JP5778045B2 - 同期モータの駆動装置、及びこれを用いた冷凍装置、空気調和機、冷蔵庫、並びに同期モータの駆動方法 - Google Patents
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Description
同期モータを適切に駆動させるには、回転子の位置に応じて電機子巻線に印加する電圧の位相、振幅、及び周波数を制御する必要がある。つまり、同期モータの制御を行う際に、回転子の位置を検出又は推定することが必要となる。
位置センサレス駆動方式の同期モータを用いることによって、さまざまな設置環境に対応できるとともに、位置センサを省略するぶん安価になるという利点がある。
そして、前記制御装置は、電圧指令値の補正量と予め設定された所定値とを比較することによって、同期モータの脱調を検出する。
これは、位置センサレスの同期モータでは、通常の回転(位置センサレスモード)においては、駆動用のインバータ電流などに基づいて軸誤差などを算出し、さらに回転子の位置を推定することができるのに対して、回転子が停止状態となっている起動時においては、前記回転子の位置を推定することができないためである。
<同期モータを用いた冷凍装置のシステム構成>
以下において、本実施形態に係る同期モータの駆動装置を、冷凍装置の圧縮機などに用いる場合について説明する。図1は、同期モータの駆動装置を用いた冷凍装置のシステム構成図である。
図1に示すように冷凍装置Sは、室内ユニットSiと、室外ユニットSoと、を備えている。
室内ユニットSiは、膨張弁3と、室内熱交換器4と、室内ファン4aと、入出力手段6と、室内制御装置100aと、を備えている。また、室外ユニットSoは、圧縮機1と、室外熱交換器2と、室外ファン2aと、アキュムレータ5と、室外制御装置100bと、を備えている。
なお、アキュムレータ2は、その内部に冷媒液を貯留し、圧縮機1を液圧縮から保護するために設置されている。
図2は、モータ駆動装置の回路構成を示す説明図である。図2に示す同期モータ15は、前記した圧縮機1、室外ファン2a、及び室内ファン4aに接続されているものとし、制御装置100は室内制御装置100a及び室外制御装置100bを含む任意の制御装置であるものとする。
図2に示すモータ駆動装置10は、三相交流電源11から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、さらに、制御装置100からの指令信号に従って所定の振幅・位相・周波数の三相交流電圧に変換するものである。
また、電圧センサ16はコンデンサC1と並列に接続され、コンデンサC1の端子間電圧を検出して、その電圧値Vstを制御装置100に出力するようになっている。ちなみに、当該電圧値Vstが予め定められた所定値以上である場合に、制御装置100は、後記するベクトル制御処理を開始する。
なお、ベクトル制御処理に関する図4には、電圧値Vstを記載していない。
なお、図2に示すモータ駆動装置10では、スイッチング素子S1〜S6としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いている。
そして、制御装置100は、電圧センサ16から入力される電圧値Vstが所定値以上である場合に、母線電流の検出値Istに基づいたベクトル制御処理を開始して同期モータ15への電圧指令値を算出し、さらにPWM制御に基づいてそれぞれのスイッチング素子S1〜S6のON/OFFを制御する。
図3に示すiuはu相巻線15uに流入する電流値を示し、vuはu相巻線の電圧を示している。同様に、iv,vvはv相巻線15vの電流・電圧をそれぞれ示し、iw,vwはw相巻線15wの電流・電圧をそれぞれ示している。ちなみに、u相巻線15u、v相巻線15v、及びw相巻線15wは、隣り合う巻線とのなす角が略120°となるように設置されている。
図4は、制御装置におけるベクトル制御処理に関する機能ブロック図である。なお、以下のベクトル制御処理は、制御装置100が備えるCPU(Central Processing Unit:図示せず)が記憶手段(図示せず)に記憶されているプログラムを読み出して展開することにより実行される。
なお、制御装置100は図4に示す構成に加えて、入出力手段6(図1参照)から入力される信号や、軸ロック検出部116から入力される異常検出信号に応じて、後記する回転速度指令値ω*などを制御する「上位の制御部」(図示せず)を備えている。
位相演算部105は、切替器115で選択された回転速度指令値ω1*を積分することによって得られる位相推定値θdcを算出し、3相/2軸変換部102と、2軸/3相変換部111と、にそれぞれ出力する。
d軸電流指令値生成部108は、後記する位置センサレスモードにおいてd軸電流指令値Id *2を生成し、切替器113を介して電圧指令値演算部110に出力する。
電圧指令値演算部110は、dc軸電流検出値Idcと、qc軸電流検出値Iqcと、dc軸電流指令値Idc *と、qc軸電流指令値Iqc *と、回転速度指令値ω1*とに基づいて、dc軸電圧指令値Vdc *及びqc軸電圧指令値Vqc *を算出する。
減算器110aは、切替器113(図4参照)を介して入力されるdc軸電流指令値Idc *と、3相/2軸変換部102(図4参照)から入力されるdc軸電流検出値Idcとの差を算出して、d軸電流制御部110bに出力する。
d軸電流制御部110bは、減算器110aから入力されるdc軸電流指令値Idc *とdc軸電流検出値Idcとの差を用いて、ベクトル演算に用いる第2のdc軸電流指令値Idc **を算出し、ベクトル演算部110eに出力する。
q軸電流制御部110dは、減算器110cから入力されるqc軸電流指令値Iqc *とqc軸電流検出値Iqcとの差を用いて、ベクトル演算に用いる第2のqc軸電流指令値Iqc **を算出し、ベクトル演算部110eに出力する。
なお、(式4)、(式5)において、r*は制御系のモータ巻線抵抗設定値であり、Ld *は同期モータ15のd軸インダクタンス設定値であり、Lq *は同期モータ15のq軸インダクタンス設定値であり、Ke*は制御系のモータ誘起電圧定数設定値である。
なお、前記したそれぞれの設定値は、制御装置100の記憶手段(図示せず)に予め記憶されている。
なお、(式6)、(式7)に示すVα,Vβは、静止二相交流座標系(α−β座標系)における各相の電圧値である。
これによって、同期モータ15の駆動を制御することができる。
同様に、電流指令値演算部109において算出されたq軸電流指令値Iq *1が、切替器114を介して電圧指令値演算部110に入力される。
また、回転速度指令値ω*が、切替器115を介して位相演算部105に入力される。
さらに、切替器115を介してPLL回路104から位相演算部105に回転速度推定値ωmが出力される。
そして、軸ロック検出部116は、算出した入力有効電力Piが所定の閾値である軸ロック有効電力判定値P1より小さい場合に同期モータ15において軸ロックが発生していると判断し、上位の制御部(図示せず)に異常検出信号Saを出力する。
ちなみに、軸ロックとして、例えば、圧縮機1(図1参照)がスクロール式の圧縮機である場合に、旋回スクロール羽根(図示せず)と固定スクロール羽根(図示せず)とが噛み合ってしまい、起動時において回転子が回らなくなる場合がある。
軸ロック検出部116は、図4に示すdc軸電圧指令値Vdc *及びqc軸電圧指令値Vqc *と、3相/2軸変換部102から入力されるdc軸電流検出値Idcと、qc軸電流検出値Iqcとを用いて、以下に示す(式8)から同期モータ15の入力有効電力Piを算出する。
なお、(式9)においてVdcは脱調時に同期モータ15にかかるd軸電圧であり、r*は制御系のモータ巻線抵抗設定値であり、ω1*は回転速度指令値であり、Keはモータ誘起電圧設定値であり、Ldはd軸インダクタンス設定値であり、Lqはq軸インダクタンス設定値である。
また、dc軸電流検出値Idcの定常値Idcdは、脱調時に同期モータ15に流れる電流の推定値であり、同期モータ15に発生する起電力(ω1 *Ke*)を、電機子巻線のインダクタンス(ω1 *L)で除した値で近似している。
ステップS101において軸ロック検出部116は、起動時刻から所定時間t0が経過したか否かを判断する。なお、同期モータ15の起動は、例えば、入出力手段6(図1参照)から入力されるON信号に基づいて判断する。また、所定時間t0は予め定められた値(例えば、10sec)であり、記憶手段(図示せず)に記憶されている。
起動時刻から所定時間t0が経過した場合(S101→Yes)、軸ロック検出部116の処理はステップS102に進む。起動時刻から所定時間t0が経過していない場合(S101→No)、軸ロック検出部116はステップS101の処理を繰り返す。
ステップS105において軸ロック検出部116は、回数αの値をインクリメントする。ちなみに、回数αはステップS103に示す不等式が成立した連続回数を示しており、記憶手段(図示せず)に記憶されている。また、受信部(図示せず)を介してリモコンRe(図1参照)から停止指令信号が入力された場合に、軸ロック検出部116は回数αの値をゼロにリセットするようになっている。
回数αの値が所定回数α1に等しい場合(S106→Yes)、軸ロック検出部116の処理はステップS107に進む。一方、回数αの値が所定回数α1に等しくない場合(S106→No)、軸ロック検出部116の処理はステップS101に戻る。
ちなみに、ステップS101において軸ロック検出部116は、ステップS106の処理が終了した時刻から時間t0が経過したか否かを判断するものとする。
そして、軸ロック検出部116から異常検出信号が入力された場合、上位の制御部は、回転速度指令値ω*の値をゼロとして、同期モータ15の駆動を強制的に停止させる。
本実施形態に係る同期モータの駆動装置によれば、位置センサレス駆動方式の同期モータ15において起動時に軸ロックが生じたとしても、当該軸ロックの有無を検出することができ、早期に同期モータ15の駆動を停止させることができる。これによって、例えば、同期モータ15に過負荷がかかった状態が継続することを防止し、同期モータ15の破損などを防止することができる。
これに対して本実施形態では、入力有効電力Piと、軸ロック有効電力判定値P1との大小を比較することによって同期モータ15の軸ロックを検出する。ここで、軸ロック有効電力判定値P1は、異常状態を想定した実験やシミュレーションなどによって取得された実測値に基づいて適宜設定することができる。したがって、同期モータ15における起動時の軸ロックをより的確に検出することができる。
また、本実施形態では、軸ロック検出部において出力電力を算出する必要がない分、CPU(図示せず)の処理負荷を軽くすることができる。
以上、本発明に係る同期モータの駆動装置について、前記実施形態により説明したが、本発明の実施態様はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更などを行うことができる。
図8は、同期モータの駆動装置が設置された空気調和機のシステム構成図である。
図8に示すように空気調和機S1は、室内機Siと、室外機Soとを備え、室内機Siが設置された室内を暖房する「暖房運転」や、室内を冷房する「冷房運転」などを行う機能を有している。
また、室内制御装置100aは、受信部(図示せず)を介してリモコンReからの赤外線信号を受信すると、室外制御装置100bとの間で相互に通信を行いつつ、前記赤外線信号に対応する運転モード(暖房運転、冷房運転など)の空調運転を行うようになっている。
また、冷房運転を行う際に室外制御装置100bは、室外熱交換器2を凝縮器として機能させ、室内熱交換器4を蒸発器として機能させるように四方弁7を切り替えて、図の実線矢印で示す向きに冷媒を通流させ、室内制御装置100aは膨張弁3の開度(絞り)を制御する。
また、室内制御装置100a及び室外制御装置100bの処理については、前記実施形態と同様であるから説明を省略する。
なお、室内制御装置100aは軸ロックを検出した場合に、異常検出信号を表示ランプ7に出力して、表示ランプ(図示せず)を点灯させてもよい。これによって、ユーザは、空気調和機Sにおいて軸ロックが発生していることを知ることができる。
また、前記実施形態では電流センサ17を用いて母線電流値Istを検出することとしたが、これに限らない。例えば、シャント抵抗を含む複数の抵抗素子を用いて母線電流値Istを検出することとしてもよい。
また、前記実施形態では、三相交流電源11(図2参照)から電力を供給することとして説明したが、例えば、単相交流電源又は二相交流電源から供給される電力を整流回路12(図2参照)で整流し、平滑回路13(図2参照)で平滑化して直流電力としてもよい。また、直流電源から直流電力が供給することとしてもよい。この場合には、図2に示す整流回路12及び平滑回路13を省略する。
例えば、起動から所定時間経過後における入力有効電力Piが軸ロック有効電力判定値P1より小さければ、軸ロック検出部116が同期モータ15において軸ロックが生じていると判断することとしてもよい。つまり、Pi<P1の状態を検出すると、即座に軸ロックが生じていると判断することとしてもよい。
また、制御装置100は、軸ロックを検出する場合の他、脱調などの異常状態を検出した場合にも、同期モータ15の駆動を停止させることとしてもよい。
また、前記実施形態では、同期モータ15を冷凍装置S又は空気調和機S1に設置する場合について説明したが、これに限らない。例えば、同期モータ15を冷蔵庫などに設置することとしてもよい。
なお、冷蔵庫のヒートポンプサイクル及び各機器の説明は、前記実施形態の場合と重複するため、省略する。
また、同期モータを洗濯機、乾燥機、又は掃除機に設置することとしてもよい。
S1 空気調和機
1 圧縮機
2a 室外ファン
4a 室内ファン
14 インバータ回路
15 同期モータ
16 電圧センサ
17 電流センサ(電流検出手段)
100 制御装置
100a 室内制御装置(制御手段)
100b 室外制御装置(制御手段)
S1,S2,S3,S4,S5,S6 スイッチング素子
P 母線
Claims (7)
- インバータ回路のスイッチング素子に制御信号を出力することによって、同期モータを位置センサレスで駆動させる制御手段と、
前記インバータ回路の出力電流、又は、直流側の母線電流を検出し、前記制御手段に出力する電流検出手段と、を備える同期モータの駆動装置において、
前記制御手段は、
前記同期モータの起動時に、前記電流検出手段から入力される電流値の相関値と、前記同期モータに印加する電圧に対応する電圧指令値と、に基づいて入力有効電力を算出し、当該入力有効電力が所定の閾値より小さい場合に前記同期モータで軸ロックが発生していると判断し、前記同期モータの駆動を停止させること
を特徴とする同期モータの駆動装置。 - 前記制御手段は、前記入力有効電力と前記閾値との比較を、予め設定された所定時間ごとに行い、前記入力有効電力が前記閾値より小さい状態が所定回数連続する場合に前記同期モータの駆動を停止させること
を特徴とする請求項1に記載の同期モータの駆動装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の同期モータの駆動装置が設置されること
を特徴とする冷凍装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の同期モータの駆動装置が設置されること
を特徴とする空気調和機。 - 請求項1又は請求項2に記載の同期モータの駆動装置が設置されること
を特徴とする冷蔵庫。 - インバータ回路のスイッチング素子に制御信号を出力することによって、同期モータを位置センサレスで駆動させる制御手段と、
前記インバータ回路の出力電流、又は、直流側の母線電流を検出し、前記制御手段に出力する電流検出手段と、を備える同期モータの駆動装置で用いられる駆動方法において、
前記制御手段は、
前記同期モータの起動時に、前記電流検出手段から入力される電流値の相関値と、前記同期モータに印加する電圧に対応する電圧指令値と、に基づいて入力有効電力を算出し、当該入力有効電力が所定の閾値より小さい場合に前記同期モータで軸ロックが発生していると判断し、前記同期モータの駆動を停止させること
を特徴とする同期モータの駆動方法。 - 前記制御手段は、前記入力有効電力と前記閾値との比較を、予め設定された所定時間ごとに行い、前記入力有効電力が前記閾値より小さい状態が所定回数連続する場合に前記同期モータの駆動を停止させること
を特徴とする請求項6に記載の同期モータの駆動方法。
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