメータK(θ)の算出誤差が大きくなるのを抑えることができ、高精度に、角度θ及び角度パラメータK(θ)を算出することができる。
ここで、以上に説明した実施例に関する用語間の対応関係について説明する。用紙搬送機構20及びLFモータM2は、第一の搬送機構の一例に対応し、印字機構30及びCRモータM3は、第二の搬送機構の一例に対応する。また、ローラ位置Gyを検出するエンコーダ信号処理部701が実行する処理及びモータ制御部705が実行するS220,S240,S260の処理は、第一検出手段によって実現される処理の一例に対応し、キャリッジ位置Gxを検出するエンコーダ信号処理部702が実行する処理及びモータ制御部705が実行するS220,S240,S260,S310,S350,S385の処理は、第二検出手段によって実現される処理の一例に対応する。また、モータ制御部705が実行するS270の処理は、角度情報算出手段によって実現される処理の一例に対応し、メモリ705aは、角度情報記憶手段の一例に対応し、モータ制御部705が実行するS375の処理は、移動量算出手段によって実現される処理の一例に対応する。
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、キャリッジ32における用紙搬送方向上流側のフレーム34にベルト333を接続してキャリッジ32を搬送する画像形成装置1の構成について説明したが、キャリッジ32における用紙搬送方向下流側のフレーム35にベルトを接続してキャリッジ32を搬送するように、画像形成装置1を構成してもよい。但し、この場合には、キャリッジ32の用紙搬送方向下流側の部位が、上流側の部位に対してキャリッジ搬送方向に先行して移動することにより、キャリッジ32が傾くことになるため、キャリッジ32が傾く方向が上記実施例と逆となる。即ち、図8において左側に傾いている第一検出方向は、右側に傾くことになり、図8において用紙搬送方向下流側に傾いている第二検出方向は、用紙搬送方向上流側に傾くことになる。そして、角度θ=θ1−θ2は負値を採る結果となるが、上記の場合には、この負の角度θを式(1)又は式(2)に代入することにより、上記実施例と同様に正確な用紙搬送量Lを算出することができる。この他、本発明は、画像形成装置1に限定されず、種々の電気的装置に対して適用することができる。