JP5807494B2 - 含フッ素化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書においては、式(h−1)で表される化合物を化合物(h−1)と記す場合がある。他の式で表される化合物も同様である。
本発明の含フッ素化合物の製造方法は、工程(vi)よりも前に、化合物(z)の酸化反応により、化合物(a)で表される化合物を含む混合物を得る工程(i);該混合物にヒドロキシ基を有する化合物(m)を反応させて、前記混合物に含まれ、上式(b)で表される酸フルオリド化合物をエステル化し、式(k−1)で表されるカルボン酸エステルに変換する工程(ii);化合物(a)とカルボン酸エステルを含む混合物から、該カルボン酸エステルを分離して除去する工程(iii);該工程(iii)の後に、化合物(a)にカルボニル化合物を反応させて、化合物(d1)および化合物(d2)の少なくとも一方を含む生成物を生成させる工程(iv);化合物(d1)および式化合物(d2)の少なくとも一方を含む生成物にHFPOを反応させて、化合物(f)を生成させる工程(v)を有することができる。また、工程(vi)よりも後に、化合物(g)の熱分解反応により、化合物(h)を得る工程(vii)を有することができる。
また、工程(v)および(vi)のかわりに、これらを一工程で行う工程(v’)を有することもできる。
また、以下、式(b)で表される酸フルオリド化合物のことを酸フルオリド化合物(b)、式(k−1)で表されるカルボン酸エステルのことをカルボン酸エステル(k−1)と記す場合がある。他の式で表される酸フルオリド化合物およびカルボン酸エステルも同様である。
2価のペルフルオロ有機基はエーテル結合性酸素原子を有してもよい。有機基は、炭素原子を1個以上有する基であり、炭素原子を1〜10個有することが好ましく、炭素原子を1〜6個有することがより好ましい。2価のペルフルオロ有機基としては、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
(工程(i))
工程(i)では、出発原料である化合物(z)を酸化反応させて、化合物(a)を含む混合物を得る。
化合物(z)としては、たとえば下記化合物(z−1)〜(z−6)が挙げられる。出発原料が化合物(z−1)である場合には、下記化合物(a−1)が生成する。
CF2=CF(CF2)4SO2F・・・(z−2)
CF2=CFSO2F・・・(z−3)
CF2=CFCF2SO2F・・・(z−4)
CF2=CFCF2CF2SO2F・・・(z−5)
CF2=CF(CF2)3SO2F・・・(z−6)
相間移動触媒は、次亜塩素酸塩中のカチオンに対する親油性錯化能と有機層に対する親和性とを有する相間移動触媒が好ましく、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩または第4級アルソニウム塩がより好ましく、第4級アンモニウム塩が特に好ましい。
第4級アンモニウム塩におけるカチオン部分の具体例としては、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ−n−プロピルアンモニウムイオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムイオン、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
Y−は塩素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸イオンが好ましい。
工程(ii)では、化合物(a)と酸フルオリド化合物(b)とを含む混合物に対して、ヒドロキシ基を有する化合物(m)を反応させる。該混合液に含まれる酸フルオリド化合物(b)は、化合物(a)よりも化合物(m)に対する反応性が高い。そのため、工程(ii)では、酸フルオリド化合物(b)が化合物(a)よりも優先的に化合物(m)によりエステル化され、酸フルオリド化合物(b)は、カルボン酸エステルに変換される。
化合物(a)と酸フルオリド化合物(b)は沸点が近く、沸点差を利用した分離が困難であるが、工程(ii)において酸フルオリド化合物(b)をカルボン酸エステルへと選択的に変換し、高分子量化することにより、後の工程(iii)において該カルボン酸エステルを化合物(a)から容易に分離して除去できるようになる。
その結果、工程(iv)の収率、すなわち、化合物(a)を基準とした化合物(d1)および化合物(d2)の収率が高まる。その理由は、酸フルオリド化合物(b)に由来する、化合物(a)の副反応が抑制されるためと考えられる。
また、酸フルオリド化合物(b)が残存したままで後述の工程(v)を行うと、酸フルオリド化合物(b)とHFPOとの副反応により、化合物(f)とは沸点が近く沸点差を利用した分離が困難な下記副生成物(化合物(n))が生成する。その点からも、工程(v)よりも前段側の工程(ii)および工程(iii)において、酸フルオリド化合物(b)をカルボン酸エステルに変換し、分離して除去しておくことが好ましい。
なお、前述したように、工程(i)で得られた混合物には、酸フルオリド化合物(b)以外の酸フルオリド化合物も少量含まれる場合がある。その場合、工程(ii)では、少量含まれる該酸フルオリド化合物もエステル化され、次の工程(iii)で除去することができる。
これらのうちでは、酸フルオリド化合物(b)とのエステル化反応で生成するカルボン酸エステルが化学的に安定で副反応を起こし難く、後述の工程(iii)での分離、除去が容易である点から、第一級脂肪族アルコール類、第二級脂肪族アルコール類、フェノール類が好ましい。
連鎖移動性の低いエステルを与える化合物(m)としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、フッ素置換アルコール類が挙げられる。フッ素置換アルコールとしては、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノールが挙げられる。
これらのうちでは、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
また、副生するフッ化水素を除去することを目的として、フッ化ナトリウムまたはフッ化カリウムのようなフッ化アルカリ金属類、または脱酸剤等の添加剤を用いてもよい。
工程(iii)では、工程(ii)で生成したカルボン酸エステルを分離して除去する。
カルボン酸エステルを分離して除去する方法としては、化合物(a)とカルボン酸エステルの沸点差を利用した蒸留法;溶解度の差を利用した抽出法;吸着性の差を利用したクロマトグラフィ;などが挙げられ、高い分離度が得られること、溶剤や吸着剤等の廃棄物が出ないこと、工業的生産性に優れていることなどの点から、蒸留法が好ましい。
また、蒸留により得られた化合物(a)には、沸点が非常に近い化合物(z)が含まれることがあるが、化合物(z)は工程(iv)以降の反応に影響を及ぼさず、また工程(iv)以降の精製過程において容易に分離除去が可能であることから、化合物(z)の混在は工程上問題無い。
工程(iv)では、カルボン酸エステルが分離、除去された化合物(a)に、カルボニル化合物を反応させて、カルボニル基を有する化合物(d1)および化合物(d2)の少なくとも一方を含む生成物を生成させる。化合物(d2)は、化合物(d1)の環化二量体であり、カルボニル化合物として式R1R2NCHOで表される化合物(j)を用いた場合には、化合物(d1)から化合物(d2)への二量化の反応速度は大きいため、工程(iv)の生成物には、化合物(d2)のみが含まれ、化合物(d1)は確認できない場合が多い。一方、カルボニル化合物としてベンゾフェノンを用いた場合、工程(iv)では主に化合物(d1)が生成する。
カルボニル化合物として、上述の式R1R2NCHOで表される化合物(j)を用いると、工程(iv)の温度を低く設定できることから好ましい。すなわち、工程(iv)では副生成物として下記の含フッ素アミン化合物(c)が生成する。該化合物(c)は反応性が高く、温度が比較的高い条件下ではフッ素イオンを放出することで、化合物(d2)の副反応を引き起こすと考えられ、該条件下では化合物(d2)の収率は低くなる。よって、工程(iv)の温度を低くすることにより、化合物(c)と化合物(d2)との副反応を抑制し、化合物(d2)の収率を高く維持することができる。
カルボニル化合物として化合物(j)を用いた場合、工程(iv)の温度を−50〜20℃とすることができ、反応速度の確保および副反応の抑制の点からは、−30〜0℃が好ましく、−25〜0℃がさらに好ましい。
また、工程(iv)の時間は、0.5時間〜1週間とするのが好ましく、1〜48時間とするのが特に好ましく、とりわけ2〜24時間とするのが好ましい。
化合物(j)としては、N,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)、N−ホルミルモルホリン等が挙げられる。
工程(v)では、工程(iv)で得られた化合物(d1)および化合物(d2)の少なくとも一方を含む生成物にHFPOを反応させて、化合物(f)を生成させる。なお、前述のとおり、化合物(d2)は、化合物(d1)の環化二量体であり、化合物(d1)から化合物(d2)への二量化の反応速度は大きい。そのため、工程(iv)の生成物は、化合物(d2)のみを含むものであってもよい。また、工程(iv)の反応条件によっては、該工程(iv)の生成物は、化合物(d1)のみを含むものであってもよい。
反応温度は、HFPO付加反応の選択率を高めるため、−50〜50℃が好ましく、−30〜20℃がより好ましい。
また、反応時間は0.5〜24時間が好ましく、1〜12時間がさらに好ましい。
工程(vi)では、6員環構造の化合物(f)の異性化反応により、5員環構造の化合物(g)を得る。
異性化反応は、溶媒の存在下で行う。溶媒としては非プロトン性極性溶媒が好ましく、グライム系溶媒(たとえば、テトラグライム、トリグライム、ジグライム、モノグライム)やスルホランが挙げられる。また、アセトニトリル、アジポニトリル等の非プロトン性極性溶媒と、グライム系溶媒との混合溶媒も用いることができる。
また、異性化反応は、フッ化物イオン触媒の存在下で行うことが好ましく、フッ化物イオン触媒としては、AgF、NaF、KF、CsFなどの金属フッ化物や、テトラブチルアンモニウムフルオリドのような有機フッ化物を用いることが好ましい。なかでも、金属フッ化物としてアルカリ金属フッ化物を用いることが好ましく、異性化反応の反応性の点から、CsFがより好ましい。
化合物(f)に対するフッ化物イオン触媒の量は、化合物(f)に対して0.01〜3倍モルが好ましく、0.03〜1倍モルがより好ましく、0.05〜0.3倍モルがさらに好ましい。
また、異性化反応の時間は0.5〜24時間が好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
異性化反応後、化合物(g)を蒸留法などで精製してから、工程(vii)を行うことが好ましい。
工程(vii)では、化合物(g)の熱分解反応により、化合物(h)を得る。
熱分解反応は、気相反応で行っても液相反応で行ってもよく、反応効率の観点から気相反応で行うことが好ましい。
熱分解反応の温度は、150℃以上が好ましく、200℃〜500℃が特に好ましく、とりわけ250℃〜450℃が好ましい。
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、炭酸塩、フッ化物が好ましい。アルカリ金属塩の具体例としては、Na2CO3、NaF、K2CO3、KF、Li2CO3等が挙げられる。アルカリ土類金属塩の具体例としては、CaCO3、CaF2、MgCO3、BaCO3等が挙げられる。ガラスビーズに使用するガラスの具体例としては、一般的なソーダガラスが挙げられる。
また、反応後に化合物(h)の精留を行う際にも、蒸留釜や蒸留留分の受け器へ重合禁止剤を添加するのが好ましい。
得られた化合物(h)は重合禁止剤を添加した上、窒素雰囲気下で冷暗所に保管するのが好ましい。
このように重合禁止剤が添加された化合物(h)をモノマーとして重合反応に用いる場合には、反応前に、活性炭やシリカゲル等の吸着剤による処理、あるいは減圧蒸留などの処理により、モノマーから重合禁止剤を除去するのが好ましい。
重合禁止剤としては、パラベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール等のフェノール類、フェノチアジン、チオ尿素等の含イオウ化合物類、N−ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ化合物類、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のピペリジン−1−オキシル類、酢酸銅、ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸マンガン等の遷移金属化合物類、等を用いることができる。
また、前述のとおり、工程(v)および(vi)を連続した一工程(v’)で行う場合には、該工程(v’)のうち後段側の工程を105〜135℃で行うことにより、同様の効果を得ることができる。
なお、ガスクロマトグラフ分析は、下記構成の装置を用いて実施した。
ガスクロマトグラフ装置:島津製作所製 GC−1700
キャピラリーカラム:アジレント・テクノロジー社製 DB−1301(カラム長=60m、カラム内径=0.25mm、液膜厚み=1.0μm
検出器:水素炎イオン検出器
また、測定結果の表示はガスクロマトグラフ分析で得られる面積%の値を用いた。
〔1〕工程(i):化合物(a−1)の合成
化合物(z−1)を国際公開第2007/013532号パンフレットに記載の方法により酸化し、化合物(a−1)を合成した。
CF2=CFCF2OCF2CF2SO2F・・・(z−1)
なお、合成後の反応液を19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl3、化学シフト基準:CFCl3。以下の各19F−NMR測定は同条件にて実施。)により分析し、内部標準試料(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン。以下の各19F−NMR測定における内部標準試料は同物質を使用。)の添加量から定量を行ったところ、化合物(a−1)濃度は57.4質量%、未反応の(z−1)濃度は3.5質量%であった。また、化学シフトδ=10〜30ppmの部分に現れる複数ピークの強度から算出した、副生した酸フルオリド類の濃度の合計は、0.70mol/kgであった。そのうち、化学シフトδ=14.2ppmの部分に現れるピークの強度から算出した酸フルオリド化合物(b−1)の濃度は0.61mol/kgであった。
(1)工程(ii)
攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた10Lのポリエチレン製反応容器に、前記〔1〕記載の方法で合成した混合物(化合物(a−1)混合液(化合物(a−1)濃度=57.4質量%、化合物(z−1)濃度=3.5質量%、副生した酸フルオリド類の濃度の合計=0.70mol/kg、そのうち酸フルオリド化合物(b−1)濃度=0.61mol/kg))の8403gを仕込んだのち、仕込み液を攪拌翼で攪拌しながら反応器を冷媒で冷却した。内温が5℃となったとき、滴下漏斗に仕込んだメタノール(化合物(m))の188.6gを化合物(a−1)混合液へ滴下した。滴下に31分間を要し、その間の混合液温度は4〜8℃であった。滴下完了後、液温を4〜10℃に保ち反応を2時間継続した。反応器を再び冷媒で冷却し、フッ化ナトリウムの744.8gを23分間かけて添加した。添加の間、内温は5〜10℃であった。添加完了後、47分間攪拌を継続したところで反応を終了した。
なお、化合物(m)の使用量は、副生した酸フルオリド類の濃度の合計に対して1.0当量、また、酸フルオリド化合物(b−1)濃度に対して、1.1当量であった。
反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、反応前は10.92%であった酸フルオリド化合物(b−1)量が、反応後は1.10%まで減少しているのを確認した。代わりに、カルボン酸エステル(k−1−1)が15.26%生成しているのを確認した。
反応液を19F−NMR分析したところ、副生した酸フルオリド類に由来する、化学シフトδ=10〜30ppmの部分に現れる複数ピークと、酸フルオリド化合物(b−1)に由来する化学シフトδ=14.2ppmと−76.7ppmのピーク強度が減少し、代わりにカルボン酸エステル(k−1−1)に由来する−77.4ppmのピーク強度が増加した。また1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、化学シフト基準:テトラメチルシラン。)の化学シフトδ=4.0ppmに、メチルエステルのメチル基に由来するピークが新たに現れた。
(2)工程(iii)
次に、攪拌機、温度計、不規則充填物を充填した蒸留塔(内径3cm×塔長50cm、充填長36cm)を備えた10L4つ口フラスコへ、上記工程(ii)で得られた反応液を移し、150torr(=20kPa)の圧力で減圧蒸留を行った。
蒸留の結果、無色透明の化合物(a−1)精製液の5437gが得られた。
該精製液を19F−NMRによる内部標準法にて定量分析したところ、化合物(a−1)濃度=83.6質量%、化合物(z−1)濃度=5.0質量%、酸フルオリド化合物(b−1)濃度は0.09mol/kgであった。
攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた10Lの4つ口フラスコを、冷媒浴へ備え付けた。フラスコへN,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO、化合物(j))の1245gとのテトラグライムの1719gを仕込み、攪拌しながらフラスコ内液を−21℃まで冷却した。前記〔2〕記載の方法で精製した無色透明の化合物(a−1)精製液の6417g(化合物(a−1)純度=83.6質量%)を滴下漏斗から滴下した。滴下に伴い、反応液は白く濁った。滴下には3.6時間を要し、その間の反応液温度は−21〜−10℃であった。滴下完了後、反応液温度を−10℃に保ったまま20時間攪拌を継続した。反応液をサンプリングし19F−NMR測定により内部標準法で定量分析し、化合物(d2−1)が86%の収率(化合物(a−1)を基準とした収率)で得られていることを確認した。
反応液の入ったフラスコを真空ポンプ、真空計、真空調節器に繋ぎ、内温を−11℃〜0℃に制御しながら圧力3〜10torr(=0.4〜13.3kPa)で低沸点成分を留去した。この操作は化合物(c−1)が反応系内から消失するまで継続し、結果として9時間で1387gの低沸成分を留去した。化合物(c−1)消失の確認は、19F−NMR測定によりδ=−101.1ppm付近に現れるピークが検出されるか否かで判断した。その後、3〜5torr(=0.4〜0.7kPa)の圧力において、内温を20℃まで徐々に上げて行き、化合物(z−1)等の低沸点成分も併せて8.5時間留去させた。一連の留去操作による低沸点成分の合計留去量は1867gであった。
留去後のフラスコ残液として、7513gの反応液を得た。そのうち、化合物(d2−1)の含量は4328gであった。
なお、化合物(d2−1)の19F−NMRのデータを示す。
化学シフトδ(ppm):45.4(2F)、24.4(0.54F)、23.0(0.46F)、−81.4〜−85.4(8F)、−112.7(4F)、−121.8(0.46F)、−123.3(0.54F)。
攪拌機、温度計、ドライアイスコンデンサーを備えた10Lの4つ口フラスコを、冷媒浴へ備え付けた。前記〔3〕記載の方法と同様にして合成した反応液の6479g(化合物(d2−1)含量=3692g)をフラスコに仕込んだ。攪拌しながら冷却し、内温が−25℃になった時点でフッ化セシウムの163.3gを添加した。この操作により内温が−20℃まで上昇した。次に、4つ口フラスコとHFPOガスのボンベを接続し、気相部に導入したHFPOガスがドライアイスコンデンサーによって凝縮されるようにHFPOガスの2346gをチャージした。チャージには4時間を要し、この間の反応液温度は−21℃〜−1℃であった。チャージ終了後、反応液温度を−14℃〜−5℃に保ったまま1.3時間攪拌を継続した。攪拌停止により二層分離した反応液の下層をガスクロマトグラフィーにより分析し、目的の化合物(f−1)の生成を確認した。
このようにして工程(v)を行った後、化合物(f−1)を以下のようにして分離精製した。
反応液を5Lの分液ロートへ移した。橙色透明の上層と無色透明の下層の二層へと分離した。下層を分取し6557gの反応粗液を得た。
次に、攪拌機、温度計、不規則充填物を充填した蒸留塔(内径3cm×塔長50cm、充填長36cm)を備えた5L4つ口フラスコへ上記反応粗液を移し、26torr=3.5kPa)の圧力で減圧蒸留を行った。蒸留の結果、無色透明の化合物(f−1)精製液の3521gが得られた。精製液を19F−NMR測定により内部標準法で定量分析したところ、化合物(f−1)純度は98.3質量%であった。これより、化合物(d2−1)基準の化合物(f−1)収率は62%となった。
得られた精製液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、化合物(f−1)純度は99.22%であった。また少量の不純物として、化合物(n)に相当する下記の化合物(n−1)が0.09%含まれていた。
なお、化合物(f−1)の19F−NMRのデータを示す。
化学シフトδ(ppm):45.3(1F)、−80.9(1F)、−82.1〜−83.9(7F+0.2F)、−93.3(0.8F)、−112.7(2F)、−113.4(0.8F)、−117.2(0.2F)、−124.5(0.2F)、−127.3(0.8F)。
攪拌機、温度計、ジムロート冷却器を備えた5Lの4つ口フラスコを、マントルヒーターへ備え付けた。化合物(f−1)の3024g(純度99.4質量%)とテトラグライムの668gを仕込み、室温で攪拌を開始した。触媒としてフッ化セシウムの131.1gを添加し、マントルヒーターで加熱して120℃で4.8時間反応させた。
このようにして工程(vi)を行った後、化合物(g−1)を以下のようにして分離精製した。
反応器を水浴にて冷却したのち、反応液を5Lの分液ロートへ移したところ、橙色透明の上層と白濁液体の下層の二層へと分離した。下層を分取し2489gの反応液を得た。
次に、攪拌機、温度計、不規則充填物を充填した蒸留塔(内径3cm×塔長50cm、充填長36cm)を備えた5L4つ口フラスコへ上記反応液を移し、20torr(=2.7kPa)で減圧蒸留を行った。蒸留の結果、無色透明の化合物(g−1)精製液の2234gが得られた。精製液を19F−NMR測定により内部標準法で定量分析したところ、化合物(g−1)純度は97.0質量%であった。これより、化合物(f−1)基準の化合物(g−1)収率は72%となった。
ガラスビーズが充填された内径1インチのステンレス反応管(流動層型)を310℃に加熱し、反応管の出口の一方には冷却トラップを設置した。冷却トラップの内部には、重合禁止剤として、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(商品名:Q−1301、和光純薬製)を0.02g添加した。あらかじめ該温度に加熱し連続的に気化させた化合物(g−1)と窒素ガスとの混合ガス(モル比5:95)を流通させた。滞留時間は15秒、線速度は2.6cm/秒であった。化合物(g−1)の使用量は105.9gであった。冷却トラップに留出する液体を捕集して化合物(h−1)を主成分とする液を得た。捕集した液体を減圧蒸留して化合物(h−1)を得た。蒸留の際にも、蒸留釜や蒸留留分の受け器に上記重合禁止剤を添加した。化合物(g−1)基準の化合物(h−1)収率は47%であった。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が86.3質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。なお、該化合物(f−1)の純度が実施例1と異なっているが、これは工程(v)の蒸留で得られた留分に関し、実施例1と異なる蒸留留分を用いたためである。以下の各実施例および各比較例に用いた化合物(f−1)に関しても、使用した蒸留留分によって、同様に濃度が異なる場合がある。
一方、ジムロート冷却器を備えたガラス製反応容器に、フッ化セシウムの0.077gとテトラグライムの0.80mLを仕込み、室温で攪拌を開始した。次に、前述のようにして得られた純度86.3質量%の化合物(f−1)精製液の1.59gを加え、ガラス製反応容器をオイルバスにて120℃に加熱し、3時間反応させた。
反応容器を冷却させた後、二層分離した下層を回収して重量を測定した。回収した反応液を19F−NMR測定により内部標準法で定量分析したところ、化合物(g−1)が63%の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)で生成しているのを確認した。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が86.3質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。そして、フッ化セシウムを0.077gとし、化合物(f−1)の精製液を1.58gとし、テトラグライムの代わりにスルホラン0.80mLを用いた以外は、実施例2と同様にして工程(vi)を行い、化合物(g−1)を得た。化合物(g−1)の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)を実施例2と同様にして求めたところ、62%であった。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が86.3質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。
一方、ジムロート冷却器を備えたガラス製反応容器に、フッ化セシウムの0.084gとテトラグライムの0.80mLを仕込み、室温で攪拌を開始した。次に前述のようにして得られた純度86.3質量%の化合物(f−1)精製液の1.58gを加え、ガラス製反応容器をオイルバスにて100℃に加熱し、2時間反応させた。ここで反応液の組成をガスクロマトグラフィー分析で追跡したところ、化合物(f−1)の残存量が多かった為、温度を110℃まで上げて更に4時間反応させた。
このようにして工程(vi)を行い、化合物(g−1)を得た。化合物(g−1)の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)を実施例2と同様にして求めたところ、56%であった。
なお、100℃で2時間反応させた時点での化合物(g−1)の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)は11%であった。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が96.4質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。そして、フッ化セシウムを0.108gとし、化合物(f−1)精製液を1.57gとし、テトラグライムの代わりにスルホラン0.80mLを用い、反応を140℃で1.75時間行った以外は、実施例2と同様にして工程(vi)を行い、化合物(g−1)を得た。化合物(g−1)の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)を実施例2と同様にして求めたところ、42%であった。また、この時の化合物(f−1)の転化率は99%であった。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が97.8質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。そして、フッ化セシウムを0.113gとし、化合物(f−1)精製液を1.60gとし、反応を100℃で3時間行った以外は、実施例2と同様にして工程(vi)を行い、化合物(g−1)を得た。化合物(g−1)の反応収率(化合物(f−1)基準の収率)を実施例2と同様にして求めたところ、11%であった。また、この時の化合物(f−1)の転化率は47%であった。
実施例1と同様にして〔1〕〜〔4〕を実施し、純度が94.4質量%の化合物(f−1)の精製液を得た。そして、表1に示す量のフッ化セシウム、化合物(f−1)の精製液、テトラグライムを用いた以外は、実施例2と同様にして工程(vi)を行い、化合物(g−1)を得た。
なお、グラフ中の各語句は以下の意味を示す。
・基質濃度[質量%]={A×(X/100)}/(A+B+C)×100
・触媒濃度(対基質)[mol%]
=(B/151.9)/{A×(X/100)/490.1}×100
・触媒濃度(対溶媒)[mol/L]=(B/151.9)/D
ただし、
A:化合物(f−1)精製液添加量[g]
B:フッ化セシウム添加量[g]
C:溶媒添加量[g]
D:溶媒添加量[L]
X:化合物(f−1)純度[質量%]
フッ化セシウム分子量=151.9
化合物(f−1)分子量=490.1
テトラグライム比重[kg/L]=1.01
スルホラン比重[kg/L]=1.26
Claims (5)
- 下式(z)で表される化合物の酸化反応により、下式(a)で表される化合物を含む混合物を得る工程(i)と、
前記式(a)で表される化合物にカルボニル化合物を反応させて、下式(d1)で表される化合物および下式(d2)で表される化合物の少なくとも一方を含む生成物を生成させる工程(iv)と、
前記式(d1)で表される化合物および式(d2)で表される化合物の少なくとも一方を含む生成物にヘキサフルオロプロピレンオキシドを反応させて、下式(f)で表される化合物を生成させる工程(v)と、
溶媒と、該溶媒に対する濃度が0.51〜3モル/Lのフッ化物イオン触媒との存在下で、前記式(f)で表される化合物を105〜135℃の温度に加熱し、該式(f)で表される化合物の異性化反応により下式(g)で表される化合物を得る工程(vi)と、
前記式(g)で表される化合物の熱分解反応により、下式(h)で表される化合物を得る工程(vii)と、
を有する、含フッ素化合物の製造方法。
- 前記フッ化物イオン触媒が金属フッ化物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
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