本発明は、不純物として無機イオンを含有するイソシアヌレート誘導体を吸着剤で処理することにより、無機イオンを効率よく低減し、電気特性が要求される樹脂組成物の原材料として使用できるほどの極めて無機イオン含有量の少ないイソシアヌレート誘導体を得る方法である。
本発明におけるイソシアヌレート誘導体としては、特に限定されないが、下記一般式(I):
(式中、R1、R2、R3は同一又は異種の水素又は炭素数1〜50の有機基またはハロゲンを表す。有機基は、エーテル結合、エステル結合、アセタール結合、イミド結合、アミド結合を有していてもよい。)で表される化合物が好ましい。R1、R2、R3の好ましい具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
などが挙げられる。さらに、付加反応などにより樹脂組成物を形成しやすくするためにR1〜R3のうち少なくとも一つはアリル基を含むものが好ましい。より好ましくはR1が水素かつR2、R3の少なくとも一つはアリル基である。特に好ましくはR1が水素、R2、R3がアリル基である。
本発明におけるイソシアヌレート誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば1,3−ジアリルイソシアヌレートの場合、トルエン溶媒中で酢酸と塩化第二銅を併用し、トリアリルイソシアヌレートを加熱して1,3−ジアリルイソシアヌレートを得る方法による方法などにより製造することができる。しかし、この方法では通常、各種無機イオンが10〜1000ppm含まれる。
本発明において用いる吸着剤としては、無機系の吸着剤及び有機系の吸着剤を用いることができる。
無機系の吸着剤としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミニウムマグネシウム複合酸化物、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ゼオライトなどの複合金属酸化物;水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト様化合物などの金属水酸化物;オキソ酸ビスマス、オキソ酸アンチモン、オキソ酸マグネシウム、オキソ酸アルミニウム、オキソ酸ジルコニウムなどからなる無機イオン交換体(例えば東亞合成社製IXEシリーズなど);活性白土、酸性白土、珪藻土、活性炭などが挙げられる。また、これらの複合体や水和物などを用いても良い。
有機系の吸着剤としては例えば、スチレン系、アクリル系、フェノール系、セルロース系などのイオン交換樹脂やキレート樹脂などが挙げられる。
吸着剤の形状としては、固体状、多孔質体、ゲル状のいずれでも良い。好ましくは固体状または多孔質体状の吸着剤である。
これらの吸着剤の中では、有機溶剤への溶出性が低く、吸着処理後、アリルイソシアヌレート誘導体との分離が容易であるため、無機系の吸着剤が好ましい。無機系の吸着剤の中では、複合金属酸化物、金属水酸化物、活性炭などが好ましく、中でもケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、マグネシウムアルミニウム複合酸化物、ハイドロタルサイト様化合物、水酸化アルミニウム、活性炭などが、無機イオンを低減する効果が大きいため、より好ましい。
さらに、一般式:
xMn+ n/2O・Al2O3・y(SiO2)・zH2O
(式中、MはNa、K、Mg、Ca、Znなどの金属イオン、nは1または2、xは0≦x≦1、yは0<y≦15、zは0≦z≦15)
で表されるケイ酸アルミニウム(例えば、協和化学工業株式会社製のキョーワード700)が、著しく無機イオンを低減させることができるため、特に好ましい。これらの吸着剤は1種で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良い。
本方法における吸着剤の粒子径や比表面積については特に限定されないが、平均粒径が0.1〜500μm、比表面積が1〜5000m2/gの範囲内であることが好ましい。粒径が小さく比表面積が大きいほど効率よく無機イオンを低減することができるためであり、また、粒径が小さくなりすぎると、吸着処理後のイソシアヌレート誘導体溶液との分離が困難になるからである。
本方法において吸着剤の添加量は特に限定はされないが、イソシアヌレート誘導体に対して0.01〜20重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲内である。
本方法において用いられる溶媒は特に限定されないが、有機溶媒、水、または有機溶媒と水の混合物である。
有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、i−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アニソールなどエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、4−ヘプタノン、メチルアミルケトン、ジ−i−プロピルケトン、n−ブチルメチルケトン、i−ブチルメチルケトン、5−ノナノン、ジ−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどエステル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなど炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、1,2-ジブロモエタン、ブロモベンゼンなどハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどグリコールエステル系溶媒;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなど含窒素系溶媒;ジメチルスルホキシド、二硫化炭素など含硫黄系溶媒などが挙げられる。
これらの溶媒は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。中でも、イソシアヌレート誘導体の溶解度の大きさから、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒が好ましく、より好ましくは極性の低い溶媒が好ましく、中でもエーテル系溶媒が好ましい。その中でも効率良く無機イオン(特に銅イオン)を低減させることができるため、1,4−ジオキサンが特に好ましい。
必要に応じて、これらの有機溶媒に少量の水を添加しても良い。添加する水の量としては特に限定されないが、吸着剤に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。水を添加することにより、より効率よく無機イオンを低減させる場合がある。
吸着処理時の温度は特に限定されないが、操作の容易さなどから、0℃以上200℃以下の範囲内で溶媒の沸点以下の温度が好ましい。より好ましくは20℃以上150℃以下である。
吸着剤処理の方法は特に限定されないが、例えば、イソシアヌレート誘導体に溶媒、吸着剤を加え、必要に応じて温度を調整して撹拌すれば良い。吸着処理終了後、反応液はそのまま次工程に用いても良いが、ろ過操作などにより吸着剤を除去しても良い。
ろ過の方法としては特に限定されず、一般的に広く利用されている方法を用いることができ、例えば、ろ紙、ろ布、メンブランフィルター、ガラス繊維フィルターなどのフィルターを通してろ過する方法などが挙げられる。さらに、吸着剤などの不溶物のろ液への混入やフィルターの目詰まりなどを抑制するためなど、必要に応じてろ過助剤をフィルター上に敷き詰めてろ過しても良い。
使用できるろ過助剤は特に限定されず、市販されているろ過助剤を用いることができ、例えば、セライト、ラヂオライトなど珪藻土系ろ過助剤、ロカヘルプなどパーライト系ろ過助剤、シリカなどが挙げられる。これらのろ過助剤は1種または2種以上を同時に用いても良い。
吸着剤処理のもう一つの方法としては、吸着剤をカラムなどの容器に詰め、溶媒に溶解させたイソシアヌレート誘導体を通過させることにより、連続的に無機イオンを低減させたイソシアヌレート誘導体溶液を得る方法である。
本方法において、除去される無機イオンは特に限定されないが、例えば、金属イオン、ハロゲン化物イオンなどが挙げられる。中でも、ナトリウムイオン、銅イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオンなどを効果的に除去できる。
本方法により処理されたイソシアヌレート誘導体の用途は特に限定されないが、プラスチック、潤滑剤、架橋剤、合成ゴム、電気絶縁材料、電子材料などの原料として用いることができる。中でも、無機イオンの含有量が極めて少ないことから、電気特性が要求される電気絶縁材料など電子基板用樹脂組成物の原材料として好適に用いることができる。
本方法により処理されたイソシアヌレート誘導体に含まれる無機イオンの含有量としては、電気絶縁材料など電子材料用樹脂組成物の原材料として使用するために、各無機イオンの含有量は、好ましくは20ppm以下である。さらに、各無機イオンが15ppm以下かつナトリウムイオンが3ppm以下、銅イオンが3ppm以下であるとより好ましい。特に、吸着剤にケイ酸アルミニウムを用い、1,4−ジオキサンを溶媒に用いた場合では、ナトリウムイオンを2ppm以下、銅イオンを0.1ppm以下まで低減したイソシアヌレート誘導体を得ることができる。
本方法により得られるイソシアヌレート誘導体を含む樹脂組成物としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリノルボルネン、ポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、6−ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。中でも、無機イオンの含有量が極めて少ないことから、電気特性が要求される樹脂組成物の添加剤や架橋剤、特に電気絶縁材料など電子材料用樹脂組成物の原材料として好適に用いることができ、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などが挙げられる。
中でも、シリコーン樹脂は耐熱性、耐光性、透明性、絶縁性に優れた有用な樹脂である。シリコーン樹脂の合成方法は特に限定されないが、ヒドロシリル化反応により合成する方法が、反応時における副反応を抑制することができ、効率的にシリコーン樹脂を合成することができ好ましい。
そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、ポリオルガノシロキサン化合物として、本発明の方法により精製した1,3−ジアリルイソシアヌレートに下記化合物(α)〜(γ)を加えたヒドロシリル化反応生成物:
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物。
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物。
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを、有する化合物。
を使用できる。
化合物(α)における有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
の他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
化合物(α)としては、骨格部分とアルケニル基(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合)とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
化合物(α)としては、特に、耐熱性、耐光性が高いという観点から、イソシアヌレート誘導体が好ましく、中でもトリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
化合物(β)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物であれば特に限定されないが、硬化物に柔軟性が付与されるという観点より、
(式中、R4、R5は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、lは、0〜50、nは1〜50、mは0〜10の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。またR4、R5は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より、特にフェニル基であるものが好ましい。
これらのうち、硬化物の耐熱性が高いという観点より、
(式中、R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは0〜50の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有し、分子中にT構造(X3SiO3/2)またはQ構造(SiO4/2)を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、R6、R7は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましい。
これらのうち、入手性および1,3−ジアリルイソシアヌレート化合物(α)、(γ)との反応性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(II)
(式中R8、R9は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
一般式(II)で表される化合物中の置換基R8、R9は、C、H、Oからなる群から選択して構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
上記した各種化合物(β)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
化合物(γ)としては、1分子中に光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物であれば特に限定されない。
光重合性官能基としては、特に限定されないが、一般的に知られているものが利用でき、例えばエポキシ基アクリロイル基、メタクリロイル基などが上げられる。
光重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(γ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、光重合反応性に優れている観点より、脂環式エポキシ基を有する化合物であるビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
光重合性官能基としての具体例としては、入手性容易性及び耐熱性の観点からは、下記一般式(III)
(式中R10、R11は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物であることが好ましく、反応後の副生成物が除去されやすい等という観点より、特にトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシランが好ましい。
光重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(γ)としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、およびがビニル基またはアリル基と下記一般式(IV)
(式中のnは0〜16の数、R12は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される有機基とを同一分子内中に1個以上ずつ有する化合物、例えば、上述の一般式(I)において、式中のR1〜R3の少なくとも1個が上記一般式(IV)で示される基であり、かつ、R1〜R3の少なくとも1個がビニル基またはアリル基などのSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である化合物が挙げられる。
さらにヒドロシリル化の選択性が高いという観点より、メタクリロイル基が同一分子内にアリルまたはビニル基と共存する化合物であることが好ましく、特に入手性の面よりメタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニルなどが好ましい。
またヒドロシリル化反応の際、光重合性官能基の種類を問わず、2種以上の化合物(γ)を併用することもできる。
ヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いればよく、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)および化合物(γ)のSiH基と反応性を有する炭素―炭素二重結合(以下、単に「アルケニル基」と称することがある。)1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は上記化合物のアルケニル基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましく、低分子量体を含有しにくいと言う観点から、1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)、化合物(β)のいずれかを過剰に加えてヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)、化合物(β)を除き、得られた反応物と化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる方法がより好ましい。
各化合物の変性させる割合は特に限定されないが、1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)および(γ)の総アルケニル基量をA、化合物(β)の総SiH基量をBとした場合、1≦B/A≦30であることが好ましく、更に1≦B/A≦10であることが好ましい。この値が小さい場合は、組成物中に未反応アルケニル基が残るため着色の原因となり、また大きい場合には、未反応のSiH基が多く残るため、組成物の硬化時における発泡、クラックの原因となる場合がある。
また、1,3−ジアリルイソシアヌレート、化合物(α)および化合物(γ)の変性割合については、1,3−ジアリルイソシアヌレートのアルケニル基をA1、化合物(α)のアルケニル基をA2、化合物(γ)のアルケニル基をA3とした場合、A1+A2+A3=1として、0.01≦A1≦0.99、0≦A2<0.99、0.01≦A3≦0.99の範囲で適宜選択して変性させることができ、A1の割合を高くすることでアルカリへの可溶性を向上させることができ、A2の割合を高めることで硬化物の強度を向上させることができ、またA3の割合を高くすることで硬化性を向上させることができる。
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
ヒドロシリル化反応の際に酸素を使用できる。反応容器の気相部に酸素を添加することで、ヒドロシリル化反応を促進できる。酸素の添加量を爆発限界下限以下とする点から、気相部の酸素体積濃度は3%以下に管理する必要がある。酸素添加によるヒドロシリル化反応の促進効果が見られるという点からは、気相部の酸素体積濃度は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
ヒドロシリル化反応させた後に、溶媒及び/又は未反応の化合物を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる反応物が揮発分を有さないため、該反応物を用いて硬化物を作成する場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは80℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
このようなヒドロシリル化反応において、無機イオンを大量に含む未精製のイソシアヌレート誘導体を用いた場合、ゲル化、副反応、触媒の被毒による活性の低下などが起こりやすい。しかし、本発明により精製したイソシアヌレート誘導体を用いた場合、ゲル化などを抑制でき、効率よくポリオルガノシロキサン化合物を得ることができる。
また、このような1,3−ジアリルイソシアヌレートを含むポリオルガノシロキサン化合物は、アルカリ水溶液への溶解が可能であり、かつ光重合性官能基による光硬化性を有するため、アルカリ現像可能なレジスト材料として適用することができ得る。さらに、本発明の方法により精製した1,3−ジアリルイソシアヌレートを用いることにより、硬化のための重合開始剤を低減させることが可能となるなど、アルカリ現像性を改良することができる。
そのような硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。
露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1〜5000mJ/cm2、より好ましくは1〜1000mJ/cm2である。露光量が少ないと硬化しない。露光量が多いと急硬化のために変色することがある。好ましい硬化時間の範囲は30〜120秒、より好ましくは1〜60秒である。硬化時間が長いと、光硬化の速硬化の特徴が生かされない。
また溶剤除去および硬化物の物性向上の目的で、光硬化前後に熱を加えプリベークおよびアフターベークさせてもよい。硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の範囲は60〜400℃、より好ましくは90〜350℃である。
アルカリ現像によるパターニング形成について特に限定される方法はなく、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法により未露光部を溶解・除去し所望のパターン形成させることができる。
またこの時の現像液については、一般に使用するものであれば特に限定なく使用することができ、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの等を挙げることができる。
また水溶液濃度に関しては、露光部と未露光部のコントラストがつきやすいという観点より、25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下であることが好ましい。
硬化性樹脂組成物を硬化させるために添加される重合開始剤としては特に限定されないが、例えばカチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤などを使用することができる。
カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、又は熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。
陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えばアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びにII族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩などが挙げられる。
これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990及びUVR−6974(ユニオン・カーバイド社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI−85(デグッサ社)、SP−152及びSP−172(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI116(和光純薬工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)として商品として入手できる。
熱カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えばスルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、トリフルオロ酸塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素等のようなカチオン系又はプロトン酸触媒が用いることができる。
加熱によってカチオン種を発生するまでは高い安定性を持っているため潜在性硬化触媒と言える。置換基の種類やオニウム塩の陰イオンの種類により重合活性が変化し、特に、陰イオンについては、BF-<AsF6 -<PF6 -<SbF6 -<B(C6F5)4 -の順で重合活性が高くなることが知られている。この他、アルミニウム錯体とシラノール化合物、アルミニウム錯体とビスフェノールSなど特定のフェノール化合物がカチオン重合触媒になることが知られている。
また一方、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。例としては、サンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)がある。これらのカチオン重合開始剤の中で、芳香族オニウム塩が、取扱い性及び潜在性と硬化性のバランスに優れるという点で好ましい。
カチオン重合開始剤の使用量は、変性ポリオルガノシロキサン化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の量である。カチオン重合開始剤量が少ないと、硬化に長時間を要したり、十分に硬化した硬化物が得られない。開始剤量が多いと、開始剤の色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色や***したり、硬化物の耐熱耐光性を損なうために好ましくない。
ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線によりラジカル種を発生する、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤、又は熱によりラジカル種を発生する熱ラジカル重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、ビイミダゾール系化合物、α−ジケトン系化合物、チタノセン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物等が用いることができる。
アセトフェノン系化合物の具体例としては、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4'−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4'−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシー1−〔4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチループロパンー1−オン等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
オキシムエステル系化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
ベンゾイン系化合物の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
α−ジケトン系化合物の具体例としては、ジアセチル、ジベンゾイル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール等が挙げられる。
多核キノン系化合物の具体例としては、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
キサントン系化合物の具体例としては、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
トリアジン系化合物の具体例としては、1,3,5−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2'−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−ブロモ−4'−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−チオフェニルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
特に薄膜硬化性に優れるという観点より、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシー1−〔4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチループロパンー1−オン、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
特に硬化物が透明性に優れるという観点より、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノンが好ましい。
また熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物類、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類等が挙げることができる。
また、これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、変性ポリオルガノシロキサン化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部の量である。カチオン重合開始剤量が少ないと、硬化が不十分でアルカリ現像時にコントラストが得られない傾向がある。開始剤量が多いと、硬化膜自体が着色するために好ましくない。
光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上のおよびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。これら増感剤は、上記カチオン重合開始剤及び/またはラジカル重合開始剤等と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。
増感剤として添加する化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2, 6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10 −ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
これらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
このようにして得られる樹脂組成物は、種々の用途に用いることができる。例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素透過膜TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料の他、他樹脂等への添加剤などが挙げられる。
(陰イオンの定量)
前処理として、ダイアインスツルメンツ社製QF−02により、試料200mgを燃焼させ、抱水ヒドラジンを1滴含有した超純水25mLに吸収させた。50μLをダイオネクス社製イオンクロマトグラフ測定装置ICS−2000に注入し分析した。
(陽イオンの定量)
試料100mgをPTFE製分解容器に精秤し、超高純度硫酸および超高純度硝酸を加えて、マイルストーンゼネラル社製マイクロウェーブ分解装置MLS−1200MEGAで加圧酸分解し、分解液を50mLに定容した。これをアジレントテクノロジー社製Agilent 7500CXにより、ICP質量分析法で分析した。
1,3−ジアリルイソシアヌレート(未精製品)の無機イオン量は表1に示す。
(実施例1)
1,3−ジアリルイソシアヌレート7.5gに1,4−ジオキサン50g、ケイ酸アルミニウム(比表面積542m2/g、協和化学工業社製キョーワード700SEN−S)0.375gを加え、80℃油浴で加熱しながら一時間撹拌した。室温まで冷却後、ラヂオライトをろ過助剤に使用してろ過することにより不溶物をろ別し、ろ液より溶媒を減圧留去した。得られた1,3−ジアリルイソシアヌレート(収量7.3g、回収率97%)のイオン含有量を定量した。
(実施例2)
1,3−ジアリルイソシアヌレート7.5gにテトラヒドロフラン50g、ケイ酸アルミニウム(比表面積542m2/g、協和化学工業社製キョーワード700SEN−S)0.375gを加え、65℃油浴で加熱しながら一時間撹拌した。室温まで冷却後、ラヂオライトをろ過助剤に使用してろ過することにより不溶物をろ別し、ろ液より溶媒を減圧留去した。得られた1,3−ジアリルイソシアヌレート(収量7.3g、回収率97%)のイオン含有量を定量した。
(実施例3)
1,3−ジアリルイソシアヌレート7.6gに1,4−ジオキサン38gを加え撹拌後、ろ過した。得られたろ液にケイ酸アルミニウム(比表面積542m2/g、協和化学工業社製キョーワード700SEN−S)0.375gを加え、80℃油浴で加熱しながら一時間撹拌した。室温まで冷却後、ラヂオライトをろ過助剤に使用してろ過することにより不溶物をろ別し、ろ液より溶媒を減圧留去した。得られた1,3−ジアリルイソシアヌレート(収量7.4g、回収率97%)のイオン含有量を定量した。
(実施例4)
1,3−ジアリルイソシアヌレート7.5gに1,4−ジオキサン50g、水酸化アルミニウム(協和化学工業社製キョーワード200S)0.375gを加え、80℃油浴で加熱しながら一時間撹拌した。室温まで冷却後、ラヂオライトをろ過助剤に使用してろ過することにより不溶物をろ別し、ろ液より溶媒を減圧留去した。得られた1,3−ジアリルイソシアヌレート(収量7.4g、回収率99%)のイオン含有量を定量した。
(参考例1)
1,3−ジアリルイソシアヌレート10gに純水75gを加え30分間撹拌しリスラリー洗浄した。吸引ろ過により結晶を回収し、真空ポンプを用いて80℃1hで乾燥し、得られた1,3−ジアリルイソシアヌレート(収量9.7g、回収率97%)のイオン含有量を定量した。
(実施例5)
500mL四つ口フラスコにトルエン52.6g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン52.6gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート2.91g、実施例1の方法により精製した1,3−ジアリルイソシアヌレート5.49g、1,4−ジオキサン38.1g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0171gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了から1時間後に冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体27.85gを得た。
得られた無色透明の液体27.85gを100mL四つ口フラスコに入れ、トルエン111gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシド9.21gおよびトルエン9.2gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了から1時間後に冷却により反応を終了した。反応液を冷却し無色透明の液体の「樹脂組成物A」37gを得た。
(比較例1)
未精製品の1,3−ジアリルイソシアヌレートを用いた以外は、合成実施例1と同様にヒドロシリル化反応を行ったが、ゲル化し樹脂組成物は得られなかった。
本発明の実施例1〜4、比較例1および参考例1に係る1,3−ジアリルイソシアヌレートの無機イオン含有量を表1に示す。