JP5787049B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
また、本発明では、劣化の進行が大きくなると、劣化対応制御により発電電圧値を回復させることで、再び大きな制限値の上限電流値での使用状態に回復、言い換えると最大出力の抑制に繋がる電流制限に安易にかかることを回避することができる。これにより、燃料電池セルの電力供給性能を長期に渡って最大限に使用することが可能となる。
このように、本発明では、上限電流値を用いた電流制限制御と、燃料増量補正による劣化対応制御を一つの制御で行うことができるので、簡単な制御の構成により、燃料電池セルの電力供給性能を最大限まで使用しつつ、燃料電池セルの耐久年数を大きく向上させることが可能となる。
このように構成された本発明によれば、電流制限制御と劣化対応制御とを、同じ制御パラメータである劣化度に基づいて実行できるので、制御が容易となる。また、劣化度が大きくなった場合に劣化対応制御を実行する構成であるので、燃料電池セルの温度上昇を伴う燃料増量補正の頻度を抑制することで、燃料電池セルの過剰な負担を軽減しつつ、燃料電池セルの劣化進行を抑制して、燃料電池セルの耐久性をより向上させることができる。
このように構成された本発明によれば、劣化対応制御により発電電圧値が回復することにより、上限電流値を基準上限電流値まで戻すことができる。しかしながら、劣化の進行度合によっては、上限電流値を基準上限電流値よりも小さな電流値まで戻すように、制限的な補正を加える。これにより、本発明では、簡単な制御により、劣化度に応じて燃料電池セルの電力供給性能を最大限に使用しつつ、燃料電池セルへの負担をより軽減し、耐用年数の延長を図ることができる。
このように構成された本発明によれば、劣化の進行が大きい後半期においては、さらに劣化が進行すると、高電圧側の発電電圧値に対する上限電流値の減少幅を低電圧側よりも大きくすることで、高電圧側での上限電流値がより大きく制限されるので、燃料電池セルの負荷をより低減して、さらなる劣化を抑制することができきる。
固体電解質型燃料電池の運転時間が経過するにしたがって、燃料電池セルの劣化が進行する。よって、本発明では、前半期に実行される劣化対応制御での増加補正量よりも、後半期に実行される劣化対応制御での増加補正量の方を大きく設定している。これにより、本発明では、燃料電池セルの劣化の進行度合に合わせて、劣化の抑制と発電性能確保を図りつつ、燃料電池セルの電力供給性能を最大限まで使用することが可能となる。
このように構成された本発明によれば、燃料電池モジュールの劣化が大幅には進行していない時点では、劣化対応制御を実行せずに劣化抑制制御を実行して劣化の進行を抑制する。これにより、燃料電池へ燃料増による負担をかけることなく、また、燃料増による燃料利用率の低下を招くことなく、燃料電池セルの耐久年数の延長を図ることができる。
このように構成された本発明によれば、劣化がある程度進行するまでは電流制限制御のみで劣化の進行を抑制し、それでも劣化がある程度まで進行した場合には、劣化対応制御による燃料増により発電電圧値を回復させ、この状態でさらに劣化が進行した場合に、劣化抑制制御により上限値を小さい値に変更することで更なる劣化を抑制する。これにより、劣化の進行度合に応じて劣化の進行を抑制する制御を行うことにより、燃料利用率の低下を抑えると共に、燃料電池セルの電力供給性能を最大限まで使用しながら、燃料電池セルの耐久年数の延長を図ることができる。
このように構成された本発明によれば、劣化が相当程度まで進行した場合は、劣化対応制御の燃料増による負担をかけることなく、電流制限制御を実行することで、燃料電池セルの耐久年数の延長を図ることができる。
このように構成された本発明によれば、第3の劣化度が検出された後においては、劣化対応制御を実行することなく、劣化抑制制御を実行することで、燃料電池セルの耐久年数の延長を図ることができる。
また、本発明では、劣化抑制制御により、劣化の進行に応じて、上限電流値がより小さい値に変更され、出力電流値の上限値がより制限される。これにより、劣化の進行に応じて燃料電池モジュールからの過剰な電流取り出しを制限することができ、燃料電池セルの劣化進行を抑制して、燃料電池セルの耐久性をより向上させることができる。
このように、本発明では、上限電流値を用いた電流制限制御と、上限電流値自体の制限的な変更を行う劣化抑制制御とを行うことにより、燃料電池セルの耐久年数を大きく向上させることが可能となる。
また、燃料電池セルの劣化は、固体電解質型燃料電池の運転時間が経過するにしたがって進行する。よって、本発明では、劣化の進行が大きい後半期に実行される劣化抑制制御よりも、劣化の進行が軽微な前半期に実行される劣化抑制制御における上限電流値からの減少補正量を小さく設定している。これにより、本発明では、燃料電池セルの劣化の進行度合に合わせて、簡単な制御で燃料電池セルの耐久年数の延長と発電性能維持の両立を的確に図ることができる。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
まず、図9乃至図12を参照して、固体電解質型燃料電池1の通常運転動作を説明する。図9は、本実施形態の固体電解質型燃料電池の運転時の動作を示すタイムチャートである。図10は、制御部110に入力される要求発電量と、要求発電量を生成するために必要な燃料供給量の関係の一例を示すグラフである。図11は、要求発電量の変更に対する燃料供給量の時間的変化の一例を示すグラフである。図12は、本実施形態による燃料電池モジュールの出力動作点を示すグラフである。
なお、図10及び図11は、燃料供給量に関するものであるが、空気供給量、水供給量も、要求発電量に応じて、同様に変更される。
劣化がない状態では、燃料電池モジュール2の出力動作点は、図12の曲線P1上を移動する。すなわち、制御部110が、曲線F0(図10)に基づいて要求発電量に対する燃料供給量を決定すると、劣化がない状態では、曲線P1(図12)上の動作点で特定される出力電力をインバータ54に対して供給可能である。
なお、図12の曲線Q1,Q2,Q3は、それぞれ出力電力が700W,630W,590W(それぞれ変換効率90%)となる曲線を示している。
図12の曲線P2及びP3は、劣化状態における燃料電池モジュール2の出力を示している。劣化状態では同じ作動条件(燃料供給量、空気流量、水流量等)で燃料電池モジュール2を作動させた場合、より劣化していない状態と比較すると、発電電圧値が低下する。したがって、図12において、曲線P1よりも曲線P2及びP3は下側に位置する。また、曲線P3の方が、曲線P2よりも劣化が進行した状態を示している。曲線P3よりもさらに劣化が進行すると、曲線P3よりも下側に位置する曲線(図示せず)に動作点が移動する。
したがって、要求発電量が590W〜700Wの間では、動作点は、曲線P2上で曲線Q1との交点(動作点R3),曲線Q3との交点(動作点R4)との間を動く。例えば、要求発電量が700Wの場合、制御部110は、曲線Q1(変換効率90%)と交差する動作点R3(約105V、約7.6A)で燃料電池モジュール2から出力させるように、インバータ54を制御する。動作点R3では、動作点R1と比べて、より小さい電圧値及びより大きい電流値となる。すなわち、劣化が進行すると、同じ電力を出力するための引き出し電流は、より大きな電流値となる。
また、図12には、曲線P3と曲線Q1との交点が動作点R5で示され、曲線P3と曲線Q3との交点が動作点R6で示されている。
電流制限ラインL1は、各発電電圧値における基準上限電流値を規定している。基準上限電流値は、固体電解質型燃料電池1の製造時に設定された基準となる上限電流値であり、使用を開始したときに設定されているものである。
また、電流制限ラインL2〜L5は、各発電電圧値における、劣化度に応じた上限電流値をそれぞれ規定している。
なお、本実施形態では、理解の容易のため、電流制限ラインL1〜L5の間隔を広く設定しているが、これら電流制限ラインの間隔をより狭く設定することが可能である。また、本実施形態では、5本の電流制限ラインを設定しているが、1本以上の任意の数に設定してもよい。
一方、電流制限ラインL1は、曲線P2上の動作点R3で曲線P2と交差するが、この動作点R3は、定格電力(700W)に対応する動作点である。したがって、燃料電池モジュール2が曲線P2上の動作点で動作している場合は、定格運転時のみ動作点R3で電流制限ラインL1により制限を受ける。このとき、取り出し電流は約7.6Aに制限される。
このように、電流制限ラインL1(及びL2〜L5)は、劣化が進行して発電電圧値が低下するほど、取り出し電流の上限値が小さくなるように設定されている。これにより、劣化に伴って燃料電池セルユニット16内で過剰な電流が流れることが防止され、更なる劣化を抑制することができる。
電流制限ラインL1からL2に変更される場合、取り出し電流の上限値は、例えば、曲線P1に相当する無劣化状態では約0.2Aだけ減少補正され、曲線P3に相当する劣化状態では約0.3Aだけ減少補正され、発電電圧値110Vでは約0.3Aだけ減少補正される。また、電流制限ラインL2からL3に変更される場合、取り出し電流の上限値は、曲線P1に相当する無劣化状態では約0.4Aだけ減少補正され、曲線P3に相当する劣化状態では約0.7Aだけ減少補正され、発電電圧値110Vでは約0.9Aだけ減少補正される。
電流制限ラインL3から電流制限ラインL4に変更される場合、取り出し電流の上限値は、例えば、曲線P1に相当する劣化状態では約1Aだけ減少補正され、曲線P3に相当する劣化状態では約0.9Aだけ減少補正される。また、発電電圧値110Vでは約1.8Aだけ減少補正され、発電電圧値105Vでは約1.6Aだけ減少補正される。
また、電流制限ラインL4から電流制限ラインL5に変更される場合、取り出し電流の上限値は、曲線P1及び曲線P3に相当する劣化状態で約1Aだけ減少補正される。また、発電電圧値110Vでは約2.0Aだけ減少補正され、発電電圧値105Vでは約2.0Aだけ減少補正される。
なお、固体電解質型燃料電池1の使用開始時には、制限電流ラインとしてL1(基準上限電流値)が設定され、後述する劣化判定数及び劣化対応数がゼロに設定されており、制御部110はこれらをメモリに記憶している。
発電電圧値が閾値電圧値以上である場合(ステップS1;No)、劣化がこの処理の実行時点での許容範囲内であるので、制御部110は、劣化判定数をインクリメントすることなく処理を終了する。
一方、発電電圧値が閾値電圧値より小さい場合(ステップS1;Yes)、この処理の実行時点での許容範囲を超える劣化が検出されたので、制御部110は、劣化判定数を1だけインクリメントし、ステップS2へ移行する。
例えば、本実施形態では、劣化判定制御において、燃料電池モジュール2の劣化の進行度合にかかわらず、閾値電圧値を固定値に設定することで処理を簡単化しているが、劣化の進行度合に応じて閾値電圧値を変更してもよい。例えば、電流制限ラインL1,L3,L3,・・・を使用している状態では、それぞれ閾値電圧値として100V,102V,104,・・・を使用してもよい。
さらには、劣化判定制御として、発電温度センサ142等により、燃料電池モジュール2内の温度を測定し、この温度に基づいて、燃料電池モジュール2の劣化を判定してもよい。
劣化判定数が2でない場合(ステップS2;No)、劣化の誤検出の可能性があるので、制御部110は、劣化判定数をゼロリセットすることなく処理を終了する。
一方、劣化判定数が2である場合(ステップS2;Yes)、制御部110は、実質的な劣化が検出されたので(劣化検出数は2)、劣化判定数をゼロリセットし、ステップS3へ移行する。固体電解質型燃料電池1の使用開始時には、劣化判定数はゼロであるので、発電電圧値が閾値電圧値を2回、下回った場合に、ステップS3へ移行する。本実施形態では、許容範囲を超える劣化が2回検出された場合に、劣化であると判定されるので、劣化の誤検出を防止することができる。なお、2回目の劣化が検出されるのは、固体電解質型燃料電池1の使用開始から数年以上(例えば、10年)経過した時点である。
劣化対応数がゼロである場合(ステップS3;Yes)、すなわち使用開始から実質的な劣化が検出された場合(一例として第1の劣化度の検出に相当)、制御部110は、劣化対応制御を実行し(ステップS4)、処理を終了する。
そして、劣化により低下していた発電電圧値の回復により、燃料電池モジュール2の出力動作点は、曲線P1又はその付近まで回復し、定格運転(700W)を確保することができる。例えば、曲線P2に対応する劣化状態よりも劣化が進行していた場合は、再び、定格運転が可能になる。
電流制限ラインL3が設定されていない場合(ステップS5;No)、制御部110は、現在の電流制限ラインとしてL4又はL5が設定されているか否かを判定する(ステップS6)。
このように、本実施形態では、ステップS1、S2、S5〜S7の処理において、劣化が検出されることに基づいて、電流制限ラインをより制限されたものへ変更することで、更なる劣化を抑制するように構成されている。
なお、劣化判定制御により劣化が検出された場合、制御部110は、後に検出された劣化の方が劣化度が大きいと判定する。したがって、制御部110は、より制限的な電流制限ラインが使用されているときの方が、劣化度が大きいと判定し、また、劣化対応制御の実行回数が多くなるほど、劣化度がより大きいと判定する。
劣化対応数が1の場合(ステップS8;Yes)、制御部110は、劣化対応制御を実行し(ステップS9)、処理を終了する。
ステップS9で実行される劣化対応制御では、燃料供給量が3%増量補正され、劣化対応数が1だけインクリメントされる。また、燃料増量補正による発電電圧値の回復に伴い、電流制限ラインが、電流制限ラインL3から、基準上限電流値を規定する電流制限ラインL1(一例として第1の上限電流値に相当)に戻される。
運転開始からステップS9の劣化対応制御が実行されるまでには、初回の劣化対応制御(ステップS4)により発電電圧値の回復が図られ、更なる劣化の進行に応じて、劣化の進行を抑制すべく劣化抑制制御(ステップS7)により電流制限ラインがL1からL2を経てL3に変更されている。
このような状態において、さらに劣化が検出されたので、2回目の劣化対応制御(ステップS9)による燃料供給量の増量補正により、燃料電池モジュール2の発電電圧値の回復が図られる。
そして、発電電圧値の回復により、燃料電池モジュール2の出力動作点は、曲線P1付近まで再び回復する。これにより、燃料電池モジュール2からの出力電力が回復し、制御部110は電流制限ラインをL1まで戻すことができる。なお、出力動作点が曲線P2以上に回復すれば、再び定格電力が供給可能となる。
具体的には、ステップS10で実行される劣化対応制御では、燃料供給量が5%増量補正され、劣化対応数が1だけインクリメントされる。よって、ステップS10では、制御部110は、図10の曲線F2が使用されている場合には(劣化対応数=2)、燃料供給量を曲線F3に変更し、曲線F3が使用されている場合には(劣化対応数=3)、燃料供給量を曲線F4に変更し、曲線F4が使用されている場合には(劣化対応数=4)、燃料供給量を曲線F5に変更し、曲線F5が使用されている場合には(劣化対応数=5)、燃料供給量を曲線F6に変更する。
なお、本実施形態では、ステップS9及びS10において、劣化対応制御による燃料供給量の増量補正を計6回実施するが、これはステップS9及びS10でそれぞれ任意の回数(1回、2回、・・・)実施するように変更することができる。また、ステップS10では、燃料供給量の補正量が一定であるが、劣化対応数が増えるにしたがって、燃料供給量の補正量を徐々に大きくしていってもよい。
ステップS9を実施後に、さらに劣化が進行して電流制限ラインがL1からL2を経てL3に変更されている状態で、さらに大きな劣化が検出された場合には、上限電流値を基準上限電流値(一例として第1の上限電流値に相当)よりも小さな電流値である電流制限ラインL2(一例として第2の上限電流値に相当)まで戻すように抑制側に補正を加えることで、簡単な制御により、燃料電池セルへの負担をより軽減して、耐用年数の延長を図ることができる。
劣化対応数が5以下(実際は3〜5)の場合(ステップS11;No)、制御部110は、処理を終了する。
ステップS10が繰り返される毎に、劣化対応数が増加するので、劣化対応数が6になるまでは、ステップS1〜S7、S8、S10、S11が繰り返される。
これにより、燃料を増量補正して発電電圧値を回復させ(ステップS10)、この状態で、劣化が判定される毎に(ステップS1,S2)、電流制限ラインをL2からL3へ変更する(ステップS7)。これを繰り返すことにより、燃料電池モジュール2の電力供給能力を最大限に使用しつつ、耐用年数を延長することができる。
ステップS12を実施するまでに、劣化対応制御(ステップS9、S10)により、合計26%の燃料増量補正を実施している。この燃料増量補正に応じて発電室10内の温度が上昇しているので、ステップS12で最終の燃料増量補正が実施される。
また、ステップS12では、劣化抑制制御として、電流制限ラインがL4に変更される。電流制限ラインL4に設定されることで、低電圧側よりも高電圧側で取り出し電流値がより大きく減少補正されるので、取り出し電流値の最大値がより低く設定される。
電流制限ラインL4が使用されることにより、燃料電池モジュール2の出力電力が制限されるが、燃料電池モジュール2の耐用年数を延ばすことが可能となる。
電流制限ラインがL4又はL5であるので(ステップS6;Yes)、制御部110は、発電電圧値が第2の閾値電圧値(例えば、90V)より小さいか否かを判定する(ステップS13;劣化判定制御)。
発電電圧値が第2の閾値電圧値以上である場合(ステップS13;No)、制御部110は、発電電圧値が第3の閾値電圧値(例えば、95V)より小さいか否かを判定する(ステップS14;劣化判定制御)。第3の閾値電圧値は、第1の閾値電圧値(100V)と第2の閾値電圧値(90V)の間に設定されている。
一方、発電電圧値が第3の閾値電圧値より小さい場合(ステップS14;Yes)、制御部110は、更に大きな劣化が進行していると判断し(一例として第3の劣化度の検出に相当)、最終劣化抑制制御として、劣化対応数を1だけインクリメントし、最終の劣化抑制制御として、電流制限ラインをL5に設定し(ステップS15)、処理を終了する。電流制限ラインL5が使用されることにより、さらに上限電流値が制限されるので、燃料電池モジュール2の劣化がさらに抑制される。なお、この場合、劣化対応制御は実行されない。
なお、電流制限ラインL5に設定された後、さらに所定の劣化度(例えば、発電電圧値<93V,92V,91V,・・・)が検出された場合に、劣化抑制制御をさらに実行して、より制限的な電流制限ライン(L6,L7,L8,・・・)に変更するように構成してもよい。
このように、劣化が相当程度進行した段階では、燃料供給量を増量補正することなく、取り出し電流値をより制限し、小さい出力電力を供給する態様で使用を継続することで、燃料電池モジュール2の耐用年数の延長を図ることができる。そして、発電電圧値が第2の閾値電圧値よりも小さくなった場合には、製品寿命が尽きたものとして、異常対応処理が行われる。
図14の実施形態では、電流制限ラインL1が使用されている状態で劣化が検出された場合に、ステップS4による初回の劣化対応制御が実行されるように構成されている。このため、この劣化対応制御での燃料増量補正により、劣化抑制制御を実行する前に、燃料効率が低下する。また、固体電解質型燃料電池1に、劣化対応制御による燃料増量補正を実行する性能的な余裕が少ない場合には、劣化対応制御の実行回数を少なくすることが望ましい。
2 燃料電池モジュール
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット(固体電解質型燃料電池セル)
18 燃焼室
20 改質器
28 水流量調整ユニット
38 燃料流量調整ユニット(燃料供給手段)
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット(酸化剤ガス供給手段)
54 インバータ
84 燃料電池セル
110 制御部
126 電力状態検出センサ(電圧値検出手段、電流値検出手段)
Claims (10)
- 複数の固体電解質型燃料電池セルに燃料と酸化剤ガスを供給して発電を行う固体電解質型燃料電池であって、
前記固体電解質型燃料電池セルを有する燃料電池モジュールと、
この燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料電池モジュールに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、
前記燃料電池モジュールによる発電電圧値を検出する電圧値検出手段と、
前記燃料電池モジュールによる出力電流値を検出する電流値検出手段と、
前記燃料供給手段から供給される燃料供給量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記発電電圧値が小さいほど上限電流値を小さい値に設定し、前記出力電流値が前記上限電流値を超えないように前記燃料電池モジュールの出力電力を制御する電流制限制御を実行し、
前記制御手段は、前記燃料電池モジュールの劣化判定を行い、この劣化判定に基づいて、劣化により低下した発電電圧値を回復させるように前記燃料供給手段を制御して燃料供給量を増量補正する劣化対応制御を実行するように構成されており、
前記制御手段は、前記劣化判定に基づいて、前記電流制限制御で用いる各発電電圧値に対する前記上限電流値を、前記劣化判定時に使用していた上限電流値よりも小さい値に変更する劣化抑制制御を実行し、
前記制御手段は、前記劣化抑制制御を前記固体電解質型燃料電池の製品寿命内で複数回実行するように構成されており、
前記劣化抑制制御は、前半期の劣化抑制制御の方が後半期の劣化抑制制御より、前記上限電流値の減少補正量が小さくなるように設定されることを特徴とする固体電解質型燃料電池。 - 前記制御手段は、前記劣化判定により、所定の劣化度が検出されるまでは、前記劣化対応制御を実行することなく前記電流制限制御を実行し、前記所定の劣化度が検出された場合に、前記劣化対応制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記劣化対応制御の実行に伴って、各発電電圧値における前記上限電流値を、前記固体電解質型燃料電池の使用を開始したときに設定されていた上限電流値である基準上限電流値まで、又は、この基準上限電流値よりも小さな電流値まで戻すことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記後半期において、高電圧側の発電電圧値における減少補正量が、低電圧側の発電電圧値における減少補正量よりも大きくなるように設定される劣化抑制制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記劣化対応制御を前記固体電解質型燃料電池の製品寿命内で複数回実行するように構成されており、後半期に実行される前記劣化対応制御における燃料供給量の増加補正量が、前半期に実行される前記劣化対応制御における燃料供給量の増加補正量よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記劣化抑制制御を所定回数実行するまでは、前記劣化対応制御を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記劣化判定に基づいて、第1の劣化度が検出されるまでは、前記劣化対応制御及び前記劣化抑制制御を実行せずに前記電流制限制御を実行し、前記第1の劣化度が検出された場合には、前記劣化対応制御を実行し、その後、前記第1の劣化度よりも劣化度が大きい第2の劣化度が検出された場合には、前記劣化抑制制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記第2の劣化度が検出された後に、前記第2の劣化度よりも劣化度が大きい第3の劣化度が検出された場合は、前記劣化対応制御を実行せず、前記電流制限制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記制御手段は、前記第3の劣化度が検出された後は、前記劣化判定に基づいて、前記劣化抑制制御を更に実行するが、前記劣化対応制御を実行しないことを特徴とする請求項8に記載の固体電解質型燃料電池。
- 複数の固体電解質型燃料電池セルに燃料と酸化剤ガスを供給して発電を行う固体電解質型燃料電池であって、
前記固体電解質型燃料電池セルを有する燃料電池モジュールと、
この燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料電池モジュールに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、
前記燃料電池モジュールによる発電電圧値を検出する電圧値検出手段と、
前記燃料電池モジュールによる出力電流値を検出する電流値検出手段と、
前記燃料供給手段から供給される燃料供給量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記発電電圧値が小さいほど上限電流値を小さい値に設定し、前記出力電流値が前記上限電流値を超えないように前記燃料電池モジュールの出力電力を制御する電流制限制御を実行し、
前記制御手段は、前記燃料電池モジュールの劣化判定を行い、この劣化判定に基づいて、前記電流制限制御で用いる各発電電圧値に対する前記上限電流値を、前記劣化判定時に使用していた上限電流値よりも小さい値に変更する劣化抑制制御を実行し、
前記制御手段は、前記劣化抑制制御を前記固体電解質型燃料電池の製品寿命内で複数回実行するように構成されており、
前記劣化抑制制御は、前半期の劣化抑制制御の方が後半期の劣化抑制制御より、前記上限電流値の減少補正量が小さくなるように設定されることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
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