JP5747457B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
上記構成の如く、リチウム遷移金属複合酸化物にニッケルやコバルトが含まれる場合には、高活性の新生面上で生じる非水電解質の還元分解生成物が、正極に拡散、泳動し、正極活物質と接触して酸化分解されるという問題が大きくなる。しかし、上記構成の如くリチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に希土類のオキシ水酸化物等の粒子が均一に分散した状態で固着されていれば、このような問題を大幅に抑制できる。
Mの割合が高くなり過ぎると、正極容量が低下するからである。
Co成分が相対的に多くなると、正極容量が高くなり、しかも電池の作動電圧が高くなるため、電池の容量密度やエネルギー密度を高めることができるからである。
NiとCoとMとが、それぞれ所定量以上含まれている正極活物質では、熱安定性を高めることができ、電池の信頼性が向上するからである。
Ni成分が相対的に多くなると、正極容量がさらに高くなるため、電池容量の増大を図ることができるからである。
水酸化エルビウム及びオキシ水酸化エルビウムであれば、上述した作用効果が一層発揮されるからである。
上記の如く、希土類化合物からなる粒子の平均粒子径を規制するのは、以下に示す理由による。即ち、当該平均粒子径が100nmを超えると、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の粒径に対する希土類水酸化物等の粒径が大きくなり過ぎるために、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面が希土類水酸化物等によって緻密に覆われなくなる。したがって、リチウム遷移金属複合酸化物粒子と非水電解質やその還元分解生成物が直に触れる面積が大きくなるため、非水電解質やその還元分解物の酸化分解が増加し、充放電特性が低下する。一方、上記1nm未満になると、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面が希土類水酸化物等によって緻密に覆われ過ぎる。このため、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面でのリチウムイオンの吸蔵,放出の性能が低下して、充放電特性が低下するという理由による。尚、上記のことを考慮すれば、希土類化合物からなる粒子の平均粒子径は10nm以上50nm以下の範囲であることがより好ましい。
(1)リチウム遷移金属複合酸化物の作製
Li2CO3とCoCO3とを、LiとCoとのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて800℃で24時間熱処理し、更に粉砕することにより、LiCoO2で表されるコバルト酸リチウムの粉末(平均粒子径11μm)を得た。
上記コバルト酸リチウム1000gを3リットルの純水に添加し攪拌して、コバルト酸リチウムが分散した懸濁液を調製した後、この懸濁液に硝酸エルビウム5水和物1.85gを溶解した溶液を添加した。尚、硝酸エルビウム5水和物を溶解した液を懸濁液に添加する際には、10質量%の水酸化物ナトリウム水溶液を添加し、コバルト酸リチウムを含む溶液のpHを9に保った。次に、上記懸濁液を吸引濾過し、更に水洗して得られた粉末を120℃で熱処理(乾燥)した。これにより、コバルト酸リチウムの表面に水酸化エルビウムが均一に固着した正極活物質粉末が得られた。
得られた正極活物質粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、図4に示すように、コバルト酸リチウムの表面に均一に分散された状態で、平均粒子径100nm以下のエルビウム化合物(水酸化エルビウム)が均一に固着していることが認められた。尚、エルビウム化合物の固着量をICPにより測定したところ、エルビウム元素換算で、コバルト酸リチウムに対して0.07質量%であった。
分散媒としてのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に、上記作製の正極活物質粉末と、正極導電剤としての平均粒径30nmのカーボンブラック(アセチレンブラック)粉末と、正極バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを、正極活物質と正極導電剤と正極バインダーとの質量比が95:2.5:2.5となるように加えた後、混練し、正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み15μm、長さ402mm、幅50mm)の両面に塗布し(塗布部の長さは、表面側で340mm、裏面側で270mm、塗布部の幅は共に50mm)、乾燥した後、圧延することにより正極を作製した。尚、両面に正極活物質層が形成されている部分において、正極集電体上の正極活物質層の量は48mg/cm2、正極の厚みは148μmであった。また、正極の端部にある正極活物質層の未塗布部分には、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続した。
(1)ケイ素負極活物質の作製
先ず、熱還元法により、多結晶ケイ素塊を作製した。具体的には、金属反応炉(還元炉)内に設置されたケイ素芯を通電加熱して800℃まで上昇させておき、これに精製された高純度モノシラン(SiH4)ガスの蒸気と精製された水素とを混合したガスを流すことで、ケイ素芯の表面に多結晶ケイ素を析出させ、これにより、太い棒状に生成された多結晶ケイ素塊を作製した。
次に、この多結晶ケイ素塊を粉砕分級することで、純度99%の多結晶ケイ素粒子(負極活物質粒子)を作製した。この多結晶ケイ素粒子においては、結晶子サイズは32nmであり、メディアン径は10μmであった。尚、上記結晶子サイズは、粉末X線回折のケイ素の(111)ピークの半値幅を用いて、scherrerの式により算出した。また、上記メディアン径は、レーザー回折法による粒度分布測定において、累積体積が50%となった径と規定した。
分散媒としてのNMPに、上記負極活物質粉末と、負極導電剤としての平均粒径3.5μmの黒鉛粉末と、負極バインダーとしての下記化1(nは1以上の整数)で示される分子構造を有しガラス転移温度300℃である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体のワニス(溶媒:NMP、濃度:熱処理によるポリマー化+イミド化後のポリイミド樹脂の量で47質量%)とを、負極活物質粉末と負極導電剤粉末とイミド化後のポリイミド樹脂との質量比が89.5:3.7:6.8となるように混合し、負極合剤スラリーを調製した。
ここで、上記ポリイミド樹脂の前駆体のワニスは、下記化2、化3、化4に示す3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステルと、下記化5に示すm−フェニレンジアミンとから作製できる。また、上記化2、化3、化4に示す3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステルは、下記化6に示す3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物にNMPの存在下、2当量のエタノールを反応させることにより作製できる。
式中、R’はエチル基である。
式中、R’はエチル基である。
式中、R’はエチル基である。
負極集電体として、厚さ18μmの銅合金箔(C7025合金箔であり、組成は、Cuが96.2質量%、Niが3質量%、Siが0.65質量%、Mgが0.15質量%)の両面を、表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.25μm、平均山間隔S(JIS B 0601−1994)が1.0μmとなるように電解銅粗化したものを用いた。この負極集電体の両面に上記負極合剤スラリーを、25℃空気中で塗布し、120℃空気中で乾燥後、25℃空気中で圧延した。得られたものを、長さ380mm、幅52mmの長方形に切り抜いた後、アルゴン雰囲気下で400℃、10時間熱処理し、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極を作製した。負極集電体上の負極活物質層の量は5.6mg/cm2で、負極の厚みは56μmであった。
尚、負極の端部には、負極集電タブとしてのニッケル板を接続した。
フルオロエチレンカーボネート(FEC)とプロピレンカーボネート(PC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比10:10:80で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解させた後、この溶液に対して、0.4質量%の二酸化炭素ガスを溶存させ、非水電解液を調製した。
上記正極を1枚、上記負極を1枚、ポリエチレン製微多孔膜(厚さ20μm、長さ450mm、幅54.5mmであって、突き刺し強度340g、空孔率39%)から成るセパレータを2枚用いて、正極と負極とをセパレータで介して対向させた。次に、直径18mmの巻き芯で、渦巻き状に巻回した。この際、正極タブ及び負極タブは共に、各電極内における最外周部に位置するように配置した。その後、巻き芯を引き抜いて渦巻状の電極体を作製し、更にこの渦巻状の電極体を押し潰して、扁平型の電極体を作製した。
上記扁平型電極体及び上記作製の電解液を、25℃、1気圧のCO2雰囲気下でアルミニウムラミネート製の外装体内に挿入して扁平型のリチウム二次電池を作製した。尚、当該二次電池を4.20Vまで充電した場合の設計容量は1000mAhである。
図1及び図2に示すように、上記リチウム二次電池11の具体的な構造は、正極1と負極2とがセパレータ3を介して対向配置されており、これら正負両極1、2とセパレータ3とから成る扁平型の電極体には非水電解液が含浸されている。上記正極1と負極2は、それぞれ、正極集電タブ4と負極集電タブ5とに接続され、二次電池としての充電及び放電が可能な構造となっている。尚、電極体は、周縁同士がヒートシールされた閉口部7を備えるアルミラミネート外装体6の収納空間内に配置されている。
(実施例1)
上記発明を実施するための最良の形態で示した電池を用いた。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。
正極の作製において、懸濁液を吸引濾過し、更に水洗して得られた粉末の熱処理温度を300℃としたこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。このように300℃で熱処理すると、全部或いは大部分の水酸化エルビウムがオキシ水酸化エルビウムに変化するので、コバルト酸リチウム粒子の表面上にオキシ水酸化エルビウムが分散した状態で固着される。但し、一部は水酸化エルビウムの状態で残存する(オキシ水酸化エルビウムに変化しない)場合があるので、コバルト酸リチウム粒子の表面上には水酸化エルビウムが存在している場合もある。尚、全部或いは大部分はオキシ水酸化エルビウムに変化していることを考慮して、コバルト酸リチウム粒子の表面上に分散した状態で固着される化合物として、オキシ水酸化エルビウムと記載することがある。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A2と称する。
硝酸エルビウム5水和物に代えて、オキシ硝酸ジルコニウム2水和物を2.06g用いたこと以外は実施例1と同様にして電池を作製した。尚、熱処理温度は120℃とし、また、コバルト酸リチウムに対するジルコニウムの量は0.07質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Z1と称する。
正極活物質として、コバルト酸リチウムの表面に水酸化エルビウム粒子が固着されていないものを用いた以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Z2と称する。
上記の本発明電池A1、A2及び比較電池Z1、Z2について、下記の条件にて充放電サイクルを行って充放電サイクル特性(サイクル寿命、及び、充放電サイクル前後での電池厚み増加量)を調べたので、それらの結果を表1に示す。
25℃及び45℃
〔充放電条件〕
・1サイクル目の充電条件
50mAの電流で4時間定電流充電を行った後、200mAの電流で電池電圧が4.20Vとなるまで定電流充電を行い、更に、4.20Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・1サイクル目の放電条件
200mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
1000mAの電流で電池電圧が4.20Vとなるまで定電流充電を行い、更に、4.20Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・2サイクル目〜500サイクル目の放電条件
1000mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
下記(1)式で示す容量維持率が60%になった時点で充放電サイクルを終了し、充放電を終了時点でのサイクル数をサイクル寿命とした。
(nサイクル目の放電容量Q2/2サイクル目の放電容量Q1)×100・・・(1)
図3に示すように、電池11の最大面積の2つの面を2つの平板12で挟んだ。この2つの平板12間の距離(電池厚み)を1サイクル目の放電後と充放電サイクル試験後に測定した。1サイクル目の放電後の電池厚みをL1(以下、単に、電池厚みL1という)とし、充放電サイクル試験後の電池厚みをL2(以下、単に、電池厚みL2という)とした。そして、これらの厚みから、下記(2)式に示す電池厚み増加量を算出した。
電池厚み増加量=電池厚みL2−電池厚みL1・・・(2)
(実施例)
〔正極の作製〕
先ず、LiOHとニッケルを金属元素の主成分とする複合水酸化物〔Ni0.80Co0.17Al0.03(OH)2〕を、Liと遷移金属全体とのモル比が1.05:1となるようにして石川式らいかい乳鉢にて混合した後、酸素雰囲気中にて720℃で20時間熱処理し、さらに粉砕することによりLi1.05Ni0.80Co0.17Al0.03O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(平均粒子径15μm)を得た。次に、このリチウム遷移金属複合酸化物の表面に、前記第1実施例の実施例2と同様にして、オキシ水酸化エルビウムを固着させた。
長さ317mm、幅52mmに切り出したこと以外は、前記第1実施例の実施例2と同様に負極を作製した。
フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを、体積比20:80で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解させた後、この溶液に対して、0.4質量%の二酸化炭素ガスを溶存させ、非水電解液を調製した。
ポリエチレン製微多孔膜の長さ380mmにした以外は、前記第1実施例の実施例2と同様に扁平型の電極体を作製した。
前記第1実施例の実施例2と同様にして、扁平型のリチウム二次電池を作製した。尚、当該二次電池を4.2Vまで充電した場合の設計容量は800mAhである。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A3と称する。
正極活物質として、Li1.05Ni0.80Co0.17Al0.03O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物の表面にオキシ水酸化エルビウム粒子が固着されていないものを用いた以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Z3と称する。
上記の本発明電池A3及び比較電池Z3について、下記条件で充放電を行い(初期充放電を行った後に、高温連続充電を行なう)、高温連続充電前後における電池厚み増加量を調べたので、その結果を下記表2に示す。
・温度
25℃(室温)
・充電条件
800mAの電流で電池電圧4.20Vまで定電流充電した後、4.20Vの電圧で電流値が40mAになるまで定電圧充電するという条件。
・放電条件
上記条件で初期充電した各リチウム二次電池を5分間休止させた後、800mAの定電流で電池電圧2.50Vになるまで放電するという条件。
・温度
60℃(各電池を恒温槽内に配置)
・充電条件
800mAの電流で電池電圧4.20Vまで定電流充電した後、4.20Vの電圧を維持した状態で50時間充電するという条件。
そして、上記高温連続充電前後に各電池厚みを測定して、各電池の厚み増加量を求めた。尚、測定方法は、上記第1実施例の実験で示した方法と同様の方法である。
但し、本発明電池A3では、上述の如く、正極活物質の表面における還元分解生成物の酸化分解反応は大幅に抑制されるので、過酷な条件下であっても、比較電池Z3よりも膨れが抑制されている。また、本発明電池A3及び比較電池Z3と異なり、電解液中のFECが負極表面で分解、ガス発生しない場合においても、正極表面での酸化分解反応の抑制効果が同様に発揮されることを、後述の第2参考例において実証した。
(1)リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に固着させる化合物としては、上記水酸化エルビウムや上記オキシ水酸化エルビウムに限定されるものではなく、イッテルビウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、ツリウム、ルテチウム、ネオジム、サマリウム、プラセオジム、ユーロピウム、ガドリニウム、ランタン、及びイットリウム等の希土類の水酸化物やオキシ水酸化物を用いた場合にも同様の効果が得られる。この場合の正極活物質の製造方法は上記実施例1又は実施例2と略同様であり(例えば、イットリウムの水酸化物を得るには、リチウム遷移金属複合酸化物粒子を分散させた溶液に、エルビウム塩に代えてイットリウム塩の溶液を加える他は実施例1と同様の方法で良く)、また、希土類のオキシ水酸化物を得るには、上記と同様、塩を変更する他に、後述の如く熱処理温度を変更すれば良い。
・水酸化エルビウム
水酸化エルビウムの場合、水酸化エルビウムが分解されてオキシ水酸化エルビウムに変化する温度が約230℃であり、このオキシ水酸化エルビウムがさらに分解されて酸化エルビウムに変化する温度が約440℃である。そして、水酸化エルビウムが析出された正極活物質粒子を熱処理する温度が440℃以上になると、水酸化エルビウムが酸化エルビウムに変化すると共に、エルビウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。このような構成になると、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化エルビウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を440℃未満に規制することが好ましい。
水酸化イッテルビウムの場合、熱処理温度を1分間に5℃上昇させて熱重量分析を行った結果、約230℃と約400℃とにおいて重量変化の変極点が認められ、約500℃では重量の変化が小さくなって安定した。これは、約230℃の温度で水酸化イッテルビウムが分解されてオキシ水酸化イッテルビウムに変化し始め、さらに約400℃温度ではこのオキシ水酸化イッテルビウムがさらに分解されて酸化イッテルビウムに変化し始め、約500℃の温度では水酸化イッテルビウムが酸化イッテルビウムに変化したためと考えられる。
したがって、水酸化イッテルビウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が400℃以上になると、オキシ水酸化イッテルビウムが酸化イッテルビウムに変化し始め、500℃以上にすると、水酸化イッテルビウムが酸化イッテルビウムに変化すると共に、イッテルビウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化イッテルビウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を500℃未満、好ましくは400℃未満に規制することが好ましい。
水酸化テルビウムの場合、水酸化テルビウムが分解されてオキシ水酸化テルビウムに変化する温度が約295℃であり、このオキシ水酸化テルビウムが更に分解されて酸化テルビウムに変化する温度が約395℃である。
そして、水酸化テルビウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が395℃以上になると、水酸化テルビウムが酸化テルビウムに変化すると共に、テルビウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液とが反応するのを十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化テルビウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を395℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ジスプロシウムの場合、水酸化ジスプロシウムが分解されてオキシ水酸化ジスプロシウムに変化する温度が約275℃であり、オキシ水酸化ジスプロシウムがさらに分解されて酸化ジスプロシウムに変化する温度が約450℃である。
そして、水酸化ジスプロシウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が450℃以上になると、水酸化ジスプロシウムが酸化ジスプロシウムに変化すると共に、ジスプロシウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化ジスプロシウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を450℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ホルミウムの場合、水酸化ホルミウムが分解されてオキシ水酸化ホルミウムに変化する温度が約265℃であり、このオキシ水酸化ホルミウムがさらに分解されて酸化ホルミウムに変化する温度が約445℃である。
そして、水酸化ホルミウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が445℃以上になると、水酸化ホルミウムが酸化ホルミウムに変化すると共に、ホルミウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化ホルミウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を445℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ツリウムの場合、水酸化ツリウムが分解されてオキシ水酸化ツリウムに変化する温度が約250℃であり、このオキシ水酸化ツリウムがさらに分解されて酸化ツリウムに変化する温度が約405℃である。
そして、水酸化ツリウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が405℃以上になると、水酸化ツリウムが酸化ツリウムに変化すると共に、ツリウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化ツリウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を405℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ルテチウムの場合、熱重量分析を行った結果、水酸化ルテチウムが分解されてオキシ水酸化ルテチウムになる温度が約280℃であり、このオキシ水酸化ルテチウムがさらに分解されて酸化ルテチウムに変化する温度が約405℃であった。
そして、水酸化ルテチウムが析出された正極活物質を熱処理する温度が405℃以上になると、水酸化ルテチウムが酸化ルテチウムに変化すると共に、ルテチウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、正極活物質と非水電解液との反応を十分に抑制することが困難になると共に、正極活物質の充放電特性が大きく低下する。
このため、水酸化ルテチウムが析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を405℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ネオジムの場合、水酸化ネオジムは335℃〜350℃の温度でオキシ水酸化ネオジウムに変化し、440℃〜485℃の温度で酸化ネオジムに変化する。
そして、水酸化ネオジムが表面に析出された正極活物質を熱処理する温度が440℃以上になると、水酸化ネオジムが酸化ネオジムに変化すると共に、ネオジムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散することがある。この場合、酸化ネオジムでは、水酸化ネオジムやオキシ水酸化ネオジムの場合と同様の効果を得ることができず、正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化ネオジムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を440℃未満に規制することが好ましい。
水酸化サマリウムの場合、水酸化サマリウムは290℃〜330℃の温度でオキシ水酸化サマリウムに変化し、430℃〜480℃の温度で酸化サマリウムに変化する。
そして、水酸化サマリウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する温度が430℃以上になると、水酸化サマリウムが酸化サマリウムに変化すると共に、サマリウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散することがある。この場合、酸化サマリウムでは、水酸化サマリウムやオキシ水酸化サマリウムの場合と同様の効果を得ることができず、正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化サマリウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を430℃未満に規制することが好ましい。
水酸化プラセオジムの場合、正極活物質粒子の表面に水酸化プラセオジムを析出させた後において、水分除去を兼ねて熱処理することが好ましい。ここで、表面に水酸化プラセオジムが析出された正極活物質を熱処理するにあたり、熱処理する温度が約310℃以上になると、水酸化プラセオジムが酸化物に変化して、水酸化プラセオジムと同様の効果が得られない。
このため、水酸化プラセオジムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を310℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ユーロピウムの場合、水酸化ユーロピウムは約305℃の温度でオキシ水酸化ユーロピウムに変化し、約470℃の温度で酸化ユーロピウムに変化する。
そして、水酸化ユーロピウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する温度が470℃以上になると、水酸化ユーロピウムが酸化ユーロピウムに変化すると共に、ユーロピウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散する。この場合、酸化ユーロピウムでは、水酸化ユーロピウムやオキシ水酸化ユーロピウムの場合と同様の効果を得ることができず、正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化ユーロピウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を470℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ガドリニウムの場合、水酸化ガドリニウムは218℃〜270℃の温度でオキシ水酸化ガドリニウムに変化し、420℃〜500℃の温度で酸化ガドリニウムに変化する。
そして、水酸ガドリニウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合において、熱処理する温度が420℃以上になると、水酸化ガドリニウムが酸化ガドリニウムに変化すると共に、ガドリニウムが正極活物質粒子の内部に拡散することがある。この場合、酸化ガドリニウムでは、水酸化ガドリニウムやオキシ水酸化ガドリニウムの場合と同様の効果を得ることができず、正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化ガドリニウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を420℃未満に規制することが好ましい。
水酸化ランタンの場合、水酸化ランタンは310℃〜365℃の温度でオキシ水酸化ランタンに変化し、460℃〜510℃の温度でオキシ水酸化ランタンが酸化ランタンに変化する。
そして、水酸化ランタンが表面に析出された正極活物質を熱処理する温度が600℃以上になると、水酸化ランタンが酸化ランタンに変化して、水酸化ランタンやオキシ水酸化ランタンの場合と同様の効果を得ることができなくなると共に、ランタンがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散されて正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化ランタンが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合には、熱処理温度を460℃未満に規制することが好ましい。
水酸化イットリウムの場合、水酸化イットリウムは約260℃の温度でオキシ水酸化イットリウムに変化し、約450℃の温度で酸化イットリウムに変化する。そして、水酸化イットリウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する温度が450℃以上になると、水酸化イットリウムが酸化イットリウムに変化して、水酸化イットリウムやオキシ水酸化イットリウムの場合と同様の効果を得ることができなくなると共に、イットリウムがリチウム遷移金属複合酸化物粒子の内部に拡散されて正極活物質の特性が低下し、充放電効率などの特性が低下する。
このため、水酸化イットリウムが表面に析出された正極活物質を熱処理する場合、熱処理温度を450℃未満にすることが好ましい。
ここで、理解の容易のために、上記希土類の水酸化物が希土類のオキシ水酸化物に変化する温度、及び、希土類の酸化物に変化する温度について、下記表3に記載しておく。
尚、このことは、エルビウム化合物以外の上述した化合物を用いる場合も同様であり、また、下記(3)〜(5)に記載の事項についてもエルビウム化合物以外の上述した化合物に適用される。
ケイ素を負極活物質として用いた電池では、充放電時のケイ素の大きな体積変化に起因した割れの発生によるケイ素粒子表面での劣化を抑制すべく、非水電解質の溶媒成分としてフルオロエチレンカーボネートを用いることがある。しかし、当該フルオロエチレンカーボネートは、電子吸引性の高いフッ素原子を含むため還元分解性が高い。還元性の高いケイ素負極活物質表面上では、フルオロエチレンカーボネートの還元分解反応が多く生じる。この還元分解反応により生じるフッ化リチウムはケイ素負極表面上に生成し、ケイ素負極の劣化を抑制する効果を発現するが、残りの還元分解生成物の中の一部は正極に拡散,泳動し、正極活物質表面上でさらに酸化分解される。この酸化分解生成物は、他の非水電解質成分の還元分解物の正極での酸化分解生成物と同様、リチウム遷移金属複合酸化物粒子表面での堆積による充放電反応抵抗の増加や、酸化分解生成物の一部であるガスの発生による電池厚みの増加を引き起こす。
(下記実験に関し、前提となる事項)
上述の如く、正極活物質粒子の表面に固着させる物質としては、上記水酸化エルビウムや上記オキシ水酸化エルビウムに限定されるものではなく、エルビウム以外の希土類の水酸化物やオキシ水酸化物であっても良いが、これを実証すべく、以下の実験を行った。
ここで、本参考例では、正極活物質粒子の表面に固着させる希土類の水酸化物、オキシ水酸化物として、上記実施例で示したオキシ水酸化エルビウムに加えて、水酸化イッテルビウム、オキシ水酸化サマリウム、オキシ水酸化ネオジムを用いて電池を作製し、充放電サイクル特性試験を行った。但し、各参考例では、負極活物質として炭素材料を用いたという点が、負極活物質としてケイ素を用いた上述の各実施例と大きく異なる(尚、正極活物質粒子の種類や非水電解液の種類も上記実施例と若干異なっているが、これらの相違は本質的な相違ではない)。
正極の作製、負極の作製、及び電解液の調製を、下記のようにして行った以外は、上記実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。尚、当該二次電池を4.40Vまで充電した場合の設計容量は780mAhである。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池B1と称する。
(1)湿式法による水酸化エルビウムコート
リチウム遷移金属複合酸化物粒子として、MgとAlとがそれぞれ0.5モル%固溶されたコバルト酸リチウムを用い、このコバルト酸リチウム粒子1000gを3リットルの純水中に投入し、これを撹拌しながら、5.79gの硝酸エルビウム5水和物を200mlの純水に溶解させた硝酸エルビウム水溶液を添加した。このとき、この溶液のpHが9になるように10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えて、コバルト酸リチウム粒子の表面に水酸化エルビウムを固着させた。そして、これを吸引濾過して処理物を濾取し、この処理物を120℃で乾燥させて、水酸化エルビウムが表面に固着されたコバルト酸リチウム粒子を得た。
ここで、エルビウム化合物の固着量は、エルビウム元素換算で、コバルト酸リチウムに対して0.22質量%であった。また、当該正極活物質をSEMにより観察したところ、コバルト酸リチウム粒子の表面に固着されたエルビウム化合物の粒子の粒径は、その殆どが100nm以下であり、しかも、エルビウム化合物の粒子がコバルト酸リチウム粒子の表面に分散された状態で固着していた。
負極活物質としての人造黒鉛と、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)と、結着剤のSBR(スチレン−ブタジエンゴム)とを98:1:1の質量比で水溶液中において混合し、負極合剤スラリーを調製した。そして、この負極合剤スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布し、これを乾燥させ、圧延ローラにより圧延させて、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を得た。尚、この負極における負極活物質の充填密度は1.75g/cm3であった。
非水系溶媒のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した混合溶媒に、溶質のLiPF6を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解させて、非水電解液を作製した。
上記硝酸エルビウムに代えて、5.24gの硝酸イッテルビウム3水和物を用いたこと以外は、上記参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、イッテルビウム化合物(主としてオキシ水酸化イッテルビウムから成るが、水酸化イッテルビウムがオキシ水酸化イッテルビウムに変化せず水酸化イッテルビウムとして残存している場合もある)の粒子が固着された構造となっている。また、上記イッテルビウム化合物の固着量は、イッテルビウム元素(Yb)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.22質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池B2と称する。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子として、MgとAlとがそれぞれ0.5モル%、Zrが0.1モル%固溶されたコバルト酸リチウムを用い、硝酸エルビウム5水和物に代えて、硝酸サマリウム6水和物5.35gを用い、且つ、熱処理温度を400℃としたこと以外は、上記参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、サマリウム化合物(主としてオキシ水酸化サマリウムから成るが、水酸化サマリウムがオキシ水酸化サマリウムに変化せず水酸化サマリウムとして残存している場合もある)の粒子が固着された構造となっている。また、上記サマリウム化合物の固着量は、サマリウム元素(Sm)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.18質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池B3と称する。
リチウム遷移金属複合酸化物として、MgとAlとがそれぞれ0.5モル%、Zrが0.1モル%固溶されたコバルト酸リチウムを用い、硝酸エルビウム5水和物に代えて硝酸ネオジム6水和物5.47gを用い、熱処理温度を400℃としたこと以外は、上記参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、ネオジム化合物(主としてオキシ水酸化ネオジムから成るが、水酸化ネオジムがオキシ水酸化ネオジムに変化せず水酸化ネオジムとして残存している場合もある)の粒子が固着された構造となっている。また、上記ネオジム化合物の固着量は、ネオジム元素(Nd)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.18質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池B4と称する。
コバルト酸リチウム粒子の表面にエルビウム化合物を固着させなかったこと以外は、上記参考例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y1と称する。
硝酸エルビウム5水和物の代わりに硝酸アルミニウム9水和物30.9gを用い、且つ、熱処理温度を120℃としたこと以外は、参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、水酸化アルミニウムの粒子が固着された構造となっている。また、上記水酸化アルミニウムの固着量は、アルミニウム元素(Al)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.22質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y2と称する。
硝酸エルビウム5水和物の代わりに硝酸アルミニウム9水和物30.9gを用い、且つ、熱処理温度を500℃としたこと以外は、参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、酸化アルミニウムの粒子が固着された構造となっている。また、上記酸化アルミニウムの固着量は、アルミニウム元素(Al)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.22質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y3と称する。
熱処理温度を500℃としたこと以外は、参考例1と同様にして電池を作製した。この電池の正極活物質では、コバルト酸リチウム粒子の表面に、酸化エルビウムの粒子が固着された構造となっている。また、上記酸化エルビウムの固着量は、エルビウム元素(Er)換算で、コバルト酸リチウムに対して0.22質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y4と称する。
コバルト酸リチウム粒子の表面にサマリウム化合物を固着させなかったこと以外は、上記参考例3と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y5と称する。
次に、参考電池B1〜B4及び比較参考電池Y1〜Y5を、下記条件で充放電を行い、高温連続充電試験後の残存容量率と電池厚み増加量とを調べたので、その結果を下記表4に示す。
〔初期充放電〕
・温度
25℃(室温)
・充電条件
750mAの電流で電池電圧4.40V(リチウム金属基準4.50V)まで定電流充電した後、4.40Vの電圧で電流値が37.5mAになるまで定電圧充電するという条件。
・放電条件
上記条件で初期充電した各リチウム二次電池を10分間休止した後、750mAの定電流で電池電圧2.75Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを初期放電容量Q3とした。
・温度
60℃(各電池を恒温槽内に配置)
・充電条件
750mAの電流で電池電圧4.40Vまで定電流充電した後、4.40Vの電圧を維持した状態で充電するという条件。
・充電時間
参考電池B1、B2及び比較参考電池Y1〜Y4については3日間。
参考電池B3、B4及び比較参考電池Y5については75時間。
そして、上記高温連続充電終了前後に各電池厚みを測定して、各電池の厚み増加量を求めた。尚、測定方法は、上記実施例に実験で示した方法と同様の方法である。
・温度
25℃(室温)
・放電条件
上記条件で初期充電した各リチウム二次電池を10分間休止した後、750mAの定電流で電池電圧2.75Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを高温連続充電試験後の放電容量Q4とした。
そして、上記初期放電容量Q3と高温連続充電試験後の放電容量Q4とから、下記(3)式に示す高温連続充電試験後の残存容量率(%)を求めた。
高温連続充電試験後の残存容量率(%)=(Q4/Q3)×100…(3)
(下記実験に関し、前提となる事項)
電解液にFECを含み且つ負極にケイ素を用いた場合には、電解液中のFECが負極表面で分解し、これによりガスが発生するため正極表面での酸化分解反応の抑制効果が見えづらい。正極表面での酸化分解反応の抑制効果を明確にするため、下記の実験を行った。
(参考例)
上記第1参考例の参考例1に示す電解液(ECとDECとの混合溶媒)と負極(炭素負極)とを使用した以外は、前記第2実施例の実施例と同様にして電池を作製した。
このように作製した電池を、以下、参考電池B5と称する。
正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物の表面にオキシ水酸化エルビウム粒子を固着しなかったものを用いた以外は、上記参考例と同様にして電池を作製した。
このように作製した電池を、以下、比較参考電池Y6と称する。
上記参考電池B5及び比較参考電池Y6について、下記条件で充放電を行い、充電保存後の残存容量率と電池厚み増加量とを調べたので、その結果を下記表5に示す。
・温度
25℃(室温)
・充電条件
800mAの電流で電池電圧4.20Vまで定電流充電した後、4.20Vの電圧で電流値が40mAになるまで定電圧充電するという条件。
・放電条件
上記条件で初期充電した各リチウム二次電池を5分間休止した後、800mAの定電流で電池電圧2.50Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを初期放電容量Q5とした。
・温度
85℃(各電池を恒温槽内に配置)
・充電条件
800mAの電流で電池電圧4.20Vまで定電流充電した後、4.20Vの電圧を維持した状態で電流値が40mAになるまで定電圧充電するという条件。
・保存時間
3時間
そして、上記、充電保存前後に各電池厚みを測定して、各電池の厚み増加量を求めた。尚、厚みの測定方法は、前記第1実施例の実験で示した方法と同様の方法である。
・放電条件
800mAの定電流で電池電圧2.5Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを放電容量Q6とした。
そして、上記初期放電容量Q5と充電保存後の放電容量Q6とから、下記(4)式に示す充電保存試験後の残存容量率(%)を求めた。
充電保存試験後の残存容量率(%)=(Q6/Q5)×100・・・(4)
また、参考電池B5と比較参考電池Y6とを比較した場合と同様に、本発明電池A3と比較電池Z3の比較でも電池厚みの増加が抑制されていることから、本発明電池A3と比較電池Z3の電池厚み増加の差は正極表面に固着させたオキシ水酸化エルビウムが酸化分解反応を抑制したためであると考えられる。したがって、参考電池B5と比較参考電池Y6のように負極が黒鉛の場合に酸化分解反応が抑制することができる正極であれば、本発明電池A3と比較電池Z3のように電解液にFECを含み、負極にSiを用いた場合においても同様にその効果が発現するものと考えられる。
(下記実験に関し、前提となる事項)
リチウム遷移金属複合酸化物として、LiCoO2及びLi1.05Ni0.80Co0.17Al0.03O2以外のものを用いた場合にも、同様の効果を発揮するか否かについて調べた。
(参考例)
リチウム遷移金属複合酸化物として、下記の製造方法により作製したLiMn0.33Ni0.33Co0.34O2を用いたこと以外は、上記第2参考例の参考例と同様に電池を作製した。
LiOHとMn0.33Ni0.33Co0.34(OH)2で表される共沈水酸化物とを、Liと遷移金属全体とのモル比が1:1となるようにして、石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて1000℃で20時間熱処理し、さらに粉砕することによりLiMn0.33Ni0.33Co0.34O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(平均粒子径13μm)を得た。
このように作製した電池を、以下、参考電池B6と称する。
正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物の表面へのオキシ水酸化エルビウム粒子の固着を行わなかったものを用いた以外は、上記参考例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較参考電池Y7と称する。
上記の参考電池B6及び比較参考電池Y7について、下記条件で充放電を行い、充電保存後の残存容量率と電池厚み増加量とを調べたので、その結果を下記表6に示す。
・温度
25℃(室温)
・充電条件
750mAの電流で電池電圧4.40Vまで定電流充電した後、4.40Vの電圧で電流値が37.5mAになるまで定電圧充電するという条件。
・放電条件
上記条件で初期充電した各リチウム二次電池を10分間休止した後、750mAの定電流で電池電圧2.75Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを初期放電容量Q5とした。
・温度
60℃(各電池を恒温槽内に配置)。
・充電条件
750mAの電流で電池電圧4.40Vまで定電流充電した後、4.40Vの電圧を維持した状態で電流値が37.5mAになるまで定電圧充電するという条件。
・保存時間
9日間。
そして、充電保存前・後に各電池厚みを測定して、各電池の厚み増加量を求めた。尚、厚みの測定方法は、前記第1実施例の実験で示した方法と同様の方法である。
・放電条件
800mAの定電流で電池電圧2.5Vになるまで放電するという条件。そして、この放電時における放電容量を測定し、これを充電保存後の放電容量Q6とした。
そして、上記(4)式より充電保存試験後の残存容量率(%)を求めた。
2:負極
3:セパレータ
4:正極集電タブ
5:負極集電タブ
6:アルミラミネート外装体
Claims (7)
- リチウム遷移金属複合酸化物の粒子が含有された正極活物質を含む正極と、ケイ素及び/又はケイ素合金の粒子が含有された負極活物質を含む負極と、上記正極と上記負極の間に配置されるセパレータと、非水電解質とを備えたリチウム二次電池において、
上記リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面には、水酸化エルビウム、オキシ水酸化エルビウム、水酸化イッテルビウム、オキシ水酸化イッテルビウム、水酸化テルビウム、オキシ水酸化テルビウム、水酸化ジスプロシウム、オキシ水酸化ジスプロシウム、水酸化ホルミウム、オキシ水酸化ホルミウム、水酸化ツリウム、オキシ水酸化ツリウム、水酸化ルテチウム、オキシ水酸化ルテチウム、水酸化ネオジム、オキシ水酸化ネオジム、水酸化サマリウム、オキシ水酸化サマリウム、水酸化プラセオジム、水酸化ユーロピウム、オキシ水酸化ユーロピウム、水酸化ガドリニウム、オキシ水酸化ガドリニウム、水酸化ランタン、オキシ水酸化ランタン、水酸化イットリウム、オキシ水酸化イットリウム、水酸化スカンジウム、オキシ水酸化スカンジウムからなる希土類化合物群から選ばれた少なくとも1種の粒子が、均一に分散した状態で固着されており、
上記希土類化合物群から選ばれた少なくとも1種の粒子が均一に分散した状態で固着されているリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子を分散させた溶液のpHを7〜10に保ちながら、エルビウム塩、イッテルビウム塩、テルビウム塩、ジスプロシウム塩、ホルミウム塩、ツリウム塩、ルテチウム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、プラセオジム塩、ユーロピウム塩、ガドリニウム塩、ランタン塩、イットリウム塩及びスカンジウム塩から選択される塩の溶液を加えて、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に水酸化エルビウム、水酸化イッテルビウム、水酸化テルビウム、水酸化ジスプロシウム、水酸化ホルミウム、水酸化ツリウム、水酸化ルテチウム、水酸化ネオジム、水酸化サマリウム、水酸化プラセオジム、水酸化ユーロピウム、水酸化ガドリニウム、水酸化ランタン、水酸化イットリウム及び水酸化スカンジウムから選択される少なくとも1種の水酸化物を析出させ、上記水酸化物が析出されたリチウム遷移金属複合酸化物粒子を熱処理することにより得られたものであり、
上記リチウム遷移金属複合酸化物は、層状構造を有し、化学式LiaNixCoyMzO2(0≦a≦1.1、x+y+z=1で、且つ、0≦x≦1、0≦y≦
1、0≦z≦1、Mは、Mn、Al、Zr、Mg、Ti及びMoから成る群から選択される少なくとも1種以上の元素)で表される、リチウム二次電池。 - 上記化学式LiaNixCoyMzO2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物において、0≦z≦0.4である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 上記化学式LiaNixCoyMzO2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物において、0≦x≦0.05、0.95≦y≦1.00、0≦z≦0.05である、請求項2に記載のリチウム二次電池。
- 上記化学式LiaNixCoyMzO2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物において、0.2≦x≦0.6、0.2≦y≦0.6、0<z≦0.4である、請求項2に記載のリチウム二次電池。
- 上記化学式LiaNixCoyMzO2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物において、0.70≦x<0.90、0.10≦y≦0.25、0<z≦0.10である、請求項2に記載のリチウム二次電池。
- 上記希土類化合物群が水酸化エルビウム及びオキシ水酸化エルビウムから成る、請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池。
- 上記希土類化合物群から選ばれた少なくとも1種の粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である、請求項1〜6の何れか1項に記載のリチウム二次電池。
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