位置検出用のセンサとして、可変抵抗式のセンサが用いられている。昨今、各種電気機器においてより細かな制御を行なう為に、従来よりも位置検出精度の良いセンサが求められている。
従来よりも位置検出精度の良い位置検出用のセンサを実現する為に、微小信号領域における出力の直線性であるマイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板が求められている。
ここで、マイクロリニアリティ特性について、図7を用いて説明する。図7は、マイクロリニアリティ特性を説明するためのグラフであり、直線的なスライド動作が可能なスライド型のセンサの場合について説明する。
可変抵抗式の位置検出用のセンサは、基板上に直線状に印刷形成された抵抗体の上を、金属板からなる摺動子が摺動する構造をしている。一般的な使い方として、抵抗体の両端に定格電圧を印加し、摺動子の摺動位置によって変化する出力電圧を摺動子から取り出す使い方が多い。また、出力電圧の特性は、摺動子の移動量に比例して変化する特性のものが多く、図7においても、そのような特性の例で示している。
図7に示すグラフでは、抵抗体パターンでの摺動子の摺動方向の長さLに対して定格電圧Vinを印加し、抵抗体パターン上を摺動する摺動子からの出力Vを縦軸に示し、抵抗体パターン上での摺動子の位置Xを横軸に示したものである。抵抗体の抵抗率が位置によらず一定であるという前提のもとでは、摺動子が抵抗体上の任意の点からΔXだけ移動したときの出力変化はVin/Lなる傾きを有する理想直線Pで示されるはずである。
理想直線Pにおいては、摺動子がA点からB点までΔXだけ移動した場合の基準出力変位はΔV=(ΔX/L)×Vinと表すことができるが、実際の出力Sは理想直線Pから外れる。次式に示すように、マイクロリニアリティ特性は、点A、Bでの実際の出力VA、VBの出力差VB−VAから基準出力変位の差分を求め、この差を印加電圧Vinに対する百分率で求めたものとして規定される。マイクロリニアリティ特性は0%に近いほど高精度である。また、高性能を要求される位置センサでは、実際の出力Sが理想直線Pに近い特に優れたマイクロリニアリティ特性が望まれる。
ただし、
VA:摺動子が抵抗体上の点Aにあるときの出力値
VB:摺動子が抵抗体上の点Bにあるときの出力値
Vin:抵抗体長さL方向への印加電圧
ΔX:点A、B間の距離
L :抵抗体長さ
次に、図8に示すような円弧形状に形成された抵抗体に摺動子が回転可能に装着される回転型のセンサの場合のマイクロリニアリティは次式のように定義されるが、その考え方は前記スライド型のセンサと同様である。図8は回転型のセンサの場合の抵抗基板を示す図である。
ただし、
Vin:印加電圧
ΔV:測定間の出力電圧差(=VB−VA)
Θ:電極間の角度
Δθ:∠Aと∠B間の角度差(測定パターン間角度)
従来の抵抗基板としては、下記の特許文献1に記載の抵抗基板が知られている。
以下、図9を用いて、特許文献1に記載の抵抗基板について説明する。図9は、抵抗基板100を示す図である。
特許文献1に記載のセンサに使用されている抵抗基板100は、図9に示すように、絶縁性を有した絶縁基板110の上面に、抵抗体120および集電体130が絶縁基板110の長手方向にそって平行に延設して印刷配置されており、それぞれ一端部には端子部150が配設されている。
抵抗体120の他端部からはリードパターン140が延設され、リードパターン140は抵抗体120を挟んで集電体130と反対側に抵抗体120および集電体130と平行に印刷配置されている。
また、リードパターン140の一端部には端子部150が配設されている。
抵抗体120、集電体130およびリードパターン140の一端部に配設された端子部150は絶縁基板110の下面側へ導出されている。
特許文献1に記載の抵抗基板100は、従来求められている位置検出精度であれば位置検出用のセンサの抵抗基板として問題なく使用できる。
しかしながら、従来よりも検出精度の良い位置検出が求められるセンサに用いると、抵抗基板100では満足できる位置検出精度が得られない。
これは、絶縁基板110の上面が平滑でない為、その表面に抵抗体120を直接印刷配置すると、絶縁基板110の上面の凹凸の影響で、センサの微小信号領域での出力に乱れが表れる(マイクロリニアリティ特性が悪くなる)ためである。
そこで、絶縁基板110の表面の凹凸の影響を無くすために、本出願人は、抵抗基板100の改善を試みた。以下、改善案について図10を用いて説明する。図10は抵抗基板100の改善案を示す図である。なお、図9で示した抵抗基板100と改善案とでは構造が違うが、容易に比較できるように、図10においても抵抗基板を抵抗基板100と記すとともに、同様の機能を持つ部位については図9で用いた名称および附番を用いている。
改善案では、図10に示すように、絶縁基板110の上面に絶縁性を有し絶縁基板110の上面よりも平滑な面が得られる絶縁層160を形成し、絶縁層160の上面に抵抗体120を形成する構造とした。
これにより、マイクロリニアリティ特性のよい抵抗基板が得ることが可能となった。
しかしながら、絶縁基板110の上面に絶縁層160を設け、絶縁基板110の絶縁性が高まったことで、従来よりも静電気が発生しやすくなり、埃などの異物を引き寄せやすくなってしまった。
異物が付いたままの状態で抵抗体120を形成すると、付着した異物の影響でマイクロリニアリティ特性の悪い抵抗基板100ができてしまい、抵抗基板100の歩留まりが悪くなるという問題が発生した。
本発明は、上述した課題を解決して、歩留まりが良く、マイクロリニアリティ特性に優れた抵抗基板およびその製造方法を提供するものである。
請求項1に記載の抵抗基板は、絶縁基板上に、摺動子が摺動する抵抗体パターンと集電体パターンとが離間して設けられると共に、前記抵抗体パターンの両端部にそれぞれ導通する一対の電極パターンが形成された抵抗基板において、前記一対の電極パターンの間をつなぐように、前記絶縁基板上に設けられた絶縁パターンを具備し、前記絶縁パターンの両端部は、前記一対の電極パターンの一部を露出させて露出部を形成した状態で、前記一対の電極パターン上に重ね合わされており、前記抵抗体パターンは、前記絶縁パターン上および前記絶縁パターンから露出した前記一対の電極パターンの前記露出部上に積層されている、という特徴を有する。
請求項2に記載の抵抗基板は、前記一対の電極パターンには、前記絶縁パターンを介して前記抵抗体パターンと対向する延出部が、前記抵抗体パターンの下面に沿うように延設されている、という特徴を有する。
請求項3に記載の抵抗基板は、前記延出部上に位置する前記抵抗体パターン上を、前記摺動子が摺動しない非摺動領域とした、という特徴を有する。
請求項4に記載の抵抗基板は、前記延出部上に位置する前記抵抗体パターン上を、前記摺動子が摺動する摺動領域に含ませた、という特徴を有する。
請求項5に記載の抵抗基板は、前記集電体パターンは、前記一対の電極パターンと同じ材料からなる、という特徴を有する。
請求項6に記載の抵抗基板は、前記絶縁基板は、ガラスエポキシ基板からなり、前記絶縁パターンはエポキシ樹脂からなる、という特徴を有する。
請求項7に記載の抵抗基板の製造方法は、絶縁基板上に、摺動子が摺動する抵抗体パターンと集電体パターンとが離間して設けられると共に、前記抵抗体パターンの両端部にそれぞれ導通する一対の電極パターンが形成された抵抗基板の製造方法において、前記絶縁基板上に、前記一対の電極パターンを離間した状態で印刷形成する第1工程と、前記一対の電極パターンの一部を露出させて露出部を形成すると共に、前記一対の電極パターン上に両端部が重ね合うように、前記絶縁基板上に絶縁パターンを印刷形成する第2工程と、前記絶縁パターン上および前記絶縁パターンから露出した前記一対の電極パターンの前記露出部上に前記抵抗体パターンが積層されるように、前記抵抗体パターンを印刷形成する第3工程と、を有する、という特徴を有する。
請求項8に記載の抵抗基板の製造方法は、前記第1工程は、前記一対の電極パターンから延出し前記絶縁パターンを介して前記抵抗体パターンと対向配置される延出部および前記集電体パターンを、前記一対の電極パターンと同じ材料にて、前記絶縁基板上に印刷形成する工程を含む、という特徴を有する。
請求項9に記載の抵抗基板の製造方法は、前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程は、前記絶縁基板が複数設けられる基板母材の複数個所に対して施され、前記第1工程には、前記基板母材の前記絶縁基板を構成しない箇所に、前記一対の電極パターンと同じ材料により、導電性を有するダミー導電パターンを印刷形成する工程を含んでおり、前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程が施された後に、前記絶縁基板を前記基板母材から分離する、という特徴を有する。
請求項1の発明によれば、絶縁パターンの下側に電極パターンが配設されていることから、絶縁パターンが印刷形成される前に電極パターンが形成されるものとなる。このため、電極パターンが形成された状態の絶縁基板は導電性が高められ、静電気の発生が抑制される。これにより、異物が付着しにくいものとなり、抵抗基板の歩留りが向上する。また、異物が付着しにくいことと抵抗体パターンのアンダーコート層として表面の平滑化が可能な絶縁パターンを有することから、マイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板を提供することができる、という効果を奏する。
請求項2の発明によれば、電極パターンに延出部を設けることにより、絶縁基板の導電性がより高められるので、静電気の発生を低減させることができる、という効果を奏する。
請求項3の発明によれば、延出部上に位置する抵抗体パターン上を摺動子が摺動しない非摺動領域としたことで、電極パターンに絶縁パターンを積層させることで形成される微小な段差上を摺動子が摺動することは無くなり、摺動領域において、摺動子と抵抗体パターンとの安定した摺接を確保することができる、という効果を奏する。
請求項4の発明によれば、一対の電極パターンの延出部を、両延出部同士が導通しない範囲で長く設けることができるので、絶縁基板の導電性をより高められ、静電気の発生を更に低減させることができる。また、摺動子の摺動範囲をより広く取ることができるので、絶縁基板の小型化を図ることが可能となる、という効果を奏する。
請求項5の発明によれば、集電体パターンを電極パターンと同時に印刷形成できるので、生産性が良くなる。また、集電体パターンも絶縁パターンより先に形成できるので、絶縁基板の導電性がさらに良くなり、静電気がさらに発生しにくくなり、絶縁パターンを印刷形成する際に、絶縁基板に異物が付着しにくいものとすることができる、という効果を奏する。
請求項6の発明によれば、エポキシ樹脂からなる絶縁パターンとガラスエポキシ基板からなる絶縁基板とは同種の材料であることから、両者の密着性が良い。また、印刷成形された絶縁パターンの表面は絶縁基板の表面よりも平滑に形成される。このため、絶縁パターン上に抵抗体パターンを印刷形成することで、抵抗体パターンを印刷形成した面の凹凸が原因のマイクロリニアリティの悪化は発生しにくくなる、という効果を奏する。
請求項7の発明によれば、電極パターンが絶縁パターンよりも先に形成されることで、絶縁パターンを印刷する時の絶縁基板は導電性が高められ、静電気の発生が抑制される。これにより、異物が付着しにくいものとなり、抵抗基板の歩留りが向上する。また、異物が付着しにくいことと抵抗体パターンのアンダーコート層として絶縁パターンを有することから、よりマイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板を製造することができる、という効果を奏する。
請求項8の発明によれば、第1工程において電極パターンに延出部を印刷形成するとともに、集電体パターンを印刷形成することで、絶縁基板の導電性がより高められ、静電気の発生をより低減させることができる。これにより、第2工程において、静電気による異物の付着が少なくなり、抵抗基板の歩留りが向上する。また、絶縁パターンを印刷形成する際に絶縁パターンに異物が付着しにくくなることで、さらにマイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板を提供することができる、という効果を奏する。
請求項9の発明によれば、第1工程で基板母材に導電性を有するダミー導電パターンを設けることで、基板母材(絶縁基板)の導電性がいっそう高められる。これにより、基板母材(絶縁基板)における静電気の発生をさらに抑制させることができ、第2工程で絶縁パターンを印刷する際に異物が付着しにくくなり、歩留りの更なる改善が可能となる。また、絶縁パターンを印刷形成する際に絶縁パターンに異物がさらに付着しにくくなることで、マイクロリニアリティ特性をより向上させた抵抗基板を得ることができる、という効果を奏する。
[第1実施形態]
以下に第1実施形態における抵抗基板1について説明する。
まず始めに本実施形態における抵抗基板1の構成について、図1ないし図2を用いて説明する。図1は抵抗基板1の構成を示す図であり、図1(a)は抵抗基板1を上面側から示した図であり、図1(b)は図1(a)に示す断面A−Aを示す図である。図2は、図1(b)に示すB部の拡大図である。
抵抗基板1は、図1(a)および図1(b)に示すように、絶縁性を有した絶縁基板11上に、導電性を有した摺動子BRが摺動する抵抗体パターン12と集電体パターン13とが離間して並列に設けられると共に、抵抗体パターン12の両端部にそれぞれ導通する一対の電極パターン14が形成されている。また、集電体パターン13および一対の電極パターン14にはそれぞれ接続部16が導通して形成されている。
絶縁基板11は、絶縁性を有したガラスエポキシ基板からなり、長方形状に形成されている。
抵抗体パターン12は、カーボン粒子およびバインダ樹脂としてのフェノール樹脂などを含む材料からなる。
集電体パターン13は、一対の電極パターン14と同じ材料である、銀粒子およびバインダ樹脂としてのフェノール樹脂などを含む材料からなる。
電極パターン14は、銀粒子およびバインダ樹脂としてのフェノール樹脂などを含む材料からなる。
絶縁パターン15は、絶縁性を有したエポキシ樹脂からなる。
接続部16は、集電体パターン13および電極パターン14と同じ材料である、銀粒子およびバインダ樹脂としてのフェノール樹脂などを含む材料からなる。
一対の電極パターン14は、絶縁基板11上に、絶縁基板11の長手方向の両端の近傍から、絶縁基板11の長手方向の内側に入った箇所にそれぞれ設けられ、長方形状に形成されている。
絶縁パターン15は、一対の電極パターン14の間をつなぐように直線状に形成され、絶縁基板11上に設けられている。また、絶縁パターン15の両端部は、一対の電極パターン14上に重ね合わされて設けられている。
抵抗体パターン12は、絶縁パターン15上および絶縁パターン15から露出した一対の電極パターン14の露出部14a上に積層され、直線状に形成されている。
なお、抵抗体パターン12の幅寸法は、電極パターン14の幅寸法よりも大きく、絶縁パターン15の幅寸法は、抵抗体パターン12の幅寸法よりも大きい。
また、一対の電極パターン14には、図2に示すように、絶縁パターン15を介して抵抗体パターン12と対向する延出部14bが、抵抗体パターン12の下面に沿うように延設されている。なお、図1および図2に示すように電極パターン14の幅寸法と延出部14bの幅寸法が同じ場合には、電極パターン14と延出部14bとの明確な境界は無い。図2においては説明を容易にするために、電極パターン14の露出部14aと延出部14bとを便宜的に分けている。すなわち、絶縁パターン15で覆われた電極パターン14の部分を延出部14bとし、絶縁パターン15から露出している部分を露出部14aとしている。
集電体パターン13は、図1(a)に示すように、絶縁基板11の長手方向に沿って、抵抗体パターン12、電極パターン14および絶縁パターン15に対して平行に絶縁基板11上に設けられている。
また、集電体パターン13は、抵抗体パターン12、電極パターン14および絶縁パターン15に対して、図1(a)に示す後側に直線状に形成されている。
接続部16は、第1接続部16a、第2接続部16b、第3接続部16c、およびリードパターン16dからなる。
第1接続部16aは、絶縁基板11の右端側に配置された電極パターン14の右側に配置され、絶縁基板11の右端側に配置された電極パターン14と導通している。
第2接続部16bは、集電体パターン13の右側に配置され、集電体パターン13と導通している。
リードパターン16dの一端は、絶縁基板11の左端側に配置された電極パターン14の左側に配置され、絶縁基板11の左端側に配置された電極パターン14と導通し、他端は第3接続部16cと導通している。
第1接続部16a、第2接続部16b、および第3接続部16cは、絶縁基板11の右端側に、後側から第2接続部16b、第1接続部16a、第3接続部16cの順に配置され、リードパターン16dは、絶縁基板11の長手方向に沿って、抵抗体パターン12、電極パターン14および絶縁パターン15に対して平行になるように、絶縁基板11の長手方向に沿って、抵抗体パターン12、電極パターン14および絶縁パターン15の前側に引き回されている。
なお、図1(a)、図1(b)および図2においては、説明を容易にするために図示していないが、集電体パターン13に含まれた銀のシルバーマイグレーション(銀移行)を防止するために、集電体パターン13は抵抗体パターン12と同じ材料からなるオーバーコートにより被覆されている。電極パターン14および接続部16についても同様であり、図示していないが、抵抗体パターン12と同じ材料によって覆われている。
次に抵抗基板1の製造方法について図3を用いて説明する。図3は、基板母材10への抵抗基板1およびダミー導電パターン17の配置例を示す図である。
抵抗基板1を製造する工程は、第1工程P1、第2工程P2および第3工程P3からなり、始めに第1工程P1を実施し、次に第2工程P2を実施し、最後に第3工程P3を実施することで、抵抗基板1が形成される。
なお、抵抗基板1は、図3に示すように、絶縁基板11が複数設けられる基板母材10の複数個所に対して第1工程P1、第2工程P2および第3工程P3が施され、第1工程P1、第2工程P2および前記第3工程P3が施された後に、絶縁基板11を基板母材10から分離することで形成される。
また、基板母材10の絶縁基板11(抵抗基板1)を構成しない箇所には、例えば、図3に示すように、導電性を有するダミー導電パターン17が形成されている。なお、ダミー導電パターン17と抵抗基板1とは導通していない。
第1工程P1は、絶縁基板11上に、一対の電極パターン14を離間した状態で印刷形成する工程である。より詳細には、カルビトール等の溶剤で溶かしたバインダ樹脂(例えば、フェノール樹脂)溶液中に銀粒子を混入させた導電ペーストを電極パターン14の形状にスクリーン印刷する。そして、印刷後の導電ペーストに対して、加熱処理を行い、固化した電極パターン14を得る。
また、第1工程P1は、一対の電極パターン14から延出し、絶縁パターン15を介して抵抗体パターン12と対向配置される延出部14b、接続部16、および集電体パターン13を、一対の電極パターン14と同じ材料(前記導電ペースト)にて、同時に絶縁基板11上にスクリーン印刷して加熱する印刷形成工程を含んでいる。
さらに、第1工程P1には、一対の電極パターン14と同じ材料(前記導電ペースト)により、同時にダミー導電パターン17をスクリーン印刷して加熱する印刷形成工程を含んでいる。
第2工程P2は、一対の電極パターン14上に両端部が重ね合うように、絶縁基板11上に絶縁パターン15を印刷形成する工程である。より詳細には、カルビトール等の溶剤に、例えば、エポキシ樹脂を溶かした樹脂ペーストを絶縁パターン15の形状にスクリーン印刷する。しかる後、樹脂ペーストに加熱処理を行い、固化した絶縁パターン15を得る。
第3工程P3は、絶縁パターン15上および電極パターン14の露出部14a上に抵抗体パターン12が積層されるように、抵抗体パターン12を印刷形成する工程である。詳細には、カルビトール等の溶剤で溶かしたフェノール樹脂等のバインダ樹脂溶液中に、カーボン粒子を混入させたカーボンペーストを抵抗体パターン12の形状にスクリーン印刷する。そして、印刷後のカーボンペーストに対して加熱処理を行い、固化した抵抗体パターンを得る。なお、各工程における加熱処理は、基板母材10を焼成炉に入れることにより行なう。
なお、第3工程P3は、抵抗体パターン12と同じ材料にて集電体パターン13、電極パターン14、および接続部16に対してオーバーコートを行なう工程を含んでいる。これは前述の通り、シルバーマイグレーション防止のために行なうものであり、図1(a)、図1(b)、図2および図3には説明を容易にするためにオーバーコートは図示していない。
前述の通り、第1工程P1、第2工程P2および第3工程P3が施された基板母材10からプレスによる抜き加工等により絶縁基板11を分離することで、抵抗基板1が形成される。
以下、抵抗基板1の使われ方について図1および図4を用いて簡単に説明する。図4は、摺動子BRの摺動領域を示す図である。
抵抗基板1の第1接続部16aと第3接続部16cとの間に電圧を印加し、図1(a)および図1(b)に示すように、摺動子BRを抵抗体パターン12上と集電体パターン13上とを摺動させることで、摺動子BRの位置にあわせて変化する出力電圧を第2接続部16bから得ることができる。
なお、本実施形態では、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を、摺動子BRが摺動しない非摺動領域とし、図4に示す範囲S1を摺動子BRの摺動領域とした。
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
本実施形態の抵抗基板1では、絶縁基板11上に、摺動子BRが摺動する抵抗体パターン12と集電体パターン13とが離間して設けられると共に、抵抗体パターン12の両端部にそれぞれ導通する一対の電極パターン14が形成された抵抗基板1において、一対の電極パターン14の間をつなぐように、絶縁基板11上に設けられた絶縁パターン15を具備し、絶縁パターン15の両端部は、一対の電極パターン14上に重ね合わされており、抵抗体パターン12は、絶縁パターン15上および絶縁パターン15から露出した一対の電極パターン14の露出部14a上に積層されている、構成とした。
これにより、絶縁パターン15の下側に電極パターン14が配設されていることから、絶縁パターン15が印刷形成される前に電極パターン14が形成されるものとなる。このため、電極パターン14が形成された状態の絶縁基板11は導電性が高められ、静電気の発生が抑制される。これにより、異物が付着しにくいものとなり、抵抗基板1の歩留りが向上する。また、異物が付着しにくいことと抵抗体パターン12のアンダーコート層として表面の平滑化が可能な絶縁パターン15を有することから、マイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板1を提供することができる、という効果を奏する。
さらに、絶縁パターン15の両端部は、一対の電極パターン14上に重ね合わされる構成としていることで、以下の様な理由から出力電圧特性やマイクロリニアリティ特性の部分的な乱れを防ぐことが出来る。図5(a)に示すように、絶縁パターン15の両端部が一対の電極パターン14上に重ならない構造とした場合には、製造時のバラツキによって、図5(b)に示すように、電極パターン14と絶縁パターン15との間に溝guができてしまうことが懸念される。電極パターン14と絶縁パターン15との間に溝guがある状態のまま抵抗体パターン12を形成すると、溝guに対応する部分の抵抗体パターン12に凹みdeが発生するため、凹みdeの上を摺動子BRが摺動したときに、出力電圧特性やマイクロリニアリティ特性の部分的な乱れが発生する。したがって、絶縁パターン15の両端部を、一対の電極パターン14上に重ね合わされる構造とすることで、製造時にバラツキがあっても、電極パターン14と絶縁パターン15との間に溝guができにくくなり、出力電圧特性やマイクロリニアリティ特性の部分的な乱れを防ぐことが出来る。
また、本実施形態の抵抗基板1では、一対の電極パターン14には、絶縁パターン15を介して抵抗体パターン12と対向する延出部14bが、抵抗体パターン12の下面に沿うように延設されている、構成とした。
これにより、電極パターン14に延出部14bを設けることにより、導電性の高い部分が増える。絶縁基板11の導電性がより高められるので、静電気の発生を低減させることができる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1では、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を、摺動子BRが摺動しない非摺動領域とした。
これにより、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を摺動子BRが摺動しない非摺動領域としたことで、電極パターン14に絶縁パターン15を積層させることで形成される微小な段差上を摺動子BRが摺動することは無くなり、摺動領域において、摺動子BRと抵抗体パターン12との安定した摺接を確保することができる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1では、集電体パターン13は、一対の電極パターン14と同じ材料からなる、構成とした。
これにより、集電体パターン13を電極パターン14と同時に印刷形成できるので、生産性が良くなる。また、集電体パターン13も絶縁パターン15より先に形成できるので、絶縁基板11の導電性がさらに良くなり、静電気がさらに発生しにくくなる。したがって、絶縁パターン15を印刷形成する際に、絶縁基板11に異物が付着しにくいものとすることができる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1では、絶縁基板11は、ガラスエポキシ基板からなり、絶縁パターン15はエポキシ樹脂からなる、ものとした。
これにより、エポキシ樹脂からなる絶縁パターン15とガラスエポキシ基板からなる絶縁基板11とは同種の材料であることから、両者の密着性が良い。また、印刷成形された絶縁パターン15の表面は絶縁基板11の表面よりも平滑に形成される。このため、絶縁パターン15上に抵抗体パターン12を印刷形成することで、抵抗体パターン12を印刷形成した面の凹凸が原因のマイクロリニアリティの悪化は発生しにくくなる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1の製造方法では、絶縁基板11上に、摺動子BRが摺動する抵抗体パターン12と集電体パターン13とが離間して設けられると共に、抵抗体パターン12の両端部にそれぞれ導通する一対の電極パターン14が形成された抵抗基板1の製造方法において、絶縁基板11上に、一対の電極パターン14を離間した状態で印刷形成する第1工程P1と、一対の電極パターン14上に両端部が重ね合うように、絶縁基板11上に絶縁パターン15を印刷形成する第2工程P2と、絶縁パターン15上および絶縁パターン15から露出した一対の電極パターン14の露出部14a上に抵抗体パターン12が積層されるように、抵抗体パターン12を印刷形成する第3工程P3と、を有する、工程とした。
これにより、電極パターン14が絶縁パターン15よりも先に形成されることで、絶縁パターン15を印刷する時の絶縁基板11は導電性が高められ、静電気の発生が抑制される。したがって、絶縁基板11には異物が付着しにくいものとなり、抵抗基板1の歩留りが向上する。また、絶縁基板11に異物が付着しにくいことと抵抗体パターン12のアンダーコート層として絶縁パターン15を有することから、抵抗体パターン12を印刷形成した面の凹凸が従来よりも小さくなり、よりマイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板1を製造することができる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1の製造方法では、第1工程P1は、一対の電極パターン14から延出し絶縁パターン15を介して抵抗体パターン12と対向配置される延出部14bおよび集電体パターン13を、一対の電極パターン14と同じ材料にて、絶縁基板11上に印刷形成する工程を含む、ものとした。
これにより、第1工程P1において、電極パターン14に延出部14bを印刷形成するとともに、集電体パターン13を印刷形成することで、絶縁基板11の導電性がより高められ、静電気の発生をより低減させることができる。これにより、第2工程P2において、静電気による異物の付着が少なくなり、抵抗基板1の歩留りが向上する。また、絶縁パターン15を印刷形成する際に絶縁パターン15に異物が付着しにくくなることで、さらにマイクロリニアリティ特性の良い抵抗基板1を提供することができる、という効果を奏する。
また、本実施形態の抵抗基板1では、第1工程P1、第2工程P2および第3工程P3は、絶縁基板11が複数設けられる基板母材10の複数個所に対して施され、第1工程P1には、基板母材10の絶縁基板11を構成しない箇所に、電極パターン14と同じ材料により、導電性を有するダミー導電パターン17を印刷形成する工程を含んでおり、第1工程P1、第2工程P2および前記第3工程P3が施された後に、絶縁基板11を基板母材10から分離する、こととした。
これにより、第1工程P1で基板母材10に導電性を有するダミー導電パターン17を設けることで、基板母材10(絶縁基板11)の導電性がいっそう高められる。これにより、基板母材10(絶縁基板11)における静電気の発生をさらに抑制させることができ、第2工程P2で絶縁パターン15を印刷する際に異物が付着しにくくなり、歩留りの更なる改善が可能となる。また、絶縁パターン15を印刷形成する際に絶縁パターン15に異物がさらに付着しにくくなることで、マイクロリニアリティ特性をより向上させた抵抗基板1を得ることができる、という効果を奏する。
[第2実施形態]
以下に第2実施形態における抵抗基板2について、図4を用いて説明する。
抵抗基板2は、製造工程も含めて第1実施形態の抵抗基板1と同一の抵抗基板であるが、摺動子BRの摺動領域が異なるものである。
第1実施形態においては、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を、摺動子BRが摺動しない非摺動領域とし、図4に示す範囲S1を摺動子BRの摺動領域としたが、第2実施形態においては、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を、摺動子BRが摺動する摺動領域に含ませたものとし、図4に示す範囲S2を摺動子BRの摺動領域とした。
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
本実施形態の抵抗基板2では、延出部14b上に位置する抵抗体パターン12上を、摺動子BRが摺動する摺動領域に含ませた、構成とした。
これにより、一対の電極パターン14の延出部14bを、両延出部14b同士が導通しない範囲で長く設けることができるので、絶縁基板11の導電性をより高められ、静電気の発生を更に低減させることができる。また、摺動子BRの摺動範囲をより広く取ることができるので、絶縁基板の小型化を図ることが可能となる、という効果を奏する。
以上のように、本発明の実施形態に係る抵抗基板を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
(1)第1実施形態において、延出部14bが電極パターン14から延出する長さは、摺動領域を確保でき、延出部14b同士が電気的に接続しない範囲で任意の長さに設定しても良い。
(2)第2実施形態において、延出部14bが電極パターン14から延出する長さは、延出部14b同士が電気的に接続しない範囲で任意の長さに設定しても良い。
(3)第1実施形態および第2実施形態において、延出部14bの幅寸法を電極パターン14の幅寸法と同じ寸法にしているが、それぞれの幅寸法が同一でなくても良い。
(4)第1実施形態および第2実施形態において、図1(a)に示すように、第1接続部16a、第2接続部16bおよび第3接続部16cを、抵抗基板1の右側に並べて配置している。しかし、例えば、第3接続部16cを抵抗基板1の左側に配置し、リードパターン16dを削除して、抵抗基板1の左側に配置された電極パターン14に直接接続する構造にするなど、接続部16の配置を変更してもよい。
(5)第1実施形態および第2実施形態において、抵抗基板1は、抵抗体パターン12、集電体パターン13および絶縁パターン15が直線状に形成されたものとしたが、例えば、図6に示すように、抵抗体パターン12、集電体パターン13および絶縁パターン15を円弧状に形成した場合でも同等の効果が得られる。