JP5763951B2 - 炭化ケイ素製造用ポリシラン - Google Patents

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Description

本発明は、炭化ケイ素の製造などに有用なポリシランおよびこのようなポリシランを用いた炭化ケイ素の製造方法に関する。
ポリシランは、ケイ素−ケイ素結合を主鎖とする高分子化合物であり、耐熱性、高屈折率、光反応性、正孔輸送性、発光性、耐エッチング性、低誘電率などの様々な物性を有する材料である。ポリシランは、このような優れた物性を生かして、セラミックス前駆体、層間絶縁膜、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)などとして注目されている。
そして、ポリシランを炭化ケイ素の合成に用いる試みもなされている。特開平6−116097号公報(特許文献1)には、パーメチルポリシラン([Si(CH]n)などの有機シラン原料を減圧下で加熱することにより基板上に蒸着されたポリシラン薄膜に不純物を添加することなどにより、不純物が添加された炭化ケイ素薄膜を得る方法が開示されている。しかし、この文献のパーメチルポリシランなどは、溶媒に対する溶解性に乏しく、炭化ケイ素の形成には、蒸着などの煩雑な工程が必要となる。また、ポリシランの粉末などを蒸着させるため、ナノオーダーから数ミクロンオーダー程度の均一な炭化ケイ素薄膜を得ることも困難である。さらに、パーメチルポリシランは、マグネシウム還元法などでは合成できず、金属ナトリウムを高温溶媒中で溶融して反応させるキッピング法で合成する必要がある。そのため、合成時にNaClが残留しやすい、不溶物が生成しやすく収率が低いなどの問題がある。
一方、特開平11−189652号公報(特許文献2)には、トリヒドロシランを出発原料とし、メタロセン触媒の存在下に不活性雰囲気中で反応させて得られた有機ケイ素系ポリマー(例えば、−(SiHPh)0.82―、−(SiPh)0.18<)が、各種溶媒への溶解性に優れ、室温で固体の形状を示し、取り扱いが容易であること、また、このようなポリマーは、炭化ケイ素セラミックスの前駆体などとして利用できることが記載されている。しかし、この文献のポリシランは、フェニルシラン単位などが導入されているため、比較的溶媒に溶解しやすいものの、ポリシランにおける炭素/ケイ素比率が大きい(例えば、C/Si比=6)ため、炭化ケイ素の製造に用いると、純粋な炭化ケイ素を得にくい。また、この文献の有機ケイ素系ポリマーは、トリヒドロシランを用いた脱水素縮合により合成されるため、比較的ポリマー中に多く存在する末端基が水素原子(−SiH基)となり、不安定であるため、保存安定性に問題がある。
また、特開平6−313268号公報(特許文献3)には、ジクロロシラン化合物を金属リチウムや金属ナトリウムに接触させることにより得られ、Si−H基を有するポリシラン類(例えば、ポリメチルシラン、ポリ(メチルシラン−ジメチルシラン)など)を原料とし、そのポリシラン類を炭素繊維の実質的に全表面に被着させた後、不活性雰囲気下で熱処理するようにする、炭化ケイ素によって被覆された炭素繊維の製造方法が開示されている。しかし、この文献のポリシランは、メチルシラン単位(−SiH(CH)−)を多く含んでいるため、不安定化しやすい。例えば、ポリシラン中に多く含まれるメチルシラン単位の−SiH基は、不安定であり、酸化して−SiOH基を生成するとともに縮合して多くの−Si−O−Si−結合を形成し、不溶物を生成するなどの問題がある。しかも、この文献のポリシランは、数平均分子量280〜320程度の低分子量となっており、立体障害も少ない直鎖状のポリシランであるため、非常に不安定化しやすいものと考えられる。さらに、金属ナトリウムなどを用いて得られるポリシランであるため、特許文献1と同様の問題もある。
さらに、特表平10−508574号公報(特許文献4)には、メチルジクロロシランおよびナトリウムなどのアルカリ金属の縮合により、下記式
で表されるポリメチルヒドロゲノシランなどが得られること、このようなポリシランを炭化ケイ素セラミックの前駆体として使用できることが記載されている。しかし、この文献のポリシランでは、メチルシラン単位を多く含んでいるため、特許文献3と同様に、不安定化しやすい。また、メチルシリン単位(−SiCH<)も含んでいるが、この単位もまたメチルシラン同様に不安定である。さらに、アルカリ金属を用いて得られるため、特許文献1と同様の問題もある。
なお、特開平11−263845号公報(特許文献5)には、有機溶媒に可溶性を有し、ガラス転移温度が−40℃以上であり、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を含有する共重合体を含むポリシランが開示されている。
(上記一般式(1)中、Rは炭素数6個以下の置換または無置換の脂肪族置換基であり、aは、0.1以上0.9以下である。)
また、特開2001−48986号公報(特許文献6)には、官能基を有するケイ素ポリマーを得るための前駆体として、ポリ(メチルシリレン)、ポリ(エチルシリレン)、ポリ(プロピルシリレン)、ポリ(メチルシリン−メチルシリレン)、ポリエチルシリン−エチルシリレン)などが開示されている。
特開平6−116097号公報(特許請求の範囲、段落[0005]実施例) 特開平11−189652号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平6−313268号公報(特許請求の範囲、段落[0014]〜[0016]、実施例) 特表平10−508574号公報(特許請求の範囲、第6〜7頁、実施例) 特開平11−263845号公報(特許請求の範囲、第6〜7頁、実施例) 特開2001−48986号公報(特許請求の範囲、段落[0006]〜[0008]、実施例)
従って、本発明の目的は、炭化ケイ素の合成などに有用なポリシランおよびこのポリシランを用いた炭化ケイ素の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、純度の高い炭化ケイ素を高収率で得ることができるポリシランおよびこのポリシランを用いた炭化ケイ素の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、簡便な方法で、所望の形状の炭化ケイ素を得ることができるポリシランおよびこのポリシランを用いた炭化ケイ素の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、C/Si比の小さい特定のポリシランを用いると、効率よく、高収率でかつ高純度の炭化ケイ素を得るのに極めて有用であること、また、このようなポリシランは、溶媒溶解性に優れており、取扱性において有利であるばかりか、このようなポリシランを用いることで均一なSiC薄膜(例えば、ナノメータオーダー乃至数ミクロンオーダーの薄膜)が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリシラン(ネットワーク状のポリシラン)は、下記式(1)で表されるユニットを少なくとも含み、ポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が3以下(例えば、0.5〜2.5)である(ただし、メチルシリン−メチルシラン共重合体を除く)。このようなポリシランは、特に、炭化ケイ素を製造するためのポリシラン(炭化ケイ素を製造するためのポリシラン)として利用できる。
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示す。)
本発明のポリシランは、前記式(1)において、Rが異なる複数のユニットを含んでいてもよい。例えば、本発明のポリシランは、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(1a)で表されるユニットと、下記式(1b)で表されるユニットとを含むポリシランであってもよい。
(式中、R1aは、水素原子又はメチル基以外の炭化水素基を示す。)
上記式(1b)において、R1aは、例えば、C2−4アルキル基であってもよい。また、前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)で表されるユニットとの割合は、例えば、前者/後者(モル比)=5/95〜95/5であってもよい。
本発明のポリシランにおいて、ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合(例えば、式(1a)で表されるユニットおよび式(1b)で表されるユニットの総量の割合)が、ケイ素原子換算で50モル%以上であってもよい。
本発明のポリシランは、さらに、下記式(2)で表されるユニットを含むポリシランであってもよい。
(式中、R2aおよびR2bは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。)
上記式(2)において、R2aがC1−4アルキル基であり、R2bが水素原子又はC1−4アルキル基であってもよい。
また、本発明のポリシランにおいて、前記式(1)で表されるユニットと式(2)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1程度であってもよい。
前記ポリシランは、前記のように、炭化ケイ素を形成するためのポリシランとして好適であるが、他の用途においても使用可能である。そのため、本発明には、下記式(1a)で表されるユニットと、下記式(1b)で表されるユニットと、下記式(2)で表されるユニットとを有し、ポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が3以下(例えば、0.5〜2.5)であるポリシランも含まれる。
(式中、R1aは、水素原子又はメチル基以外の炭化水素基を示し、R2aおよびR2bは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。)
本発明のポリシランの重量平均分子量は、例えば、500以上であってもよい。
本発明のポリシランは、代表的には、以下のいずれかのポリシランであってもよい。
(i)前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)においてR1aがC2−4アルキル基であるユニットとを有し、前記式(1a)で表されるユニットと前記式(1b)で表されるユニットとの割合が前者/後者(モル比)=5/95〜95/5であり、ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合がケイ素原子換算で70モル%以上であり、重量平均分子量が700以上であり、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が1.1〜2であるポリシラン
(ii)前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)においてR1aがC2−4アルキル基であるユニットと、前記式(2)において、R2aがC1−4アルキル基であり、R2bが水素原子又はC1−4アルキル基であるユニットとを有し、前記式(1a)で表されるユニットと前記式(1b)で表されるユニットとの割合が前者/後者(モル比)=5/95〜95/5であり、ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合がケイ素原子換算で70モル%以上であり、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=60/40〜95/5であり、重量平均分子量が700以上であり、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が1.1〜2であるポリシラン
本発明のポリシランはケイ素含量が高いため熱処理後の重量減少率が低く、例えば、不活性雰囲気下において1400℃で12時間加熱した後の重量減少率は70%以下であってもよい。
また、本発明のポリシランの酸素含量は、ポリシラン全体に対して、例えば、15重量%以下であってもよい。
本発明のポリシランは、金属マグネシウム成分の存在下、下記式(1A)で表されるトリハロシランを少なくとも含むハロシランの重合により得られるポリシランであってもよい。
(式中、X〜Xは同一又は異なってハロゲン原子を示し、Rは前記と同じ)
前記ポリシランは、末端(末端基又は重合末端基)が封鎖されたポリシランであってもよい。代表的には、前記ポリシランは、末端が炭化水素基及び/又は有機シリル基により封鎖されており、酸素含量がポリシラン全体に対して7重量%以下のポリシランであってもよい。
本発明には、ポリシランを熱処理(例えば、600℃以上の温度で熱処理)し、炭化ケイ素を製造する方法も含まれる。このような方法では、例えば、前記ポリシランを含む溶液を基材上にコーティングして熱処理し、炭化ケイ素薄膜を製造してもよい。
本発明のポリシランは、炭化ケイ素の合成などに有用である。特に、本発明のポリシランは、C/Si比が小さく、純度の高い炭化ケイ素を高収率で得ることができる。
また、本発明のポリシランは、C/Si比が小さいにもかかわらず、溶媒溶解性に優れるなど、取扱性においても優れており、溶媒に溶解させて塗布し、熱処理するという簡便な方法で、所望の形状の炭化ケイ素を効率よく得ることができる。特に、本発明のポリシランによれば、溶液状で塗布して熱処理することで、均一な炭化ケイ素薄膜を得ることができる。
図1は、実施例6で形成されたSiC膜表面のレーザー顕微鏡写真である。
[ポリシラン]
本発明のポリシランは、下記式(1)で表されるユニットを少なくとも含む。このようなポリシラン(ネットワーク状ポリシラン)は、後述するように、通常、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si比)が小さく(又はケイ素含量が大きく)、炭化ケイ素を製造するためのポリシランなどとして有用である。
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示す。)
式(1)において、Rで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などが挙げられる。
炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を構成するアリール基など)は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、前記例示のアルキル基(例えば、C1−6アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのC1−6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アルキルカルボニル基)、アミノ基、N−置換アミノ基[前記炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などが挙げられる。置換基の個数は、特に制限されず、1つであってもよく、複数(例えば、2〜4個)であってもよい。置換基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。このような置換基を有する炭化水素基としては、例えば、アルキルアリール基(例えば、トリル基などのモノ乃至トリC1−4アルキルC6−10アリール基など)、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基など)などが挙げられる。
式(1)において、好ましい基Rには、ケイ素含量を高めるという観点から、水素原子、炭素数の小さいアルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)などが挙げられ、特に、高いケイ素含量とポリシランの重合性をバランスよく両立させるという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−4アルキル基(特に、C1−2アルキル基)が好ましい。
ポリシランは、式(1)で表されるユニットを、単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。すなわち、ポリシランは、式(1)において、Rが同一のユニットのみを有していてもよく、式(1)において、Rが異なる複数のユニットを有していてもよい。式(1)において、Rが異なる複数のユニットを組み合わせることで、ポリシランの重合性を向上できる場合がある。特に、式(1)において、Rがメチル基であるユニット(メチルシリンユニット)は、ケイ素含量を高めるという観点からは好ましいものの、後述のマグネシウム還元法などでは単独では重合しにくく、十分な分子量のポリシランが得られない場合がある。また、メチルシリンユニットは、比較的不安定である(例えば、末端に不安定な−SiH構造を導入しやすい)。そのため、メチルシリンユニットは、式(1)において、Rがメチル基以外であるユニットを組み合わせるのが好ましい。
代表的には、ポリシランにおいて、式(1)で表されるユニットが、下記式(1a)で表されるユニット(式(1)においてRがメチル基であるユニット、すなわち、ポリメチルシリンユニット)と、下記式(1b)で表されるユニットとを含んでいてもよい。
(式中、R1aは、水素原子又はメチル基以外の炭化水素基を示す。)
上記式(1b)において、R1aで表される炭化水素基としては、メチル基を除く前記例示の炭化水素基が挙げられる。好ましい基R1aには、メチル基以外のアルキル基(例えば、エチル基、プロピル基などのC2−6アルキル基、好ましくはC2−4アルキル基、さらに好ましくはC2−3アルキル基、特に、エチル基)が挙げられる。
また、R1aがアリール基(例えば、フェニル基)であるユニットも好ましい。このようなユニットを含んでいると、マグネシウム還元法において重合しづらいユニット(例えば、メチルシリンユニット、後述のジメチルシランユニットなど)を含んでいても、ポリシランの十分な重合性を担保できる場合がある。ただし、R1aがアリール基(例えば、フェニル基)であるユニットは、ポリシラン中のC/Si比を大きくするので、ポリシランにおける割合を比較的小割合とする必要がある。
なお、式(1b)で表されるユニットは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ポリシランにおいて、式(1a)で表されるユニット(メチルシリンユニット)と、式(1b)で表されるユニット(例えば、エチル基などのメチル基以外のアルキル基)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99〜99/1(例えば、1/99/95/5)の範囲から選択でき、例えば、2/98〜90/10(例えば、3/97〜85/15)、さらに好ましくは5/95〜80/20(例えば、7/93〜75/25)、特に10/90〜70/30(例えば、15/85〜65/35)程度であってもよく、通常1/99〜97/3(例えば、5/95〜5/95)程度であってもよい。
特に、ポリシランに占める式(1)で表されるユニットの割合が非常に大きい場合などにおいて、式(1a)で表されるユニットと、式(1b)で表されるユニットとの割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99〜80/20(例えば、2/98〜75/25)、好ましくは3/97〜70/30、さらに好ましくは5/95〜65/35(例えば、7/93〜60/40)、特に10/90〜55/45(例えば、15/85〜55/45)程度であってもよい。
ポリシランは、式(1)で表されるユニットのみで構成してもよく、式(1)で表されるユニットと他のユニット(後述のユニット)とで構成してもよい。このようなポリシランにおいて、ポリシラン全体(ポリシランを構成するユニット全体)に対する式(1)で表されるユニットの割合は、ケイ素原子換算で、20モル%以上(例えば、25〜100モル%)の範囲から選択でき、例えば、30モル%以上(例えば、40〜100モル%)、好ましくは50モル%以上(例えば、55〜100モル%)、さらに好ましくは60モル%以上(例えば、65〜100モル%)、特に70モル%以上(例えば、75〜100モル%)程度であってもよい。
なお、式(1b)で表されるユニットが、R1aがアリール基であるユニットを含む場合、式(1b)においてR1aがアリール基であるユニットの割合は、ポリシラン全体(ポリシランを構成するユニット全体)に対して、ケイ素原子換算で、15モル%以下(例えば、0.01〜12モル%)の範囲から選択でき、例えば、10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%)、さらに好ましくは5モル%以下(例えば、0.5〜3モル%)程度であってもよい。
なお、式(1)で表されるユニットとして、基Rが1種類のユニットのみでポリシランを構成する場合、ポリシラン全体に対する1種類の式(1)で表されるユニットの割合は、ケイ素原子換算で、例えば、95モル%以下、好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下であってもよい。
本発明のポリシランは、式(1)で表されるユニットに加えて、他のユニットを含んでいてもよい。他のユニットとしては、例えば、下記式(2)で表されるユニット、下記式(3)で表されるユニットなどが含まれる。特に、式(2)で表されるユニットを組み合わせると、重合性を高め、重合度又は分子量を効率よく向上できる場合がある。また、式(3)で表されるユニットを組み合わせると、C/Si比率を下げるとともに重合開始が容易になり、使用できるモノマーの種類や比率の選択肢が広がる。
(式中、R2aおよびR2bは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。)
上記式(2)において、R2aおよびR2bで表される炭化水素基としては、前記Rの項で例示の炭化水素基が挙げられる。特に、ケイ素含量を高めるという観点から、前記Rと同様に、水素原子、炭素数の小さいアルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)などが好ましい。なお、R2aおよびR2bは、炭化水素基の他、水素原子であってもよいが、重合性などの観点から、式(2)において、R2aおよびR2bの少なくともいずれか一方は、炭化水素基である場合が多い。そのため、例えば、式(2)において、R2aが炭化水素基(例えば、C1−4アルキル基)であり、R2bが水素原子又は炭化水素基(例えば、C1−4アルキル基)であってもよい。
式(2)において、好ましいR2aとR2bとの組み合わせには、(i)アルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)と水素原子との組み合わせ、(ii)アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)同士(特に、C1−2アルキル基同士)の組み合わせなどが挙げられる。なお、上記組み合わせ(i)(特に、アルキル基がメチル基である組み合わせ)は、ケイ素含量を高めるという観点からは好ましいものの、重合性の観点や安定性の観点からは、あまりポリシランにおける割合を大きくできない場合が多い。また、上記組み合わせ(ii)は、重合性の観点からは好ましいものの、2つの炭化水素基(アルキル基など)を有しているため、R2aおよびR2bの炭化水素基の炭素数をできる限り小さくするのが好ましく、また、ポリシランにおける割合も重合性などを損なわない範囲でできるだけ小さくするのが好ましい。
なお、ポリシランは、式(2)で表されるユニットを、単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。すなわち、ポリシランは、式(2)において、R2aおよびR2bが同一のユニットのみを有していてもよく、式(1)において、R2a(及び/又はR2b)が異なる複数のユニットを有していてもよい。
ポリシランにおいて、式(1)で表されるユニットと、式(2)で表されるユニットとの割合は、前者/後者(モル比)=30/70〜99.9/0.1(例えば、40/60〜99.5/0.5)程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜99/1(例えば、55/45〜97/3)、好ましくは60/40〜95/5(例えば、65/35〜94/6)、さらに好ましくは70/30〜93/7(例えば、75/25〜92/8)、特に80/20〜90/10(例えば、82/18〜88/12)程度であってもよい。
また、ポリシランが式(2)で表されるユニットを含む場合、ポリシラン全体(ポリシランを構成するユニット全体)に対する式(2)で表されるユニットの割合は、ケイ素原子換算で、70モル%以下(例えば、0.1〜60モル%)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以下(例えば、0.5〜45モル%)、好ましくは40モル%以下(例えば、1〜35モル%)、さらに好ましくは30モル%以下(例えば、5〜25モル%)、特に20モル%以下(例えば、10〜18モル%)程度であってもよく、通常1〜30モル%(例えば、3〜25モル%、好ましくは5〜20モル%)程度であってもよい。
さらに、ポリシランを構成するユニット全体に対して、式(3)で表されるユニットおよび式(2)で表されるユニットの総量の割合は、ケイ素原子換算で、例えば、70モル%以上(例えば、75〜100モル%)、好ましくは80モル%以上(例えば、85〜100モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%)程度であってもよい。
前記式(3)で表されるユニットは、テトラハロシランなどを重合に用いることによりポリシランに導入できるユニットであり、ケイ素含量を高めるという観点からは好ましいものの、割合が大きいと重合性を低下させ、十分な分子量のポリシランを得ることができなくなる虞がある。そのため、ポリシランが前記式(3)で表されるユニットを含む場合、ポリシラン全体に対する式(3)で表されるユニットの割合は、30モル%以下(例えば、0.01〜25モル%)の範囲から選択でき、例えば、20モル%以下(例えば、0.1〜15モル%)、好ましくは10モル%以下(例えば、0.3〜8モル%)、さらに好ましくは5モル%以下(例えば、0.5〜3モル%)であってもよい。
代表的なポリシランには、前記式(1)で表されるユニットを有するポリシラン[例えば、メチルシリン−アルキルシリン共重合体(例えば、メチルシリン−エチルシリン共重合体などのメチルシリン−C2−4アルキルシリン共重合体、好ましくはメチルシリン−C2−3アルキルシリン共重合体)などの前記式(1a)で表されるユニットおよび前記式(1b)で表されるユニット(特に、前記式(1b)においてRがC1−4アルキル基であるユニット)を有するポリシランなど]、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとを有するポリシラン[例えば、メチルシリン−アルキルシリン−アルキルシラン共重合体(例えば、メチルシリン−エチルシリン−メチルシラン共重合体などのメチルシリン−C2−4アルキルシリン−C1−4アルキルシラン共重合体、好ましくはメチルシリン−C2−3アルキルシリン−C1−3アルキルシラン共重合体、さらに好ましくはメチルシリン−エチルシリン−C1−2アルキルシラン共重合体)などのアルキルシリン−アルキルシラン共重合体;メチルシリン−アルキルシリン−ジアルキルシラン共重合体(例えば、メチルシリン−エチルシリン−ジメチルシラン共重合体などのメチルシリン−C2−4アルキルシリン−ジC1−4アルキルシラン共重合体、好ましくはメチルシリン−C2−3アルキルシリン−ジC1−3アルキルシラン共重合体、さらに好ましくはメチルシリン−エチルシリン−ジC1−2アルキルシラン共重合体)などのアルキルシリン−ジアルキルシラン共重合体などの前記式(1)で表されるユニット(特に、前記式(1a)で表されるユニットおよび前記式(1b)で表されるユニット)および前記式(2)で表されるユニット(特に、前記式(2)において、R2aがC1−4アルキル基であり、R2bが水素原子又はC1−4アルキル基であるユニット)を有するポリシラン]などが挙げられる。
なお、本発明には、前記のように、メチルシリン−メチルシラン共重合体(すなわち、前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(2)において、R2aとR2bとの組み合わせがメチル基と水素原子であるユニットのみからなるポリシラン)は含まれない。
なお、ポリシランの末端(重合末端)は、特に限定されず、重合成分由来の末端基(例えば、ハロシランの末端由来のハロゲン原子やハロゲン原子の加水分解により形成されるシラノール基など)であってもよく、封鎖されていてもよい。例えば、ハロシランをモノマーとして用いたポリシランの重合末端は、重合後においては、通常、ハロゲン原子であるが、このようなハロゲン原子の一部又は全部は、空気中の水分などにより加水分解され、ヒドロキシ基(シラノール基)を生成する。このような重合末端のシラノール基やハロゲン原子は、後述のようにポリシランにおける酸素原子含量を直接的に又は間接的に増大させる要因となるため、封鎖してもよい。また、ポリシランの重合(又は重合後)において、単官能性モノマー{例えば、モノハロシラン[例えば、トリアルキルモノハロシラン(例えば、トリメチルクロロシランなどのトリC1−4アルキルモノハロシラン)など]など}を用いることで、ポリシランの重合末端を封鎖することもできる。
重合末端を封鎖する封鎖基(重合末端を置換する置換基)としては、アルコキシ基、アシル基(アセチル基など)、フッ素原子などであってもよいが、シリル基(有機シリル基)、炭化水素基であるのが好ましい。シリル基としては、例えば、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのトリC1−10アルキルシリル基)、トリアリールシリル基(例えば、トリフェニルシリル基などのトリC6−10アリールシリル基など)、ジアルキルアリールシリル基(ジメチルフェニルシリル基などのジC1−4アルキル−C6−10アリールシリル基など)、アルキルジアリールシリル基(メチルジフェニルシリル基などのC1−4アルキル−ジC6−10アリールシリル基など)などの3つの炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)が置換したシリル基などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの前記例示の炭化水素基が挙げられる。
なお、重合末端基もまた、ケイ素含量を高めるという観点からは、炭素数が小さい基[例えば、C1−4アルキル基(メチル基など)、トリC1−4アルキルシリル基(特に、トリC1−2アルキルシリル基)など]であるのが好ましいが、重合末端であるため、ポリシランの分子量にもよるが、ポリシランを構成する主鎖中のユニット(前記式(1)〜(3)で表されるユニット)に比べると、ケイ素含量に与える影響は小さく、幅広い重合末端基を選択することもできる。
これらの封鎖基(又は置換基)は、単独で又は2種以上組み合わせてポリシランの重合末端を封鎖してもよい。
なお、末端が封鎖されたポリシランは、その末端の一部又は全部が封鎖されていればよい。このような末端が封鎖されたポリシランにおいて、末端封鎖率(末端全体に対する封鎖割合)は、特に限定されず、例えば、10%以上(例えば、15〜100%)、好ましくは20%以上(例えば、25〜99%)、さらに好ましくは30%以上(例えば、35〜95%)程度であってもよく、40%以上(例えば、50〜95%、好ましくは55〜90%、さらに好ましくは60〜85%程度)であってもよい。なお、末端封鎖率は、例えば、蛍光X線分析(WDX蛍光X線分析)、NMRなどにより、末端封鎖前後のポリシランの末端基量を測定することにより算出できる。
ポリシランの重量平均分子量は、例えば、400以上(例えば、450〜30000)、好ましくは500以上(例えば、600〜20000)、さらに好ましくは700以上(例えば、800〜10000)、特に1000以上(例えば、1200〜8000)程度であってもよい。なお、分子量が大きすぎると、溶媒への溶解性が低下したり、熱処理時にクラック等が生じる虞があり、分子量が小さすぎると、不安定となる(例えば、酸素存在下で酸化、縮合重合しやすくなる)虞がある。
なお、ポリシランの分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mn]は、例えば、1.05〜20、好ましくは1.2〜15、さらに好ましくは1.5〜10(例えば、2〜8)程度であってもよい。
なお、本発明のポリシランの平均重合度は、5以上(例えば、7〜500)の範囲から選択でき、通常、10以上(例えば、12〜300)、好ましくは15以上(例えば、18〜250)、さらに好ましくは20以上(例えば、25〜200)程度であってもよい。
本発明のポリシランは、炭素含量が低く抑えられている。このような本発明のポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)は、通常、3以下(例えば、0.4〜2.8)の範囲から選択でき、例えば、2.7以下(例えば、0.5〜2.5)、好ましくは2.3以下(例えば、0.7〜2.1)、さらに好ましくは2以下(例えば、0.8〜1.9)、特に1.8以下(例えば、1〜1.7、好ましくは1.1〜1.6)であってもよく、通常0.9〜2.3(例えば、1〜2.2、好ましくは1.1〜2、さらに好ましくは1.2〜1.9)程度であってもよい。
なお、ポリシランにおけるC/Si比は、慣用の方法、例えば、蛍光X線分析(WDX蛍光X線分析)、NMR、ポリシランを酸素存在下で完全燃焼させたときのCO量とSiO量を測定する方法などにより測定できる。
また、ポリシランは、前記のように、重合末端などに酸素原子を含む場合がある。このような酸素原子は、SiCの形成時に脱離できればよいが、SiC中に残留してSiC純度を低下させる虞があるため、できるだけ小さい含有量であることが好ましい。このような酸素含量(酸素原子含量)は、ポリシラン全体に対して、20重量%以下(例えば、0〜18重量%)、好ましくは17重量%以下(例えば、0.1〜16重量%)、さらに好ましくは15重量%以下(例えば、0.2〜14重量%)、特に13重量%以下(例えば、0.5〜12重量%)程度であってもよく、通常1〜12重量%(例えば、1.5〜11重量%程度)であってもよい。特に、ポリシラン全体に対して、酸素含量(酸素原子含量)を10重量%以下(例えば、0.1〜8重量%)、好ましくは7重量%以下(例えば、0.3〜6重量%)、さらに好ましくは5重量%以下(例えば、0.5〜4重量%)程度とすることもできる。
なお、酸素含量は、例えば、蛍光X線分析、NMRなどにより測定できる。
(製造方法)
本発明のポリシランは、アルカリ金属(特にナトリウム)の存在下、ハロシランの脱ハロゲン反応を行う方法、金属触媒の存在下、ヒドロシランの脱水素反応(脱水素縮合反応)を行う方法などにより製造することもできるが、好ましいポリシランの製造方法は、金属マグネシウム成分の存在下、ハロシランの脱ハロゲン反応を行う方法である。このような金属マグネシウム成分を用いる方法(マグネシウム還元法)は、量産時に汎用の反応器で簡易に製造でき、安全性を確保しやすいという製造上のメリットだけではなく、得られるポリシランの溶媒溶解性が高いなど、ポリシランの特性の点でも有利である。例えば、マグネシウム還元法で得られるポリシランの末端基は、前記のように、通常、シラノール基(−SiOH)を含んでいる。このようなシラノール基は、前記のようにポリシランを構成するユニットの組み合わせやその割合を調整することで、ある程度の安定性(経時安定性)を担保しつつ、溶媒溶媒性を高める効果がある。また、このような末端基は、前記のように、より安定性を担保するため封鎖することもでき、このような封鎖により、通常、末端に有機基(例えば、アルキル基、トリアルキルシリル基など)が導入される。そのため、このような末端が封鎖されたポリシランにおいても、末端基としてシラノール基を有するポリシランと同様に、優れた溶媒溶解性を有する。また、マグネシウム還元法では、後述のように、グリニャール試薬などを利用した封鎖を反応系中で容易に行うことができる。
そのため、本発明のポリシランは、特に、金属マグネシウム成分の存在下、ハロシランの重合(脱ハロゲン化反応)により得られるポリシランであってもよい。以下、マグネシウム還元法について詳述する。
(ハロシラン)
ハロシラン(ハロシラン類)としては、ポリシランに対応するハロシランを用いることができる。すなわち、ハロシランは、下記式(1A)で表されるトリハロシランを少なくとも含む。
(式中、X〜Xは同一又は異なってハロゲン原子を示し、Rは前記と同じ)
なお、特に、前記式(1a)で表されるユニットおよび前記式(1b)で表されるユニットは、それぞれ、前記式(1A)で表されるトリハロシランの中でも、下記式(1a’)で表されるトリハロシランおよび下記式(1b’)で表されるトリハロシランを使用することにより得ることができる。
(式中、X〜X、R1aは前記と同じ。)
また、式(1)で表されるユニットに加えて、前記式(2)で表されるユニットおよび前記式(3)で表されるユニットを有するポリシランは、ハロシランとして、前記式(1A)で表されるトリハロシラン(前記式(1a’)で表されるトリハロシランおよび前記式(1b’)で表されるトリハロシランを含む)に加えて、それぞれ、下記式(2A)で表されるジハロシラン、下記式(3A)で表されるテトラハロシラン(例えば、テトラクロロシランなど)を用いることにより得ることができる。
(式中、Xはハロゲン原子を示し、X〜X、R2aおよびR2bは前記と同じ。)
これらの式において、X〜Xで表されるハロゲン原子には、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)が含まれる。これらのハロゲン原子のうち、特に、Cl及びBr(特にCl)原子が好ましい。
代表的な式(1A)で表されるトリハロシランとしては、例えば、メチルトリハロシラン(前記式(1a’)で表されるトリハロシラン)の他、メチル基以外のアルキル基を有するトリハロシラン(例えば、エチルトリハロシランなどのC2−4アルキルトリハロシラン)などの前記式(1b’)で表されるトリハロシランなどが含まれる。
また、代表的な前記式(2A)で表されるジハロシランとしては、例えば、アルキルジハロシラン(例えば、メチルジハロシラン、エチルジハロシランなどのC1−4アルキルジハロシラン)などのR2aとR2bとがアルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)と水素原子との組み合わせであるジハロシラン;ジアルキルジハロシラン(例えば、ジメチルジハロシランなどのジC1−4アルキルジハロシラン、好ましくはジC1−2アルキルジハロシラン)などのR2aとR2bとがアルキル基(例えば、C1−4アルキル基)同士(特に、C1−2アルキル基同士)の組み合わせであるジハロシランなどが挙げられる。
ハロシラン全体におけるこれらのハロシランの割合や各ハロシラン間の割合は、前記ポリシランの項で記載の割合と同様の範囲から選択できる。ハロシランは、高純度であるのが好ましく、必要に応じて、例えば、使用前に蒸留して使用してもよい。
なお、後述のように、ポリシランの重合末端を封鎖する場合、ハロシランとして、さらに、モノハロシランを用いてもよい。モノハロシランとしては、例えば、トリアルキルモノハロシラン(例えば、トリメチルモノクロロシラン、トリエチルモノクロロシランなどのトリC1−10アルキルモノハロシラン、好ましくはトリC1−4アルキルモノハロシラン、さらに好ましくはトリC1−2アルキルモノハロシラン)、トリアリールモノハロシラン(例えば、トリフェニルモノハロシランなどのトリC6−10アリールモノハロシランなど)、ジアルキルアリールモノハロシラン(ジメチルフェニルモノクロロシランなどのジC1−4アルキル−C6−10アリールモノハロシランなど)、アルキルジアリールモノハロシラン(メチルジフェニルモノハロシランなどのC1−4アルキル−ジC6−10アリールモノハロシランなど)などの前記例示の重合末端基としてのシリル基に対応するモノハロシランが挙げられる。
なお、モノハロシランの使用割合は、重合末端の割合などに応じて適宜選択できる。
原料混合物(反応液)中のハロシランの濃度(基質濃度)は、例えば、0.05〜20mol/l程度、好ましくは0.1〜15mol/l程度、さらに好ましくは0.2〜5mol/l程度であってもよい。
(金属マグネシウム成分)
金属マグネシウム成分(マグネシウム成分)は、活性な金属マグネシウム(すなわち、マグネシウムイオンなどではないマグネシウム)の形態でマグネシウムを含む成分であればよく、金属マグネシウム(マグネシウム単体)、マグネシウム合金、これらの混合物などであってもよい。マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。これらの金属マグネシウム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
金属マグネシウム成分の形状は、ハロシランの反応を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状体(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、板状体(平板状体など)などが例示され、特に、粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体などであるのが好ましい。マグネシウム金属成分(例えば、粉粒状のマグネシウム金属成分)の平均粒径は、例えば、1〜10000μm、好ましくは10〜7000μm、さらに好ましくは15〜5000μm(例えば、20〜3000μm)であってもよい。
なお、金属マグネシウム成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削や溶出(塩酸洗浄などの酸洗)などの適当な方法によって除去してもよい。
なお、金属マグネシウム成分は、特開2002−226586号公報に記載の方法などにより、活性金属マグネシウム成分として重合に使用してもよい。
金属マグネシウム成分の使用量は、ハロシラン(複数のハロシランを用いる場合には、ハロシランの総量、以下同じ。)のハロゲン原子に対して、マグネシウム換算で、例えば、0.3〜30当量、好ましくは0.5〜20当量、さらに好ましくは1〜15当量程度であってもよく、通常1〜20当量(例えば、1.2〜15当量、好ましくは1.5〜10当量)程度であってもよい。
また、金属マグネシウム成分の使用量は、ハロシラン100重量部に対して、1〜500重量部、好ましくは3〜300重量部、さらに好ましくは5〜200重量部、特に10〜100重量部程度であってもよい。
なお、金属マグネシウム成分は、ハロシランを還元して、ポリシランを形成させるとともに、マグネシウム自身は酸化されてハロゲン化物を形成する。そして、ハロシランの還元に供されない未反応の金属マグネシウム成分は、反応混合物に含まれる。このようなマグネシウム成分は、後述のようにグリニャール試薬に変換(さらには、重合末端の封鎖に利用)してもよい。
反応は、少なくとも金属マグネシウム成分の存在下で行えばよいが、ハロシランの重合を促進するため、リチウム化合物及び金属ハロゲン化物から選択された少なくとも一種(促進剤又は触媒)の共存下で行ってもよい。
(リチウム化合物)
リチウム化合物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなど)、無機酸塩(塩酸リチウムなど)などが使用できる。これらのリチウム化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいリチウム化合物は、ハロゲン化リチウム(特に塩化リチウム)である。
リチウム化合物の割合は、ハロシラン100重量部に対して、例えば、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜100重量部(例えば、5〜75重量部)程度であり、通常、10〜80重量部程度である。
なお、溶媒(反応液)中のリチウム化合物の濃度は、通常、0.05〜5モル/L、好ましくは0.1〜4モル/L、特に0.15〜3モル/L程度であってもよい。
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物(リチウムハロゲン化物を除く金属ハロゲン化物)としては、多価金属ハロゲン化物、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)が挙げられる。金属ハロゲン化物を構成する前記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
代表的な金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl、FeClなどの塩化鉄;AlCl、ZnCl、SnCl、CoCl、VCl、TiCl、PdCl、SmClなど)、臭化物(FeBr、FeBrなどの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmIなど)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化物(例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などの塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。通常、塩化鉄及び/又は塩化亜鉛、特に塩化亜鉛などが使用される。
金属ハロゲン化物の割合は、ハロシラン100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
また、溶媒(反応液)中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.001〜6モル/L程度であり、好ましくは0.005〜4モル/L、さらに好ましくは0.01〜3モル/L程度であってもよい。
(非プロトン性溶媒)
反応は、通常、溶媒(特に、非プロトン性溶媒)の存在下で行ってもよい。溶媒(反応溶媒)としては、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状C4−6エーテル)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが含まれる。
これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、少なくとも極性溶媒[例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなど)など]を使用するのが好ましい。極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよく、極性溶媒と非極性溶媒とを組み合わせてもよい。
なお、ハロシランは、水と速やかに反応するため、使用する原料(すなわち、金属マグネシウム成分、リチウム化合物、金属ハロゲン化物、非プロトン性溶媒など)は、予め乾燥して使用するのが好ましい。
反応温度は、通常、−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内である場合が多く、例えば、0〜150℃、好ましくは5〜100℃、さらに好ましくは10〜80℃程度であってもよい。
また、反応時間は、ハロシランの種類、金属ハロゲン化物及びマグネシウム金属成分の量などにより異なるが、通常、5分以上であってもよく、例えば、30分〜100時間、好ましくは1〜80時間、さらに好ましくは2〜60時間程度であってもよい。
以上のようにして、生成したポリシランを含む反応混合物が得られる。そして、このような重合後の反応混合物には、生成したポリシランの他に、未反応の金属マグネシウム成分(又は残存する金属マグネシウム成分)が含まれる。なお、残存する金属マグネシウム成分の割合は、反応において使用した(仕込んだ)金属マグネシウム成分に対して、90重量%以下(例えば、0.5〜85重量%)、好ましくは80重量%以下(例えば、1〜75重量%)、さらに好ましくは70重量%以下(例えば、2〜65重量%)、特に60重量%以下(例えば、3〜55重量%)であってもよい。
本発明では、後述するように、このような反応混合物中に含まれる(又は残存する)金属マグネシウム成分をグリニャール試薬に変換し、ポリシランの重合末端の封鎖に利用してもよい。具体的には、反応混合物に、金属マグネシウム成分と反応してグリニャール試薬を生成する化合物(すなわち、有機ハロゲン化物)を混合することにより、金属マグネシウム成分と有機ハロゲン化物とを反応させて、グリニャール試薬を生成させ、ポリシランの重合末端を封鎖してもよい。
(重合末端の封鎖方法)
重合末端の封鎖は、市販のポリシランや、重合反応後の反応混合物から分離した後のポリシランに対して行ってもよいが、前記のように、重合末端が多いネットワーク状ポリシランは空気中の水分などにより自己縮合して、ポリシランの物性低下(例えば、自己縮合によるシロキサン結合(−Si−O−Si−)の導入によるポリシラン特性の低下)を生じやすい。そのため、重合反応後、引き続き、封鎖を行うのが好ましい。
重合末端の封鎖方法としては、ポリシランと、重合末端であるハロゲン原子やシラノール基と反応可能な封鎖剤とを反応させる方法が挙げられる。封鎖剤としては、前記例示の封鎖基の種類に応じて、適宜選択でき、モノハロシラン(例えば、トリメチルモノハロシランなどの前記例示のモノハロシラン)、シリルトリフラート、シラン(例えば、トリメチルシランなどのトリアルキルシランなど)、グリニャール試薬などが挙げられる。例えば、モノハロシランを封鎖剤として利用し、重合末端と反応させると、前記ポリシランの製造方法と同様に、脱ハロゲン反応が生じ、重合末端がモノハロシラン由来の基(例えば、トリアルキルシリル基など)で封鎖されたポリシランが得られる。
特に、封鎖剤としてグリニャール試薬を利用して重合末端を封鎖してもよい。なお、グリニャール試薬は、マグネシウム(金属マグネシウム)と有機ハロゲン化物とを反応させることにより生成させることができる。
有機ハロゲン化物(ハロゲン原子を有する有機化合物)において、ハロゲン原子としては、通常、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、臭素原子およびヨウ素原子が好ましい。有機ハロゲン化物は、1つのハロゲン原子を有していてもよく、複数のハロゲン原子を有していてもよい。複数のハロゲン原子は、同一又は異なるハロゲン原子であってもよい。
代表的な有機ハロゲン化物としては、例えば、ハロアルカン(例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、臭化エチル、ヨウ化エチルなどのハロC1−10アルカン、好ましくはハロC1−6アルカン、さらに好ましくはハロC1−4アルカン)、ハロアレーン(例えば、ブロモベンゼンなどのハロC6−10アレーン)などのハロゲン化炭化水素が挙げられる。有機ハロゲン化物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい有機ハロゲン化物は、ハロアルカン(例えば、ブロモアルカン、ヨードアルカン)であり、特にハロ低級アルカン(例えば、ヨウ化メチルなどのハロC1−4アルカン、好ましくはハロC1−2アルカン、さらに好ましくはハロメタン)が好ましい。グリニャール反応により有機ハロゲン化物の有機基がポリシランの重合末端に封鎖基として導入(又は有機基によりポリシランの重合末端が置換)されるが、ハロアルカンは反応性が高い上に、特に、ハロ低級アルカンの有機基は低級アルキル基であるため、ポリシランのケイ素含量の低下を抑制できるという点でも好適である。
なお、有機ハロゲン化物の構造式をRX(式中、Xはハロゲン原子、Rは炭化水素基を示す。)とすると、マグネシウムと有機ハロゲン化物との反応により、構造式RMgX(式中、XおよびRは前記と同じ)で表されるグリニャール試薬が生成する。
そして、このようなグリニャール試薬は、ポリシラン(特に、反応混合物中に含まれる生成したポリシラン)の重合末端(ハロゲン原子など)と反応(グリニャール反応)し、ポリシランの重合末端のハロゲン原子を有機ハロゲン化物由来の有機基(例えば、アルキル基などの封鎖基として前記例示の炭化水素基)に置換する形態でポリシランの末端を封鎖する。
具体的には、グリニャール試薬RMgXと、重合末端としてハロゲン原子を有するポリシランとの間で、以下の反応が生じる。
(式中、X,Rは前記と同じ。)
例えば、有機ハロゲン化物としてハロゲン化炭化水素(例えば、ハロアルカン)を使用する場合には、ポリシランの重合末端のハロゲン原子が炭化水素基(例えば、アルキル基)に置換される。
なお、グリニャール試薬は、前記のように、反応混合物中のポリシランと反応させるのが好ましい。そのため、グリニャール試薬は、反応混合物に混合してポリシラン(ポリシランの重合末端)と反応させてもよい。グリニャール試薬は、別途生成させて反応混合物に混合してもよいが、少なくとも反応混合物中に残存する金属マグネシウム成分を利用して生成させてもよい。詳細には、残存する金属マグネシウム成分からグリニャール試薬を生成させるとともに、生成したグリニャール試薬と、重合末端としてハロゲン原子を有するポリシランとを反応させて、重合末端が封鎖(詳細には、重合末端としてのハロゲン原子が有機ハロゲン化物由来の有機基に置換)されたポリシランを製造することもできる。
反応混合物中には、未反応の金属マグネシウム成分が残存している場合が多く、このような金属マグネシウム成分は、通常、後の工程で分離されるが、分離には、濾過などの工程が必要となるばかりか、水との反応により水素ガスの発生を伴って、固体状の水酸化マグネシウムが生成し、ポリシランの精製を煩雑にする。そのため、このようなマグネシウム成分をグリニャール試薬のマグネシウム源として利用すると、重合末端封鎖に利用できるだけでなく、ポリシランの精製工程(製造プロセス)を簡略化できる。
有機ハロゲン化物の使用量は、ポリシランの重合末端基濃度などに応じて、適宜選択でき、例えば、有機ハロゲン化物の使用割合(反応混合物に対する混合割合)は、反応混合物中のマグネシウム成分1モルに対して、1モル以上(例えば、1.01〜10モル)、好ましくは1.05〜8モル、さらに好ましくは1.1〜5モル程度であってもよい。
なお、ポリシランの末端を封鎖するために残存する金属マグネシウム成分をグリニャール試薬化する場合、必要に応じて(例えば、残存する金属マグネシウム成分由来のグリニャール試薬では十分にポリシランの末端が封鎖できない場合など)、反応混合物に、さらに金属マグネシウム成分を混合してもよい。また、残存する金属マグネシウム成分の全てをグリニャール試薬化する必要はない。例えば、前記のように、ポリシランの重合末端の一部を残存させる場合には、反応混合物中の残存マグネシウム成分の量に応じて、適宜、生成させるグリニャール試薬の量を調整してもよい。
グリニャール試薬の生成反応やグリニャール反応において、反応温度および反応時間などの反応条件は、適宜選択できる。なお、グリニャール試薬は水と容易に反応して分解するため、グリニャール反応は、ハロシランの重合反応と同様、水が侵入しない条件下で行うのが好ましい。また、残存する金属マグネシウム成分を利用する場合、グリニャール試薬の生成反応とグリニャール反応(グリニャール試薬とポリシランとの反応)とは、同一の反応系で生じるが、必要に応じて、反応条件を段階的に変えつつ反応を行ってもよい。
なお、生成したポリシラン(末端封鎖されたポリシラン)は、グリニャール試薬の生成反応後(およびグリニャール反応後)の反応混合物から慣用の方法を用いて容易に分離精製できる。
特に、本発明では、反応混合物(グリニャール試薬を生成後の反応混合物)に少なくとも水を混合することにより、グリニャール試薬をマグネシウム塩に変換して反応混合物から分離してもよい。換言すれば、グリニャール試薬を生成した後の反応混合物に、少なくとも水を混合し、グリニャール試薬から生成したマグネシウム塩を水に溶解させて分離してもよい。
すなわち、金属マグネシウム成分は、水と反応するものの、その進行は遅く、しかも水素ガスを発生するが、グリニャール試薬は、水により容易に加水分解して、ハロゲン化マグネシウム(例えば、ヨウ化マグネシウム、塩化マグネシウムなど)などのマグネシウム塩を生成する。また、グリニャール試薬がポリシランの重合末端(ハロゲン原子)と反応した場合にも、同様のマグネシウム塩が生成する。そして、このようなマグネシウム塩は、通常、水溶性であり、ポリシランは疎水性である場合が多い。そのため、グリニャール試薬の加水分解反応やグリニャール試薬とポリシラン(ポリシランの重合末端)とのグリニャール反応により副生したマグネシウム塩を、水に溶解させることにより、容易にポリシランを含む混合物から分離することができる。
なお、グリニャール試薬は、前記のように、ポリシランとのグリニャール反応に供される場合には、マグネシウム塩の形態に分解されているが、このようなグリニャール反応が生じる場合においても、未反応のグリニャール試薬が残存している場合には、未反応のグリニャール試薬を水により加水分解してもよい。
水の混合量は、残存するグリニャール試薬の量などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、反応混合物1重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部(例えば、1.5〜20重量部)程度であってもよい。なお、効率よくグリニャール試薬を加水分解するため、必要に応じて、酸(例えば、塩化水素などの無機酸)と水との混合液(例えば、酸の水溶液)として水を混合してもよい。
また、水とともに、ポリシランを溶解可能な有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの鎖状又は環状炭化水素類)など]、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのカルボン酸エステル;エトキシエチルプロピオネートなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類など)、セロソルブ類(メチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトールなど)、グリコールエーテルエステル類(セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。有機溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
特に、少なくとも疎水性有機溶媒を混合すると、マグネシウム塩を含む水相と、ポリシランを含む有機相(疎水性有機溶媒相)とに効率よく分離(相分離)させることができる。そして、このような相分離により、容易にポリシランを溶媒抽出(液−液抽出)により分離精製できる。疎水性溶媒としては、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)など]、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル)などが挙げられる。なお、反応溶媒が、疎水性溶媒である場合には、必ずしも疎水性有機溶媒を添加する必要はなく、反応溶媒を疎水性有機溶媒として利用してもよく、反応溶媒に加えて疎水性有機溶媒を混合してもよい。
有機溶媒(例えば、疎水性有機溶媒を少なくとも含む有機溶媒)の混合量は、特に限定されず、例えば、水1重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
このようにして得られたポリシラン(末端が封鎖されていてもよいポリシラン)は、さらに、慣用の分離精製手段、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段やこれらを組合せた手段により分離精製してもよい。
[ポリシランの用途]
本発明のポリシランは、このように炭素含量が低いにもかかわらず、溶媒溶解性に優れており(さらには、適度な分子量や重合度を有しており)、高いケイ素含量と溶媒溶解性などとをバランスよく有する材料である。そのため、取扱性にも優れ、添加剤などとして使用すると、効率よくケイ素含量を高めることができる。
特に、このようなポリシランは、熱処理又は焼成処理により、容易に高純度および高収率の炭化ケイ素を得ることができる。例えば、本発明のポリシランの熱処理後(例えば、不活性雰囲気下、1400℃で12時間加熱した後)の重量減少率は、75%以下(例えば、40〜73%)、好ましくは70%以下(例えば、45〜68%)、さらに好ましくは65%以下(例えば、48〜63%)、特に60%以下(例えば、50〜59%)である。具体的には、本発明のポリシラン1gあたり、0.25g以上(例えば、0.27〜0.6g)、好ましくは0.3g以上(例えば、0.32〜0.55g)、さらに好ましくは0.35g以上(例えば、0.37〜0.52g)、特に0.4g以上(例えば、0.41〜0.5g)の炭化ケイ素が得られる。
しかも、本発明のポリシランは、後述するように、溶媒に溶解させて塗布するという簡便な方法で、クラックなどを生じることなく、均一な膜を形成でき、そのため、均一な炭化ケイ素の膜を得ることもできる。
このように本発明のポリシランは、従来のポリシランにはない優れた特性又は性能を有しているが、特に、炭化ケイ素を製造するためのポリシランとして有用である。以下、炭化ケイ素の製造用に用いる場合(炭化ケイ素の製造方法)について詳述する。
(炭化ケイ素の製造方法)
炭化ケイ素は、ポリシランを熱処理(加熱)することで得ることができる。炭化ケイ素の製造に用いるポリシランの形態又は形状は、特に限定されず、粉末状などであってもよく、必要に応じて二次元又は三次元的形状に成形して用いてもよい。例えば、ポリシランは、構造によっては、所定の温度(例えば、150℃以上)において熱溶融するため、このような熱溶融を利用して所望の形状に成形して熱処理に供してもよい。
本発明のポリシランは、溶媒溶解性に優れるため、溶媒に溶解させた溶液の形態で用いてもよい。例えば、ポリシランを含む溶液を気相中で噴霧又は噴射し、そのまま熱処理することで、炭化ケイ素粒子[特に、ナノメータサイズ(例えば、数十nm程度)の炭化ケイ素粒子]を得ることができる。
特に、ポリシランを含む溶液(塗布液)を基材上にコーティング(又は塗布)し、熱処理に供してもよい。本発明のポリシランは、溶媒に溶解させて塗布するという簡便な方法で、クラックなどのない均一な膜(塗膜)を形成できる。そのため、本発明では、コーティングという簡便な方法で、高収率および高純度で、かつ均一な炭化ケイ素薄膜を得ることができる。
溶液(又は塗布液)において、溶媒としては、特に制限されず、例えば、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(トルエンなど)など]、エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンなどのジアルキルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなど)、グリコールエーテル類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン)、窒素含有溶媒(N−メチルピロリドンなど)などの幅広い溶媒が使用できる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、コーティングする場合、急速の塗膜の乾燥を避けて、効率よく均一な膜を形成するため、特に、溶媒は、比較的高沸点の溶媒(例えば、沸点100℃以上の溶媒)を含んでいてもよい。
溶液(又は塗布液)において、ポリシランの濃度は、所望の膜厚や粒径に応じて選択できるが、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%程度であってもよい。高濃度であるほど膜厚を大きくできるが、クラックなどが発生しやすくなる場合がある。
なお、塗布において、基材(又は基板)は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性基板、結晶シリコンやアモルファスシリコンなどの半導体基板、金属などの導体基板、これらの基板上に導体層を形成したもの、さらにはこれらを複合したものなどが挙げられる。
基材に塗膜(薄膜)を形成する塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スリットコーティング、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
塗膜の厚み(乾燥後厚み)は、用途に応じて選択でき、例えば、0.01μm〜10mm、好ましくは0.05μm〜1mm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。
なお、基材に塗布した塗膜には、必要に応じて、乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、公知の方法を用いて行うことができる。乾燥処理は、例えば、常圧下、加圧下または減圧下において行ってもよく、加熱手段(ホットプレート、オーブンなど)により加温して行ってもよい。なお、乾燥処理は、後述の熱処理の場合のように、酸素分圧を低くして行うのが好ましいものの、ポリシランが急激に酸化する条件などでない限り、必ずしも低酸素分圧下で行う必要はない。
熱処理(加熱処理又は焼成処理)において、加熱温度は、炭化ケイ素構造を形成するとう観点から、比較的高温、例えば、600℃以上(例えば、600〜3000℃)、好ましくは700℃以上(例えば、700〜2500℃)、さらに好ましくは800℃以上(例えば、800〜2000℃)、特に900〜1800℃(例えば、1000〜1700℃)程度であってもよい。熱処理温度が高いほど、結晶の炭化ケイ素を効率よく得ることができる。
熱処理時間は、ポリシランの形態や予備加熱処理の有無などに応じて適宜選択できる。
なお、熱処理に先だって、予備加熱処理を行ってもよい。予備加熱処理は、乾燥処理に代えて又は乾燥処理とともに行うことできる。予備加熱処理において、加熱温度としては、600℃未満(例えば、50〜550℃)の範囲から選択でき、例えば、80〜500℃、好ましくは100〜450℃、さらに好ましくは150〜400℃(例えば、200〜350℃)程度であってもよい。予備加熱処理時間もまた、熱処理時間と同様に、ポリシランの形態などに応じて適宜選択できる。
熱処理(および予備加熱処理)は、低酸素条件で行うのが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスなど)及び/又は低圧下(又は減圧下又は真空下、例えば、0.001MPa以下)で行ってもよい。熱処理において、具体的な酸素圧力(酸素分圧)は、0.001MPa以下、好ましくは0.0005MPa以下、さらに好ましくは0.0001MPa以下であってもよい。
上記のようにして高純度の炭化ケイ素が得られる。なお、得られる炭化ケイ素の形態は、前記ポリシランの形態又は形状に対応して、粉末状、膜状などのいずれであってもよい。なお、膜状の炭化ケイ素の厚みは、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、10μm以下(例えば、10〜5000nm)、好ましくは20〜3000nm(例えば、30〜2000nm)、さらに好ましくは50〜1000nm(例えば、100〜500nm)程度の厚みの炭化ケイ素薄膜を得ることもできる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において、ポリシランの分子量(重量平均分子量)は、GPC(東ソー製 HLC−8320GPC)を用い、以下の条件で測定した。
流量:1.0ml/min、注入量:100μL、温度:40℃、溶媒:1級テトラヒドロフラン、検出器:RI(示差屈折)
また、実施例において、C/Si比および酸素含量は、WDX蛍光X線分析により測定した。
(実施例1)
三方コックを装着した内容積1000mlのセパラブルフラスコに粒状(粒径30〜40μm)のマグネシウム42.6重量部(1.8mol)と無水塩化リチウム46.8重量部(1.1mol)、無水塩化亜鉛45.0重量部(0.3mol)を仕込み、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、脱水グレードのテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間攪拌した。そして、反応器に、メチルトリクロロシラン44.85重量部(0.3mol)、エチルトリクロロシラン32.7重量部(0.2mol)、メチルジクロロシラン11.5重量部(0.1mol)との混合物を加え、その後35℃で約16時間攪拌して反応させた。
反応終了後、水50ml、トルエン500mlを加え固形分をろ過し、純水400mlを加え撹拌し、分液漏斗で水層を除去した。その後、400mlの水投入、撹拌、水層除去を15回繰り返し、ポリシラン溶液を得た。この溶液に無水硫酸マグネシウム(関東化学製)を加え脱水し、硫酸マグネシウムを減圧ろ過により除去した後、60℃、3torrにて16時間乾燥させた結果、14.2重量部の淡黄色固体(収率90%)を得た。
得られた化合物の分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は4000であり、分子量分布Mw/Mnは4.0であった。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、下記式で表される3つのユニットを有するポリシラン、すなわち、メチルトリクロロシラン−エチルトリクロロシラン−メチルジクロロシラン共重合体(モル比:3/2/1、C/Si比=1.33、酸素含量9重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られた粉末状のポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.42gを得た。なお、SiCの結晶には、カーボン単体は含まれていなかった。
(実施例2)
実施例1において、メチルトリクロロシラン29.9重量部(0.2mol)、エチルトリクロロシラン49.05量部(0.3mol)、ジメチルジクロロシラン12.9重量部(0.1mol)との混合物に代えたこと以外は、実施例1と同様に合成を行い、21.1重量部の淡黄色固体(収率92%)を得た。
得られた化合物の分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は5500であり、分子量分布Mw/Mnは4.2であった。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、下記式で表される3つのユニットを有するポリシラン、すなわち、メチルトリクロロシラン−エチルトリクロロシラン−ジメチルジクロロシラン共重合体(モル比:2/3/1、C/Si比=1.50、酸素含量10重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られた粉末状のポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.40gを得た。なお、SiCの結晶には、カーボン単体は含まれていなかった。
(実施例3)
実施例1において、原料となるハロシランを、メチルトリクロロシラン44.85重量部(0.3mol)、エチルトリクロロシラン49.05量部(0.3mol)の混合物に代えたこと以外は、実施例1と同様に合成を行い、14.5重量部の淡黄色固体(収率85%)を得た。
得られた化合物の分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は6000であり、分子量分布Mw/Mnは4.6であった。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、下記式で表される2つのユニットを有するポリシラン、すなわち、メチルトリクロロシラン−エチルトリクロロシラン共重合体(モル比:1/1、C/Si比=1.5、酸素含量12重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られた粉末状のポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.45gを得た。なお、SiCの結晶には、カーボン単体は含まれていなかった。
(実施例4)
実施例1において、原料となるハロシランを、メチルトリクロロシラン14.95重量部(0.1mol)、エチルトリクロロシラン81.75量部(0.5mol)の混合物に代えたこと以外は、実施例1と同様に合成を行い、24.2重量部の淡黄色固体(収率85%)を得た。
得られた化合物の分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は5200であり、分子量分布Mw/Mnは4.3であった。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、実施例3と同様の2つのユニットを有するポリシラン、すなわち、メチルトリクロロシラン−エチルトリクロロシラン共重合体(モル比:1/5、C/Si比=1.83、酸素含量11重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られた粉末状のポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.36gを得た。なお、SiCの結晶には、カーボン単体は含まれていなかった。
(実施例5)
焼成温度を800℃としたこと以外は、実施例4と同様に実験を行った。その結果、アモルファスのSiCを0.46g得た。なお、SiCの結晶には、カーボン単体は含まれていなかった。
(実施例6)
実施例4で得られたポリシランを酢酸ブチルに溶解し、10重量%の溶液を作製した。この溶液をシリコン基板上に3000rpmおよび15秒の条件でスピンコートし、Ar雰囲気下(酸素分圧0MPa)、270℃で10分間熱処理を行った後、さらに1100℃で10分熱処理を行い、薄膜を得た。
得られた薄膜をレーザー顕微鏡で観察した結果、非常に平滑でクラックのないSiC膜(厚み300nm)であることを確認した。なお、形成されたSiC膜は、鏡面状の光沢を有していた。形成されたSiC膜表面のレーザー顕微鏡写真を図1に示す。図1の写真から明らかなようにマイクロメータレベルで表面を観察しても、平滑なSiC膜が得られていることがわかる。
(実施例7)
反応終了後にトリメチルクロロシラン10.9重量部(0.1mol)を添加して24時間撹拌すること以外は実施例1と同様に実験を行い、14.7重量部の淡黄色の粘性のある固体を得た(収率93%)。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、実施例1と同じ3つのユニットを同じ比率で有し、末端基(塩素原子)がトリメチルシリル基で封鎖(又は置換)されたポリシラン(末端封鎖率77%、C/Si比=1.35、酸素含量2重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られたポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.45gを得た。
(実施例8)
反応終了後にヨウ化メチル124.4重量部(0.8mol)を65℃を保持しながら滴下漏斗を用いて2時間かけて添加し、65℃で約24時間攪拌すること以外は実施例1と同様に実験を行い、14.2重量部の淡黄色の粘性のある固体を得た(収率90%)。
NMR分析およびWDX蛍光X線分析により、実施例1と同じ3つのユニットを同じ比率で有し、末端基(塩素原子)がメチル基で封鎖(又は置換)されたポリシラン(末端封鎖率66%、C/Si比=1.37、酸素含量3重量%)が得られていることを確認した。
そして、得られたポリシラン1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCの結晶0.43gを得た。
(比較例1)
三方コックを装着した内容積1000mlのセパラブルフラスコに粒状(粒径30〜40μm)のマグネシウム42.6重量部(1.8mol)と無水塩化リチウム46.8重量部(1.1mol)、無水塩化亜鉛15.0重量部(0.1mol)を仕込み、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、脱水グレードのテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間攪拌した。そして、反応器に、メチルフェニルジクロロシラン114.7重量部(0.6mol)を加え、その後25℃で約16時間攪拌して反応させた。
反応終了後、水50ml、トルエン500mlを加え固形分をろ過し、純水400mlを加え撹拌し、分液漏斗で水層を除去した。その後、400mlの水投入、撹拌、水層除去を15回繰り返し、ポリシラン溶液を得た。この溶液に無水硫酸マグネシウム(関東化学製)を加え脱水し、硫酸マグネシウムを減圧ろ過により除去した後、60℃、3torrにて16時間乾燥させた結果、64.9重量部の白色固体(収率90%)を得た。
得られたポリシラン(ポリメチルフェニルシラン、C/Si比=7)1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCを含む結晶0.20gを得たが、カーボン単体が混入していた。
また、スピンコートを行うために高沸点溶媒である酢酸ブチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートでの溶解を試みたが、いずれも白濁し、均一な10重量%の溶液を得ることができなかった。そのため、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたところ、白濁、沈殿がなく、一見、均一な溶液が得られたので、3000rpmおよび30秒の条件でコーティングを行ったが、均一な膜が得られなかった。
(比較例2)
三方コックを装着した内容積1000mlのセパラブルフラスコに粒状(粒径30〜40μm)のマグネシウム42.6重量部(1.8mol)と無水塩化リチウム46.8重量部(1.1mol)、無水塩化鉄(III)16.2重量部(0.1mol)を仕込み、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、脱水グレードのテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間攪拌した。そして、反応器に、ジフェニルジクロロシラン151.9部(0.6mol)を8時間かけて滴下し、その後65℃で約16時間攪拌して反応させた。
反応終了後、水50ml、トルエン500mlを加え固形分をろ過し、純水400mlを加え撹拌し、分液漏斗で水層を除去した。その後、400mlの水投入、撹拌、水層除去を15回繰り返し、ポリシラン溶液を得た。この溶液に無水硫酸マグネシウム(関東化学製)を加え脱水し、硫酸マグネシウムを減圧ろ過により除去した後、60℃、3torrにて16時間乾燥させた結果、87.5重量部の白色固体(収率80%)を得た。
得られたポリシラン(ポリジフェニルシジクロロシラン、C/Si比=12)1gをアルゴン雰囲気下(酸素分圧0MPa)、1400℃で12時間熱処理したところ、黒色のSiCを含む結晶0.11gを得たが、カーボン単体が混入していた。
また、スピンコートを行うために高沸点溶媒である酢酸ブチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートでの溶解を試みたが、いずれも溶解しなかった。また、テトラヒドロフランに溶解し、3000rpmおよび30秒の条件でコーティングを行ったが、乾燥した時点でクラックが発生し、平滑な膜が得られなかった。
本発明のポリシランは、ケイ素含量が大きく、ポリシランの機能を十分に発揮できるため、樹脂添加剤などとして用いることができる。特に、本発明のポリシランは、高純度でかつ高収率で炭化ケイ素を得ることができるため、炭化ケイ素を製造するためのポリシラン(炭化ケイ素前駆体)として好適である。すなわち、本発明のポリシランは、C/Si比が低いため、簡易な熱処理により純度の高い炭化ケイ素が高収率で得られる。また、種々の溶媒に溶解し、コーティングにより平滑な基材の表面だけでなく、複雑な形状の基材(凹凸のある基材など)の表面にも均一な炭化ケイ素の薄膜を形成でき、耐食性、耐熱性、伝熱性、耐摩耗性などの特性を表面に備えた基材を効率よく得ることができる。

Claims (20)

  1. 金属マグネシウム成分の存在下、下記式(1A)
    (式中、X 〜X は同一又は異なってハロゲン原子を示し、R は水素原子又は炭化水素基を示す)
    で表されるトリハロシランを少なくとも含むハロシランの重合により得られ、下記式(1)で表されるユニットを少なくとも含むポリシランを600℃以上の温度で熱処理し、炭化ケイ素を製造する方法であって
    (式中、R は前記に同じ
    式(1)で表されるユニットが、下記式(1a)で表されるユニットと、下記式(1b)で表されるユニットとを含み、
    (式中、R 1a は、水素原子、C 2−6 アルキル基又はアリール基を示す。)
    ポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が以下であるポリシラン(ただし、メチルシリン−メチルシラン共重合体を除く)を熱処理する炭化ケイ素の製造方法
  2. 式(1b)において、R1aがC2−4アルキル基である請求項記載の方法
  3. 式(1a)で表されるユニットと、式(1b)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=5/95〜95/5である請求項1又は2記載の方法
  4. ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合が、ケイ素原子換算で50モル%以上である請求項1〜のいずれかに記載の方法
  5. ポリシランが、さらに、下記式(2)で表されるユニットを含む請求項1〜のいずれかに記載の方法
    (式中、R2aおよびR2bは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。)
  6. 式(2)において、R2aがC1−4アルキル基であり、R2bが水素原子又はC1−4アルキル基である請求項記載の方法
  7. 式(1)で表されるユニットと式(2)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1である請求項5又は6記載の方法
  8. ポリシランが、下記式(1a)で表されるユニットと、下記式(1b)で表されるユニットと、下記式(2)で表されるユニットとを有し、ポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が以下である請求項1〜7のいずれかに記載の方法
    (式中、R1aは、前記請求項1に同じ。2aおよびR2bは同一又は異なって水素原子又は 1−4 アルキル基を示す。)
  9. ポリシランの重量平均分子量が500以上である請求項1〜のいずれかに記載の方法
  10. ポリシランの炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が0.5〜である請求項1〜のいずれかに記載の方法
  11. ポリシランが、以下のいずれかである請求項1〜10のいずれかに記載の方法
    (i)前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)においてR1aがC2−4アルキル基であるユニットとを有し、前記式(1a)で表されるユニットと前記式(1b)で表されるユニットとの割合が前者/後者(モル比)=5/95〜95/5であり、ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合がケイ素原子換算で70モル%以上であり、重量平均分子量が700以上であり、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が1.1〜2であるポリシラン
    (ii)前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)においてR1aがC2−4アルキル基であるユニットと、前記式(2)において、R2aがC1−4アルキル基であり、R2bが水素原子又はC1−4アルキル基であるユニットとを有し、前記式(1a)で表されるユニットと前記式(1b)で表されるユニットとの割合が前者/後者(モル比)=5/95〜65/35であり、ポリシラン全体に対する式(1)で表されるユニットの割合がケイ素原子換算で70モル%以上であり、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=60/40〜95/5であり、重量平均分子量が700以上であり、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が1.1〜2であるポリシラン
  12. ポリシランが、不活性雰囲気下において1400℃で12時間加熱した後の重量減少率が70%以下である請求項1〜11のいずれかに記載の方法
  13. 酸素含量が、ポリシラン全体に対して15重量%以下である請求項1〜12のいずれかに記載の方法
  14. ポリシランの末端が封鎖されている請求項1〜13のいずれかに記載の方法
  15. ポリシランの末端が炭化水素基及び/又は有機シリル基により封鎖されており、酸素含量がポリシラン全体に対して7重量%以下である請求項1〜14のいずれかに記載の方法
  16. ポリシランを含む溶液を基材上にコーティングして熱処理し、炭化ケイ素薄膜を製造する請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 下記式(1a)で表されるユニットと、下記式(1b)で表されるユニットと、下記式(2)で表されるユニットとを有し、ポリシランを構成する炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が2以下であるポリシラン。
    (式中、R 1a は、水素原子、C 2−6 アルキル基又はアリール基を示し、R 2a およびR 2b は同一又は異なって水素原子又はC 1−4 アルキル基を示す。)
  18. ポリシランの炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が0.5〜2である請求項17記載のポリシラン。
  19. 以下のポリシランである請求項17又は18記載のポリシラン。
    前記式(1a)で表されるユニットと、前記式(1b)においてR 1a がC 2−4 アルキル基であるユニットと、前記式(2)において、R 2a がC 1−4 アルキル基であり、R 2b が水素原子又はC 1−4 アルキル基であるユニットとを有し、前記式(1a)で表されるユニットと前記式(1b)で表されるユニットとの割合が前者/後者(モル比)=5/95〜65/35であり、ポリシラン全体に対する前記式(1)で表されるユニットの割合がケイ素原子換算で70モル%以上であり、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとの割合が、前者/後者(モル比)=60/40〜95/5であり、重量平均分子量が700以上であり、炭素原子とケイ素原子とのモル比(C/Si)が1.1〜2であるポリシラン
  20. ポリシランの末端が封鎖されている請求項17〜19のいずれかに記載のポリシラン。
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