JP2005002014A - ペルフルオロ環状ラクトン誘導体の製造方法およびペルフルオロ環状ラクトンを含む混合物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、式1aで表される化合物と式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンとを含む混合物、該混合物の製造方法、および該混合物から誘導される式2で表される化合物および式4で表される化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明における式2で表される化合物は、公知の化合物である。また、該式2で表される化合物は、フッ素系溶媒として、フッ素樹脂、フッ素ゴム、またはシランカップリング剤等の機能性材料の中間体として、有用な化合物である。
式2で表される化合物の製造方法としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを本発明における式1bで表される化合物に変換した後、極性溶媒存在下にフッ化セシウム触媒を用いて異性化させる方法が知られている(たとえば、特許文献1。)。
【0003】
また、本発明における式1aで表される化合物は、公知の特許文献に化学式が記載される化合物である(たとえば、特許文献2。)。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第3,307,330号明細書
【特許文献2】
特開2002−187865号公報(第2頁〜第4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、式2で表される化合物の製造方法における原料であるヘキサフルオロプロピレンオキシドは高価であり、入手が容易であるとはいえず、該方法は、経済的に不利であった。
【0006】
また式1aで表される化合物の化学式が記載される特許文献には、ジプロピレングリコールの3種の異性体にアセチルクロライドを反応させてジプロピレングリコールジアセチルエステルとし、つぎに1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン中でフッ素と反応させてペルフルオロ化する方法によって式1aで表される化合物を下記3種の化合物の混合物として得た記載がある。
【0007】
FCOCF(CF3)OCF(CF3)COF ・・・式1a
FCOCF(CF3)OCF2COCF3・・・式1c
CF3COCF2OCF2COCF3・・・式1d
【0008】
しかし生成物の同定資料としては、分子量が310であること、およびIRでケト基の吸収と酸フロライドのカルボニルを示す吸収が観測されたこと、が記載されるだけである。すなわち、これらの同定資料では、それぞれの生成物の構造を同定することはできず、3種の化合物が実際に生成していることは証明されていない。まして、式1aで表される化合物の生成やそれを同定する資料は示されていない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、入手が容易な原料を用いて、経済的に有利な方法で、下式1aで表される化合物と式1bで表される化合物を含む混合物を得て、該混合物から式2で表される化合物および式4で表される化合物を製造できることをみいだし、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
[1]下式1aで表される化合物および下式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンを含む混合物。
【0011】
【化5】
【0012】
[2]下式1aで表される化合物、または、下式1aで表される化合物および下式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンを、異性化反応させることを特徴とする下式2で表される化合物の製造方法。
【0013】
【化6】
【0014】
[3]下式1aで表される化合物において、または、下式1aで表される化合物および下式1bで表される化合物の混合物において、異性化反応を行うことにより下式2で表される化合物を得て、つぎに該式2で表される化合物を熱分解することを特徴とする下式4で表される化合物の製造方法。
【0015】
【化7】
【0016】
[4]下式7で表される化合物を下式8で表される化合物とエステル化反応させて下式5で表される化合物を得て、該式5で表される化合物を液相フッ素化法によりペルフルオロ化することにより下式6で表される化合物を得て、さらに該式6で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とする下式1aで表される化合物および下式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンの混合物の製造方法。
【0017】
HOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OH・・式7
RFCOX・・・式8
RFCOOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OCORF・・式5
RF3COOCF2CF(CF3)OCFRF1CFRF2OCORF3・・式6
FCOCF(CF3)OCF(CF3)COF・・・式1a
【0018】
【化8】
【0019】
ただし、Xはハロゲン原子を示す。式7で表される化合物および式5で表される化合物において、R1およびR2は、互いに異なり、一方が水素原子である場合には他方はメチル基であり、式7で表される化合物および式5で表される化合物は、それぞれR1とR2が互いに異なる2種の化合物の混合物である。RFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基を示す。RF1は、R1が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR1がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示し、RF2は、R2が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR2がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示し、RF3は炭素数1〜10のペルフルオロ化された1価有機基を示し、式6で表される化合物はRF1とRF2が互いに異なる2種の化合物の混合物である。
【0020】
[5]下式5で表される化合物。
RFCOOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OCORF・・式5
ただし、R1とR2は、互いに異なり、一方が水素原子である場合には他方はメチル基である。RFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基を示す。
【0021】
【発明の実施の形態】
本明細書における「有機基」とは、炭素原子を必須とする基をいう。フッ素化されうる有機基としては、C−H部分を有する有機基や、炭素−炭素不飽和結合を有する有機基が挙げられ、C−H部分を有する有機基が好ましい。
【0022】
C−H部分を有する有機基としては、飽和炭化水素基、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基、部分ハロゲン化飽和炭化水素基、または部分ハロゲン化(エーテル性酸素原子含有)飽和炭化水素基等が挙げられる。
ここで「部分ハロゲン化」とは、ハロゲン化されうる部分のうち、少なくとも一部がハロゲン化されずに水素原子が残り、一部がハロゲン化されることをいう。ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。これらのうち、部分ハロゲン化された基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0023】
飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、または環を有する飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、またはこれらの基を部分構造とする基。)等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基としては、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキル基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたシクロアルキル基等が挙げられる。
【0024】
本発明において「ポリフルオロ化」とは、炭素原子に結合する水素原子(C−H)の2つ以上がフッ素原子に置換されることをいう。また、「ペルフルオロ化」とは、炭素原子に結合する水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されることをいう。
ポリフルオロ化された1価有機基としては、部分フッ素化された1価の有機基であってもペルフルオロ化された1価有機基であってもよく、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基が好ましい。
【0025】
ペルフルオロアルキル基の具体例としては、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CClF2、または−CF2CClFCF2Cl、−CF(CF3)2、−CF2CF(CF3)2、−CF(CF3)CF2CF3、−C(CF3)3等が挙げられる。
【0026】
また、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基としては、ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素原子間に1個以上のエーテル性酸素原子が挿入された基等が挙げられ、たとえば、−CF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは0または1を示す。)、−(CF2)dOCF3(dは1〜8の整数を示す。)等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法の概要は、下式で示すことができる。ただし、Xはハロゲン原子を示す。式7で表される化合物および式5で表される化合物において、R1およびR2は、互いに異なり、一方が水素原子である場合には他方はメチル基であり、式7で表される化合物および式5で表される化合物は、それぞれR1とR2が互いに異なる2種の化合物の混合物である。RFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基を示す。RF1は、R1が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR1がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示し、RF2は、R2が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR2がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示し、RF3は炭素数1〜10のペルフルオロ化された1価有機基を示し、式6で表される化合物はRF1とRF2が互いに異なる2種の化合物の混合物である。
【0028】
【化9】
【0029】
以下、各反応を順に説明する。まず、式7で表される化合物を式8で表される化合物とエステル化反応させて、式5で表される化合物を得る。
式7で表される化合物は、公知の方法により容易に合成できる化合物であり、または市販のジプロピレングリコールとしても容易に入手できる。市販のジプロピレングリコールは、通常は式7におけるR1およびR2が異なる2種の構造異性体の混合物、または該異性体の混合物とともに、さらに1種の構造異性体[CH3CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH3]を含む3種の構造異性体の混合物である。
本発明においては、該構造異性体を含む混合物から、2種の化合物の混合物である式7で表される化合物を分離し、その後にエステル化反応を行ってもよく、または3種の構造異性体を含む混合物のまま、エステル化反応を行ってもよい。構造異性体を含む混合物のままエステル化反応を行った場合には、エステル化反応またはその後の工程で得られた反応生成物から、目的とする化合物を分離するのが好ましい。
【0030】
また式8で表される化合物としては公知の化合物を用いることができる。式8中のRFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基を示し、炭素数1〜10のペルフルオロ化された基であるのが好ましい。該RFとしては前記のペルフルオロアルキル基またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基が好ましい。
【0031】
式8で表される化合物としては、下式8Fで表される化合物(ただし、RF3は炭素数1〜10のペルフルオロ化された1価有機基を示す。)であるのが好ましい。該式8Fで表される化合物は、後述する式6で表される化合物のエステル結合を分解させた反応生成物から得ることができる。
RF3COF・・式8F
【0032】
式7で表される化合物と式8で表される化合物とのエステル化反応は、公知のエステル化反応の条件により実施できる。エステル化反応の反応温度は−50℃〜+100℃であるのが好ましい。反応時間は、原料の供給速度と実際に反応する化合物量に応じて適宜変更されうる。反応圧力は常圧〜2MPa(ゲージ圧。以下、圧力はゲージ圧で記載する。)であるのが好ましい。
【0033】
エステル化反応では、フッ酸(HF)が発生するため、HF捕捉剤として、アルカリ金属フッ化物(NaF、KF等が好ましい。)やトリアルキルアミン等を反応系中に存在させてもよい。HF捕捉剤の量は、発生するHFの理論量に対して0.1〜10倍モル程度であるのが好ましい。HF捕捉剤を使用しない場合には、HFが気化しうる反応温度で反応を行い、HFを窒素気流に同伴させて反応系外に排出するのが好ましい。
【0034】
式7で表される化合物の量は、式8で表される化合物に対して理論量(0.5倍モル)以下であるのが好ましく、0.3〜0.5倍モルであるのが特に好ましく、0.45〜0.5倍モルであるのがとりわけ好ましい。次工程のフッ素化反応を行う際に、未反応の式7で表される化合物が残っていると、水酸基に由来する好ましくない反応を引き起こすおそれがある。
【0035】
エステル化反応によって生成する式5で表される化合物は、新規化合物である。式5におけるRFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基であり、炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基、炭素数1〜10のポリフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基が好ましく、炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜10のペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基がより好ましく、さらに炭素数3〜8のこれらの基が特に好ましい。また、R1とR2は互いに異なり、水素原子またはメチル基を示す。本発明における式5で表される化合物においては、R1とR2が互いに異なる2種の構造異性体のいずれもが新規な化合物である。該式5で表される化合物を次工程のフッ素化反応に用いる際には、R1とR2が互いに異なる2種の構造異性体混合物を、式5で表される化合物として用いる。
【0036】
式5で表される化合物のフッ素含量は、20〜60質量%であるのが好ましく、特に25〜55質量%であるのが好ましい。フッ素含量を特定量にすることにより、次工程のフッ素化反応の操作性および反応収率を向上させうる。また経済性の点でも有利になる。
【0037】
式5で表される化合物の分子量は200〜1100の範囲にあるのが好ましく、特に300〜800の範囲にあるのが好ましい。式5で表される化合物の分子量を一定量以上にした場合には、気相でのフッ素化反応を防止し、式5で表される化合物の分解反応を回避できる。また、該分子量を一定量以下にした場合には、化合物の取扱いや精製が容易になる。
【0038】
式5で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
(CF3)2CFCOOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2、
(CF3)2CFCOOCH2CH(CH3)OCH2CH(CH3)OCOCF(CF3)2。
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOCH2CH(CH3)OCH2CH(CH3)OCOCF(CF3)OCF2CF2CF3、
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)OCF2CF2CF3。
CF3CF2CF2COOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF2CF2CF3、
CF3CF2CF2COOCH2CH(CH3)OCH2CH(CH3)OCOCF2CF2CF3。
【0039】
次に、式5で表される化合物を、液相フッ素化反応によりペルフルオロ化して、式6で表される化合物を得る。液相フッ素化法によれば、フッ素化反応を高収率で実施できる。
【0040】
液相フッ素化法におけるフッ素は、フッ素ガスをそのまま用いても、不活性ガスで希釈されたフッ素ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガスが好ましく、特に窒素ガスが好ましい。不活性ガスを用いる場合には、不活性ガスとフッ素ガスの総量に対するフッ素ガス量を、10vol%以上にするのが効率の点で好ましく、20vol%以上にするのが特に好ましい。
【0041】
液相フッ素化法によるフッ素化は溶媒(以下、該溶媒をフッ素化反応溶媒という。)の存在下に実施するのが好ましい。溶媒としては、フッ素化反応に不活性な有機溶媒を採用するのが好ましい。
フッ素化反応溶媒としては、式5で表される化合物の溶解性が高い溶媒を用いるのが好ましく、特に、式5で表される化合物を1質量%以上溶解しうる溶媒が好ましく、とりわけ5質量%以上溶解しうる溶媒が好ましい。
【0042】
フッ素化反応溶媒の例としては、ペルフルオロエステル類(たとえば、フッ素化反応の生成物である式6で表される化合物等。)、ペルフルオロ酸フルオリド類(たとえば、式1aで表される化合物、式8Fで表される化合物等。)、液相フッ素化の溶媒として用いられる公知の溶媒(例えば、CF2ClCFCl2等のクロロフルオロカーボン類、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のパーフルオロカーボン類)が挙げられる。
このうちフッ素化反応溶媒としては、後処理が容易になる理由から、式6で表される化合物、式1aで表される化合物、または式8Fで表される化合物が好ましい。反応初期におけるフッ素化反応溶媒の量は、式5で表される化合物の総質量に対して、5倍質量以上が好ましく、特に1×101〜1×105倍質量が好ましい。ただし、原料を連続供給し生成物を連続抜き出しする条件でフッ素化反応を行う場合には、反応後期のフッ素化反応溶媒の割合は、初期の使用量にかかわらず減少し、反応系中は式6で表される化合物が大部分になる。
【0043】
液相フッ素化反応の手法は特に限定されず、原料、フッ素化反応溶媒、フッ素ガス、および必要に応じて導入する不活性ガス等の導入順序なども特に限定されない。
【0044】
液相フッ素化反応においては、式5で表される化合物中に含まれる水素原子量に対するフッ素の量が、反応の最初から最後まで常に過剰当量となるように保つのが好ましく、特に該水素原子に対するフッ素量を1.05倍モル以上に保つのが選択率の点から好ましく、特に2倍モル以上に保つのが好ましい。また、反応の開始時点においてもフッ素の量を過剰当量にするのが好ましいことから、反応当初のフッ素化反応溶媒には、あらかじめフッ素を充分量溶解させておくのが好ましい。
【0045】
液相フッ素化反応は、式5で表される化合物中のエステル結合の切断を防止しながら実施するのが好ましい。該反応の反応温度は、−50℃〜+100℃が好ましく、−20℃〜+50℃が特に好ましく、反応圧力は常圧〜2MPaにするのが、反応収率、選択率、工業的な実施のしやすさの観点から好ましい。
液相フッ素化反応においては、ペルフルオロ化反応を完全に進行させるために、ベンゼンやトルエン等のC−H結合含有化合物を添加する、式5で表される化合物を長時間反応系内に滞留させる、または紫外線照射を行う等の操作を行ってもよい。さらにこれらの操作はフッ素化反応の後期に行うのが好ましい。
【0046】
液相フッ素化においては、通常、水素原子がフッ素原子に置換されてHFが副生する。このHFを除去するために、反応系中にHF捕捉剤(NaFが好ましい。)を共存させる、または反応器のガス出口でHF捕捉剤と生成ガスを接触させる、または生成ガスを冷却してHFを凝縮させて回収する、等の方法を用いるのが好ましい。HF捕捉剤の量は、式5で表される化合物中に存在する全水素原子量に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルが特に好ましい。また、HFは窒素ガス等の不活性ガスに同伴させて反応系外に導き、アルカリ処理してもよい。
【0047】
フッ素化反応の反応生成物は、そのまま次の工程に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物を常圧または減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。
【0048】
フッ素化反応では式6で表された化合物が生成する。式6中のRF1は、R1が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR1がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示し、RF2は、R2が水素原子である場合にはフッ素原子を示しR2がメチル基である場合にはトリフルオロメチル基を示す。RF3は炭素数1〜10のペルフルオロ化された1価有機基を示す。式6で表される化合物はRF1とRF2が互いに異なる2種の化合物の混合物である。
ここで本発明においては、RFとRF3とは、同一の炭素数1〜10のペルフルオロ化された1価有機基であるのが好ましく、前記のペルフルオロアルキル基またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基であるのが特に好ましい。
つぎに式6で表される化合物のエステル結合の分解反応を行い式1aで表される化合物および式1bで表される化合物の混合物を得る。
【0049】
理論的には式6で表される化合物のエステル結合の分解反応では、式1aで表される化合物とともに、前記の式1cで表される化合物[FCOCF(CF3)OCF2COCF3]が生成しうる。しかし、式1aで表される化合物は安定に存在するが、式1cで表される化合物は、直ちに異性化して式1bで表される化合物に変換する。したがって、エステル結合の分解反応においては、エステル結合の分解反応と異性化反応が起こり、該反応の生成物は、式1aで表される化合物および式1bで表される化合物の混合物になる。
式1aで表される化合物は、特開2002−187865号公報に化学式が記載される化合物であり、式1bで表される化合物は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.24(1985),161−179に化学式が記載される化合物である。しかし、式1aで表される化合物および式1bで表される化合物とを含む混合物は新規な混合物であり、かつ有用な混合物である。
【0050】
式6で表される化合物のエステル結合の分解反応は、公知の方法を用いて行うことができ、熱分解反応、または求核剤もしくは求電子剤の存在下に行う分解反応、を用いることが好ましい。熱分解反応は、気相または液相で実施するのが好ましい。
【0051】
たとえば、式6で表される化合物が低沸点の化合物である場合には、エステル結合の分解反応は、気相熱分解法で実施するのが好ましい。気相熱分解法は、気相で連続的に分解反応を行い、気体として得られる生成物を凝縮させ、これらを回収する方法で行うのが好ましい。気相熱分解法の反応温度は、50〜350℃が好ましく、50〜300℃が特に好ましく、100〜250℃がとりわけ好ましい。
気相熱分解法においては、金属塩触媒を使用してもよく、反応系に反応には直接は関与しない不活性ガスを共存させてもよい。金属塩触媒としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等を用いることができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。不活性ガスの量は、式6で表される化合物の量に対して0.01〜50vol%程度であるのが好ましい。不活性ガスの量が多すぎると、生成物の回収量が低減することがある。
【0052】
一方、式6で表される化合物が沸点が高い化合物である場合には、液相での熱分解法で実施するのが好ましい。液相での熱分解法は、液状の式6で表される化合物を加熱する方法により実施するのが好ましい。該分解反応の生成物は、反応器中から一度に抜き出してもよい。また、蒸留塔を付けた反応装置を用いて熱分解反応を行い、生成する式6で表される化合物を蒸留で抜き出す方法も採用できる。液相熱分解法の反応温度は50〜300℃が好ましく、特に100〜250℃が好ましい。液相熱分解法における反応圧力は特に限定されず、減圧下で実施しても、加圧下で実施してもよい。
【0053】
液相熱分解法は、無溶媒で行っても、反応溶媒の存在下に行ってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。反応溶媒を使用する場合には、式6で表される化合物に対して0.1倍〜10倍質量の溶媒を使用するのが好ましい。反応溶媒としては、ジグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル系化合物、ペルフルオロ−2,5−ビスチリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−ノナン酸フルオリド、ペルフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)等のペルフルオロ化合物等を用いることができる。
【0054】
エステル結合の分解反応を液相中で求核剤または求電子剤と反応させる方法で実施する場合には、無溶媒であっても、反応溶媒の存在下であってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。無溶媒で反応を行ったときには、フッ素化反応生成物自身が溶媒としても作用し、反応生成物中から溶媒を分離する手間を省略できるため特に好ましい。求核剤または求電子剤を用いる方法も、蒸留塔をつけた反応装置で蒸留をしながら行うのが好ましい。
【0055】
求核剤としてはF−が好ましく、特にアルカリ金属のフッ化物由来のF−が好ましい。アルカリ金属のフッ化物としては、NaF、NaHF2、KF、CsFが好ましく、経済性の点ではNaFが、反応活性の点ではKFが特に好ましい。また、反応の最初の求核剤量は触媒量であってもよく、過剰量であってもよい。F−等の求核剤の量はフッ素化反応生成物に対して1〜500モル%が好ましく、1〜100モル%がより好ましく、5〜50モル%が特に好ましい。反応温度の下限は−30℃が好ましく、上限は−20℃〜+250℃が好ましい。
【0056】
また、式6で表される化合物のエステル結合の分解反応の生成物中には、通常は前記式8Fで表される化合物も含まれる。
この式8Fで表される化合物は、式8におけるXがフッ素原子であり、RFがR3Fである化合物である。この式8Fで表される化合物は、式7で表される化合物の混合物とのエステル化反応に利用できる。したがって、生成物中から式8Fで表される化合物を分離して、再利用するのが好ましい。分離方法としては、蒸留法が好ましい。
【0057】
式1aで表される化合物と、式1bで表される化合物は、種々の含フッ素有機材料の中間体として有用な化合物である。
たとえば、該式1aで表される化合物と式1bで表される化合物からは、それぞれ異性化反応により式2で表される化合物を導くことができる。本発明においては、式1aで表される化合物と式1bで表される化合物との混合物が入手しやすいことから該混合物を、または該混合物から式1aで表される化合物を分離し、これを異性化反応することにより式2で表される化合物を得る。
【0058】
異性化反応の条件は特に限定されず、非プロトン性極性溶媒、および、触媒の存在下で加熱することにより行うのが好ましい。
触媒としては、フッ化物、活性炭、テトラメチル尿素、トリス(ジアルキルアミノ)スルホニウム塩が好ましい。フッ化物としては、金属フッ化物、金属土類フッ化物、有機フッ素化物を用いることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属フッ化物塩またはアルカリ土類金属フッ化物塩である。具体的には、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属フッ化物塩、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属フッ化物塩、フッ化銀、フッ化銅等が挙げられ、フッ化カリウム、フッ化セシウムが好ましい。
【0059】
異性化反応に用いうる非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、ジグライム、テトラグライム、テトロヒドロフラン、ジオキサン、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、ジグライム、テトラグライムが好ましい。
【0060】
異性化反応の反応温度は、好ましくは50℃〜300℃であり、より好ましくは100℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜180℃である。反応は、通常密閉下で行い、反応圧力は0.1〜5MPaであるのが好ましい。
【0061】
式2で表される化合物は、それ自身がフッ素系溶媒として有用な化合物である。さらに式2で表される化合物は、熱分解反応により下式4で表される化合物に導くことができる。該反応の手法は公知であり、J.Org.Chem.,34,1841(1969)等に記載される方法により実施できる。熱分解反応は、気相反応または液相反応で通常は実施し、気相反応で実施するのが効率的であり好ましい。
【0062】
気相反応で反応を実施する場合には、連続式反応で行うのが好ましい。連続式反応は、加熱した反応管中に気化させた式2で表される化合物を通し、気体の生成物を得て凝縮し、連続的に回収する方法により実施するのが好ましい。
気相反応で熱分解を行う場合の反応温度は、150℃以上が好ましく、200℃〜500℃が特に好ましく、とりわけ250℃〜450℃が好ましい。反応温度が高すぎると、式4で表される化合物の分解反応が起こり収率が低下するおそれがある。
【0063】
また気相反応で熱分解反応を行う場合には、管型反応器を用いるのが好ましい。管型反応器を用いる場合の滞留時間は、0.1秒〜10分程度(空塔基準)が好ましい。反応圧力は特に限定されず、減圧下で実施しても、加圧下で実施してもよい。
【0064】
管型反応器を用いて気相反応を行う場合には、反応管中にガラス、アルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩を充填するのが、反応を促進させる理由から好ましい。アルカリ金属の塩またはアルカリ土類金属の塩としては、炭酸塩またはフッ化物が好ましい。アルカリ金属の塩としては、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウム、フッ化カルシウムまたは炭酸マグネシウム等が挙げられる。ガラスとしては、一般的なソーダガラスが挙げられ、特にビーズ状にして流動性を上げたガラスビーズが好ましい。
【0065】
さらに、反応管中にガラス、アルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩等の充填物質を充填させる場合に、ガラスビーズや、炭酸ナトリウムの軽灰等であって、粒径が100〜250μm程度であるものを用いると、流動層型の反応形式を採用できることから特に好ましい。これらの充填物質は、あらかじめ脱水処理を施すのが好ましい。脱水処理は、気相反応を行う反応温度で窒素ガス等の不活性ガスを流すことにより行うのが好ましい。該脱水処理を行うことによって、熱分解反応の収率を顕著に向上させうる。
【0066】
気相反応においては、式2で表される化合物の気化を促進する目的で、熱分解反応には直接は関与しない不活性ガスの存在下で反応を行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。不活性ガス量は式2で表される化合物の量に対して0.01〜50vol%程度が好ましい。不活性ガス量が多すぎると、生成物の回収量が低くなるおそれがあり好ましくない。一方、式2で表される化合物の沸点が高い場合には、熱分解を液相反応で行ってもよい。
【0067】
以上の方法により得られる式4で表される化合物は、フッ素樹脂やフッ素ゴム用等の含フッ素高分子材料の原料として有用である。
【0068】
本発明における式1aで表される化合物から他の有用な化合物を得る例としては、該式1aで表される化合物に式R3R4CHOH(ただし、R3とR4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の1価有機基を示す。)で表される化合物をエステル化反応させて、下式10で表される化合物を得る例が挙げられる。
【0069】
R3R4CHOCOCF(CF3)OCF(CF3)COOCHCR3R4・・・式10
ここで、R3およびR4としては、それぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。また該アルキル基としては直鎖のアルキル基が好ましい。該式R3R4CHOHで表される化合物は、市販のアルコール類として入手可能な化合物であり、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール等が挙げられる。
【0070】
式10で表される化合物は、含フッ素有機材料や含フッ素溶剤の原料として有用な化合物である。式10で表される化合物は、WO02/26689号公報に記載される方法にしたがってフッ素化反応、エステル結合の分解反応を行うことにより、含フッ素溶剤等として有用な下式10Fで表される化合物を得ることができる。ただし、RF3はR3がペルフルオロ化された基であり、RF4は、R4がペルフルオロ化された基であり、それぞれフッ素原子またはペルフルオロ化された炭素数1〜10の有機基を示す。
RF3RF4CFOCOF・・・式10F
【0071】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下において、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンをR−113と記す。また、ガスクロマトグラフィをGCと記し、GC分析におけるピーク面積比をGC分析値とする。また、ガスクロマトグラフィ−質量分析をGC−MSと記す。
【0072】
[例1](CF3)2CFCOOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2および(CF3)2CFCOOCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2の混合物のエステル化反応による合成例:
ハステロイC製の2LのオートクレーブにHOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OH(40%)およびHOCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OH(60%)を含むジプロピレングリコール混合物(450g)を入れた。反応器を冷却し、密閉撹拌下で、内温が30℃以下に保たれるようにゆっくりと(CF3)2CFCOF(1160g)を導入した。さらに30℃で3時間撹拌した後、反応で副生したHFを、窒素ガスのバブリングによって系外に追い出した。さらに、密閉状態で撹拌しながら、内温が30℃以下に保たれるように(CF3)2CFCOF(720g)をゆっくり再導入し、さらに30℃で3時間撹拌した。反応で副生したHFは、窒素ガスのバブリングによって系外に追い出して生成物を得た。
生成物をGC分析した結果、(CF3)2CFCOOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2の含有量が39.7%であり、(CF3)2CFCOOCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2の含有量が59.5%である混合物であった。また未反応のジプロピレングリコール混合物の成分は検出されなかった。この生成物は精製することなく、以下の反応に使用した。
【0073】
(CF3)2CFCOOCH2CH(CH3)OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2のNMRデ−タを以下に示す。
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):4.3(4H)、3.9〜3.8(2H)、1.2(6H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−74.9〜−75.0(12F)、−182.2〜−182.3(2F)。
【0074】
(CF3)2CFCOOCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCOCF(CF3)2のNMRデ−タを以下に示す。
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):5.3(1H)、4.4〜4.3(2H)、3.8〜3.7(1H)、3.6(2H)、1.4〜1.3(3H)、1.2(3H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−74.9〜−75.0(12F)、−182.2〜−182.3(2F)。
【0075】
[例2](CF3)2CFCOOCF2CF(CF3)OCF(CF3)CF2OCOCF(CF3)2と(CF3)2CFCOOCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCOCF(CF3)2との混合物のフッ素化反応による合成例:
500mLのニッケル製オートクレーブに、R−113(312g)を加えた後に撹拌して25℃に保った。オートクレーブのガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置する。また−10℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。オートクレーブに窒素ガスを室温で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%希釈フッ素ガスと記す。)を室温で流速9.33L/hで1時間吹き込んだ。つぎに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1で得た生成物(5g)をR−113(100g)に溶解した溶液を2.9時間かけて注入した。
【0076】
つぎに、20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながらオートクレーブ内の圧力を0.15MPaまで昇圧して、ベンゼン濃度が0.01g/mLであるR−113溶液を25℃から40℃にまで昇温しながら9mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。
つぎに反応器内圧力を0.15MPaに、反応器内温度を40℃に保ちながら、前記ベンゼン溶液を6mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。さらに同様の操作を1回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.22g、R−113の注入総量は21mLであった。
さらに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら1時間撹拌を続けた。つぎに、反応器内圧力を常圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。生成物を19F−NMRで分析した結果、(CF3)2CFCOOCF2CF(CF3)OCF(CF3)CF2OCOCF(CF3)2および(CF3)2CFCOOCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCOCF(CF3)2が含まれていた。
【0077】
生成物の19F−NMRの結果は以下のとおりである。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒CDCl3,基準:CFCl3)δ(ppm):−74.6(12F)、−77.6〜−82.5(6F)、−84.9〜−87.0(4F)、141.3〜−142.4(2F)、−181.5(2F)。
【0078】
[例3]FCOCF(CF3)OCF(CF3)COFと式1bで表される化合物の合成例:
コンデンサ−を備えた2Lのフラスコ内に、例2で得た生成物(2000g)を仕込み、フッ化カリウム(31.3g)を加え、熱媒温度を100〜130℃に保って加熱しながら撹拌した。生成するガスは、−78℃に冷却したステンレス(SUS316)製トラップで回収し、反応が進行してガスの生成が見られなくなったところで反応を終了した。次いで、トラップに回収した分解生成物を蒸留精製して結果、FCOCF(CF3)OCF(CF3)COFと式1bで表される化合物を混合物(770g)として得た。混合物に含まれるFCOCF(CF3)OCF(CF3)COFと式1bで表される化合物の割合は、99.0%であった。つぎに混合物を蒸留精製して、FCOCF(CF3)OCF(CF3)COF(290g。純度98.5%。)と、式1bで表される化合物(430g。純度が99.5%。)を得た。それぞれの化合物は、2種の光学異性体の混合物であった。
【0079】
FCOCF(CF3)OCF(CF3)COFの19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)を以下に示す。
異性体(その1)δ(ppm):26.3(2F)、−82.1(6F)、−130.4(2F)。
異性体(その2)δ(ppm):26.1(2F)、−81.9(6F)、−135.6(2F)。
【0080】
式1bで表される化合物の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)を以下に示す。
異性体(その1)δ(ppm):−81.2(3F)、−82.6(3F)、−81〜−83(1F)、−93.9〜−94.5(1F)、−113.3(1F)、−128.2(1F)。
異性体2(その2)δ(ppm):−81.2(3F)、−82.7(3F)、−81〜−83(1F)、−83.9〜−84.7(1F)、−117.0(1F)、−126.1(1F)。
【0081】
[例4−1]式2で表される化合物の異性化反応による合成例:
例3で得た混合物(150g)、フッ化セシウム(5.0g)、およびジグライム(28g)を200mlのオートクレーブに仕込み、密閉状態で撹拌しながら140℃で15時間反応させて生成物を得た。生成物をGC分析した結果、反応転化率は94%であった。反応後の粗液は、2層に分離していた。フルオロカーボン層のみを蒸留して式2で表される化合物(沸点61℃、130g)を得た。
【0082】
[例4−2]異性化反応による式2で表される化合物の合成例:
例3で得たFCOCF(CF3)OCF(CF3)COF(150g)、フッ化セシウム(5.0g)、ジグライム(28g)を200mlのオートクレーブに仕込み、密閉条件で撹拌しながら、140℃で15時間反応させて生成物を得た。生成物をGC分析の結果、反応転化率は92%であった。反応粗液は2層に分離していた。フルオロカーボン層のみを蒸留して式2で表される化合物(沸点61℃、120g)を得た。
【0083】
[例4−3]異性化反応による式2で表される化合物の合成例:
例3で得た式1bで表される化合物(150g)、フッ化セシウム(5.0g)、ジグライム(28g)を200mlのオートクレーブに仕込み、密閉状態で撹拌しながら、140℃で15時間反応させて生成物を得た。生成物をGC分析した結果、反応転化率は97%であった。反応粗液は2層に分離していた。フルオロカーボン層のみを蒸留して式2で表される化合物(沸点61℃、135g)を得た。
【0084】
[例5]熱分解による式4で表される化合物の合成例:
例4−3で得た式2で表される化合物(119g)を、氷浴で冷却したメタノール(100ml)中にゆっくり添加した。つぎに20%水酸化カリウムメタノール溶液(250g)をフェノールフタレンが赤色に変わるまで滴下した。反応粗液からメタノールを留去し、生成した塩を減圧条件で乾燥した。つぎに塩を粉砕し、500mlのナス型フラスコに仕込み、減圧しながら240℃で8時間反応させた。ドライアイスメタノールトラップに分解生成物(66g)を捕集した。さらに精製蒸留を行ない式4で表される化合物(沸点44℃、40g)を得た。
【0085】
【発明の効果】
本発明は、下式1aで表される化合物および下式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンを含む新規な混合物を提供する。本発明により提供される該混合物は、安価な原料から経済的に有利な方法で製造でき、かつ有用な混合物である。また、該混合物からは、フッ素系溶媒として、もしくはフッ素樹脂、フッ素ゴム、またはシランカップリング剤の中間体等として有用な式2で表される化合物が誘導でき、また該式2で表される化合物からは式4で表される化合物を製造できる。本発明における製造方法は、いずれも経済的に有利な方法であり、また収率のよい方法でもある。よって、本発明の製造方法は、工業的な製造においても採用できる有利な方法である。
Claims (5)
- 下式7で表される化合物を下式8で表される化合物とエステル化反応させて下式5で表される化合物を得て、該式5で表される化合物を液相フッ素化法によりペルフルオロ化することにより下式6で表される化合物を得て、さらに該式6で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とする下式1aで表される化合物および下式1bで表されるペルフルオロ環状ラクトンの混合物の製造方法。
HOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OH・・式7
RFCOX・・・式8
RFCOOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OCORF・・式5
RF3COOCF2CF(CF3)OCFRF1CFRF2OCORF3・・式6
FCOCF(CF3)OCF(CF3)COF・・・式1a
- 下式5で表される化合物。
RFCOOCH2CH(CH3)OCHR1CHR2OCORF・・式5
ただし、R1とR2は、互いに異なり、一方が水素原子である場合には他方はメチル基である。RFは、炭素数1〜10のポリフルオロ化された1価有機基を示す。
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