以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る検査装置100の概略構成図である。また、図2は、図1に示した照射部12と検出部13の概略構成図である。検査装置100は、フォトデバイスが形成された基板の一種である太陽電池パネル90の空乏層の特性を検査するのに適した構成を備えている。
なお、検査装置100において、検査対象となる基板は、太陽電池パネル90に限定されるものではない。可視光を含む光を電流に変換するフォトデバイスを含む基板であれば、検査装置100の検査対象物となり得る。太陽電池パネル以外のフォトデバイスとしては、具体的には、CMOSセンサやCCDセンサなどのイメージセンサが想定される。なお、イメージセンサの中には、使用状態においてフォトデバイスが形成された基板の裏面側となる部分に受光素子が形成されているものが知られている。このような基板であっても、使用状態において受光する側の主面を受光面として検査装置100に設置すれば、良好にテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。
太陽電池などフォトデバイスは、p型とn型の半導体が接合されたpn接合部を有している。このpn接合部付近では電子と正孔とが互いに拡散して結びつく拡散電流が生じることによって、pn接合部付近に電子と正孔とが少ない空乏層が形成されている。この領域では、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域に引き戻す力が生じるため、フォトデバイスの内部に電界が生じている。ある程度のエネルギー(禁制帯幅を超えるエネルギー)を持つ光をpn接合部に照射した場合、pn接合部において、内部の電界によって光電子がn型半導体側に移動し、取り残された正孔はp型半導体に移動する。フォトデバイスでは、この電流がn型半導体およびp型半導体のそれぞれに取り付けた電極を介して、外部に取り出される。このように、フォトデバイスにおいては、pn接合部の空乏層に光が照射されたときに生じる自由電子と自由正孔の移動が直流電力として利用される。
発明者らは、フォトデバイスに所定波長のパルス光を照射したとき、特定波長の電磁波パルスが発生することを見出した。これは、空乏層などの光励起キャリア発生領域に光が照射されることで光励起キャリアが移動することにより、電磁波が発生すると考えられる。つまり発生する電磁波パルスは、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を反映するものである。したがって、検出された電磁波パルスを解析することによって、pn接合部の空乏層の特性を検査することができる。検査装置100においては、この原理に基づき、太陽電池パネル90に向けて所定波長のパルス光を照射したときに発生する電磁波パルスを検出するように構成されている。
図1に示したように、検査装置100は、ステージ11、照射部12、検出部13、可視カメラ14、モーター15、制御部16、モニター17および操作入力部18を備えている。
ステージ11は、図示を省略する固定手段によって、太陽電池パネル90をステージ11上に固定する。固定手段としては、基板を挟持する挟持具を利用したもの、粘着性シート、または、ステージ11表面に形成される吸着孔などが想定される。ただし、太陽電池パネル90を固定できるのであれば、どのような固定手段が適用されてもよい。本実施形態では、ステージ11は、太陽電池パネル90の受光面91S側に照射部12および検出部13が配置されるように太陽電池パネル90を保持する。
図2に示したように、照射部12は、フェムト秒レーザー121を備えている。フェムト秒レーザー121は、例えば、360nm(ナノメートル)以上1μm(マイクロメートル)以下の可視光領域を含む波長のパルス光(パルス光LP1)を放射する。本実施形態では、中心波長が800nm付近であり、周期が数kHz〜数百MHz、パルス幅が10〜150フェムト秒程度の直線偏光のパルス光が放射される。なお、その他の波長領域(例えば、青色波長(450〜495nm)、緑色波長(495〜570nm)などの可視光波長)のパルス光が出射されるようにしてもよい。
フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(ポンプ光LP11)は、太陽電池パネル90に照射される。このとき、照射部12は、ポンプ光LP11の照射を、受光面91S側から行う。また、ポンプ光LP11の光軸が、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して斜めに入射するように、ポンプ光LP11が太陽電池パネル90に対して照射される。本実施形態では、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲で適宜変更することができる。
図3は、太陽電池パネル90の概略断面図である。また図4は、太陽電池パネル90を受光面91S側から見た平面図である。また図5は、太陽電池パネル90を裏面側から見た平面図である。太陽電池パネル90は、薄膜結晶シリコン系である太陽電池パネルとして構成されている。太陽電池パネル90は、下から順にアルミニウムなどで形成された平板状の裏面電極92と、p型シリコン層93と、n型シリコン層94と、反射防止膜95と、格子状の受光面電極96とで構成される積層構造を有する結晶シリコン系太陽電池として構成されている。反射防止膜95は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化チタンなどで形成されている。太陽電池パネル90の主面のうち、受光面電極96が設けられている側の主面が、受光面91Sとなっている。つまり、太陽電池パネル90は、受光面91S側から光を受けることで発電するように設計されている。受光面電極96には、透明電極が用いられていてもよい。なお、検査装置100は、結晶シリコン系以外の太陽電池(アモルファスシリコン系など)の検査に適用してもよい。アモルファスシリコン系太陽電池の場合、一般的に、エネルギーギャップが1.75eV〜1.8eVといったように、結晶シリコン系太陽電池のエネルギーギャップ1.2eVに比べて大きい。このような場合、フェムト秒レーザー121の波長を、例えば700μm以下とすることで、アモルファスシリコン系太陽電池において、テラヘルツ波を良好に発生させることができる。
太陽電池パネル90の受光面91Sは、光の反射損失を抑えるために、所要のテクスチャー構造を有している。具体的には、異方性エッチングなどにより形成される数μm〜数十μmの凹凸、または機械的方法によるV字状の溝などが形成されている。このように、太陽電池パネル90の受光面91Sは、一般的に、できるだけ効率良く採光できるように形成されている。したがって、所定波長のパルス光が照射されたときに、該パルス光はpn接合部97に届きやすくなっている。例えば、太陽電池パネルの場合、主に可視光の波長領域を有する波長1μm以下の光であれば、pn接合部97に容易に到達し得る。
また、p型シリコン層93とn型シリコン層94との接合部分は、空乏層が形成されるpn接合部97となっている。この部分にポンプ光LP11が照射されることによって、電磁波パルスが発生し、外部に出射される。本実施形態において、検出部13において検出される電磁波パルスは、周波数0.01THz〜10THzの電磁波パルス(以下、テラヘルツ波パルスLT1と称する。)となっている。
図2に戻って、ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、プローブ光LP12として遅延部131およびミラーなどを経由して、検出器132に入射する。また、ポンプ光LP11の照射に応じて発生したテラヘルツ波パルスLT1は、放物面鏡M1,M2において集光されて検出器132に入射する。
検出器132は、光伝導スイッチで構成されている。テラヘルツ波が検出器132に入射された状態で、プローブ光LP12が検出器132に照射されると、検出器132に瞬間的にテラヘルツ波パルスLT1の電界強度に応じた電流が生じる。この電界強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、検出部13は、プローブ光の照射に応じて、太陽電池パネル90を透過したテラヘルツ波の電界強度を検出する。なお、検出器132として光伝導スイッチを利用しているが、その他の素子、例えば非線形光学結晶を利用してもよい。また、ショットキーバリアダイオードを使って、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出してもよい。
遅延部131は、ビームスプリッタB1から検出器132までのプローブ光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延部131は、プローブ光LP12の入射方向に移動する移動ステージ(図示せず)に固定されている。遅延部131は、プローブ光LP12を入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。遅延部131は、制御部16の制御に基づいて移動ステージを駆動して折り返しミラー10Mを移動させることにより、プローブ光LP12の光路長を精密に変更する。これにより、遅延部131は、テラヘルツ波パルスLT1が検出部13に到達する時間と、プローブ光LP12が検出部13へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延部131により、プローブ光LP12の光路(第2光路)の光学的距離(光路長)を変化させることによって、検出部13(検出器132)においてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(検出タイミングまたはサンプリングタイミング)を遅延させることができる。
なお、遅延部131は、その他の態様でテラヘルツ波パルスLT1とプローブ光の検出部13への到達時間を変更するようにしてもよい。例えば、電気光学効果を利用してもよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特開2009-175127号公報に開示されている電気光学素子を利用することができる。また、ポンプ光LP11の光路(第1光路)の光路長を変化できるようにしてもよい。この場合においても、検出器132にテラヘルツ波パルスLT1が到達する時間と、検出器132にプローブ光LP12が到達する時間を相対的にずらすことができる。したがって、検出器132におけるテラヘルツ波パルスLT1の電界強度の検出タイミングを遅延させることができる。
また、太陽電池パネル90には、検査時に裏面電極92と受光面電極96との間に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電圧印加回路99が接続される。逆バイアス電圧が電圧間に印加されることによって、pn接合部97の空乏層を大きくすることができる。これにより、検出器132において検出されるテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を大きくすることができるため、検出部13におけるテラヘルツ波パルスLT1の検出感度を向上することができる。ただし、逆バイアス電圧印加回路99は省略することもできる。
図1に戻って、可視カメラ14は、CCDカメラで構成されており、光源としてLEDやレーザーを備えている。可視カメラ14は、太陽電池パネル90の全体を撮影したり、ポンプ光LP11が照射される位置を撮影したりするのに用いられる。可視カメラ14によって取得された画像データは、制御部16へ送信される。
モーター15は、ステージを二次元平面内で移動させるX−Yテーブル(図示せず)を駆動する。モーター15は、このX−Yテーブルを駆動することによって、ステージ11に保持された太陽電池パネル90を、照射部12に対して相対移動させる。検査装置100は、モーター15により、太陽電池パネル90を二次元平面内で任意の位置に移動させることができる。検査装置100は、モーター15により、太陽電池パネル90の広い範囲(検査対象領域)にポンプ光LP11を照射して検査することができる。なお、太陽電池パネル90を移動させる代わりに、または、太陽電池パネル90を移動させると共に、照射部12を、検出部13を二次元平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。これらの場合においても、太陽電池パネル90の各領域について、テラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。なお、モーター15を省略して、ステージ11をオペレータによって手動で移動するようにしてもよい。
制御部16は、制御部16は、図示を省略するCPUやRAM、補助記憶部(ハードディスク)などを備えた一般的なコンピュータの構成を備えている。制御部16は、照射部12のフェムト秒レーザー121、検出部13の遅延部131および検出器、並びにモーター15に接続されており、これらの動作を制御したり、これらからデータを受け取ったりする。具体的に、制御部16は、検出器132からテラヘルツ波パルスLT1の電界強度に関するデータを受け取る。また、制御部16は、遅延部131を移動させる移動ステージ(図示せず。)の移動を制御したり、該移動ステージに設けられたリニアスケールなどから折り返しミラー10Mの移動距離などの遅延部131の位置に関連するデータを受け取ったりする。
また、制御部16には、専用の演算回路などで構成される時間波形構築部21、スペクトル解析部23、画像生成部25および光強度設定部27が接続されている。これら各部はCPUがプログラムにしたがって動作することにより実現される。なお、これらの機能の一部または全部が、制御部16の備えるCPUが所定のプログラムにしたがって動作することによって、ソフトウェア的に実現するようにしてもよい。
時間波形構築部21は、太陽電池パネル90において発生したテラヘルツ波パルスLT1について、検出部13(検出器132)にて検出される電界強度を元に、テラヘルツ波の時間波形を構築する。具体的には、遅延部131の折り返しミラー10Mを移動させることによって、プローブ光の光路長(第1光路の光路長)を変更することによって、プローブ光が検出器132に到達する時間を変更する。これにより、検出器132においてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出するタイミングを変更される。このようにして相互に異なる複数の検出タイミングにてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が検出されることにより、テラヘルツ波パルスLT1の時間波形が構築される。
スペクトル解析部23は、テラヘルツ波パルスLT1の時間波形に基づいて、検査対象物である太陽電池パネル90に関するスペクトル解析を行う。詳細には、スペクトル解析部23は、ポンプ光LP11の照射に応じて発生したテラヘルツ波パルスLT1の時間波形をフーリエ変換することにより、周波数に関する振幅強度スペクトルを取得する。
画像生成部25は、太陽電池パネル90の検査対象領域(太陽電池パネル90の一部または全部)に関して、パルス光LP1を照射したときに発生するテラヘルツ波パルスLT1の電界強度の分布を視覚化した画像を生成する。具体的には、可視カメラ14を介して取得される太陽電池パネル90の受光面91Sの可視光画像に、各測定位置の電界強度に応じた色や模様などを重ねることによって、電界強度分布画像が生成される。
光強度設定部27は、レーザー光源から照射する光強度を設定する設定部である。制御部16は、光強度設定部27によって設定された光強度のレーザー光(パルス光)をフェムト秒レーザー121(レーザー装置)に出射させる。
制御部16には、モニター17および操作入力部18が接続されている。モニター17は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、オペレータに対して各種画像情報を表示する。モニター17には、可視カメラ14で撮影された太陽電池パネル90の受光面91Sの画像、時間波形構築部21によって構築されたテラヘルツ波パルスLT1の時間波形、スペクトル解析部23による解析結果、または画像生成部25が生成した電界強度分布画像などが表示される。また、モニター17には、検査の条件設定などをするために必要なGUI(Graphycal User Interface)画面を表示する。
操作入力部18は、マウスおよびキーボードなどの各種入力デバイスで構成されている。オペレータは操作入力部18を介して所定の操作入力を行うことができる。なお、モニター17がタッチパネルとして構成されることによって、モニター17が操作入力部18として機能するようにしてもよい。
以上が、検査装置100の構成についての説明である。次に検査装置100を用いたフォトデバイスの検査方法について詳細に説明する。
<1.2. フォトデバイスの検査>
図6は、フォトデバイスである太陽電池パネル90を検査するときの流れ図である。なお、以下に説明する検査装置100の動作は、特に断らない限り制御部16によって制御されるものとする。また、図6に示した流れ図は、一例である。したがって、工程内容によっては、複数の工程を並列に実行したり、または、各工程の実行順序を適宜変更したりしてもよい。検査装置100においては、フォトデバイスである太陽電池パネル90の検査をするにあたって、まず、フェムト秒レーザー121から出射するパルス光の光強度の最適化が行われる(ステップS11〜ステップS19)。そしてその後、最適な光強度のパルス光が太陽電池パネル90に照射されることによって、太陽電池パネル90の検査が行われる(ステップS20)。
まず、ステージ11に検査対象であるフォトデバイス(太陽電池パネル90)が設置される(ステップS11)。このステップS11においては、オペレータが太陽電池パネル90をステージ11に設置するようにしてもよいし、図示を省略する搬送装置を使って太陽電池パネル90をステージ11に設置するようにしてもよい。このとき、上述したように、太陽電池パネル90の受光面91Sに向けて、パルス光(ポンプ光LP11)が照射されるように太陽電池パネル90がステージ11に設置される。
太陽電池パネル90がステージ11に固定されると、検査装置100は、モーター15を駆動することによって、太陽電池パネル90の任意の位置にパルス光が照射されるように太陽電池パネル90を移動させる。このパルス光を照射する位置は、あらかじめ設定された座標データにおいて規定されていてもよいし、オペレータが操作入力部18を介して入力して適宜指定するようにしてもよい。また、オペレータが、ステージ11を手動で移動させることで、太陽電池パネル90の所定位置にパルス光が照射されるようにしてもよい。
次に、検査装置100は、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS)を行うことによって、太陽電池パネル90の所定位置にパルス光(ポンプ光LP11)を照射したときに発生するテラヘルツ波の時間波形を復元する(ステップS12)。より詳細には、検査装置100は、パルス光を太陽電池パネル90に照射しながら、遅延部131を制御することによって、検出器132において電界強度の検出タイミングを変更しながら、テラヘルツ波パルスの電界強度が検出される。このとき、逆バイアス電圧印加回路99を駆動することによって、太陽電池パネル90に逆バイアス電圧を印加するようにしてもよい。
図7は、時間波形構築部21により復元されたテラヘルツ波パルスの時間波形を示す図である。図7中、横軸は時間を示し、縦軸は電界強度を示している。また、下段には、遅延部131によって、検出器132に到達するタイミング(検出タイミングt1〜t8)の異なる複数のプローブ光LP12が概念的に示されている。また、図7中、実線で示した時間波形41は、図6に示したステップS12において復元されたテラヘルツ波パルスの時間波形である。
検出器132には、図7に示した時間波形41のテラヘルツ波パルスが所定の周期で繰り返し到来する。ここで、検出器132に対して、検出タイミングt1でプローブ光が到達するように遅延部131を調整した場合、検出器において、値E1の電界強度が検出される。また、遅延部131を調整することによって検出タイミングをt2〜t8にそれぞれ遅延させた場合、それぞれ値E2〜E8の電界強度が検出部13において検出される。このような要領で、検出タイミングを細かく変更しながらテラヘルツ波パルステラヘルツ波パルスの電界強度を測定し、取得された電界強度値を時間軸に沿って二次元グラフ上にプロットすることによって、テラヘルツ波パルスの時間波形41を復元することができる。
図6に戻って、検査装置100は、図7に示した時間波形41に基づいて、テラヘルツ波パルスの電界強度が略最大となる検出タイミングに対応する折り返しミラー10Mの位置を特定する。そして折り返しミラー10Mを、特定された位置に移動させて固定する(ステップS13)。時間波形41においては、検出タイミングt3において電界強度が最大(E3)となっている。したがって、この検出タイミングt3に対応する位置に折り返しミラー10Mの位置が設定される。これにより、プローブ光LP12の光路長が、テラヘルツ波パルスの略最大値となるときの光路長に設定されることとなる。
このように折り返しミラー10Mの位置を設定することによって、テラヘルツ波パルスの電界強度が最大となるタイミングで電界強度を検出できる。したがって、後述するパルス光の光強度とテラヘルツ波パルスの電界強度との相関関係を示す相関データを取得する際に、シグナルノイズ比を高めることができる。
なお、検出器132として、ショットキーバリアダイオードを採用した場合、検出器132では、時間平均化されたテラヘルツ波パルスの電界強度の大きさが検出される。この場合、テラヘルツ波パルスの復元(ステップS12)および最大値の取得(ステップS13)をスキップすることができるため、光強度の設定を迅速に行うことができる。
次に、検査装置100は、逆バイアス電圧を印加するかどうか判定する(ステップS14)。逆バイアス電圧を印加するかどうかは、予め定められていてもよいし、逆バイアス電圧印加が必要かどうかを確認する画面をモニター17等に表示するなどして、オペレータが適宜設定入力できるようにしてもよい。
逆バイアス電圧印加する場合(ステップS14においてYES)、検査装置100は、逆バイアス電圧印加回路99を駆動することによって、所定の大きさの電圧を太陽電池パネル90に印加する(ステップS15)。そして検査装置100は、次のステップS16に進む。また、逆バイアス電圧印加が不要である場合(ステップS14においてNO)、検査装置100は、ステップS15をスキップしてステップS16に進む。
ステップS16では、検査装置100が、パルス光の光強度と、テラヘルツ波パルスの電界強度との相関を示す相関データを取得する。この工程では、具体的には、フェムト秒レーザー121から出射するパルス光LP1の光強度がゼロから所要強度まで次第に増大され、そのときに検出器132において検出される電界強度が順次記録される。相関データの具体例については、後述する。相関データを取得すると、検査装置100は、その相関データに基づいて、電界強度が最大値となるときの光強度を検出する(ステップS17)。
さらに検査装置100は、太陽電池パネル90に印加する逆バイアス電圧を増やすかどうかを判定する(ステップS18)。この判定は、例えば逆バイアス電圧があらかじめ規定された電圧を越えているかどうかを基準にして行われる。印加されている逆バイアス電圧が規定の電圧量を越えていない場合(ステップS18においてYES)、検査装置100は、テップS15に戻り、所要量の電圧量を加算した電圧を太陽電池パネル90に印加する。そして以降のステップS16,S17が再び実行される。テップS18において印加されている逆バイアス電圧が規定の電圧を超えている場合(ステップS18においてNO)、検査装置100は次のステップS19へ進む。なお、ステップS14およびステップS18を省略することも可能である。この場合、電極間に印加する逆バイス電圧を固定値(逆バイアス電圧を印加しない場合を含む。)とすればよい。
図8〜図10は、相関データCD1〜CD3と、該相関データCD1〜CD3をグラフ化したものを示す図である。なお、相関データCD1〜CD3は、太陽電池パネル90の相互に異なる位置(具体的には、図4に示した位置P1〜P3)に関して、ステップS14〜ステップS18が繰り返し行われることにより取得されるデータである。
相関データCD1を参照すると、逆バイアス電圧がゼロの場合、光強度をゼロから70mWまで増大させても、検出される電界強度が常にノイズ(バックグラウンド)レベルの電界強度(=0.5)となっており、増減は生じていない。しかしながら、逆バイアス電圧については0Vから10Vまで増大させると、検出される電界強度の大きさが次第に大きくなっている。これは、逆バイアス電圧によって発生するテラヘルツ波パルスの電界強度が増幅されるためである。
ここで、太陽電池パネル90に照射するパルス光の光強度を増大させると、テラヘルツ波パルスの発生量も増大するため、検出器にて検出される電界強度も大きくなると考えられる。しかしながら、相関データCD1に示したように、光強度がある程度の大きさのところで、テラヘルツ波パルスの電界強度が飽和してしまい、それ以上増やしたとしても、電界強度が減少に転じる。例えば逆バイアス電圧を1Vとした場合、光強度を0mWから15mWまたは20mWまで増やしたとき、電界強度が次第に大きくなり、15mWまたは20mWのときに、電界強度が最大となっている。つまり、15mWまたは20mWが、最大時光強度となっている。しかしながら、光強度を20mWから30mWに増大させると、今度は、電界強度が減少に転じる。同様に逆バイス電圧が2Vまたは4Vの場合、20mWまたは40mWのときに電界強度が最大となり、それ以降は減少に転じている。
このように光強度の大きさに比例せずに、電界強度が飽和してしまう現象は、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、太陽電池パネル90などのフォトデバイスにフェムト秒レーザー121からパルス光が照射されると、光励起キャリアが生成される。生成された光励起キャリアは、逆バイアス電圧、内部電界、あるいは拡散などの影響を受けて、集電電極(受光面電極96など)に吸引される。パルス光の光強度が比較的小さい場合、光励起キャリアは電極へ十分に吸引されるが、光強度が大きくなると、光励起キャリアが十分に吸引されなくなる。その結果、パルス光の照射部分において、光励起キャリアが充満された状態となる。すると、パルス光照射による光励起キャリアの発生量が減少するため、テラヘルツ波パルスの電界強度も減少すると考えられる。したがって、電界強度が最大となる時には、以下の等式(1)が成立しているものと考えられる。
(光励起キャリアの発生量)=(逆バイアス、内部電界または拡散による光励起キャリアの吸収量)・・・(1)
なお、図8〜図10に示した相関データCD1〜CD3においては、ほぼ同条件にて光強度の変更、バイアス電圧の印加を行っているが、検出される電界強度の大きさがそれぞれで異なっている。具体的には、相関データCD2において電界強度が全体的に最も大きくなっており、次いで相関データCD2、相関データCD1の順に電界強度が小さくなっている。ここで、受光面電極96に近いほど、パルス光が照射されたときに、光励起キャリアが吸収されやすい。このため、発生するテラヘルツ波パルスの電界強度も大きくなると考えられる。よって、図4に示したように、位置P2,P3,P1の順で受光面電極96から遠ざかっているため、検出される電界強度の大きさもこの順に小さくなると考えられる。また、相関データCD2,CD3では、逆バイアス電圧が負荷されていない状態(0V)でも、5〜10mW程度の光強度において、ある程度の強さのテラヘルツ波パルスを検出することができる。つまり、逆バイアス電圧を印加するための電極がないフォトデバイスの検査においても、本発明は原理的に適用可能である。
図6に戻って、相関データを取得すると、検査装置100は、該相関データに基づいて、検査用の光強度を設定する(ステップS19)。具体的には、光強度設定部27が、電界強度が最大となるときの光強度を(最大時光強度)を、検査用の光強度に設定する。相関データCD1〜CD3から明らかなように、照射するパルス光の光強度が強すぎると、フォトデバイスから発生するテラヘルツ波パルスの電界強度が逆に小さくなってしまう。そこで、この電界強度が減少し始める境界を相関データから特定することによって、光強度を無駄に大きくせずに、検出器132にて検出されるテラヘルツ波パルスの電界強度を最大限とすることができる。したがって、シグナルノズル比を改善しつつ、かつ、フェムト秒レーザー121のランプの長寿命化や保守コストの低減を図ることができる。
なお、図8〜図10の相関データCD1〜CD3で示したように、最大時光強度は、太陽電池パネル90に印加される逆バイアス電圧の大きさによって異なる場合がある。ステップS19では、いくつかの大きさの逆バイアス電圧の中から特定の大きさの逆バイアス電圧が適当に選択され、その大きさの逆バイアス電圧のもとで決定された最大時光強度が検査用の光強度に設定される。この逆バイアス電圧の選択は任意の基準で行い得るが、例えば相関データに記録された電界強度の大きさが閾値を超えるかどうかを基準にして行われるようにしてもよい。
また、ステップS19においては、測定用の光強度が、最大時光強度に合わせて設定されているが、これ以外の大きさの光強度に設定されてもよい。測定用の光強度は、フェムト秒レーザー121の長寿命化などを考慮した場合、最大時光強度を越えない大きさの光強度に設定されることが望ましい。しかしながら最大時光強度を若干越える程度の大きさであれば、十分に許容される。
次に検査装置100は、ステップS19において設定された光強度のパルス光をフェムト秒レーザー121から出射することによって、太陽電池パネル90の検査を行う(ステップS20)。このステップS20では、太陽電池パネル90の様々な箇所にパルス光(ポンプ光LP11)を照射して、発生するテラヘルツ波パルスの電界強度を検出器132にて検出する。
本実施形態に係る検査装置100では、大きく分けて2種類の検査を行うことができルように構成されている。まず第1の検査は、(1)テラヘルツ波パルスの時間波形に基づく検査(以下、検査(1)と称する。)である。この検査(1)では、特定の領域(検査位置)にポンプ光LP11が照射されたときに発生するテラヘルツ波パルスの時間波形が構築される。また、この構築された時間波形に基づいたスペクトル解析が行われる。これらの解析により、太陽電池パネル90の特定領域における空乏層形成に関する検査や、不純物に関する検査を行うことができる。
また、第2の検査は(2)太陽電池パネル90全体についてのテラヘルツ波パルスの電界強度分布に基づく検査(以下、検査(2)と称する。)である。この検査(2)では、太陽電池パネル90上の各領域のそれぞれについて、ポンプ光LP11が照射されたときに発生するテラヘルツ波パルスの電界強度がそれぞれ測定される。これにより、太陽電池パネル90の検査対象領域内における空乏層の形成不良部分や、または多結晶シリコンの格子欠陥を特定することができる。以下においては、まず検査(1)について説明し、次に検査(2)について説明する。
図11は、検査(1)の詳細な流れ図である。検査装置100は、検査(1)を開始すると、逆バイアス電圧を印加するかどうか判定する(ステップS21)。逆バイアス電圧を印加する場合(ステップS21においてYES)、ここでは、ステップS19において設定された光強度を決定したときの逆バイアス電圧と同じ大きさの電圧が太陽電池パネル90の電極間に印加される(ステップS22)。例えば、相関データCD1において、逆バイアス電圧を2Vとしたとき、最大時光強度が20mWとなっている。この相関データに基づいて、ステップS19において光強度が20mWと設定された場合には、ステップS22において2Vの逆バイアス電圧が印加される。なお、逆バイアス電圧を印加しない場合、検査装置100は、ステップS22をスキップしてステップS23に進む。
次のステップS23では、検査装置100が、検査位置に合わせて太陽電池パネル90を移動させる。この検査位置は、あらかじめ、検査を行うべき太陽電池パネル90上の位置に関するデータ(座標データ)として、オペレータが操作入力部18を介して指定される。制御部16は、この座標データに基づいて、モーター15を駆動することにより、該検査位置にパルス光が照射されるように、ステージ11を移動させる。なお、オペレータ自身が、ステージ11を手動で移動させることによって、検査位置に合わせて太陽電池パネル90を移動させてもよい。
太陽電池パネル90の移動が完了すると、検査装置100は、THz−TDSに基づいて、ポンプ光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスの時間波形を復元する(ステップS24)。具体的には、図6に示したステップS12とほぼ同様である。ただし、このステップS24では、ステップS19において設定された光強度のパルス光が、太陽電池パネル90に照射される。このステップS24により、図7に示した時間波形41と同様に、検査位置において発生するテラヘルツ波パルスの時間波形を復元される。
このようにして、時間波形を復元することにより、検査位置におけるpn接合部97の空乏層の特性について検査することができる。例えば、テラヘルツ波パルスの検出の有無を検査したり、構築された時間波形の電界強度の振幅を標準データと比較したりすることで、空乏層の形成不良などを検出することができる。また、同様の処理で太陽電池の様々な光励起キャリア発生領域の形成不良を検出することができる。
次に検査装置100は、復元された時間波形に基づいて、スペクトル解析を行う(ステップS25)。この工程では、スペクトル解析部23が時間波形に対してフーリエ変換を行うことによって、テラヘルツ波パルスについてのスペクトル分布が取得される。
図12は、テラヘルツ波パルスのスペクトル分布を示す図である。図12中、縦軸はスペクトル強度を示しており、横軸は周波数を示している。ステップS25において取得されたスペクトル分布51においては、0.1THz〜1THzの範囲の周波数においてスペクトル強度が比較的強くなっている。このようなスペクトル分布51を取得することにより、各検査位置に形成されているpn接合部97の空乏層の特性を検査することができる。例えば、スペクトル分布51において、矢印で示した特定周波数のスペクトル強度が、基準となる参照値(図示せず)よりも有意に低くなっているような場合に、該特定周波数を吸収する不純物が空乏層などに含まれていることを検出することができる。また、吸収された周波数から、不純物の種類や濃度などを推定することも可能である。なお、このステップS26のスペクトル解析は省略することも可能である。
図11に戻って、スペクトル解析が完了すると、検査装置100は、モニター17に検査結果を示す画像を表示する(ステップS26)。具体的には、ステップS25において取得されたテラヘルツ波パルスの時間波形や、ステップS26において取得されたスペクトル分布(図12参照)などが解析結果としてモニター17に表示される。以上が検査(1)の説明である。次に検査(2)について説明する。
<検査(2)>
図13は、検査(2)の詳細な流れ図である。上記検査(1)では、太陽電池パネル90上の特定の領域について、ポンプ光LP11を照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスの時間波形とスペクトル解析が行われる。これに対して、検査(2)では、太陽電池パネル90の全面について、光励起キャリア発生領域の状態を検査する。
検査(2)を開始すると、検査装置100は、太陽電池パネル90に対して逆バイアス電圧を印加するかどうか判定し(ステップS20)、必要な場合は電極間に逆バイアス電圧を印加する(ステップS21)。この流れは、検査(1)におけるステップS20,S21と同様である。
次に検査装置100は、検出器132において検出されるテラヘルツ波パルスの電界強度が最大となるように、遅延部131が調整される(ステップS23a)。この工程では、ステップS13において設定された折り返しミラー10Mの位置に、折り返しミラー10Mが配置される。このようにテラヘルツ波パルスの電界強度の最大値を検出するようにすることで、電界強度が検出しやすくなるため、テラヘルツ波パルスの検出感度を向上することができる。ただし、その他の位置に折り返しミラー10Mを配置して、その他の検出タイミングでテラヘルツ波パルスの電界強度が検出されるようにしてもよい。
次に、検査装置100は、モーター15を駆動することにより、太陽電池パネル90を二次元平面内で移動させる(ステップS24a)。このとき、ステップS19において設定された光強度のパルス光が太陽電池パネル90に照射され、これにより発生するテラヘルツ波パルスの電界強度が検出器132にて検出される。太陽電池パネル90上の検査対象領域についての電界強度分布が取得される。なお、太陽電池パネル90の移動は、例えば、主走査方向に沿って正方向に移動させた後、主走査方向に直交する副走査方向に所要距離分移動させて(ずらして)、主走査方向に沿って正方向とは反対の方向へ移動させる。これを繰り返すことによって、太陽電池パネル90の全領域に関して、テラヘルツ波パルスの電界強度を効率的に取得することができる。
テラヘルツ波パルスの電界強度を取得すると、検査装置100は、電界強度分布を示す画像(電界強度分布画像)を生成し、モニター17に表示する(ステップS25a)。
図14は、モニター17に表示される電界強度分布画像I1の一例である。電界強度分布画像I1は、可視カメラ14によって撮影された太陽電池パネル90を示す画像に対して、各検査位置で検出された電界強度の大きさに応じて着色したものである。なお、図14では、説明の都合上、種類の異なるハッチングを用いることで、電界強度の大きさの分布が表現されている。具体的には、電界強度が10以上の部分、8以上10未満の部分、4以上8未満の部分を、それぞれ識別できるようになっている。もちろんこの表現方法は一例であり、適宜変更が可能である。例えば、電界強度の範囲をさらに細かく区切ってもよいし、その他の方法で電界強度分布を表現するようにしてもよい。
図14に示したように、太陽電池パネル90では、受光面電極96の周囲において最も電界強度が強くなっており、受光面電極96から離間する程、電界強度が弱まっている。このような電界強度分布画像I1を生成および表示することによって、太陽電池パネル90の検査対象領域について、光励起キャリア発生領域の形成状況を一度に把握することができる。さらに、検出される電界強度の異常から、多結晶シリコンの格子欠陥なども推定することができる。
なお、本実施形態では、最大電界強度の分布を画像化しているが、例えば、フェムト秒レーザー121から、複数の波長領域のパルス光をそれぞれ照射したときに検出される電界強度の分布を画像化するようにしてもよい。このとき、それぞれの波長領域毎に色分けして、同一画像内で波長領域毎の電界強度の分布を視認できるようにすることも可能である。
また、本実施形態の検査(2)では、折り返しミラー10Mを固定することによって、一つの検出タイミングのみにて、テラヘルツ波パルスの電界強度を検出するようにしている。しかしながら、例えば検査(1)で説明したように、遅延部131を制御することで、検査対象領域内の各検査位置毎に、発生したテラヘルツ波パルスの時間波形を復元するようにしてもよい。取得された時間波形をフーリエ変化して、スペクトル分布を取得することによって、特定の周波数空間毎の電界強度分布を得ることができる。この電界強度分布を所定のルールにしたがって色分けなどを行って視覚化した画像を生成するようにしてもよい。
また、検査する太陽電池パネル90が複数存在する場合に、上記ステップS11〜S19を毎回行う必要はない。特に複数の太陽電池パネル90が同じようにして製造されているような場合には、1枚の太陽電池パネル90を用いて一度光強度を設定しておき、その他の太陽電池パネル90の検査を該光強度で行うようにすればよい。
以上のように、本実施形態に係る検査装置100によると、太陽電池パネル90に形成された光励起キャリア発生領域にパルス光を照射して、それに応じて発生するテラヘルツ波パルスを検出することで、空乏層など光キャリア発生領域の特性を検査することができる。したがって、非接触状態で検査を行うことが可能であるため、太陽電池パネル90の故障、不良判定の効率化を図ることができる。また、従来の検査で使用されていたプローブの接触を無くすことによって、太陽電池パネル90の損傷を防止することができる。
<2. 第2実施形態>
上記実施形態では、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して、パルス光(ポンプ光LP11)の光軸が斜め(入射角度45°)に入射するようにしているが、入射角度はこのようなものに限定されるものではない。
図15は、第2実施形態に係る検査装置100Aの照射部12Aと検出部13Aの概略構成図である。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る検査装置100の構成要素と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
検査装置100Aにおいても、フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1がビームスプリッタB1によってポンプ光LP11とプローブ光LP12に分割される。ただし、本実施形態では、分割されたポンプ光LP11は、透明導電膜基板(ITO)19を透過して、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直にポンプ光LP11に入射する。そして、ポンプ光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1のうち、受光面91S側に出射されるテラヘルツ波パルスLT1が、透明導電性基板19を反射して、レンズなどを介して検出器132に入射する。
このような照射部12Aおよび検出部13Aを備える検査装置100Aにおいても、ポンプ光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。したがって、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、検査装置100Aによると、太陽電池パネル90に照射するパルス光の光強度を適切に設定できるとともに、太陽電池パネル90の空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を非接触状態で検査することができる。
<3. 第3実施形態>
第2実施形態では、受光面91S側に出射されるテラヘルツ波パルスLT1を検出するようにしているが、太陽電池パネル90の裏面側に透過するテラヘルツ波パルスLT1を検出するようにしてもよい。
図16は、第3実施形態に係る検査装置100Bの照射部12Bと検出部13Bの概略構成図である。検査装置100Bにおいても、フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1がビームスプリッタB1によってポンプ光LP11とプローブ光LP12に分割される。本実施形態では、分割されたポンプ光LP11は、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直に入射する。そして、ポンプ光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1のうち、太陽電池パネル90の裏面側に出射される(透過する)テラヘルツ波パルスLT1が放物面鏡M1,M2などを介して検出器132に入射するように検出部13Bが構成されている。
このような照射部12Bおよび検出部13Bを備える検査装置100Bにおいても、ポンプ光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。したがって、検査装置100Bによると、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、太陽電池パネル90に照射するパルス光の光強度を適切に設定できるとともに、太陽電池パネル90の光励起キャリア発生領域の特性を非接触状態で検査することができる。なお、テラヘルツ波が透過できる構造および材質はある程度限定される。したがって、図5に示したように、裏面電極92が全面に設けられているような太陽電池パネル90の場合、検査装置100Bよりも検査装置100,100Aで検査する方が好ましい。
<4. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、波長が800nm付近のパルス光を使って太陽電池パネル90を検査するようにしている。しかしながら、1.5μm並びに1.0μmの第二高超波のパルス光を使って、太陽電池パネル90またはその他のフォトデバイスが形成された基板を検査するようにしてもよい。例えば、ウェハーに形成されたフォトデバイスを検査するようにしてもよい。
また、光強度の測定は、フェムト秒レーザー121において測定するようにしてもよいし、フェムト秒レーザー121から出射された後のパルス光を測定するようにしてもよい。パルス光の測定方法としては、パルス光の一部を抽出して強度を測定し、残りの光強度を算出するようにしてもよいし、全パルス光を遮断して測定するようにしてもよい。
また、相関データを取得する際、フェムト秒レーザー121から出射するパルス光を一定としておき、太陽電池パネル90に照射されるパルス光(ポンプ光LP11)の光強度を変更するようにしてもよい。勿論、フェムト秒レーザー121から出射するパルス光LP1の光強度を変更するようにしてもよい。
また、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。