JP5807355B2 - 減速機、ロボットハンドおよびロボット - Google Patents
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Description
り力が不足したりすることが多い。そこで、減速機を用いて適した回転速度まで減速させ
て、必要な回転数と必要なトルクを発生させることが、通常よく実施されている。
リングギアの内側に、リングギアよりも少し小さく、且つリングギアよりも歯数が少ない
(例えば歯数が1つ少ない)公転ギアを設けておく。公転ギアの中心位置には、公転ギア
に対して回転可能な状態で円形カムが設けられている。円形カムからは、リングギアの中
心軸上の位置に第1回転軸が立設されており、第1回転軸によってリングギアの中心軸周
りに円形カムを回転させると、公転ギアはリングギアに噛合しながらリングギアの中心軸
周りに公転する。このような構成では、公転ギアがリングギアの中心軸周りを一回公転す
る間に、公転の方向とは逆方向にリングギアとの歯数差分だけ自転するようになっている
。従って、公転ギアの自転の動きを取り出すことで、入力の回転(第1回転軸の回転)を
大きく減速させることができる。
ンとによって取り出される。貫通孔と貫通ピンとの間にはクリアランスが設けられており
、このクリアランスによって公転ギアの公転の動きを吸収しつつ、公転ギアが自転する動
きを貫通ピンで取り出す。こうして貫通ピンで取り出した公転ギアの自転の動きは、貫通
ピンが連結された第2回転軸から外部に出力される(特許文献1)。
問題があった。すなわち、第1回転軸の入力が第2回転軸から出力されるまでの間には、
リングギアと公転ギアとが噛み合う部分で生じる通常のバックラッシュに加えて、公転ギ
アの貫通孔と貫通ピンとが当接する部分で生じるバックラッシュも存在する。後者のバッ
クラッシュは、特許文献1の動作原理の減速機において、製造誤差に起因して生じるバッ
クラッシュであり、その分だけ全体として大きなバックラッシュが発生し易くなる。その
結果、第1回転軸の入力に対して出力トルクが得られない期間が発生したり、あるいは、
第2回転軸に大きながたつきが発生するといった問題が生じていた。そのため、組み立て
後にバックラッシュの大きさを検査し、問題があれば、分解して、ある部品を寸法がわず
かに違う部品に変更し、再度組み立てなおしてバックラッシュを検査する。この作業を繰
り返して、所定の大きさ以下のバックラッシュの減速機を得る。もしくは、全ての部品の
寸法をあらかじめ測定して選別し、組み立てた時に貫通孔と貫通ピンとの間の隙間が発生
しないように組み合わせた部品で組み立てが行われており、組み立て作業に非常に時間が
かかっていた。
れたものであり、製造誤差を含んだ部品を用いても、部品寸法選別や組み立て検査を行う
ことなく、公転ギアの貫通孔と貫通ピンとが当接する部分にバックラッシュが発生するこ
とを抑制もしくは回避可能な減速機を提供することを目的とする。
た。すなわち、
内周に複数のギア歯が形成されたリングギアと、
外周に複数のギア歯が形成され、前記リングギアと噛合する公転ギアと、
前記公転ギアの中心位置に、該公転ギアに対して回転可能に設けられた円形カムと、
前記円形カムに設けられ、前記リングギアの中心軸上に位置し、該中心軸周りに該円形
カムを回転させて前記公転ギアを該中心軸周りに公転させる第1回転軸と、
前記公転ギアに形成された貫通孔に挿入される貫通ピンと、
前記リングギアの中心軸上に設けられて前記貫通ピンと連結され、前記公転ギアの自転
による回転を出力する第2回転軸と、
中空の円管形状に形成されて、前記貫通ピンの外周に摺動可能に嵌め込まれ、一端側に
向けて先細形状に形成された摺動部材と、
前記摺動部材を、前記先細形状に形成された方向に付勢することによって、前記貫通孔
の内周に当接させる付勢部材と
を備え、
前記公転ギアの前記貫通孔の内周は末狭まり形状に形成されていることを特徴とする。
ングギアの中心軸周りに回転させると、公転ギアがリングギアに噛合しながら中心軸周り
を公転する。また、詳細には後述するが、公転ギアは公転しながら公転の方向とは逆方向
に少しずつ(リングギアと公転ギアとの歯数差に相当する角度だけ)自転しており、公転
ギアの自転の動きは、公転ギアの貫通孔に挿入された貫通ピンに伝達される。こうして貫
通ピンに伝達された公転ギアの自転は、入力の回転に対して減速されており、減速された
回転が貫通ピンと連結する第2回転軸から出力される。また、本発明の減速機では、貫通
孔の内周が末狭まり形状に形成されている。更に、貫通ピンには円管形状の摺動部材が嵌
め込まれている。摺動部材は、一端に向けて先細形状に形成されており、従って本発明の
摺動部材の「円管形状」には、このように完全な円管形状でないものも含むものとする。
完全な円管形状でないものの例としては、摺動部材の内周に貫通ピンを固定するための爪
状部が設けられているものや、摺動部材の外周の一部に円形でない部分を含むものなどで
ある。このような摺動部材は、付勢部材によって先細形状が形成された方向に付勢されて
、末狭まり形状に形成された貫通孔の内周と当接した状態となっている。
方の端面に貫通ピンの外周を摺動可能に嵌め込むための貫通部が形成された形状を用いる
ことができる。また、本発明の貫通孔の内周の形状の一例として、テーパー形状を用いる
ことができる。
によって貫通孔の斜面が貫通ピンから遠ざかるように形成された場合でも、摺動部材が移
動して貫通孔の斜面に押し付けられる。このため、摺動部材をと貫通孔とが当接した状態
に保たれるので、貫通ピンと貫通孔との間にバックラッシュの発生を抑制もしくは回避す
ることができる。また、製造誤差などによって貫通孔の斜面が貫通ピンに近付くように形
成された場合には、貫通孔の斜面から摺動部材を押し上げるような力が作用する。摺動部
材と貫通ピンとは固定されていないので、この力を受けた摺動部材は、貫通孔から抜け出
す方向に移動する。このように、本発明の減速機では、貫通ピンや貫通孔などの製造誤差
によって貫通ピンと貫通孔との距離が変わっても、摺動部材が摺動することによって距離
の変化を吸収し、貫通ピンと貫通孔とが摺動部材を介して当接した状態を維持しておくこ
とができる。このため、製造誤差を含んだ部品を用いた場合でも、部品寸法選別や組み立
て検査を行うことなく、公転ギアの貫通孔と貫通ピンとの間のバックラッシュの発生を抑
制もしくは回避することが可能となる。
貫通孔を形成することとしてもよい。
材を公転ギアとは異なる材料で形成することができるので、材料の選択自由度を向上させ
ることができる。たとえば、公転ギアの貫通孔の部分だけを、より耐摩耗性に優れた材料
で形成することができる。また、貫通孔の部分だけを公転ギアとは別部材として製造すれ
ば、貫通孔の形状精度を向上させることも可能となる。
と貫通ピンとの間のバックラッシュの発生を抑制もしくは回避することで出力の遅れや第
2回転軸のガタつきをおさえることができるので、ロボットハンドやロボットに組み込ん
で使用される減速機として特に優れている。
例を説明する。
A.本実施例の減速機の構成:
B.貫通孔と貫通ピンとの間に隙間が発生することが防止される理由:
C.変形例:
D.適用例:
図1は、本実施例の減速機10の外観図である。図示されるように、本実施例の減速機
10には、円柱形の本体部40の底面側に入力軸20(第1回転軸)が設けられており、
本体部40の上面側に出力軸30(第2回転軸)が設けられている。本体部40を固定し
た状態で入力軸20を回転させると、その回転が本体部40内の機構によって減速されて
、上蓋板104もしくは上蓋板104の中心に固定された出力軸30から出力される。
ように、本実施例の減速機10では、本体部40の外周を構成する円筒形の部材の内周(
以降、内周側とも言う)に複数のギア歯が形成されて、リングギア100を構成している
。また、リングギア100の内側には、リングギア100よりも少し小さく、外周(以降
、外周側とも言う)に複数のギア歯が形成された公転ギア110が設けられている。公転
ギア110の中央には軸孔112が設けられており、この軸孔112には、入力軸20に
設けられた偏心カム130(円形カム)がベアリング116を介して回転可能に嵌め込ま
れる。尚、図示した本実施例の減速機10では、リングギア100の内側に2つの公転ギ
ア110が設けられているが、この理由については後述する。
114が設けられており、それぞれの貫通孔114には、公転ギア110の自転の動きを
取り出すための貫通ピン120が挿入されている。尚、貫通ピン120によって公転ギア
110の自転の動きを取り出す方法については後述する。これら貫通ピン120は、下端
部が本体部40の底面を構成する下蓋板102に取り付けられるとともに、上端部がナッ
ト106によって本体部40の上面を構成する上蓋板104に固定される。
(摺動部材)や皿バネ150(付勢部材)が嵌め込まれる。このようなクサビ部材140
および皿バネ150を設けておく理由については後述する。
たように、リングギア100の内側には、リングギア100よりも小さな公転ギア110
が設けられており、リングギア100と公転ギア110とは一箇所で噛合している。従っ
て、公転ギア110は、リングギア100の中心位置に対して偏心した状態となっている
。また、公転ギア110の中心には軸孔112が設けられており、この軸孔112にはベ
アリング116(図2を参照)を介して偏心カム130が嵌め込まれている。このため、
入力軸20を回転させると偏心カム130が回転して、入力軸20(およびリングギア1
00の中心軸)を中心とする公転運動を公転ギア110に生じさせる。尚、本明細書中で
「公転」とは、ある点の周りを物体が周回する動きのことを表している。
なっているが、公転ギア110とリングギア100とはギア歯によって噛合している。こ
のため公転ギア110は、リングギア100のギア歯との噛合によって自転を行いながら
、入力軸20(およびリングギア100の中心軸)を中心とする公転を行うこととなる。
尚、本明細書中で「自転」とは、ある物体の内部の点(例えば中心や重心)を通る軸を中
心軸として回転する動きのことを表している。例えば、本実施例の場合では、公転ギア1
10の中心(図示せず)を通る軸を中心軸として回転する動きのことを表している。
10が図面上の上側でリングギア100と噛み合っている状態が示されている。尚、図3
では、公転ギア110が回転する様子が把握できるように、公転ギア110の側面に矢印
が表示されている。この矢印は、図3(a)の状態では図面上で真上を指している。
偏心カム130の働きによって、公転ギア110も時計回り方向に45度だけ公転する。
また、公転ギア110は、リングギア100に噛合しているからギア歯の数に相当する角
度だけ反時計回り方向に自転する。その結果、公転ギア110は、図3(b)に示すよう
な状態となる。図3(a)と図3(b)とを比較すれば明らかなように、偏心カム130
が時計回り方向に45度回転したことに伴って、公転ギア110も時計回り方向に45度
だけ公転し、図面上では右上側に偏心した位置に移動している。また、公転ギア110に
描かれた矢印の向きは、図3(a)と同様にほぼ図面上の真上を指している。これは、公
転ギア110を時計回り方向に公転させたときに、リングギア100との噛合によって公
転ギア110に生じた反時計回り方向の自転が、時計回り方向の公転をほぼ打ち消したた
めと考えることができる。
と、公転ギア110は図3(c)に示した位置まで移動する。この状態は、図3(a)に
示した状態に対して、公転ギア110が時計回り方向に90度だけ公転した状態である。
また、公転ギア110が、リングギア100と噛み合いながらこの位置まで公転すること
に伴って、公転ギア110はギア歯の数に相当する角度だけ、反時計回り方向に自転して
いる。また、公転ギア110に設けられた矢印の向きは、図3(b)と同様に、依然とし
てほぼ図面上の真上を指した状態となっている。
転ギア110は、図3(d)に示した状態、図3(e)に示した状態、図3(f)に示し
た状態、図3(h)に示した状態へと移動していき、入力軸20をちょうど一回転させる
と、図3(i)に示した状態となる。また、公転ギア110に表示された矢印の向きは、
図3(a)と比較すると、公転ギア110とリングギア100との歯数の差の分だけ、反
時計回り方向に回転している。例えば、公転ギア110の歯数がリングギア100の歯数
よりも1だけ少ない場合、公転ギア110に生じる時計回り方向の公転と反時計回り方向
の自転とは、ほぼ打ち消し合う大きさになっているものの、厳密には、一回分の公転につ
き、ギア歯一枚分だけ自転の角度の方が大きくなる。これは、公転ギア110のギア歯の
数が、リングギア100のギア歯の数よりも一歯だけ少なく形成されている結果、公転ギ
ア110がリングギア100と噛み合いながら時計回り方向に一回公転するためには、公
転ギア110は反時計回り方向に一回と、更に一歯分だけ余分に自転しなければならない
ためである。
0が、リングギア100とのギア歯の数の差に相当する歯数分だけ、逆方向に自転するこ
ととなる。例えば、リングギア100の歯数を50枚、公転ギア110の歯数を49枚と
すると、入力軸20を一回転させる毎に、公転ギア110が50分の1回転(従って36
0度/50=7.2度)だけ、逆方向に自転する。
できる。先ず、入力軸20を回転させると、偏心カム130によって公転ギア110は、
入力軸20(およびリングギア100の中心軸)を中心とする公転を行う。一方で、公転
ギア110はリングギア100と噛み合っているので、公転ギア110はリングギア10
0の上を転がりながら自転することとなる。
って、公転ギア110は、実際にはほとんど回転(正確には自転)しなくても、少しだけ
平行移動するだけでリングギア100の上を転がることができる。たとえば、図3(a)
に示す状態と、図3(b)に示す状態とでは、公転ギア110がほとんど回転することな
く、少しだけ右下方向に移動しているに過ぎない。それにも拘わらず、リングギア100
に対して公転ギア110が噛み合う位置は、リングギア100の中心位置から45度だけ
移動している。すなわち、リングギア100の上を公転ギア110が転がっている。また
、図3(b)に示す状態と図3(c)に示す状態とについても同様に、公転ギア110は
ほとんど回転することなく、ほぼ下方向の少しだけ右寄りに移動しているに過ぎない。そ
れにも拘わらず、リングギア100に対して公転ギア110が噛み合う位置は、更に45
度だけ移動している。すなわち、リングギア100の上を公転ギア110が転がっている
。
ば、公転ギア110を振れ回るように移動(揺動)させるだけで、ほとんど自転させるこ
となく、リングギア100の上で公転ギア110を転がすことができる。そして、公転ギ
ア110が元の位置まで(たとえば図3(a)または図3(i)に示す位置まで)戻って
くるまでの間には、リングギア100と公転ギア110との歯数の差に相当する角度の自
転しか生じない。
このことは、入力軸20を高速で回転させると公転ギア110が激しく揺動することを示
しており、これに伴う振動の発生が懸念される。しかし、前述したように、本実施例の減
速機10には公転ギア110が2つ設けられており(図2を参照)、これらの公転ギア1
10は、互いが半周期ずつずれて公転するようになっている。このため、一方の公転ギア
110の揺動によって生じる振動が、他方の公転ギア110の揺動による振動で打ち消さ
れることとなって、減速機10全体としては振動の発生を回避することが可能となってい
る。
は少しずつ自転しながらリングギア100の内側を僅かに揺動しているに過ぎない。この
ように考えれば、公転ギア110の自転を貫通ピン120によって取り出せることも了解
できる。すなわち、図2に示したように、本実施例の公転ギア110には一例として4つ
の貫通孔114が設けられており、これら貫通孔114にはそれぞれ貫通ピン120が挿
入されている。ここで、貫通孔114の大きさを貫通ピン120の直径に対してある程度
大きめに設定しておけば、公転ギア110がリングギア100内を揺動する動きを、貫通
孔114と貫通ピン120との間の隙間(クリアランス)によって吸収して、公転ギア1
10の自転のみを取り出すことができる。以下、この点について説明する。
である。先ず、貫通孔114の大きさについて説明する。貫通孔114は、図4(a)に
示すように、公転ギア110の中心位置とリングギア100の中心位置とを一致させたと
きに、貫通ピン120の位置に重ねて、貫通ピン120よりも半径aだけ大きな孔に形成
する。ここで「a」とは、リングギア100の中心位置に対する公転ギア110の偏心量
である。
で上側に偏心させる。すると、公転ギア110は長さaだけ上方向に偏心するので、図4
(b)に示したように、貫通孔114の下側が貫通ピン120の外周とが当接した状態と
なる。
図4(c)に示した様に、貫通孔114の左側が貫通ピン120と当接する。同様に、公
転ギア110が図面上で下側に偏心すると、図4(d)に示す様に貫通孔114の上側が
貫通ピン120と当接し、図面上で左側に偏心すると、図4(e)に示すように貫通孔1
14の右側で、貫通孔114と貫通ピン120とが当接する。
して偏心量aに相当する分だけ大きくしておくことで、公転ギア110がリングギア10
0内で揺動する動きを吸収することができる。尚、「貫通孔114の大きさを貫通ピン1
20に対して偏心量aに相当する分だけ大きくする」とは、貫通孔114の半径を貫通ピ
ン120の半径よりも偏心量aの分だけ大きくする、もしくは貫通孔114の直径を貫通
ピン120の直径よりも偏心量aの2倍(2a)の分だけ大きくすると言い換えることが
できる。その一方で、公転ギア110が自転すると、貫通孔114の位置が移動するから
、この動きは貫通ピン120に伝達される。このため、公転ギア110の自転の動きだけ
取り出すことができる。
部40の上蓋板104および下蓋板102(図2を参照)に伝達される。その結果、上蓋
板104に固定された出力軸30から公転ギア110の自転が減速機10の外部に出力さ
れる。
ア100の内側を揺動すると、貫通孔114と貫通ピン120とは、常にどこか一箇所で
当接しており、しかも当接箇所は常に移動している。従って、どこか一箇所でも貫通孔1
14と貫通ピン120とのクリアランスが小さすぎる箇所が存在すると、その箇所で貫通
孔114と貫通ピン120とが干渉して減速機10がロック状態となる。貫通孔114や
貫通ピン120の製造時に多少の製造誤差が発生することは避けられないから、このよう
な事態を回避するためには、貫通孔114と貫通ピン120とのクリアランスを若干大き
くしておく必要がある。
0との隙間の分だけ、貫通孔114と貫通ピン120との間のトルク伝達が遅れて出力ト
ルクが得られない期間が生じたり、あるいは入力軸20が止まっているのに出力軸30が
ガタつくといった不都合が生じる。そこで、本実施例の減速機10では、貫通孔114と
貫通ピン120との間にクサビ部材140を介在させる構造を採用することにより、この
様な不都合を抑制もしくは回避している。
図5は、貫通孔114および貫通ピン120に対して、クサビ部材140を組み付ける
様子を示した説明図である。図5では、下側の公転ギア110に対するクサビ部材140
などは既に組み付けられており、上側の公転ギア110に対して、クサビ部材140や、
皿バネ150、上蓋板104などを組み付ける様子が示されている。尚、以下では、上側
の公転ギア110に対して、クサビ部材140などを組み付ける方法について説明するが
、下側の公転ギア110に対してクサビ部材140などを組み付ける場合も、同様な方法
によって組み付けることができる。
設けられており、それぞれの貫通孔114に貫通ピン120が挿入されている。この貫通
ピン120に対して、1つずつクサビ部材140(摺動部材)が嵌め込まれる。クサビ部
材140は、円錐形上の部材の先端を切り落としたような形状(円錐台形状)をしている
。尚、「円錐台形状」とは、例えば、一方の端面から他方の端面に向かうに従って、端面
に平行な断面の円形が小さくなる形状と言い換えることもできる。円錐台の回転軸に相当
する箇所には、貫通ピン120に対して摺動可能な内径の貫通孔(貫通部)が形成されて
いる。また、本実施例の公転ギア110には、すり鉢状の貫通孔114が形成されている
。「すり鉢形状」とは、例えばテーパー形状であり、貫通孔114の一方の開口部から他
方の開口部へ向かうに従って、貫通孔114の大きさが小さくなる形状のことである。図
5中で上側に表示されている公転ギア110については、上向きに広がるような、すり鉢
状の貫通孔114が形成されており、また下側の公転ギア110については、下向きに広
がるような、すり鉢状の貫通孔114が形成されている。そして、貫通孔114の斜面の
角度は、クサビ部材140の斜面の角度と同じ角度になっている。このため、図5に示し
たように、上側の公転ギア110の貫通孔114から貫通ピン120が突き出た状態で、
上側から貫通ピン120にクサビ部材140を嵌め込むと、クサビ部材140は貫通ピン
120に沿って滑り落ちた後、クサビ部材140の斜面と、貫通孔114の斜面とが当接
して停止する。この状態では、クサビ部材140の後端は、貫通孔114が開口する公転
ギア110の端面に対して、ほぼ面位置となるように形成されている。
んだら、クサビ部材140の上から円環形状の皿バネ150(付勢部材)を嵌めた後、上
蓋板104を取り付ける。その後、上蓋板104から突き出ている貫通ピン120に対し
て、ナット106を取り付ければ、減速機10の組み立てが完成する。
50およびクサビ部材140を介して、上側の公転ギア110の貫通孔114の斜面に押
しつけられた状態となっており、リングギア100とは接していない。同様に、下蓋板1
02は、皿バネ150およびクサビ部材140を介して、下側の公転ギア110の貫通孔
114の斜面に押しつけられた状態となっており、リングギア100とは接していない。
このため、ナット106を締め付けていくと、上蓋板104と下蓋板102とが接近し、
その分だけ皿バネ150が潰れて、クサビ部材140を貫通孔114の斜面に強い力で押
しつけるようになる。換言すれば、クサビ部材140が貫通孔114の斜面に押し付けら
れる力は、ナット106を締め付ける力で調整することが可能となっている。
クサビ部材140が組み付けられている様子を示した説明図である。図示されているよう
に、クサビ部材140と貫通孔114とは、斜面で接している。尚、貫通ピン120が貫
通孔114に対して偏心していることから、クサビ部材140も貫通孔114に対して偏
心している。また、クサビ部材140の後端側(末広がりとなっている側)の端面は、公
転ギア110の端面とほぼ面位置となっている。更に、クサビ部材140の後端側の端面
は皿バネ150によって付勢されており、このため、クサビ部材140は貫通孔114の
斜面に対して常に押し付けられた状態となっている。
120との間の隙間を解消するメカニズムを示した説明図である。前述したように、貫通
ピン120(およびクサビ部材140)は貫通孔114に対して偏心しており、クサビ部
材140と貫通孔114とは一箇所で接している。しかし、公転ギア110が公転すると
、貫通孔114の中で貫通ピン120が移動する。そして、貫通孔114には製造誤差が
存在するから、貫通孔114の中で貫通ピン120が移動したときに、貫通孔114と貫
通ピン120との間の距離が広がったり、逆に距離が縮まったりすることが起こり得る。
0から遠ざかるように移動する場合が示されている。このように、貫通孔114の斜面が
貫通ピン120から遠ざかった場合でも、皿バネ150によって付勢されたクサビ部材1
40が移動して、貫通孔114の斜面に押しつけられる。このため、貫通孔114とクサ
ビ部材140との間には隙間が生じない。
0に近付くように移動する場合が示されている。このように、貫通孔114の斜面が貫通
ピン120に近付くと、貫通孔114の斜面からクサビ部材140を押し上げるような力
が作用する。そして、クサビ部材140は皿バネ150によって押さえられているだけな
ので、貫通孔114の斜面からの力によって、クサビ部材140が貫通孔114から抜け
出す方向に移動する。このため、貫通孔114とクサビ部材140とが干渉して、減速機
10がロック状態になることがない。もちろん、クサビ部材140が貫通孔114から抜
け出す方向に移動しても、貫通孔114とクサビ部材140との間には隙間は生じない。
たが、この他にも、製造公差によって貫通ピン120の位置ズレが生じたり、あるいは貫
通孔114の内周(あるいは貫通ピン120の外周)を完全な円形に形成できなかった場
合にも、貫通孔114と貫通ピン120との間隔が広がったり、狭まったりすることは起
こる。このような場合であっても、上述したようにクサビ部材140を介して貫通孔11
4と貫通ピン120とを当接させることとすれば、貫通孔114と貫通ピン120との間
隔が広くなった部分ではクサビ部材140によって隙間を埋め、また間隔が狭くなった部
分ではクサビ部材140を貫通孔114から抜け出させることができる。
材140を介して常に当接させておくことができる。その結果、貫通孔114と貫通ピン
120と間の隙間が発生することによって、トルク伝達が遅れて出力トルクが得られない
期間が生じたり、あるいは出力軸30がガタついてしまうことを防ぐことが可能である。
もちろん、貫通孔114と貫通ピン120との間隔が狭くなると、クサビ部材140が貫
通孔114の奥から抜け出て、貫通孔114とクサビ部材140とが干渉することを回避
するので、減速機10がロック状態になってしまうこともない。
上述した実施例の減速機10では、クサビ部材140が貫通孔114に当接する部分を
、すり鉢状に形成したものであると説明した。ここで、貫通孔114の内周をすり鉢状に
加工するのではなく、すり鉢状の部材を別途用意しておき、この部材を貫通孔114の内
周に嵌め込むようにしてもよい。なお、以下に説明する変形例において、上述した本実施
例と同様の構成部分については、実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する
。
した変形例の貫通孔114は、単に公転ギア110に円形の孔をくり抜いて形成されてい
る。また、貫通孔114には、略円筒形状で、円筒の内周がすり鉢状に形成されたクサビ
受部材142が嵌め込まれている。
常に接した状態にしておくことができるので、貫通孔114と貫通ピン120との間に隙
間が発生することによる上述した弊害が発生することを防ぐことができる。また、このよ
うにクサビ受部材142を公転ギア110と別体で形成すれば、公転ギア110にはクサ
ビ受部材142を取り付けるための円形の孔を空けるだけでよいので、公転ギア110の
加工を容易にすることが出来る。さらに、クサビ受部材142自体はプレス加工等によっ
て形成することができるので、加工に困難を要することもない。加えて、クサビ受部材1
42を摩耗に強い部材で形成しておけば、クサビ部材140とクサビ受部材142とが擦
れ合っても、摩耗によってクサビ受部材142が変形することを抑制することができる。
上述したように、本実施例の減速機10は、貫通孔114と貫通ピン120との当接部
分に隙間が発生することを防止することで、出力の遅れや出力軸30のガタつきを防止す
ることができる。このため、本実施例の減速機10は、ロボットハンドの関節などのよう
に、精密な動作が要求される部分に取り付けられる減速機として特に適している。
した説明図である。図9(a)に示したロボットハンド200には、2本の向かい合う指
202の3カ所に関節が設けられており、この関節部分に減速機10が組み込まれている
。また、図9(b)に示したロボット500には、ロボットのアーム部分とロボットハン
ド200との接続部やアーム部分の肘の部分、あるいはアーム部分の付け根の部分などに
、減速機10が組み込まれている。このため、減速機10が組み込まれた関節部分の出力
の遅れや出力軸30のガタつきが防止されて、関節の動きを滑らかにすることが可能であ
る。
はなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
100…リングギア、 102…下蓋板、 104…上蓋板、
106…ナット、 110…公転ギア、 112…軸孔、
114…貫通孔、 116…ベアリング、 120…貫通ピン、
130…偏心カム、 140…クサビ部材、 142…クサビ受部材、
150…皿バネ、 200…ロボットハンド、 500…ロボット
Claims (5)
- 内周に複数のギア歯が形成されたリングギアと、
外周に複数のギア歯が形成され、前記リングギアと噛合する公転ギアと、
前記公転ギアの中心位置に、該公転ギアに対して回転可能に設けられた円形カムと、
前記円形カムに設けられ、前記リングギアの中心軸上に位置し、該中心軸周りに該円形カムを回転させて前記公転ギアを該中心軸周りに公転させる第1回転軸と、
前記公転ギアに形成された貫通孔に挿入される貫通ピンと、
前記リングギアの中心軸上に設けられて前記貫通ピンと連結され、前記公転ギアの自転による回転を出力する第2回転軸と、
中空の円管形状に形成されて、前記貫通ピンの外周に摺動可能に嵌め込まれ、一端側に向けて先細形状に形成された摺動部材と、
前記摺動部材を、前記先細形状に形成された方向に付勢することによって、前記貫通孔の内周に当接させる付勢部材と、
を備え、
前記公転ギアの前記貫通孔の内周は末狭まり形状に形成され、
前記摺動部材と前記貫通孔は互いに移動可能である
ことを特徴とする減速機。 - 前記公転ギアは、該公転ギアとは別部材が該公転ギアに嵌め込まれることによって前記貫通孔が形成されている請求項1に記載の減速機。
- 請求項1または請求項2に記載の減速機を有するロボットハンド。
- 請求項1または請求項2に記載の減速機を有するロボット。
- 内周に複数のギア歯が形成されたリングギアと、
外周に複数のギア歯が形成され、前記リングギアと噛合する公転ギアと、
前記公転ギアの中心位置に、該公転ギアに対して回転可能に設けられた円形カムと、
前記円形カムに設けられ、前記リングギアの中心軸上に位置し、該中心軸周りに該円形カムを回転させて前記公転ギアを該中心軸周りに公転させる第1回転軸と、
前記公転ギアに形成された貫通孔に挿入される貫通ピンと、
前記リングギアの中心軸上に設けられて前記貫通ピンと連結され、前記公転ギアの自転による回転を出力する第2回転軸と、
円錐台形の一方の端面から他方の端面へ貫通部が形成され、該貫通部に前記貫通ピンの外周が摺動可能に嵌め込まれる摺動部材と、
前記摺動部材を付勢することによって、前記貫通孔の内周に当接させる付勢部材と、
を備え、
前記公転ギアの前記貫通孔の内周はテーパー形状に形成され、
前記摺動部材と前記貫通孔は互いに移動可能である
ことを特徴とする減速機。
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